特表2017-501982(P2017-501982A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-501982皮膚症の治療におけるダフネ・ラウレオラ抽出物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501982(P2017-501982A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】皮膚症の治療におけるダフネ・ラウレオラ抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/83 20060101AFI20161222BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20161222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161222BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20161222BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20161222BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20161222BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20161222BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20161222BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20161222BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20161222BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20161222BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20161222BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20161222BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20161222BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20161222BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20161222BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20161222BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20161222BHJP
【FI】
   A61K36/83
   A61K8/97
   A61P35/00
   A61P17/06
   A61P17/08
   A61P17/00
   A61Q19/00
   A61P37/08
   A61P17/02
   A61K9/06
   A61K9/107
   A61K9/12
   A61K125:00
   A61K127:00
   A61K129:00
   A61K131:00
   A61K133:00
   A61K135:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-535157(P2016-535157)
(86)(22)【出願日】2014年11月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】IT2014000312
(87)【国際公開番号】WO2015079469
(87)【国際公開日】20150604
(31)【優先権主張番号】RM2013A000657
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516156031
【氏名又は名称】ドナテッラ・パオリーノ
【氏名又は名称原語表記】Donatella PAOLINO
(71)【出願人】
【識別番号】516156042
【氏名又は名称】ジョアッキーノ・フォリーノ・ガッロ
【氏名又は名称原語表記】Gioacchino FOLINO GALLO
(71)【出願人】
【識別番号】516156053
【氏名又は名称】マッシモ・フレスタ
【氏名又は名称原語表記】Massimo FRESTA
(71)【出願人】
【識別番号】516156064
【氏名又は名称】レオーネ・スパターロ
【氏名又は名称原語表記】Leone SPATARO
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ドナテッラ・パオリーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアッキーノ・フォリーノ・ガッロ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・フレスタ
(72)【発明者】
【氏名】レオーネ・スパターロ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・ヴェンディッティ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA51
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC20
