(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501901(P2017-501901A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】熱可塑性プラスチックの超音波溶接
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20161222BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530018(P2016-530018)
(86)(22)【出願日】2014年9月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月22日
(86)【国際出願番号】US2014058027
(87)【国際公開番号】WO2015073126
(87)【国際公開日】20150521
(31)【優先権主張番号】61/902,830
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】316015453
【氏名又は名称】デュケーン・アイエイエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】クラインステイン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルコ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マーカス,ミランダ・ベア
【テーマコード(参考)】
4E167
4F211
【Fターム(参考)】
4E167AA22
4E167BE10
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4F211TN22
4F211TQ01
(57)【要約】
第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を結合する超音波溶接システム及び方法は、第一の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面上に形成された少なくとも1つのエネルギー導入体を含み、該エネルギー導入体は、第二の熱可塑性プラスチック部品の対向した面に向けて第一の熱可塑性プラスチック部品の面から突き出す。該エネルギーエル導入体の末端部分は、第一及び第二の部品が互いに係合状態とされたとき、第二の熱可塑性プラスチック部品の対向した面と最初に係合する。第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品は、少なくとも第一の部品をエネルギー導入体の突き出し方向と平行な方向に向けて振動させつつ、部品を共に押し付けることにより、超音波溶接される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を結合する超音波溶接方法において、
第一の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面に少なくとも1つのエネルギー導入体を形成するステップであって、該エネルギー導入体は、第二の熱可塑性プラスチック部品の対向した面に向けて前記第一の熱可塑性プラスチック部品の前記面から突き出し、エネルギー導入体の端部分は、前記第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品が互いに係合状態とされたとき、対向した面と最初に係合する湾曲した面を有する、前記エネルギー導入体の形成ステップと、
前記第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を超音波溶接するステップであって、更に、前記エネルギー導入体の突き出し方向に対し平行な方向に向けて少なくとも前記第一の部品を振動させつつ、前記第一及び第二の部品を互いに押し付けることにより、前記超音波溶接を行うステップとを備える、超音波溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波溶接方法において、前記導入体が係合すべき面に対して直角な方向に向けて、前記エネルギー導入体を通る長手方向面は、前記導入体の末端に湾曲したプロファイルを有する、超音波溶接方法。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波方法において、前記湾曲したプロファイルは、円の一部分である、超音波方法。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波方法において、前記円の中心は、前記第一の熱可塑性プラスチック部品の面と実質的に一致し、該面から前記エネルギー導入体が突出する、超音波溶接方法。
【請求項5】
請求項3に記載の超音波方法において、前記円の中心は、前記第一の熱可塑性プラスチックの面から離間されており、該面から、前記エネルギー導入体の突き出し方向と反対の方向に向けて、前記エネルギー導入体が突出する、超音波溶接方法。
【請求項6】
