特表2017-501961(P2017-501961A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-501961多層カーボンナノチューブの合成のための触媒、その触媒の製造方法及びその触媒で合成された多層カーボンナノチューブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501961(P2017-501961A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】多層カーボンナノチューブの合成のための触媒、その触媒の製造方法及びその触媒で合成された多層カーボンナノチューブ
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/152 20170101AFI20161222BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20161222BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20161222BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20161222BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20161222BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20161222BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20161222BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   B01J35/10 301J
   B01J37/04
   B01J37/00 F
   B01J37/08
   B01J23/887 M
   B01J27/051 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-543626(P2016-543626)
(86)(22)【出願日】2015年1月5日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月27日
(86)【国際出願番号】KR2015000053
(87)【国際公開番号】WO2015105302
(87)【国際公開日】20150716
(31)【優先権主張番号】10-2014-0002743
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0174427
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516192394
【氏名又は名称】ジェイイオー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドゥク・チョオ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ・ヘエ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ・シク
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB08
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC03A
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD17
4G146AD40
4G146BC43
4G146BC44
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC16B
4G169BC59B
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD05B
4G169CB81
4G169EA11
4G169EC03X
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169FA01
4G169FB04
4G169FB30
4G169FB62
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は多層カーボンナノチューブの合成のための触媒に関するもので、より具体的には、合成された多層カーボンナノチューブの分散が容易で、導電性を著しく向上させることができる多層カーボンナノチューブの合成のための触媒、その触媒の製造方法及びその触媒で合成された多層カーボンナノチューブに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される触媒1g当たり成長したカーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上の多層カーボンナノチューブ:
t/c=(W×γ)/(Wc×γ) (1)
(式(1)中、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(lg)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρは、カーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【請求項2】
表面積が400〜1000m/gであることを特徴とする多層カーボンナノチューブ。
【請求項3】
前記多層カーボンナノチューブは直径が3〜10nmで、層の数が3〜10個であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層カーボンナノチューブ。
【請求項4】
純度が98%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層カーボンナノチューブ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の多層カーボンナノチューブを含む複合体。
【請求項6】
請求項1または2に記載の多層カーボンナノチューブを含むエネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