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC012
4C083AC182
4C083AC422
4C083AC542
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD282
4C083CC05
4C083CC06
4C083CC38
4C083DD21
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4C088AB12
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4C088ZA89
4C088ZB11
4C088ZB13
4C088ZB26
(57)【要約】
本発明は、ダフネ・ラウレオラ(Daphne laureola) L.から得られた抽出物であって、有効量の抽出物の局所適用によって、一般的皮膚症、特に乾癬の局所治療のために医薬、化粧品および薬用化粧品分野で用いられるべき抽出物に関する。本発明は、また、ダフネ・ラウレオラ抽出物を含む医薬、化粧品および薬用化粧品組成物に関する。本発明は、また、一般的皮膚症、特に乾癬の局所治療に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的皮膚症、皮膚腫瘍および乾癬の治療における局所適用のために、ヒトおよび動物における医薬、化粧品および薬用化粧品分野で用いられるべきダフネ・ラウレオラ抽出物。
【請求項2】
皮膚症が、慢性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、時折の皮膚炎、ふけ症から選ばれる、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
乾癬が、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、紅皮症乾癬、脂漏性乾癬、石綿状癬から選ばれる、請求項1に記載の抽出物。
【請求項4】
皮膚腫瘍が、メラノーマ、基底細胞ガン、有棘または扁平上皮細胞ガン、光線角化症から選ばれる、請求項1に記載の抽出物。
【請求項5】
生ものおよび乾燥物の両方の、ダフネ・ラウレオラ植物の花、果実、葉、茎および根のからの液体、半固体または無水形態である、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出物。
【請求項6】
ダフネ・ラウレオラの抽出物ならびに1種以上の医薬的、化粧品的および薬用化粧品的に許容しうる成分を含む、医薬、化粧品および薬用化粧品組成物。
【請求項7】
医薬的、化粧品的および薬用化粧品的に許容しうる成分が、皮膚軟化剤、保湿剤、増粘剤、乳化剤、着色剤、界面活性剤、消毒剤、抗酸化剤、緩衝剤、艶消し剤、剥離剤、芳香剤など、精油、ビタミン、UVフィルター、コラーゲン、エラスチンおよびその混合物から選ばれる、請求項6に記載の医薬品、化粧品および薬用化粧品組成物。
【請求項8】
たとえば、ゲル、ローション、ミルク、エマルション、フォームなどの液体製剤;クリーム、軟膏、スティックなどなどの固体または半固体製剤として製剤された、請求項6〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
シャンプー、クレンジングミルク、トニックウォーター、水性溶液、アルコール溶液、含水アルコール溶液、マスク、エマルション、水系ゲル、リポゲル、フェイスおよびボディオイル、薬用パッチとして製剤された、請求項6〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
一般的皮膚症、皮膚腫瘍および乾癬の治療における局所適用のために、ヒトおよび動物における医薬、化粧品および薬用化粧品分野で用いられるべき、請求項6〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
皮膚症が、慢性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、時折の皮膚炎、ふけ症から選ばれる、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
乾癬が、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、紅皮症乾癬、脂漏性乾癬、石綿状癬から選ばれる、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
皮膚腫瘍が、メラノーマ、基底細胞ガン、有棘または扁平上皮細胞ガン、光線角化症から選ばれる、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
浸出液、煎出液、冷浸、パーコレーション、超音波および/またはマイクロウェーブによって補助された継続的攪拌下での抽出、超臨界流体を用いる抽出から選ばれる、ダフネ・ラウレオラから抽出物を得る方法。
【請求項15】
抽出が、水、エタノール、グリセロール、プロパノール、ブタノール、アセトン、エチレン-,プロピレン-およびブチレン-グリコールなどのグリコール、酢酸エチル、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール、エーテルおよびその混合物から選ばれる極性溶媒の存在下で行なわれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抽出に続いて、液体、半固体または無水抽出物が得られるまで、蒸発または凍結乾燥による濃縮が行なわれる、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
