特表2017-501911(P2017-501911A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-501911光硬化型3Dプリント装置及びその結像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501911(P2017-501911A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】光硬化型3Dプリント装置及びその結像システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20161222BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20161222BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20161222BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y30/00
   B33Y50/02
   G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-557175(P2016-557175)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月3日
(86)【国際出願番号】CN2014088723
(87)【国際公開番号】WO2015081756
(87)【国際公開日】20150611
(31)【優先権主張番号】201310642109.0
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516165859
【氏名又は名称】プリズムラボ チャイナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホウ フェン
【テーマコード(参考)】
2H197
4F213
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA11
2H197CA03
2H197CE02
2H197HA06
4F213AJ08
4F213AR07
4F213WA25
4F213WA97
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL95
(57)【要約】
本発明は、光源と、液晶パネルと、第一の偏光フィルタと、第二の偏光フィルタと、集束レンズアレイと、投影レンズと及び制御器を備えた光硬化型3Dプリント装置の結像システムを提供した。当該結像システムは、集束レンズアレイが前記液晶パネルの入光側に設けられ、前記集束レンズアレイにおける各集束レンズが液晶パネルの各画素に対応し、各集束レンズが対応の画素に照射されたビームを、当該光ビームが前記画素の透過領域をできる限り通過するように集束することを特徴とする。偏向レンズは、前記液晶パネルの出光側に配置され、前記ビーム像の前記感光性材料の表面への投影位置を微調整するために、結像システムの光軸に垂直した少なくとも一つの軸を回りに回転することができる。制御器は、前記光源に多数回の露光を指示し、各回の露光ごとに前記偏向レンズの偏向を指示することにより、各回の露光によるビーム像を前記感光性材料の表面の異なる部位に投影する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型3Dプリント装置の結像システムであって、
光ビームを射出する光源と、
前記光源の射出光路に位置し、複数の画素を含む液晶パネルと、
前記液晶パネルの入光側に設けられた第一の偏光フィルタと、
前記液晶パネルの出光側に設けられ、前記第一の偏光フィルタとともに前記液晶パネルと合わせて前記光ビームの一部を遮断して、ビーム像を形成する第二の偏光フィルタと、
前記液晶パネルの入光側に設けられるであって、前記集束レンズアレイにおける各集束レンズが前記液晶パネルの各画素に対応し、各集束レンズが対応の画素に照射された光ビームを、当該光ビームが前記画素の透過領域をできる限り通過して前記液晶パネルの出光側に結像するように集束し、かつ像のサイズが対応の画素の透過領域のサイズより小さい集束レンズアレイと、
前記液晶パネルと感光性材料の表面との間であって、前記像と前記感光性材料との間に配置され、当該ビーム像を前記感光性材料の表面に、当該光源が各集束レンズを通過して形成された像が前記感光性材料の表面に複数の光スポットが形成されるように投影する投影レンズと、
前記液晶パネルの出光側に配置され、前記ビーム像の前記感光性材料の表面への投影位置を微調整するために、前記結像システムの光軸に垂直した少なくとも一つの軸を回りに回転することができる偏向レンズと、
前記光源に多数回の露光を指示し、各回の露光ごとに前記偏向レンズの偏向を指示することにより、各回の露光によるビーム像を前記感光性材料の表面の異なる部位に投影する制御器とを備えることを特徴とする光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項2】