請求項3に記載の超音波方法において、前記円の中心は、前記第一の熱可塑性プラスチックの面から離間されており、該面から、前記エネルギー導入体の突き出し方向と同一の方向に向けて、前記エネルギー導入体が突出し、
前記導入体は、前記湾曲したプロファイルの両端に結合された一対の実質的に平坦な側壁を含み、該実質的に平坦な側壁は、前記第二の熱可塑性プラスチック部品に結合すべき前記第一の熱可塑性プラスチック部品に向けて前記湾曲したプロファイルから伸びるにつれて、互いに分岐するようにした、超音波溶接方法。
【請求項7】
請求項2に記載の超音波溶接方法において、前記湾曲したプロファイルの最大幅は、前記エネルギー導入体を通る前記長手方向断面の最大幅の少なくとも1/2である、超音波溶接方法。
【請求項8】
請求項2に記載の超音波溶接方法において、前記湾曲したプロファイルは、前記エネルギー導入体の末端にて少なくとも0.20mmの曲率半径を有する、超音波溶接方法。
【請求項9】
請求項1に記載の超音波溶接方法において、前記エネルギー導入体は、モールド内にて形成され、該モールド内の、該エネルギー導入体を形成するキャビティがボールエンドフライス加工により形成される、超音波溶接方法。
【請求項10】
請求項1に記載の超音波溶接方法において、前記導入体が係合すべき面に対して直角な方向に向けて、前記エネルギー導入体を通る長手方向断面は、実質的に平坦な末端と、該実質的に平坦な末端の両端に結合された一対の実質的に平坦な側壁とを有し、前記実質的に平坦な側壁は、前記第二の熱可塑性プラスチック部品に結合すべき前記第一の熱可塑性プラスチック部品の面に向けて、前記末端から伸びるとき、互いに分岐するようにした、超音波溶接方法。
【請求項11】
請求項10に記載の超音波溶接方法において、前記斜角を付したコーナ部は、前記実質的に平坦な末端を前記実質的に平坦な側壁に結合する、超音波溶接方法。
【請求項12】
フィルム又は布地を剛性の熱可塑性プラスチック部品に結合する超音波溶接方法において、
フィルム又は布地を前記剛性の可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面にて少なくとも1つのエネルギー導入体を形成するステップであって、該エネルギー導入体は、前記剛性の熱可塑性プラスチック部品の前記面から前記フィルム又は布地の対向した面に向けて突き出し、前記エネルギー導入体の端部分は、前記フィルム又は布地が前記剛性の熱可塑性プラスチック部品と係合する状態とされたとき、前記フィルム又は布地と最初に係合する湾曲した面を有する前記エネルギー導入体を形成するステップと、
更に、前記エネルギー導入体の突き出し方向と平行な方向に向けて少なくとも前記剛性の熱可塑性プラスチック部品又は布地を振動させる間に、前記フィルム又は布地及び前記剛性の熱可塑性プラスチック部品を共に押し付けることにより、前記フィルム又は布地を前記剛性の熱可塑性プラスチック部品に超音波溶接するステップとを備える、方法。
【請求項13】
請求項12の方法において、前記フィルム又は布地は、前記剛性の熱可塑性プラスチック部品に接着されない材料にて出来た剛性の面上にて支持される、方法。
【請求項14】
第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を結合する超音波溶接システムにおいて、
前記第一の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面から突き出す少なくとも1つのエネルギー導入体を有する第一の熱可塑性プラスチック部品と、
前記エネルギー導入体に対向し且つ前記第一の熱可塑性プラスチック部品の前記面に溶接される第二の熱可塑性プラスチック部品であって、前記第一の熱可塑性プラスチック部品の前記面から、前記エネルギー導入体が突き出す前記第二の熱可塑性プラスチック部品と、
前記エネルギー導入体の突き出し方向に対して平行な方向に向けて少なくとも前記第一の部分を振動させつつ、前記第一及び第二の部品を共に加圧することにより、前記第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を超音波にて溶接する装置と、を備え、
前記エネルギー導入体の末端部分は、前記第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品が互いに係合状態とされたとき、前記第二の熱可塑性プラスチック部品の前記対向した面と最初に係合する湾曲した面を有する、超音波溶接システム。
【請求項15】
フィルム又は布地を剛性の熱可塑性プラスチック部品に結合する超音波溶接システムにおいて、
前記剛性の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面から突き出す少なくとも1つのエネルギー導入体を有する前記剛性の熱可塑性プラスチック部品と、
前記エネルギー導入体に対向し且つ前記剛性の熱可塑性プラスチック部品に溶接されるフィルム又は布地であって、前記剛性の熱可塑性プラスチック部品から前記エネルギー導入体が突き出す前記フィルム又は布地と、
前記エネルギー導入体の突き出し方向に対して平行な方向に向けて前記剛性の熱可塑性プラスチック部品及び前記フィルム又は布地の少なくとも一方を振動させつつ、前記フィルム又は布地及び前記剛性の熱可塑性プラスチック部品を互いに押し付けることにより、前記フィルム又は布地を前記剛性の熱可塑性プラスチック部品に対して超音波にて溶接する装置と、を備え、