抽出が、生ものおよび乾燥物の両方の、ダフネ・ラウレオラ植物の花、果実、葉、茎および根から行なわれる、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
有効量の該フィトコンプレックスまたは該抽出物の局所適用による、一般的皮膚症、腫瘍および乾癬の治療のための、医薬、化粧品および薬用化粧品分野におけるダフネ・ラウレオラの抽出物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダフネ・ラウレオラ(Daphne laureola)の植物抽出物で処置することによる、たとえば、乾癬およびふけ症などの皮膚症の治療に関する。より一般的には、本発明は、療法における、ならびにヒトおよび動物の衛生のための、ダフネ・ラウレオラからのフィトコンプレックス抽出物の局所使用に関する。本発明の範囲内で、フィトコンプレックスは、医薬、薬用化粧品および化粧品の分野において使用されうる植物からの抽出によって得られた物質全体を意味する。本発明の範囲内で、用語「抽出物」および用語「フィトコンプレックス」は、同義とみなされる。
【背景技術】
【0002】
皮膚症は、発生率が着実に上昇している重要な衛生問題である。皮膚症は、たとえば、乾癬、ふけ症、皮膚腫瘍および光線角化症などの細胞の過剰増殖を特徴とする皮膚病変を含む。
【0003】
皮膚症のうち最も頻度が高いのは、乾癬、およびたとえば、以下のものなどの皮膚炎である。
アトピー性皮膚炎:通常、心身に起因する。
接触皮膚炎:特定のアレルゲンへの接触に対する身体の反応である。皮膚の赤み、かさぶたおよび落屑となって現れる。
脂漏性皮膚炎:このタイプは、たとえば、頭皮のような皮脂分泌を起こしやすい身体の領域に主に関与する。
慢性皮膚炎:皮膚に関与し、異なる身体の部分に広がる刺激として最初に現れ、再発型で、慢性的に進行する免疫系の活性化による炎症反応である。
非特異的皮膚炎:時折起こり、正確な病理学的原因に関連付けることができず、赤味および/または落屑、また、かゆみがある場合もある。
【0004】
乾癬は、広範囲の病理であり、皮膚、特に角質層に関与する最も一般的なタイプの慢性皮膚炎の1つである。病因病理学的観点から、皮膚に影響を及ぼし、異なる身体の部分に広がる刺激として最初に現れる。
【0005】
乾癬は感染性の病状ではないが、一般的に再発型の慢性進行を示す。乾癬は、肘、手のひら、膝、足の裏や頭皮などのいくつかの身体の部分に局在する赤みおよび落屑スポットの発生を特徴とする。
【0006】
一般集団における乾癬の有病率は、1〜3%であると推定され、一般に、患者の3分の1は、乳児期または青年期にすでに乾癬の初出現を経験している。
【0007】
乾癬の病因はまだ不明であり、入手可能なデータは、多因子起源を指すように見える;遺伝的要因と環境要因が、実際のところ、この病態の発症や進行に関与している。
【0008】
乾癬は、家族に関連する遺伝性疾患とみなすことができる。
【0009】
乾癬は、さまざまな症候学として起こる。実際の問題として、この病理は、以下のように起こりうる:
尋常性乾癬:臨床的観点から最も一般的なタイプ;典型的な病変は、雲母に似た銀色の落屑薄片で覆われた、くっきりとした紅斑性プラークである。1つのプラークは、さまざまな直径を有することができ、全身の領域を覆うように融合することができる。
滴状乾癬:連鎖球菌扁桃感染後の若い患者に起こる。1 mm〜1 cmの丘疹が、雨滴の外観を有して、主として体幹の皮膚上に現れる。
膿疱性乾癬:このタイプは、局所性または全身性の特徴をもって生じうる;特に、前者は、主として手のひらおよび足の裏に生じる。この場合、小さい角層下小胞が表面および落屑に到達するように見える。
紅皮性乾癬:これは、すべての皮膚表面が、紅斑になり、落屑する重篤なタイプの乾癬である。このタイプは、薬物、ストレス、併発症によって引き起こされうる。
脂漏性乾癬:「sebopsoriasis」または「seboriasis」とも呼ばれる非常に一般的なタイプ。脂漏性皮膚炎に非常に類似しているが、通常、該皮膚炎が関与しない領域を含みうる病変を特徴とする。
石綿状癬(Psoriasis amiantacea):頭皮のみに関与するタイプである。通常、若年性疾患である。
【0010】
乾癬病巣は、通常、組織学的に、正常な皮膚と比べて10倍に増加する表皮ターンオーバーおよび角化細胞の不完全な成熟および角質層に保持された核(角質増殖)、血管新生プロセス、増加する血流、タンパク質滲出液および未成熟リンパ管を示す過増殖領域として起こる。皮膚表面上の乾癬プラークの出現は、表皮における多形好中球の浸潤にも結びついている。さらに、乾癬患者における健康な皮膚は、構造的変更を示し、これらの患者において、病変の進行は、外傷イベントが発生した後、良好に進行する(ケブネル現象)。また、乾癬患者は、この病変によって影響を及ぼされない者と比較して、より強くターンオーバーし、非乾癬患者からの皮膚と比較して、病変において増加した細胞DNA合成およびより高いグリコーゲンレベルを示す。
【0011】
この影響は、細胞媒介性免疫系(Tリンパ球)の機能的変更およびこの病気の発生と進行において重要な役割を行なうサイトカインへの表皮応答の機能的変更と関連があるようにみえる。
【0012】
サイトカインは、異なる細胞型によって生成され、通常、特定の刺激に応答して、周囲の媒体中に分泌されるタンパク質分子である;サイトカインは、さまざまな細胞の成長、分化および死を刺激することによってそれらの挙動を調節することができる。サイトカインの作用は、通常、局所的であるが、全身において有利な効果を有することもある。インターロイキンは、ここ数年で発見されているさまざまな疾患において病因病原学的役割を有する;実際のところ、タイプ1、6および8のインターロイキンを産生するT細胞は、乾癬の発症機序において重要な役割を有する。特に、インターロイキン6(IL-6)は、単球/マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、角化細胞、T細胞、B細胞、好中球などの多くの細胞型によって産生される多面的なサイトカインである。
