特表2017-501992(P2017-501992A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-5019921−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501992(P2017-501992A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20161222BHJP
   C07C 19/12 20060101ALI20161222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161222BHJP
【FI】
   C07C17/20
   C07C19/12
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-536654(P2016-536654)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】FR2014053083
(87)【国際公開番号】WO2015082812
(87)【国際公開日】20150611
(31)【優先権主張番号】1362095
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボネ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】コリエ, ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ガレ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】セダ, ピエール−マリー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006AD11
4H006AD16
4H006BA14
4H006BA30
4H006BA55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BD33
4H006BD41
4H006BD52
4H006BE01
4H006EA02
4H039CA51
4H039CD20
(57)【要約】
本発明は、飽和フッ化炭化水素の分野に関する。本発明の主題は、より具体的には1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンからの1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの製造である。本発明は、1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを製造する方法であって、(i)気相中、任意選択的に酸化剤の存在下、フッ素化触媒の存在下又は非存在下で、1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンをフッ化水素酸と反応させて、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、塩化水素酸、フッ化水素酸、並びに1−クロロ−2−フルオロエチレン類(シス及びトランス)、1,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから選択される少なくとも一の化合物Cを含む流れを提供する少なくとも一つの工程を含む方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを製造する方法であって、気相中、任意選択的に酸化剤の存在下で、且つフッ素化触媒の存在下又は非存在下で、1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンをフッ化水素酸と反応させて、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、塩化水素酸、フッ化水素酸、並びに1−クロロ−2−フルオロエチレン類(シス及びトランス)、1,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから選択される少なくとも一の化合物Cを含む流れを提供する少なくとも一つの工程を含む方法。
【請求項2】
1,1,2−トリクロロエタンから1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを製造するための方法であって、(i)気相中、任意選択的に酸化剤の存在下で、且つフッ素化触媒の存在下又は非存在下で、1,1,2−トリクロロエタンをフッ化水素酸と反応させて、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、塩化水素酸、フッ化水素酸、並びに1,2−ジクロロエチレン類(シス及びトランス)、1−クロロ−2−フルオロエチレン類(シス及びトランス)、1,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタンから選択される少なくとも一の化合物Cを含む流れを提供する少なくとも一つの工程、(ii)この反応工程由来の化合物を分離して、塩化水素酸を含む流れA、並びにフッ化水素酸、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、少なくとも一の化合物C、及び任意選択的に1,1,2−トリフルオロエタンを含む流れBを提供する少なくとも一つの工程、(iii)流れBを分離して、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、少なくとも一の化合物C、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタンを含む有機相、並びにHFを主に含む非有機相を提供する少なくとも一つの工程、(iv)(iii)で得られた有機相から、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを分離する少なくとも一つの工程;(v)工程(iv)の分離後、有機相を工程(i)に任意選択的に再循環させること、及び(vi)工程(iii)由来の非有機相を工程(i)に任意選択的に再循環させることを含む方法。
