(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502136(P2017-502136A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】低温において引裂に対して耐性である不燃性PVDFフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20161222BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20161222BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
C08J5/18CEU
B32B27/30 D
B32B27/18 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-541047(P2016-541047)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】FR2014053399
(87)【国際公開番号】WO2015092282
(87)【国際公開日】20150625
(31)【優先権主張番号】1362876
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブグラル,フロラン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥビスム,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】フィヌ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】フラ,ジャン−ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ベレ,エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA26
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4F100JN26A
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、動物用の温室フィルムとして農業分野において野外での使用を可能にする特性を有するフッ素化フィルムに関する。本発明のフィルムは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)マトリクス、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤であって、重量に基づく含量が2.5%から40%未満の間で変化する耐衝撃性改良剤、および難燃剤を含む単層ポリマーフィルムである。1つの異なる実施形態によれば、本発明は、少なくとも1層の前記フッ素化フィルムおよび少なくとも1層の未改質PVDF層を含む多層フィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)マトリクス、少なくとも1つのコアシェル型耐衝撃性改良剤および難燃剤を含む単層ポリマーフィルムであって、重量に基づく耐衝撃性改良剤の含量が、2.5%から40%未満の間で変化する、単層ポリマーフィルム。
【請求項2】
重量に基づく耐衝撃性改良剤の含量が、5%より多く30%以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
難燃剤の量の耐衝撃性改良剤の量に対する比が、1/30から1/1、好ましくは、1/15から1/7である、請求項1および2のいずれかに記載のフィルム。
【請求項4】
PVDFマトリクスが、PVDFホモポリマー、または、フッ化ビニリデンをフッ素化コモノマーと共重合させて製造されたコポリマーからなる、請求項1から3の一項に記載のフィルムであって、前記フッ素化コモノマーが、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)およびパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)から選択され、前記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)から選択される、フィルム。
【請求項5】
耐衝撃性改良剤が、エラストマーのコアおよび少なくとも1つの熱可塑性シェルを含む、請求項1から4の一項に記載のフィルム。
【請求項6】
コアが、炭素原子数1から18のアルキルまたはビニル基、アリール基および置換された炭化水素から選択される1つ以上の基を有するポリ(オルガノシロキサン)から構成される、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
コアが、イソプレンまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマー、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、ならびにアルキル(メタ)アクリレートと別のアルキル(メタ)アクリレートおよびビニルモノマーから選択される30モル%以下のモノマーとのコポリマーから選択されるポリマーを含み、
