(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502107(P2017-502107A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】バイオマス中のリグニンの解重合
(51)【国際特許分類】
C10G 1/00 20060101AFI20161222BHJP
C07C 41/26 20060101ALI20161222BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
C10G1/00 CZAB
C07C41/26
C07C43/23 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-533702(P2016-533702)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】SE2014051416
(87)【国際公開番号】WO2015080660
(87)【国際公開日】20150604
(31)【優先権主張番号】1351410-4
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513222865
【氏名又は名称】カト2ビズ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Kat2Biz AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】サメツ,ユーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガールキン,マクシム
【テーマコード(参考)】
4H006
4H129
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB44
4H006BA25
4H006BE30
4H006GP03
4H006GP12
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA08
4H129BB04
4H129BC14
4H129KA02
4H129KB02
4H129KB03
4H129KC23X
4H129KC23Y
4H129KD25X
4H129KD25Y
4H129NA43
(57)【要約】
遷移金属触媒および有機溶媒と水との溶媒混合物を使用するバイオマスからの解重合リグニンの取得方法。本発明はさらに、本方法によって得られる組成物および燃料の製造に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンの解重合方法において、
a.微粒子形態でのバイオマス(ここで、前記バイオマスはリグニンを含有する)、有機溶媒および水を含む溶媒混合物、ならびに遷移金属触媒を提供するステップと;
b.前記バイオマス、前記溶媒混合物および前記遷移金属触媒を混合して混合物を得るステップと;
c.前記混合物を少なくとも160℃に加熱し、50バール以下、好ましくは35バール以下の圧力で前記リグニンを解重合させるステップと;
d.任意選択的に前記解重合リグニンを単離するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記バイオマスが、好ましくはおがくずもしくは木材チップの形態での、木材、またはオルガノソルブリグニンであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記遷移金属触媒が、パラジウム、好ましくはチャコール上のパラジウム(Pd/C)をベースとすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記混合物が、少なくとも180℃、好ましくは少なくとも195℃に加熱されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記解重合リグニンが、1500g/モル以下、好ましくは1000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記混合物が、少なくとも15分、好ましくは少なくとも30分、少なくとも1時間、または少なくとも3時間、または少なくとも5時間の間加熱されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記有機溶媒が、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、遷移金属触媒の濃度が、前記リグニン含有量を基準として少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも3モル%、もしくは少なくとも5モル%、もしくは少なくとも10モル%であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、添加塩基がまったく使用されないことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、水素ガス、ギ酸または水素化物がまったく添加されないことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法において、前記解重合リグニンの少なくとも20重量%が2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法において、前記解重合が空気中で行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法によって得られることを特徴とする解重合リグニン。