【0013】
一般的皮膚症、特に乾癬ための現在の療法は、ワセリン、コルチゾン製剤および/または縮小剤(タールまたはジトラノール)、角質溶解剤(サリチル酸および/または尿素)およびビタミンD類縁体などの限定された拡張型の局所皮膚軟化剤製剤において第一選択薬として包含される生物医学的アプローチを提供する。一般化されたタイプの乾癬の場合、UVBまたはUVAおよびソラーレン(光化学療法またはPUVA療法)による光線療法、レチノイドの使用(アシトレチンおよびエトレチナート)またはシクロスポリンAなどの全身療法が用いられることもある。
【0014】
モノクローナル抗体、サイトカイン(インターフェロンおよびインターロイキン)、融合タンパク質および組織増殖因子などの生物学的製剤が近年導入されている。
【0015】
ダフネ・ラウレオラ(Daphne laureola) L.、(イタリア語名:dafne laurella)は、ジンチョウゲ科(Thymelaeaceae family)、ジンチョウゲ(Daphne)種である。晩夏に成熟すると黒い果実になる緑黄色の花をつける常緑植物である。ダフネ・ラウレオラ L. (DL)は、50〜150 cmの高さになりうる。樹皮は、薄く、成熟すると灰黄色になるが、若い枝は緑色である。互生の葉は、通常、芽の先端に向かって厚みのあるらせん状につくが、枝全体を覆うこともできる。葉は、長さ2〜13 cm、幅1〜3 cmの皮針形または倒卵形である。葉は、無毛、暗緑色で、上面は光沢があり、下面よりも明るい色合いである。ダフネ・ラウレオラは、日向と日陰の両方で成長し、温暖な下生えに容易に順応する。繁殖は、種子および根の芽(radical sprout)の両方によって可能である。
【0016】
異なる植物の組合せから得られた抽出物の抗乾癬活性は、従来技術文献(CN 101181427)において知られている。この混合物のさまざまな構成要素の中に、アジア由来でDLと同じ科に属する植物であるフジモドキ(Daphne genkwa)(DG)を見い出すことができるが、常緑植物であるDLとは異なって、この植物は、落葉性である。DGは、珍しいアメジストの色相をもつライラックブルーの花についてもDLと区別される。
【0017】
動物の湿疹の治療のためのDLの使用は、非常に古い特許出願(GB 479688、1936年)からも知られる。いずれにせよ、家畜飼料と混合される、単純に乾燥させたか、または枯れた葉の使用が記載されており、経口用途が示されている。DLおよびその他のジンチョウゲ種は、摂取毒性を有し、そのヒトにおける経口使用は、推奨されるものではないので、このアプローチをヒトにおける使用に適用することができない。(「Natural remedies and Nutriceuticals Used in Ethnoveterinary Practices in Inland Southern Italy」、Pieroni et al.)。
【0018】
ジンチョウゲの摂取は、非常に深刻な結果をもたらし、らの「Isolation and structure of daphnetoxin、the poisonous principle of Daphne species」に報告されているように死に至ることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、局所的に使用することができ、一般的皮膚症、特に皮膚腫瘍および乾癬に対して従来技術よりも有効性が高く、医薬分野において有用でありうるのみならず、皮膚症に関連する皮膚疾患のすべてにおいて個人衛生のためにも有用でありうる製品に対する必要性があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概略
本発明は、一般的皮膚症、特に乾癬の治療のためのDL抽出物の局所適用を提案する。DL抽出物を、フジモドキ(DG)の抽出物とインビトロで比較した。これらの2種類の植物は、異なる起源および地理的分布を有し、さまざまな特徴によって区別され、DLは常緑性植物であり、DGは落葉性植物であり、DGは、また珍しいアメジストの色相をもつライラックブルーの花によってもDLと区別される。
【0021】
これらの2種類の植物を比較すると、予期せぬことに、DLがより有効であることが分かった。
【0022】
本発明は、特に乾癬に対しては、残念ながら今日では満足のいくものではない現在の療法に対する有効な代替物を提供する。
【0023】
したがって、本発明の目的は、医薬、化粧品および薬用化粧品分野で用いられるべき、ダフネ・ラウレオラから得られる抽出物である。
【0024】
本発明の抽出物は、単独で、または当業者に周知の異なる有効成分とともに、用いることができる。局所使用のために製剤される場合、それらは、経口投与を必要とすることなく、かつ副作用を引き起こすことなく、皮膚疾患を有効かつ迅速に改善することができる。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ダフネ・ラウレオラからの抽出によって得られたフィトコンプレックスを含む医薬、化粧品および薬用化粧品組成物である。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、有効量の、ダフネ・ラウレオラからの抽出によって得られたフィトコンプレックスの局所適用を含む、一般的皮膚症、特に乾癬の医薬、化粧品および薬用化粧品治療のための方法である。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、有効量のダフネ・ラウレオラからの抽出によって得られたフィトコンプレックスの局所適用による、一般的皮膚症、特に乾癬の治療のための、医薬、化粧品および薬用化粧品の分野における該フィトコンプレックスの使用である。フィトコンプレックスの使用は、たとえば、乾癬、ふけ症、皮膚腫瘍および光線角化症などの細胞の過剰増殖を特徴とする皮膚疾患の治療にとっても都合がよい。
