(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501933(P2017-501933A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】シートクッション長を調節するシートクッション長調節装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20161222BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
B60N2/02
A47C7/14 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-544539(P2016-544539)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2014051956
(87)【国際公開番号】WO2015113633
(87)【国際公開日】20150806
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516195292
【氏名又は名称】シュクラ ゲレーテバォ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SCHUKRA GERAETEBAU GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デッペ、リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ユンカー、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーホーファー、ギュンター
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BD19
(57)【要約】
シートクッション長調節装置(10)は、支持部(11)と、支持部(11)に変位可能に搭載され、シートクッションの少なくとも一部に装着されるように構成される調節部材(12)と、アクチュエータと、を備える。アクチュエータは支持部(11)と調節部材(12)に連結される。アクチュエータは、支持部(11)に対して調節部材(12)を変位させるように構成される。アクチュエータは、電力駆動部(31)と、減速ギアと、減速ギアの出力手段の回転運動を調節部材(12)と支持部(11)との間の線形変位に変換する運動変換機構(41)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部(11)と、
前記支持部(11)に変位可能に搭載され、シートクッション(4、5)の少なくとも一部に連結するように構成される調節部材(12)と、
前記支持部(11)および前記調節部材(12)に連結され、前記支持部(11)に対して前記調節部材(12)を変位させるように構成されるアクチュエータであって、
電力駆動部(31)と、
前記電力駆動部(31)に連結される入力手段(32)と、出力手段(35)とを有する減速ギア(32〜35)と、
前記減速ギア(32〜35)の前記出力手段(35)の回転運動を、前記調節部材(12)と前記支持部(11)との間の線形変位に変換する運動変換機構(21;41、42;61、62;71、72;91〜94)と、を備えるアクチュエータと、を備えるシートクッション長調節装置。
【請求項2】
前記運動変換機構(21;41、42;61、62;71、72;91〜94)がスピンドルドライブ(21;41、42;61、62;71、72)を備え、前記スピンドルドライブ(21;41、42;61、62;71、72)が、
雄ねじを有するスピンドル(41;61;71)と、
前記スピンドル(41;61;71)の前記雄ねじと係合する雌ねじを有するスピンドルナット(42;62;72)と、を備える、請求項1に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項3】
前記スピンドル(41;61)が可撓スピンドルである、請求項2に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項4】
前記スピンドル(41;61)が、
コア(47;67)と、
前記コア(47;67)の周囲に巻き回されて、前記雄ねじを形成する螺旋ワイヤ(48;68)と、を備える、請求項2または3に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項5】
前記コア(47;67)が、複数の金属ワイヤから形成されるケーブルを備える、請求項4に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項6】
前記スピンドル(41)と前記スピンドルナット(62;72)のうちの一方が、回転に抗して固定されるように前記調節部材(12)に搭載される、請求項2〜5のいずれか一項に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項7】
前記スピンドル(61;71)とスピンドルナット(42)とのうちの他方が、前記減速ギア(32〜35)の前記出力手段(35)に連結され、回転自在に搭載される、請求項6に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項8】
前記スピンドル(41;61;71)が、前記スピンドル(41;61;71)に成形される端止め(43、45;63)を備える、請求項2〜7のいずれか一項に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項9】
前記運動変換機構がラックおよびピニオン駆動(91〜94)を備え、前記ラックおよびピニオン駆動(91〜94)が、
前記減速ギアの前記出力手段(35)に連結されるピニオン(93)と、前記ピニオン(92)と係合するラック(91)と、を備える、請求項1に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項10】
前記減速ギア(32〜35)が、少なくとも1つのウォーム減速ギアを備える、先行する請求項のいずれか一項に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項11】
前記アクチュエータが、前記電力駆動部(31)と前記減速ギア(32〜35)とを搭載するハウジング(30;80)を備え、
前記ハウジング(30;80)が前記支持部(11)に堅固に取り付けられる、先行する請求項のいずれか一項に記載のシートクッション長調節装置。
【請求項12】
シートクッション(4、5)を備えるシート(2)と、
先行する請求項のいずれか一項に記載のシートクッション長調節装置(10)と、を備え、前記調節部材(12)が前記シートクッション(4、5)に連結されて、前記シートクッション(4、5)の長を調節する車両シート。
【請求項13】
前記アクチュエータが前記車両シート(1)のシート底面(3)に搭載され、前記シートクッション長調節装置(10)が、前記シート底面(3)に対して前記調節部材(12)を変位させるように構成される、請求項12に記載の車両シート。
【請求項14】
電力駆動部(31)と、前記電力駆動部(31)に連結される入力手段(32)と出力手段(35)とを有する減速ギア(32〜35)と、前記減速ギア(32〜35)の前記出力手段(35)の回転運動を線形運動に変換する運動変換機構(21;41、42;61、62;71、72;91〜94)と、を備えるアクチュエータを用いてシートクッション長(4、5)を調節する方法であって、前記シートクッション(4、5)の少なくとも一部と前記運動変換機構(21;41、42;61、62;71、72;91〜94)が、支持部(11)に変位可能に搭載される調節部材(12)に連結され、前記方法が、