【請求項14】
燃料製造のための請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法から得られることを特徴とする組成物の使用。
【請求項15】
燃料の製造方法において、製油所で請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法から得られる化合物をクラッキングするかまたは水素化処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
の式を有する1つもしくは複数の化合物の製造方法において、
a.微粒子形態でのバイオマス(ここで、前記バイオマスはリグニンを含有する)、有機溶媒および水を含む溶媒混合物、ならびに遷移金属触媒を提供するステップと;
b.前記バイオマス、前記溶媒混合物および前記遷移金属触媒を混合して混合物を得るステップと;
c.前記混合物を少なくとも160℃に加熱し、50バール以下、好ましくは35バール以下の圧力で前記リグニンを解重合させるステップと;
d.任意選択的に前記解重合リグニンを単離するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記化合物の少なくとも20重量%が、(2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノール)である(R1はHであり、R2はOCH3であり、R3は(CH)2CH3である)ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属触媒を使用するバイオマスからのリグニンの解重合方法に関する。本発明は、パルプ化プロセスへのリグニンの解重合の統合を容易にする。
【背景技術】
【0002】
燃料製造またはファインケミカル製造用の源としてバイオマスを使用することへの関心がますます高まっている。バイオマスとしては、植物部位、果物、野菜、加工廃棄物、木材チップ、もみがら、穀物、草、トウモロコシ、トウモロコシの皮、雑草、水性植物、干し草、紙、紙製品、リサイクルされた紙および紙製品、リグノセルロース系材料、リグニンならびに任意のセルロース含有生体物質または生物学的起源の材料が挙げられるが、それらに限定されない。
【0003】
バイオマスの重要な成分は、バイオマスの固体部分に存在するリグニンである。リグニンは、容易には処理されないより大きい分子を形成する芳香族およびオキシジェネート構成要素の鎖を含む。リグニンの処理困難さの主な理由は、リグニンを壊すことができる触媒との接触のためにリグニンを分散できないことである。
【0004】
リグニンは、地球上で最も豊富な天然ポリマーの1つである。リグニンを得る1つの共通の方法は、パルプ化プロセス中に木材からの分離による。残りが主に燃料として役立っているのに対して、ほんの少量(1〜2%)がスペシャルティ製品に利用されている。たとえリグニンの燃焼が化石燃料の使用量を低減するのに役立つ方法であるとしても、リグニンは、化学薬品および燃料の持続可能な製造のための原材料として大きな潜在的可能性を有する。
【0005】
様々なリグニンは、原材料源およびその後の処理に依存して構造的に異なるが、1つの共通の特徴は、アリールエーテルまたは炭素−炭素結合によって互いに結合している様々な置換フェニルプロパン単位からなる骨格である。それらは典型的には、メトキシル基で置換されており、フェノール性および脂肪族ヒドロキシル基は、例えばさらなる官能化のための部位を提供する。リグニンは、例えば親水性セルロースと比べて水を吸収する能力が低いことが知られている。
【0006】
今日リグニンは、バインダーとして例えばペレット燃料における構成要素として使用され得るが、それはまた、その高いエネルギー含有量のためにエネルギー源としてそれ自体使用され得る。リグニンは、セルロースまたはヘミセルロースよりも高いエネルギー含有量を有し、リグニンの1グラムは、セルロース系炭水化物のエネルギー含有量よりも30%多い、平均して2.27KJを有する。リグニンのエネルギー含有量は、石炭のそれに似ている。今日、その燃料価値のために、パルプ工場または製紙工場において、クラフトプロセス、硫酸塩法を用いて除去されているリグニンは通常、エネルギーを提供して製造プロセスを動かすためにそして蒸解液から化学薬品を回収するために燃やされている。
【0007】
