(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502123(P2017-502123A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】基材上のブロックコポリマーフィルムを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20161222BHJP
C08L 25/14 20060101ALI20161222BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20161222BHJP
C08J 3/28 20060101ALI20161222BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L25/14
C08J5/18CER
C08J3/28CEZ
B05D5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-538579(P2016-538579)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】FR2014053254
(87)【国際公開番号】WO2015086991
(87)【国際公開日】20150618
(31)【優先権主張番号】1362585
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】505041416
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァロ, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハジオアノウ, ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ニコレ, セリア
(72)【発明者】
【氏名】シュバリエ, ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】ルヴール, クリスティーラ
(72)【発明者】
【氏名】カスティーリョ, ベロニカ
(72)【発明者】
【氏名】ペカステン, ジル
【テーマコード(参考)】
4D075
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4D075BB32Z
4D075BB35Z
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4F070AA08
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4F071BC01
4J002BC072
4J002BP031
4J002GS00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、基材上の自己組織化したブロックコポリマーのフィルムの生産のための方法に関し、前記方法は、非混和性であって化学的性質が異なるランダムコポリマーとブロックコポリマーのブレンドを含有する溶液により、ブロックコポリマーとランダムコポリマーの同時沈着を実施すること、その後、ブロックコポリマーの自己組織化に固有の相分離を促進するアニーリング処理を実施することからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の自己組織化したブロックコポリマーのフィルムを生産するための方法であって:
−化学的性質が異なり非混和性であるランダム又はグラジエントコポリマーとブロックコポリマーとのブレンドを含有する溶液の、基材上での沈着の工程、
−ブロックコポリマーの自己組織化に固有の相分離の促進を可能にするアニーリング処理の工程
を含むことを主に特徴とする、方法。
【請求項2】
ブロックコポリマーが一般式A−b−B又はA−b−B−b−Aを有し、かつランダムコポリマーが一般式C−r−Dを有し;ランダムコポリマーのモノマーが、ブロックコポリマーの各ブロックそれぞれに存在するモノマーとは異なっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ランダム又はグラジエントコポリマーがラジカル重合により調製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ランダム又はグラジエントコポリマーが制御されたラジカル重合により調製されることを特徴する、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ランダム又はグラジエントコポリマーがニトロキシド制御されたラジカル重合により調製されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
ニトロキシドがN−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ブロックコポリマーが直鎖状もしくはスタージブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
ブロックコポリマーが少なくとも1のPLAブロック及び少なくとも1のPDMSブロックを含むことを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
ランダム又はグラジエントコポリマーがメチルメタクリレート及びスチレンを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
アニーリング処理が熱的若しくは溶媒蒸気処理又はマイクロ波処理により得られること特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
リソグラフィアプリケーションのためのマスク、情報貯蔵のための磁性粒子のローカライゼーションのための担体、又は無機構造体の形成のためのガイドとしての、請求項1から10に記載の方法により得られるフィルムの使用。
【請求項12】
ブロックコポリマーのドメインの1つの排除後の触媒担体又は多孔性膜としての、請求項1から10に記載の方法により得られるフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形状の基材とブロックコポリマーフィルムの間の前記界面エネルギーを中和することが可能なランダムコポリマーの層の形成を含み、前記ブロックコポリマーフィルムと基材の間の界面エネルギーを中和することを可能にする、基材上の自己組織化したブロックコポリマーフィルムを生産するための方法、に関する。
【0002】
方法は、ブロックコポリマーフィルムがリソグラフィのためのマスクを構成するリソグラフィの分野、又はブロックコポリマーフィルムが磁性粒子をローカライズすることを可能にする情報貯蔵の分野に適用される。方法は、多孔性構造を得るためにブロックコポリマーのドメインの1つが分解される触媒担体又は多孔性膜の製造にも適用される。方法は、有利には、ブロックコポリマーマスクを使用するナノリソグラフィの分野に適用される。
【背景技術】
【0003】