【0028】
本発明のさらなる目的は、シャンプー、クレンジングミルク、トニックウォーター、水性溶液、アルコール溶液、含水アルコール溶液、マスク、エマルション、水系ゲル、リポゲル、フェイスおよびボディオイル、薬用パッチから選ばれる、フィトコンプレックスまたはそれを含む本発明の抽出物を含む少なくとも1つの製品、好ましくは少なくとも2つの製品を含む、医薬、化粧品および薬用化粧品キットである。
【0029】
さらなる目的は、以下の本発明の詳細な記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】IL-6(0.1および0.7 μg/ml)によるヒト角化細胞(NCTC2544細胞)の刺激:A)増殖パーセント;B)細胞数。各実験は、3つの異なる評価の平均±標準偏差である。
図2】MTTアッセイによるヒト角化細胞(NCTC2544細胞)におけるDL抽出物の24時間における毒性学的評価:A)増殖パーセント;B)細胞数。各実験は、3つの異なる評価の平均±標準偏差である。
図3】MTTアッセイによるヒト角化細胞(NCTC2544細胞)におけるDL抽出物の72時間における毒性学的評価:A)増殖パーセント;B)細胞数。各実験は、3つの異なる評価の平均±標準偏差である。
図4】NCTC2544細胞の乾癬モデルにおける、DLおよびDG煎出液ならびにDLの冷浸によって得られた抽出物による処置の48時間後のインビトロ抗乾癬活性の評価:a)細胞増殖の阻害;b)細胞数。各実験は、3つの異なる評価の平均±標準偏差である。
図5】乾癬を患っている患者における処置の開始時における乾癬プラークの身体分布(B.R.):A)正面、B)背面、C)正面拡大。
図6】煎出液の溶液の毎日適用後の、図5と同じ患者における乾癬プラークの退縮:A)正面拡大、B)正面。
図7】グリセリン混合物の毎日適用前(A)および後(B)の乾癬プラーク。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な記載
本発明のDLフィトコンプレックスを含む抽出物を、植物、好ましくは開花していない植物から得る。抽出物を葉から得るのが好ましいが、いずれにせよ植物のすべての部分を用いることができる:花、果実、葉、茎および根の生ものおよび乾燥物の両方。収穫後、サンプルを濯いだ後、生の状態で用いることができるが、あるいは、ストーブで乾燥させることができる(たとえば、完全に脱水されるまで22度の換気ストーブで)。
【0032】
たとえば、「Botanicals、a Phytocosmetic Desk Reference」 Frank S. D’Amelio、CRC Press、pg. 39-48に記載されているような、当業者に周知の天然物抽出の分野で従来から使用された方法にしたがって、本発明の抽出物を製造することができる。
【0033】
抽出を行なうために用いられるべきである溶媒が、たとえば、以下から選ばれる極性溶媒などの薬草の分野で通常用いられる溶媒であるのが好ましい:水、エタノール、グリセロール、プロパノール、ブタノール、アセトン、エチレン-,プロピレン-およびブチレン-グリコールなどのグリコール、酢酸エチル、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール、さまざまなエーテルおよび対応する混合物。水、あるいは任意の比率のエタノールと水との溶媒混合物が、特に好ましい。
【0034】
特に適しているのは、本願明細書において後述する、浸出(infusion)、煎出(decoction)および冷浸(maceration)による抽出技術である。
【0035】
浸出は、最も単純で速い抽出技術である。それは、好ましくはカバーをするか、または密閉した容器内での、予め沸騰させた水中における10〜約30分間という短時間の薬物浸漬(葉および/または植物のその他の部分、生ものまたは乾燥)を提供する。使用した植物組織の堅さに応じて、ハーブティー用の花、柔らかい葉およびみじん切りした植物の先端はより短時間の、より硬く強靭な部分はより長い時間の、所定の時間後、調製物をろ過し、残渣を少し押し付ける:このようにして得られた溶液が、フィトコンプレックスを含む浸出液である。
【0036】
煎出液は、10〜60分間、好ましくはカバーをするか、または密閉した容器内で、薬物を冷水に浸漬し、沸騰させることによって調製される。ろ過し、残渣を少し押し付けたる:このようにして得られた溶液が、フィトコンプレックスを含む煎出液である。
【0037】
生の植物の冷浸による抽出物は、薬物をアルコール溶液または含水アルコール溶液に、通常24時間またはそれ以上浸漬することによって得られる。
【0038】
次いで、浸出液、煎出液および冷浸による抽出液を、溶液の蒸発または凍結乾燥によって濃縮して、残留溶媒の量に応じて、十分に濃縮されるかまたは無水の抽出物を得ることができる。
【0039】
総無水残渣の少なくとも0.5重量%を含む抽出液をもたらす、パーコレーションまたは超音波および/またはマイクロウェーブによって補助された継続的攪拌下での抽出、超臨界流体を用いる抽出などの工業分野で通常用いられる他の抽出方法を用いることもできる。圧力をかける必要はない。
【0040】
抽出物をそのまま用いることができ、あるいは、異なる程度の濃縮乾固に付して、液体、半固体または無水抽出物を得ることができる。たとえば、減圧蒸発、噴霧乾燥および凍結乾燥などのこの分野で従来用いられている方法によって乾固を達成することができる。抽出物を、1グラムの抽出物が1〜1.5グラムの生の薬物に対応する濃度にすることができる。
