【実施例】
【0097】
略号:
Boc、t−ブトキシカルボニル;
BSA、ウシ血清アルブミン;
DIEA、ジイソプロピルエチルアミン;
DMF、N,N−ジメチルホルムアミド;
EDT、エタンジチオール;
Fmoc、9−フルオレニルメトキシカルボニル;
HATU、2−(1H−9−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
HBTU、2−[1H−ベンゾトリアゾール−1−イル]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
HOBt、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール;
Pbf、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;
NMP、N−メチルピロリドン;
MBHA、メチルベンズヒドリルアミン;
OD、光学濃度;
iPr
2O、ジイソプロピルエーテル;
PCR、ポリメラーゼ連鎖反応
PyBOP、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリピロリジノホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート;
PEO6、N−Fmoc−21−アミノ−4,7,10,13,16,19−ヘキサオキサヘンエイコサン酸(hexaoxaheneicosanoic acid)
r.t.、室温;
RP−HPLC、逆相高速液体クロマトグラフィー;
TA、チオアニソール;
TIS、トリイソプロピルシラン;
Trt、トリチル;
TFA、トリフルオロ酢酸;
TFE、2,2,2−トリフルオロエタノール;
t
R、保持時間;
SD、標準偏差。
【0098】
実施例1: PRペプチドの設計及び合成
極めて高毒性血清型1臨床分離株SP1577から得たPspAのプロリンリッチ領域(Leimkugelら、JID、2005年、第192巻、p192-199)を増幅し、Hollingshead、Beckerら、Infect Immun、2000年、第68巻、p5889−5900に従い、2つのプライマー(LSM13及びSKH2)を用いて配列決定した。
LSM13:5’−GCAAGCTTATGATATAGAAATTTGTAAC−3’(配列番号:120)
SKH2:5’−CCACATACCGTTTTCTTGTTTCCAGCC−3’(配列番号:121)
【0099】
プロリンリッチ領域の増幅を、プライマーLSM13とSKH2、及びGoTaqポリメラーゼを用いて、PCRにより実施した(PCR条件:48℃で1分間アニーリングし、72℃で3分間、30サイクルにて伸長)。得られたサイズ約1.2kbのフラグメントを、PCR反応物から単離し、プライマーLSM13とSKH2を用いて配列決定した。pspA遺伝子のうち約1’100塩基が読み取り可能であった。翻訳後のヌクレオチド配列を以下に示す。非プロリンブロックを含めると共に、プロリンリッチ領域をイタリック体で示す。
XXLGAGFVXX XPTXXXXXEA PVASQXKAEK DXDAXKRDAE NXKKALEEAK XXQKKYEDDQ KKTEEKXKKE KEASKEEQAA NLKYQQELVK YASEKDSVKK AKILKEVEEA EKEHKKKRAE FEKVRSEVIP SAEELKKTRQ KAEEAKAKEA ELIKKVEEAE KKVTEAKQKL DAERAKEVAL QAKIAELENE VYRLETELKG IDESDSEDYV KEGLRAPLQS ELDAKRTKLS TLEELSDKID ELDAEIAKLE KNVEYFKKTD AEQTEQYLAA AEKDLADKKA ELEKTEADLK KAVNEPEKPA EETPAPAPKP EQPAEQPKPA PAPQPAPAPK PEKTDDQQAE EDYARRSEEE YNRLPQQQPP KAEKPAPAPK PEQPVPAPKT GWKQENGMWC R(配列番号122)
【0100】
この配列から、P1 PR配列(PAPKPEQPAEQPKPAPAPQPAPAPKPEKT、配列番号:27)を選択した。P1は、SP1577 PspAのヘリカル/コイルドコイル領域と非プロリンブロックとの間に位置する。
【0101】
SVLPリポペプチドとのコンジュゲーションが可能となるようにするために、下記のマレイミドペプチドを設計及び合成した:
【0102】
マレイミドペプチド1:
【0103】
マレイミドペプチド1では、3−マレイミドプロピオン酸が、21−アミノ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサヘンエイコサン(hexaoxaheneicosan)−21−オイック酸リンカーを介して、P1(配列番号:27)のN末端に連結しており、またグリシンがP1のC末端に付加され、その後にエキソプロテアーゼに対して安定性を付与するために、アミド(「NH
2」)としてD−アラニン残基(「a」)が続く。
【0104】
マレイミドペプチド1の合成は、Fmoc固相ペプチド合成(SPPS)法を用いて以下のように実施した:
【0105】
ペプチドPAPKPEQPAEQPKPAPAPQPAPAPKPEKTGa(配列番号:27、グリシン−D−アラニンだけ延長されている)を、Rink Amide MBHA樹脂(ローディング:0.69mml/g)(362mg、0.25mmol)、及び標準Fmoc−SPPSプロトコールを用いて、ABI 433Aペプチドシンセサイザー上で組み立てた。下記のアミノ酸を用いた(しかるべき順序で):Fmoc−Ala−OH、Fmoc−D−Ala−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Pro−OH、及びFmoc−Thr(tBu)−OH。組み立て及びN末端Fmoc保護基の除去後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びCH
2Cl
2で、樹脂を洗浄した。マレイミドのカップリングの場合、樹脂の一部分(約0.1mmol)をDMFで洗浄し、4.5mlのDMFに溶解したFmoc−PEO6−OH(115mg、0.2mmol)、PyBOP(104mg、0.2mmol)、HOBt(27mg、0.2mmol)及びDIEA(66μl、0.4mmol)の溶液を調製し、30秒間混合し、アルゴン下で樹脂に添加した。混合物を16時間振盪させた。樹脂を濾過し、4×のDMFで洗浄した。次に、DMFに溶解した20%ピペリジンで処理してFmoc基を除去した(6×2分)。次に、樹脂をDMFで再度洗浄し、DMFに溶解した3−マレイミドプロピオン酸(34mg、0.2mmol)、PyBOP(104mg、0.2mmol)、HOBt(27mg、0.2mmol)、及びDIEA(66μl、0.4mmol)の溶液を調製し、アルゴン下で樹脂に添加した。樹脂を3時間振盪させ、濾過し、連続して4回、DMF、CH