ブロックコポリマー(BC)の自己組織化ベースの多くの先進的なリソグラフィ方法は、PS−b−PMMA (ポリスチレン−ブロック−ポリ(メチルメタクリレート))マスクを必要とする。しかしながら、それがエッチング工程に固有のプラズマに対する低い耐性を有するので、PSはエッチングについて不十分なマスクである。その結果、このシステムは、基材への最適なパターンの転写を許可しない。更に、このシステムの低いフローリーハギンスパラメータχによる、PSとPMMAの間の制限された相間隔は、約20nm未満のドメインサイズを得ることを可能にせず、その結果、マスクの最終レゾリューションを制限する。これらの不足を克服するために、“Polylactide−Poly(dimethylsiloxane)−Polylactide Trblock Copolymers as Multifunctional Materials for Nanolithographic Applications”ACS Nano.4(2):p. 725−732において、Rodwogin, M.D.らは、マスクとして作用するブロックコポリマー中に導入されるPDMS(ポリ(ジメチルシロキサン))、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)、でなければポリ(フェロセニルシラン)(PFS)のようなSi又はFe原子を含有する基を表す。これらのコポリマーは、PS−b−PMMAのそれらに類似しよく隔てられたドメインを形成し得るが、後述のドメインとは逆に、エッチング処理の間の無機ブロックの酸化は、より一層エッチングに耐性がある酸化物の層を形成し、それによってリソグラフィマスクを構成するポリマーのパターンをそのままで保つことを可能にする。
【0004】
雑誌“Orientation−Controlled Self−Assembled Nanolithography Using a Polystyrene?Polydimethylsiloxane Block Copolymer”Nano Letters, 2007.7(7): p. 2046−2050においてJung及びRossは、理想的なブロックコポリマーマスクが高い値のχを有すること、及びブロックの1つがエッチングに対する高い耐性を持つべきであることを提案した。“Defect−Free Nanoporous Thin Films from ABC Triblock Copolymers”中でBang, J.らにより説明されるように、ブロックの間のχの高い値は、ピュアであり基材全体上でよく区画されたドメインの形成を促進する。J. Am. Chem.Soc., 2006.128: p. 7622、すなわち、ライン粗さの減少。PS/PDMS(ポリ(ジメチルシロキサン))についてそれが0.191であり、PS/P2VP(ポリ(2−ビニルピリジン))についてそれが0.178であり、PS/PEO(ポリ(エチレンオキシド))についてそれが0.077であり、かつPDMS/PLA(ポリ(乳酸))についてそれが1.1であるが、PS/PMMAペアについてχは393Kで0.04と同程度である。PLAとPDMSの間のエッチングの間の強いコントラストと組み合わされたこのパラメータは、ドメインのより良好な鮮明度を許可し、それによって22nm未満のドメインサイズに近づくことを可能にする。これらのシステムの全ては、ある条件によれば、10nm未満の制限サイズを有するドメインを有した良好な組織を示した。しかしながら、過度に高い温度が熱的アニーリングのために要求されるであろうし、かつブロックの化学的インテグリティが必ずしも保持されるとは限らないであろうから、χの高い値を有する多くのシステムは、溶媒蒸気アニーリングの長所により組織化される。
【0005】
機能化された表面ドメインの大多数を有した表面を有するポリマー構造体を生産するための方法も、文書WO2010/115243から知られる。少なくとも1の表面ポリマー、少なくとも1のブロックコポリマー及び少なくとも1の一般的な溶媒を含む組成物であって、Aが表面積ポリマーのポリマーとして同一タイプのポリマーであって表面ポリマーと混和性であり、BがポリマーAと非混和性であるポリマーであり、かつCが反応性分子又はオリゴマーである末端基である一般式A−B−Cをその組成物中でブロックコポリマーが有する組成物の生産を、方法は含む。
【0006】
それが既にマイルドリソグラフィで、すなわちライトとの相互作用に基づかず、又は具体的にインクパッドもしくは鋳型として使用されたので、ブロックコポリマーの成分ブロックの中で興味深いのは、例えばPDMSである。PDMSは、ポリマー材料の最も低いガラス転移温度Tgの1つを有する。それは、高い熱安定性、低いUV線吸収性及び非常に柔軟な鎖を有する。そのうえ、PDMSのシリコン原子は、それに反応性イオンエッチング(RIE)に対する良好な耐性を与え、このようにして、ドメインにより形成されたパターンを基材の層へ正確に転写することを可能にする。
【0007】
有利にはPDMSと組み合わされてよい他の興味深いブロックは、PLAである。
【0008】
ポリ(乳酸)(PLA)は、それの分解性のために際立っていて、そしてそれがコポリマーマスクを生み出す工程の間にプラズマを介して又は化学的にそれを容易に分解することを可能にする(それはPSの2倍エッチングに敏感であり、そしてそれはそれがより一層容易に分解され得ることを意味する)。加えて、それは、合成が容易であり、かつ安価である。
【0009】
以下の著作物:
Mansky, P., et al.,“Controlling polymer−surface interactions with random copolymer brushes”Science, 1997.275: p. 1458−1460, Han, E., et al., “Effect of Composition of Substrate−ModifyingRandom Copolymers on the Orientation of Symmetric and Asymmetric Diblock Copolymer Domains”.Macromolecules, 2008.41(23): p. 9090−9097, Ryu, D.Y., et al., “Cylindrical Microdomain Orientation of PS−b−PMMA on the Balanced Interfacial Interactions:
Composition Effect of Block Copolymers.Macromolecules, 2009”.42(13): p. 4902−4906, In, I., et al., “Side−Chain−Grafted Random Copolymer Brushes as Neutral Surfaces for Controlling the Orientation of Block Copolymer Microdomains in Thin Films”.Langmuir, 2006.22(18): p. 7855−7860, Han, E., et al., “Perpendicular Orientation of Domains in Cylinder−Forming Block Copolymer Thick Films by Controlled Interfacial Interactions.Macromolecules, 2009”.42(13): p. 4896−4901;