リグニン解重合(LDP)は、その効率的な利用のための重要なステップである。効率的なLDPプロセスは、バルクおよびファインケミカル工業用の新しい環境にやさしい出発原料をもたらすはずである。また、LDPプロセス、引き続く水素化脱酸素(HDO)ステップは、化石燃料代用に向けての一本道であろう。リグニン解重合のための提案されたすべての方法の中で、外部水素源をまったく必要としないレドックス中性経路が最も経済的である。リグニンの化学構造は非常に複雑であり、ここで、β−O−4’−グリセロールアリールエーテル結合が、オルガノソルブおよび酵素的加水分解リグニンにおける最も一般的な繰り返しモノマー単位を表す。
【0008】
バイオガソリンおよびバイオディーゼルなどの、バイオ燃料は、エネルギーが主として、木材、トウモロコシ、サトウキビ、動物脂肪、植物油などのバイオマス材料またはガスに由来する燃料である。しかしバイオ燃料工業は、食品対燃料論争、効率および原材料の一般補給のような問題と悪戦苦闘中である。同時にパルプ製造または製紙工業は、上に記載されたように、多くの場合、工場において燃やされているにすぎない、大量のリグニンを生み出している。バイオマスを燃料または燃焼成分として検討するための2つの共通戦略は、熱分解油または水素化リグニンを使用することである。
【0009】
リグニンを燃料製造源として使用する1つの欠点は、水素化処理装置またはクラッカーにとって好適な形態でリグニンもしくはリグニン誘導体を提供するという問題である。この問題は、リグニンが油または脂肪酸に溶けないことであり、それは、必要ではないにしても、非常に望ましいことである。
【0010】
先行技術は、処理可能なリグニン誘導体を製造するためにリグニンを小さい単位または分子へ分解させるための様々な戦略を提供している。これらの戦略としては、水素化、脱酸素および酸触媒加水分解が挙げられる。国際公開第2011003029号パンフレットは、リグニン中の炭素−炭素結合および炭素−酸素結合の触媒的開裂方法に関する。米国特許出願公開第20130025191号明細書は、リグニンが芳香族含有溶媒中で触媒と一緒に水素で処理される解重合および脱酸素法に関する。すべてのこれらの戦略は、脂肪酸または油中での最終的な混合前に分解が行われる方法に関する。国際公開第2008157164号パンフレットは、バイオマス懸濁液を形成して触媒とのより良好な接触を得るために第1分散剤が使用される代替戦略を開示している。これらの戦略は通常また、溶媒または触媒などの不要な試薬から分解生成物を分離するために分解生成物の単離を必要とする。
【0011】
バイオマスから燃料またはファインケミカルを製造する経済学は、燃料製造ができるだけ効率的であるように、例えばリグニンの効率的な製造方法におよびリグニンもしくはリグニン誘導体の製造に依存する。例えば酸素量は、できるだけ低いものであるべきであり、製造ステップの数はできるだけ少ないものであるべきである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、バイオマス原料からの解重合リグニンの製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の第1態様は、溶媒と
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
の式を有する1つもしくは複数の化合物とを含む組成物であって、化合物の少なくとも1つが
である組成物に関する。
【0014】
本発明の第2態様は、
a.微粒子形態でのバイオマス(バイオマスはリグニンを含有する)、有機溶媒および水を含む溶媒混合物、ならびに遷移金属触媒を提供するステップと;
b.バイオマス、溶媒混合物および遷移金属触媒を混合して混合物を得るステップと;
c.混合物を少なくとも80℃に加熱するステップと;
d.任意選択的に解重合リグニンを単離するステップと
を含むリグニンを解重合することによる組成物の製造方法に関する。
【0015】
本発明の第3態様は、本発明による方法によって得られる解重合リグニンに関する。
【0016】
本発明の別の態様は、
a.微粒子形態でのバイオマス(バイオマスはリグニンを含有する)、有機溶媒および水を含む溶媒混合物、ならびに遷移金属触媒を提供するステップと;
b.バイオマス、溶媒混合物および遷移金属触媒を混合して混合物を得るステップと;
c.混合物を少なくとも80℃に加熱するステップと;
d.任意選択的に1つもしくは複数の化合物を単離するステップと
を含む
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
の式を有する1つもしくは複数の化合物の製造方法に関する。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、燃料製造のための本発明の組成物の使用に関する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、製油所で本発明による化合物をクラッキングするかまたは水素化処理するステップを含む燃料の製造方法に関する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、