前記集束レンズアレイが前記液晶パネルの上を覆うことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項3】
各回の露光によるビーム像の前記感光性材料の表面に形成された各光スポットは基本的に互いに重ね合っていないことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項4】
各回の露光によるビーム像で形成された光スポットは前記感光性材料の全面に分布していることを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項5】
前記像のサイズは前記液晶パネルの画素のサイズの半分より小なくまたは等しく、あるいはやや大きいことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項6】
各回の露光によるビーム像は同じ画像情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項7】
各回の露光によるビーム像は異なる画像情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項8】
前記像のサイズと前記液晶パネルの画素のサイズとの比は約1:2又は1:3又は1:4であり、且つ前記光源の露光回数は4回又は9回又は16回であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項9】
前記光源と前記集束レンズとの距離をL1とし、前記集束レンズから結像面までの距離をL2とし、前記集束レンズの前側焦点距離と後側焦点距離をそれぞれfとf’とし、前記光源のサイズをAとし、前記像のサイズをdとすれば、
f’/L2+f/L1=1、
L1/L2=A/dという条件を満たすことを特徴とする請求項1,5又は8に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項10】
前記光ビームの波長は430nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項11】
光硬化型3Dプリント装置の結像システムであって、
光ビームを射出する光源と、
前記光源の射出光路に位置し、複数の画素を含む液晶パネルと、
前記液晶パネルの入光側に設けられた第一の偏光フィルタと、
前記液晶パネルの出光側に設けられ、前記第一の偏光フィルタとともに前記液晶パネルと合わせて前記光ビームの一部を遮断して、ビーム像を形成する第二の偏光フィルタと、
前記液晶パネルの入光側に設けられる集束レンズアレイであって、前記集束レンズアレイにおける各集束レンズが液晶パネルの各画素に対応し、各集束レンズが対応の画素に照射された光ビームを、当該光ビームが前記画素の透過領域をできる限り通過して前記液晶パネルの出光側に結像するように集束し、かつ像のサイズが対応の画素の透過領域のサイズより小さい集束レンズアレイと、
前記液晶パネルと感光性材料の表面との間であって、前記像と前記感光性材料の表面との間に配置され、当該ビーム像を前記感光性材料の表面に、当該光源が各集束レンズを通過して形成された像が前記感光性材料の表面に複数の光スポットが形成されるように投影する投影レンズと、
前記液晶パネルを接続し、前記液晶パネルを駆動して互いに垂直した第一の方向と第二の方向に移動させて、前記ビーム像の前記感光性材料の表面への投影位置を微調整するマイクロ変位駆動機構と、
前記光源に多数回の露光を指示し、各回の露光ごとに前記マイクロ変位駆動機構が動作するように指示することにより、各回の露光によるビーム像を前記感光性材料の表面の異なる部位に投影する制御器とを備えることを特徴とする光硬化型3Dプリント装置の結像システム。
【請求項12】
請求項1−11に記載の結像システムを備えることを特徴とする光硬化型3Dプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化型3Dプリント装置に関し、特に光硬化型3Dプリント装置の結像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリントとは、3次元コンピュータデザインモデルをベースとし、ソフトウェアの階層化離散とコンピュータ数値制御成形システムにより、レーザビームや熱溶解ノズルなどの方式を利用して金属粉末、セラミック粉末、プラスチック、組織などの特定材料を層ずつに積層接着し、最終に重畳成形することで、実製品を作成する技術である。3Dプリントは、金型やフライス加工などの機械加工方式により素材に対して定型且つ切断して最終製品を生産する従来製造業と比べて、3次元実体をいくつかの2次元平面に変換し、素材を処理し層ずつに重畳することで製造するため、製造の複雑さが大幅に低減された。このようなデジタル製造モードは、複雑なプロセスや巨大なマシンや多くの人力が必要せず、且つコンピュータの図形データから任意形状の部品を直接生産することができるため、生産製造がより広い生産者範囲に向くようになってきた。現在、3Dプリント技術は、成形方式が進化し続け、用いる材料も多種ある。各種の成形方式のうち、光硬化法が比較的に慣用な方式である。光硬化法は、感光性樹脂が紫外線レーザに照射されることで硬化する原理を利用して材料の重畳成形を行い、優れた成形精度が高い、表面仕上げの平滑度が高い、素材の使用率が高いなどの有利点を有する。