【0041】
無水抽出物は、フィトコンプレックスの最も濃縮された形態を意味し、それらがより安定であり、水またはエタノールなどの本発明の用途に適した別の溶媒を加えることによって再構成されうるように、通常、脱水粉末の形態である。
【0042】
上述のように作成されたDLフィトコンプレックスを含む抽出物を、単独または他の有効成分と組合わせて、有効成分として用いて、医療および非医療分野の両方において用いられるべき組成物を調製することができる。
【0043】
製剤は、以下から選ばれれうるが、これらに限定されるものではない:1%〜90%の量のフィトコンプレックスを含む、シャンプー、クレンジングミルク、トニックウォーター、水性溶液、アルコール溶液、含水アルコール溶液、マスク、エマルション、水系ゲル、リポゲル、フェイスおよびボディオイル、薬用パッチ。
【0044】
使用可能である他の有効成分を、通例、医薬、化粧品および薬用化粧品分野で用いられるものから選ぶことができる。たとえば、酸化防止剤、精油、ビタミン、UVフィルター、コラーゲン、エラスチンである。
【0045】
組成物を、ゲル、ローション、ミルク、エマルション、フォームなどの液体製剤などの形態;固体またはクリーム、軟膏、スティックなどの半固体製剤などの形態で、局所投与用に用いることができる。該製剤を、たとえば、「Remington’s Pharmaceutical Handbook」、Mack Publishing Co.、NY、USA、および「Botanicals、a Phytocosmetic Desk Reference」 Frank S. D’Amelio、CRC Press、pg. 299-305に記載の方法などの従来の方法にしたがって、皮膚軟化剤、保湿剤、増粘剤、乳化剤、着色剤、界面活性剤、消毒剤、抗酸化剤、緩衝剤、艶消し剤、剥離剤、芳香剤など、精油、ビタミン、UVフィルター、コラーゲン、エラスチンおよびその混合物などの他の医薬的、薬用化粧品的および化粧品的に許容される成分とともに製造することができる。
【0046】
実施例中に組成物の例を記載するが、以下に簡単にまとめる:
-0.1〜5%の無水抽出物を含有するクレンジングミルク;
-0.5〜10%の無水抽出物を含有するエマルション;
-5〜20%の無水抽出物を含有する水系ゲル;
-0.5〜20%の無水抽出物を含有する水性ローション;
-5〜2%の無水抽出物を含有する薬用パッチ;
-0.5〜10%の無水抽出物を含有するシャンプー。
【0047】
本発明の抽出物は、その生物学的複雑性を実質的に無傷のままに維持しながら、非精製単離物として有利に用いられる。
【0048】
本発明の抽出物ならびに対応する医薬、化粧品および薬用化粧品組成物は、一般的皮膚症の予防および治療において特に有効であることが明らかにされた。該皮膚症のうち、最も頻繁に起こるタイプは、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、慢性皮膚炎および非特異的皮膚炎などの皮膚炎;ふけ症;光線角化症;メラノーマ、基底細胞ガン、有棘または扁平上皮細胞ガンなどの皮膚腫瘍;ならびにプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、紅皮症乾癬、脂漏性乾癬および石綿状癬などのさまざまな形態の乾癬である。
【0049】
身体のすべての部分が、これらの病変に関与し、特に、赤化および落屑斑は、肘、手のひら、膝、足底および頭皮などの部分に局在化する。
【0050】
罹患した患者は、乳児または青年でもありえ、このタイプの病変は、動物にも存在する。
【0051】
本発明のDL抽出物は、単独またはワセリン、コルチゾン製剤および/または縮小剤(タールまたはジトラノール)、角質溶解剤(サリチル酸および/または尿素)およびビタミンD類縁体などの限定された局所皮膚軟化剤製剤;ソラーレン(光化学療法またはPUVA療法)によるUVB光線療法またはUVA光線療法、レチノイドの使用(アシトレチンおよびエトレチナート)またはシクロスポリンAなどの全身療法;モノクローナル抗体、サイトカイン(インターフェロンおよびインターロイキン)、融合タンパク質および組織増殖因子との併用で適用されうる。
【0052】
本発明の利便性は、ダフネ・ラウレオラフィトコンプレックスの特定の有効性によるのみならず、治療作用が経口投与されることなく局所レベルで発揮されるという事実にもよる。さらに、我々の実験観察によって明らかにされたように、重要な利点は、治療の中断後、病変が少なくとも6ヶ月間再度出現しないように思われることである。さらなる利点は、ダフネ属の他の植物に対するダフネ・ラウレオラのより高い薬理学的有効性において見い出される。
【0053】
本発明を以下の実施例に関して説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0054】
実験部
煎出液調製
DLおよび煎出液を、生の植物の葉を5% w/vで水に浸漬(50 gの生の葉を1000 mlの水に浸漬)することによって調製し、体積が半分になるまで約2時間沸騰させた。煎出液を放冷し、次いで、ろ過した。
【0055】
冷浸による抽出物調製
生の植物を室温にて24-48時間、96%エタノール中で冷浸(200 gの生の植物を1リットルの溶媒に冷浸) (極性および非極性化合物用の広範囲可溶化溶媒)し、植物材料を3回抽出し(完全抽出)し、抽出溶媒を除去した後、抽出物を1つの抽出物にてプールすることにより抽出物を得た。植物材料中に存在するすべての二次成分を抽出するための溶媒として96%エタノールを選んだ。
【0056】
抗乾癬活性のインビトロ評価