で読まれ得るように、PS−b−PMMAブロックコポリマーについての薄膜形状の基材に対して垂直なシリンダのような、通常では不安定な形態を得るために、ランダムコポリマーブラシのグラフティング、すなわちPS−r−PMMAランダムコポリマーブラシの使用、が基材の表面エネルギーを制御することを可能にすることが、数回示された。修飾された基材の表面エネルギーは、ランダムコポリマーの繰り返し単位の体積画分を多様化することにより制御される。この技術は、ブロックコポリマーのドメインとランダムポリマーでグラフティングされた基材の間の優先的相互作用を平衡するために表面エネルギーを容易に多様化することを可能にし、かつそれが簡単であり速いので使用される。
【0010】
表面エンネルギーを最小化するためにランダムコポリマーブラシが使用された研究のほとんどは、PS−b−PMMAの組織化を制御するためのPS−r−PMMA(PS/PMMAランダムコポリマー)ブラシの使用を示す。“Generalization of the Use of Random Copolymers To Control the Wetting Behavior of Block Copolymer Films.Macromolecules, 2008”.41(23): p. 9098−9103において、Jiらは、PS/PMMAの場合に使用されるそれに類似の方法である、PS−b−P2VPの配向を制御するためのPS−r−P2VPランダムコポリマーの使用、を示した。
【0011】
しかしながら、ランダムコポリマーブラシのグラフティングは、高温度でのランダムコポリマーフィルムの熱的アニーリングを要求する。それにまた、熱的アニーリングは、ランダムコポリマーのガラス転移温度より上の温度で、減圧下で、炉中で、48hにまで及び続き得る。
この工程は、エネルギー面及び時間面において不経済である。
【0012】
出願人は、時間面及びエネルギー面において既存の方法より費用のかからない、前記ブロックコポリマーフィルムと基材の間の界面エネルギーを中和することを可能にする基材上の自己組織化したブロックコポリマーのフィルムを生産するための方法、を得ようと努めた。提供された方法は、特に基材に対して垂直に配向されたシリンダの又は基材に対して垂直に配向されたラメラのメソ構造について、ブロックコポリマーの自己組織化により形成されたメソ構造の配向を制御することを有利には可能にする。
【0013】
“Controlling Orientation and Order in Block Copolymer Thin Films”と題されたKimらによる雑誌Advanced Materials, 20(24):4851−4856において、ブロックコポリマーの自己組織化から得られるメソ構造の配向を制御するために、他の代替の解決法が提案される。実施された調査は、PS−b−PEOジブロックコポリマーを含有する溶液へのPS−OHホモポリマーの添加に存する。PS−OH鎖がブロックコポリマーフィルム/基材界面で薄層を形成することは、中性子反射率測定により示される。その結果、PS−b−PEOコポリマーの自己組織化を促進するためのアニーリングの間に、ホモポリマーは、基材に向かって移動し、かつグラフトティングされたホモポリマーのブラシと同一の方法で振る舞う。PS−OHホモポリマーは、その後、ブロックコポリマーの成分の1つと同一性質である。この解決法は、ブロックコポリマードメインの配向を制御する問題を処理しないが、上述したブラシのグラフティングのために要求される熱的アニーリング工程を含まない。
【0014】
PS−b−PMMA以外のシステムの場合を含み、ブロックコポリマー中に存在するそれらと少なくとも部分的に成分モノマーが異なるランダム又はグラジエントコポリマーを使用することによるドメインの配向の制御に言及する調査はほとんどない。
【0015】
“Control of the Orientation of Symmetric Poly(styrene)−block−poly(d,l−lactide) Block Copolymers Using Statistical Copolymers of Dissimilar Composition.Langmuir, 2012”において、Keenらは、PS−b−PLAの配向を制御するためのPS−r−PMMAランダムコポリマーの使用を示した。しかしながら、この場合、ランダムコポリマーの成分の1つがブロックコポリマーの成分の1つと化学的に同一であることに気づくことが重要である。
【0016】
しかしながら、PDMS/PLAのようなあるシステムについて、上述のアプローチを適用することを可能にする、それぞれのモノマーからのランダムコポリマーの合成は、現行の先行技術では実施され得ない。
【0017】
それが機能面で同一の最終結果、すなわちグラフティング工程無しで界面エネルギーを中和する基材とブロックポリマーの間のランダムポリマーの層の獲得、を提供するが、異なる化学的性質の材料を使用して基材とブロックコポリマーの間の表面エネルギーを制御することによりこの問題を回避することにも、出願人は興味を持った。
【0018】
加えて、参照は、以下の刊行物:
−“Miscibility and Morphology of AB/C−type blends composed of block copolymers and homopolymer or random copolymer, 2A ).Oblends with random copolymer effect”と題された、Ming Jiangらによる文書、Macromolecular chemistry and Physics, Wiley−VCH VERLAG, WEINHEIM, DE, vol.196, n°3, March 1, 1995 (1995−03−01), Pages 803−814, XP000496316, ISSN:1022−1352, D0I:10.1002/MACP.1995.021960310−805ページ、段落3−806ページ、段落2、806ページ、表2、807ページ、段落2−810ページ、段落1、からなる先行技術のようにされてよい。前記文書は、ポリ(イソプレン−b−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー及びポリ(スチレン−アクリロニトリル)ランダムコポリマーからなる自己組織化したブロックコポリマーフィルムを生産するための方法を表す。2つのコポリマーは、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)の数平均分子質量とポリ(メチルメタクリレート)の平均分子質量の間の比;あるいはポリ(メチルメタクリレート)とポリ(スチレン−アクリロニトリル)の間の質量比のようなある条件下で、非混和性でありかつ異なる化学的性質である。しかしながら、前記文書で記載された方法は、ブロックコポリマーとランダム又はグラジエントコポリマーとのブレンドを含有する溶液の基材上での沈着を含まない。ブロックコポリマー及びランダムコポリマーのブレンディング後に得られた溶液は、溶媒、THF、のエバポレーションを可能にするように、かつこのように乾燥フィルム(806ページ、第一段落)を得るようにテフロンセル内に位置する。テフロンは、単にエバポレーションセルの成分材料として役に立つが、従って基材としては役に立たない。加えて、前記文書は、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むブレンドの混和性及び形態を調査することを目的とした科学的な刊行物であって、かつそのようなブレンドのアプリケーション(使用)は、前記文書中に記載されない。
