(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、対象の抗ビンキュリンおよび抗CdtB抗体のレベルに基づいて、過敏性腸症候(IBS)を診断、選択および治療する方法、アッセイ、およびシステムを記載している。IBSは、本明細書に記載の方法、アッセイ、およびシステムを用いることで、炎症性腸疾患(IBD)と区別可能である。
抗ビンキュリン抗体が、ビンキュリンまたは配列番号7の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
抗ビンキュリン抗体が、ビンキュリンまたは配列番号7の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
CdtBアミノ酸配列がカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)細胞致死性膨張性毒素B(配列番号5)である、請求項10に記載の方法。
抗CDT抗体が、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列に特異的に結合する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
CdtBアミノ酸配列がカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)細胞致死性膨張性毒素B(配列番号1)である、請求項10に記載の方法。
抗CDT抗体が、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列に特異的に結合する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
抗CDT抗体が、CdtBの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合に、IBSの存在を決定するための機械をさらに含む、請求項18〜19のいずれか一項に記載のシステム。
患者がIBSを有するかどうかを表示するための、および/または抗ビンキュリン抗体が抗CDT抗体のレベルよりも高いかどうかを表示するための出力要素または表示要素をさらに含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細
本明細書で引用される全ての参考文献は、全文記載されたものとしてその全体が参照によって援用される。特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が共通に理解するものと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3
rd ed., Revised, J. Wiley & Sons (New York, NY 2006);およびSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4
th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)により、当業者は、本出願で使用される用語の多くに対する一般的な指針が与えられる。抗体を作製する方法に関する参考文献については、D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual 2
nd ed. (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 2013); Kohler and Milstein, (1976) Eur. J. Immunol. 6: 511; Queen et al. 米国特許第5,585,089号;およびRiechmann et al., Nature 332: 323 (1988);米国特許第4,946,778号; Bird, Science 242:423−42 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883 (1988); Ward et al., Nature 334:544−54 (1989); Tomlinson I. and Holliger P. (2000) Methods Enzymol, 326, 461−479; Holliger P. (2005) Nat. Biotechnol. Sep;23(9):1126−36)を参照されたい。
【0028】
当業者は、本発明の実施において使用することのできる、本明細書に記載の方法および材料と類似した、または等価である、多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は、記載された方法および材料に限定されることはない。
【0029】
「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」は、本明細書で使用される場合、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体変異体、例えば一本鎖(組換え)Fv、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および免疫学的に活性な抗体断片を含む。
【0030】
「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、抗原に結合する抗体の作用を指し、ランダムなタンパク質間で生じ得る低レベルの非特異的な結合は除外されることが意図される。抗体は関連エピトープを含むいかなるタンパク質とも交差反応し得ることから、「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、抗体が本明細書に記載されるタンパク質またはポリペプチド以外のいかなるタンパク質にも結合しないということは意図しておらず、意味もしない。
【0031】
「重篤な過敏性腸症候」は、本明細書で使用される場合、三次医療センター(tertiary care center)、IBS専門医、または運動性の専門医(motility specialist)に紹介される、または紹介されるであろう対象における過敏性腸症候(IBS)を指す。
【0032】
本発明者らは、CdtBが、単純に直接的な毒性を介してではなく、抗CdtB抗体と宿主タンパク質のビンキュリンとの交差反応を介して作用するらしいと決定付けた。ビンキュリンは、インテグリン間またはカドヘリン間の連結をそれぞれ介する接着点および接着接合(aherens junction)の両方、並びにアクチン細胞骨格の主要成分である、117kDaの細胞質アクチン結合タンパク質である。
【0033】
動物モデルにおけるこれらの病態生理学的知見に基づくと、CdtBへの曝露が、分子相同性に基づいて、ビンキュリンに対する自己免疫をもたらしたと考えられる。ヒトにおけるIBSの試験としてこれらの事象を検出する有効性の評価が、本明細書に記載される。
【0034】
本明細書における研究は、抗ビンキュリン抗体が抗CdtB抗体よりも多量である場合、それによって、IBSが高度に示唆され、IBSがIBDから区別されることを示した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、抗ビンキュリン抗体が抗CdtB抗体よりも多量である場合、それによって、患者が経験するIBSの重症度も示されると考えられる。本明細書に記載される研究におけるIBS患者は三次医療センターにおいて見られ、前記状態の重症度を強く示す。患者は通常、自身の状態が重篤でない限り、三次医療センターに紹介されず、三次医療センターでの治療を求めない。患者らは通常、自己医療を行うか、または自身の一次医療医による治療を行う。さらに、これらの患者はいくつかのIBS治療に対して抵抗性となっている可能性が高く、これは通常、三次医療センターへの紹介の理由となる。
【0035】
診断
本発明の種々の実施形態は、IBSを診断する、およびIBSとIBDを区別する方法、アッセイ、およびシステムを提供する。
【0036】
方法
本発明の種々の実施形態は、IBSを診断する方法を提供し、前記方法は、IBSに関する診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定すること、を含む。
【0037】
本発明の種々の実施形態は、IBSとIBDを区別する方法を提供し、前記方法は、IBSとIBDを区別するための診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し;抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定すること、を含む。
【0038】
種々の実施形態では、前記アッセイは、本明細書で論じられるビンキュリンまたはその断片および本明細書に記載のCdtBまたはその断片を、IBSに関する判定を望む対象から得られた生物試料に添加すること、ここで抗ビンキュリン抗体および/または抗CdtB抗体(生物試料中に存在する場合)は、生物試料中で、ビンキュリンもしくはその断片および/またはCdtBもしくはその断片に特異的に結合する;生物試料中の抗ビンキュリン抗体および抗CdtB抗体のレベルを測定すること;並びに抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CdtB抗体のレベルよりも高い場合に対象がIBSを有すると特定すること、を含む。種々の実施形態では、前記アッセイは、抗ビンキュリン抗体のレベルを検出するためのアッセイおよび抗CdtB抗体のレベルを検出するためのアッセイの、2つの別々のアッセイであり得る。種々の実施形態では、前記アッセイは、抗ビンキュリン抗体および抗CdtB抗体の両方を検出する単一のアッセイであり得る。
【0039】
種々の実施形態では、対象は、抗ビンキュリン抗体のレベルが、抗CDT抗体のレベルよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、もしくは1000%またはそれより高い場合に、IBSを有すると判定される。
【0040】
種々の実施形態では、抗CDT抗体よりも多量である抗ビンキュリン抗体のレベルの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連する割合は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連する割合は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより、算出され得る。
【0041】
ある実施形態では、光学濃度(OD)を用いて抗ビンキュリン抗体および抗CDT抗体のレベルが測定される。従って、抗ビンキュリン抗体のOD(OD
V)と抗CDT抗体のOD(OD
CDT)の差異が0より大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、または0.6よりも大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。ある実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.2よりも大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより、算出され得る。
【0042】