【請求項3】
1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの分離工程後、有機相が1−クロロ−2−フルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン類(シス及びトランス)、及び1,2−ジクロロ−2−フルオロエタンを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)に再循環させる前のHF含有量が90重量%以上となるように、工程(iii)に由来する非有機相が精製されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
精製が、好ましくは−23から46℃の温度で、且つ0.3から3barの絶対圧力で実施される少なくとも一の蒸留を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分離工程(ii)が、好ましくは−60から120℃の温度で、且つ3から20barの絶対圧力で実施される少なくとも一の蒸留を含むことを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
分離工程(iii)が、好ましくは−20から60℃の温度で実施される少なくとも一のデカンテーション工程を含むことを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分離工程(iv)が、好ましくは35から79℃の温度で、且つ0.3から4barの絶対圧力で実施される少なくとも一の蒸留を含むことを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応工程の温度が、150から400℃、好ましくは200から350℃であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
フッ素化反応が実施される圧力が、1から20bar、好ましくは3から15barの絶対圧力であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応で使用されるフッ化水素酸の量が、HCC−140及び/又は1,2−ジクロロエチレン1モルあたり5から40モル、好ましくは10から30モルであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酸化剤が、酸素及び塩素、好ましくは塩素から選択されうることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用される酸化剤の量が、HCC−140及び/又は1,2−ジクロロエチレン1モルあたり0.01モル%から20モル%であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン及びトランス−1,2−ジクロロエチレンを含む共沸又は共沸様タイプの組成物。
【請求項15】
80モル%から95モル%の1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン及び5モル%から20モル%のトランス−1,2−ジクロロエチレンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
沸点が、1から10barの絶対圧力で、32から119℃であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和フッ化炭化水素の分野に関する。本発明は、より具体的には、1,1,2−トリクロロエタンからの1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの製造に関する。
【0002】
1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン(HCFC−142)は、発泡体の製造における増量剤として知られているだけでなく、医薬化合物又は農薬化合物の製造における出発物質としても知られている。
液相中30〜180℃の温度で、且つ触媒としてルイス酸の存在下で、1,1,2−トリクロロエタン(HCC−140)をフッ化水素酸と反応させることにより1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを調製することは周知の方法である(フランス特許(FR)第278382号)。HCFC−142の調製は、気相中120〜400℃の温度で、クロムベースのバルク又は担持触媒の存在下でも実施されうる(フランス特許(FR)第2783820号及び欧州特許(EP)第1008575号)。
【0003】
さらに、国際公開第2013/053800号は、フッ化水素酸を用いるHCC−140及び1,2−ジクロロエチレン(1130)のフッ素化のための触媒の調製を記述しており、前記触媒は、クロム酸化物及びアルミナ酸化物上で塩化第二鉄及び塩化マグネシウムを共析出することにより、又は活性炭上で硝酸クロム及び硝酸ニッケルを共析出することにより、又は塩化亜鉛でアルミナをドープすることにより得られる。
【0004】
国際公開第2013/053800号からは、すべての試験が非常に短時間(最大6時間)で実施され、大部分のケースでHCC−140のフッ素化は、主に1,2−ジクロロエチレン(異性体は特定されず)をもたらすことが見てとれる。
【発明の概要】
【0005】
本出願人は、先行技術の欠点をもたない、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの製造方法を開発した。
【0006】
本発明は、1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを製造する方法であって、(i)気相中、フッ素化触媒の存在下又は非存在下で1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンをフッ化水素酸と反応させて、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、塩化水素酸、フッ化水素酸、並びに1−クロロ−2−フルオロエチレン類(シス及びトランス)、1,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタン及び/又は1,2−ジクロロエチレンから選択される少なくとも一の化合物Cを含む流れを提供する少なくとも一つの工程を含む方法を提供する。