2Cl
2、及びMeOHで洗浄し、減圧下、KOHペレット上、一晩乾燥した。樹脂からペプチドを切り離し、側鎖保護基を除去する場合、85:5:5:5のTFA/TIS/TA/フェノール(10ml)を調製し、アルゴン雰囲気下で乾燥樹脂に添加した。樹脂を3時間振盪させ、濾過し、マレイミドペプチド1をiPr
2Oで沈殿させ、−20℃に事前冷却した(50ml)。次に、ペプチドを4回、iPr
2Oで洗浄し、一晩風乾し、調製用のC18カラム(Agilent Zorbax SB300 PrepHT、250×21.5mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、16分間で10−40%MeCNのリニアグラジエントを用いて、RP−HPLCにより精製し、凍結乾燥して、白色粉末として1を得た。ペプチドを、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用のRP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=8.53分。
ESI−MS:C
163H
259N
41O
51のMW計算値:3609.1Da;MW実測値:3609.7(±0.02%)。
【0106】
マレイミドペプチド2:
【0107】
このマレイミドペプチドでは、グリシンがP1(配列番号:27)のC末端に付加され、マレイミドがアミノエチルスペーサーを介してグリシンP1に連結している。N末端はアセチル化されている。
【0108】
マレイミドペプチド2内のペプチド鎖を、1について記載した場合と同様に、ABI 433A上で、Fmoc SPPSを用いて組み立てたが、但し、Rink Amide MBHA樹脂の代わりに、固相支持体として0.6mmol/g(416mg、0.25mmol)の樹脂置換レベルまで、Fmoc−Gly−OHで事前ロードした2−クロルトリチル樹脂を用いた点を除く。組み立て及びN末端Fmoc保護基の除去後、NMP(10ml)に溶解した0.5MのAc
2O、0.05MのHOBt、及び0.136MのDIEAの溶液で、30分間振盪させながら処理することにより、樹脂をアセチル化した。次に、樹脂をDMFで4回、CH
2Cl
2で4回洗浄し、2:8のTFE/CH
2Cl
2(10ml)で、アルゴン下、振盪させながら、4時間処理して、側鎖が完全に保護されたペプチドを樹脂から遊離させた。樹脂を濾過し、2:8のTFE/CH
2Cl
2、10mlで2回洗浄し、濾過液を濃縮し、4℃の冷却Et
2Oで保護されたペプチドを沈殿させ、Et
2Oで4回洗浄した。次に、保護されたペプチドを減圧下、一晩乾燥し、−20℃で保管した。
【0109】
マレイミドのカップリングの場合、未精製の側鎖保護ペプチドの一部分(100mg)、HATU(15mg、39μmol)、HOAt(5mg、39μmol)をDMF(0.8ml)に溶解し、DIEA(23μl、142μmol)を添加して、混合物を1分間撹拌した。DMF(0.2ml)に溶解したN−(2−アミノエチル)マレイミドTFA塩(150mg、60μmol)の溶液を添加して、混合物を3時間アルゴン雰囲気下で撹拌した。次に、DMFを減圧下で除去した。側鎖保護ペプチドを0.3mlのCH
2Cl
2に懸濁し、4℃の冷却Et
2Oで沈殿させ、Et
2Oで4回洗浄し、減圧下、一晩乾燥した。
【0110】
次に、側鎖保護基を除去し、ペプチドを上記1のように沈殿、精製を行い、最終生成物2を、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用のRP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=7.06分。MALDI−TOF MS:C
146H
227N
39O
43のMW計算値:3216.6Da;MW実測値:3215.7Da(±0.05%)。
【0111】
マレイミドペプチド3:
【0112】
マレイミドペプチド3では、3−マレイミドプロピオン酸は、21−アミノ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサヘンエイコサン−21−オイック酸リンカーを介して配列番号:113のN末端に連結しており、またC末端は、D−アラニン(「a」)によりキャップ化され、またアミド化されている。配列番号:113は、P1577 PspAの非プロリンブロックに対応する。
【0113】
マレイミドペプチド3を、上記マレイミドペプチド1のように合成及び精製し、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=5.31分。MALDI−TOF MS:C
174H
272N
50O
63のMW計算値:4072.3Da;MW実測値:4071.0Da(±0.05%)。
【0114】
その他のPR配列は、pspA又はpspC遺伝子の配列決定により取得可能である、又は、代わりにUniProtKB等の公開データベースにおいてアクセス可能である。例えば、血清型19A分離株TCH8431(UniProtKB受託番号D6ZPW2)のPspA配列は:
MNKKKMILTS LASVAILGAG FVTSQPTVVR AEESPVASQS KAEKDYDAAV KKSEAAKKHY EEAKKKAEDA QKKYDEDQKK TEAKAEKERK ASEKIAEATK EVQQAYLAYL QASNESQRKE ADKKIKEATQ RKDEAEAAFA TIRTTIVVPE PSELAETKKK AEEAKAEEKV AKRKYDYATL KLALAKKEVE AKELEIEKLQ YEISTLEQEV ATAQHQVDNL KKLLAGADPD DGTEVIEAKL KKGEAELNAK QAELAKKQTE LEKLLDSLDP EGKTQDELDK EAEEAELDKK ADELQNKVAD LEKEISNLEI LLGGADPEDD TAALQNKLAA KKAELAKKQT ELEKLLDSLD PEGKTQDELD KEAEEAELDK KADELQNKVA DLEKEISNLE ILLGGADSED DTAALQNKLA TKKAELEKTQ KELDAALNEL GPDGDEEETP APAPQPEQPA PAPKPEQPAP APKPEQPAPA PKPEQPAPAP KPEQPAKPEK PAEEPTQPEK PATPKTGWKQ ENGMWYFYNT DGSMATGWLQ NNGSWYYLNA NGSMATGWVK DGDTWYYLEA SGAMKASQWF KVSDKWYYVN SNGAMATGWL QYNGSWYYLN ANGDMATGWL QYNGSWYYLN ANGDMATGWA KVNGSWYYLN ANGAMATGWA KVNGSWYYLN ANGSMATGWV KDGDTWYYLE ASGAMKASQW FKVSDKWYYV NGLGALAVNT TVDGYKVNAN GEW(配列番号123)