種々の実施形態では、96ウェルプレートが、BBS(およそのpHは8.2)中約1.2μg/mlの約100μl/ウェルの抗原(ビンキュリンまたはCdtB)で、加湿ボックス中、約4℃で一晩または16時間より長く被膜される。血清は抗原被膜ウェルから減算されることから、非特異的なバックグラウンドを決定するために、追加のウェルが、BBSのみを含む、各試料で被膜される。ウェルはおよそ250μl/ウェルの0.05%PBS−Tで約3回洗浄される。ウェルは、約200μl/ウェルのPBS中約3%BSAを用いて、加湿ボックス内で室温で約1時間ブロッキングされる。血清がPBS中約3%BSAを用いて1:16希釈物に希釈される。約100μl/ウェルの血清が添加され;約1時間、室温で、加湿ボックス内でインキュベートされる。ウェルはおよそ250μl/ウェルの0.05%PBS−Tで約3回洗浄される。PBS中約3%BSAで希釈した約100μl/ウェルの約1:10,000のHRP結合二次抗体が添加される。前記ウェルは、1時間、室温で、加湿ボックス内でインキュベートされる。ウェルはおよそ250μl/ウェルの約0.05%PBS−Tで約6回洗浄される。100μl/ウェルのTMB基質溶液(1−Step Ultra TMB−ELISA Substrate、ピアス社、34028)が添加される。プレートは即座に、約370nmの吸光度プロトコルを用いてプレートリーダー(例えば、BioTek Synergy HT)上で読まれ;約90分間発色される(アッセイは約60分でプラトーに達する)。
【0043】
種々の実施形態では、IBSはC−IBS、D−IBS、A−IBS(M−IBSとしても知られている)であり得る。種々の実施形態では、IBSは重症IBSであり得る。種々の実施形態では、IBSは重症C−IBS、重症D−IBS、または重症A−IBSであり得る。
【0044】
種々の実施形態では、抗CDT抗体は抗CdtB抗体であり得る。
【0045】
種々の実施形態では、前記アッセイは、抗ビンキュリンおよび抗CdtB抗体を検出するために、本明細書で論じられるビンキュリンまたはその断片および本明細書で論じられるCdtBまたはその断片を抗原として含む。
【0046】
システム
本発明の種々の実施形態は、IBSを診断するためのシステムを提供し、前記システムは、IBSに関する診断を望む対象から得られた単離生物試料;および抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを検出してIBSを診断するための一つまたは複数のアッセイを含む。
【0047】
本発明の種々の実施形態は、IBSとIBDを区別するためのシステムを提供し、前記システムは、IBSとIBDを区別するための診断を望む対象から得られた単離生物試料;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを検出してIBSとIBDを区別するための一つまたは複数のアッセイを含む。
【0048】
種々の実施形態では、これらのシステムは、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定するための機械をさらに含む。
【0049】
種々の実施形態では、前記システムは、患者がIBSを有するかどうかを表示するための、および/または抗ビンキュリン抗体が抗CDT抗体のレベルよりも高いかどうかを表示するための、出力要素または表示要素を含む。
【0050】
種々の実施形態では、前記システムは、抗ビンキュリン抗体のレベルが、抗CDT抗体のレベルよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、もしくは1000%またはそれより高い場合に、対象がIBSを有すると判定する。種々の実施形態では、抗CDT抗体よりも多量である抗ビンキュリン抗体のレベルの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連する割合は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連する割合は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより算出され得る。
【0051】
ある実施形態では、光学濃度(OD)を用いて抗ビンキュリン抗体および抗CDT抗体のレベルが測定される。従って、抗ビンキュリン抗体のOD(OD
V)と抗CDT抗体のOD(OD
CDT)の差異が0より大きい場合、システムは対象がIBSを有すると判定する。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、または0.6よりも大きい場合、システムは対象がIBSを有すると判定する。ある実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.2よりも大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより、算出され得る。
【0052】
種々の実施形態では、IBSはC−IBS、D−IBS、A−IBS(M−IBSとしても知られている)であり得る。種々の実施形態では、IBSは重症IBSであり得る。種々の実施形態では、IBSは重症C−IBS、重症D−IBS、または重症A−IBSであり得る。
【0053】
種々の実施形態では、抗CDT抗体は抗CdtB抗体であり得る。
【0054】
種々の実施形態では、前記アッセイは、抗ビンキュリンおよび抗CdtB抗体を検出するために、本明細書で論じられるビンキュリンまたはその断片および本明細書で論じられるCdtBまたはその断片を抗原として含む。
【0055】
非人的装置/コンピューター実行システムおよび方法
本発明の種々の実施形態は、本明細書に記載される通りに本発明の方法を実行するための説明書を含む、非一過性のコンピューター可読媒体を提供する。
【0056】
ある実施形態では、本発明の方法は、例えば、抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルとを比較するための、コンピュータプログラムを実行する。例えば、非一過性のコンピュータプログラムを用いることで、本明細書に記載のアルゴリズムが実行され得る。
【0057】
バイオインフォマティクス分野および/またはコンピューター分野における当業者が有する知識に基づいて、多様な種類のコンピューターシステムを用いることで、本発明の分析法が実行される。
【0058】
いくつかのソフトウェアコンポーネントが、このようなコンピューターシステムの作動中にメモリー内にロードされ得る。これらのソフトウェアコンポーネントは、当該技術分野において標準であるソフトウェアコンポーネントおよび本発明特有のコンポーネントの両方を含み得る。本発明の方法は、記号的な式入力および高スペックな処理(使用される予定の特定のアルゴリズムを含む)を可能にする数値計算用ソフトウェアパッケージにおいてプログラミングまたはモデリングすることもでき、それによって、ユーザーが個々の式およびアルゴリズムを手続き通りにプログラミングする必要を取り除くことができる。このようなパッケージとしては、例えば、マスワークス社(Mathworks)(マサチューセッツ州ナティック)製のMatlab、ウルフラム・リサーチ社(Wolfram Research)(イリノイ州シャンペーン)製のMathematica、またはマスソフト社(MathSoft)(ワシントン州シアトル)製のS−Plusが挙げられる。ある実施形態では、前記コンピューターは、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを保存するためのデータベースを含む。このような保存されたプロファイルは、妥当な場合に、試料中の抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを既知の対照レベルと比較するために、アクセスおよび使用することができる。
【0059】
本明細書に記載される例示的なプログラム構造およびコンピューターシステムに加えて、他の代替的なプログラム構造およびコンピューターシステムが、当業者には容易に明らかである。このような代替システムは、主旨または範囲のいずれかにおいて上記のコンピューターシステムおよびプログラム構造から逸脱しておらず、従って、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【0060】
検査技師もしくは研究所内専門家(laboratory professional)または検査技師もしくは研究所内専門家のグループが抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを決定した後、同じまたは異なる検査技師または研究所内専門家(またはグループ)は、一つまたは複数のアッセイを分析することで、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高いかどうか、またはOD
V−OD
CDTが0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、もしくは0.6よりも大きいかどうかを決定し、対象がIBSまたは重症IBSを有することを判定することができる。
【0061】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを含む試料から得られたデータを含有するデータ保存モジュール;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを検出するための検出モジュール;データ保存モジュール上に保存されたデータを参照データおよび/もしくは対照データと比較する比較モジュール、または抗ビンキュリン抗体のレベルを抗CDT抗体のレベルと比較し比較内容を提供するための比較モジュール、並びにユーザーのために比較内容を表示し、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも大きい場合、またはOD
V−OD
CDTが0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、もしくは0.6よりも大きい場合に、対象がIBSを有するという表示が表示される出力モジュールを含む、非一過性のコンピューター可読記憶媒体が、本明細書において提供される。
【0062】
種々の実施形態では、対照データは、IBSを有さない患者から得られたデータを含む。種々の実施形態では、対照データは、IBDを有さない患者から得られたデータを含む。種々の実施形態では、対照データは、IBSを有する患者から得られたデータを含む。種々の実施形態では、対照データは、IBDを有する患者から得られたデータを含む。
【0063】
本発明の実施形態は、非一過性のコンピューター可読媒体上に記録されたコンピューターにより実行可能な指示によって定義され、遂行された場合にコンピューターに方法の段階を実行させる、機能モジュールを介して記述され得る。前記モジュールは、明確さのために、機能毎に分離される。しかし、モジュール/システムが、慎重な(discreet)コードブロックに対応している必要はなく、記述された機能が、種々の媒体上に保存された種々のコード部分の遂行によって実行可能であり、且つ様々な時間に遂行可能であることは、理解されるべきである。さらに、モジュールが他の機能を実行し得ること、すなわち、モジュールが任意の特定の機能または一連の機能を有すると限定されないことは、理解されるべきである。
【0064】
非一過性のコンピューター可読記憶媒体は、コンピューターがアクセス可能な、利用可能なあらゆる有形媒体であり得る。コンピューター可読記憶媒体には、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータ等の情報を保存するためにあらゆる方法または科学技術に実装された、揮発性および不揮発性の、取り外し可能および取り外し不可能な有形媒体が含まれる。コンピューター可読記憶媒体としては、限定はされないが、RAM(等速読み出し記憶装置)、ROM(読み取り専用記憶装置)、EPROM(消去プログラム可能読み取り専用記憶装置)、EEPROM(電気的消去可能読み取り専用記憶装置)、フラッシュメモリーまたは他のメモリー技術、CD−ROM(コンパクトディスク読み取り専用記憶装置)、DVD(デジタル多用途ディスク)または他の光学的記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶媒体、他のタイプの揮発性および不揮発性のメモリー、並びに所望の情報を保存するのに使用可能であり、コンピューターがアクセス可能なあらゆる他の有形媒体が挙げられ、上記のいかなる適切な組合せも含まれる。