−“Controlled Placement of CdSe Nanoparticules in Diblock Copolymer Templates by Electrophoretic Deposition”と題されたQingling Zhangらによる文書、NANO LETTERS, AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, US, vol.5 n°2, February 1, 2005 (2005−02−01), pages 357−361, XP009132829, ISSN:1530−6984, D0I :10.1021/NL048103T [2005−01−06に訂正された]358ページ、左側のカラム、段落2]。前記文書は、担体のナノ細孔中のCdSeナノ粒子の電着のための方法を記載する。前記文書は、ポリ(メチルメタクリレート)ブロック及びポリスチレンブロックを含むコポリマーを紫外光及びプラズマで処理することにより得られるフィルムであって、ポリスチレンネットワークを含む多孔性フィルム、から得られるそのような担体を記載する。しかしながら、前記文書に記載された方法は、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーは化学的性質が異なり非混和性であることを示唆しない。それどころか、実験項、360ページ、カラム2において、ランダムコポリマーはポリ(スチレン−メチルメタクリレート)であって、それの末端がヒドロキシル化されることが示唆される。ジブロックコポリマーがポリ(スチレン−ブロック−メチルメタクリレート)であるという事実は、2つのコポリマーが同一の化学的性質であって混和性であることを確認することを可能にする。加えて、電着担体のそれ以外にアプリケーションは、文書中で記載されない。
【0019】
本発明の目的は、従って、異なる化学的性質のブロックコポリマー及びランダムコポリマーのブレンドを含有する溶液によるブロックコポリマー及びランダムコポリマーの同時沈着を実施すること、その後ブロックコポリマーの自己組織化に固有の相分離の促進を可能にする熱的アニーリング処理を実施することに存する方法であって、基材上の制御された配向を有する自己組織化したブロックコポリマーのフィルムを生産するための方法、を提供することにより先行技術の欠点を改善することである。ブレンドを形成するブロックコポリマー及びランダムコポリマーは、有利には非混和性である。
【0020】
本発明の対象は、より詳細には、基材上の自己組織化したブロックコポリマーのフィルムを生産するための方法であって:
−化学的性質が異なり非混和性であるブロックコポリマーとランダム又はグラジエントコポリマーとのブレンドを含有する溶液の、基材上での沈着の工程、
−ブロックコポリマーの自己組織化に固有の相分離の促進を可能とするアニーリング処理の工程
を含むことにより主に特徴付けられる。
【0021】
有利には、それら(ランダム又はグラジエントコポリマー)のモノマーが、沈着された溶液中のブロックコポリマーのブロックのそれぞれの中に各々存在するそれら(モノマー)とは異なるランダム又はグラジエントコポリマーの使用は、上述の問題を効果的に解決すること、特に、ブロックコポリマーに化学的に関係しないランダムコポリマーを介したブロックコポリマーの自己組織化により形成されたメソ構造の配向を制御することを可能にする。
【0022】
本発明の対象は、リソグラフィアプリケーションのためのマスク、情報貯蔵のための磁性粒子のローカリゼーションのための担体又は無機構造体の形成のためのガイドを構成するフィルムであって、上述の方法によって得られるフィルムでもある。
【0023】
本発明の対象は、ブロックコポリマーの自己組織化の間に形成されたドメインの1つの除去後の触媒担体又は多孔性膜を構成するフィルムであって、上述の方法によって得られたフィルムでもある。
【0024】
本発明の他の特徴によれば:
−ブロックコポリマーは一般式A−b−B又はA−b−B−b−Aを有し、かつランダムコポリマーは一般式C−r−Dを有し;ランダムコポリマーのモノマーは、ブロックコポリマーのブロックのそれぞれの中に各々存在するそれらとは異なり、
−ブロックコポリマー及びランダムコポリマーは、非混和性であり、
−有利には、アニーリング処理は、熱的又は溶媒蒸気処理あるいはマイクロ波処理により得られ、
−ランダム又はグラジエントコポリマーは、ラジカル重合により調製され、
−ランダム又はグラジエントコポリマーは、制御されたラジカル重合により調製され、
−ランダム又はグラジエントコポリマーは、ニトロキシド制御されたラジカル重合により調製され、
−ニトロキシドは、N−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドであり,
−ブロックコポリマーは、直鎖状もしくはスター(型の、等にしてかたまりをはっきりさせた方がよい?)ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーから選択され、
−ブロックコポリマーは、少なくとも1のPLAブロック及び少なくとも1のPDMSブロックを含み、
−ランダム又はグラジエントコポリマーは、メチルメタクリレート及びスチレンを含み、
−アニーリング処理は、熱的又は溶媒蒸気処理あるいはマイクロ波処理により得られる。
【0025】
本発明は、リソグラフィアプリケーションのためのマスク、離散化された情報貯蔵のための担体又は無機構造体の形成のためのガイドとしての、上述の方法により得られたフィルムの使用にも関する。
【0026】
本発明は、多孔性膜又は触媒担体としての、上述の方法により得られたフィルムの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の特性及び優位性は、図面を参照する説明的及び非限定的な実施例による記載を読めば明らかになるであろう。
【
図1】原子間力顕微鏡(AFM)として知られるイメージング技術により得られた4つのイメージ(a)、(b)、(c)及び(d)を表す。
【
図2】aは、先行技術によりランダムコポリマーのブラシを沈着するための方法によって得られたフィルムについてのオージェ電子放出スペクトルを表し、bは、本発明による方法により得られたフィルムについてのオージェ電子放出スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ランダム又はグラジエントコポリマー:
用語“ランダム又はグラジエントコポリマー”は、本発明において、モノマー単位の配分がランダム則に従う高分子を意味するように意図される。
【0029】
本発明で使用されるランダム又はグラジエントコポリマーは、一般式C−s−Dであり、かつそれら(グラジエントコポリマー)の成分モノマーは、使用されるブロックコポリマーのブロックのそれぞれの中に各々存在するそれら(モノマー)とは異なる。
【0030】
重縮合、開環重合、又はアニオン、カチオン、もしくはラジカル重合が挙げられる任意のルートにより、ランダムコポリマーが得られてよく、後者が制御又は非制御されることが可能である。ポリマーがラジカル重合又はテロメル化により調製された時、NMP(ニトロキシド媒介重合)、RAFT(可逆的付加開裂移動)、ATRP(原子移動ラジカル重合)、INIFERTER(イニシエータ−移動−ターミネーション)、RITP(逆ヨウ素移動重合)又はITP(ヨウ素移動重合)のような任意の既知技術によりそれは制御され得る。
【0031】
金属を含まない重合方法が、好まれるであろう。好ましくは、ポリマーは、ラジカル重合により調製され、より特別には制御されたラジカル重合、より一層特別にはニトロキシド制御された重合により調製される。
【0032】
より特別には、安定なフリーラジカル(1)
から誘導されたアルコキシアミンに由来するニトロキシドが好まれ、ここで、ラジカルRLは、15.0342g/molより大きなモル質量を有する。
【0033】
ラジカルRLは、15.0342より大きなモル質量を有することと同様に、塩素、臭素又はヨウ素のようなハロゲン原子、アルキル又はフェニルラジカルのような飽和又は不飽和、直鎖状、分岐状又は環状炭化水素ベースの基、エステル基COOR又はアルコキシルORあるいはホスホネート基PO(OR)
2、であってよい。一価であるラジカルRLは、ニトロキシドラジカルの窒素原子に関する位置にあるとされる。式(1)中の炭素原子及び窒素原子の残りの原子価は、水素原子又は炭化水素ベースのラジカル、例えば1から10の炭素原子を含むアルキル、アリールもしくはアリールアルキルラジカルのような種々のラジカルに結合され得る。環を形成するように、2価ラジカルによって互いにリンクされることが、式(1)中の炭素原子及び窒素原子についてまったく不可能ではない。しかしながら好ましくは、式(1)中の炭素原子及び窒素原子の残りの原子価は、1価ラジカルに結合される。好ましくは、ラジカルRLは、30g/molより大きなモル質量を有する。例えば、ラジカルRLは、40と450g/molの間のモル質量を有する。例として、ラジカルRLは、ホスホリル基を含むラジカルであってもよく、ここで前記ラジカルRLは式:
[上式中、同一又は異なってよいR
3及びR
4は、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキル及びアラルキルラジカルから選択されてよく、1から20までの炭素原子を含み得る]により表されることが可能である。R
3及び/又はR
4は、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素原子のようなハロゲン原子でもあり得る。ラジカルRLは、フェニルラジカル又はナフチルラジカルのためのような少なくとも1の芳香族環も含んでよく、ここで後者は、例えば1から4までの炭素原子を含むアルキルラジカルと置換されることが可能である。
【0034】
より特別には、以下の安定なラジカルから誘導されたアルコキシアミンは、好まれる:
−N−(tert−ブチル)−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、
−N−(tert−ブチル)−1−(2−ナフチル)−2−メチルプロピルニトロキシド、
−N−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−(tert−ブチル)−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、
−N−(1−フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、
−4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、
−2,4,6−トリ−(tert−ブチル)フェノキシ。
【0035】
制御されたラジカル重合で使用されたアルコキシアミンは、モノマーのリンキングの良好な制御を可能としなければならない。したがって、それらは、あるモノマーの良好な制御を全て可能とするわけではない。例えば、TEMPOから誘導されるアルコキシアミンは、モノマーの限られた数のみを制御することを可能にし、2,2,5−トリメチル−4−フェニル−3−アザヘキサン−3−ニトロキシド(TIPNO)から誘導されたアルコキシアミンも同様である。一方で、式(1)に対応するニトロキシドから誘導された他のアルコキシアミン、特に式(2)に対応するニトロキシドから誘導されたそれら及びより一層特にN−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドから誘導されたそれらは、これらのモノマーの制御されたラジカル重合を多くのモノマーに対して広げることを可能にする。
【0036】
加えて、alkoyamineオープニング温度も、経済的要因に影響する。低温度の使用は、工業的な困難を最小化するために好まれるであろう。式(1)に対応するニトロキシドから誘導されるアルコキシアミン、特に式(2)に対応するニトロキシドから誘導されるそれら及びより一層特にN−(tert−ブチル)−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドから誘導されるそれらは、従って、TEMPO又は2,2,5−トリメチル−4−フェニル−3−アザヘキサン−3−ニトロキシド(TIPNO)から誘導されるそれらより好まれるであろう。
【0037】
ランダムコポリマー及びブロックコポリマーの成分モノマー:
ランダムコポリマー及びブロックコポリマーの成分モノマー(最低2つ)は、ビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリル又は(メタ)アクリルモノマーから選択されるであろう。