【実施例】
【0170】
[実施例1]
[略号]
AA:アミノ酸、APC:抗原提示細胞、bp:塩基対、CTL:細胞傷害性Tリンパ球、CMV:サイトメガロウイルス、DNA:デオキシリボ核酸、EP:エレクトロポレーション、HTLV-1:ヒトT-リンパ好性ウイルスI、hTERT:ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、ID:皮内、IM:筋肉内、IV:静脈内、LTRs:末梢反復配列、NoLS:核小体局在化配列、PBMC:末梢血単核球、RIG-I:レチノイン酸誘発遺伝子-I、RNA:リボ核酸、RT:室温、RTA:相対テロメラーゼ活性、SC:皮下、TRAP:テロメア反復増幅プロトコール、TERT:テロメラーゼ逆転写酵素、Ubi:ユビキチン、VDD:バリン-アスパラギン酸-アスパラギン酸
【0171】
[材料および方法]
[プラスミドDNAベクター]
[INVAC-1]
INVAC-1は7120bpのプラスミド発現ベクターであり、127.4kDaのタンパク質に対応する、1158AA(Ubi-hTERT)のヒトユビキチン−テロメラーゼ融合構築物をコードしている(
図1Aおよび16)。INVAC-1はヒトでの使用を意図されているため、テロメラーゼ逆転写酵素の酵素活性は安全上の理由から不活性化されている。実際に、INVAC-1がコードするヒトTERT配列は、3つのアミノ酸、バリン-アスパラギン酸-アスパラギン酸(867-869AA)をコードする9bpの欠失によって触媒部位が改変されている(
図2A)。加えて、テロメラーゼの細胞内局在化に必要な核小体局在化配列(NoLS)(Yang、2002)を含む、タンパクのN末端部位の47AAは、ユビキチン(Ubi)コード配列(1-76AA)によって置換されている。
【0172】
Ubi-hTERT導入遺伝子は、細菌で高生産され、哺乳類細胞で高発現し、結果として効果的な免疫応答を得るように注意深く設計された合成遺伝子と結合している、NTC確認ベクター主鎖(Nature Technology Corporation、Lincoln、Nebraska)に挿入される。
【0173】
ターゲット遺伝子の発現は、最適化されたキメラプロモーター-イントロン(SV40-CMV-HTLV-1R合成イントロン)から開始される。SV40-CMV-HTLV-1R合成イントロンは、CMVプロモーター、エクソン1の開始部、HTLV-1Rから成り、HTLV-1Rは、5’スプライス受容部位、ウサギβ-グロブリンイントロンに基づいた合成3’受容部位、RNA輸送を改善するためのセリン-アルギニン(SR)タンパク質結合部位を含むエクソン2スプライシングエンハンサー(Lavigueur et al.、1993)、および目的遺伝子のスタートコドンの上流にあるエクソン2コザック配列を含む。ストップコドンとターミネーターの間のDNAは、潜在的なペプチド発現または意図されないマイクロRNAによる発現変化の可能性を減らすために限定されている。
【0174】
細胞の免疫応答を改善するため、ベクターは、RNAポリメラーゼIIIによって転写された、自然免疫応答のアクティベーターであるレチノイン酸誘発遺伝子-I(RIG-I)の二本鎖RNAアゴニストをコードする。
【0175】
当該ベクターに関連する病原性は知られていない。当該プラスミドは真核生物の標的細胞で複製されない。ベクターの主鎖自体はタンパク質コード配列を含まず、また他のタンパク質をコードする翻訳領域はベクター主鎖には確認されない。従って、抗生物質耐性遺伝子はない。プラスミド選抜は、抗生物質フリーのスクロース選択マーカーという手法によって実施する(RNA-OUT)。
【0176】
[遺伝子合成およびクローニング]
Ubi-hTERT遺伝子は、重複する40塩基長のオリゴヌクレオチドアセンブリープロセス(GeneCust、Luxembourg)によって新規合成した。制限酵素部位を削除し、GCリッチ配列を弱めるために、いくつかの保守的な塩基改変を行った。インサートは、HindIII-XbaIクローニングサイトを用いて発現ベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen、Carlsbad、USA)にクローニングし、配列決定により確認した。
【0177】
[Ubi-hTERTのクローニングベクターNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaIへのサブクローニング]
ユビキチン-テロメラーゼインサートを、NTCによって作成されたNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaI発現ベクターに導入した。しかし、最適なベクターNTC8685-eRNA41H(NTC-DV8685-41HLV参照)はUbi-hTERTインサートと適合する制限酵素サイトを持っていなかった。従って、当該ベクターをSalIおよびBglIIで切断し、Ubi-hTERTをサブクローニングするのに適切な制限酵素サイト、すなわちHindIII-XbaIを含む合成二本鎖オリゴヌクレオチドを連結させた:
SalI 「HindIII」 SmaI 「XbaI」 BglII
GTCGACAAGCTTCCCGGGTCTAGAAGATCT(配列番号23)