前記アクチュエータの前記電力駆動部(31)を始動して、前記支持部(11)に対して前記調節部材(12)を変位させること、を備える方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項によるシートクッション長調節装置(10)を用いて実行される請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート用の調節装置に関する。本発明は特に、電力駆動部を用いて、シートクッションを調節するための調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様なシートに、シートの少なくとも一部を調節できる要素が備えられている。このような調節可能な部分の例は、調節可能な腰部支持部、調節可能な側部支持部、または様々なマッサージ機能などである。ユーザにシートの少なくとも一部を調節するオプションを提供するシートは、快適性を高めるために使用される。これは、ユーザが長時間シートに座る可能性が高いとき、特に重要であろう。代表例は、自動車シートまたはその他の車両シートなど、輸送手段において使用されるシートである。例えば、自動車用シート、バス用シート、またはその他の輸送手段用シートの場合、シート乗員は、各々のシートに座って長時間を過ごす場合がある。
【0003】
様々な乗員のサイズに対応するため、シートクッションのサイズを調節することができるシートを提供するのが望ましい。これは、シートクッション長を増大および/または低減することによって達成可能である。これによって、ユーザの太ももが乗るシートクッションでは、例えばシートの前後方向で測定される長を調節することができる。
【0004】
モータ駆動調節装置は、手動調節装置を超える様々な利点を提供する。ユーザの快適性を高めることができる。また、モータ駆動調節装置は、例えば、シートを所望の状態にするようにモータを自動的に制御することができる車両のコントローラの制御下で、自動化に適した電気インタフェースも提供する。モータ駆動調節装置の提供する利点にかかわらず、多くのシートではパッケージングが問題である。車両シートでは、様々な快適性機能を提供するため、シートクッション長の調節と組み合わせた調節可能な側部支持部など、多数の要素をシートに組み込み可能であることが望ましい。従来のシート調節装置において使用されるモータのサイズおよび重量が、シートのサイズと重量に追加される場合がある。また、従来のモータ駆動調節装置は設置するのが複雑であり、調節装置の特徴を様々な顧客のニーズに容易に適合させるように構成することができない可能性がある。結果として生じる作業負荷はシートのコストを増大させる。かなり剛直で頑丈な線形アクチュエータを基にする従来の調節装置の構造は、車両シートなどに座る際に生じる荷重下で破損しやすい可能性もある。
【発明の概要】
【0005】
当業界では、シートクッション長を調節する、改良された調節装置が求められている。特に、当業界においては、コンパクトな構造のシートクッション長調節装置が求められる。当業界では、車両シートなどのシートに容易に搭載可能なシートクッション長調節装置が必要とされる。
【0006】
本発明の実施形態によると、独立請求項で定義されるようなシートクッション長調節装置およびシートクッション長調節方法が提供される。さらに、シートクッション長調節装置を備えるシートが提供される。従属請求項は実施形態を定義する。
【0007】
一実施形態に係るシートクッション長調節装置は、支持部、調節部材、アクチュエータを備える。調節部材は、支持部に変位可能に搭載され、シートクッションの少なくとも一部に連結されるように構成される。アクチュエータは支持部と調節部材に連結される。アクチュエータは、支持部に対して調節部材を変位するように構成される。アクチュエータは、電力駆動部と、電力駆動部に連結される入力手段と出力手段とを有する減速ギアと、減速ギアの出力手段の回転運動を、調節部材と支持部との間の線形変位に変換する運動変換機構と、を備える。
【0008】
シートクッション長調節装置は、コンパクトな設置空間に設置することができる。減速ギアは、トルク増大ギアボックスとしての役割を果たす。これにより、コンパクトで軽量の電動モータを電力駆動部として使用することができる。
【0009】
支持部は、シート底面に装着されるように構成してもよい。支持部は、シート底面の一部であってもよい。
運動変換機構はスピンドルドライブを含んでいてもよい。それによって、シートクッション長を調節する線形始動を、コンパクトな設置空間で実行することができる。
【0010】
スピンドルドライブは、雄ねじを有するスピンドルを備えていてもよい。スピンドルドライブは、スピンドルの雄ねじと係合する雌ねじを有するスピンドルナットを備えていてもよい。
【0011】
スピンドルは可撓スピンドルであってもよい。それによって、シート用途で起こり得る荷重に対応しつつ、故障リスクを軽減することができる。
スピンドルは、1200Nの軸方向荷重未満の軸方向荷重が印加されるときに弾性変形する可撓スピンドルであってもよい。
【0012】
スピンドルは、コアと、コアの周囲に巻き回されて雄ねじを形成する螺旋ワイヤと、を備える。このようなスピンドルは、軸方向荷重と横方向荷重下で弾性特徴を提供しつつ、高い耐久性を提供する。
【0013】
コアは、複数の金属ワイヤで形成されるケーブルを備えていてもよい。このようなスピンドルは、軸方向荷重と横方向荷重下で弾性特徴を提供しつつ、高い耐久性を提供する。
スピンドルは、回転に抗して固定されるように搭載してもよい。スピンドルは、調節部材と併せて支持部に対して変位可能であるように調節部材に搭載してもよい。スピンドルナットは回転自在に搭載してもよい。スピンドルナットは支持部に搭載してもよい。スピンドルナットは、電力駆動部と減速ギアとを収容する、アクチュエータのハウジングに回転自在に支持されてもよい。それによって、容易に設置できるコンパクトなモジュール式設計が得られる。
【0014】
スピンドルナットは、回転に抗して固定されるように搭載されてもよい。スピンドルナットは、調節部材と併せて支持部に対して変位可能であるように、調節部材に搭載してもよい。スピンドルナットは回転自在に搭載してもよい。スピンドルナットは支持部に搭載してもよい。スピンドルは、電力駆動部と減速ギアとを収容する、アクチュエータのハウジングに回転自在に支持されてもよい。それによって、容易に設置できるモジュール式設計が得られる。
【0015】
スピンドルが回転自在に搭載されるとき、スピンドルは減速ギアの出力手段と一体的に形成されるオーバーモールドを有していてもよい。出力手段は減速ギアのウォームギアであってもよい。
【0016】
スピンドルナットが回転自在に搭載されるとき、スピンドルナットは減速ギアの出力手段と一体的に形成されてもよい。出力手段は減速ギアのウォームギアであってもよい。
スピンドルまたはスピンドルナットが回転自在に搭載されているか否かにかかわらず、スピンドルは、スピンドルに成形される端止めを備えていてもよい。端止めはプラスチック製でもよい。端止めは当接面を有していてもよい。スピンドルナットまたはアクチュエータハウジングを端止めの当接面に当接させると、支持部に対する調節部材の変位のための端位置を画定することができる。これにより、支持部に対する調節部材の移動量は、コスト効率よく制限することができる。
【0017】
端止めは、スピンドルの装着用の装着機能をさらに備えていてもよい。
回転自在に搭載されるスピンドルの場合、装着機能は、スピンドルを支持部または調節部材に回転自在に搭載するように構成してもよい。