a.微粒子形態でのバイオマス(ここで、バイオマスはリグニンを含有する)、有機溶媒および水を含む溶媒混合物、ならびに遷移金属触媒を提供するステップと;
b.バイオマス、溶媒混合物および遷移金属触媒を混合して混合物を得るステップと;
c.混合物を少なくとも80℃に加熱し、50バール以下、好ましくは35バール以下の圧力でリグニンを解重合させるステップと;
d.任意選択的に解重合リグニンを単離するステップと
を含む
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
の式を有する1つもしくは複数の化合物の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、リグニン、わずかな解重合リグニンおよび解重合リグニンについてのGPCクロマトグラフム。
【
図2】
図2は、本発明に従って解重合させられたリグニンおよびパラジウム触媒作用なしの加溶媒分解リグニンについてのGPCクロマトグラフム。
【
図3】
図3は、β−O−4’エタノールアリールエーテルの水素移動水素化分解におけるPd/Cのリサイクリング。反応条件:80℃ 1時間。Yは、パーセント単位の転化率であり、Xが実験数である。
【
図4】
図4は、無触媒反応からのおよび様々な触媒を使用する本発明による処理からのリグニン残留物のGPC。
【
図5】
図5は、U−Fe−B触媒を使用する処理後のリグニン残留物からのGC−MS。
【
図6】
図6は、ラネーニッケル触媒を使用する処理後のリグニン残留物からのGC−MS。
【
図7】
図7は、Cu触媒を使用する処理後のリグニン残留物からのGC−MS。
【
図8】
図8は、Fe触媒を使用する処理後のリグニン残留物からのGC−MS。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、リグニンを先ず単離することなしに、バイオマスから直接にリグニンを解重合する簡単な方法を提供する。本発明による方法は、リグニンをより可溶性にし、より多くのリグニンがバイオマスから抽出され得る。さらに、本方法は、オルガノソルブプロセスなどの既存技術へ組み入れられ得る。
【0022】
本発明の方法は、ギ酸などの添加水素供与体の使用を伴わない。本発明による方法ではアルコールは水素供与体ではないか、またはそれは少なくとも主要な水素供与体ではない。その代わりに理論に制約されることなく、リグニンを解重合させるために必要とされる水素は、バイオマスそれ自体に由来すると考えられる。
【0023】
製油所原料の望ましい特徴は、低い酸素含有量またはできるだけ低い酸素対炭素比である。本発明によって得られる組成物は、それが、油および脂肪酸などの、様々な溶媒に溶解し得るし、そして低い酸素対炭素含有量を有するので、製油所用の好適な原料であると考えられる。
【0024】
バイオマスとしては、木材、果物、野菜、加工廃棄物、もみがら、穀物、草、トウモロコシ、トウモロコシの皮、雑草、水性植物、干し草、紙、紙製品、リサイクル紙、殻、藻類、わら、樹皮またはナッツ殻、リグノセルロース系材料および任意のセルロース含有生体物質または生物学的起源の材料が挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態ではバイオマスは、木材、好ましくは、おがくずもしくは木材チップなどの粒子状木材である。木材は、任意の種類の木材、硬材または軟材、針葉樹または広葉樹であってもよい。木材の非限定的なリストは、マツ、カバノキ、トウヒ、カエデ、セイヨウトネリコ、ナナカマド、アカスギ、ハンノキ、ニレ、オークおよびブナノキであろう。本発明者らは、本発明によるリグニンの解重合が、リグニンが化学的に前処理または修飾されていない、例えば還元または酸化されていない場合に、はるかにより効果的であることを見いだした。例えば本発明に従って処理されるクラフトリグニンまたはリグノスルホネートは、本発明による方法で処理されるおがくずもしくは木材チップまたはオルガノソルブリグニンと比べるとより少なく解重合されるであろう。一実施形態ではバイオマスは、リグニンの化学構造または化学組成が本質的に修飾されていないリグニンを含有する。一実施形態ではバイオマスは、オルガノソルブリグニン、すなわち、オルガノソルブプロセスから得られるリグニンである。
【0025】
本出願において用語「リグニン誘導体」は、リグニンから誘導された分子またはポリマーを意味する。本出願において「リグニン誘導体」および「リグニンから誘導された分子またはポリマー」は同じ意味で用いられる。これらの分子またはポリマーは、例えばリグニンを沈澱させるまたは分離するために黒液または赤い液体を処理する場合の、リグニンまたはリグニン源の化学修飾または分解の結果であってもよい。
【0026】
本発明者らが見いだしたものは、水素供与体(ギ酸などの)の添加がモデル研究におけるβ−o−4結合の選択的開裂およびモデルポリマーの解重合をもたらした(実施例1)けれども、用いられた条件が、160℃でさえも、リグニンのいかなる解重合ももたらさなかったことである。リグニンを、自生圧力にて1時間160℃で水/酢酸エチル中Pd/C(5モル%)、水素化ホウ素ナトリウム(10モル%)と反応させた場合に、この処理は、わずかな解重合をもたらすにすぎない。