【0178】
上述のポリリンカーを含む新しいベクター(NTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaI)は、制限酵素による切断、およびポリリンカー部位の上流と下流の配列にそれぞれアニーリングするpVAC5’(GCTTTTCTGCCAGGTGCTGA配列番号24)プライマーとpVAC3’(GCCAGAAGTCAGATGCTCAA配列番号25)プライマーとを用いた配列決定によって確認した。
【0179】
オーダーメイドのNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaIベクターを、HindIIIおよびXbaIで切断し、3631bpのベクターを12bpリンカーからゲル精製で分けた。pcDNA3.1-Ubi-hTERT構築物をHindIIIおよびXbaIで切断し、3489bpのUbi-hTERTインサートを、連結によってNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaIアクセプターへ導入し、NTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaI-Ubi-hTERT(INVAC-1)を作成した(
図1A)。ライゲーションによる生産物は、抗生物質フリー選抜の宿主NTC4862(DH5α att
λ::P
5/6 6/6-RNA-IN-SacB、catR)(NTC-DVU-CC1参照)に形質転換した。結果として得られたベクターは、制限酵素による切断:BglII/NotI=3496、3262、220、142bpバンド;NcoI=4084、3036bpバンド;HindIII/XbaI=3631、3489bpバンドによって確認した(
図1B)。またUbi-hTERTの終端はpVAC5’およびpVAC3’プライマーを用いたDNA配列決定によって確認した。ヌクレオチドの変化は確認されなかった。
【0180】
[プラスミド製造]
INVAC-1は、研究グレードの品質条件下で、NTCによって最初に作られた。プラスミドDNAは、NTC4862大腸菌(E.coli)細胞に、エレクトロポレーションを用いて形質転換した。細胞は、製造業者によって推奨された通り(NTC Instruction Manual、June2011)、6%スクロース培地に蒔き、培養した。抽出後、プラスミドDNAはエンドトキシンフリーの1×PBSに終濃度2mg/mlで再懸濁した。
【0181】
INVAC-1はその後、GLPおよびGMPスケールアップのため、またGMP製造のために、Eurogentec(ベルギー)によって製造された。INVAC-1プラスミド全長の配列決定は、この時点で実施した。
【0182】
[INVAC-1誘導体]
全てのINVAC-1誘導体構築物は、約8.9kbの二本鎖DNAプラスミドで、酵素機能が不活性化したヒトユビキチン−テロメラーゼ融合タンパク質をコードしている(
図2A)。Ubi-hTERT導入遺伝子は、哺乳類の細胞で高レベルに安定かつ一過的な発現をするように作成された、pcDNA3.0由来のInvitrogen pcDNA3.1(+)ベクター(5.4kb)に導入した。当該ベクターは、ヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV-IE)プロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化(BHG-polyA)を、終止配列として含む。
【0183】
[pUTD10Not(Δ10Notと略す)]
hTERTコード配列は、pcDNA3.1プラスミド主鎖のヌクレオチド923-4492bpに位置する。pUTD10Notは、分子量約130.8kDaに相当する1189AAヒトユビキチン−テロメラーゼ融合タンパク質(Δ10Not)をコードしている(
図2A)。hTERTは、最初の23アミノ酸(1-23AA)を、ユビキチンポリペプチド(76AA)によって置換することで欠失させた。触媒部位のドメインでは、野生型hTERT(アクセッション番号NM_198253)のAA860-869(DGLLLRL「VDD」_配列番号21)に対応するアミノ酸912-913(*マーク;
図17)の間にさらなる欠失を導入した。この10アミノ酸の欠失は、hTERTの酵素活性の不活性化をもたらす3AAの欠失(ΔVDD)、およびVDD配列の7AA上流のさらなる欠失を含む。Ubi-hTERTのC末端配列にある14アミノ酸はV5エピトープタグをコードしている(
図2A)。
【0184】
[pUTD10Cog(Δ10Cogと略す)]
hTERTコード配列は、pcDNA3.1プラスミド主鎖のヌクレオチド923-4492bpに位置する。pUTD10Cogは、分子量約130.8kDaに相当する1189AAヒトユビキチン−テロメラーゼ融合タンパク質(Δ10Cog)をコードしている(
図2A)。hTERTは、最初の23アミノ酸(1-23AA)を、ユビキチンポリペプチド(76AA)によって置換することで欠失させた。触媒部位のドメインでは、野生型hTERT(アクセッション番号NM_198253)のAA867-876(「VDD」FLLVTPH_配列番号22)に対応するアミノ酸919-920(*マーク;