前記エネルギー導入体の末端部分は、前記剛性の熱可塑性プラスチック部品が前記フィルム又は布地と係合する状態とされたとき、前記対向したフィルム又は布地と最初に係合する湾曲した面を有する、超音波溶接システム。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記フィルム又は布地は、前記剛性の熱可塑性プラスチック部品に接着されない材料にて出来た剛性の面上にて支持される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、熱可塑性プラスチックの超音波溶接、特に、溶接継手の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]熱可塑性プラスチック部品を結合するため一般に使用されている方法の1つは、部品を共に押し付ける間に、高周波数、小さい振幅の振動により合わさる部品の表面を溶融するステップを含む、超音波溶接法である。十分な量の溶融が生じたならば、超音波振動を停止し、部品に対する圧縮力が維持される間、プラスチックは凝固して恒久的な構造体を形成する。超音波溶接は、速さ、自由度、清浄性、及び低コストを含む、その他の結合方法に勝る多数の利点をもたらす。
【0003】
[0003]超音波溶接を成功裏に使用するための重要な考慮事項は、溶接継手の設計である、すなわち、溶接過程の間に溶融する、結合すべき部品の領域の幾何学的形態である。当該技術の当業者には、多数の異なる継手の設計が知られており、これらの設計の各々は、特定の溶接基準に適合するため又は特定の材料の溶接を容易にするのに適している。
【0004】
[0004]最も一般的に使用されている溶接継手の設計の1つは、部品の1つに三角形のプロファイルを有し、合わさる部品に平坦な面を有する材料のリッジから成る、三角形のエネルギー導入体(director)である。この継手の設計は、
図1−3の例に示されている。
図1には、2つの部品、すなわち、エネルギー導入体を保持する部品1と、平坦面を保持する部品2とが示されている。
図2は、部品1のエネルギー導入体の先端が部品2の平坦面と接触している、溶接のための所要位置にある、部品の断面図である。
図3は、
図2の断面図のエネルギー導入体の領域の拡大図である。エネルギー導入体の先端は、鋭利か又は僅かに湾曲しており、2つの部品の間にて小さい接触面積を提供し、溶接の開始時、超音波振動を集中させ、溶融を開始することを可能にする。全体として、業界にて単に、「エネルギー導入体」と呼ばれている、三角形のエネルギー導入体及びその適用例は、「プラスチックの結合ハンドブック」(ミハエルJ.トロートン(Michael J.Troughton)編集の第二版)のような、多数の技術出版物に詳細に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]三角形のエネルギー導入体の設計のものは、長年にわたり商業的に使用されているが、この継手の形状には、幾つかの望ましくない特徴が伴う。最も重要なファクタは、エネルギー導入体を保持する部品のモールドの高い製造コストである。先端にて鋭利な端縁を形成するため、エネルギー導入体の幾何学的形態は、典型的に、単一の鋼片に電気放電加工(EDM)し又はエネルギー導入体の中心に沿ってモールドを2つの部分に分割し、その両者の間に正確に制御した空隙が形成されるようにすることにより製造される。前者の技術は、時間を消費しかつ専用の工具を必要とし、また、後者の技術は、厳しい機械加工公差を必要とする。その結果、モールドの製作コストは、比較的高くなる。別の不利益な点は、エネルギー導入体にて部品を成形するときの困難さである。具体的には、成形過程中、鋭利な先端をプラスチックにて完全に充填することは難しい。不完全又は不均一なエネルギー導入体は、一方にて、弱い超音波溶接となり、又は継手経路の全体に沿って均一でない溶接となる可能性がある。更に別の短所は、エネルギー導入体が溶接の前に、損傷され易いことである。プラスチック部品が成形された後、これらの部品は、バルク包装し、かつ溶接ステーションまで搬送されることが多い。エネルギー導入体がその他の部品と接触することを許容する包装方法の場合、エネルギー導入体のリブは、時として、極く局所的にゆがみ又は潰れる可能性がある。この型式の欠点の結果、連続的な溶接部を形成する材料が不十分な領域が生じ、このことは、密閉的密封が要求される場合、特に問題となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]1つの実施の形態に従い、第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を結合するための超音波溶接システムが提供される。少なくとも1つのエネルギー導入体は、第一の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面に形成され、エネルギー導入体は、該第一の熱可塑性プラスチック部品の面から第二の熱可塑性プラスチック部品の対向した面に向けて突き出す。エネルギー導入体の末端部分は、湾曲面を有しており、該湾曲面は、第一及び第二の部品が互いに係合状態とされたとき、第二の熱可塑性プラスチックの対向した面と最初に係合する。第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品は、少なくとも第一の部品をエネルギー導入体の突き出す方向に対し平行な方向に振動させる間に、部品を共に押し付けることにより超音波溶接される。