【0003】
図1は光硬化型3Dプリント装置の基本構成を示す。当該3Dプリント装置100は、感光性樹脂を収納する原料タンク110と、感光性樹脂を硬化するための結像システム120と、成形されたワークピースを接続させるためのリフト130を備える。結像システム120は原料タンク110の上に設けられ、ビーム像を照射することで原料タンク110の液面の一層の感光性樹脂を硬化することができる。結像システム120がビームパターンを照射して一層の感光性樹脂を硬化させた後、リフト130は伴って当該成形された感光性樹脂をわずかに低下させ、スクレーパー131により硬化されたワークピースの上面に感光性樹脂を均一に塗布させ、次回の照射まで待機する。このようなサイクルで、層ずつ重畳してなる3次元ワークピースが得られる。
【0004】
結像システム120は一般に、レーザ成形技術又はデジタル光処理 (Digital Light Procession, DLP)投影技術を用いる。
【0005】
レーザ成形技術は、レーザ走査装置を用いてバイポイント走査を行う。感光性樹脂の特性のゆえに、樹脂を損傷しないように、レーザのパワーがあまり大きくならないようにする。このため、レーザの移動速度が数メーター乃至十数メーター・秒に限定され、成形の速度が遅すぎるという問題がある。
【0006】
DLP投影結像技術は、デジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device, DMD)を用いて光に対する反射を制御することで実現される。デジタル・マイクロミラー・デバイスは一つのミラーとみなすことができる。そして、当該ミラーは数十万乃至数百万のマイクロミラーからなる。各マイクロミラーはそれぞれ一つの画素を代表し、画像はこれらの画素からなる。また、各マイクロミラーは、個別に制御されることで投影レンズに光を反射するか否かを決めることができる。最終に、ミラー全体は所望のビーム像を反射する。DMDチップの解像度が制限されるために、DLP投影結像技術による成形寸法が小さいという欠陥があり、限界がある。
【0007】
液晶投影技術は、平面アレイ画像ソースとして、論理上、DLP投影結像技術と類似するビーム像を投影できるため、光硬化型3Dプリント装置の結像システムを構築するために用いることができる。液晶パネルには、多くの画素が含まれ、各画素が偏光の偏光方向を独立に制御でき、液晶パネルの両側の偏光フィルタと合わせて、ある画素が光を通過させるかどうかを制御できるため、液晶パネルシステムを介したビームが画像化されたものである。しかし、液晶パネルを光硬化型3Dプリント装置に使うと、明らかな欠点がある。原因は、感光性樹脂に必要な硬化光源の波長が一般的に430nm以下であり、前記波長の範囲が液晶パネル内の液晶に有害であり、液晶の寿命が短くなる可能性があるとのことにある。そして、液晶パネルの透過率があまり高くないため、パネルの寿命がさらに短くなる。
【0008】
周知のように、液晶パネルは、画素ごとの周囲に、画素の制御回路(薄膜トランジスタや配線などを含む)を覆うために設けられる一定面積の光不透過のブラックマスク領域がある。当該部分のマスク領域は、LCDパネルの透過能力を低減して、結像システムの輝度及びコントラストを影響してしまう。透過領域(つまりマスクに覆われない領域)の全画素面積に占める比率は開口率(aperture ratio)と呼ばれる。液晶パネルの開口率を60%とすれば、40%と高い面積が光不透過であると意味し、輝度の損失が極めて大きい。それとともに、これらの光が液晶パネルに吸収されたら、液晶が過度に昇温して、液晶パネルの老化や損傷を招く。
【0009】
上記問題を解消する方式の一つとして、できる限り開口率を上げることが提案された。光損失の低減に寄与するが、開口率の向上には技術的限界があり、より先進的な液晶パネル製造プロセスに依存する。そこで、光硬化型3Dプリント装置において光透過率不足を補助する方式としては、輝度のより高い光源を用いることが提案された。しかし、光硬化型3Dプリント装置自身も相当の投影輝度を要求した場合、液晶パネルを通過する光の輝度を一途に増加した結果、液晶寿命の短縮を悪化させてしまう。
【0010】
下記表1は液晶投影技術において液晶が十分強い各波長の光に照射された後の寿命を比較したものである。
【0011】
【表1】
【0012】
表1から、光波長が433nmである場合の寿命を基準「1」とし、前記波長が410nmに低下した場合、寿命は0.4に顕著に低下したことが分かる。これに対して、波長が470nmである場合、寿命は4.2に顕著に増加した。
【0013】