図1を参照されたい。
【0027】
その代わりに本発明者らは、バイオマスのオルガノソルブ処理中に用いられる条件をうまく利用した。オルガノソルブは、1930年代前半に起源を持つパルプ化技術であり、そして一方、主な進展は、バイオマスがセルロースと、リグニンとヘミセルロースとに分離される1980年代後半中に行われた。この技術は、140℃以上、通常220℃以下の範囲の温度でチップ化木材などのリグノセルロース系原料を水性有機溶媒と接触させるステップを伴う。これは、有機溶媒に可溶である断片へのアルファアリール−エーテル結合の加水分解解重合をもたらす。使用される溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、ギ酸、および酢酸が挙げられる。水中の溶媒の濃度は、40〜80重量%の範囲にあってもよい。より高い沸点の溶媒が使用されてもよく、それらは、より低いプロセス圧力が用いられ得るという利点を有するが、他方ではそのような溶媒は回収するのがより困難である。オルガノソルブプロセスは、同じまたは異なる溶媒が2つの段階で使用される2段階以上のプロセスであってもよい。水酸化ナトリウムなどの塩基が、好ましくは第2段階で添加されてもよく、リグニンは、任意の好適な酸を使用してpHを下げることによって単離され得る。オルガノソルブプロセスにおいて高分子量リグニンをヘミセルロースから分離するために、リグニンは沈澱させられてもよいか、または混合物は濾過され、蒸発され、蒸留されまたは遠心分離されてもよい。
【0028】
バイオマス、例えば木材チップまたはおがくずを、高温で遷移金属触媒の存在下に有機溶媒中で処理することによって、本発明者らは、得られた解重合リグニンが900g/モル未満の分子量を有し、一方触媒を欠く対照法が6000g/モルの分子量を有するリグニンをもたらすことを見いだした。本発明は、オルガノソルブプロセスを含むパルプ化プロセスへ容易に統合され得るし、解重合リグニンのみならず高品質セルロースおよびヘミセルロースをあとに残す。
【0029】
解重合リグニンは、
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
の式を有する化合物を含む。前記化合物の具体的な例は、
であり、
ここで、1は、グアヤシルプロパンであり、2はグアヤシルプロパノールであり、3は、シリンギルプロパンであり、4は、シリンギルプロパノールであり、5は、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールである。本発明の方法は、化合物の混合物を生成する。主に、本方法は、化合物5をもたらし、ほんの低含有量の化合物3および4をもたらし、それによって本発明によって得られる化合物および本発明による組成物は、低い酸素対炭素比を有する。一実施形態では生成した混合物は、10モル%未満の各化合物1〜4および50モル%超の化合物5を含む。一実施形態では生成した混合物は、5モル%未満の各化合物1〜4および70モル%超の化合物5を含むか、または生成した混合物は、5モル%未満の各化合物1〜4および80モル%超の化合物5を含む。一実施形態では混合物は、1〜10重量%の化合物1〜4を含む。別の実施形態では混合物は、70〜90重量%の化合物5を含む。より高度の化合物5は、それが低い酸素対炭素比を有するので有益であり得るし、そしてまたより高い選択性は、さらなる処理に関してより予測可能であり、それによって精製するのがより容易である混合物をもたらす。
【0030】
一実施形態ではバイオマスは、リグニンを含有するバイオマス、好ましくは木材であり、そしてここで、バイオマスは、おがくずまたは木材チップなどの粒子状バイオマスである。バイオマスは、任意の好適な技術を用いて小サイズ粒子または粉末へすり潰されてもよい。粒子のサイズは、10cm以下、もしくは5cm以下、もしくは2cm以下、もしくは5mm以下、もしくは1mm以下、もしくは500μm以下であってもよい。
【0031】
バイオマスは、有機溶媒または少なくとも1つの有機溶媒を含む混合物と混合される。一実施形態では有機溶媒と水とを含む溶媒混合物が使用される。有機溶媒は、アルコール、エステル、ケトン、エーテルまたはフランもしくはフルフラールベースの溶媒などのオキシジェネートであってもよい。好ましい溶媒は、C1〜C10アルコール、C2〜C10エーテル、C2〜C10カルボン酸、C3〜C10ケトンおよびC2〜C10エステル、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、グリセロール、アセトンおよびtert−ブチルメチルエーテルなどのブチルエーテル;ジエチルエーテル、ダイグライム、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコール 1,4−ジオキサン、酢酸、ならびにテトラヒドロフランである。一実施形態では溶媒は、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールもしくはアセトンまたはそれらの組み合わせから選択される。