図18)の間にさらなる欠失を導入した。この10アミノ酸の欠失は、hTERTの酵素活性の不活性化をもたらす3AAの欠失(ΔVDD)、およびVDD配列の7AA下流のさらなる欠失を含む。Ubi-hTERTのC末端配列にある14アミノ酸はV5エピトープタグをコードしている(
図2A)。
【0185】
[pUTD23Tyn(Δ23と略す)]
hTERTコード配列は、pcDNA3.1プラスミド主鎖のヌクレオチド923-4453bpに位置する。pUTD23Tynは、分子量約129.4kDaに相当する1189AAヒトユビキチン−テロメラーゼ融合タンパク質(Δ23)をコードしている(
図2A)。hTERTは、最初の23アミノ酸(1-23AA)を、ユビキチンポリペプチド(76AA)によって置換することで欠失させた。触媒部位のドメインでは、野生型hTERT(アクセッション番号NM_198253)のAA857-879(IRRDGLLLRL「VDD」FLLVTPHLTH_配列番号26)に対応するアミノ酸909-910(*マーク;
図19)の間にさらなる欠失を導入した。この23アミノ酸の欠失は、hTERTの酵素活性の不活性化をもたらす3AAの欠失(ΔVDD)、およびVDD配列の10AA上流および10AA下流のさらなる欠失を含む。Ubi-hTERTのC末端配列にある14アミノ酸はV5エピトープタグをコードしている(
図2A)。
【0186】
[遺伝子合成およびクローニング]
遺伝子は、重複する40塩基長のオリゴヌクレオチドアセンブリープロセス(GeneCust、Luxembourg)によって、ユビキチン−テロメラーゼ融合構築物として新規合成した。遺伝子合成は、特有の隣接する制限酵素サイトHindIII/XbaIを含み、望ましい発現システムへの遺伝子のサブクローニングを可能にした。合成遺伝子は、pcDNA3.1(+)発現ベクター(Invitrogen、Carlsbad、USA)の制限酵素部位HindIIIとXbaIの間にクローニングした。プラスミドの配列は、PEGFP-N5’CGGTGGGAGGTCTATATAAG(配列番号27)およびBGH CAGGGTCAAGGAAGGCAC(配列番号28)プライマーを用いた配列決定によって確認した。
【0187】
[プラスミド製造]
全てのINVAC-1誘導体は、RD Biotech(Besancon、France)によって、大腸菌(E.coli)5-アルファ細胞(fhuA2Δ(argF-lacZ)U169 phoA glnV44 Φ80Δ(lacZ)M15 gyrA96 recA1 relA1 endA1 thi-1 hsdR17)(Lucigen Corporation、Middleton、USA、60602-2参照)に形質転換され、製造された。無菌の1×PBSに再懸濁した、濃縮されたエンドトキシンフリーギガプレッププラスミドストック(2mg/mL)を調製した。ベクターは、制限酵素マッピングによって確認した(HindIII-XbaI;
図2B)。
【0188】
[pTRIP-CMV-hTERT]
pTRIP-CMV-hTERTは、1232AA(約124.5kDaに相当する)の触媒活性を持つ野生型ヒトtTERT(hTERT)タンパク質をコードする。当該プラスミドは、インビトロアッセイのポジティブコントロールとして使用した。構築物は特許出願WO2007/014740に最初に記載された。pTRIP-CMV-hTERTは、初めに、pBABE-hygro-hTERTプラスミド(Dr.Robert Weinbergのご厚意で譲渡された)由来のEcoRI-SalIhTERTインサートをpSP73ベクター(Promega Life Science、Wisconsin、USA)にサブクローニングして、pSPhTERT構築物を作成することで構築した。その後、BglII-SalIフラグメントをBamHIおよびXhoIで切断したレトロウイルス由来のpTRIP-CMVベクターに挿入し、pTRIP-CMV-hTERTを作成した。hTERTの発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって開始される。
【0189】
pTRIP-CMV-hTERTプラスミドは、RD Biotech(Besancon、France)によって、大腸菌(E.coli)5-アルファ細胞(fhuA2Δ(argF-lacZ)U169 phoA glnV44 Φ80 Δ(lacZ)M15 gyrA96 recA1 relA1 endA1 thi-1 hsdR17)(Lucigen Corporation、Middleton、USA、60602-2参照)に形質転換され、製造された。
【0190】
2mg/mlの、無菌の1×PBSに再懸濁した、濃縮されたエンドトキシンフリーギガプレッププラスミドストックを調製した。製造したベクターは、制限酵素による切断によって確認した(EcoRI+BamHI=10286+2720+886bpバンド)。
【0191】
[pNTC-hTERT]
pNTC-hTERTは、触媒活性を持つ1132AA野生型ヒトTERT(hTERT)タンパク質をコードする(配列番号2)。当該プラスミドは、hTERT特異的なインビボでのT細胞応答の幅を、INVAC-1構築物と比較して調査するために使用した。
【0192】