【0065】
一つまたは複数の非一過性コンピューター可読媒体に包含されたコンピューター可読データは、例えば、コンピューターによる実行の結果として、本明細書に記載の機能、および/または種々の実施形態、変形形態およびその組合せのうちの一つまたは複数の実行をコンピューターに指示する一つまたは複数のプログラムの一部として、指示を定義し得る。このような指示は、複数のプログラミング言語、例えば、Java、J#、Visual Basic、C、C#、C++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basic、COBOLアセンブリ言語等のいずれか、またはこれらの種々の組合せのいずれかで書き込まれ得る。このような指示が包含されたコンピューター可読媒体は、システムのいずれかのコンポーネントのうちの一つまたは複数上に存在し得るか、あるいは、本明細書に記載のコンピューター可読記憶媒体は、一つまたは複数のこのようなコンポーネントの全体に配分され得る。
【0066】
コンピューター可読媒体は、それに保存された指示をあらゆるコンピューター資源上にロードして、本明細書で論じられる本発明の態様を実行することができるように、移動可能であり得る。さらに、上記のコンピューター可読媒体に保存された指示が、ホストコンピューター上で実行中のアプリケーションプログラムの一部として包含された指示に限定されないことは、理解されるべきである。むしろ、これらの指示は、本発明の態様を実行するようにコンピューターをプログラムするために使用することのできる、あらゆるタイプのコンピューターコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)として、包含され得る。コンピューターが実行可能な指示は、適切なコンピューター言語またはいくつかの言語の組合せで書き込まれ得る。基礎的な計算生物学の方法は、当業者に公知であり、例えば、Setubal and Meidanis et al., Introduction to Computational Biology Methods (PWS Publishing Company, Boston, 1997); Salzberg, Searles, Kasif, (Ed.), Computational Methods in Molecular Biology, (Elsevier, Amsterdam, 1998); Rashidi and Buehler, Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine (CRC Press, London, 2000)およびOuelette and Bzevanis Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins (Wiley & Sons, Inc., 2nd ed., 2001)に記載されている。
【0067】
本発明の特定の実施形態の機能モジュールには、例えば、測定モジュール、保存モジュール、比較モジュール、および出力モジュールが含まれる。機能モジュールは、1つもしくは複数のコンピューター上で、または1つもしくは複数のコンピューターネットワークを用いることで、実行することができる。測定モジュールは、例えば、コンピューターで読み取り可能な形態で発現情報を提供するための、コンピューターが実行可能な指示を有する。
【0068】
測定モジュールは、抗ビンキュリン抗体または抗CDT抗体のレベルを検出するためのあらゆるシステムを含み得る。
【0069】
前記決定システムで決定された情報は、保存モジュールによって読まれ得る。本明細書で使用される場合、「保存モジュール」は、データまたは情報の保存用に構成または適合された、あらゆる適切な演算もしくは処理装置または他のデバイスを含むことが意図される。本発明との使用に適した電子装置の例としては、独立型演算装置、データ通信ネットワーク、例えば、構内ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、およびエクストラネット、並びにローカルおよび分散型コンピューター処理システムが挙げられる。また、保存モジュールとしては、限定はされないが、磁気記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、フラッシュドライブ、磁気テープ、光学記憶媒体、例えば、CD−ROM、DVD、電子記憶媒体、例えば、RAM、ROM、EPROM、EEPROM等、一般的なハードディスクおよびこれらのカテゴリーの複合型、例えば、磁気/光学記憶媒体が挙げられる。保存モジュールは、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルの情報がそれに記録されるように、適合または構成される。このような情報は、電子的に、例えば、インターネットを介して、フラッシュドライブ上で、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)を介して、またはあらゆる他の適切な通信様式を介して、通信され読まれ得るデジタル形式で提供され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「保存された(stored)」とは、保存モジュール上に情報をコード化するためのプロセスを指す。当業者は容易に、公知の媒体に情報を記録するための現在知られている方法のいずれかを採用して、抗ビンキュリン抗体レベルおよび抗CDT抗体レベルの情報を含む製品を作製することができる。
【0071】
一実施形態では、比較モジュールによって読まれることになる、保存モジュール内に保存された参照データは、例えば、IBSを有さない患者から得られたデータ、IBDを有さない患者から得られたデータ、IBSを有する患者から得られたデータ、および/またはIBDを有する患者から得られたデータである。
【0072】
「比較モジュール」は、測定モジュールで決定された結合データを参照試料および/または保存された参照データと比較する働きをする、種々の利用可能な比較用ソフトウェアプログラムおよびフォーマットを利用し得る。一実施形態では、比較モジュールは、一つまたは複数の入力から得られた情報を一つまたは複数の参照データパターンと比較するための、パターン認識技術を利用するように構成される。比較モジュールは、パターンを比較するための既存の市販または無料公開のソフトウェアを用いて構成され得、行われる特定のデータ比較用に最適化され得る。比較モジュールは、例えば、抗ビンキュリン抗体レベルおよび/または抗CDT抗体レベルに関するコンピューター可読の情報を提供する。
【0073】
比較モジュール、または本発明のあらゆる他のモジュールは、リレーショナルデータベース管理システム、ワールドワイドウェブアプリケーション、およびワールドワイドウェブサーバーを実行する、オペレーティングシステム(例えば、UNIX)を含み得る。ワールドワイドウェブアプリケーションは、データベース言語文(例えば、構造化照会言語(SQL)文)の作成に必要な実行コードを含む。一般的に、これらの実行コードは、内臓されたSQL文を含む。さらに、ワールドワイドウェブアプリケーションは、ユーザーリクエストに情報提供するためにアクセスされなければならないサーバーおよび種々の外部および内部データベースを構成する、種々のソフトウェア実体への指針およびアドレスを含有する環境設定ファイルを含み得る。環境設定ファイルはまた、サーバーリソースに対する要求を適切なハードウェアに向ける(必要に応じて、前記サーバーは2つ以上の別々のコンピューターに分散されるべきである)。一実施形態では、ワールドワイドウェブサーバーは、TCP/IPプロトコルを支援する。このようなローカル・ネットワークは、「イントラネット」と称される場合がある。このようなイントラネットの利点は、イントラネットが、ワールドワイドウェブ(例えば、GenBankまたはSwiss Proのワールドワイドウェブサイト)上に存在する公有データベースとの容易な通信を可能にすることである。従って、本発明の特定の実施形態では、ユーザーは、ウェブブラウザおよびウェブサーバーによって提供されるHTMLインターフェースを用いて、インターネットデータベース上に存在するデータに直接アクセスすることができる(例えば、ハイパーテキストリンクを介して)。
【0074】
比較モジュールは、前定義された基準またはユーザーによって定義された基準によってコンピューターで読み取り可能な形態で処理されて、出力モジュールを用いてユーザーによる要求に応じて保存および出力され得る比較結果に部分的に基づく内容を提供し得る、コンピューター可読の比較結果を提供する。
【0075】
比較結果に基づく内容は、抗CDT抗体レベルと比較された抗ビンキュリン抗体レベルであり得る。
【0076】
本発明の種々の実施形態では、比較結果に基づく内容は、コンピューターモニター上に表示される。本発明の種々の実施形態では、比較結果に基づく内容は、印刷可能な媒体を通じて表示される。表示モジュールは、コンピューター可読の情報をコンピューターから受け取ってユーザーに表示するように構成された、あらゆる適切なデバイスであり得る。非限定例としては、例えば、Intel PENTIUM型プロセッサをベースとしたもの等の汎用コンピューター、Motorola PowerPC、Sun UltraSPARC、ヒューレットパッカード社製(Hewlett−Packard)PA−RISCプロセッサ、カリフォルニア州サニーベールのアドバンスト・マイクロ・デバイシーズ社(Advanced Micro Devices)(AMD)から入手可能な種々のプロセッサのうちのいずれか、またはあらゆる他種プロセッサ、フラットパネルディスプレイ、陰極線管等の視覚表示デバイス、並びに様々な型のコンピュータープリンターが挙げられる。
【0077】
一実施形態では、比較結果に基づく内容を表示するためのユーザーインターフェースを提供するために、ワールドワイドウェブブラウザが使用される。本発明の他のモジュールがウェブブラウザインターフェースを有するように構成され得ることは理解されるべきである。ウェブブラウザを通じて、ユーザーは、比較モジュールからデータを回収するための要求を構築することができる。従って、ユーザーは通常、グラフィカルユーザーインターフェースで従来的に使用されるボタン、プルダウンメニュー、スクロールバー等のユーザーインターフェース要素をポイント&クリックする。
【0078】
生物試料
生物試料の例としては、限定はされないが、体液、全血、血漿、便、腸液または腸吸引液、および胃液または吸引液、血清、脳脊髄液(CSF)、尿、汗、唾液、涙、肺分泌液、乳房吸引液(breast aspirate)、前立腺液、精液、子宮頸管内擦過標本(cervical scraping)、羊水、眼内液、粘液、および呼気中水分が挙げられる。本方法またはシステムの特定の実施形態では、生物試料は、全血、血漿、血清、便、腸液もしくは腸吸引液または胃液もしくは胃吸引液であり得る。ある実施形態では、生物試料は全血である。ある実施形態では、生物試料は血清である。ある実施形態では、生物試料は血漿である。
【0079】
抗ビンキュリン抗体