【0018】
回転に抗して固定されるように搭載されるスピンドルの場合、装着機能は、長軸を中心にしたスピンドルの回転を防止するように、スピンドルを支持部または調節部材に装着するために構成してもよい。装着機能は、スピンドルの長軸を横断する軸を中心にしてスピンドルを旋回または偏向させるように構成してもよい。
【0019】
運動変換機構はラックおよびピニオン駆動を備えていてもい。ラックおよびピニオン駆動は、減速ギアの出力手段に連結されるピニオンと、ピニオンと係合するラックとを備えていてもよい。ラックおよびピニオン駆動を含む運動変換機構は、簡易な構造を有する。
【0020】
ピニオンは回転自在に支持部に搭載してもよい。ラックは調節部材に固定してもよい。
ラックおよびピニオン駆動は、減速ギアの出力手段に連結される追加のピニオンと、追加のピニオンと係合する追加のラックを備えていてもよい。
【0021】
ラックおよび追加のラックは、調節部材の変位方向に沿って拡張させ、変位方向に横断して相互にオフセットさせてもよい。
ピニオンと、設けられる場合は追加のピニオンとは、ピニオンハウジングに配置してもよい。ラックと、設けられる場合は追加のラックとは、ピニオンハウジングを通って延在するように構成してもよい。
【0022】
減速ギアは少なくとも1つのウォーム減速ギアを備えていてもよい。減速ギアは2段ウォーム減速ギアを備えていてもよい。減速ギアは、耐トルク的に電力駆動部の出力シャフトに装着される第1のウォームを備えていてもよい。減速ギアは、第1のウォームと係合する第1のウォームホイールを備えていてもよい。第1のウォームホイールの回転軸は、第1のウォームの回転軸と横断していてもよい。減速ギアは、第1のウォームホイールと一体的に形成される第2のウォームを備えていてもよい、あるいは耐トルク的にその他の方法で第1のウォームホイールに装着してもよい。第2のウォームの回転軸は、第1のウォームホイールの回転軸と一致していてもよい。減速ギアは、第2のウォームと係合する第2のウォームホイールを備えていてもよい。第2のウォームホイールの回転軸は、第2のウォームの回転軸に横断していてもよい。第2のウォームホイールは減速ギアの出力手段を形成してもよい。上記減速ギアは、コンパクトな設計を提供しつつ、シートクッション長を調節するのに適した減速とトルク増とを提供する。
【0023】
第1のウォーム、第1のウォームホイール、第2のウォーム、第2のウォームホイールはすべて、アクチュエータのハウジングに回転自在に搭載してもよい。
アクチュエータは、電力駆動部および減速ギアを搭載するハウジングを備えていてもよい。ハウジングは支持部に堅固に取り付けてもよい。
【0024】
シートクッション長調節装置の設置状態では、アクチュエータのハウジングは、シートのシート底面に対して常時静止されるように搭載してもよい。
シートクッション長調節装置は、シートのシート底面へ装着されるように構成されるモジュール式ユニットであってもよい。シートクッション長調節装置は、運動変換機構が直接シート底面に装着されないように構成してもよい。
【0025】
シートクッション長調節装置は、支持部のみがボルト、ねじ、またはその他の装着装置を用いてシートのシート底面に装着されるように構成してもよい。
シートクッション長調節装置はシートクッションを備えていてもよい。調節部材は、シートクッションの一部に装着して、シートクッションの該一部を線形に変位させることができる。シートクッションは弾性変形させてもよい、および/またはシートクッションの少なくとも一部は、シートクッション長調節装置の動作下で変位可能であってもよい。シートクッションは、織物または不織布、および裏当て材料であってもよい弾性カバーを備えることができる。裏当て材料は主面を有していてもよい。裏当て材料は、荷重が主面に垂直な方向に印加されるときに弾性変形するように構成してもよい。裏当て材料は、荷重が主面に平行な方向でシートクッション長調節装置によって印加されるときに弾性変形するように構成してもよい。裏当て材料は、ポリウレタン(PU)発泡体などの発泡体であってもよい。裏当て材料は、熱的活性化結合繊維およびマトリックス繊維を含む繊維クッションを備えていてもよい。
【0026】
シートクッションは、シートクッション長調節装置がシートクッション長を調節するときに裏返しに変形させるように構成してもよい。
シートクッションは、調節部材の少なくとも一部を収容するポケットを形成してもよい。
【0027】
シートクッション長調節装置は、電力駆動部の始動を制御するコントローラを備えていてもよい。コントローラは車両制御部であってもよい。コントローラは、複数の正規ドライバーのうちの誰がシートに座るかに応じて、モータを自動的に制御してシートクッション長を調節するように構成してもよい。コントローラは、ドライバーが使用する車両認証要素に基づき、例えば、ドライバーが使用するキーまたはキーレス認証要素に基づき、ドライバーを自動的に特定するように構成してもよい。
【0028】
電力駆動部は電動モータであってもよい。
電動モータの回転方向は可逆性であってもよい。次に、シートクッション長は、モータシャフトの回転方向を制御することによって、選択的に増減させてもよい。これは、電動モータに供給される電力の極性を反転させる、あるいは回転方向を確定する制御信号を電動モータに供給することによって、様々な方法で実行することができる。
【0029】
一実施形態に係る車両シートは、一実施形態に係るシートクッションとシートクッション長調節装置とを有するシートを備える。シートクッション長調節装置がシートクッションに連結されて、シートクッション長を調節する。
【0030】
車両シートは自動車シートであってもよい。車両シートはトラックシートであってもよい。車両シートは、バス、電車、または航空機用のシートなど、公共交通機関のシートであてもよい。
【0031】
アクチュエータは、車両シートのシート底面に装着してもよい。シート底面は、シートクッション長調節装置とシートクッションの両方を支持することができる。シートクッション長調節装置の少なくとも電力駆動部と減速ギアは、シート底面とシートクッションとの間に配置することができる。また、電力駆動部と減速ギアは、シート底面と調節部材の両方を電力駆動部とシートクッションの間に介在させるように設置してもよい。
【0032】
シートクッション長調節装置は、シート底面に対して調節部材を変位させるように構成してもよい。
車両シートは背もたれを備えていてもよい。
【0033】
別の実施形態によれば、シートクッション長の調節方法が提供される。この長は、電力駆動部と、電力駆動部に連結される入力手段と出力手段とを有する減速ギアと、減速ギアの出力手段の回転運動を線形運動に変換する運動変換機構と、を備えるアクチュエータを用いて調節される。シートクッションの少なくとも一部と運動変換機構は、支持部に変位可能に搭載される調節部材に連結される。該方法は、アクチュエータの電力駆動部を作動して、支持部に対して調節部材を変位させることを備える。
【0034】
該方法の他の特徴およびその各々によって得られる効果は、実施形態に係るシートクッション長調節装置および車両シートを参照して説明する特徴に対応してもよい。
該方法は、本明細書に記載する各種実施形態のいずれかに係るシートクッション長調節装置を用いて実行することができる。
【0035】
別の実施形態によれば、一実施形態に係るシートクッション長調節装置をシートに搭載する方法が提供される。該方法は、電力駆動部と減速ギアをシート底面またはシートの構造部材に収容するハウジングを搭載することを備える。
【0036】
該方法は、シート底面に形成する凹部に支持部を配置することと、支持部をシート底面に固着することと、を備えていてもよい。