である。
【0115】
この配列から、P2配列(PKPEQPAPAPKPEQPAKPEKPA、配列番号:28)を選択した。P2は、TCH8431 PspAのヘリカル/コイルドコイル領域直後に位置する。SVLPリポペプチドとのコンジュゲーションをし易くするために、下記のマレイミドペプチドを設計及び合成した:
【0116】
マレイミドペプチド4
【0117】
このマレイミドペプチドは、21−アミノ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサヘンエイコサン−21−オイック酸リンカーを介して、P2(配列番号:28)のN末端と連結した3−マレイミドプロピオン酸を含む。「a」は、D−アラニンを表す。C末端はアミド化されている。
【0118】
マレイミドペプチド4を、上記マレイミドペプチド1のように合成及び精製し、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=5.21分。MALDI−TOF MS:C
131H
210N
32O
4のMW計算値:2889.3Da、MW実測値:2888.8Da(±0.05%)。
【0119】
マレイミドペプチド5
【0120】
このマレイミドペプチドでは、グリシンがP2(配列番号:28)のC末端に付加されており、またマレイミドは、アミノエチルスペーサーを介してグリシンに連結している。N末端は、アセチル化されている。
【0121】
マレイミドペプチド5を、上記マレイミドペプチド2のように合成及び精製し、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=6.31分。ESI MS:C
113H
178N
30O
33のMW計算値:2484.8Da;MW実測値:2483.2Da(±0.02%)。
【0122】
マレイミドペプチド6
人工的なPR配列は、2つ以上の異なるPspAタンパク質に由来する短尺PR配列と融合させることにより生成可能である。例えば、配列P3(配列番号:29)は、P1のN末端残基PAPKPEQPAEQ(配列番号:124)をP2(配列番号:28)と融合させ、P2のC末端AlaをGly残基に置換することにより設計した。コンジュゲーションが可能となるようにするために、下記のマレイミドペプチドを設計及び合成した:
【0123】
マレイミドペプチド6を、上記マレイミドペプチド2のように合成及び精製し、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で10−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=10.11分。MALDI MS:C
164H
255N
45O
50のMW計算値:3657.1Da;MW実測値:3654.9Da(±0.05%)。
【0124】
PRペプチド抗原の更なる実施例について以下に記載する:
【0125】
マレイミドペプチド7
【0126】
マレイミドペプチド7を、上記マレイミドペプチド2のように合成及び精製した。ESI MS:C
91H
137N
25O
27のMW計算値:2012.0Da;MW実測値:2012.4Da(±0.05%)。
【0127】
マレイミドペプチド8
マレイミドペプチド8を、上記マレイミドペプチド2のように合成及び精製した。ESI−MS:C
81H
124N
22O
25のMW計算値:1804.9Da;MW実測値:1805.4Da(±0.05%)
【0128】
マレイミドペプチド9
【0129】
このマレイミドペプチドは、PhtD(P60、配列番号:86)のPRペプチドに由来する。N末端はアセチル化されている。マレイミドペプチドを、上記マレイミドペプチド2のように合成及び精製し、Agilent XDB−C18カラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で20−100%MeCNのリニアグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=3.41分。ESI−MS:C
136H
201N
37O
48のMW計算値:3120.4Da;MW実測値:3120.6Da(±0.05%)。
【0130】
実施例2: PRペプチド抗原のリポペプチドへのコンジュゲーション
免疫化用のリポペプチドコンジュゲートを調製するために、下記の4つのリポペプチドビルディングブロックを合成した。
【0131】
リポペプチドビルディングブロック10
【0132】
このリポペプチドは、国際公開第2008/068017号の実施例13に対応する。国際公開第2008/068017号及びGhasparian、Riedelら、Chembiochem、2011年、第12巻、p100−109の記載に従い、合成を実施し、生成物の特徴づけを行った。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、H
2O(+0.1%TFA)中、25分間で25−100%MeCN):純度>96%、t
R=22.71分。MALDI−TOF:C
312H
552N
74O
85S
3のMW計算値:6796.4Da;MW実測値:6798.2Da(±0.05%)。
【0133】
リポペプチドビルディングブロック11
【0134】
このリポペプチドビルディングブロックは、修飾されたコイルドコイルドメインを含有し、ヘプタドリピート「defgabc」IEKKIEG(配列番号:125)の「c」の位置にGlyを有する。
【0135】
修飾されたリポペプチドビルディングブロックを、国際公開第2008/068017号の記載に従い、合成及び精製した。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、H
2O(+0.1%TFA)中、25分間で25−100%MeCN):純度>98%、t
R=21.41分。ESI−MS:C
308H
544N
74O
85S
3のMW計算値;6740.3Da;実測値6741.7Da。
【0136】
リポペプチドビルディングブロック12
【0137】
このリポペプチドビルディングブロックは、修飾された脂質であるN,N’−ジパルミトイル−2,3−ジアミノプロピオンアミド(「Pam