該ビニルモノマーが、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンである、請求項5に記載のフィルム。
【請求項8】
シェルが、モノマーに由来するポリマーまたはコポリマーから形成され、前記モノマーが、アルキルが1から4つの炭素原子を有するアルキルアクリレートもしくはメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、ビニルスチレン、ビニルプロピオネート、マレイミド、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンから選択される、請求項6に記載のフィルム。
【請求項9】
前記コアが、ポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートから選択される少なくとも二官能のモノマーによって、または不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドから選択される不飽和官能性モノマーによって、完全にまたは部分的に架橋されている、請求項5および7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
コアが、ポリシロキサンを含むゴムと組み合わせた軟質ゴム型の材料であり、前記軟質ゴムが、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートから得られたゴム型のポリマーの存在下、1種以上のビニルモノマーの重合によって製造され、前記アルキル基が2から10の炭素原子を有する、請求項5に記載のフィルム。
【請求項11】
シェルが、スチレン、アルキルスチレンもしくはメチルメタクリレートのホモポリマー、または、少なくとも70モル%のこれら上記モノマーのうちの1種、ならびに上記モノマーの残りのモノマー、別のアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアセテートおよびアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマーである、請求項5、7、9または10の一項に記載のフィルム。
【請求項12】
厚さが30から200ミクロン、好ましくは80から150ミクロンである、請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
マット化剤、不透明化剤、アクリル系ホモポリマーまたはコポリマー、可塑剤、および赤外線反射剤から選択される少なくとも1つの添加剤を含み、該赤外線反射剤が、酸化チタン、マイカおよび酸化チタンを主成分とする真珠光沢顔料、ならびに金属合金から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
難燃剤が、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、カルシウムタングステートおよびアルミニウムシリケートから選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1層およびPVDF層を少なくとも1層含む、多層フィルム。
【請求項16】
請求項1から14の一項に記載の1つの内層および2つの外層PVDFからなり、前記外層が同一または異なる構造を有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
請求項1から14の一項に記載のフィルムまたは請求項15および16のいずれかに記載のフィルムの使用であって、建物、とりわけ農業用の建物、例えば畜産用の建物の屋根および/またはファサード用のフィルム製造用材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ畜産の分野において、家畜の居所または保護施設を覆うフィルム等の野外用途に適した特性を有するフッ素化フィルムに関する。本発明のフィルムは、ポリフッ化ビニリデンマトリクス、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤、および難燃剤を含む。
【背景技術】
【0002】
気候の厳しい地域では、特に寒冷および湿潤期の間は、少なくともいくらかの保護物を動物に施すべきである。特に風からの保護物がないことで、動物の健康に有害な結果をもたらすことがある。農業用の温室は、これらの要素から家畜を保護することによって、家畜の避難を可能にする。これら温室の覆いは、半透明で、通常はガラス製であるが、硬質または軟質プラスチック(例えば、ポリエチレンフィルムまたは半硬質PVCシート)製でもあり、通常は紫外線放射に対して耐性を示すように処理されている。このフィルムは、引裂強度を高めるために補強されうる。
【0003】
一般的に、畜産用の建物の屋根に用いられるフィルムは、幾つかの特性を有する必要がある:
−機械的特性、例えば:温度範囲−20℃から+60℃での引裂強度、クリープ強度、延伸性;
−光学特性、例えば、可視光の部分的な透過および透過光の拡散性;
−耐薬品性、とりわけ、富アンモニア環境に対して;
−耐久性:耐湿熱および耐低温性、耐紫外線放射性;
−建物内の温度安定性を確保するために、日中の太陽からおよび夜間の建物内部からの赤外線放射に対する高い反射能力;
−耐火性;
−防曇性および防塵性。
【0004】