このような寿命上の欠陥により、現在、液晶システムを用いた光硬化型3Dプリント装置がまだ開発されていない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、液晶システムに基づき、且つ許容可能な低い光パワーで光硬化に必要なビーム像を投影できる光硬化型3Dプリント装置及びその結像システムを提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、光源と、液晶パネルと、第一の偏光フィルタと、第二の偏光フィルタと、集束レンズアレイと、投影レンズと、偏向レンズ及び制御器を備えた光硬化型3Dプリント装置の結像システムを提供した。光源は光ビームを射出する。液晶パネルは当該光源の射出光路に位置し、前記液晶パネルは複数の画素を含む。第一の偏光フィルタは前記液晶パネルの入光側に設けられ、第二の偏光フィルタは前記液晶パネルの出光側に設けられ、当該第一の偏光フィルタと第二の偏光フィルタは当該液晶パネルと合わせて前記光ビームの一部を遮断してビーム像を形成する。集束レンズアレイは前記液晶パネルの入光側に設けられ、前記集束レンズアレイにおける各集束レンズが液晶パネルの各画素に対応し、各集束レンズは、対応の画素に照射された光ビームを、当該光ビームが前記画素の光透過領域をできる限り通過させて前記液晶パネルの出光側に結像するように集束し、かつ当該像のサイズが対応の画素の光透過領域のサイズより小さい。投影レンズは、前記液晶パネルと感光性材料の表面との間であって、前記像と前記感光性材料の表面との間に配置され、当該ビーム像を前記感光性材料の表面に、当該光源が各集束レンズを通過して形成された像が前記感光性材料の表面に複数の光スポットが形成されるように投影する。偏向レンズは、前記液晶パネルの出光側に配置され、前記ビーム像の前記感光性材料の表面への投影位置を微調整するために、前記結像システムの光軸に垂直な少なくとも一つの軸を回りに回転することが可能である。制御器は、前記光源に複数回の露光を指示し、各回の露光ごとに前記偏向レンズが偏向するように指示することにより、各回の露光によるビームを前記感光性材料の表面の異なる部位に投影する。
【0016】
本発明に関わる一実施例には、前記集束レンズアレイは前記液晶パネル上を覆う。
【0017】
本発明に関わる一実施例には、各回の露光によるビーム像の前記感光性材料の表面に形成された各光スポットは基本的に互いに重ね合っていない。
【0018】
本発明に関わる一実施例には、各回の露光によるビーム像で形成された光スポットは前記感光性材料の全面に分布している。
【0019】
本発明に関わる一実施例には、前記像のサイズは前記液晶パネルの画素のサイズの半分より小さくまたは等しく、あるいはやや大きい。
【0020】
本発明に関わる一実施例には、各回の露光によるビーム像は同じ画像情報を含む。
【0021】
本発明に関わる一実施例には、各回の露光によるビームは異なる画像情報を含む。
【0022】
本発明に関わる一実施例には、前記像のサイズと前記液晶パネルの画素のサイズとの比は約1:2又は1:3又は1:4であり、且つ前記光源の露光回数は4又は9又は16回である。
【0023】
本発明に関わる一実施例には、前記光源と前記集束レンズとの距離をL1とし、前記集束レンズから結像面までの距離をL2とし、前記集束レンズの前側焦点距離と後側焦点距離をそれぞれfとf’とし、前記光源のサイズをAとし、前記像のサイズをdとすれば、
f’/L2+f/L1=1;
L1/L2=A/dという条件を満たす。
【0024】
本発明に関わる一実施例には、前記光ビームの波長は430nm以下である。
【0025】
本発明はさらに、光源と、液晶パネルと、第一の偏光フィルタと、第二の偏光フィルタと、集束レンズアレイと、投影レンズと、マイクロ変位駆動機構及び制御器を備えた光硬化型3Dプリント装置の結像システムを提供した。光源は光ビームを射出する。液晶パネルは当該光源の射出光路に位置し、前記液晶パネルは複数の画素を含む。第一の偏光フィルタは前記液晶パネルの入光側に設けられた。第二の偏光フィルタは前記液晶パネルの出光側に設けられ、前記第一及び第二の偏光フィルタは前記液晶パネルと合わせて前記光ビームの一部を遮断して、ビーム像を形成する。集束レンズアレイは前記液晶パネルの入光側に設けられ、前記集束レンズアレイにおける各集束レンズが液晶パネルの各画素に対応し、各集束レンズは、対応の画素に照射された光ビームを、当該光ビームが前記画素の透過領域をできる限り通過して前記液晶パネルの出光側に結像するように集束し、かつ当該像のサイズが対応の画素の透過領域のサイズより小さい。投影レンズは、前記液晶パネルと感光性材料の表面との間であって、前記像と前記感光性材料の表面との間に配置され、当該ビーム像を前記感光性材料の表面に、当該光源が各集束レンズを通過して形成された像が前記感光性材料の表面に複数の光スポットが形成されるように投影する。マイクロ変位駆動機構は前記液晶パネルを接続し、前記液晶パネルを駆動して互いに垂直した第一の方向と第二の方向に移動させて、前記ビーム像の前記感光性材料への投影位置を微調整する。制御器は、前記光源に複数回の露光を指示し、露光ごとに前記マイクロ変位駆動機構が動作するように指示することにより、各回の露光による光ビームを前記感光性材料の表面の異なる部位に投影する。
【0026】
本発明はさらに、前記結像システムを備えた光硬化型3Dプリント装置を提供した。
【0027】
本発明に係る上記技術方案では、集束レンズアレイを設けることにより、液晶パネルに照射された光ビームを集束して、液晶パネルにおける各画素の透過領域をできる限り透過させて、液晶パネルの不透過部分による遮断を低減し、ひいては回避する。そして、ビームの集束により、感光性材料表面に照射された光スポットの輝度が顕著に向上した。液晶パネル全体の光透過量が小さい場合であっても、樹脂の感光閾値に達し、感光の相対線形区間に入り、硬化速度が大幅に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の特徴や性能は下記実施例及び図面でさらに説明される。