2Dap」)を含有する。「a」は、D−アラニンを意味する。
【0138】
リポペプチドビルディングブロックを、国際公開第2008/068017号の記載に従い合成及び精製したが、但し合成終了時にPam2Cysの代わりにPam2Dapを組み込んだ点を除く。リポペプチドを、分析用HPLC及びMSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=22.1分。ESI−MS:MW計算値9594.5Da、実測値9596.17Da。
【0139】
リポペプチドビルディングブロック13
【0140】
このリポペプチドビルディングブロックは、インフルエンザ赤血球凝集素残基307−309(配列番号:19)から得られたHLA−DRB101拘束性エピトープに由来する乱雑なTヘルパーエピトープ(KYVKQNTLKLARK、配列番号:126)を含有する(Stern、LJ.ら、Nature、1994年、第368巻、p215)。「a」は、D−アラニンを意味する。
【0141】
リポペプチドビルディングブロックを、実質的に国際公開第2008/068017号の記載に従い合成及び精製し、分析用HPLC及びMSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=22.35分。ESI−MS:C
302H
538N
74O
79S
2のMW計算値:6530.0Da;実測値6530.4Da(±0.05%)。
【0142】
下記のコンジュゲートを合成した:
【0143】
コンジュゲート14(マレイミドペプチド1+リポペプチド10)
【0144】
実質的に国際公開第2008/068017号の記載に従い、1−10のコンジュゲーションを実施した。1:1のH
2O/MeCNに10(6.0mg、0.9μmol)を溶解した溶液(3ml)に、1:1のH
2O/MeCN(2.4ml)に1(4.8mg、1.3μmol)を溶解した溶液を添加した。0.1 NaOHで、pHをpH6.5−7.0に慎重に調整及び維持し、混合物を2時間、室温で撹拌した。次に、C4調製用のカラム(Interchrom UP5WC4−25M、250×10mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、17分間で50−100%MeCNのグラジエントを用いて、コンジュゲートをRP−HPLCにより精製した。コンジュゲート14を、Interchrom UP5WC4−25QSカラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で20−100%MeCNのグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=22.34分。MALDI−TOF MS:C
475H
811N
115O
136S
3のMW計算値:10406.6Da;実測値10407.8Da(±0.1%)。
【0145】
コンジュゲートをPBSに懸濁し、30分間平衡化し、0.5mg/mlに稀釈し、Wyatt DynaPro Titan装置上、レーザー強度400’000カウント/秒及び取得時間10秒を用いて、4℃、25℃、及び37℃において、動的光散乱(DLS)により分析した。正則化解析によるサイズ分布はモノモーダルであり、サイズ分散度は小さかった。25℃における平均流体力学的半径(R
h)は12.0nmであり、また%Pd値は12.3%であった。R
h及び%Pdについて類似した数値がその他の温度においても得られた。
【0146】
コンジュゲート15(マレイミドペプチド2+リポペプチド10)
【0147】
2−10のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を、実質的に上記コンジュゲート14のように実施した。生成物15を、Interchrom UP5WC4−25QSカラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で20−100%MeCNのグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=22.41分。ESI−MS:C
458H
779N
113O
128S
3のMW計算値:10012.9Da;実測値10011.1Da(±0.1%)。
【0148】
コンジュゲート12のPBS中懸濁物を調製し、上記14のようにDLSを用いて分析した。25℃において、R
h数値は13.2−14.2nmの範囲であり、また%Pd値は12.6−18.0%の範囲であった。
【0149】
コンジュゲート16(マレイミドペプチド3+リポペプチド10)
【0150】
3−10のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を、実質的に上記コンジュゲート14のように実施した。生成物16を、Interchrom UP5WC4−25QSカラム(250×4.6mm)、及びH
2O(+0.1%TFA)中、25分間で20−100%MeCNのグラジエントを用いて、分析用RP−HPLCにより分析した:純度>97%;t
R=22.0分。MALDI−TOF MS:C
475H
811N
115O
136S
3のMW計算値:10869.8Da;実測値10’872.3Da(±0.1%)。
【0151】
コンジュゲート13のPBS中懸濁物を調製し、上記14のように、DLSを用いて分析した。R
h値は14.0−15.0nmの範囲、及び%Pd値は13.0−13.7%の範囲であった。コンジュゲート14及びコンジュゲート16粒子からなる混合物のDLS解析より、R
hとして12.3−13.3nm及び%Pd値として約25−26%が得られ、粒子を混合しても全体的なサイズ分布に変化がなかったことが示唆された。
【0152】
コンジュゲート17(マレイミドペプチド4+リポペプチド14)
【0153】
4−10のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を、実質的に上記コンジュゲート17のように実施した。生成物17を、C4分析用カラム(Interchrom、UP5WC4−25QS、4.6mm×250mm、300Å)上で逆相HPLCにより、及びMALDI−MSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=18.8分。MALDI−TOF MS:C
443H
762N
106O
126S
3のMW計算値:9685.6Da;実測値9686.2Da(±0.1%)。
【0154】
上記14のように、コンジュゲート17のPBS中懸濁物を調製し、DLSを用いて分析した。R