【0007】
[0007]1つの実施の形態において、導入体が係合すべき面に対して直角な方向に向けて、エネルギー導入体を通る長手方向断面は、導入体の末端に湾曲したプロファイルを有している。例えば、湾曲したプロファイルは、そこからエネルギー導入体が突出する上記の第一の熱可塑性プラスチック部品の面と実質的に一致する中心を有する円の一部とすることができ、又は、そこからエネルギー導入体の突き出し方向と反対の方向に向けて又はエネルギー導入体の突き出し方向と同一の方向に向けて、エネルギー導入体が突出する第一の熱可塑性プラスチック部品の面から離間させることができる。一対の実質的に平坦な側壁を湾曲したプロファイルの両端に結合し、該側壁は、湾曲したプロファイルからエネルギー導入体が形成された熱可塑性プラスチック部品の面に向けて伸びるとき、互いに分岐するようにすることができる。湾曲したプロファイルの最大幅は、エネルギー導入体を通る長手方向断面の最大幅の少なくとも1/2であることが好ましく、また、湾曲したプロファイルは、エネルギー導入体の末端にて少なくとも0.20mmの曲率半径を有することが好ましい。
【0008】
[0008]別の実施の形態において、導入体が係合すべき面に対し直角の方向に向けた、エネルギー導入体を通る長手方向断面は、実質的に平坦な末端と、該実質的に平坦な末端の両端に結合された一対の実質的に平坦な側壁とを有し、該実質的に平坦な側壁は、第二の熱可塑性プラスチック部品に結合すべき第一の熱可塑性プラスチック部品の面に向けて末端から伸びるとき、互いに分岐する。
【0009】
[0009]第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を結合する超音波溶接方法は、第一の熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面に少なくとも1つのエネルギー導入体を形成するステップを備えており、該エネルギー導入体は、第二の熱可塑性プラスチック部品の対向した面に向けて第一の熱可塑性プラスチック部品の面から突き出し、エネルギー導入体の端部分は、第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品が互いに係合する状態とされたとき、対向した面と最初に係合する湾曲し又は平坦な面を有し、更に、エネルギー導入体の突き出し方向に対し平行な方向に向けて少なくとも第一の部品を振動させつつ、部品を互いに押し付けることにより、第一及び第二の熱可塑性プラスチック部品を超音波溶接するステップを備えている。
【0010】
[0010]該エネルギー導入体は、エネルギー導入体が形成されるキャビティがボールエンドフライス加工により形成される、モールド内にて形成されることが好ましい。
【0011】
[0011]別の実施の形態において、フィルム又は布地を硬い熱可塑性プラスチック部品に結合する超音波溶接方法は、硬い熱可塑性プラスチック部品の少なくとも1つの面上に少なくとも1つのエネルギー導入体を形成するステップを備え、該エネルギー導入体は、硬い熱可塑性プラスチック部品の面から対向したフィルム又は布地に向けて突き出し、エネルギー導入体の端部分は、フィルム又は布地が硬い熱可塑性プラスチック部品と係合する状態とされたとき、該フィルム又は布地と最初に係合する湾曲した面を有し、更に、エネルギー導入体の突き出し方向に対して平行な方向に向けて硬い熱可塑性プラスチック部品又はフィルム又は布地の少なくとも1つを振動させつつ、フィルム又は布地及び硬い又は熱可塑性プラスチック部品を互いに押し付けることにより、フィルム又は布地を硬い熱可塑性プラスチック部品に超音波溶接するステップを備えている。
【0012】
[0012]本発明は、添付図面に関連して以下の説明を読むことにより、最も良く理解することができる。
【非特許文献1】J. Immunol. 136 (1986), 1791−1795
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】[0013]
図1は、その1つが三角形のエネルギー導入体を保持する、超音波溶接される部品の分解斜視図である。
【
図2】[0014]
図2は、超音波溶接のために配置された
図1の部品の拡大斜視図である。
【
図3】[0015]
図3は、
図2の部品のこれらの部分の更なる拡大断面図である。
【
図4】[0016]
図4は、エネルギー導入体の円形の断面の中心がそこから部品が突き出す部品の面と一致する、円形のエネルギー導入体を保持する、部品の断面図である。
【
図5】[0017]
図5Aは、そこからエネルギー導入体が突き出す部品の面の下方にて凹状に形成され又はその上にエネルギー導入体が形成された部品の面の前方に伸びた中心を有する円の断面である円形の末端面を有するエネルギー導入体を保持する部品の断面図である。