図1図1は光硬化型3Dプリント装置の基本構成を示す。
図2図2は本発明の一実施例に係る3Dプリント装置の結像システムを示す。
図3図3は本発明の一実施例に係る集束レンズアレイと液晶表示パネルとの位置関係を示す。
図4図4図2に示す結像システムにおける1つの画素の光学原理図である。
図5図5は液晶パネルにおけるブラックマスクを示す。
図6図6は本発明の実施例に係る結像システムが感光性材料の表面に対して一回露光して形成した画像を示す。
図7図7は本発明の実施例に係る結像システムの偏向しない場合の光学概略図。
図8図8は本発明の実施例に係る結像システムの偏向した場合の光学概略図。
図9図9は本発明のもう一つの実施例に係る3Dプリント装置の結像システムを示す。
図10図10は本発明の実施例に係る結像システムがる感光性材料の表面に対して4回露光して形成した画像を示す。
図11図11は感光性樹脂の硬化に必要なエネルギーと光パワーとの関係曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例は液晶パネルを平面アレイ画像ソースとして用いた光硬化型3Dプリント装置及びその結像システムを説明した。本発明の実施例は、液晶パネルの寿命の著しい短縮を回避するために、許容可能な低い光パワーで光硬化に必要な輝度を持つ光スポットの画像を投影することができる。
【0030】
図2は本発明の一実施例に係る3Dプリント装置の結像システムを示す。図2を参照し、本実施例に係る結像システム200は、光源201と、集束レンズアレイ202と、偏向レンズ203と、液晶パネル204と、第一の偏光フィルタ205と、第二の偏光フィルタ206と、投影レンズ207及び制御器(図示しない)とを備える。簡単上、本発明と無関係の部品が示されない。
【0031】
光源201は光ビームを射出する。光源201が射出した光の波長は硬化成形の感光性材料により決められる。例えば、UV樹脂を感光性材料とする場合、光ビームは、紫色光乃至紫外線であって、その波長が430nm以下、例えば400−405nmであってもよい。
【0032】
液晶パネル204は光源201の射出光路に位置している。液晶パネル204は複数の画素を含み、主に、光源201が射出したビームの偏光方向を偏向させ、偏光フィルタと合わせて光源が射出したビームの一部を遮断してビーム像を形成する役割を持つ。液晶パネル204の入光側と出光側にそれぞれ第一の偏光フィルタ205と第二の偏光フィルタ206が設けられることで、液晶システムが構築される。第一の偏光フィルタ205と第二の偏光フィルタ206はその偏光方向と同じ方向の光のみを通過させ、且つ両方の偏光方向が互いに垂直している。液晶パネル204が無い場合、第一の偏光フィルタ205と第二の偏光フィルタ206は透過する光を全て遮断する。しかし、二つの偏光フィルタの間に液晶パネル204が介在する。液晶パネル204は液晶が満たされる液晶セルに仕切られた。各液晶セルはそれぞれ一つの画素に対応している。光は第一の偏光フィルタ205を通過した後、液晶パネル204を経て、液晶分子によりある角度だけ偏向され、この偏向角度が液晶パネルに印加された電圧により制御される。これらの光のうち、第二の偏光フィルタ206の偏光方向と同じ方向を持つ成分しか第二の偏光フィルタ206を通過できない。このため、各液晶セルにおける液晶分子の配列方向を個別に制御すれば、光が液晶システムを透過した輝度及び画像を制御できる。
【0033】
3Dプリントに適用する場合、液晶パネル204が形成したビーム像は階調情報だけを含んでも良い。よって、液晶パネル204は、カラーフィルタなどの、表示パネルとして利用される場合に必要な光学素子が無くても良い。
【0034】
本発明の実施例では、第一の偏光フィルタ205は偏光シート又は偏光分離プリズムであってもよい。また、第二の偏光フィルタ206も偏光シート又は偏光分離プリズムであってもよい。
【0035】
液晶パネル204の各画素ごとに、液晶セルの近傍に薄膜トランジスタと配線などを配置する必要があるが、ビームを全て透過させることができない。透過率を含める各種の光エネルギーの損失を考慮し、光源201はある程度の照射パワーに達さなければ、感光性材料を硬化させる、又は硬化の時間を許容できる程度にすることができない。上記のように、波長が430nm以下の光であれば、ある程度のパワーに達すれば、液晶への損傷が大きくなる。従って、感光性材料を硬化させるという条件で光源201の照射パワーをできる限り低減するかは液晶パネルに基づいた結像システムが実用できるかどうかの要因となっている。
【0036】
そこで、本実施例は集束レンズアレイ202を追加し、且つ集束程度に対する制御と合わせて上記目的を達成した。
【0037】