これらのモノマーは、スチレン又は置換されたスチレン、特にα−メチルスチレンのようなビニル芳香族モノマー、アクリル酸又はそれの塩、メチル、エチル、ブチル、エチルヘキシルもしくはフェニルアクリレートのようなアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのようなヒドロキシアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートのようなエーテルアルキルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアクリレートもしくはそれらの混合物のようなアルコキシ−もしくはアリールオキシポリアルキレングリコールアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(ADAME)、のようなアミノアルキルアクリレート、フルオロアクリレート、シリル化されたアクリレート、アルキレングリコールアクリレートホスフェートのようなリンを含むアクリレート、グリシジルアクリレートあるいはジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートのようなアクリルモノマー、メタクリル酸又はそれの塩、メチル(MMA)、ラウリル、シクロヘキシル、アリル、フェニルもしくはナフチルメタクリレートのようなアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアリールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートもしくは2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのようなヒドロキシアルキルメタクリレート2−エトキシエチルメタクリレートのようなエーテルアルキルメタクリレートメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールメタクリレートもしくはそれらの混合物のようなアルコキシ−もしくはアリールオキシポリアルキレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(MADAME)のようなアミノアルキルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートのようなフルオロメタクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルシランのようなシリル化されたメタクリレート、アルキレングリコールメタクリレートホスフェートのようなリンを含むメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレートあるいは2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレートのようなメタクリルモノマー、アクリロニトリル、アクリルアミドもしくは置換されたアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン,N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミドもしくは置換されたメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、イタコン酸、マレイン酸又はそれらの塩、マレイン無水物)、アルキルもしくはアルコキシ−もしくはアリールオキシポリアルキレングリコールマレアートもしくはヘミマレアート、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、メトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル又はポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルのような(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテル又はジビニルエーテル、エチレン、ブテン、ヘキセン及び1−オクテンが挙げられるオレフィンモノマー、ブタジエン又はイソプレンを含むジエンモノマー並びに、ビニリデンフルオリドが挙げられるビニリジデンモノマー及びフルオロオレフィンモノマーから一層特に選択される。
【0038】
好ましくは、ランダムコポリマーの成分モノマーは、スチレンモノマー又は(メタ)アクリルモノマー、一層特にスチレン及びメチルメタクリレートから選択されるであろう。
【0039】
本発明で使用されたランダムコポリマーの数平均分子質量に関して、それは、1.00から10まで、好ましくは1.05から3まで、一層特に1.05と2の間の分散指数を有し、500g/molと100000g/molの間、好ましくは1000g/molと20000g/molの間、より一層特に2000g/molと10000g/molの間であってよい。
【0040】
本発明で使用されたブロックコポリマーは、それらの成分モノマーが本発明で使用されたランダムコポリマー中に存在するそれらと異なる化学的性質である提供された任意のタイプ(ジブロック、トリブロック、マルチブロック、グラジエント、スター)であってよい。
【0041】
ブロックコポリマー
互いに異なりかつ相分離パラメータを有する2つのコポリマーブロックであって、それらが混和性ではなくかつナノドメインに分かれるような相分離パラメータを有する2つのコポリマーブロック、と定義されるような少なくとも2のコポリマーブロックを含むポリマーを意味することを、用語”ブロックコポリマー”は意図する。
【0042】
本発明で使用されたブロックコポリマーは、一般式A−b−B又はA−b−B−b−Aを有し、かつアニオン重合、オリゴマー重縮合、開環重合そうでなければ制御されたラジカル重合のような任意の合成ルートを介して調製され得る。
【0043】
成分ブロックは以下のブロック:
PLA、PDMS、ポリ(トリメチルカーボネート)(PTMC)、ポリカプロラクトン(PCL)
から選択されてよい。
【0044】
本発明のある変形例によれば、本発明で使用されたブロックコポリマーは、以下:
PLA−PDMS、PLA−PDMS−PLA、PTMC−PDMS−PTMC、PCL−PDMS−PCL、PTMC−PCL、PTMC−PCL−PTMC及びPCL−PTMC−PCL、一層特にPLA−PDMS−PLA及びPTMC−PDMS−PTMC
から選択されるであろう。
【0045】
本発明の他の変形例によれば、検討はブロックコポリマーにも与えられてよく、それのブロックの1つがスチレンかスチレン及び少なくとも1のコモノマーXのどちらかを含み、他方のそれのブロックがメチルメタクリレートかメチルメタクリレート及び少なくとも1のコモノマーYのどちらかを含み、Xは、スチレンを含むブロックに対して1%から99%まで、好ましくは10%から80%までの範囲のXの質量比で以下のエンティティから選択される:水素化又は部分的に水素化されたスチレン、シクロヘキサジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサン、1以上のフルオロアルキル基に置換されたスチレンあるいはそれらの混合物であり;Yは、メチルメタクリレートを含むブロックに対して1%から99%まで、好ましくは10%から80%までの範囲のYの質量比で以下のエンティティから選択される:フルオロアルキル(メタ)アクリレート、特にトリフルオロエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート又はハロゲン化されたイソボルニル(メタ)アクリレートのような球状の(メタ)アクリレート、ハロゲン化されたアルキル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(メタ)アクリレート、そしてそれらはフッ素化された基を含んでよく、あるいはそれらの混合物である。
【0046】