図5Bは、そこからエネルギー導入体が突き出す部品の面の下方にて凹状に形成され又はその上にエネルギー導入体が形成された部品の面の前方に伸びた中心を有する円の断面である円形の末端面を有するエネルギー導入体を保持する部品の断面図である。[0018]
図5Cは、平坦な末端を有するエネルギー導入体を備える部品の断面図であり、この場合、エネルギー導入体の平坦な端面は、その上にエネルギー導入体が形成された部品の面に向けて伸びるとき、互いに分岐する一対の側壁にて終わり、又はその上にエネルギー導入体が形成された部品の面に向けて伸びるとき、互いに分岐する一対の側壁と合流する一対の斜角を付したコーナ部にて終わる。
【
図6】[0019]
図6Aは、円形のエネルギー導入体を保持する部品の一対の分解斜視図である。
図6Bは、円形のエネルギー導入体を保持する部品の一対の分解斜視図である。
【
図8】[0021] 円形のエネルギー導入体を保持する部品の溶接の質を三角形のエネルギー導入体を保持する部品の溶接の質と比較する実験の間、溶接した二つの代表的な標本に対する距離対時間の一対のグラフである。
【
図9】[0022]
図8にて示した標本に対する力対時間の一対のグラフである。
【
図10】[0023]
図8にて示した標本に対する超音波パワー対時間の一対のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0024]本発明は、各種の改変例及び代替的な形態にて実現可能であり、特定的な実施の形態又は具体例は、単に一例して図面に示したものであり、本明細書にて詳細に説明する。しかし、該開示は、本発明を開示した特定の形態に限定することを意図するものではないことを理解すべきである。そうではなくて、本開示は、添付した請求項により規定される、本発明の着想及び範囲に属する全ての改変例、等価物及び代替例を対象とするものである。
【0015】
[0025]本発明は、特定の好ましい実施の形態に関して説明するが、本発明は、これらの特定の実施の形態にのみ限定されるものではないことを理解すべきである。これに反して、本開示は、添付した請求項により規定される、本発明の着想及び範囲に属する全ての改変例、等価物及び代替例を対象とすることを意図するものである。
【0016】
[0026]
図4の断面図にて、エネルギー導入体10aを保持する第一のプラスチック部品10は、第二のプラスチック部品20に溶接すべきものである。この実施の形態において、第一の部品10から突き出すエネルギー導入体10aは、該導入体の末端にて湾曲したプロファイルを有している。この例において、該湾曲したプロファイルは、半円形の形状を有し、円の中心は、そこからエネルギー導入体10aが突き出す第一の熱可塑性プラスチック部品10の面と実質的に一致する。これと代替的に、円の中心は、そこから上記エネルギー導入体が突き出す第一の熱可塑性プラスチック部品の円の中心から偏奇(離間)させることができる。
図5Aにおいて、エネルギー導入体10bの円の中心は、上記のエネルギー導入体の突き出し方向と反対の方向に距離Xだけ偏奇されている。
図5Bにおいて、エネルギー導入体10cの円の中心は、上記のエネルギー導入体の突き出し方向と反対の方向に距離Yだけ偏奇されている。エネルギー導入体10cのプロファイルは、部品10の平坦面から出る平坦なテーパーを付けた側部を更に含み、エネルギー導入体の末端部分の全体として半円形の断面にて正接状に終わっている。エネルギー導入体の半円形部分の直径は、そこからエネルギー導入体が出る平坦な部品の面の平面内にてエネルギー導入体の幅の少なくとも1/2であることが好ましい。図示した実施の形態において、エネルギー導入体に隣接する部品10の面は、平坦面であるが、これらの隣接する部品の面は、平坦でない面とすることもできることが理解されよう。
【0017】
[0027]
図5Cにおいて、エネルギー導入体10dは、台形の断面のプロファイルを有しており、エネルギー導入体の末端に平坦面を形成する。
図5Dには、
図5Cに示したエネルギー導入体の改変した形態が図示されており、この場合、エネルギー導入体10cの末端における台形のコーナ部は、切頭円錐形とされ、一対の斜角を付した面を形成する。
[0028]湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体は、先に説明したエネルギー導入体と同一の各種の部品の幾何学的形態にて使用するのに適している。円形のエネルギー導入体の継手を保持する簡単な部品の設計の例は、
図6に示されており、ここで、
図6Aには、円形の継手経路20aを有する部品20、21が示されており、
図6Bには、矩形の継手経路30aを有する部品30が示されている。その双方の実施の形態において、継手経路内のエネルギー導入体は、第一の部品20又は30と一体的であり、第二の部分21又は31は、平坦な合わさり面を保持している。
【0018】
[0029]
図7は、溶接のための位置にある部品を示す、
図6Aの断面図であり、この場合、部品40のエネルギー導入体の先端は、部品41の平坦面と接触している。
図6及び
図7は、第一の部品と一体化されるエネルギー導入体を示しているが、これと代替的に、該エネルギー導入体は、第二の部品内に一体化し、第一の部品は平坦面を保持するようにしてもよい。
【0019】