特にフッ化ビニリデン系のフッ素化ポリマーを、農業用の建物(囲われた空間という意味の)の製造に用いられる単層フィルム製造に使用することは、よく知られたやり方である。フィルム吹き込みまたはキャストフィルム技術で得られたPVDF(ポリフッ化ビニリデン)系またはVDF/HFP(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー系の単層フィルムは、農業用の温室用途の良い候補となる範囲内で、良好な機械的特性、光学特性、耐薬品性、および耐久性特性を有する。これらフィルムの引裂強度は、しかしながら、とりわけ押出方向(MD)において不十分である。
【0005】
文書WO2011/121228は、結晶化温度TcAを有する第一のフッ化ビニリデンコポリマーからなる層Aおよび結晶化温度TcBを有する第二のフッ化ビニリデンコポリマーからなる層Bを含み、TcAがTcBよりも高く、層AとBは交互になっており、層Aが外側に配置され、層Bが2つの層Aの間に配置されている、少なくとも3層を含む多層フッ素化フィルムを記載している。これらフィルムの引裂強度は、既知のフッ素化フィルムに対して有意に改良されたが、しかしながら、低温では不十分なままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/121228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、良好な耐火性を有しながら、上に示した一般的特徴に加えて、−20℃から+60℃に及ぶ温度範囲で良好な引裂強度特性を有し、光を部分的に拡散し、これにより調和のとれた自然光の分配による動物の福祉に貢献する、畜産用の建物の覆いおよび/またはファサード用途のフッ素化フィルムを有することが望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コアシェル型の耐衝撃性改良剤の添加でポリフッ化ビニリデンポリマーを改質することによって、農業用の建物用のフィルムとしてのこのフィルムの用途に対応する可視領域での透過度を保持しつつ、特に低温でのフィルムの引裂強度の有意な改善が得られることが分かった。さらに、難燃剤の添加は、動物の温室フィルムとしての使用に不可欠の良好な耐火性を与える。
【0009】
本発明の主題の1つは、少なくとも1つのコアシェル型の耐衝撃性改良剤の添加および難燃剤を含むことで改質されたPVDFからなる単層フィルムからなる。
【0010】
本発明の別の主題は、上述の改質されたPVDF層を少なくとも1層および未改質のPVDF層、即ち、耐衝撃性改良剤や難燃剤を含まないPVDF(以下、「PVDF層」と言う)を少なくとも1層含む多層フィルムに関する。一実施形態によれば、このPVDF層は、多層フィルムの外側に位置する。
【0011】
本発明の別の主題は、本発明のフィルムの農業用の建物の覆い、とりわけ、動物用の温室の屋根および/またはファサード用の材料としての使用に関する。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、下記の説明を読むことで明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第一の態様によれば、本発明は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)マトリクス、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤および難燃剤を含む単層ポリマーフィルムに関し、ここで、重量に基づく耐衝撃性改良剤の含量は、2.5%から40%未満の間で変化する。
【0014】
達成すべき所望の機械的特性を可能にするものの、フィルムへの耐衝撃性改良剤の添加は、通常、フィルムに引火性をもたらすことにもなる。従って、本発明の主題は、耐衝撃性改良剤の存在によって改良された引裂強度を保ちながら、製品の耐火性を回復させることが可能な、第二の難燃性添加剤の添加に関する。幾つかの系統の難燃剤が、この役割を果たしうる。例として:
−ハロゲン化難燃剤、
−リン系難燃剤、例えば、金属または有機金属ホスホネート塩、
−カルシウムタングステートおよび
−アルミニウムシリケート
を挙げることができる。
【0015】
これらの化合物の幾つかを、難燃剤として同時に用いてもよい。難燃剤の総量の耐衝撃性改良剤の総量に対する比は、1/30から1/1、好ましくは1/15から1/7である。
【0016】
本発明のフィルムの厚さは、30から200ミクロン、好ましくは80から150ミクロンである(境界を含む)。
【0017】
一実施形態によれば、耐衝撃性改良剤の含量は、フィルムの総重量の5%より多く、30%以下である。好ましくは、耐衝撃性改良剤の含量は、10%以上および30%以下である。
【0018】
一実施形態によれば、本発明の単層フィルムは、PVDFマトリクス、少なくとも1つのコアシェル型の耐衝撃性改良剤および難燃剤からなる。
【0019】
PVDFマトリクスは、PVDFホモポリマーからなるかまたは、フッ化ビニリデン(VDF、CH
2=CF
2)を、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)など)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)ならびにパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)から選択されるフッ素化コモノマーと共重合させて製造されたコポリマーからなる。