集束レンズアレイ202は液晶パネル204の入光側に設けられた。集束レンズアレイ202は多くの微小な集束レンズを含んでいる。各集束レンズはそれぞれ液晶パネル204の各画素に対応している。図3は本発明の一実施例に係る集束レンズアレイと液晶パネルとの位置関係を示す。本実施例では、集束レンズアレイ202が液晶パネル204の上を覆う。例として、ある集束レンズ402は液晶パネル204のある画素404に対応している。当該画素404は光不透過のブラックマスク404a及び透過領域404bを含んでいる。集束レンズアレイ202は樹脂材料でプレスすることで生産されてもよい。液晶パネルの入光側に配置された集束レンズの集束作用により、より多くの光が液晶パネルを透過し、且つ液晶パネルの出光側の焦点輝度を向上させた。このような構造は、まず、光源201の照射パワーが向上していないため、液晶パネルがより強い紫外線の照射から保護され、また、集束した結果、焦点の輝度が倍になり、当該焦点が最終的に感光性材料に結像され、硬化しやすくなるという二つの有利な効果に繋がる。ここで、焦点の輝度は集束の程度に依存している。
【0038】
本実施例では、後文に詳細に述べたが、所望の光スポットの輝度を得るために、光源201の形状、発散角、及び液晶パネル204までの距離が厳密に設置された。
【0039】
図4図2に示す結像システムにおける1つの画素の光学原理図である。図4を参照し、光源201は光ビームを射出し、その発光面の高さと幅を同じにAとし、光源の発散角が液晶パネル204に必要な照射面積に合わせることができ、光源201と集束レンズアレイ402との距離をL1とし、光ビームが集束レンズアレイ202に照射され、ここで、一部の光ビームがある集束レンズ402に照射され、液晶パネル204のある画素404に対応する。画素404のサイズはをPとする。
【0040】
集束レンズ402は、光源201から射出されたビームを集束するとともに、集束レンズ402の後端に光源201の像401aを生成させる。像401aが投影レンズ207を経て、感光性材料(図示しない)の表面に投影されて光スポットが形成される。
【0041】
集束レンズの前側焦点距離をfとし、後側焦点距離をf’(f’≒f)(「≒」は国際出願時には二重波線)とし、光源201の像の高さをdとし、集束レンズ402と結像面との距離をL2とすれば、ガウス式に従い、
f/L1+f’/L2=1;
L1/L2=A/dとなる。
【0042】
一例として、f=100μm,P=20μm,L1=200mm,A=20mmを上記式に代入すれば、
100μm/200mm+100μm/L2=1;L2=100.05μm;
200mm/100.05μm=20mm/d;d=10μmとなる。
【0043】
上記運算を通して、適当な設計により結像されてなる光スポットの大きさを制御できることが分かる。ここで、光スポットが小さいほど、集束程度が高く、集束後の光スポットの輝度が高くなると意味している。
【0044】
これに対し、液晶パネルを投影表示に適用する場合、設計により、ブラックマスクを通過できる限り、光スポットをできる限り大きくすることにより、コントラストと画質が最優となる。しかし、このような設計は3Dプリントに適しない。
【0045】
実際、集束レンズ402のあり得る製造欠陥、特に光の回折効果の存在により、光スポットのサイズは実際の計算結果より略大きくなり、且つ光スポットの形状も、光源201の元の形状と異なる円形となり得るため、実際の実験で前記パラメータを調整して最終のデータを決定しなければならない。
【0046】
いずれにせよ、このような集束作用は多くの潜在技術効果を有している。まず、集束された光ビームは焦点での輝度が高くなり、例えば、サイズが半分に低下した場合、輝度が元の4倍に増加し、これが感光性材料の感光に有利であり、詳細は後文に説明する。次、光ビームの最大限の透過により、液晶パネルが光ビームを吸収して生成した熱が低減されたため、液晶パネルの寿命延長に寄与する。尚、集束されたビームによる感光性材料の表面に形成された光スポットが小さく、プリント解像度の向上に寄与する。
【0047】
以下、上記潜在技術効果を発揮する方法を説明する。
【0048】
投影レンズ207を、液晶パネル204と3次元プリント装置の感光性材料の表面220との間に、液晶パネル204及び偏光フィルタ205,206により形成されて射出されたビーム像が感光性材料の表面220に投影されるように配置する。再びに図4を参照し、光源201は、液晶パネル204の各画素の後側に像401aを有する。投影レンズ207は図4に示すように、当該像と感光性材料との間に位置している。このため、光源201が液晶パネル204を通じて形成された複数の像は感光性材料の表面220にはっきりと投影された。集束された像401aのサイズと液晶画素のサイズとの比を1:2、つまり面積の比を1:4とすれば、輝度が元の4倍となる。投影することにより像401aのサイズが大きくなっても、この比例は、像401aを感光性材料の表面に投影した時、そのまま維持していた。以下、感光性材料の表面上の光スポットを参照して比例の設定をさらに検討する。
【0049】
図6は本発明の実施例に係る結像システムが感光性材料の表面に一回露光して形成した画像を示す。比較として、光がそのまま図5に示す結像システムのブラックマスクを通過して結像する場合、このブラックマスクのような画像となる。図5図6を比較すれば、集束レンズアレイ202に集束された後、画像における光スポットのサイズが小さくなり、光スポットの輝度がその分、向上したことが分かる。上記説明した適当な光学設計により集束の程度を調整して、光スポットのサイズの縮小比例を決定する。例えば、集束された光スポットのサイズ(像401aの感光性材料表面への投影サイズ)と画素サイズ(液晶画素の感光性材料表面への投影サイズ)との比を1:2、つまり面積の比を1:4とすれば、輝度はこれに応じて元の4倍となる。このため、感光性材料表面へのエネルギーの合計は減少していない。