好ましいC1〜C10エステルは、有機エステル、芳香族もしくは非芳香族エステルであり、エステルの例は、安息香酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの様々な酢酸エステル、乳酸エチルなどの様々な乳酸エステルである。一実施形態では溶媒は、C1〜C10アルコール、C2〜C10エーテル、C2〜C10カルボン酸およびC2〜C10エステルの組み合わせを含む。一実施形態では溶媒は、2つのC1〜C10アルコール、例えばエタノールおよびグリセロールを含み、別の実施形態では溶媒は、プロパノールおよびグリセロールを含む。一実施形態では溶媒は、ポリエチレングリコールおよびC1〜C10アルコールを含む。一実施形態では溶媒は、フルフラールおよびフルフリルアルコールを含む。溶媒が有機溶媒と水との混合物である場合、混合物は、メタノールおよび水、エタノールおよび水、イソプロパノールおよび水、酢酸および水または酢酸エチルおよび水、好ましくはエタノールおよび水、イソプロパノールおよび水ならびにメタノールおよび水を含有してもよい。有機溶媒と水との間の比は、1:8〜8:1、好ましくは1:4〜4:1、または1:2〜2:1、好ましくは約1:1などの、1:10〜10:1(有機溶媒:水重量比)であってもよい。一実施形態では溶媒混合物は、40〜60重量%の有機溶媒および40〜60重量%の水を含む。溶媒中の基質、つまりバイオマス濃度は、0.1重量%以上、もしくは0.5重量%以上、もしくは1重量%以上、もしくは2重量%以上、もしくは5重量%以上、もしくは10重量%以上、もしくは20重量%以上、もしくは30重量%以上であってもよく、70重量%以下もしくは50重量%以下であってもよい。
【0032】
本方法は、例えば有機溶媒のみを使用することによって、水なしで行われてもよいが、水を添加することによって本方法は、爆発のリスクが低減するために大規模製造向けにより好適になる。いかなる塩基もいかなる追加の塩基も反応に添加する必要はない。
【0033】
遷移金属触媒がバイオマスを処理するために使用され、遷移金属は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、好ましくはPd,Pt、Fe、NiまたはCuから選択されてもそれらをベースとしていてもよいが、それらに限定されない。一実施形態では触媒はPdである。一実施形態では触媒はPtである。一実施形態では触媒はWまたはW/Cである。一実施形態では触媒はFeである。一実施形態では触媒は、ラネーニッケルなどのNiベースである。一実施形態では触媒はCuである。触媒はまた、前記金属の組み合わせまたは前記金属の少なくとも1つを含む二金属触媒であってもよい。別の実施形態では触媒は、パラジウムおよび/または白金ドープ金属触媒である。ドープ金属触媒は、パラジウムまたは白金でドープされている銅、ニッケルまたは鉄ベースの触媒であってもよい。触媒は、粉末、粒子、被覆表面または固体材料の形態にあってもよい。一実施形態では触媒は、Pd、Pd
2(dba)
3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))、Pd(OAc)
2(酢酸パラジウム(II))、Pd(PPh
3)
4(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(P
tBu
3)
2(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)またはPd/C(チャコール上のパラジウム)から選択される。別の実施形態では触媒は、Pt、白金ブラックまたはPtO
2である。別の実施形態では触媒はPh/Cである。別の実施形態では触媒はRu/Cである。触媒は、例えば、還元剤の使用による酸素または酸化物の除去によって使用前にプレ活性化されてもよい。触媒は、少なくとも触媒量で添加されてもよい。一実施形態では触媒の量は、リグニン含有量に関して、0.5モル%以上、もしくは1モル%以上、もしくは3モル%以上、もしくは5モル%以上、もしくは7モル%以上、もしくは10モル%以上、または100モル%以下、もしくは50モル%以下、もしくは25モル%以下、もしくは15モル%以下、もしくは12モル%以下である。PdもしくはPtベースの触媒またはPdもしくはPtでドープされた触媒を使用する場合、本方法は、水に対して鈍感になるまたは水に対して少なくともより敏感でなくなると考えられる。触媒は反応中に基質またはバイオマスと接触していることが好ましい。
【0034】
バイオマスおよび触媒は、溶媒中のスラリーまたは混合物を形成し、混合物は少なくとも80℃、もしくは少なくとも120℃、好ましくは130℃以上、もしくは140℃以上、もしくは150℃以上、もしくは160℃以上、もしくは170℃以上、もしくは180℃以上、もしくは190℃以上、または250℃以下、もしくは230℃以下、もしくは210℃以下、もしくは200℃以下に加熱される。処理時間は、使用される溶媒および処理されるべき容積に依存する。例として、溶媒中のバイオマスと触媒との混合物は、3mlの容積を処理する場合には30分以上、もしくは1時間以上、もしくは1.5時間以上、もしくは2時間以上の間加熱されてもよい。処理、または反応は、速く、1時間以下後に、もしくは3時間以下後に、もしくは10時間以下後に終了し得る。