Fe、Co、Ca、Ni及びMoからなる群から選択された1成分以上を含み、Mn、Al、Mg及びSiからなる群から選択された1成分以上を含み、
化学式1で表される組成比を有し、
見掛け密度が0.05〜0.07g/mlであり、
式(2)で表される触媒lg当たり成長したカーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒:
[化学式1]
[Fe、Co、Ca、Ni、Mo][Mn、Al、Mg、Si
(化学式1中、a、b、c、d、e、w、x、y、zは、各元素のモル分率を示し、
0≦a≦10、0≦b≦10、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦10、0≦w≦30、0≦x≦30、0≦y≦30、0≦z≦30で、2≦a+b+c+d+e+w+x+y+z≦l70、2≦a+b+c+d+e≦50、2≦w+x+y+z≦50である)
t/c=(W×γ)/(W×γ) (2)
(式(2)中、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(1g)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρはカーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【請求項8】
比表面積が120m/g以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒。
【請求項9】
請求項7または8に記載の触媒を含むカーボンナノチューブ。
【請求項10】
Fe、Co、Ca、Ni及びMoの反応前駆体から1成分以上、Mn、Al、Mg及びSiの反応前駆体から1成分以上を選択及び混合して混合物を生成する混合段階(a)と、
前記混合物を400〜900℃で液滴噴霧しながら焼成する段階(b)と、
を含むカーボンナノチューブ成長用板状触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層カーボンナノチューブの合成のための触媒に関するもので、より具体的には、合成された多層カーボンナノチューブの分散が容易で、導電性を著しく向上させることができる多層カーボンナノチューブの合成のための触媒、その触媒の製造方法及びその触媒で合成された多層カーボンナノチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon nanotube:CNT)は、炭素同士が六角形に結合して円筒状のチューブ構造を成した炭素同素体の一種で、直径が数nm程度の小さなチューブ形状をしていて、ナノチューブと呼ばれる。このようなカーボンナノチューブは、中空で軽く、同じ太さの鋼鉄に比べて最大100倍以上の引張強度を有し、損傷しないで90°まで曲がる物性により、新素材として注目されている。また、高い熱伝導性と導電性を有し、炭素層が巻かれている角度によって導体と半導体の性質を表す。また、カーボンナノチューブは層の数によって単層カーボンナノチューブ(single walled carbon nanotube:SWNT)と多層カーボンナノチューブ(multi−walled carbon nanotube:MWNT)とに区分される。
【0003】
一般に、カーボンナノチューブは、電気放電法、レーザー蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、熱化学蒸着法、気相合成法、電気分解法などの方法で製造されることができ、その中でも気相合成法の場合、基板を使用しないで反応炉の中に炭素を含むガスと触媒金属を直接供給して反応させて、カーボンナノチューブの蒸着物を形成するので、カーボンナノチューブを大量に合成することができながらも、経済性に優れ、最も脚光を浴びている。このような気相合成法では、触媒金属の使用が不可欠であり、Ni、CoまたはFeなどが触媒金属として最も多く使われている。それぞれの触媒金属粒子は、一つのシード(seed)として作用してカーボンナノチューブが形成される。
【0004】
一方、カーボンナノチューブ及びこれを製造するための触媒の先行文献としては、韓国公開特許第2010/0042765号のカーボンナノチューブ合成用担持触媒、その製造方法及びこれを用いたカーボンナノチューブと、韓国公開特許第2012/0093458号の垂直に配向されたバンドル構造を有する高導電性カーボンナノチューブ及びこれを用いた高導電性高分子ナノ複合材料組成物があり、破砕された球状の触媒とシート状の触媒についてそれぞれ開示しているが、まだカーボンナノチューブの優れた特性を有する高品質のカーボンナノチューブを経済的に大量生産するには困難がある。
【0005】
即ち、触媒の比表面積が広くなくて使用された触媒量に対するカーボンナノチューブの生産量が少なかったり、または生産されたカーボンナノチューブの表面積が広くなく、品質が一定でなくて、カーボンナノチューブの優れた特性を十分活かして多様な潜在的な用途に使用するには足りなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、触媒1gあたり成長したカーボンナノチューブの体積を1gの体積で割った値が30以上の広い比表面積の触媒を製造し、これを利用して広い比表面積を有する高品質の多層カーボンナノチューブ(好ましくは、カーボンナノチューブの直径が3〜10nmであり、層の数が3〜10個)を製造するためのもので、特に、導電性及び分散性を大きく向上させた多層カーボンナノチューブを低費用で大量生産することができるようにする技術を提供することにその目的がある。
しかしながら、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、下記式(1)で表される触媒1g当たり成長した多層カーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上の多層カーボンナノチューブを提供する:
t/c=(W×γ)/(Wc×γ) (1)
(式(1)で、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(1g)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρは、カーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【0008】