種々の実施形態では、これらの方法、アッセイ、またはシステムにおいて検出される抗ビンキュリン抗体は、ビンキュリンに特異的に結合する抗体である。
【0080】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、ビンキュリンの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する抗体である。
【0081】
別の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、ビンキュリンの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0082】
別の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、ビンキュリンの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基を含むかまたはそれらから成るポリペプチドに、特異的に結合する。
【0083】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、配列番号7に特異的に結合する抗体である。
【0084】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、配列番号7の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する抗体である。
【0085】
別の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、配列番号7の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0086】
別の実施形態では、抗ビンキュリン抗体は、配列番号7の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基を含むかまたはそれらから成るポリペプチドに、特異的に結合する。
【0087】
ビンキュリンまたは配列番号7の連続残基には、ビンキュリンまたは配列番号7のあらゆるアミノ酸から開始し、あらゆるアミノ酸において終止する連続残基が包含される。
【0088】
ビンキュリンのタンパク質配列(配列番号7):
【0089】
抗CDT抗体
種々の実施形態では、抗CDT抗体はCDTに特異的に結合する抗体である。CDTのアミノ酸配列は当該技術分野において公知である。
【0090】
一実施形態では、抗CDT抗体は、CDTの受容体結合ドメイン上のエピトープに特異的に結合する。
【0091】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、CDTのCdtAサブユニットに特異的に結合する。別の実施形態では、抗CDT抗体は、CDTのCdtBサブユニットに特異的に結合する。別の実施形態では、抗CDT抗体は、CDTのCdtCサブユニットに特異的に結合する。
【0092】
CdtBアミノ酸配列の一例は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)細胞致死性膨張性毒素Bであり、これはアミノ酸配列(配列番号5)を有する。
【0093】
配列番号5(カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のCdtB):
【0094】
CdtBアミノ酸配列の別の例は、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)細胞致死性膨張性毒素Bであり、これはアミノ酸配列(配列番号1)および核酸配列(配列番号2)を有する。
【0095】
配列番号1(カンピロバクター・コリ(Campylobacter Coli)のCdtBのアミノ酸配列):
【0096】
配列番号2(カンピロバクター・コリ(Campylobacter Coli)のCdtBの核酸配列):
【0097】
従って、一実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号5(カンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)のCdtB)に特異的に結合する。種々の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列に特異的に結合する。
【0098】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号1(カンピロバクター・コリ(C. coli)のCdtB)に特異的に結合する。種々の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列に特異的に結合する。
【0099】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtBの17残基のペプチド(例えば、配列番号1または5の17の残基)に特異的に結合する。一実施形態では、17残基のペプチドは、以下の配列を有する:LDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号3)。
【0100】
他の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtBの17の連続残基(例えば、配列番号1または5の17の連続残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する17残基のペプチドに特異的に結合する。一実施形態では、CdtBの17の残基は、以下の配列を有する:LDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号3)。
【0101】
他の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtBの17の連続残基(例えば、配列番号1または5の17の残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する17の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。一実施形態では、CdtBの17の連続残基は、以下の配列を有する:LDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号3)。
【0102】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、以下の配列を有する18残基のペプチドに特異的に結合する:CLDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号4)。結合を目的にして、N末端のシステインが配列番号3に付加される。
【0103】
他の実施形態では、抗CDT抗体は、CLDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号4)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する18の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0104】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtBの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基(例えば、配列番号1または5の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する。別の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtBの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基(例えば、配列番号1または5の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。配列番号1の連続残基には、配列番号1のあらゆるアミノ酸から開始し、あらゆるアミノ酸で終始する連続残基が包含される。配列番号5の連続残基には、配列番号5のあらゆるアミノ酸から開始し、あらゆるアミノ酸で終始する連続残基が包含される。
【0105】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、LDYAITGNSNRQQTYTP(配列番号3)の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の連続残基(例えば、配列番号3の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の連続残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17残基のペプチドに特異的に結合する。別の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号3の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の連続残基(例えば、配列番号3の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の連続残基)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。配列番号3の連続残基には、配列番号3のあらゆるアミノ酸から開始し、あらゆるアミノ酸で終始する連続残基が包含される。
【0106】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、CdtB遺伝子配列によってコードされる17残基のペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態では、前記精製抗体は、配列番号2によってコードされる17残基のペプチドに特異的に結合する。種々の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号2によってコードされる14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する。種々の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号2によってコードされる14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する14、15、16、17、18、19、20、21、または22残基のペプチドに特異的に結合する。種々の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号2によってコードされる14、15、16、17、18、19、20、21、または22の連続残基と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する14、15、16、17、18、19、20、21、または22の残基を含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0107】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号3の17のアミノ酸ペプチドをコードする、以下の配列を有する核酸配列によってコードされるペプチドに特異的に結合する:
(配列番号6)。別の実施形態では、抗CDT抗体は、配列番号6によってコードされるペプチドを含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0108】