シートクッション長を調節するため、各種実施形態に係る装置および方法を利用することができる。車両シート、特に自走車両シートのシートクッション長を調節するため、各種実施形態に係る装置および方法を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図3】一実施形態に係るシートクッション長調節装置の斜視図。
【
図4】
図3のシートクッション長調節装置の部分図。
【
図5】装着状態の
図3のシートクッション長調節装置を示す図。
【
図6】別の実施形態に係るシートクッション長調節装置の斜視図。
【
図7】
図6のシートクッション長調節装置の部分図。
【
図8】
図6のシートクッション長調節装置の部分図。
【
図9】別の実施形態に係るシートクッション長調節装置の斜視図。
【
図10】
図9のシートクッション長調節装置の部分図。
【
図11】一実施形態に係るシートクッション長調節装置の斜視図。
【
図14】
図11のシートクッション長調節装置用のアクチュエータの部分図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の代表的実施形態を、図面を参照して説明する。自走車両シートなどの特定の適用分野においていくつかの実施形態を説明するが、実施形態はこの適用分野に限定されない。各種実施形態の特徴は、特に断りのない場合、相互に組み合わせることができる。図面では、類似の符号は類似の構成要素を指す。
【0039】
図1は、一実施形態に係る車両シート1の概略図である。車両シート1は、自動車シートまたは別の自走車両シートとして構成してもよい。
一般に、車両シート1はシート2と背もたれ9を備える。シート2は、シート2に構造上の安定性を提供する構造部材を備えていてもよい。構造部材はシート底面3および/またはシートフレームであってもよい。シート2はシートクッションを備える。シートクッションはカバー5を備えていてもよい。カバー5は織物または不織布であってもよい。シートクッションは、快適性を高めた弾性裏材4を備えていてもよい。弾性裏材4は椅子張りの材料であってもよい弾性裏材4は、例えば発泡材や繊維材料から成る、あるいは発泡材や繊維材料を含むことができる。シートクッション長調節装置がシートクッション長を拡大または低減させるとき、カバー5は裏返しに変形可能である。シートクッション長を調節する際、弾性裏材4を弾性変形させることができる、および/または、弾性裏材4の少なくとも一部をカバー5に対して変位させることができる。
【0040】
車両シート1は、シートクッションに連結して、シートクッション長を調節するシートクッション長調節装置を含む。シートクッション長調節装置は、シート2内に画定される空隙に設置されており、シートクッション長を可逆的に変更することによって車両シート1の外形を変更するように動作可能である。シート乗員の太ももが乗るシートクッションの長はこれにより調節することができる。
【0041】
シートクッション長は、シートクッション長調節装置を用いて様々な方法で調節することができる。例えば、カバー5と弾性裏材4は、シートクッション長調節装置の動作下で弾性変形させてもよい。代替的にまたは追加的に、弾性裏材4は、シートクッション長調節装置の動作下でシート内に配置してもよい。代替的にまたは追加的に、弾性裏材4は、相互に変位可能な少なくとも2つの部分を備えていてもよく、シートクッション長調節装置4は、弾性裏材4の部分の一方に対して弾性裏材4の部分の他方を変位させるように構成してもよい。シートクッション長調節装置は、シートクッションの対向縁部間の距離を調節するように構成してもよい。
【0042】
以下、より詳細に後述するように、一般に、シートクッション長調節装置は、支持部11と、支持部11に対して変位可能である調節部材12とを含む。調節部材12は、支持部11に対して平行移動するように変位可能に支持部11に搭載してもよい。支持部11は、シート底面3の一部としてもよく、シート底面11と一体的に形成してもよく、あるいはボルト、ねじ、またはその他の装着技術によってシート底面3に固着してもよい。
【0043】
シートクッション長調節装置は電力駆動部と減速ギアアセンブリ20を含む。電力駆動部と減速ギアは、支持部11に固着する、あるいは支持部11と一体的に形成することのできるハウジングに収容してもよい。電力駆動部は電動モータであってもよい。電力駆動部は回転モータであってもよく、該モータは、出力シャフトとしてモータから延在するモータシャフトを有する。減速ギアは、モータシャフトに連結される入力手段と、出力手段とを有していてもよい。減速ギアは、減速、例えば、入力手段の角速度に対する出力手段の角速度の低減と、トルク増大を提供することができる。
【0044】
シートクッション長調節装置は、回転−線形運動変換機構21を含む。運動変換機構21は、減速ギアの出力手段の回転運動を、調節部材12の並進変位に変換するように動作可能である。運動変換機構21は、様々な構造のうち任意の構造をとることができる。運動変換機構21は、スピンドルと、スピンドルとねじ係合するスピンドルナットとを有するスピンドルドライブを備えていてもよい。運動変換機構21はラックおよびピニオン駆動を備えていてもよい。
【0045】
調節部材12はシートクッションに連結される。各種連結機構のうち任意のものを使用することができる。調節部材12の前部は、シートクッションによって画定されるポケットに収容して、調節部材12をシートクッションの前端に連結する連結構造13を実装してもよい。代替的にまたは追加的に、調節部材12は、例えばボルト、ねじ、リベット、接着剤、溶接、またはその他の技術によって、連結構造13を形成する1つまたは複数の装着技術を用いてシートクッションの前部に装着してもよい。
【0046】
シートクッション長調節装置の電力駆動部を始動すると、調節部材12が支持部11に対して変位される。調節部材12は、シート2の後端および/または背もたれ9に対して変位される。車両に設置される車両シート1の場合、調節部材12がシート底面に対して変位される一方、シートクッション長調節装置の電力駆動部が始動されても、例えば車両床面に対してシート底面は変位しない。
【0047】
シートクッション長調節装置の電力駆動部を始動することによって、モータシャフトの回転方向に応じて、シートクッション長をインクリメントまたはデクリメント8によって変更してもよい。モータシャフトが第1の方向に回転するように電力駆動部を制御することによって、
図2に示すように、シートクッション長をインクリメント8分、増加させることができる。モータシャフトが第1の方向と反対の第2の方向に回転するように電力駆動部を動作させることによって、シートクッション長を低減させてもよい。これによって、シート2の形状、特にシートクッション長は、様々な乗員のサイズ、および様々な太もも長と着座姿勢に対応するように調節することができる。
【0048】
図2に示すように、シートクッション長調節装置の電力駆動部を始動して、シートクッションの前端を距離8だけ前方向に変位させてもよい。シートクッション長とシート2の外形をそれによって変更することができる。電力駆動部の出力手段シャフトが逆方向に回転するように電力駆動部が始動されると、シートクッションの前端は、シートクッション長調節装置の動作下で後方に変位させてもよい。
【0049】