【0035】
反応は、自発圧力を作り出す閉じたまたは密閉容器中で行われてもよい。反応は好ましくは、連続混合中に行われる、解重合中の圧力は、約100バール以下、もしくは50バール以下、もしくは45バール以下、もしくは35バール以下、もしくは25バール以下、もしくは10バール以下、例えば8バール以下、もしくは5バール以下、もしくは2バール以下、または1バール以上であってもよい。一実施形態では解重合中の圧力は、20〜35バールなどの、5〜45バールである。しかし本発明の1つの大きな利点は、水素ガスがまったく必要とされないことである。反応はまた、還流中に行われてもよい。
【0036】
この処理、または反応は、空気中で、または酸素圧が低下した雰囲気中で、または窒素もしくはアルゴンなどの不活性雰囲気中で行われてもよい。パラジウム触媒が使用される場合、不活性雰囲気の使用がより良好な結果を与えるが、必要ではない。
【0037】
処理後に解重合リグニンは、濾過、蒸発、蒸留もしくは遠心分離または任意の好適な技術によって単離され得る。セルロースまたはヘミセルロースは影響を受けないだろうしまたは少なくともわずかにだけ解重合させられるであろうと考えられる。これは、本発明をまた、高品質パルプおよびヘミセルロースの興味深い製造方法にする。オルガノソルブプロセスに従ってリグノセルロース系原料を先ず処理すること、引き続き本発明による方法によって、高品質パルプおよびヘミセルロースならびに解重合リグニンが得られ得る。
【0038】
得られた解重合リグニンは、1500g/モル未満、もしくは好ましくは1200g/モル未満、もしくは900g/モル未満の重量平均分子量(M
w)を有する。一実施形態では得られたリグニンの80%以上が、600g/モル未満、もしくは400g/モル未満の分子量を有する。一実施形態では15%以上の収率、もしくは20%以上の収率で2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールが得られる。
【0039】
触媒を分離し、リサイクルすることによって、本方法は、より効率的になり、さらにより経済的に有利になる。触媒は、反応性を失う前に数回使用され得る。再活性化は、触媒を水素で処理することによって行われ得る。例えば触媒は、エタノールなどのアルコール中に入れられ、水素圧(例えば3〜6バール)下に数時間(例えば2〜15時間)置かれる。再活性化は、室温(20℃)で行われてもよく、再活性化触媒は、アルコール例えばエタノールでリンスされてもよい。
【0040】
本発明の方法によって得られる、解重合リグニン、または化合物、そしてとりわけ式
(式中、各R1およびR2は、HまたはOCH
3であり、R3は、(CH
2)
2CH
3、(CH
2)
3OHまたは(CH)
2CH
3である)
を有する化合物は、燃料を製造するために使用され得る。化合物は、溶媒が脂肪酸または油であってもよい溶媒と添加剤とを含む組成物の形態にあってもよい。一実施形態では組成物中の化合物(解重合リグニン)は、組成物の5〜30重量%、もしくは10〜25重量%を構成する。一実施形態では組成物中の化合物の少なくとも15重量%、もしくは少なくとも20重量%は、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールである。一実施形態では2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールの含有量は、10〜25重量%、もしくは15〜20重量%である。2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールの量は、硬材がバイオマスとして使用される場合には、より高いもの、30〜50重量%であり得る。
【0041】
本発明による化合物または組成物は、周知の技術を用いて燃料を製造するために製油所で水素化処理されてもクラッキングされてもよい。さらに化合物は、フェノール類などのファインケミカルを製造するために使用され得る。
【実施例】
【0042】
実施例1
予備研究は、β−O−4’エタノールアリールエーテル(50mg)が、触媒量のPd/C(5モル%)および空気(表1、エントリー1)、3mlの酢酸エチル:水(比3:1)の存在下で開裂なしにベンジルヒドロキシル基の遅い酸化を受けて二量体ケトンを生成することを示した。この反応を80℃で不活性雰囲気下で行った場合に、所望の酸化された、開裂された生成物に向けての非常に遅い変換が観察された(表1、エントリー2)。本発明者らは、触媒量の水素化物または水素供与体の添加が反応に影響を及ぼすことを見いだした。Pd/C触媒の有酸素酸化開裂反応を水素化ホウ素ナトリウムの存在下で行うと、所望のアセトフェノンおよびフェノールの定量的収率が40分以内に達成された。いくつかの水素供与体をスクリーンした。
【0043】