【0020】
一実施形態によれば、前記マトリクスは、ホモポリマーのPVDFからなる。
【0021】
別の実施形態によれば、前記マトリクスは、VDFのコポリマーからなる。好ましくは、フッ素化コモノマーは、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)ならびにこれらの混合物から選ばれる。
【0022】
このコモノマーは、HFPが好適である。好ましくは、このコポリマーは、VDFおよびHFPのみからなる。
【0023】
これらフッ素化コポリマーは、VDFのコポリマー、例えば、少なくとも50重量%のVDF、有利には、少なくとも75重量%のVDFおよび好ましくは、少なくとも80重量%のVDFを含むVDF−HFPが好ましい。例えば、より具体的には、アルケマより、Kynar Flex(R)の名前で販売される、75%を超えるVDFを含み残余がHFPであるVDFのコポリマーが挙げられる。
【0024】
一実施形態によれば、コアシェル型の耐衝撃性改良剤は、エラストマーのコア(25℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくはさらに−5℃未満、さらにより好ましくはさらに−25℃未満のガラス転移温度を有する)および少なくとも1つの熱可塑性シェル(25℃を超えるガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーを含む)を有する微粒子の形態である。これら粒子のサイズは、一般にミクロン未満であり、50から300nmが好適である。コアの例として、イソプレンまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマー、およびブタジエンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマーを挙げることができる。このビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたはアルキル(メタ)アクリレートでよい。別のコアの系統は、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーならびに、アルキル(メタ)アクリレートと、別のアルキル(メタ)アクリレートおよびビニルモノマーから選択される30モル%以下のモノマーとのコポリマーからなる。このアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートが好適である。一実施形態によれば、耐衝撃性改良剤のコアは、ブチルアクリレートに基づく製品と同等の向上した引裂強度特性を与える、2−エチルへキシルアクリレートからなる。
【0025】
このコアシェルコポリマーのコアは、完全にまたは部分的に架橋されていてもよい。このコアの製造の過程では、少なくとも二官能のモノマーの添加で十分であり、これらのモノマーは、ポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、例えば、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートから選ばれうる。他の二官能モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートである。不飽和機能性モノマー、例えば、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドを、グラフト化によってまたはコモノマーとして、重合の過程で導入することによってコアを架橋することも可能である。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。
【0026】
シェルは、スチレン、アルキルスチレンもしくはメチルメタクリレートのホモポリマーまたは、少なくとも70モル%のこれら上記モノマーのうちの1種および、上記モノマーのその他、別のアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアセテートおよびアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマーである。シェルは、不飽和官能性モノマー、例えば、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドを、グラフト化によってまたはコモノマーとして、重合の過程で導入することによって官能化されうる。例として、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。このシェルは、部分的に架橋されていてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、シェルポリマーは、ポリスチレンまたはPMMAからなる。一方がポリスチレンからなり、外側の他方がPMMAからなる2つのシェルを有するコアシェルポリマーもある。
【0028】
好適には、コアがコアシェルポリマーの70から98重量%に相当し、シェルがコアシェルポリマーの30から2重量%に相当する。
【0029】