本発明の他の側面は、表面積が400〜1000m/gであることを特徴とする多層カーボンナノチューブを提供する。多層カーボンナノチューブの上記表面積は、例えば、400〜1000m/g、好ましくは500〜1000m/g、より好ましくは600〜1000m/gであるが、これに制限されるのではない。
【0009】
本発明のまた他の側面は、多層カーボンナノチューブを含有する複合体を提供する。特に、複合体は、多層カーボンナノチューブを0.5重量%以上含むことができ、それにより導電性を有することができ、複合体のマトリックスは、ポリマー、セラミックス、金属、またはこれらの混合物であることができる。
本発明のまた他の側面は、多層カーボンナノチューブを含むエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0010】
本発明のまた他の側面はFe、Co、Ca、Ni及びMoからなる群から選択された1成分以上を含み、Mn、Al、Mg及びSiからなる群から選択された1成分以上を含み、下記化学式1で表される組成比を有し、見掛け密度が0.05〜0.07g/mlであり、下記式(2)で表される触媒1gあたり成長した多層カーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒を提供する:
[化学式1]
[Fe、Co、Ca、Ni、Mo][Mn、Al、Mg、Si
(上記化学式1中、a、b、c、d、e、w、x、y、zは、各元素のモル分率を表し、
0≦a≦10、0≦b≦10、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦10、0≦w≦30、0≦x≦30、0≦y≦30、0≦z≦30で、2≦a+b+c+d+e+w+x+y+z≦l70、2≦a+b+c+d+e≦50、2≦w+x+y+z≦50である)
t/c=(W×γ)/(W×γ) (2)
(式(2)中、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(1g)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρはカーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【0011】
本発明のまた他の側面は、比表面積が120m/g以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒を提供する。
本発明のまた他の側面は、板状触媒を含むカーボンナノチューブを提供する。板状触媒の場合、球状または針状の触媒に比べて表面積が広く、触媒の上下面でカーボンナノチューブが同時に成長することができるという利点がある。
【0012】
本発明のまた他の側面は、Fe、Co、Ca、Ni及びMoの反応前駆体から1成分以上、Μn、Al、Mg及びSiの反応前駆体から1成分以上を選択及び混合して混合物を生成する混合段階(a);及び上記混合物を400〜900℃で液滴噴霧しながら焼成する段階(b)を含むカーボンナノチューブ成長用板状触媒の製造方法を提供する。
本発明の板状触媒の各面は扁平または曲率を有する曲面の形態(曲がった形態)であることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による触媒の製造方法で製造された板状触媒は、見掛け密度が非常に小さい。即ち、重量に比べて表面積が非常に広いので、このような触媒を利用してカーボンナノチューブを合成すると、分散エネルギーが少なくかかることはもちろん、分散過程で、長さが損なわれる程度が非常に低くて、高い導電性を保持することができる。
本発明の製造方法による触媒を利用して合成された多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)に匹敵する直径を有し、層(wall)の数が3〜10個と非常に均質な状態であり、比表面積が大きくて、非常に高い導電性を示す。
また、本発明の触媒を利用して成長させたカーボンナノチューブは、98%以上の純度を有して同じ量の触媒を利用して数倍以上多い量の多層カーボンナノチューブを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1により製造された触媒の走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)のイメージである。
図2】本発明の実施例1により製造された多層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡(SEM)と透過電子顕微鏡(transmission electron microscope:TEM)のイメージである。
図3】本発明の実施例2により製造された多層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡(SEM)と透過電子顕微鏡(TEM)のイメージである。
図4】多層カーボンナノチューブ(MWNT)の含有量による表面抵抗を示すグラフである。
図5】多層カーボンナノチューブの合成のための触媒の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明が属する技術分野おける通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の具現例及び実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限定されない。そして、図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略した。
【0016】
本発明の明細書全般おいて、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
本発明で用いられる程度の用語「約」は、言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近い意味で用いられ、本発明の理解に役立つように正確または絶対的な数値が記載されて開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために用いられる。また、本発明の明細書全般において「〜する段階」または「〜の段階」は、「〜のための段階」を意味しない。