別の実施形態では、抗CDT抗体は、ほぼ完全長のCdtB ORFを過剰発現する大腸菌から精製されたCdtBに特異的に結合する(全文記載されたものとしてその全体が参照によって本明細書に援用される、Infection and Immunity, December 2000, p. 6535−6541, Vol. 68, No. 12を参照)。
【0109】
アッセイ
本明細書に記載の方法およびシステムの種々の実施形態では、アッセイは、間接ELISA、 サンドイッチELISA、 競合ELISA、マルチプル&ポータブルELISA(multiple and portable ELISA)を含むがこれらに限定はされない、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。
【0110】
本明細書に記載の方法およびシステムの種々の実施形態では、アッセイは、抗ビンキュリン抗体のレベルを検出するためのアッセイである。前記アッセイは、生物試料が抗ビンキュリン抗体を含む場合に生物試料と反応させるための第一試薬(例えば、抗原)(抗ビンキュリン抗体が存在しない場合、第一試薬は生物試料と反応しないが、第一試薬はアッセイ内に存在したままである)、抗ビンキュリン抗体と反応させるための第二試薬(例えば、二次抗体)または第一試薬と反応させるための第二試薬、および基質(例えば、第二試薬と反応させてシグナルを生成するための基質)を含み得る。種々の実施形態では、第一試薬は、本明細書で論じられる、ビンキュリン、配列番号7またはその断片である。種々の実施形態では、第二試薬は、シグナルを生成して抗ビンキュリン抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、標識は、基質と反応する酵素である。種々の実施形態では、第一試薬は、固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、基質は、発色基質(例えば、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS) である。種々の実施形態では、基質は、化学発光基質(例えば、ECL)である。
【0111】
種々の実施形態では、アッセイは、抗ビンキュリン抗体と反応させるための第一試薬を含む。種々の実施形態では、第一試薬は、シグナルを生成して抗ビンキュリン抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、第一試薬は固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、アッセイは、標識がシグナルを生成するために基質を必要とする場合に、標識と反応させるための基質をさらに含む;例えば、HRPは基質TMBと反応し得る。
【0112】
種々の実施形態では、アッセイは、抗CDT抗体のレベルを決定するためのアッセイである。前記アッセイは、生物試料が抗CDT抗体を含む場合に生物試料と反応させるための第一試薬(抗CDT抗体が存在しない場合、第一試薬は生物試料と反応しないが、第一試薬はアッセイ内に存在したままである)、抗CDT抗体と反応させるための第二試薬(例えば、二次抗体)または第一試薬と反応させるための第二試薬、および基質を含み得る。種々の実施形態では、第一試薬は、本明細書で論じられる、CDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片である。種々の実施形態では、第二試薬は、シグナルを生成して抗CDT抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、標識は、基質と反応する酵素である。種々の実施形態では、第一試薬は、固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、基質は、発色基質(例えば、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS) である。種々の実施形態では、基質は、化学発光基質(例えば、ECL)である。
【0113】
種々の実施形態では、アッセイは、抗CDT抗体と反応させるための第一試薬を含む。種々の実施形態では、第一試薬は、シグナルを生成して抗CDT抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、前記試薬は、固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、アッセイは、標識がシグナルを生成するために基質を必要とする場合に、標識と反応させるための基質をさらに含む;例えば、HRPは基質TMBと反応し得る。
【0114】
種々の実施形態では、アッセイは、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルを決定するためのアッセイである。前記アッセイは、生物試料が抗ビンキュリン抗体および/または抗CDT抗体を含む場合に生物試料と反応させるための第一試薬および第二試薬(抗ビンキュリン抗体が存在しない場合、第一試薬は生物試料と反応しないが、第一試薬はアッセイ内に存在したままであり;あるいは、抗CDT抗体が存在しない場合、第二試薬は生物試料と反応しないが、第二試薬はアッセイ内に存在したままである)、抗ビンキュリン抗体、抗CDT抗体と反応させるための第三試薬および第四試薬(例えば、二次抗体)、または第一試薬と反応させるための第三試薬および第二試薬と反応させるための第四試薬、並びに基質を含み得る。種々の実施形態では、第一試薬はビンキュリンまたはその断片である。種々の実施形態では、第二試薬はCDTまたはその断片である。種々の実施形態では、第三試薬および/または第四試薬は、シグナルを生成して抗ビンキュリン抗体および/または抗CDT抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、標識は、基質と反応する酵素である。種々の実施形態では、第一試薬は、固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、基質は、発色基質(例えば、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)である。種々の実施形態では、基質は化学発光基質(例えば、ECL)である。
【0115】
種々の実施形態では、アッセイは、抗ビンキュリン抗体と反応させるための第一試薬および抗CDT抗体と反応させるための第二試薬を含む。種々の実施形態では、第一試薬および/または第二試薬は、シグナルを生成して抗ビンキュリン抗体および/または抗CDT抗体の存在を示すための標識を含む。種々の実施形態では、標識は、放射標識、発色団、フルオロフォア、量子ドット、酵素、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ビオチン、またはこれらの組合せである。種々の実施形態では、試薬は、固相(例えば、プレート、マルチウェルプレート)上に存在する。種々の実施形態では、アッセイは、標識がシグナルを生成するために基質を必要とする場合に、標識と反応させるための基質をさらに含む;例えば、HRPは基質TMBと反応し得る。
【0116】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルまたは抗CDT抗体のレベルの検出が、対象から得られた生物試料に対して行われる。別の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルまたは抗CDT抗体のレベルの検出が、対象から得られた血液、血清、または糞便試料に対して行われる。抗ビンキュリン抗体のレベルまたは抗CDT抗体のレベルを検出するために使用することのできる方法およびシステムは、当業者によって容易に理解される。これらの方法およびシステムには、限定はされないが、ELISA、免疫組織化学、フローサイトメトリー、蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)、ラジオイムノアッセイ、およびアフィニティ精製が含まれる。
【0117】
種々の実施形態では、ビンキュリン、配列番号7またはその断片(上記)は、抗ビンキュリン抗体(存在する場合)と反応させるための試薬(例えば、コレクター、トラップ)として使用される。
【0118】
ある実施形態では、ビンキュリン、配列番号7またはその断片に特異的に結合する抗体のレベルの検出が、ビンキュリン、配列番号7またはその断片を対象から得られた生物試料に接触させて、ビンキュリン、配列番号7またはその断片に特異的に結合する抗体を単離することによって、行われ得る。
【0119】
種々の実施形態では、ビンキュリンまたは配列番号7の断片は、本明細書に記載の断片であり得る。一例として、ビンキュリン、配列番号7またはその断片を含むアフィニティーマトリックスが固相に結合され得;生物試料を前記アフィニティーマトリックスに接触させることによりアフィニティーマトリックス−抗体複合体(抗体が存在する場合)が作製され得;前記アフィニティーマトリックス−抗体複合体が生物試料の残りから分離され得;前記抗体が前記アフィニティーマトリックスから放出され得る。別の例では、標識(例えば、蛍光ラベル)をビンキュリン、配列番号7またはその断片上に配置してよく;標識化されたビンキュリン、配列番号7またはその断片を生物試料と接触させることにより、抗体(存在する場合)が標識化されたビンキュリン、配列番号7またはその断片に特異的に結合し得る。種々の実施形態では、標識化されたビンキュリン、配列番号7またはその断片は、分離され、抗体に対するその結合能について解析され得る。
【0120】
種々の実施形態では、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片が、抗CDT抗体(存在する場合)と結合させるための試薬(例えば、コレクター、トラップ)として使用される。
【0121】
ある実施形態では、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片またはその断片に特異的に結合する抗体のレベルの検出が、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片を対象から得られた生物試料に接触させて、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片に特異的に結合する抗体を単離することによって、行われ得る。
【0122】
種々の実施形態では、CDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5の断片は、本明細書に記載の断片である。一例として、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片を含むアフィニティーマトリックスを固相に結合してよく;生物試料を前記アフィニティーマトリックスに接触させることによりアフィニティーマトリックス−抗体複合体(抗体が存在する場合)が作製され得;前記アフィニティーマトリックス−抗体複合体が生物試料の残りから分離され得;前記抗体が前記アフィニティーマトリックスから放出され得る。別の例では、標識(例えば、蛍光ラベル)を、本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片またはその断片上に配置してよく;標識化された本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片を生物試料と接触させることにより、抗体(存在する場合)が、標識化された本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片に特異的に結合し得る。種々の実施形態では、標識化された本明細書で論じられるCDT、CdtA、CdtB、CdtC、配列番号1、2、4、5またはその断片は、分離され、抗体に対するその結合能について解析され得る。