本発明の他の変形例によれば、検討はブロックコポリマーにも与えられてよく、それのブロックの1つがカルボシランであり、他方のブロックがスチレンかスチレン及び少なくとも1のコモノマーXのどちらか、又はメチルメタクリレートかメチルメタクリレート及び少なくとも1のYのどちらかを含み、Xが、スチレンを含むブロックに対して1%から99%まで、好ましくは10%から80%までの範囲のXの質量比で以下のエンティティから選択される:水素化又は部分的に水素化されたスチレン、シクロヘキサジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサン、1以上のフルオロアルキル基に置換されたスチレンあるいはそれらの混合物であり;Yが、メチルメタクリレートを含むブロックに対して1%から99%まで、好ましくは10%から80%までの範囲のYの質量比で以下のエンティティから選択される:フルオロアルキル(メタ)アクリレート、特にトリフルオロエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート又はハロゲン化されたイソボルニル(メタ)アクリレートのような球状の(メタ)アクリレート、ハロゲン化されたアルキル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(メタ)アクリレート、そしてそれらはフッ素化された基を含んでよく、あるいはそれらの混合物である。
【0047】
ポリスチレンスタンダードを用いてSECにより測定された、本発明で使用されたブロックコポリマーの数平均分子量に関して、それは、1.00から2までの分散指数、好ましくは1.05から1.4までを有し、2000g/molと80000g/molの間、好ましくは4000g/molと20000g/molの間、より一層特に6000g/molと15000g/molの間であってよい。
【0048】
成分ブロック間の比は、以下の方法から選択されるであろう:
【0049】
ブロックコポリマーの種々のメソ構造は、ブロックの体積画分に依存する。“Equilibrium behavior of symmetric ABA triblock copolymers melts.The Journal of chemical physics, 1999”111(15):7139−7146.におけるMastenらによって実施された理論的研究は、ブロックの体積画分の多様化により、メソ構造は、スフィア状、シリンダ状、ラメラ状、螺旋状等であってよいことを示す。例えば、六方最密タイプの充填を示すメソ構造は、あるブロックについて〜70%及び他方のブロックについて〜30%の体積画分で得られてよい。
【0050】
したがって、ラインを得るように、ラメラ状メソ構造を有するAB、ABA又はABCタイプの直鎖状又は非直鎖状ブロックコポリマーを使用するであろう。スポットを得るように、分解されたマトリクスドメインを伴いスフィア状又はシリンダ状のメソ構造を有するが、同一タイプのブロックコポリマーを使用するであろう。ホールを得るために、分解された少数相のソフィア又はシリンダを伴い、ソフィア状又はシリンダ状のメソ構造を有する同一タイプのブロックコポリマーを使用するであろう。
【0051】
更に、高い値のフローリーハギンスパラメータχを有するブロックコポリマーは、ブロックの強力な相分離を有するであろう。これは、このパラメータが、それぞれのブロックの鎖の間の相互作用に関するからである。高い値のχは、互いからできる限り遠くにブロックが動くことを示し、そしてそれはブロックの良好なレゾリューション及びそれゆえの低いライン粗さという結果をもたらすであろう。
【0052】
高いフローリーハギンスパラメータを有するブロックコポリマーのシステム(すなわち、298Kにおいて0.1より上)、一層特にヘテロ原子(C及びH以外の原子)を含有するポリメリックブロック、より一層特にSi原子、はこのように好まれるであろう。
【0053】
相分離:
分離挙動と関連づけられたブロックコポリマーの自己組織化を促進することに適切な処理は、典型的にはブロックのガラス転移温度(Tg)より上であり、最も高いTgより上の10から250℃まで及び得る熱的アニーリング、溶媒蒸気に対する暴露、そうでなければこれら2つの処理の組合せもしくはマイクロ波処理であってよい。好ましくは、それは熱処理であり、それの温度が、選択されたブロック及びメソ構造の秩序無秩序温度に依存するであろう。ここで適切な、例えばブロックが賢明に選択された時、簡単な溶媒のエバポレーションは、ブロックコポリマーの自己組織化を促進するような周囲温度で充分であろう。
【0054】
基材:
本発明の方法は、以下の基材:最適化されたリソグラフィで当業者により使用される樹脂、グラフェン、チタン窒化物、金、タングステン及びタングステン酸化物、白金及び白金酸化物、水素化又はハロゲン化されたゲルマニウム、ゲルマニウム、水素化又はハロゲン化されたシリコン、ネイティブな又は熱的な酸化層を有するシリコン並びにシリコンに適用可能である。好ましくは、表面は、無機物、より好ましくはシリコンである。より好ましくは、表面は、ネイティブな又は熱的な酸化物層を有するシリコンである。
【0055】
本発明により基材上の自己組織化したブロックコポリマーフィルムを生産するための方法は:
−当業者に既知の技術により、ブロックコポリマーとランダム又はグラジエントコポリマーとのブレンドを含有する溶液を沈着する工程、例えば“スピンコーティング”、“ドクターブレード”、“ナイフシステム”又は“スロットダイシステム”技術、又はそれらの組合せ、
を含み、
−その後、ブロックコポリマーとランダム又はグラジエントコポリマーとのブレンドを含有する溶液は、ブロックコポリマーの自己組織化に固有の相分離、及びブロックコポリマー/ランダムコポリマーシステムの階層化、すなわちブロックコポリマーの層と基材の間のランダムコポリマーのマイグレーション、も可能にする熱処理にかけられる。
【0056】
本発明の方法は、典型的には300nm未満、好ましくは100nm未満であり、ブロックコポリマーとランダム又はグラジエントコポリマーとのブレンドを含有する層を形成することを目的とする。
【0057】
ある好ましい本発明の形態によれば、本発明の方法によって処理された表面上に沈着されたブレンドのために使用されたブロックコポリマーは、好ましくは直鎖状もしくはスタージブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーである。
【0058】
本発明の方法によって処理された表面は、有利にはリソグラフィでのアプリケーション、又はブロックコポリマーの自己組織化の間に形成されたドメインの1つが多孔性構造を得るために分解される触媒担体もしくは多孔性膜の調製に使用される。
【実施例】
【0059】
a)ラジカル重合によるランダムコポリマーの調製
実施例1:商業上のアルコキシアミンBlocBuilder(R)MAからのヒドロキシ官能化されたアルコキシアミンンの調製:
【0060】
以下は、窒素でパージされた1l丸底フラスコ中に導入される:
−BlocBuilder(登録商標)MA226.17g(1等量)
−2−ヒドロキシエチルアクリレート68.9g(1等量)
−イソプロパノール548g。
【0061】