【0018】
以下、添付された図面を参照して、本発明の具現例及び実施例を詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの具現例及び実施例と図面に制限されるものではない。
本発明の一側面は、下記式(1)で表される触媒lg当たり成長した多層カーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上の多層カーボンナノチューブを提供する:
t/c=(W×γ)/(Wc×γ) (1)
(式(1)中、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(1g)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρは、カーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【0019】
本発明の他の側面は、表面積が400〜1000m/gであることを特徴とする多層カーボンナノチューブを提供する。多層カーボンナノチューブの上記表面積は、例えば、400〜1000m/g、好ましくは500〜1000m/g、より好ましくは600〜1000m/gであるが、これに制限されるものではない。このような表面積は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)ではない多層カーボンナノチューブでは観察されたことのない広い表面積で、このような表面積は、本発明の触媒を利用して成長させたカーボンナノチューブが多層を持っているが、層の数が少なく、カーボンナノチューブの直径が小さいからである。
【0020】
本発明の一実施例において、多層カーボンナノチューブは、直径が3〜10nmで、層の数が3〜10個であることを特徴とするが、これに制限されるものではない。例えば、上記多層ナノチューブの直径は3〜10nm、好ましくは3〜6nm、より好ましくは3〜5nmであり、上記多層カーボンナノチューブの層の数は3〜10個、好ましくは3〜6個、より好ましくは3〜5個である。
【0021】
本発明の一実施例において、多層カーボンナノチューブは、純度が98%以上であることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明のまた他の側面は、多層カーボンナノチューブを含む複合体を提供する。特に、複合体は、多層カーボンナノチューブを0.5重量%以上含むことができ、それにより導電性を有することができ、複合体のマトリックスは、ポリマー、セラミックス、金属、またはこれらの混合物であることができる。上記ポリマーは熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであることができるが、これらに制限されるものではない。
【0023】
熱可塑性樹脂は、可塑性または変形性ポリマー素材で、液体に溶解され硬化された後でも再溶解されて再成形が可能である。例えば、上記熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ビニルアセチル樹脂、メチルメタクリレート樹脂、スチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、またはポリアミド樹脂(ナイロン)などが使用されることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
熱硬化性樹脂は、エネルギーを加えればより強力な形態に硬化されるポリマー材料で、一旦硬化されると、再加熱したり、成形することができない。例えば、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂またはシリコーン樹脂などが使用されることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
カーボンナノチューブの導電性複合体の電気伝導度において、一般的に、多層カーボンナノチューブの場合は、約1〜2重量%の含量で電気的浸透(percolation)が発生する。本発明による多層カーボンナノチューブは、非常に低濃度の0.5重量%でも導電性を表す。これを利用した導電性複合体は、例えば、バルク状複合体、薄膜状複合体、エネルギー分野、電気電子分野で活用することができ、具体的には、電子素子帯電防止及び静電気分散用プラスチック、電磁波シールドと放熱特性を保有しているプラスチック、OLED及び太陽電池に利用される導電性透明電極、リチウムイオン電池の添加剤、及びコンクリートの強化、放熱用カーボンナノチューブ複合体としても利用されることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明のまた他の側面は、多層カーボンナノチューブを含むエネルギー貯蔵装置を提供する。多層カーボンナノチューブを含む炭素材料は、エネルギー貯蔵装置の性能を左右する非常に重要な物質で、これを利用したエネルギー貯蔵装置としては、例えば、1次電池と2次電池、超高容量キャパシタ(super−capacitor)、燃料電池、太陽電池があるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明のまた他の側面は、Fe、Co、Ca、Ni及びMoからなる群から選択された1成分以上を含み(好ましくは2成分以上)、Mn、Al、Mg及びSiからなる群から選択された1成分以上を含み(好ましくは2成分以上)、下記化学式1で表される組成比を有し、見掛け密度が0.05〜0.07g/mlであり、下記式2で表示される触媒lg当たり成長した多層カーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒を提供する:
[化学式1]
[Fe、Co、Ca、Ni、Mo][Mn、Al、Mg、Si
(上記「化学式1中、a、b、c、d、e、w、x、y、zは、各元素のモル分率を表し、
0≦a≦10、0≦b≦10、0≦c≦10、0≦d≦10、0≦e≦10、0≦w≦30、0≦x≦30、0≦y≦30、0≦z≦30で、2≦a+b+c+d+e+w+x+y+z≦l70、2≦a+b+c+d+e≦50、2≦w+x+y+z≦50である)
t/c=(W×γ)/(W×γ) (2)
(式(2)中、γ=1/ρ、γ=1/ρであり、
は、単位触媒(1g)で成長させることができるカーボンナノチューブの重量、