【0050】
設計された光スポットのサイズと画素サイズとの比が1:2である場合、実際の光スポットのサイズと画素サイズとの比は、上記集束レンズ402の製造欠陥及び光の回折効果などの要因を考慮して、1:2より略大きくなる。本実施例による結像システムは適切な誤差、つまり上記サイズの比が約1:2であることを許容する。
【0051】
また、集束された光スポットのサイズと画素サイズとの比を約1:3又は1:4としてもよい。ここで整数倍を取る原因は、後続の偏向の時、各光スポットの空白部分に新たな光スポットを挿入する必要があることを考慮したからである。
【0052】
図6に示すように、感光性表面上での一回露光後の画像において、光スポットの間に、空白が残されている。そこで、多数回の露光によりこれらの空白を充填して、光スポットを感光性材料の全面に形成させる。
【0053】
本実施例では、液晶パネル204の出光側であって、例えば液晶パネル204と投影レンズ207との間(又は投影レンズ207の後側)に、偏向レンズ203が設けられている。偏向レンズ203は、ビーム像の感光性材料の表面220への投影位置を微調整するために、少なくとも一つの軸を回りに偏向できる。上記軸は全て結像システムの光軸zに垂直し、偏向レンズが液晶パネル204に平行している(光軸zに垂直している)時、光は垂直に偏向レンズ203に照射され、この場合、屈折現象が発生することなく、光aがそのまま偏向レンズ(図7に示す)を通過し、偏向レンズ203がある軸を回りにある角度だけ斜めになる場合、光は空気から偏向レンズ203に進入する時、屈折が発生し、また偏向レンズ203から再び空気に進入する時、再び屈折が発生し、そして、二回の屈折は、屈折角度が同じであり、方向が反対であり、屈折後の光bは、方向を変更せずに前進するが、(図8のように)わずかな変位が発生した。例として、偏向レンズの当該軸を図7に示す軸xとする。また、当該軸は、軸xを含み且つ光軸zに垂直した平面内に位置し、且つ軸xに垂直した軸y(図示しない)であってもよい。本発明の実施例では、偏向レンズ203は軸xを回りに偏向できるだけでなく、軸yを回りに偏向することもできる。
【0054】
上記偏向は、多数回の露光と組合わせて、光スポットが感光性材料の全面に分布するように、各回の露光によるビーム像を重ねてもよい。具体的に、光源201に多数回の露光を指示し、露光ごとに偏向レンズ203が偏向するように指示することにより、各回の露光によるビーム像を感光性材料の表面の異なる部位に投影する。図10は本発明の実施例に係る結像システムが感光性材料の表面に対して4回露光して形成した画像を示す。図10を参照し、一回目の露光の際に、投影画像Aが形成され、二回目の露光の際に、偏向レンズ203が軸xを回りに偏向することにより、ビーム像を図中の水平方向に沿ってやや移動させ、二つの列の光スポットの間の空白に投影させることで投影画像Bを形成し、三回目の露光の際に、偏向レンズ203が軸yを回りに偏向することにより、ビーム像を図中の垂直方向に沿ってやや移動させ、二つの行の光スポットの間の空白に投影させて投影画像Cを形成し、同様に、投影画像Dを形成する。投影画像Dは既に感光性材料の表面220の全体で分布している。
【0055】
実際に実施する際に、結像システム200の制御器を利用して、光源201に多数回の露光を指示するとともに、露光ごとに当該偏向レンズ203に対して露光に応じてxとyという二つの方向上の偏向を行うように指示すればよい。
【0056】
本発明のもう一つの実施例では、図9に示すように、液晶パネル204は偏向レンズ203の代りに、マイクロ変位駆動機構208が接続された。マイクロ変位駆動機構208は、ビーム像の感光性材料の表面220への投影位置を微調整するために、液晶パネルを、x方向及びy方向に移動するように駆動できる。ここで、x方向とy方向は同一の平面にあり、且つこの平面は結像システムの光軸zに垂直している。マイクロ変位駆動機構208が液晶パネルの変位を駆動していない場合、液晶パネル204のビーム像は感光性材料220の第一の部位にあり、マイクロ変位駆動機構208は、液晶パネル204が一方の方向(x又はy方向)へ移動するように駆動している場合、液晶パネル204のビーム像は全体的に液晶パネル204に応じて微小な変位を発生した。
【0057】
マイクロ変位駆動機構208は圧電セラミックスであってもよい。
【0058】
尚、各回の露光によるビーム像の重畳が当該感光性材料の全面に分布しているが、各回の露光によるビーム像の当該感光性材料の表面220における位置は基本的に互いに重ね合っていないことを留意されたい。これは、画素サイズと光スポットのサイズとの比を整数にし、且つ偏向のステップをちょうど光スポットのサイズにすることで実現したのである。このような基本的に重畳しない設置では、重畳領域の受けた照射が平均以上となって硬化の不均一を招くことを回避できる。光の回折効果などの要因を考慮して、わずかな重畳が光スポットの非矩形縁部の欠きの補助に寄与することが理解しうる。よって、光スポット同士は完全に重ね合わなくても構わない。また、ビーム像の重畳が当該感光性材料の全面に分布しているが、ビーム像の部位が全て輝点ではなく、暗点が存在する場合もあると理解しうる。