反応混合物は、4時間還流(80℃)され、その後イソプロパノールは、減圧下でエバポレートされた。ヒドロキシ官能化されたアルコキシアミン297gは、非常に粘性のある黄色いオイルの形態で得られた。
【0062】
実施例2:実施例1により調製されたヒドロキシ官能化されたアルコキシアミンからポリスチレン/ポリ(メチルメタクリレート)(PS/PMMA)ポリマーを調製するすための実験プロトコル
【0063】
トルエン、並びにスチレン(S)及びメチルメタクリレート(MMA)のようなモノマー、並びにヒドロキシ官能化されたアルコキシアミンも、機械的撹拌機及びジャケットを備えたステンレス鋼反応器中に位置する。種々のスチレン(S)とメチルメタクリレート(MMA)モノマーの間の質量比は、以下の表1に記載される。質量で、トルエン供給原料は、反応媒体に対して30%で固定される。反応混合物は、撹拌され、かつ30分間、周囲温度において、窒素通気により脱気される。
【0064】
反応媒体の温度は、その後115℃にされる。時間t=0は、周囲温度においてトリガーされる。約70%のモノマーの変換に達するまで、温度は、重合を通して115℃において維持される。サンプルは、重量分析(乾燥抽出物の測定)により重合キネティクスを決定するために、一定の間隔で採取される。
【0065】
70%の変換に達する時、反応媒体は60℃まで冷却され、かつ溶媒及び残りのモノマーは減圧下でエバポレートされる。エバポレーション後、約25質量%のポリマーの溶液が生じるような量で、メチルエチルケトンは反応媒体に加えられる。
【0066】
このポリマー溶液は、その後、ポリマーを沈殿させるように、非溶媒(ヘプタン)を含有するビーカー中へ液滴で導入される。溶媒と非溶媒の間の質量比(メチルエチルケトン/ヘプタン)は、約1/10である。沈殿したポリマーは、ろ過及び乾燥の後、白色粉末の形態で回収される。
【0067】
【0068】
(a)サイズ排除クロマトグラフィにより決定された。ポリマーは、BHT安定化されたTHF中、1g/lで溶解された。キャリブレーションは、単分散のポリスチレンスタンダードを使用して実施された。屈折率及び254nmにおけるUVによるダブル検出は、ポリマー中のポリスチレンの百分率を決定することを可能にする。
【0069】
b)ブロックコポリマーの合成:
実施例3:PLA−PDMS−PLAトリブロックコポリマーの合成:
この合成のために使用された製品は、シグマアルドリッチにより販売されたホモポリマーHO−PDMS−OH及び開始剤、結晶化に関連する任意の問題を回避するためのラセミック乳酸、金属汚染問題を回避するための有機触媒、トリアザビシクロデセン(TBD)並びにトルエンである。
【0070】
ブロックの体積画分は、PDMSのマトリクス中のPLA、すなわちPDMS約70%及びPLA約30%、のシリンダを得るように決定される。
【0071】
実施例4:PLA−b−PDMS−b−PLAトリブロックコポリマーの自己組織化
この調査で記載されるブロックコポリマーは、エッチング及びデグラデーション後に基材中のシリンダ状のホールを生み出すためのマスクとして使用されたリソグラフィ、すなわちマトリクス中のシリンダ、の必要性により選択された。望ましい形態は、従ってPDMSのマトリクス中のPLAのシリンダである。
【0072】
第一工程:
−実施例2により得られた5か10mgのどちらかのPS/PMMAランダムコポリマー及び実施例3により得られたPLA/PDMSブロックコポリマー15mgを含有する溶液の混合物の調製、−溶液は、適切な溶媒PGMEA(ポリピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いて溶液1gになるように仕上げられる。次に、この溶液100μlは、30s間のスピンコーティングにより、1.4×1.4cm
2の表面積を有するシリコン基材上に沈着される。
【0073】
第二工程:
−アニーリングは、実施される:相分離の促進を可能にする熱処理。工程1による溶液が沈着された基材は、ポリマーフィルム/基材界面エネルギーを中和するために、ブロックコポリマーの秩序無秩序転移温度に近い温度において、1h30間、180℃で、ホットプレート上に位置する。
【0074】
記載の実施例は、PSを57.8%含有するPS−r−PMMAランダムコポリマーを有し、72.7%に等しいPDMSの体積画分を含有する、PLA−b−PDMS−b−PLAブロックコポリマーのブレンドからの、PDMSのマトリクス中のPLAの直交性シリンダ状ヘキサゴナルネットワークの形成を示す。
【0075】
引例は、原子間力顕微鏡(AFM)イメージング技術により得られた4つのAFMイメージを示す
図1に参照されてよい。AFMイメージ(a)及び(b)は、熱処理無しでの、PS−r−PMMAのブラシ上に沈着されたPLA−b−PDMS−b−PLAのフィルム、並びに75質量%のPLA−b−PDMS−b−PLA及び25質量%のPS−r−PMMAのブレンド、にそれぞれ対応する。イメージ(c)及び(d)は、180℃における1h30間の熱処理後の(a)及び(b)にそれぞれ対応する。
【0076】
引例は、事前にPS−r−PMMAを伴いグラフティングされたブラシ上に沈着されたPLA−b−PDMS−b−PLAから構成され、1h30の間、180℃において熱的にアニーリングされたフィルム、についてのオージェ電子放出スペクトルを表す
図2aにも参照されてよく、かつ比較として、それぞれ75/25質量%のPLA−b−PDMS−b−PLA及びPS−r−PMMAの混合物から構成されたフィルムについてのオージェ電子放出スペクトルを表す
図2bにも参照されてよい。
【0077】
DSC(示差走査熱量測定の頭字語)及びSAXS(小角X線散乱の頭字語)分析は、一方で、混合物が混和性でないことを、もう一方で、マス構造がブロックコポリマーのみのそれと同一であること、すなわちシリンダ状のヘキサゴナル構造、を確認する。
【0078】
原子間力顕微鏡イメージ及び、例えば、
図1のイメージ(d)は、PDMSマトリクス中の表面に垂直に配向されたPLAシリンダのヘキサゴナルネットワークを示す。そのうえ、これらの結果は、
図1のイメージ(c)に示されたPS−ランド−PMMAブラシのグラフティングの間に観測されたそれらに類似する。
【0079】
更に、
図2a及び2bにより示されたオージェ電子放出分析は、
図2a(イメージ(a))により示されたランダムコポリマーのブラシ上に沈着されたブロックコポリマーのフィルム、と
図2b(イメージ(b))により示されたそれぞれ75/25質量%のブロックコポリマーとランダムコポリマーとのブレンドとの間でフィルムの振る舞いが同一であることを示す。
【0080】
その結果、熱的アニーリングの間、PS−r−PMMAランダムコポリマーの鎖は、基材に向けて移動し、かつブロックコポリマーに関して表面の中和のための層として作用する。
【0081】
このようにして、ランダムコポリマーの層は、基材とPLA−b−PDMS−b−PLAブロックコポリマーのフィルムの間で形成され、それが界面エネルギーを中和する。その結果、PDMS及びPLAドメインは、もはや基材との優先的な相互作用を有さず、かつPDMSマトリクス中、表面に対して垂直に配向されたPLAシリンダの構造は、アニーリング工程の間に得られる。
【国際調査報告】