【0007】
したがって、本発明の一つの主題は、1,1,2−トリクロロエタンから1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを製造するための方法であって、(i)気相中、フッ素化触媒の存在下又は非存在下で1,1,2−トリクロロエタンをフッ化水素酸と反応させて、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、塩化水素酸、フッ化水素酸、並びに1,2−ジクロロエチレン類(シス及びトランス)、1−クロロ−2−フルオロエチレン類(シス及びトランス)、1,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタンから選択される少なくとも一の化合物Cを含む流れを提供する少なくとも一つの工程、(ii)この反応工程由来の化合物を分離して、塩化水素酸を含む流れA、並びにフッ化水素酸、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、少なくとも一の化合物C及び任意選択的に1,1,2−トリフルオロエタンを含む流れBを提供する少なくとも一つの工程、(iii)流れBを分離して、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン、少なくとも一の化合物C及び任意選択的に未反応1,1,2−トリクロロエタンを含む有機相、並びにHFを主に含む非有機相を提供する少なくとも一つの工程、(iv)(iii)で得られた有機相から1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンを分離する少なくとも一つの工程、(v)工程(iv)の分離後、有機相を工程(i)に任意選択的に再循環させること、及び(vi)工程(iii)由来の非有機相を工程(i)に任意選択的に再循環させることを含む方法である。
【0008】
触媒は、好ましくは工程(i)で、酸化剤の存在下で有利に使用される。
【0009】
1−クロロ−2,2−ジフルオロエタンの分離後、有機相は、好ましくは1−クロロ−2−フルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン類(シス及びトランス)、及び1,2−ジクロロ−2−フルオロエタンを含む。
【0010】
一実施態様によれば、工程(i)に再循環させる前に、(iii)で得られた有機相を精製し、HF含有量が90重量%以上になるようにする。好ましくは、この精製は、−23から46℃の温度で、且つ0.3から3barの絶対圧力で有利に実施される少なくとも一の蒸留を含む。
好ましくは、分離工程(ii)は、−60℃から120℃、より具体的には−60から89℃の温度で、且つ3から20bar、有利には3から11barの絶対圧力で有利に実施される少なくとも一の蒸留を含む。
【0011】
好ましくは、分離工程(iii)は、−20から60℃、より具体的には−20から310℃の温度で有利に実施される少なくとも一つのデカンテーション工程を含む。
【0012】
好ましくは、分離工程(iv)は、10から115℃、より具体的には35から79℃の温度で、且つ0.3から4bar、有利には1から4barの絶対圧力で有利に実施される少なくとも一の蒸留を含む。
【0013】
この分離工程は、抽出共沸蒸留、液液抽出又は膜分離により実施されうる。
【0014】
この反応工程の温度は、好ましくは150から400℃、有利には200から350℃である。
【0015】
フッ素化反応が実施される圧力は、好ましくは1から30barの絶対圧力、有利には3から20barの絶対圧力、より具体的には3から15barの絶対圧力である。
【0016】
この反応で使用されるフッ化水素酸の量は、好ましくは、HCC−140及び/又は1,2−ジクロロエチレン1モルあたり5から40モル、有利には10から30モルである。
【0017】
反応温度及び圧力における、触媒の体積をガスの総体積流量で除したものとして定義される接触時間は、2から200秒、好ましくは2から100秒、有利には2から50秒でありうる。100秒、有利には2から50秒でありうる。
【0018】
酸化剤は、純粋な形態又は窒素との混合で、酸素及び塩素から選択されうる。好ましくは、塩素が選択される。
使用する酸化剤の量は、好ましくは、F140又はF1130 1モルあたり0.01モル%から20モル%、有利には、HCC−140及び/又は1,2−ジクロロエチレン1モルあたり0.01モル%から0.2モル%である。
【0019】
F140又はF1130に対して1〜10モル%の酸化剤の量は、非常に有望な結果を出した。
【0020】
使用する触媒は、バルク又は担持された形態であってよい。触媒は、金属、特に遷移金属、又はこのような金属の酸化物、ハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物の誘導体に基づいてもよい。挙げられる例は、特にFeCl、オキシフッ化クロム、NiCl、及びCrF、並びにこれらの混合物である。
【0021】
名前を挙げられる担持触媒は、木炭上に担持されたもの、或いはマグネシウム(例えばマグネシウム誘導体、特にMgFのようなハロゲン化物、又はオキシフッ化物のようなオキシハロゲン化マグネシウムなど)に基づくもの、又はアルミニウム(例えばアルミナ、活性アルミナ又はアルミニウム誘導体、特にAlFのようなハロゲン化物、又はオキシフッ化物のようなオキシハロゲン化アルミニウムなど)に基づくものを含む。
【0022】
触媒はまた、Co、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、P、Ni、Zr、Ti、Sn、Cu、Pd、Cd、Bi及び希土類金属又はそれらの混合物から選択される共触媒を含んでもよい。触媒がクロムをベースとする場合、Ni、Mg、及びZnが共触媒として有利に選択される。
【0023】
共触媒/触媒の原子比は、好ましくは0.01から5である。