コントローラ7はアクチュエータの動作を制御してもよい。コントローラ7は、電気接続を通じてアクチュエータに接続してもよい。コントローラ7は、電気接続部に印加される電圧を制御することによって、アクチュエータの始動を制御してもよい。コントローラ7は、電動モータに供給される電圧の極性を制御してもよい。制御は様々な方法で実行することができる。ユーザ動作の制御下でユーザがシートクッション長を調節できるように、コントローラ7に連結されるユーザインタフェース6を設けてもよい。代替的にまたは追加的に、コントローラ7は、特定のドライバーが認識されることによって、シートクッション長を各ドライバーにとって適切な値に設定するようにアクチュエータを自動的に制御してもよい。車両認証素子(車両キーまたは対応するキー状の素子)に記憶される識別子と、様々な識別子に対してシートクッション長を記憶する参照テーブルとに基づき、適切なシートクッション長を自動的に特定することができる。コントローラ7は、要求に応じて識別子が車両認証素子から読み込まれるときにアクチュエータを作動することによって、シートクッション長の構成を自動的に設定してもよい。コントローラ7は、シートクッション長調節装置のアクチュエータの現在位置を記憶するメモリを含んでいてもよい。代替的にまたは追加的に、コントローラ7は、衝突などの重大事証に応答して、アクチュエータを自動的に制御してもよい。
【0050】
図3〜
図14を参照して、実施形態に係るシートクッション長調節装置の構造を詳細に説明する。シートクッション長調節装置は、一実施形態に係る車両シート1で使用することができる。
【0051】
一般に、シートクッション長調節装置のアクチュエータは電力駆動部と減速ギアを含む。減速ギアは、回転−線形運動変換機構を駆動する出力手段を有する。減速ギアは自己係止ギアであってもよい。代替的にまたは追加的に、回転−線形運動変換機構は自己係止的であってもよい。これにより、たとえ電力駆動部が始動されていなくても、シートクッション長を設定位置に確実に保持し続けることができる。
【0052】
図3は、一実施形態に係るシートクッション長調節装置10の斜視図である。シートクッション長調節装置10は、予め製造し、一体としてシート底面3に設置することのできるモジュール式ユニットである。シートクッション長調節装置10は、支持部11のみをシート底面3に固着しなければならないように構成してもよいが、シートクッション長調節装置10の他の部品とシート底面3との間は連結しなくてもよい。
【0053】
シートクッション長調節装置10は支持部11を含む。シートクッション長調節装置10は、支持部11に変位可能に支持される調節部材12を含む。ガイド機能14〜17を支持部11および/または調節部材12に設けて、支持部11に対する調節部材12の線形並進変位を誘導することができる。例えば、調節部材12は、支持部11上で前後方向に摺動可能に、支持部11上で誘導することができる。支持部11は、調節部材12の嵌合凹部15、17に摺動可能に収容される突起14、16を有していてもよい。代替的にまたは追加的に、支持部11は、調節部材12の嵌合突起を摺動可能に収容する凹部を有していてもよい。突起14、16と凹部15、17は、シートの前後方向に対応する方向に延在してもよい。ガイド機能が延在する方向は、調節部材12を変位させる変位方向を画定することができ、その方向はシートクッション長の調節方向に相当する。
【0054】
シートクッション長調節装置10は、電力駆動部31を収容するハウジング30を含む。電力駆動部31のモータシャフトと運動変換機構とを連結する減速ギアは、ハウジング30内に収容されてもよい。減速ギアは様々な構造のうち任意の構造をとることができる。減速ギアはウォーム減速ギアであってもよい。
図4を参照してより詳細に説明するように、減速ギアは2段ウォーム減速ギアであってもよい。減速ギアは2つ以上の減速段を有していてもよい。
【0055】
シートクッション長調節装置10の運動変換機構は、減速ギアの出力手段の回転を、支持部11に対する調節部材12の線形変位に変換するように動作可能である。運動変換機構は例えば、スピンドルドライブであってもよい。スピンドルドライブは、スピンドル41と、スピンドル41とねじ係合するスピンドルナット42とを含む。スピンドル41およびスピンドルナット42は長軸を有していてもよい。スピンドル41とスピンドルナット42のうちの一方は、スピンドル41の長軸を中心に回転自在であるように搭載してもよい。スピンドル41とスピンドルナット42のうちの他方は、スピンドル41の長軸を中心に回転不能であるように搭載してもよい。
【0056】
図3のシートクッション長調節装置10では、スピンドル41は、スピンドル41が回転しないように搭載される。スピンドル41は、スピンドル41が長軸を中心に回転することを防止するように、調節部材12に装着される。ねじれにより、スピンドル41はある程度撓むと理解される。しかしながら、通常、スピンドル41は、長軸を中心にした完全な回転を実行できないように調節部材12に固定される。
【0057】
スピンドルナット42はハウジング30に回転自在に搭載される。スピンドルナット42は支持部11に対して回転自在である。スピンドルナット42を回転させると、スピンドル41がハウジング30に対して変位する。スピンドル41を調節部材12に装着すると、スピンドルナット42の回転によってスピンドル41がスピンドルナット42を通じて変位するにつれ、調節部材12は支持部11に沿って摺動する。
【0058】
スピンドル41は様々な方法で搭載することができる。
図3のシートクッション長調節装置10では、スピンドル41は、調節部材12の嵌合装着機能44に収容される装着機能を有する端止め43を有する。端止め43に形成される装着機能は、スピンドル41の長軸に横断して延在し、スピンドルを荷重下で偏向させることによって、調節部材12の調節機能44内で端止め43を旋回させる軸を含んでいてもよい。
【0059】
また、端止め43は、支持部11に対する調節部材12の移動を制限するように構成してもよい。端止め43は当接面を有していてもよい。支持部11またはハウジング30を端止め43の当接面に当接させて、支持部11に対する調節部材12の線形変位を停止してもよい。
【0060】
端止め43はプラスチック製でもよい。端止め43は、スピンドル41の端部に成形してもよい。端止め43は、例えば射出成形によって形成してもよい。
スピンドル41の反対端は調節部材12に装着してもよい。スピンドル41は、調節部材12の嵌合装着機能46に収容される装着機能を有する他方の端止め45を有する。他方の端止め45に形成される装着機能は、スピンドル41の長軸に横断して延在し、スピンドルを荷重下で偏向させることによって、調節部材12の調節機能46内で他方の端止め45を旋回させる軸を含んでいてもよい。他方の端止め45は、支持部11に対する調節部材12の移動量を制限するように構成してもよい。他方の端止め45は当接面を有していてもよい。支持部11またはハウジング30を他方の端止め45の当接面に当接させて、支持部11に対する調節部材12の線形変位を停止してもよい。
【0061】
他方の端止め45はプラスチック製でもよい。他方の端止め45はスピンドル41の他方の端部に成形してもよい。他方の端止め45は、例えば射出成形によって形成してもよい。端止め43と他方の端止め45は、同じ射出成形プロセスでスピンドル41に成形してもよい。
【0062】
端止め43と他方の端止め45との間の距離は、支持部11に対する調節部材12の移動路を画定することができる。したがって、シートクッション長の最大変化量は、様々な顧客ニーズに対して簡易に適合させることができる。例えば、端止め43の長と他方の端止め45の長は、特定の顧客によって要求される移動距離に応じて、オーバーモールドプロセスにおいて設定して、調節部材12と支持部11との間の様々な最大変位量を確定することができる。
【0063】
シートクッション長調節装置10の動作時、電力駆動部のモータシャフトを回転させると、スピンドルナット42が回転する。スピンドル41を装着する調節部材12は、支持部11に対して線形に変位される。シートクッションに装着される、あるいはその他の方法で連結される調節部材12の連結構造13は、変位されてシートクッション長を変更する。