【0123】
種々の実施形態では、本明細書で論じられるビンキュリンまたはその断片および本明細書で論じられるCdtBまたはその断片を、IBSに関する判定を望む対象から得られた生物試料に添加すること、ここで、抗ビンキュリン抗体および/または抗CdtB抗体(生物試料中に存在する場合)は、生物試料中で、ビンキュリンまたはその断片およびCdtBまたはその断片に特異的に結合する;生物試料中の抗ビンキュリン抗体および抗CdtB抗体のレベルを測定すること;並びに抗ビンキュリン抗体の結合のレベルが抗CdtB抗体の結合のレベルよりも高い場合に前記対象がIBSを有すると特定することが、アッセイに含まれる。
【0124】
治療法の選択
方法
本発明の種々の実施形態は、IBSに関する診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し;抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定し;IBSの存在が決定された場合にIBSに対する治療法を選択することを含む、IBSに対する治療法を選択する方法を提供する。
【0125】
本発明の種々の実施形態は、IBSとIBDを区別するための診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し;抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定し;IBSの存在が決定された場合にIBSに対する治療法を選択する、IBSに対する治療法を選択する方法を提供する。
【0126】
生物試料のアッセイは、本明細書に記載の通りに行われ得る。
【0127】
種々の実施形態では、対象は、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、もしくは1000%またはそれよりも高い場合に、IBSを有すると判定される。種々の実施形態では、抗CDT抗体よりも多量である抗ビンキュリン抗体のレベルの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連する割合は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連する割合は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより算出され得る。
【0128】
ある実施形態では、光学濃度(OD)を用いて抗ビンキュリン抗体および抗CDT抗体のレベルが測定される。すなわち、抗ビンキュリン抗体のOD(OD
V)と抗CDT抗体のOD(OD
CDT)の差異が0より大きい場合に、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、または0.6より大きい場合に、対象はIBSを有すると判定される。ある実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.2より大きい場合に、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDT値は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより算出され得る。
【0129】
本明細書で使用される治療法の選択には、限定はされないが、治療に関して、対象に、選択(select)、選択(choose)、処方、助言(advise)、推奨、指示、または忠告(counsel)を行うことが含まれる。
【0130】
種々の実施形態では、前記方法は、IBSを治療するための治療法を実施することをさらに含む。
【0131】
種々の実施形態では、選択または実施される治療法は、本明細書に記載の治療法である。種々の実施形態では、選択または実施される治療法は、本発明の時点で利用可能な治療法である。種々の実施形態では、前記利用可能な治療法は、一連の抗生物質療法を実施してIBSを治療することを含む。種々の実施形態では、前記治療法は、先行技術における利用可能なIBS治療法である。種々の実施形態では、前記利用可能な治療法は、IBSに対する実験的治療法、例えば、IBSの治療について食品医薬品局の認可を受けている治療法である。
【0132】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについての生物試料のアッセイは、本明細書に記載される通りに行われ得る。
【0133】
種々の実施形態では、対象は、一つまたは複数のIBS症状;例えば、便秘症、下痢、鼓脹、腹痛を示す対象であり得る。
【0134】
種々の実施形態では、IBSはC−IBS、D−IBS、A−IBS(M−IBSとしても知られている)であり得る。種々の実施形態では、IBSは重症IBSであり得る。種々の実施形態では、IBSは重症C−IBS、重症D−IBS、または重症A−IBSであり得る。
【0135】
種々の実施形態では、抗CDT抗体は抗CdtB抗体であり得る。
【0136】
抗生物質の例としては、限定はされないが、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン)、アンサマイシン系抗生物質(例えば、ゲルダナマイシン、ハービマイシン)、カルバセフェム系抗生物質(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム系抗生物質(例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム)、セファロスポリン系抗生物質(例えば、第一世代:セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)またはセファロチン(cefalothin)、セファレキシン;第二世代:セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム;第三世代:セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン;第四世代:セフェピム;第五世代:セフトビプロール)、糖ペプチド系抗生物質(例えば、テイコプラニン、バンコマイシン)、マクロライド系抗生物質(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン)、モノバクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム)、ペニシリン系抗生物質(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン)、抗菌性ポリペプチド(例えば、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンb)、キノロン系抗生物質(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン)、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファンピシンまたはリファンピン、リファブチン、リファペンチン、リファキシミン)、スルホンアミド系抗生物質(例えば、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリムスルファメトキサゾール(コトリモキサゾール、「tmp−smx」)、およびテトラサイクリン系抗生物質(例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン)、並びにアルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン配合物、並びにチニダゾール、またはこれらの組合せが挙げられる。種々の実施形態では、抗生物質はリファキシミンおよびネオマイシンの配合物である。種々の実施形態では、抗生物質はリファキシミンおよびドキシサイクリンの配合物である。種々の実施形態では、抗生物質はリファキシミンおよびメトロニダゾールの配合物である。
【0137】
種々の実施形態では、抗生物質は非吸収性の抗生物質である。非吸収性抗生物質の例としては、限定はされないが、リファキシミン、ネオマイシン、バシトラシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ラモプラニン、およびパロモマイシン(paramomycin)が挙げられる。
【0138】
追加のIBS治療法の例としては、食物繊維補助食品(例えば、METAMUCIL、CITRUCEL)、浸透圧性緩下剤(例えば、マグネシウム乳剤、ポリエチレングリコール)、止痢薬投与(例えば、ロペラミド(IMODIUM)、胆汁酸結合物質(例えば、コレスチラミン(PREVALITE)、コレスチポール(COLESTID)またはコレセベラム(WELCHOL)、抗コリン薬および鎮痙薬の投与(例えば、ヒヨスチアミン(LEVSIN)およびジサイクロミン(BENTYL)、抗うつ薬投与(例えば、三環系抗うつ薬(例えば、イミプラミン(TOFRANIL)またはノルトリプチリン(PAMELOR))または選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えば、フルオキセチン(PROZAC、SARAFEM)またはパロキセチン(PAXIL))、アロセトロン(LOTRONEX)およびルビプロストン(AMITIZA)が挙げられる。便秘症IBS(constipation IBS)を治療するための最近の治療法には、ルビプロストン(塩素イオンチャネル活性化薬(AMITIZA))およびリナクロチド(グアニル酸シクラーゼC作動薬(LINZESS))等の分泌促進物質が含まれる。
【0139】
生物試料および抗原の希釈
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルを決定する際、本明細書に記載のビンキュリンタンパク質またはその断片が約1.2μg/ml濃度で抗原として使用される。他の実施形態では、前記濃度は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1.、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0μg/ml濃度であり得る。
【0140】
種々の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:16希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8、1:9、1:10;1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17;1:18、1:19、1:20、1:22、1:24、1:26、1:28、1:30、1:32、1:34、1:36、1:38、1:40、1:42、1:44、1:46、または1:48希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8〜1:48希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。
【0141】