これらコアシェル型の耐衝撃性改良剤のすべては、このコアがエラストマー製であることから、ソフト/ハードと呼ばれることもある。他のコアシェル型の耐衝撃性改良剤、例えば、ハード/ソフト/ハードのもの、即ち、ハードのコア、ソフトのシェルおよびハードのシェルをこの順に有するものもある。ハードの部分は、前のソフト/ハードのもののシェルのポリマーからなっていてもよく、ソフトの部分は、前のソフト/ハードのもののコアのポリマーからなっていてもよい。例えば、この順に、
・メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるコア、
・ブチルアクリレートとスチレンのコポリマーからなるシェルおよび
・メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるシェル
からなる耐衝撃性改良剤を挙げることができる。
【0030】
他の種類のコアシェル型の耐衝撃性改良剤、例えば、ハード(コア)/ソフト/ミディアムハードのものもある。前のものと比べると、違いは外側の「ミディアムハード」シェルに由来し、これは、一方が中間で他方が外側である2つのシェルからなる。この中間のシェルは、メチルメタクリレート、スチレンならびにアルキルアクリレート、ブタジエンおよびイソプレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーのコポリマーである。外側のシェルは、PMMAホモポリマーまたはコポリマーである。例えば、この順に、
・メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるコア、
・ブチルアクリレートとスチレンのコポリマーからなるシェル、
・メチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびスチレンのコポリマーからなるシェルならびに
・メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるシェル
からなる耐衝撃性改良剤を挙げることができる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、耐衝撃性改良剤は、ブチレンアクリレートもしくはブチレンアクリレート−co−ブタジエンまたは2−エチルへキシルアクリレートからなるコアを含む。シェルは、ポリ(メチルメタクリレート)またはメチルメタクリレートと別のアクリル系モノマーのコポリマーからなる。これは、特に、アルケマのDurastrength(R)レンジの製品に関連する。他のアクリル系耐衝撃性改良剤、例えば、DowのParaloid(商標)EXLレンジまたはカネカのKane Ace(R)レンジ、カネカのアクリル系Kane Ace(R)レンジを用いてもよい。
【0032】
別の実施形態によれば、耐衝撃性改良剤は、アクリレート−ポリシロキサンコポリマーからなるコアおよび硬質樹脂からなるシェルを含む。この場合、コアは、アルキル基が2から10の炭素原子を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート等のモノマーから得られたゴム型のポリマーの存在下、1種以上のビニルモノマーの重合によって製造された軟質ゴム型の材料である。多官能モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートを、架橋剤として、重合の過程で加えることができる。このようにして得られたゴム型のポリマーを、ポリシロキサンを含むゴムと混合する。このようにして製造されたエラストマーは、ゴム型のポリマーを少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%含む。この型の耐衝撃性改良剤の例は、複合ゴムを、少なくとも1種のビニルモノマーでグラフト共重合して製造されたゴム系グラフトコポリマーであり、ここで、この複合ゴムは、ポリシロキサン系ゴムを5から95重量%と、ポリ(アクリル(メタ)アクリレート)ゴムを5から95重量%含む。これら耐衝撃性改良剤の粒子のサイズは、0.01から1ミクロンの間で変化する。優先的には、この型の耐衝撃性改良剤は、ポリ(メチルメタクリレート)のシェルに囲まれた、ポリシロキサンとブチルアクリレートのコポリマーのコアからなる。この型の製品は、Metablen(R)S−2001の参照下、三菱レイヨンから販売されている。
【0033】
別の実施形態によれば、耐衝撃性改良剤は、ポリ(オルガノシロキサン)のコアおよび熱可塑樹脂のシェルからなる。このポリ(オルガノシロキサン)のコアの有機基は、好ましくは、炭素原子数1から18、好適には、炭素原子数1から6のアルキルもしくはビニル基、またはアリール基もしくは置換された炭化水素である。このポリ(オルガノシロキサン)は、これらの基を1つ以上含む。これらシロキサンは、ポリ(オルガノシロキサン)の架橋度を決める様々な官能化度を有する。優先的には、平均官能化度は、部分架橋コアを形成する2から3である。このシェルは、アルキルアクリレートもしくはメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、ビニルスチレン、ビニルプロピオネート、マレイミド、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン等のモノマーに由来するポリマーまたはコポリマーから形成される。