【0064】
図4は、シートクッション長調節装置10のアクチュエータの部分斜視図である。
図4を参照して、アクチュエータの構造を詳細に説明する。
ハウジング30は、電動モータとして構成される電力駆動部31を収容する凹部を含む。ハウジング30は、モータのコネクタ39が突出する開口を画定してもよい。コネクタ39は、電力駆動部31から可逆的に脱着可能である、および/または、コネクタ39を電力駆動部31に押圧することによって電力駆動部31に装着することができるコネクタ装具であってもよい。これにより、電力駆動部31を例えば様々なボードネットワークに接続しやすくなる。
【0065】
ハウジングは、減速ギアの少なくとも1つのギアを回転自在に支持する少なくとも1つの追加の凹部を含む。
図4のシートクッション長調節装置10では、減速ギアは2段ウォーム減速ギアとして実装される。減速ギアは、耐トルク的に電力駆動部31の出力シャフトに装着される第1のウォーム32を備えていてもよい。減速ギアは、第1のウォーム32と嵌合する第1のウォームホイール33を備えていてもよい。第1のウォームホイール33の回転軸は、第1のウォーム32の回転軸に横断してもよい。減速ギアは、第1のウォームホイール33と一体的に形成される、あるいは耐トルク的に第1のウォームホイール34にその他の方法で装着される第2のウォーム34を備えていてもよい。第2のウォーム34の回転軸は第1のウォームホイール33の回転軸と一致してもよい。減速ギアは、第2のウォーム34と噛み合い係合している第2のウォームホイール35を備えていてもよい。第2のウォームホイール35の回転軸は、第2のウォーム34の回転軸に横断してもよい。第2のウォームホイール35は減速ギアの出力手段を形成することができる。上記減速ギアは、コンパクトな設計の電力駆動部を使用しつつ、シートクッション長を調節するのに適した減速とトルク増大を提供する。上記減速ギアは自己係止を提供することができる。
【0066】
第2のウォームホイール35とすることができる減速ギアの出力手段は、耐トルク的にスピンドルナット42に連結してもよい。スピンドルナット42および第2のウォームホイール35は一体形成してもよい。スピンドルナット42および第2のウォームホイール35は、プラスチック材料から一体形成してもよい。スピンドルナット42は、スピンドル41の雄ねじとピッチが等しい雌ねじを有する。
【0067】
スピンドル41は可撓性であってもよい。スピンドル41は、雄ねじを設けた可撓シャフトまたはフレックスシャフトであってもよい。可撓スピンドルは、1つの金属ワイヤまたは複数の金属ワイヤを含むケーブルを備える金属コア47を有していてもよい。可撓シャフトは雄ねじを有してもよい。可撓シャフトは、雄ねじを形成する外面に金属螺旋ワイヤ48を有していてもよい。他の実施例も使用することができる。例えば、以下に詳述するように剛性スピンドルも使用することができる。スピンドル41は、1200Nの軸方向荷重未満の軸方向荷重が印加されるとき、弾性変形するように構成してもよい。
【0068】
スピンドル41の長軸に垂直に印加される荷重下で偏位する柔軟性を提供するスピンドル41は、シートクッション長調節装置10の耐久性を向上させ、荷重条件下での破損リスクを軽減する。
【0069】
シートクッション長調節装置10は、予め製造し、例えば、ねじ、ボルト、リベット、またはその他の装着技術によって支持部11をシート底面3に装着することによって、シートに装着することができるモジュール式ユニットとして構成される。
【0070】
図5は、シート底面3に装着されている状態のシートクッション長調節装置10を示す。シート底面3は、シートクッション長調節装置10の少なくとも支持部11を配置することができる凹部を有する。支持部11は、ねじまたはボルト51によってシート底面3に装着してもよい。シート底面3の上面は、調節部材12を配置することのできる切り欠きを有していてもよい。シートクッション長調節装置10を始動すると、シート底面3の上面を有効に拡張するように、調節部材12が支持部11上で摺動する。
【0071】
モジュール式ユニットとして構成されるシートクッション長調節装置10は、中程度の作業負荷で設置することができると理解される。例えば、シート底面3またはシート2の他の構造部材に装着しなければならないのは、支持部11などの単独の構成要素のみである。例えば、スピンドル41またはスピンドルナット42をシート底面3に別途搭載する必要はない。
【0072】
図3〜
図5を参照して説明するシートクッション長調節装置10の様々な変更は、他の実施形態でも実施することができる。例えば、スピンドル41は、一端のみで調節部材に装着され、他端は自由端としてもよい。スピンドル41は剛性スピンドルとして形成してもよい。シートクッション長調節装置10の支持部11はシート底面3を備えて、ハウジング30をシート底面3に直接装着してもよい。
図3〜
図5のシートクッション長調節装置10は、回転自在に固定されるスピンドルと、回転自在であるスピンドルナットとを含むが、その他の構造では、回転自在なスピンドルと、回転自在に固定されるスピンドルナットとを含んでもよい。
【0073】
図6は、別の実施形態に係るシートクッション長調節装置10の斜視図である。
図3〜
図5を参照して説明した構成要素または特徴に対応する構成要素または特徴は、同じ参照符号で示す。シートクッション長調節装置10は、予め製造し、一つのユニットとしてシート底面3に装着することのできるモジュール式ユニットとして構成してもよい。シートクッション長調節装置10は、支持部11のみをシート底面3に固着しなければならないように構成してもよい。
【0074】
シートクッション長調節装置10は、支持部11と、支持部11に変位可能に支持される調節部材12とを含む。ガイド機能14〜17は、調節部材12上の棚状突起15、17と支持部11上の嵌合ガイド面14、16によって実現してもよい。例えば、棚状突起15、17は、支持部11の外周面14、16上で誘導してもよい。
【0075】
シートクッション長調節装置10はアクチュエータを含む。アクチュエータは、例えば
図3〜
図5を参照して説明したように構成することのできる電力駆動部と減速ギアとを備える。
【0076】
シートクッション長調節装置10のアクチュエータは、減速ギアの出力手段の回転を、支持部11に対する調節部材12の線形変位に変換するように動作可能である運動変換機構をさらに含む。運動変換機構はスピンドルドライブであってもよい。スピンドルドライブは、スピンドル61と、スピンドル61とねじ係合するスピンドルナット62とを含む。スピンドル61とスピンドルナット62は長軸を有していてもよい。スピンドル61は、縦軸を中心に回転自在であるように搭載してもよい。スピンドルナット62は、スピンドル61の長軸を中心に回転不能となるように搭載してもよい。
【0077】
図5のシートクッション長調節装置10では、スピンドル61は回転自在であるように搭載される。スピンドル61は、支持部11上に回転自在に支持される端部を有していてもよい。スピンドル61は、支持部11の嵌合装着機能64に回転自在に収容される装着機能を含む端止め63を有していてもよい。
図8を参照してより詳細に説明するように、スピンドル61の反対端は、ハウジング30に回転自在に支持することができる。
【0078】
端止め63は、支持部11に対する調節部材12の移動を制限するように構成してもよい。端止め63は当接面を有していてもよい。調節部材12の突起65を端止め63の当接面に当接させることで、支持部11に対する調節部材12の線形変位を停止してもよい.