種々の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:32希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8、1:10、1:12;1:16、1:20、1:24、1:30、1:36、1:48、または1:64希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8〜1:64希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:200、1:200〜1−3:00、1:300〜1:400、1:400〜1:500、1:500〜1−600、または1−600〜1:100希釈物が、抗ビンキュリン抗体の存在またはレベルの決定に使用される。
【0142】
種々の実施形態では、抗CdtB抗体の存在またはレベルを決定する際、本明細書に記載のCdtBタンパク質またはその断片が約1.2μg/ml濃度で抗原として使用される。他の実施形態では、前記濃度は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0μg/ml濃度であり得る。
【0143】
種々の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:16希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8、1:9、1:10;1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17;1:18、1:19、1:20、1:22、1:24、1:26、1:28、1:30、1:32、1:34、1:36、1:38、1:40、1:42、1:44、1:46、または1:48希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:8〜1:48希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。
【0144】
種々の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の1:512希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:128、1:256、1:768、または1:1024希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:500、1:550;1:600、1:650、1:700、1:750、1:800、1:850、1:900、1:950、または1:1000希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:100〜1:1000希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。他の実施形態では、生物試料(例えば、血漿、血清)の約1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:200、1:200〜1−3:00、1:300〜1:400、1:400〜1:500、1:500〜1−600、または1−600〜1:100希釈物が、抗CdtB抗体の存在またはレベルの決定に使用される。
【0145】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CdtB抗体のレベルの決定における生物試料の希釈物が異なり、且つODが使用される場合、ODの差異に対する補正が行われる。
【0146】
治療
種々の実施形態により、IBSを治療するための方法が提供される。
【0147】
種々の実施形態では、前記方法は、対象から得られた生物試料中の抗CDT抗体の存在よりも多量である抗ビンキュリン抗体の存在を測定すること;および対象へのIBS治療を施すこと、を含み得る。
【0148】
種々の実施形態では、前記方法は、IBSに関する診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し;抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定し;IBSの存在が決定された場合にIBS治療法を施すこと、を含み得る。
【0149】
種々の実施形態では、前記方法は、IBSとIBDを区別するための診断を望む対象から生物試料を準備し;抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて生物試料をアッセイし;抗ビンキュリン抗体のレベルと抗CDT抗体のレベルの差異を決定し;抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも高い場合にIBSの存在を決定し;IBSの存在が決定された場合にIBS治療法を施すこと、を含む。
【0150】
生物試料のアッセイは本明細書に記載の通りに行われ得る。
【0151】
種々の実施形態では、対象は、抗ビンキュリン抗体のレベルが抗CDT抗体のレベルよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、もしくは1000%またはそれよりも高い場合に、IBSを有すると判定される。種々の実施形態では、抗CDT抗体よりも多量である抗ビンキュリン抗体のレベルの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連する割合は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連する割合は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより算出され得る。
【0152】
ある実施形態では、光学濃度(OD)を用いて抗ビンキュリン抗体および抗CDT抗体のレベルが測定される。すなわち、抗ビンキュリン抗体のOD(OD
V)と抗CDT抗体のOD(OD
CDT)の差異が0より大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、または0.6より大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。ある実施形態では、OD
V−OD
CDTが0.2より大きい場合、対象はIBSを有すると判定される。種々の実施形態では、OD
V−OD
CDTの程度によって、IBSの存在に関する陽性適中率が与えられる。陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、本明細書に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、陽性適中率に関連するOD
V−OD
CDTの値は、追加のIBS患者対対照または追加のIBS患者対IBD患者を、それらの抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについて試験することにより、算出され得る。
【0153】
種々の実施形態では、実施される治療法は、本明細書に記載の治療法である。種々の実施形態では、実施される治療法は、本発明の時点で利用可能な治療法である。種々の実施形態では、前記利用可能な治療法は、一連の抗生物質療法を実施してIBSを治療することを含む。種々の実施形態では、前記治療法は、先行技術における利用可能な治療法である。
【0154】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体のレベルおよび抗CDT抗体のレベルについての生物試料のアッセイは、本発明の方法またはシステムにより記載される通りに行われ得る。
【0155】
種々の実施形態では、対象は、一つまたは複数のIBS症状;例えば、便秘症、下痢、鼓脹、腹痛を示す対象であり得る。
【0156】
種々の実施形態では、IBSはC−IBS、D−IBS、A−IBS(M−IBSとしても知られている)であり得る。種々の実施形態では、IBSは重症IBSであり得る。種々の実施形態では、IBSは重症C−IBS、重症D−IBS、または重症A−IBSであり得る。
【0157】
種々の実施形態では、抗CDT抗体は抗CdtB抗体であり得る。
【0158】
種々の実施形態では、本方法は、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤を準備し、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤を治療を必要とする対象に投与して、抗ビンキュリン抗体を中和または阻害することを含み得る。
【0159】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤は、抗ビンキュリン抗体に結合してその機能を中和または阻害することが可能なポリペプチドである。
【0160】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤は、抗ビンキュリン抗体の抗原結合部位に結合することが可能なポリペプチドである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これらのポリペプチドは、抗ビンキュリン抗体に対するデコイとして機能し得ると考えられる。種々の実施形態では、前記ポリペプチドは、全文記載されたものとしてその全体が参照によって本明細書に援用された、Lucchese and Delfino(Developing an anti−Campylobacter jejuni vaccine. Immunopharmacology and Immunotoxicology, 2012; Early Online: 1−6)によって開示されるCDTペンタペプチドである。
【0161】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤は、抗ビンキュリン抗体に結合し、その機能を中和または阻害することが可能な小分子である。
【0162】
種々の実施形態では、抗ビンキュリン抗体中和剤または抗ビンキュリン抗体阻害剤は、抗ビンキュリン抗体の抗原結合部位に結合することが可能な小分子である。
【0163】
種々の実施形態では、前記方法は、ビンキュリンを不活性状態から活性状態に変化させるための作用剤を準備し;前記作用剤を治療を必要とする対象に投与して、IBSを治療することを含み得る。
【0164】
種々の実施形態では、ビンキュリンを不活性状態から活性状態に変化させるための作用剤は、ビンキュリンを活性化することが可能な小分子である。
【0165】
種々の実施形態では、前記方法は、ビンキュリン作動薬を準備し;ビンキュリン作動薬を治療を必要とする対象に投与して、IBSを治療することを含み得る。ある実施形態では、ビンキュリン作動薬は、全文記載されたものとしてその全体が参照によって本明細書に援用される、Nelson et al., Vinculin Activators Target Integrins from Within the Cell to Increase Melanoma Sensitivity to Chemotherapy, MOL CANCER RES JUNE 2011 9; 712(2011年4月1日にオンライン発表)によって開示されたビンキュリン活性化ペプチド(VAP)であり得る。種々の実施形態では、VAPは、赤痢菌のインベイシンタンパク質IpaAの残基500〜633であり得る。
【0166】
赤痢菌のIpaAのタンパク質配列は以下の通りである。
(配列番号8)
【0167】
種々の実施形態では、前記方法は、ビンキュリン活性化剤を準備し;ビンキュリン活性化剤を治療を必要とする対象に投与してIBSを治療することを含み得る。ある実施形態では、ビンキュリン活性化剤は、タリン、f−アクチン、a−カテニン、またはこれらの組合せであり得る。
【0168】