h値は11.1−11.8nmの範囲、及び%Pd値は約13%であった。
【0155】
コンジュゲート18(マレイミドペプチド5+リポペプチド10)
【0156】
実質的に上記コンジュゲート18のように、5−10のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を実施した。生成物18を、C4分析用カラム(Interchrom、UP5WC4−25QS、4.6mm×250mm、300Å)上で逆相HPLCにより、及びMALDI−MSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>96%。t
R=22.55分。MALDI−TOF MS:C
425H
728N
104O
118S
3のMW計算値:9279.2Da;実測値9280.2Da(±0.1%)。
【0157】
上記14のように、コンジュゲート18のPBS中懸濁物を調製し、DLSを用いて分析した。R
h値は10.0−10.5nmの範囲であり、また%Pd値は約16%であった。
【0158】
コンジュゲート19(マレイミドペプチド6+リポペプチド10)
【0159】
実質的に上記コンジュゲート14のように、6−10のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を実施した。生成物19を、C4分析用カラム(Interchrom、UP5WC4−25QS、4.6mm×250mm、300Å)上で逆相HPLCにより、及びMALDI−MSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>96%。t
R=22.34分。MALDI−TOF MS:C
476H
807N
119O
135S
3のMW計算値:10453.4Da;実測値10452.7Da(±0.1%)。
【0160】
上記19のように、コンジュゲート17のPBS中懸濁物を調製し、DLSを用いて分析した。R
h値は12.1−14.5nmの範囲であり、また%Pd値は12−20%であった。
【0161】
コンジュゲート20(マレイミドペプチド6+リポペプチド11)
【0162】
実質的に上記コンジュゲート14のように、6−11のコンジュゲーション及びコンジュゲートの精製を実施した。生成物20を、C4分析用カラム(Interchrom、UP5WC4−25QS、4.6mm×250mm、300Å)上で逆相HPLCにより、及びMALDI−MSにより分析した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>98%。t
R=22.34分。ESI−MS:C
454H
773N
113O
129S
3のMW計算値(スクシンイミドリング加水分解):9975.02Da;実測値9974.7Da(±0.01%)。
【0163】
上記14のように、コンジュゲート20のPBS中懸濁物を調製し、DLSを用いて分析した。R
h値は11.7−12.3nmの範囲であり、また%Pd値は約20%であった。
【0164】
コンジュゲート21(マレイミドペプチド4+リポペプチド11)
【0165】
上記コンジュゲート14のように、マレイミドペプチド4を11にコンジュゲーションし、コンジュゲートを精製した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=17.78分。C
439H
753N
105O
127S
3MW計算値:9630.5Da;実測値9631.2Da。
DLS(PBS中、0.5mg/ml、25℃):R
h=10.7nm;%Pd=12−13%。
【0166】
コンジュゲート22(マレイミドペプチド6+リポペプチド12)
【0167】
上記コンジュゲート14のように、マレイミドペプチド4を12にコンジュゲーションし、コンジュゲートを精製した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=18.37分。MALDI−TOF:C
440H
757N
107O
124S
2のMW計算値:9594.5Da、実測値9595.1(±0.1%)Da。
DLS測定(PBS中、0.5mg、25℃)より、R
hとして10.4−11.1nm、及び%Pd値として10−12%を得た。
【0168】
コンジュゲート23(マレイミドペプチド6+リポペプチド13)
【0169】
上記コンジュゲート14のように、マレイミドペプチド6を13にコンジュゲーションし、コンジュゲートを精製した。分析用RP−HPLC(C4カラム、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=18.25分。MALDI−TOF:C
448H
765N
113O
123S
2のMW計算値(スクシンイミドリング加水分解):9768.7Da、実測値9767.0Da(±0.1%)。
DLS測定(PBS中、0.5mg、25℃)より、R
hとして9.9−10.2nm、及び%Pd値として15−18%を得た。
【0170】
追加のリポペプチドを、PRペプチド抗原のN末端をリポペプチドビルディングブロックのC末端に融合させて調製した。下記の融合リポペプチドを調製した。
【0171】
リポペプチド(24)
【0172】
この例では、PR配列P7、PAPAPKPEQPAEQPKP(配列番号:33)を、GG(IEKKIEG)
4IEKKIAKMEKASSVFNVVNSK(配列番号:127)のC末端に直接融合させて、配列GG(IEKKIEG)
4IEKKIAKMEKASSVFNVVNSKPAPAPKPEQPAEQPKP(配列番号:128)を得た。Pam2Cysを付加してN末端を脂質化し、またD−アラニン(「a」)を、リポペプチド24のC末端に付加した。
【0173】
従来型の固相ペプチド合成法(W.C. Chan、P.D. White、Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach、Oxford University Press, Oxford、英国、2000年)を用いて、融合リポペプチド24を合成し、また上記リポペプチド10のように精製した。MALDI−TOF MS:C
369H
633N
89O
104S
2のMW計算値:8044.6Da;実測値:8044.6Da(±0.1%)。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、H
2O(+0.1%TFA)中、25分間で25−100%MeCN):純度>98%、t
R=20.48分。
DLS(PBS中、0.5mg/ml、25℃):R
h=10.7nm;%Pd=12−13%。
【0174】
リポペプチド(25)
【0175】