優先的には、このシェルは、スチレンまたは、アルキルが1から4の炭素原子を有するアルキルアクリレートもしくはメタクリレートからなる。コアの割合は、これら粒子の0.05から90重量%に相当し、優先的には60から80重量%である。これら粒子のサイズは10から400nmである。この耐衝撃性改良剤は、2つの連続するシェルに囲まれたコアの形でもよい。このコアと外側シェルの説明は、上述した単一のシェルを有するシリコーン系耐衝撃性改良剤のものと同じである。この中間のシェルは、コアのポリ(オルガノシロキサン)とは異なるものの、同じ組成の系統から選択されるポリ(オルガノシロキサン)からなる。優先的には、この型の耐衝撃性改良剤は、ポリジメチルシロキサンのコアおよびポリ(メチルメタクリレート)のシェルからなる。例として、ワッカーシリコーン製Genioperl(R)レンジを挙げることができる。
【0034】
一実施形態によれば、本発明の単層フィルムは、赤外線放射を反射する添加剤を含む。この添加剤は、酸化チタンまたは混合化合物、例えば、中心部がマイカからなり、酸化チタンの層で覆われた真珠層でよい。金属合金もまた、赤外線反射体として使用されうる。これらは、2種以上の以下の元素を含む:鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、マンガン、アンチモン、亜鉛、チタンおよびマグネシウム。優先的には、この合金は、コバルトとアルミニウムの2種の元素からなるかまたは、コバルト、クロムおよびアルミニウムの3種からなる合金である。
【0035】
別の実施形態によれば、本発明の単層フィルムは、
−マット化剤、
−不透明化剤、
−アクリル系ホモポリマーまたはコポリマー、
−ジブチルセバケート、ジオクチルフタレート、N−(n−ブチル)スルホンアミドおよび高分子ポリエステル、例えば、アジピン酸、アゼライン酸またはセバシン酸とジオールの組合せから得られるポリエステルから好ましくは選ばれる可塑剤
から選択される少なくとも1つの添加剤も含む。これら化合物の組合せもまた使用されうる。
【0036】
本発明のフィルムは、高い低温引裂強度とPVDFと同等の耐火性を結びつける特定の特徴を有する。
【0037】
一実施形態によれば、本発明のフィルムは、VDF/HFPコポリマーマトリクス(実施例の化合物A1)、ポリジメチルシロキサンのコア(70%)を囲むポリ(メチルメタクリレート)のシェル(30%)を有する耐衝撃性改良剤および難燃剤としてのカルシウムタングステート2重量%を含む。
【0038】
別の実施形態によれば、本発明のフィルムは、PVDFホモポリマーマトリクス、ポリジメチルシロキサンのコア(70%)を囲むポリ(メチルメタクリレート)のシェル(30%)を有する耐衝撃性改良剤および難燃剤としてのカルシウムタングステート2重量%を含む。
【0039】
別の実施形態によれば、本発明のフィルムは、VDF/HFPコポリマーマトリクス(実施例の化合物A1)、部分架橋ポリ(ブチルアクリレート)のコア(90重量%)およびメチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるシェル(10%)を含む耐衝撃性改良剤ならびに難燃剤としてのカルシウムタングステート3%を含む。
【0040】
別の実施形態によれば、本発明のフィルムは、VDF/HFPコポリマーマトリクス(実施例の化合物A1)、部分架橋ポリ(ブチルアクリレート)のコア(90重量%)およびメチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるシェル(10%)を含む耐衝撃性改良剤ならびに難燃剤としてのポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)2重量%を含む。
【0041】
第二の態様によれば、本発明は、記載された単層フィルムを少なくとも1層および他のPVDF層を少なくとも1層含む多層フィルムに関する。「PVDF層」とは、PVDFホモポリマーまたは、フッ化ビニリデン(VDF、CH
2=CF
2)を、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)ならびにパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)から選択されるフッ素化コモノマーと共重合させて製造されたコポリマーからなる層であると理解される。
【0042】
多層フィルムの場合、全体の厚さは、30から200ミクロンである。一実施形態によれば、多層フィルムは、コアシェル型の耐衝撃性改良剤で改質され、難燃剤を含む中心PVDF層および2つの外側のPVDF層からなる。後者の2層は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0043】
この構造の最終的な厚さの%としての厚さ配分は、次の通りである:改質PVDF層:20%〜95%、未改質PVDF層5%〜80%、即ち、例えば、総厚さ30ミクロンで70/30の配分:改質PVDF層:21ミクロンおよび未改質PVDF層:9ミクロン。
【0044】