種々の実施形態では、本発明は、薬剤的に許容できる賦形剤および治療有効量の本明細書に記載の作用剤を含む医薬組成物を提供する。「薬剤的に許容できる賦形剤」は、一般に安全、無毒、且つ望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的用途およびヒト製薬学的用途に許容可能な賦形剤が包含される。このような賦形剤は、固体、液体、半固体であり得、または、エアロゾル組成物の場合はガス状であり得る。
【0169】
種々の実施形態では、本発明の医薬組成物は、あらゆる投与経路を介した送達用に製剤化され得る。「投与経路」は、エアロゾル、経鼻、経口、経粘膜、経皮または非経口経路を含むがこれらに限定はされない、当該技術分野において公知のあらゆる投与経路を指し得る。「経皮」投与は、局所クリームもしくは局所軟膏剤を用いて、または経皮パッチによって、達成され得る。局所的な経路を介して、本発明の化合物をベースとした医薬組成物は、皮膚および粘膜の治療用に製剤化され得、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、軟膏、散剤、含浸パッド、液剤、ゲル剤、噴霧剤、ローション剤または懸濁剤の形態である。前記医薬組成物はまた、制御放出を可能にする、ミクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質ベシクルもしくは高分子ベシクルまたは高分子パッチ(polymer patch)およびヒドロゲルの形態であり得る。これらの局所経路用組成物は、臨床的適応に応じて、無水形態または水性形態のいずれかであり得る。「非経口」とは、眼窩内、点滴、動脈内、関節内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、または経気管経路を含む、一般的には注射と関連する、投与経路を指す。非経口経路を介して、前記組成物は、点滴用もしくは注射用の液剤もしくは懸濁剤の形態で、または凍結乾燥粉末として存在し得る。経腸経路を介して、前記医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、粒剤、乳剤、制御放出を可能にするミクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質ベシクルもしくは高分子ベシクルの形態であり得る。非経口経路を介して、前記組成物は、点滴または注射用の液剤または懸濁剤の形態であり得る。
【0170】
また、本発明の医薬組成物は、あらゆる薬剤的に許容できる担体を含有し得る。「薬剤的に許容できる担体」は、本明細書で使用される場合、目的の化合物のある組織、器官、または身体の一部から別の組織、器官、または身体の一部への運搬または輸送に関与する、薬剤的に許容できる物質、組成物、またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくは封入材料、またはこれらの組合せであり得る。担体の各成分は、製剤の他の成分と適合する必要があるため、「薬剤的に許容できる」ものでなければならない。また、担体の各成分は、それが接触し得るあらゆる組織または器官と接触させての使用に適していなければならず、これは、担体の各成分が、その治療効果を過剰に上回る、毒性、過敏、アレルギー反応、免疫原性、またはいかなる他の合併症のリスクも抱えていてはならないことを意味する。
【0171】
本発明の医薬組成物は、経口投与用にカプセル封入、錠剤化またはエマルジョンもしくはシロップ中で調製することもできる。 薬剤的に許容できる固体担体または液体担体を添加することにより、組成物を増強もしくは安定化、または組成物の調製を促進してもよい。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、グリセリン、食塩水、アルコールおよび水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、石膏、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、滑石、ペクチン、アカシア、寒天またはゼラチンが挙げられる。担体には、単独の、またはろう剤を伴う、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリル等の持続放出物質も包含され得る。
【0172】
前記医薬品は、錠剤形態のための、必要であれば、粉砕、混合、造粒、および圧縮;または硬ゼラチンカプセル剤形態のための粉砕、混合および充填を含む、調剤学の従来技術に従って作製される。液体担体が使用される場合、調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョンまたは水性もしくは非水性の懸濁液の形態になる。このような液剤は、直接的に経口投与、または軟ゼラチンカプセル内に充填され得る。
【0173】
本発明の医薬組成物は、治療有効量で送達され得る。正確な治療有効量は、所与の対象における治療の有効性の点から、最も有効な結果を生む組成物の量である。この量は、種々の要因、例えば、限定はされないが、治療化合物の特徴(例えば、活性、薬物動態学、薬力学、および生物学的利用能)、対象の生理的条件(例えば、年齢、性別、疾患の種類および段階、全身的な身体状態、所与の投与量に対する応答性、並びに薬物治療の種類)、製剤中の薬剤的に許容できる一つまたは複数の担体の性質、および投与経路に応じて変動する。臨床分野および薬理学分野における当業者は、通例の実験法を通じて、例えば、化合物の投与に対する対象の応答をモニタリングし、投与量を適宜調節することにより、治療有効量を決定することができる。さらなる指針については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro ed. 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA) (2000)を参照されたい。
【実施例】
【0174】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載されている発明をより良く説明するために提供されており、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特定の物質が言及されている限りにおいて、それは、説明のみを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。当業者であれば、発明がもつ可能性を行使することなく、且つ本発明の範囲から逸脱することなく、等価な手段または反応物を開発することができる。
【0175】
実施例1:抗ビンキュリンおよび抗CDTB抗体の測定
ステップ1:抗原固定化:各96ウェルプレートを、一晩(16時間超)、4℃で、加湿ボックス内で、BBS(およそのpHは8.2)中1.2μg/mlの100μl/ウェルの抗原(ビンキュリンまたはCdtB)で、被膜する。血清は抗原被膜ウェルから減算されることから、非特異的なバックグラウンドを決定するために、追加のウェルをBBSのみを含む各試料で被膜する。
【0176】
ステップ2:洗浄1回目:ウェルをおよそ250μl/ウェルの0.05%PBS−Tで3回洗浄した。
【0177】
ステップ3:ブロッキング:ウェルを、200μl/ウェルのPBS中3%BSAを用いて、加湿ボックス内で室温で1時間ブロッキングした。
【0178】
ステップ4:血清の調製および分注:血清をPBS中3%BSAを用いて1:16希釈物に希釈する。100μl/ウェルの血清を加えた。加湿ボックス内で室温で1時間インキュベートした。
【0179】
ステップ5:洗浄2回目:ウェルをおよそ250μl/ウェルの0.05%PBS−Tで3回洗浄した。
【0180】
ステップ6:第二溶液の作製および分注:添加されたような、PBS中3%BSAで希釈した100μl/ウェルの1:10,000のHRP結合二次抗体。加湿ボックス内で室温で1時間インキュベートした。
【0181】
ステップ7:洗浄3回目:ウェルをおよそ250μl/ウェルの0.05%PBS−Tで6回洗浄した。
【0182】
ステップ8:検出:100μl/ウェルのTMB基質溶液(1−Step Ultra TMB−ELISA Substrate、ピアス社、34028)を添加した。プレートを即座に、370nmの吸光度プロトコルを用いてプレートリーダー(BioTek Synergy HT)上で読み;90分間発色させた(アッセイは約60分でプラトーに達した)。
【0183】
実施例2
血液試料を以下の対象から採取し、抗ビンキュリン抗体および抗CDTB抗体のレベルについて分析した。健常対象:質問事項を記入後の26人の連続的な(consecutive)対象は、腸症状を有していないことが分かった。IBD対象:30人の対象(15人のCDと15人のUC)。免疫調節療法を用いていない、内視鏡検査によって判明した、活性のあるIBD。IBS対象:162人の対象(ベス・イスラエルからの100人およびシーダーズ・サイナイからの62人);Rome基準陽性。結果を以下の表に示す。PPV=陽性適中率
【0184】
(表1)OD
VとOD
CDTBの差異
【0185】
IBD患者の10%がIBSを有するという仮定を用いた場合のIBDを補正するために、これらの結果をさらに解析した。IBSにおける抗体陽性率を求め、IBD患者の10%に適用した(すなわち、それらを解析から除いた)。
【0186】
表2Aおよび表2B:IBD患者におけるIBSの補正。
(表2A)
(表2B)
【0187】
本発明の様々な実施形態が上記の発明を実施するための形態に記載される。これらの記述は上記の実施形態を直接的に記述しているが、一方で、本明細書に示され記載される特定の実施形態に対する変更および/または変形が当業者によって考案され得ることを理解されたい。この記述の範囲に含まれるいかなるそのような変更または変形も、同様に範囲内に含まれることが意図される。特に記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲の中の単語および句が、適用可能な技術分野における当業者にとって通常且つ慣例の意味を与えられることが、発明者に意図される。
【0188】
本出願を出願したその時点において出願人に知られていた本発明の種々の実施形態についての上記の記述は、説明および解説を目的として、提供されており、そして意図される。本明細書は、網羅的であることも、本発明を開示された厳密な形態に限定することも意図しておらず、上記の教示に照らして多くの変更形態および変形形態が可能である。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実際的な用途を説明し、当該技術分野における他の当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って利用できるようにする働きをする。従って、本発明は、本発明を実施するために開示された特定の実施形態に限定されることは意図されていない。
【0189】
本発明の特定の実施形態が示され、記載されたが、本明細書における教示に基づいて、本発明およびそのより広い態様から逸脱することなく変更および修正が可能であり得ること、並びに、従って、添付の特許請求の範囲が、それらの範囲内に全てのそのような変更および修正を、本発明の真の精神および範囲に含まれるように包含することは、当業者には明らかである。概して、本明細書で使用される用語が、「非限定的(open)」用語として通常意図されていることは、当業者に理解される(例えば、用語「含む(including)」は「を含むがこれらに限定はされない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「を含むがこれらに限定はされない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、等)。