ヒト角化細胞(NCTC2544)、(Emilia and Lombardia Experimental Zooprophylactic Institute)において、抗乾癬活性のインビトロ評価を行なった。NCTC2544をペトリ皿(直径100 mm)に播種し、ペニシリン(50 U/ml)、ストレプトマイシン(50 μg /ml)、非必須アミノ酸、アンホテリシンB(50 μg /ml)およびウシ胎児血清(FBS)(10% v/v)を補足したD-MEM培養培地(GIBCO、Invitrogen Corporation、U.K.)を用いてインキュベートした。インキュベーションを、細胞インキュベーター中、5% CO2下、37℃にて行なった。細胞を3日間培養して、細胞モデルを集密度80%に到達させた。3日間のインキュベーション後、1 mlのトリプシン/EDTAを用いて細胞をペトリ皿から剥がし、15 mlの遠心管に移した。2 mlの培養培地を用いて、ヒト角化細胞を中和した。カルシウムおよびマグセシウムを含まない2 mlのリン酸緩衝液(PBS)を用いてペトリ皿を洗浄し、次いで、遠心管に移した。このようにして得た細胞懸濁液を、Megafuge 1.0遠心分離機(Heraeus Sepatech、Osterode/Harz、ドイツ)を用いて、1000 rpmで室温にて10分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを6 mlの培養培地に再懸濁して、最終濃度1x106細胞/mlにて細胞懸濁液を得た。次いで、懸濁液200 μlを2500細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、5% CO2下、37℃にて24時間インキュベーショトして、接着させた。
【0057】
抗乾癬活性を評価するための実験モデルは、インターロイキン6(IL-6)で線維芽細胞を刺激して作成された。IL-6は、細菌細胞培養において産生され、システムは、文献(Arcone et al.、1991)に既述の方法を用いて精製された。NCTC2544細胞を、5% CO2下、37℃にて48時間、濃度0.7 μg/mlのIL-6で処置した。48時間のインキュベーション後、NCTC2544細胞を、予め凍結乾燥した煎出液で、濃度を増加させて(0.01、0.1、1、10 % w/v)48時間および96時間処置した。内部コントロールとして、非処置のヒト角化細胞の培養物を、実験モデルを作成するために用いたものと同じ濃度で用いた。DLの場合、冷浸によって得られたアルコール抽出物の抗乾癬活性も評価した。MTTアッセイを用いて、製剤のインビトロ抗乾癬活性を測定した。特に、異なるウェルに入れたNCTC2544細胞を、PBSに溶解したテトラゾリウム塩の溶液10 μlで処置し、5% CO2下、37℃にて4時間インキュベートした。4時間後、ウェルの底に沈殿したホルマザンの血漿を、のエタノール/ジメチルスルホキシド溶液で可溶化し、励起λ 540 nmおよび発光λ 690 nmにて細胞濃度を分光光度的に測定することによって、増殖の減少を細胞の生存率として測定した。増殖の減少は、細胞吸光度に直接比例する得られたホルマザン結晶の量と相関した。
【0058】
増殖パーセントにおける減少を、以下の方程式:
減少%=(AbsT/AbsU)×100
[式中、AbsTは、処置細胞の吸光度であり、AbsUは、非処置細胞の吸光度である。]
を用いて決定した。得られた細胞増殖の増加パーセントは、3回の別の評価±標準偏差の平均である。
【0059】
さまざまな濃度パーセントの煎出液または冷浸によって得られた抽出物による処置後の細胞数の減少を測定するインビトロ評価アッセイを行なった。
【0060】
得られた実験結果は、DL煎出液および冷浸抽出物溶液によって生み出された増殖阻害における効果が、時間および用量依存性の両方であることを明らかにした。0.7 μg/mlのIL-6で48時間刺激されたNCTC2544細胞に対する、0.1% v/vの濃度での48時間の煎出液による処置は、増殖が50%減少し、0.1% v/vの濃度での48時間の冷浸抽出物による処置は、増殖が52%減少した。増殖パーセントの低下に関して得られた結果は、煎出液または冷浸抽出物のパーセントを増加させるとより明らかであり、1%(v/v)の濃度では、35および33パーセントに、10%(v/v)の濃度では、25および26パーセントに減少した(図4a)。この用量依存性効果は、乾癬実験モデルと相互作用しうるフィトコンプレックスの増量によって生み出された可能性が高く、処置のために用いた煎出液または冷浸抽出物のパーセントが増加する場合に起こる。
【0061】
細胞数の関数としての煎出液の抗乾癬活性を表す、増殖阻害パーセントについて得られたものと類似の結果が得られた。この場合、NCTC2544角化細胞の数は、14499細胞から6233、1344および787細胞/0.1 ml(それぞれ、0.1、1および10% v/vの煎出液溶液で処置されたサンプル)に減少した。
【0062】
DL煎出液を、同じ手順にしたがって調製され、同じ条件で用いられたDG煎出液と比較した。すべての濃度およびすべての曝露回数において、DL抽出物は、DG煎出液よりも有意に高い効果を示した。実際のところ、0.1%の濃度のDL煎出液溶液は、DGと比較して2倍以上高い角化細胞増殖阻害パーセントを示した。この理由から、DL煎出液のみにおいて、以下のインビボ実験を行った。
【0063】
DL煎出液毒性のインビトロ評価
24、48および72時間のインキュベーション後に、使用した生成物v/vパーセントの関数として、DL煎出液毒性を評価した。予め凍結乾燥した煎出液の濃度の増加(0.01、0.1、1、10% w/v)を、上述のMTTアッセイを用いて評価した。化合物毒性を生存率パーセントの関数として評価した。得られた値は、6回の異なる実験±標準偏差の平均である。
【0064】