リグニンアリールのメトキシル化度は、その起源に依存する。基質の置換(表2)は、スイッチグラス、軟材(マツ、トウヒなど)および硬材(カバノキなど)中に存在する置換パターンを模倣している。反応は、80℃でほぼ定量的収率で相当する開裂生成物を与えた。高置換基質について反応はより遅く進行し、より長い反応時間が完全転化を達成するために必要とされた。
【0044】
リグニン解重合に向けての次工程は、物理的特性例えば溶解性を反映させるために本方法をモデルポリマーに適用することであった。モデルポリマーは、二量体モデルと同じ条件での処理時にPd/C触媒β−O−4’結合開裂反応を受けた。
【0045】
酸性および塩基性媒体の両方における本発明者らのシステムの安定性は、生成したリグニンが、用いられるプロセスに依存して、かなりの量の酸または塩基を含むので、考慮に入れられるべきであり、言い換えればそれはpHに鈍感である。1M HClまたはNaOHの存在下で、結果は、中性条件と同一であった。興味深いことに、パラジウムなしのNaOH反応が出発原料のいかなる変換ももたらさない場合に、HClのケースで少量のグアイコールとともに多数の特定できない生成物が形成された(S.I.を参照されたい)。これは、触媒量のパラジウムがリグニンをポスト抽出再縮合から守り得たことを意味する。得られた結果は、有望であり、Pd/C触媒解重合が植物由来リグニンの分解のために適用でき得ることを示唆した。
【0046】
しかし、同一条件下でリグニンは解重合を受けなかった。リグニンを自発圧力にて1時間160℃で水/酢酸エチル中でPd/C(5モル%)、水素化ホウ素ナトリウム(10モル%)と反応させた場合に、わずかな解重合をもたらすにすぎない、
図1。
【0047】
実施例2
マツ(Pinus Sylvestris(ピヌス・シルウェストリス))おがくず(10g)を、Pd/C(リグニン含有量に関して5モル%)の存在下でエタノール水(100ml、1:1比)混合物と混合し、1時間195℃で加熱した。Pd/Cが不在である、対照実験もまた行った。
【0048】
GPC分析は、得られたすべてのリグニンがMw 900Da未満であり、検体の80%超がモノマーおよびダイマー(Mw 400Da未満)に属した(対照 6000Da〜1000Da すべての40%)、
図2。NMRおよびGC/MC分析は両方とも、1つの主生成物、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノールの存在を示した。得られた油の精製は、28%収率をもたらす。
【0049】
実施例3
回収および触媒再使用は重要な問題であり、それ故容易な触媒分離および次に続くバッチ操作へのリサイクリングは、全体プロセスの効率を大きく向上させることができる。同じバッチの触媒を使用して反応を行うと、3つの連続した実験について反応性のほどほどの低下をもたらす。第5実験後のPd/Cの水素での再活性化は触媒反応性を増加させるのに成功することが判明した。
図3を参照されたい。再活性化は、触媒をエタノール中に入れ、5バールの水素圧をかけ、触媒を室温で12時間そこに置きっぱなしにすることによって行った。再活性化触媒を次に、エタノールでリンスした。
【0050】
実施例4
手順:5gの風乾カバノキチップを、リグニン含有量に対して20モル%触媒と一緒に使用した(リグニンモノマーのMWは、243g/モルであると想定された、Klasson法)。使用された溶媒システムは水/エタノール1:1、180mlであった。反応は、密封した高圧反応器で1時間180〜190度で行った。すべての場合に反応器は、使用前に窒素でフラッシュした。加熱プログラムは、パラジウムの場合と同じものであった。
【0051】
添加金属触媒によって触媒されるリグニン解重合。使用された触媒はW/C、漆原触媒U−Fe−B、Cu、ラネーニッケル(2800、Sigma Aldrich)およびFeである。GPC分析は、すべての遷移金属触媒について明白な解重合を明らかにした、
図4。GC−MSは、リグニン残留物を明らかにする、
図5〜8。
【0052】
鉄触媒は、水中で水素化ホウ素ナトリウムでの鉄(II)または(III)源の還元によって調製した。鉄触媒は、プレ洗浄および濾過なしに直接使用した。U−Fe−Bは、文献手順に従って調製した。銅は、微細金属粉末として使用した。
【0053】
GC−MSについての凡例
1. 2,6−ジメトキシフェノール
2. 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド
3. 2−メトキシ−4−(1−プロペン−1−イル)フェノール
4. E/R−2,6−ジメトキシ−4−(1−プロペン−1−イル)フェノール
5. 4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒド
6. E/R−2,6−ジメトキシ−4−(1−プロペン−1−イル)フェノール
7. 2−メトキシ−4−プロピルフェノール
9. 1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2−プロペン−1−オン
10.2−メトキシフェノール
【国際調査報告】