別の態様によれば、本発明は、上述したフィルムの製造方法に関する。PVDF/耐衝撃性改良剤/難燃剤混合物は、BUSSまたは2軸技術等の、当業者に周知の溶融配合技術によって得られる。これらフィルムは、その後フィルム吹き込みまたはキャストフィルム技術によって得られ、これらの技術は、効果的に、極幅広のフィルムを得ることを可能にする。これらフィルムは、200から280℃の温度で押し出されうる。吹き込み比は、1.2から4である必要があり、1.5から3が好ましい。この部分の延伸倍率は、2から15である必要があり、5から10が好ましい。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、建物、とりわけ農業用の建物、例えば畜産用の建物の屋根および/またはファサード用のフィルム製造用材料としての、単層フィルムまたは前記単層フィルムを少なくとも1層含む多層フィルムの使用に関する。これらフィルムは、従って、良好な耐変形性および耐火性と組み合わせた改良された耐久性を有する利点を示す。
【0046】
以下、実施例により本発明を説明するが、これら実施例は本発明を限定しない。
【実施例】
【0047】
配合物
配合製品は、共回転二軸押出機で、当技術分野の標準に従って製造する。これらフィルムは、その後、ギャップが1mmのフラットダイを用い、220℃でキャストフィルム押出しによって製造し、小カレンダーで延伸して製品の厚さを所望の対象(100μm)に合わせる。
【0048】
検討材料
マトリクス:
A1:メルトフローレート(MFR)7g/10分(5kg、230℃)、融点(T
m)142℃およびISO178規格に従って測定した23℃でのヤング率650MPaのVDF/HFPコポリマー。T
mは、速度10℃/分の昇温過程で、DSC(示差走査熱量測定)により測定した。メルトフローレートは、ISO1133規格に従って測定する。
【0049】
A2:メルトフローレート0.14g/10分(5kg、230℃)および融点168℃のPVDFホモポリマー。
【0050】
耐衝撃性改良剤:
B1:アルケマ製の直径250nmのコアシェル粒子型アクリル系耐衝撃性改良剤Durastrength(R)D380。90%の部分架橋ポリ(ブチルアクリレート)がこれら粒子のコアを形成する。シェル(10%)は、メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなる。
【0051】
B2:メチルメタクリレートとエチルアクリレートのコポリマーからなるシェル(30%)に囲まれた部分架橋ポリ(ブチルアクリレート)コア(70%)からなるアルケマ製アクリル系耐衝撃性改良剤Durastrength(R)D200。
【0052】
B3:ワッカー製コアシェル粒子Genioperl(R)P52。このポリ(メチルメタクリレート)のシェル(30%)はポリジメチルシロキサンのコア(70%)を囲んでいる。
【0053】
可塑剤:
C:ジブチルセバケート
【0054】
難燃剤:
D1:ICL製ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)FR−1025
【0055】
D2:Chem−Met製粉末状カルシウムタングステート。
【0056】
行った試験は以下の通りである:
−耐火性特性:UL94規格に従って、フィルムを垂直に支持し、調整した火炎をあてる。火炎は、フィルムの下端から10mmの位置に配置し、5秒間保持する。火炎の持続時間、燃焼した表面積および着火滴下物の存在を記録する。各試料について5本の試験片を調べる。
−低温引裂強度特性:厚さ100μmのフィルムを、これに1Nの応力を与えてこれを広げるように枠で支持する。980gの円錐状ストライカーを230mmの高さから落とし、試料を突き刺す。フィルムの破壊プロファイル(フィルムでの長い亀裂の伝播または局部的な伸長)によって、変形の脆性または延性特性が評価されうる。この試験は、異なる温度で行い、製品の延性−脆性転移温度を評価する。
【0057】
[実施例1]:難燃剤を含まない参考処方の耐低温貫通性
下記表1の実施例1から7で示した通り、フィルムの耐貫通性に最も影響を与えるパラメータは、処方に組み込まれた耐衝撃性改良剤である。耐衝撃性改良剤の重量分率および特質は、低温衝撃後の変形の延性または脆性特性に直接の影響を与える。
【0058】
実施例5と8および7と9の比較は、マトリクスをPVDFホモポリマーの代わりにVDF/HFPコポリマーにすることが、フィルムの貫通挙動に限られた影響しか与えないことを示している。
【0059】
混合物における可塑剤の存在は、低温のフィルムの延性挙動をわずかに改良するが、実施例10と11および12と13の間で特性の向上がないことから明らかなように、この影響は限られている。後者2つの実施例における耐衝撃性改良剤の特性の変化もまた、延性−脆性転移に有意な変化をもたらす。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例2]:耐火性および機械的特性の保持
【0062】
【表2】
【0063】
得られた結果を表2に示す。これらの結果は、フィルム処方への難燃剤2%または3%(即ち、耐衝撃性改良剤の量の2/15または1/5の割合)の添加で、フィルムの耐火性を純粋なマトリクスのものと同程度まで回復することが可能であることを示している。
【0064】
フィルムの本来の耐火性は、実施例1から5で説明されるように、この試料に分散された耐衝撃性改良剤粒子の存在によって劣化される。実施例14から17で示されるように、特定の難燃剤をこのフィルム処方に添加することで、フィルムの高い耐火性と低温における低い延性−脆性転移温度を同時に得ることができる。
【国際調査報告】