端止め63はプラスチック製でもよい。端止め63はスピンドル61の端部に成形してもよい。端止め63は、例えば射出成形によって形成してもよい。
【0079】
スピンドルナット62は、スピンドルナット62がスピンドル61の長軸を中心に回転することを防止するように、調節部材12に装着される。スピンドルナット62は調節部材12の突起65に収容してもよい。突起65は、支持部11の開口66を通って調節部材12から突出してもよい。突起65は、スピンドル61を通過させるように形成することができる。スピンドルナット62は、設置しやすくするために突起65に挿入される別個の要素として形成してもよいが、スピンドルナット62と突起65は一体形成してもよい。
【0080】
スピンドル61を回転させると、スピンドルナット62がスピンドル61の長軸に沿ってハウジング30に対して変位する。スピンドルナット62を調節部材12に装着すると、スピンドル61の回転によってスピンドルナット62がスピンドル61に沿って変位するのにつれ、調節部材12は支持部11に沿って摺動する。
【0081】
図7は、
図6のシートクッション長調節装置10のアクチュエータの拡大図であり、
図8は、減速ギアを示す
図6のシートクッション長調節装置10において使用されるアクチュエータの拡大図である。
【0082】
アクチュエータの減速ギアは、少なくとも1つのウォーム減速ギアを含んでいてもよい。減速ギアは、
図4を参照して説明するように、2段ウォーム減速ギアを備えていてもよい。また、1つの減速段または少なくとも3つの減速段を有する減速ギアを使用してもよい。
【0083】
減速ギアの出力手段は、例えば第2のウォームホイール35によって形成してもよい。減速ギアの出力手段は、スリーブ69の外面に形成してもよい。スリーブ69は、耐トルク的にスピンドル61の他方の端部に設けてもよい。スリーブ69はスピンドル61の他方の端部に成形してもよい。スリーブ69はプラスチック材料製であってもよい。スリーブ69は、射出成型によってスピンドル61の他方の端部に成形してもよい。第2のウォームホイール35を形成したスリーブ69と端止め63とは、同じ射出成型プロセスでスピンドル61に成形してもよい。
【0084】
スピンドル61は、スピンドル41と同じように構成してもよい。スピンドル61は可撓スピンドルであってもよい。スピンドル61は、1つまたはいくつかの金属ワイヤから形成されるコア67と、コア67の周囲に巻き回される螺旋ワイヤ68とを有していてもよい。スピンドル61は、1200Nの軸方向荷重未満の軸方向荷重が印加されるとき、弾性変形するように構成してもよい。スピンドル61は剛性スピンドルであってもよい。
【0085】
シートクッション長調節装置10はシート底面3に装着してもよい。シートクッション長調節装置10はモジュール式ユニットとしてシート底面3に装着してもよく、支持部11のみがねじやボルトなどによってシート底面に固着される。支持部11は、シート底面3の一部であってもよい。この場合、シートクッション長調節装置10のアクチュエータは、2段プロセスでシート底面3に搭載してもよい。調節部材12の突起65は、シート底面の開口66を通過し、スピンドルナット62が突起65に装着される。ハウジング30はシート底面3に装着してもよい。
【0086】
シートクッション長調節装置10が、支持部11をシート底面に装着することによってシート底面3に搭載可能であるモジュール式ユニットであるか、あるいは他の搭載技術が使用されるかにかかわらず、シートクッション長調節装置10の少なくとも一部はシート底面3の凹部に配置してもよい。
【0087】
図9および
図10は、別の実施形態に係るシートクッション長調節装置10を示す。
図9および
図10のシートクッション長調節装置10では、アクチュエータは、
図3〜
図8を参照して説明したように構成することのできる電力駆動部と減速ギアとを含む。減速ギアの出力手段の回転を、支持部11に対する調節部材12の線形変位に変換する運動変換機構は、スピンドル71とスピンドルナット72とを含むスピンドルドライブであってもよい。
図6〜
図8のシートクッション長調節装置10と同様、スピンドルナット72は、スピンドル71の長軸に対する回転に抗して固定されるように、調節部材12に装着されてもよい。
【0088】
スピンドル71は回転自在に搭載される。スピンドル71は自由端を有する。スピンドル71は剛性スピンドルとして形成してもよい。スピンドル71は、ねじ式ボルトなどの一体材から形成してもよい。自由端の反対側のスピンドル71の他方の端部は、
図8を参照して説明するようにオーバーモールドスリーブ69を有していてもよい。
【0089】
図9および
図10のシートクッション長調節装置10の動作時、電力駆動部31のモータシャフトを回転させると、スピンドル71が回転する。スピンドルナット72はスピンドル71の長軸に沿って配置される。
【0090】
図9および
図10のシートクッション長調節装置10の支持部11は、シート底面の一部によって形成してもよい。シート底面は、調節部材12が摺動可能に収容される凹部を有していてもよい。凹部の側面14、16は、調節部材12の側面15、17にとってのガイドとしての役割を果たしてもよい。シート底面の開口66はスピンドル71に沿って延在してもよい。調節部材12の突起65は、開口66を通って突出し、スピンドルナット72を回転しないように固定することができる。
【0091】
アクチュエータはシート底面3に装着してもよい。シートクッション長調節装置10のアクチュエータは、2段プロセスでシート底面3に搭載することができる。調節部材12の突起65は、シート底面の開口66を通過し、スピンドルナット62が突起65に装着される。ハウジング30は、ボルト、ねじ51、またはその他の締結技術を用いて、シート底面3に装着してもよい。
【0092】
回転−線形運動変換機構は、スピンドルドライブとして実装される必要はなく、幅広いその他の実施例のうちの任意の1つであってもよい。例えば、ラックおよびピニオン駆動は、
図11〜
図14を参照して後述するように使用してもよい。
【0093】
図11は、別の実施形態に係るシートクッション長調節装置10の斜視図である。
図12および
図13は、シートクッション長調節装置10の部分詳細図である。
図14は、シートクッション長調節装置10に使用することができるアクチュエータの部分詳細図である。シートクッション長調節装置10は、シート底面3に装着されるように構成される、あるいはシート底面3の一部を備えることができる支持部11を含む。シートクッション長調節装置10は、調節部材12をシートクッションの前端に連結する連結部13を有する調節部材12を含む。