[0030]溶接が開始された時、部品の間にて僅かな接触面積を提供する特徴を維持する一方にて、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体は、三角形の設計のものと比較として、多数の有利な点を提供する。第一に、モールドを製作する時間及び費用は、著しく減少する。湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体は、標準型のボールエンドミルを使用して直接フライス加工して単一の鋼材片とすることができ、このことは、特殊な工具又は極めて厳格な機械加工公差を不要にする。更に、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体は、大きい直径の切削工具を使用することを可能にし、このことは、工作機械の機械加工時間及び主軸の回転速度の条件を軽減する。第二に、溶融したプラスチックが三角形のエネルギー導入体の先端よりも、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体のキャビティをより迅速に充填することにより部品の成形過程は容易となり、溶接継手の均一さ及び部品同士の適合性を良くし、最終的に、より均一でかつ適合性のある溶接結果となる。第三に、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体は、同等の寸法の三角形のエネルギー導入体よりも堅牢であり、このため、部品を設計する時点と部品を溶接する時点との間にて、部品を取り扱い、包装しかつ輸送するとき、損傷され難い。エネルギー導入体、特に、その先端にて、損傷を与える危険性が小さいため、製造の収率を良くすることができる。
【0020】
[0031]溶接の質に関して、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体の利点は、
図1に示した部品と同様の円形の2組のポリカーボネート標本を溶接することから成る実験により確認されている。第一の組みにて、キャップ(
図1の部品)は、先端半径が0.41mmの
図4に示したプロファイルを有するエネルギー導入体を保持するものとした。第二の組みにて、キャップは、高さ0.38mmで先端角度が90°の
図3に示したような三角形のエネルギー導入体を保持するものとした。双方の組みにて基部(
図1の部品)は同一とした。米国特許第7,819,158号に記載された型式のサーボ駆動の超音波プレスを使用し、かつ米国特許第8,052,816号に記載された遅延動作技術を採用して、等しい溶接潰れ距離を維持する一方にて、各組の標本について最適な溶接強度(すなわち、引張り疲労荷重)が得られるように溶接パラメータを決定した。各組に対して最適化したパラメータを使用し、統計学的に有意義な数の標本を溶接し、その後、引張試験をして溶接強度を測定した。第一の組みのエネルギー導入体について、平均溶接強度及び平均値のパーセントで表したその標準偏差は、それぞれ、5220N及び5.8%である一方、三角形のエネルギー導入体の組みについては、それら結果は、それぞれ4770N及び10.6%であった。
【0021】
[0032]
図8−10は、上記の実施の形態において溶接した代表的な標本に対する幾つかのパラメータのグラフであり、この場合、丸い端部プロファイルを有するエネルギー導入体を保持する1つの標本、及び三角形のエネルギー導入体を保持する1つの標本について、
図8は、距離対時間を示し、
図9は、力対時間を示し、
図10は、超音波パワー対時間を示す。各グラフにて、超音波振動は、時間=0sにて開始した。
【0022】
[0033]この実験結果から、本発明のエネルギー導入体はより均一な結果及びより高い溶接強度を実現することが確認される。上述した遅延動作技術を採用するサーボ駆動の超音波プレスは、湾曲し又は平坦な末端のプロファイルを有するエネルギー導入体にて部品を溶接するのに特に良く適しており、それは、プラスチック材料の最初の溶融が生ずる迄、動きを中断させるその能力、また、溶接過程中、力を迅速に変化させるその能力のためである。
【0023】
[0034]上述した円形のエネルギー導入体は、該エネルギー導入体がその上に形成される硬い熱可塑性プラスチック部品に対してフィルム又は布地を溶接するのにも有用である。(フィルムを硬いプラスチックに溶接することは、包装業界にて広く採用されている)。フィルム又は布地は、典型的に、その上に円形のエネルギー導入体が形成される硬い熱可塑性プラスチック部品の上に張力状態にて配置することにより、超音波溶接のため位置決めされる。これと代替的に、フィルム又は布地は、その上にエネルギー導入体が形成される硬い熱可塑性プラスチック部品に接着されない面上にて支持してもよい。フィルム又は布地を硬い部品に溶接するためのホーン(ソノロード)から発する超音波振動は、フィルム側に又は硬い部品側の何れかに加えることができる。
【0024】
[0035]本発明の特定の実施例及び適用例について図示しかつ説明したが、本発明は、本明細書にて開示した正確な構造及び組成にのみ限定されるものではなく、添付した請求の範囲に記載した本発明の着想及び範囲から逸脱することなく、上記の説明から各種の改変例、変更及び変形例が明らかであることを理解すべきである。
【国際調査報告】