【0024】
クロム系触媒が特に好ましい。
【0025】
本発明で使用される触媒は、任意選択的に支持体の存在下で、対応する塩の共沈によって調製することができる。
【0026】
触媒はまた、対応する酸化物の共粉砕によっても調製されうる。
【0027】
フッ素化反応の前に、触媒は、好ましくは100〜450℃、有利には200〜400℃の温度で1〜50時間、HFによる活性化の工程に供される。
【0028】
HFでの処理に加えて、活性化は、酸化剤の存在下で実施されうる。
【0029】
活性化工程は、大気圧又は最大20barの圧力で実施されうる。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、担体は、高気孔率アルミナを用いて調製されうる。第一の工程において、アルミナは、空気及びフッ化水素酸を用いるフッ素化により、フッ化アルミニウム又はフッ化アルミニウムとアルミナとの混合物に転化され、このフッ化アルミニウムへのアルミナの転化率は、アルミナのフッ素化が実施される温度(通常は200℃から450℃、好ましくは250℃から400℃)に本質的に依存する。次いで、担体を、クロム、ニッケル、及び任意選択的に希土類金属の塩の水溶液を用いて、又はクロム酸水溶液、ニッケル塩若しくは亜鉛塩の水溶液、及び任意選択的に希土類金属塩若しくは酸化物の水溶液、並びにメタノール(クロム還元剤として働く)を用いて含浸させる。クロム、ニッケル又は亜鉛及び希土類金属の塩として、担体が吸収できる量の水に可溶性であるかぎり、塩化物又は他の塩、例えば、ニッケル並びに希土類金属シュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、及び硫酸塩又は重クロム酸塩が使用される。
【0031】
触媒はまた、上記クロム、ニッケル又は亜鉛化合物及び任意選択的に希土類金属化合物の溶液を使用するアルミナ(通常は活性アルミナ)の直接含浸によっても調製されうる。この場合、フッ化アルミニウム又はオキシフッ化アルミニウムへのアルミナの少なくとも部分的な(例えば70%以上)転化が、触媒金属の活性化工程中に起こる。
【0032】
触媒の調製に使用されうる活性アルミナは、よく知られている市販の製品である。通常、活性アルミナは、アルミナ白(水酸化アルミニウム)を300℃から800℃の温度でか焼することにより調製される。(活性又は非活性)アルミナは、触媒性能を損なうことなく大量(1000ppmまで)のナトリウムを含有することができる。
【0033】
触媒は、好ましくは調整又は活性化され(すなわち、事前「活性化」処理を介して(反応条件に対して)活性且つ安定な成分に変換され)る。この処理は、「in situ」で(フッ素化反応器中で)、又は活性化条件に耐えるように設計された適切な装置内でのいずれかで実施されうる。
【0034】
担体の含浸後、空気又は窒素の存在下、100℃から350℃、好ましくは220℃から280℃の温度で触媒を乾燥させる。
【0035】
次いで、任意選択的に酸化剤の存在下、フッ化水素酸を用いる一又は二の工程において、乾燥させた触媒を活性化させる。このフッ素化が媒介する活性化工程の所要時間は6〜100時間で、温度は200から400℃である。
また、本発明の主題は、1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン及びトランス−1,2−ジクロロエチレンを含む共沸又は共沸様組成物でもある。
該共沸又は共沸様組成物は、好ましくは、80モル%から95モル%の1−クロロ−2,2−ジフルオロエタン及び5モル%から20モル%のトランス−1,2−ジクロロエチレンを含む。
該共沸又は共沸様組成物は、有利には、1から10barの絶対圧力で、32から119℃の沸点を有する。
該共沸組成物は、抽出共沸蒸留、液液抽出又は膜分離により得ることができる。
【実施例】
【0036】
実験手順:
HCC−140、並びに任意選択的に1,2−ジクロロエチレン及びHFを単管式インコネル反応器に別々に供給し、流動アルミナ浴により加熱する。
圧力は、反応器出口に位置する調整弁により調節される。この反応に由来するガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析される。
最初に触媒を窒素流下250℃で乾燥させ、次いで窒素をHFと徐々に入れ替え、8時間350℃で純粋なHF(0.5モル/時間)での活性化を終了させる。
【0037】
実施例1:
使用する触媒は、クロム酸化物(Cr)である。35gを上記の通りに活性化させる。次いで、HCC−140及びHFをモル比1:8(HFが10g/時間)、230℃、絶対圧力11bar、接触時間65秒で供給する。
F142の収率は、5時間後70%である。30時間後、その収率は30%未満である。
【0038】
実施例2:
使用する触媒は、実施例1と同様にクロム酸化物(Cr)である。55gを上記の通りに活性化させる。次いで、HCC−140、HF、及び塩素をHCC−140/HF/塩素のモル比1:9:0.08(HFが17g/時間)、230℃、絶対圧力11bar、接触時間54秒で供給する。
F142の収率は、5時間後60%である。100時間後、その収率は62%である。
【0039】
実施例3:
使用する触媒は、実施例1と同様にクロム酸化物(Cr)である。35gを上記の通りに活性化させる。次いで、HCC−140、HF、及び塩素を、HCC−140/HF/塩素のモル比1:20:0.08(HFが30g/時間)、225℃、絶対圧力3bar、接触時間4秒で供給する。
F142の収率は、500時間にわたって安定して50%である。
【0040】
実施例4:
使用する触媒は、アルミナ上に担持されたクロム酸化物(Cr)である。27gを上記の通りに活性化させる。次いで、HCC−140及びHFを、HCC−140/HFのモル比1:8(HFが10g/時間)、235℃、絶対圧力11bar、接触時間45秒で供給する。
F142の収率は、5時間後70%である。30時間後、その収率は30%未満である。
【0041】
実施例5:
触媒は使用しない。HCC−140及びHFを、HCC−140/HFのモル比1:20(HFが30g/時間)、225℃、絶対圧力11bar、接触時間50秒で供給する。
F142の収率は、500時間にわたって安定して25%である。
【国際調査報告】