この例では、PR配列P7、PAPAPKPEQPAEQPKP(配列番号:33)を、GG(IEKKIEG)
4IEKKIAKYVKQNTLKLAR(配列番号:129)のC末端に直接融合させて、配列GG(IEKKIEG)
4IEKKIAKMEKASSVFNVVNSKPAPAPKPEQPAEQPKP(配列番号:130)を得た。Pam2Cysを付加してN末端を脂質化し、またD−アラニン(「a」)を、リポペプチド25のC末端に付加した。
【0176】
上記24のように、融合リポペプチド25を合成及び精製した。ESI−MS:C
360H
639N
91O
99SのMW計算値:7966.6Da;実測値:7967.0Da(±0.1%)。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、H
2O(+0.1%TFA)中、25分間で25−100%MeCN):純度>98%、t
R=21.41分。
DLS(PBS中、0.5mg/ml、25℃):R
h=12.2−13.7nm;%Pd=10−15%。
【0177】
実施例3: コントロールの調製
下記のコントロール化合物を、免疫化及びチャレンジ実験用に調製した。
【0178】
コンジュゲート26(非PRコンジュゲート)
【0179】
このコンジュゲートは、表面露出性の疎水性残基を除去するために、2つの突然変異(F594Q及びI602T)がStkP配列に組み込まれている点を除き、StkP(配列番号:115)のC末端部分(StkP−C;PASTA+C末端)を含有し、その結果、配列SVAMPSYIGSSLEQTKNNLIQTVGIKEANIEVVEVTTAPAGSAEGMVVEQSPRAGEKVDLNKTRVKISIYKPKTTSATP(配列番号:131)が得られた。C末端はa−NH2でブロックされたが、「a」はD−アラニンを表す。このコンジュゲート内のStkPペプチドは、NMRによれば、規則的なペニシリン結合タンパク質、及びSer/Thrキナーゼ関連(PASTA)ドメイン構造を取っている。
【0180】
対応するマレイミドペプチド27(3−マレイミドプロピオニル)−21−アミノ−4,7,10,13,16,19−ヘキサオキサヘンエイコサノイル−(配列番号:131)−a−NH
2)を合成し、上記14のように10にコンジュゲーションした。コンジュゲート26を、HPLC、MALDI−MS、及びDLSにより分析した。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、250×4.6mm、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=18.41分。MALDI−TOF:C
700H
1201N
177O
216S
5のMW計算値:15713.41Da;実測値15715.4Da(±0.1%)。DLS(PBS中、0.5mg/ml、25℃):R
h=16.3nm、%Pd=16.9%。
【0181】
リポペプチド28
【0182】
このリポペプチドでは、溶解度を改善するために、2つの突然変異が抗原に組み込まれた点(L366A、I370K;TIGR4 PspCナンバリング)を除き、C末端の31個のアミノ酸がTIGR4(配列番号:116)のPspCに由来するアミノ酸344−377に対応し、その結果、ペプチドAEDQKEEDRRNYPTNTYKTAELEKAESDVEV(配列番号:132)が得られた。C末端はr−NH2でブロックされた(式中の「r」は、D−アルギニンを表す)。このペプチドは、短いリンカー(KKK)を介して、ユニバーサルTヘルパー細胞エピトープCST.3*(配列番号:23)と更に連結している。
【0183】
国際公開第2008/068017号の記載に従い、リポペプチド28を合成及び精製し、HPLC、MALDI−MS、及びDLSにより分析した。分析用RP−HPLC(Interchrom UP5WC4−25QS、250×4.6mm、A=H
2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、25分間で20−100%B):純度:>95%。t
R=18.41分。MALDI−TOF:C
386H
654N
100O
121S
2のMW計算値:8696.1Da;実測値8696.0Da。DLS(PBS中、0.5mg/ml、25℃):R
h=7.9nm;%Pd=29%。
【0184】
組換えPspAタンパク質(rPspA)
肺炎連鎖球菌SP1577系統由来のPspAのプロリンリッチ領域をクローン化し、組換えTrx融合タンパク質(rPspA)として発現させた。SP1577系統由来の組換えPRのクローニング及び発現を、国際公開第2007/089866号の記載に従い実施した。純度及び同一性を、SDS−PAGE、抗PspA抗体を用いたドット−ブロット、及び質量分析により確認した。タンパク質の配列は、
MSDKIIHLTD DSFDTDVLKA DGAILVDFWA EWCGPCKMIA PILDEIADEY QGKLTVAKLN IDQNPGTAPK YGIRGIPTLL LFKNGEVAAT KVGALSKGQL KEFLDANLAG SGSGHMHHHH HHSSGLVPRG SGMKETAAAK FERQHMDSPD LGTDDDDKAM ADLKKAVNEP EKPAEETPAP APKPEQPAEQ PKPAPAPQPA PAPKPEKTDD QQAEEDYARR SEEEYNRLPQ QQPPKAEKPA PAPKPEQPVP APKPEQPVPA PKTGWKQE(配列番号133)
であった。
【0185】
非プロリンブロックを含めると共に、PspAプロリンリッチ領域をイタリック体で示す。
【0186】
実施例4: マウス免疫化試験
コンジュゲートを、マウスを対象として、肺炎連鎖球菌に対する免疫応答誘発性について試験した。すべての実験を、動物の愛護に関するスイス国諸規則に則り実施し、また所轄当局より承認を受けた。
【0187】
抗体応答の解析の場合、非近交系の6−8週齢のメスNMRI非近交系マウス(1群当たり10匹)を、3週間の間隔で2回、0日目及び21日目に、表4に示す処方物0.1mlで、皮下に免疫化した。コントロール動物を、PBS又は生理食塩水に溶解したrPspA+アラムで免疫化した。第1回目の免疫化の前、及び第2回目の免疫化後10日目に血液を収集し、プロリンリッチペプチドに対するIgG抗体の力価を測定するためにELISAを、内因性タンパク質に対するIgGを測定するためにウェスタンブロットを、及びインタクトな肺炎球菌に対するIgGの表面結合性を測定するためにフローサイトメトリーを用いて、血清を分析した。
【0188】