は、単位触媒の重量で1gであり、
ρはカーボンナノチューブの見掛け密度、ρは触媒の見掛け密度である)。
【0028】
本発明の一具現例において、上記触媒は、例えば、鉄(Fe)成分を含む物質として、塩化鉄(II)四水和物[Iron(II)chloride tetrahydrate]、硫酸鉄(II)七水和物[Iron(II)sulfate heptahydrate]、塩化鉄(III)無水[Iron(III)chloride anhydrous]、硝酸鉄(III)九水和物[Iron(III)nitrate nonahydrate]、硫酸アンモニウム鉄(III)十二水和物[Ammonium iron(III)sulfate dodecahydrate]、コバルト(Co)を含む物質として、酢酸コバルト(II)四水和物[Cobalt(II)acetate tetrahydrate]、塩化コバルト(II)六水和物[Cobalt(II)chloride hexahydrate]、硝酸コバルト(II)六水和物[Cobalt(II)nitrate hexahydrate]、硫酸コバルト(II)七水和物[Cobalt(II)sulfate heptahydrate]、カルシウム(ca)を含む物質として、酢酸カルシウム一水和物(Calcium acetate monohydrate)、無水塩化カルシウム(Calcium chloride anhydrous)、硝酸カルシウム四水和物(Calcium nitrate tetrahydrate)、硫酸カルシウム二水和物(Calcium sulfate dihydrate)、ニッケル(Ni)を含む物質として、塩化ニッケル(II)六水和物[Nickel(II)chloride hexahydrate]、硝酸ニッケル(II)六水和物[Nickel(II)nitrate hexahydrate]、硫酸ニッケル(II)六水和物[Nickel(II)sulfate hexahydrate]、モリブデン酸アンモニウム四水和物(Ammonium molybdate tetrahydrate)、マンガン(Mn)を含む物質として、酢酸マンガン(II)四水和物[Manganese(II)acetate tetrahydrate]、塩化マンガン(II)四水和物[Manganese(II)chloride tetrahydrate]、硝酸マンガン(II)六水和物[Manganese(II)nitrate hexahydrate]、硫酸マンガン(II)一水和物[Manganese(II)sulfate monohydrate]、アルミニウム(Al)を含む物質として、塩化アルミニウム六水和物(Aluminium chloride hexahydrate)、水酸化アルミニウム(Aluminium hydroxide)、アルミニウムイソプロポキシド(Aluminium isopropoxide)、硝酸アルミニウム九水和物(Aluminium nitrate nonahydrate)、マグネシウム(Mg)を含む物質として、酢酸マグネシウム四水和物(Magnesium acetate tetrahydrate)、塩化マグネシウム六水和物(Magnesium chloride hexahydrate)、水酸化マグネシウム(Magnesium hydroxide)、硝酸マグネシウム六水和物(Magnesium nitrate hexahydrate)、無水硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate anhydrous)、ケイ素(Si)を含む物質として、二酸化ケイ素(Silicon dioxide)、炭化ケイ素(Silicon carbide)、シリコーン(Silicon)、ケイ素(IV)[Silicon(IV)]塩化物(chloride)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0029】
本発明のまた他の側面は、比表面積が120m/g以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒を提供する。本発明による触媒1g当たり成長した多層カーボンナノチューブの体積を触媒1gの体積で割った値が30以上のカーボンナノチューブ成長用板状触媒を利用して、活性反応面積を増大させることによって比表面積が広いカーボンナノチューブを大量生産することができる。本発明の比表面積が広い触媒を利用して合成されたカーボンナノチューブは、低い分散エネルギーと高い導電性を有する。
【0030】
本発明のまた他の側面は、板状触媒を含むカーボンナノチューブを提供する。板状触媒の場合、球状または針状の触媒に比べて表面積が広く、触媒の上下面でカーボンナノチューブが同時に成長することができて、カーボンナノチューブの生産量を向上させることができるという利点がある。
【0031】
本発明のまた他の側面は、Fe、Co、Ca、Ni及びMoの反応前駆体から1成分以上、Mn、Al、Mg及びSiの反応前駆体から1成分以上を選択及び混合して混合物を生成する混合段階(a);及び上記混合物を400〜900℃で液滴噴霧しながら焼成する段階(b)を含むカーボンナノチューブ成長用板状触媒の製造方法を提供する。上記(a)段階後に(b)段階を行い、上記混合物を液滴噴霧する高温の範囲は、例えば、400〜900℃、好ましくは400から700℃、さらに好ましくは400〜500℃である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるのではない。
【0033】
【表1】
【0034】
<実施例1>
水100mlにAlとMgのモル数の和が16になるようにMg(NO.6HOとA1C1・6HOを投入して攪拌しながら、FeとCoのモル数の和が5になるようにFe(NO・9HOとCo(NO・6HOを投入して攪拌した。その後、上記混合物を400〜900℃の範囲で液滴噴霧しながら焼成させて触媒を得た。
【0035】
<実施例2>
実施例1に記載された方法と同じ製造方法を使用し、AlとMgのモル数の和を20に変化させて、金属触媒を製造した。
【0036】
<製造例1>
上記実施例1で得られた触媒を利用して炭素源ガスと不活性ガスで反応器の温度を400〜1200℃に昇温させる気相蒸着法を通じてカーボンナノチューブを製造した。
【0037】
<製造例2>