【0094】
シートクッション長調節装置10は、ハウジング80内に配置される電力駆動部31を有するアクチュエータを含む。ハウジングは支持部11に装着してもよい。アクチュエータは減速ギアを含む。減速ギアの出力手段はピニオン93を駆動する。ピニオン93はピニオンハウジング83に配置してもよい。ピニオン93はシャフト90に装着してもよいし、あるいはシャフトと一体的に形成してもよい。ピニオン93は、ラック91と係合する外側歯を有する。ラック91は調節部材12に装着してもよい。シャフト90は、
図14を参照してより詳細に後述するように、耐トルク的に減速ギアの出力手段に連結してもよい。
【0095】
ラックおよびピニオン駆動は、追加のラック92と、追加のラック92と係合する追加のピニオン94とを含んでもよい。追加のラック92は調節部材12に装着してもよい。ラック91と追加のラック92は相互に平行であってもよい。ラック91と追加のラック92は、ラック91および追加のラック92の縦方向に横断する方向で相互にオフセットさせてもよい。追加のピニオン94は、ハウジング82と一体的に形成することのできる追加のピニオンハウジング84に配置してもよい。ピニオン93と追加のピニオン94は、電力駆動部と減速ギアとを含むハウジング80の最大寸法よりも大きな距離を有していてもよい。
【0096】
シートクッション長調節装置10の動作時、電力駆動部31のモータシャフトを回転させると、シャフト90が回転する。ピニオン91と追加のピニオン93がシャフト90と共に回転することによって、ラック91と追加のラック92を線形変位させる。ラック91と追加のラック92を装着する調節部材12が、支持部11に対して移動する。
【0097】
図14は、
図10のシートクッション長調節装置10で使用することのできるアクチュエータの部分平面図である。アクチュエータは、ハウジング80に配置される電力駆動部31を含む。アクチュエータは減速ギアを含む。減速ギアは少なくとも1つのウォーム減速ギアを有していてもよい。減速ギアは、
図4を参照して詳述されるように構成される2段ウォーム減速ギアであってもよい。第2のウォームホイール35によって形成することができる減速ギアの出力手段は、耐トルク的にシャフト90に連結される。第2のウォームホイール35は、シャフト90の中央部95と一体的に形成してもよい。第2のウォームホイール35は、シャフト90に成形することができるスリーブ95に形成してもよい。第2のウォームホイール35を伴う部分95は、プラスチックで形成してもよく、例えば射出成形によって形成してもよい。
【0098】
図11〜
図14のシートクッション長調節装置10の各種実施形態は、他の実施形態で実施することができる。例えば、ラックおよびピニオン駆動は、単一のラックと、ラックと係合する単一のピニオンを有していてもよい。ラックおよびピニオン駆動は、2つ以上のラックと、ラックと係合される2つ以上のピニオンを有していてもよい。
【0099】
実施形態によると、シートクッション長は、シート内に収容されるアクチュエータを用いて調節される。アクチュエータは、第1のウォーム減速ギアおよび第2のウォーム減速ギアなど、少なくとも2つの減速段を有する減速ギアを有していてもよい。回転運動は、スピンドルドライブ、ラックおよびピニオン駆動、または別の回転−線形運動変換機構を用いて線形運動に変換される。
【0100】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明したが、各種実施形態は別の実施形態で実施することができる。例えば、2段ウォーム減速ギアが電動モータの回転モータシャフトと回転−線形運動変換機構との間に連結されるアクチュエータについて説明したが、他の実施形態では、減速ギアは、単一または3つ以上のウォーム減速ギア段を備えていてもよい。他の実施形態では、別の減速ギアを設けてもよい。
【0101】
各種実施形態のうち各実施形態では、シートクッション長調節装置は、シートクッションの前端を前後方向に変位させるために使用できるのはもちろんだが、シートクッション長調節装置をシートクッションの後端に連結して、例えば、シートクッションの後端で長を変更してもよい。シートクッション長調節装置はシートクッションの少なくとも1つの側面に連結して、側面で長を変更してもよい。
【0102】
実施形態の調節機構は、シート内に配置される他の機構と組み合わせてもよい。例えば、調節可能な側部ボルスタまたは換気機構をシートに組み込んでもよい。
シートクッション長調節装置のアクチュエータは車両シートのシート底面に搭載することができるが、アクチュエータは、車両シートの他の任意の構造要素に搭載してもよい。
【0103】
さらに、上述の実施形態では、調節部材がシートフレームに対して移動している間、シートフレームに対して静止した状態に維持するように電力駆動部および減速ギアを設けるべくアクチュエータを搭載しているが、別の実施形態では、他の構造を使用することができる。具体的には、電力駆動部および減速ギアを収容したハウジングは、調節部材と共にシートフレームに対して変位させるように調節部材に搭載してもよい。この場合、スピンドルドライブの回転自在に固定された要素またはラックおよびピニオン駆動のラックを支持部に設けて、静止した状態を保つ。
【0104】
実施形態のシートクッション長調節装置および方法を用いて様々な技術的効果を得ることができると理解される。アクチュエータは、例えば、小寸法のシートの間隙に統合することのできるコンパクトな構造を有する。減速ギアにより、小型の電動モータを使用することができる。軽量で安価な構造を実現することができる。
【0105】
いくつかの実施形態のシートクッション長調節装置は、シートクッション長調節装置をシートに容易に組み込むことができるモジュール式構造を提供する。アクチュエータは、様々な調節速度と調節力に容易に適合させることができる。例えば、モータの出力シャフトとスピンドル減速ギアとの間の減速ギアは、顧客のニーズに応じて調節することができる。代替的にまたは追加的に、調節移動量を適合させることができる。これは、端止めをアクチュエータのスピンドルに適切に位置決めすることによって容易に実行することができる。
【0106】
代表的実施形態を車両シートに関して説明したが、本発明の実施形態は、こうした特定の適用分野に限定されない。むしろ、本発明の実施形態は、多種多様なシートで、シートクッション長を調節するために有効に採用することができる。
【国際調査報告】