ELISAの場合、MaxiSorp96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc、Fischer Scientific社)を、PBSに溶解した5μl/mlのPRペプチド溶液又はrPspA溶液、pH7.2(50μl/ウェル)で、4℃、一晩コーティングした。実質的に国際公開第2008/068017号の記載に従い、ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)抗体(Sigma社、St.Louis、MO)、及びIgG検出用に1mg/mlのp−ニトロフェニルリン酸(Sigma社)を用いて、ELISAを実施した。エンドポイント力価を、試験血清のODが、PBSの平均OD+2SDより大きい最高血清稀釈として規定した。
【0189】
免疫血清のウェスタンブロット解析の場合、血液カンテンプレート内、37℃、5%CO
2にてSP1577を培養し、総細菌ライセートを調製した。ライセートを還元条件下でのSDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースメンブレン上でブロッティングした。ブロットを、免疫又はプレ免疫血清(PBSに1:500で溶解)と共にインキュベーションし、ECLシステムを用いて現像した。PspA特異的モノクロナール抗体を、陽性コントロールとして用いた。
【0190】
フローサイトメトリー解析(FACS)の場合、SP1577を上記のように培養し、ホルマリンで、30分間、不活性化し、PBSに溶解した5mg/mlの脂肪酸を含まないBSAでブロックし、約7×10
5個のCFUを、免疫又はプレ免疫血清(PBSに1:100で溶解)と共に、1時間、室温でインキュベーションした。Alexafluor488コンジュゲート二次抗体を用いて、表面に結合したIgGを検出した。
【0191】
ELISAの幾何平均エンドポイント力価(GMT)±平均の1×標準偏差(SEM)、及びウェスタンブロット及びFACS解析の結果(陽性と陰性の反応性)を表5にまとめる。
【0192】
抗体応答は、非近交マウスでは変動しやすかったが、ELISAで測定したとき、すべてのマウスが高力価の抗原特異的IgGを発現し、またほとんどの免疫血清中のIgGは、内因性PspA及びインタクトなSP1577細胞に結合した。プレ免疫血清及びPBS免疫化マウス由来の血清では、有意なレベルの抗原特異的IgGを検出することはできなかった。
【0193】
ウェスタンブロット、及びFACS、及びPspAファミリー1−3に由来する異なるクレードに属する異なるPspAを代表する遺伝学的に多様な肺炎球菌株のパネル、及び現在認可されている肺炎球菌コンジュゲートワクチンによりカバーされない血清型を含む異なる肺炎球菌莢膜血清型を用いて、誘発されたIgGの交差反応性を評価したが、上記ファミリーは、Hollingshead、Beckerら、Infect Immun、2000年、第68巻、p5889−5900に規定されている。
【0194】
SP1577について上記のように細菌を培養し、免疫化したマウスに由来する血清を用いてウェスタンブロット及びFACS解析を実施した。結果を下記の表6にまとめる。
【0195】
PRペプチド抗原構築物によっては、他のものより広範囲の交差反応性を有するIgGを誘発したが、遺伝学的に多様なパネルを用いて得られた結果から、PRペプチド抗原で免疫化すれば、広範囲の交差反応性を有するIgGが誘発されたことが示唆される。
【0196】
チャレンジ試験では、NMRI非近交系マウスを上記のような異なる処方物で免疫化した。免疫応答誘発性の比較では、追加の動物をrPspA+アラム、コンジュゲート44、又はリポペプチド46で免疫化した。マウスを、最終免疫化後10日間飼育し、セロコンバージョンを決定するために、上記のように血清をELISAで分析した。次に、チャレンジ前に投与したときにマウスにおいて高い毒性をもたらした、事前に決定された致死用量の100倍(100×LD
100)の肺炎球菌を用いて、マウスを尾静脈経由で経静脈的(iv)にチャレンジした。細菌を、腹腔内(ip)又は静脈内(iv)注射により投与した。チャレンジ後、マウスの健康状態を14日間にわたりモニタリングした。瀕死状態の動物を安楽死させ、瀕死状態に至るまでの時間を記録した。リポペプチド又はタンパク質で免疫化した動物の生存率及び瀕死状態に至るまでの時間を、PBS単独で免疫化した動物の場合と比較した。
【0197】
SP1577系統を用いて得られた結果を、下記の表7にまとめる。SP1577系統は、マウスにとって高い毒性を有する。未防御のマウスは、チャレンジ後、最初の12−24時間内で死亡した、又は瀕死の状態に陥った。従って、防御は高い有効性を示す。
【0198】
SVLPにコンジュゲートしたPRペプチド抗原で免疫化したマウスは、部分的に防御され、メジアン生存時間は、PBS免疫化マウス及びrPspAで免疫化したマウスの場合と比較して延長した。SVLP又はrPspAで免疫化したマウスについて得られた生存率の分布を、PBS単独で免疫化したマウス(陰性コントロール)と、対数順位検定により比較した。PRコンジュゲート単独で、又はこれをその他の抗原と併用して免疫化したマウスの結果は、PBS免疫化マウスの結果と有意に異なった。P値は、0.0027−0.0143の範囲であった。rPspAで免疫化したマウスの結果は、マウスによっては防御されたが、PBS免疫化マウスの結果と比較して有意に異ならなかった(P=0.1336)。群が大きくなるほど差異は有意となり得る。StkP及びPspC由来のコンジュゲートの結果は、PBSと比較して有意でなく、これらの抗原は、このモデルにおいて防御的ではないことを示唆する。
【0199】
受動免疫化/チャレンジ実験の場合、抗体が防御に関与しているか決定するために、モノクロナール抗体をマウス内で生成した。1つの実験では、BALB/cマウスを、コンジュゲート17で3回免疫化した。抗原特異的モノクロナールIgG抗体(mAbs)を生成する7つのB細胞ハイブリドーマ系統を、1つのマウスの脾臓細胞から生成し、異なる肺炎球菌系統との交差反応性について、FACS解析により試験した。1つのmAb(5H8)が、異なるPspAクレード及び莢膜血清型を示す、広範囲の系統(臨床分離株)に結合した。その他のmAbsは、ELISAにおいて、PR抗原に結合したが、インタクトな細菌には結合しなかった。エピトープマッピングより、mAb 5H8は、幅広く異なる多様なPspA配列に生ずるPRペプチドのC末端部分内のエピトープを認識するが、他方の6つのmAbsは、異なるPspA配列においてそれほど頻繁には見出されないその他のエピトープを認識したことが示唆された。チャレンジの場合、0.1−0.5mgの精製された5H8又はその他のmAbsを、NMRIマウス5匹の群に、iv注射により投与した。StkP由来のmAb(1A7)で受動的に免疫化した動物、及びナイーブ動物をコントロールとして用いた。平衡化するのに十分な時間を置いた後、マウスをivにより、継代した肺炎球菌でチャレンジし、健康状態及び瀕死状態に至るまでの時間を、上記のようにモニタリングした。SP1577系統を用いて得られた結果を下記の表8に示す。