上記実施例2で得られた触媒を利用して炭素源ガスと不活性ガスで反応器の温度を400〜1200℃に昇温させる気相蒸着法を通じてカーボンナノチューブを製造した。
【0038】
製造例1及び2でカーボンナノチューブを製造するために用いられる反応器としては、配置式反応器、流動床反応器、ロータリーキルン反応器などを使用することができ、流動層反応器には、ループ状の流動層反応器を使用することができるが、これに限定されるものではない。
実施例1及び実施例2によって比表面積が極大化された微粒子の板状触媒が製造された。
【0039】
図1は、実施例1に基づいて製造された触媒の走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
BET(Brunauer Emmett Teller)比表面積の測定結果は142m/gであり、触媒の見掛け密度は韓国産業標準(KS M ISO 1306)を準用した。
即ち、見掛け密度を測定するために、直径が100±10mmで、一定高さの垂直層に口がなく、完全に満たしたとき、1000cmの容量を有するシリンダー型容器の辺縁より50mm以上高くないところで容器の中央部分から触媒を入れ、この時、容器の辺縁よりも高く円錐形を形成することができるように過量の触媒を使用した。定規またはへらを水平にして、容器の辺縁に直角に隙間なく接触した後、一度擦って表面を均一にして、触媒と一緒に重量を測定した。シリンダーの重量を引いて最も近いg数に触媒の質量を決定した。
【0040】
上記のように測定した実施例1及び実施例2によって製造された触媒の見掛け密度は、それぞれ0.05g/ml及び0.02g/mlであった。
上記実施例1及び実施例2によって製造された触媒を利用して製造例1と製造例2の多層カーボンナノチューブを製造し、この時、触媒1g当たり合成されたカーボンナノチューブの量は、それぞれ90g及び80gであった。
製造例1と製造例2で合成された多層カーボンナノチューブの見掛け密度(KS M ISO 1306に基づいて測定)は、0.01g/mlであり、透過電子顕微鏡で測定したカーボンナノチューブの直径は5−8nmであった。
【0041】
純度は98%以上を表し、純度の測定は、韓国産業標準(Ash Content KS M ISO 1125)を準用した。
即ち、純度を測定するためにるつぼを密閉された電気炉で1時間550±25℃の温度で蓋をして加熱した後、るつぼと蓋をデシケーターに入れた。室温に冷却させ、0.1mgまで重量を測定した。2gが若干超えるカーボンナノチューブを125℃の乾燥機で1時間乾燥した後、室温に冷却させた。カーボンナノチューブを重量を測定したるつぼに入れて0.1mgまで重量を測定し、これを一定量になるまで800±25℃の電気炉の中に入れてふたを開けて加熱した。蓋を閉じ、デシケーターに移して室温に冷却させた後、0.1mgまで重量を測定した。るつぼと蓋を洗浄し、125℃の乾燥機の中で乾燥した後、0.1mgまで重量を再測定した。
【0042】
製造例1及び製造例2で合成された多層カーボンナノチューブのBET比表面積は全部600m/gであり、それぞれの体重量比(Vt/C)は、450と160を表した。製造例1で生成された多層カーボンナノチューブにおいて、単位触媒(1g)を利用して成長されたカーボンナノチューブの体重量比(Vt/C)が450とは単位触媒1gが有する体積対比成長された多層カーボンナノチューブの体積が450倍になるということである。
即ち、単位触媒1gの体積は20mlであるので、板状触媒を利用して成長させた多層カーボンナノチューブの体積は9000ml(9Liter)であることを意味する。
【0043】
図2及び図3は、製造例1及び製造例2によって製造されたカーボンナノチューブの走査電子顕微鏡(SEM)と透過電子顕微鏡(TEM)のイメージをそれぞれ示す。500μm、50μm、1μm及び20nmのスケールバーを利用して測定されたカーボンナノチューブを確認することができる。
【0044】
図4は本発明の触媒を利用して成長させた多層カーボンナノチューブ(MWNT)の含有量による複合体の表面抵抗を示すグラフで、導電性を確認するために測定された。二軸押出機(twin screw extruder)を利用して製造された多層カーボンナノチューブの含有量を異なるようにしてナイロン66/MWNT複合体を製造した。
図4に示すように、0.5重量%の多層カーボンナノチューブ(MWNT)の含有量から複合体は導電性を表し始め、多層カーボンナノチューブの含有量が増加するにつれて、複合体の導電性が急激に高くなることが分かる(多層カーボンナノチューブの含有量が増加するにつれて、表面抵抗の急速な減少が現れる)。
本発明の触媒を利用して合成した分散性が高い多層カーボンナノチューブは、低含量(0.5重量%)でもポリマーマトリックス内で高い導電性を表した。
多層カーボンナノチューブの合成のための触媒の製造方法を示す概略図は図5に示した。
【0045】
以上で詳しく説明したように、本発明による触媒の製造方法で製造された触媒(板状触媒)は見掛け密度が非常に小さい。即ち、重量に比べて表面積が非常に広くて、多層カーボンナノチューブの生産量を増大させることができ、このような触媒を利用して合成した多層カーボンナノチューブは分散時に分散エネルギーが少なくかかることはもちろん、分散過程で長さが損なわれる程度が非常に低くて、高い導電性を保持することができる。
また、本発明の製造方法で製造された触媒を利用して合成された高純度の多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)に匹敵する直径を有し、層の数が3〜10個と非常に均質な状態であり、表面積が大きくて、非常に高い導電性を表している。
【0046】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更しないで他の具体的な形に容易に変形が可能であることを理解することができる。従って、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり限定的ではないことを理解すべきである。
本発明の範囲は、上述した詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲によって定められ、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等な概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】