図2に示す実験データは、細胞の生存率として表されるNCTC2544の構造的および機能的統合性が、24時間の処置後において、使用したすべての煎出液抽出物濃度(0.01、0.1、1および10 % v/v)において94%を超えることを明らかにする。細胞の生存率の変動に関する有意でない差異は、煎出液パーセンテージを0.01から10% v/vに増加させた場合に見られたが(図2a)、植物材料から抽出されたフィトコンプレックスの成分が、ヒト角化細胞における副作用を誘導しうるメカニズムを活性化せず、我々の身体の防御メカニズムと完全に生体適合性であるという理由であるかもしれない。実験結果は、ヒト角化細胞の数が、使用した煎出液溶液のv/v濃度とは独立して、常に19,000細胞/0.1 mlより多いことも証明した(図2b)。
【0065】
抗乾癬活性のインビボ評価
試験プロトコルを説明され、インフォームドコンセントを与えた30人の患者(試験が行われる医療行為において記録された)においてDL煎出液を用いて試験を行った。4人の患者を、グリセリンと混合した、乾燥およびみじん切りした葉の混合物(グリセリン混合物)で処置した。
【0066】
DL煎出液による処置
ベースライン病変の記録として、提案する処理の有効性を評価するために、患者の承諾を得て処置前に写真を撮った(図5)。
【0067】
患者に、コットンガーゼで煎出液をこすり付ける処置を1日2回行うことを依頼した。
【0068】
プラーク緩和後、処置を、1日1回にして1ヶ月行なった。
【0069】
図6に示すように、煎出液で処置されたすべての患者は、20日間の処置の後ですでに総乾癬プラーク緩和を示した。
【0070】
乾燥DL葉による処置
1日2回のグリセリン混合物を用いて、先の試験と同じ試験を繰り返した。
煎出液で処置された患者とは異なって、乾燥葉で処置された患者は、1ヶ月間の処置の後でも有意な改善を示さなかった(図7)。
【0071】
DL煎出液を含む技術的製剤の調製
本発明で記載したDL煎出液は、局所的に使用されることを意味し、皮膚に適用されるさまざまな製品(水系ゲル、エマルション、界面活性剤製品、ローション)のための出発点である。
【0072】
たとえば、以下の製剤を製造した(使用したすべての製品は、市販されており、化粧品および薬用化粧品製造の分野で周知である):
ゲル-1
水中のDL抽出物 0.5-5%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.5%
保存剤 0.2%
水 100への適量
【0073】
抽出物を保存水に加え、50℃に加熱し、次いで、ヒドロキシプロピルセルロースを加える。溶液を激しく攪拌する。
ゲル-2
水中のDL抽出物 0.5-5%
カルボマー 1.5%
保存剤 0.2%
トリエタノールアミン pH 4.5への適量
水 100への適量
【0074】
抽出物を保存水に加え、pHをトリエタノールアミンで調節して溶液を攪拌する。
O/Wエマルション
油相
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド 7.5%
PEG 15 ステアリルエーテル 7.5%
イソヘキサデカン 15%
シリコンオイル 5%
PEG-10 グリセリルオレイン酸イソヘキサデカンコハク酸塩 4%
水相
水中のDL抽出物 0.5-5%
蒸留水 100への適量
カルボマー 2%
保存剤 0.2%
【0075】
継続的に軽く攪拌しながら、水相に油相を75℃にて加えることによって、O/Wエマルションを調製する。エマルションの製造を、オープンターボ乳化機内で行う。
【0076】
参考文献
1. H. Fleisch、A. Reszka、G.A. Rodan、M. Rogers、Bisphosphonates-mechanism of action、in:J.P. Bilezikian、L.G. Raisz、G.A. Rodan (Eds.)、Principles of Bone Biology、2nd ed.、Academic Press、San Diego、2002、pp. 1361-1385.
2. M.D. Fancis、I. Fogelman、99mTc diphosphonate uptake mechanism on bone、in:I. Fogelman (Ed.)、Bone Scanning in Clinical Pactice、Springer-Verlag、New York、1987、pp. 7-17.
3. H.M. Lamb、D. Faulds. Samarium 153Sm lexidronam、Drugs Aging 1997、11、413-418.
4. USA Patent Application 20090123383、Frangioni、Jhon、“Non isotopic detection of osteoblastic activity in vivo using modified bisphosphonates”.
5. J. D. Wang、S.C. Miller、M. Sima、P. Kopeckova、J. Kopecek. Synthesis of polymeric bone-targeting drug delivery systems. Bioconjug. Chem. 2003、14、853-859.
6. Frank S. D’Amelio Sr. Botanicals:A Phytocosmetic Desk Reference. CRC Press;1st edition (December 21、1998).
7. Stout、G. H.;Balkenhol、W. G.;Poling、M.;Hickernell、G. L. “Isolation and structure of daphnetoxin、the poisonous principle of Daphne species”. 1970 J Am Chem Soc、92(4)、1070-1071.
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
【国際調査報告】