【0200】
mAb 5H8のみ、受動免疫化後にナイーブマウスと比較して有意に異なる結果をもたらした。防御は用量依存性であった。MAbs 3H5及び1H9は、この受動的防御のモデルでは、有意な効果を示さなかった。配列決定より、SP1577系統のPspAは、5H8エピトープのみを含有し、その他2つのPR由来抗体のエピトープは含有しないことが判明した。このモデルにおいても、StkP由来のmAb 1A7について防御性は認められなかった。
【0201】
結果より、プロリンリッチペプチド抗原を担持するSVLP形成性リポペプチドで免疫化すると、単独で、又はその他の抗原と併用して投与したとき、アジュバントを同時投与しなくても、マウスにおいて高度に肺炎連鎖球菌と交差反応する抗体が誘発されることが示唆される。
【0202】
実施例5: ウサギ免疫化試験
非齧歯動物において抗体応答を特徴づけるために、コンジュゲート17、18、又は19をPBS、0.4mlに異なる濃度で溶解し、これをアジュバント(R848)が有る場合又は無い場合で、0、28、及び56日目の3回、scにて、ニュージーランドホワイトラビットを免疫化した(表9)。セロコンバージョンを決定するために、血液サンプルを0、14、38、及び66日目に採取した。
【0203】
プレ免疫血清及び第3回免疫化後の血清を、ウサギIgG特異的二次抗体、及びマウスについて上記したような様々な肺炎球菌分離株を用いて、ウェスタンブロット及びFACSにより分析した。IgG応答の発現も、実質的に上記のように、IgGを検出するために、4−ニトロフェニルリン酸と共にモノクロナール抗ウサギIgG(γ鎖特異的)アルカリホスファターゼ抗体を用いて、ELISAにより分析した。結果を表10に示す。免疫化したすべてのウサギでは、免疫化に応答して、内因的に発現したPspA及びインタクトな肺炎球菌上で発現するPspAに結合するIgGが生じた。プレ免疫血清は、これらのアッセイにおいて、有意な反応性を示さなかった。アジュバント無しで、低用量のコンジュゲートを投与した後の場合であっても、高力価のPRペプチド特異的IgG抗体が、免疫化したウサギに由来する免疫血清内で検出された。
【0204】
結果より、プロリンリッチペプチド抗原を担持するSVLP形成性リポペプチドで免疫化すると、アジュバントを伴わないで投与した場合でも、非齧歯動物において広範囲に交差反応性を有する抗体が誘発されることが示唆される。
【0205】
実施例6: BALB/cマウスにおける抗原特異的抗体応答の比較
コンジュゲート15SVLPにより誘発された抗原特異的抗体応答を、組換えPspAタンパク質で誘発された応答と比較した。6−8週齢のメスBALB/cマウス(1群当たり18匹)を、3週間の間隔で2回、0日目及び21日目に、上記実施例5のように調製したコンジュゲート15のPBS溶液、又はrPspA+アラムの生理食塩水溶液、0.1mlで皮下に免疫化した。第2回目の免疫化後10日目に血液を収集した。
【0206】
抗体応答の抗原特異性を決定するために、PR特異的抗体を測定するためのコーティング抗原としてPRペプチド配列番号:27、及び総抗PspA抗体(すなわち、N末端エピトープ、NPB、及びPRに対する抗体)を測定するためのコーティング抗原としてrPspAを用いて、実施例5に記載するように、ELISAを実施した。結果を
図1に示す。免疫化されないマウス由来の血清は、ELISAにおいて、いずれの抗原とも交差反応性を示さなかった。
【0207】
期待通りに、rPspAは、極めて免疫応答誘発性が高かったが(抗PspA IgG GMT±SEM=81’969±28’068)、有意レベルの抗PR抗体(抗PspA IgG GMT±SEM=213±218)を誘発することができなかった。コンジュゲート15SVLPに対して生じた抗体は、ELISAにおいて、PRペプチド(抗PspA IgG GMT±SEM=27’583±6’204)及びrPspA抗原(20’919±3’444)の両方を認識したので、これは、rPspAに対して生じた抗体が、PRペプチドに結合できないことに起因するわけではなかった。従って、rPspAに誘発された抗体の大部分は、N末端αヘリカル部分内のエピトープに結合すると考えられる。
【0208】
N末端αヘリカル部分を欠いているPspAは、PR特異的抗体をより誘発するか決定するために、マウスを切除型組換えPspA−Trx融合タンパク質(rPspA−δ−N末端;PR及びNPBを含有する)で免疫化した。驚くべきことに、切除型タンパク質も、有意レベルの抗PR抗体を誘発することができなかった:タンパク質につきGMT±SEMは128’496±28’481、及びPR抗原につき213±1’094であった。これは、コンジュゲート15SVLP−免疫化コントロール動物(タンパク質につき32’776±6974、及びPRペプチドにつき47’679±23’383のGMT±SEM)の場合よりも有意に小さかった。総じて、これらの結果より、SVLPは、組換えPspAよりも有意に高いレベルのPR特異的抗体を誘発することが示唆される。
【0209】
実施例7: チャレンジ用量増加に対する防御
チャレンジ用量の増加に対する免疫化BALB/cマウスの防御を決定するために、上記実施例6のように、マウスをコンジュゲート15又はrPspAで免疫化し、10
2−10
6CFUの血清型1細菌の用量を増加させて経静脈的にチャレンジを行い、生存率についてモニタリングした。標準化された肺炎球菌血清型1の細菌接種源を、Aaberge I.S.ら、Microbial Pathogenesis、1995年、巻18号、p141−152の記載に従い調製した。非免疫化マウスのLD
50を、細菌の用量を増加させながらBALB/cマウスに経静脈注射し、生存率についてモニタリングすることにより検証した。
【0210】
免疫化したマウスの防御は、細菌チャレンジ用量及び免疫原の種類に依存する。チャレンジ用量が低い場合、防御は、rPspA又はリポペプチドビルディングブロック15SVLPで免疫化した動物について同等であった(
図2を参照)。チャレンジ用量がより高い場合(100−10’000×LD
50)、コンジュゲート15SVLPで免疫化したマウスは、rPspAで免疫化したマウスより良好に防御された。総じて、これらの結果から、SVLPにより誘発された抗PR抗体は、rPspAに対して生じた抗体よりも広範囲の細菌チャレンジ用量において防御性を有することが示唆される。