【0059】
本発明による一実施例では、各回の露光によるビーム像は同じ画像情報を含んでもよい。図10を例として、投影画像Dでは、破線枠内の4つの光スポットは同じ画像情報を含んでいる。この実施例では、露光際の感光性材料の表面への光スポットの輝度が向上したという利点がある。
【0060】
上記の例では、光スポットのサイズを画素サイズの半分にする場合、4回の露光を行うように構成されている。このように、光スポットのサイズを画素サイズの3分の1にする場合、9回の露光を行い、また画素サイズの4分の1にする場合、16回の露光を行う、というように推測できる。
【0061】
続いて、露光の輝度が感光性材料の感光に寄与する原理を説明する。感光性材料は一定量の光に照射されてから、硬化時間と呼ばれる一定時間内に硬化する。光の照射パワー、つまり感光性材料の単位時間内に受けた照射エネルギーは、硬化時間に著しい影響を与える。論理上、一定面積の感光性材料の硬化に必要なエネルギーは、W=P*t、
に表われ、ここで、Pは樹脂に照射された光のパワーであり、tは露光時間である。
【0062】
つまり、光パワーを増加して露光時間を低減し、或いは光パワーを低減して露光時間を増加することで同じエネルギーを達成して同様の硬化効果が得られ、つまり「相反法則」と呼ばれる。しかし、感光性樹脂の場合、相反法則が歪みになる場合がある。
【0063】
図11は感光性樹脂の硬化に必要なエネルギーと光パワーとの関係曲線を示す。図11に示すように、x軸は照射パワーを示し、y軸は硬化に必要なエネルギーWを示す。曲線は、異なる照射パワーでの一定面積の感光性材料の硬化に必要なエネルギーを示す。照射パワーがP以下である場合、必要なエネルギーWは無限大となり、t=W/Pであるため、つまり無限大の時間が必要である。曲線は線形部(図示で約水平の部分)及び非線形部(図示で斜線の部分)を含む。線性部では、照射パワーの増加に従い、必要な硬化時間が照射パワーに反比例し、必要な硬化時間が基本的に変化しない。一方、非線性部では、照射パワーの低下に従い、必要な硬化時間が非線性的に急増し、必要な硬化時間が非線性的に増加する。
【0064】
まとめて言えば、感光性樹脂は下記の特性を持っている。
【0065】
1.光の照射パワーが一定の下限Pに達さなければ、硬化が発生しなく、このパワー(閾値パワーと呼ばれる)の以下の場合、どのように露光時間を延ばしても、硬化ができない。
2.線性部である限り、基本的に上記「相反法則」に合致している。
3.しかし、Pに近い領域では、照射パワーのわずかな低下であっても、樹脂の硬化を同様の程度にするために、露光時間を大幅に増加しなければならない。
【0066】
感光性樹脂の必要な照射波長が430nmであるため、この波長の光は強すぎ、液晶パネル内の液晶に有害である。そこで、液晶パネルを用いた3Dプリント装置では、その照射強さを低く選択し、例えば、Pよりわずかに大きい位置に選択して、液晶パネルの寿命を延長する。これは、露光時間を大幅に増加しなければ感光性樹脂が硬化できないと意味しており、感光速度は非常に低下した。
【0067】
本発明の実施例は、光スポットを縮小し、光スポットの輝度を数倍も増加することで、結像システムが、露光時間を大幅に増加しなければ樹脂の硬化ができないという非線性部から離脱し、相対線性部に入ることにより、感光性材料の硬化時間が大幅に低下し、感光速度が向上した。それと同時に、硬化に必要なエネルギーの合計W(これも液晶パネルを通過する光エネルギーである)が低減され、液晶パネルの寿命が延ばされた。
【0068】
本発明のもう一つの実施例では、各回の露光によるビーム像は異なる画像情報を含む。図10を例として、投影画像Dでは、破線枠内の4つの光スポットは互いに異なる画像情報を含んでいる。これは、画像の解像率が元の4倍になることを意味する。よって、3Dプリントの精度は著しく向上した。
【0069】
本発明の上記実施例は、集束レンズアレイを設けることにより、液晶パネルに照射された光ビームが集束され、液晶パネルにおける各画素の透過領域を透過して液晶パネルをできる限り通過することができ、液晶パネルの不透過部分による遮断を低減し、ひいては回避することができる。そして、ビームの集束により、感光性材料の表面に照射された光スポットの面積が縮小され、輝度が著しく向上し、液晶パネル全体の光透過量が小さい場合であっても、感光性樹脂の感光閾値に達成し、感光速度を向上させることができる。さらに、偏向レンズのマイクロ変位に応じて、複数回の露光により、感光性材料の表面に露光による光スポットを充填することができ、そして各回の露光に対して異なる結像情報を利用し、結像の解像率、ひいてはプリントの精度を向上させることができる。
【0070】
本発明は、好ましい実施形態で以上のように開示されたが、本発明を限定するものではなく、本発明の精神と範囲から離脱しない限り、任意の当業者は若干の修正と補完を行うことができるため、本発明の保護範囲は請求の範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】