野生型hTERTインサートは、重複するオリゴヌクレオチドアセンブリープロセス(GenScript、USA)によって、HindIII-XbaIクローニングサイトを新規合成した。合成構築物(3417bp)はHindIIIおよびXbaIサイトによってpUC57(2710bp)にクローニングされ、その後M13/pUC(−20)およびM13/pUC(−26)プライマーを用いた配列決定と制限酵素マッピング(HindIII/XbaI)とによって、確認した。従って、hTERTインサートは、NTCによって、上述したクローニングベクターNTC8685-eRNA41H-HindIII-Xba(INVAC-1構築物参照)にサブクローニングした。結果として得られたベクターpNTC-hTERTは、制限酵素による切断(XmaI=4375、2041、506、120bpバンド;BamHI/XmnI=6887、155bpバンド;HindIII/XbaI=3631、3411bpバンド)、およびpVAC5’、pVAC3’およびhTERTseq(5’GGCAAGTCCTACGTCCAGTG3’、配列番号44)プライマーを用いたDNA配列決定によって確認した。
【0193】
pNTC-hTERTプラスミドは、INVAC-1プラスミドで前述した研究グレードの品質条件下で、NTCによって製造された。
【0194】
[pNTC-hTERT-ΔVDD]
pNTC-hTERT-ΔVDDは、バリン-アスパラギン酸-アスパラギン酸をコードする9bpを欠失(ΔVDD;867-869AA)することによって触媒部位を改変した1129AAヒトTERT(hTERT)配列をコードする。当該プラスミドは、hTERT特異的なインビボでのT細胞応答の幅を、INVAC-1構築物と比較して調査するために使用した。
【0195】
hTERT-ΔVDD DNA配列は、3アミノ酸の欠失(ΔVDD)を除いて、野生型hTERTと同一である。hTERTの152bpのBamHI/XmnIフラグメントを含み、ΔVDD欠失およびEcoRV制限酵素サイトの付加を伴う167bpのDNAインサートは、GenScriptによって新規合成された。合成フラグメントは、EcoRVクローニングサイトを用いてpUC57ベクター(2710bp)にクローニングした。合成遺伝子は、M13/pUC(−20)およびM13/pUC(−26)プライマーを用いた配列決定および制限酵素による切断(BamHI/NdeI)によって確認した。当該ベクターは、その後BamHI/XmnIサイトを用いて切断され、ΔVDD-BamHI/XmnIフラグメントは、事前にBamHI/XmnIで切断したpNTC-hTERTベクターのhTERT領域(6887、155bpバンド)に、クローニングした。結果として得られたベクターpNTC-hTERT-ΔVDDは、制限酵素による切断(XmaI=4375、2032、506、120bpバンド;BamHI/XmnI=6887、146bpバンド;HindIII/XbaI=3631、3402bpバンド)と、pVAC5’、pVAC3’およびhTERTseq(5’GGCAAGTCCTACGTCCAGTG3’配列番号44)プライマーを使ったDNA配列決定によって、確認した。
【0196】
pNTC-hTERT-ΔVDDは、INVAC-1およびpNTC-hTERT構築物を作成した前述の方法で、NTCによって製造した。
【0197】
[ウエスタンブロットおよびTRAPアッセイのための、細胞培養および一過性形質転換]
CrFK細胞(クランデルリース(Crandell Rees)ネコ腎細胞)、HEK293T細胞(ヒト胚性腎細胞)およびHeLa細胞(ヘンリエッタラックスヒト子宮頸部腺癌細胞)は、10%熱失活ウシ胎児血清(PAA、Velizy-Villacoublay、France)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies、Saint-Aubin、France)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養した。
【0198】
QT6(ニホンウズラ線維肉腫)細胞株は、10%熱失活ウシ胎児血清(PAA)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)、1%トリ血清(PAA)、10mML-グルタミン(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)、0.5%トリプトースブロス(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)を追加したハムF10培地(Eurobio、Courtaboeuf、France)で培養した。
【0199】
細胞は、5%二酸化炭素を含む加湿した37℃の環境で、75cm
2フラスコで、単層培養した。細胞は、遺伝子導入当日までに70-80%コンフルエンスまで増殖させた。ウエスタンブロットアッセイのために、5×10
5の細胞を6穴組織培養プレートに播種し、24時間培養した。TRAPアッセイのために、7×10
5細胞を6穴組織培養プレートに播種し、24時間培養した。
【0200】
INVAC-1およびINVAC-1誘導体構築物は、製造者(Polyplus-transfection Inc.、France)の説明書に従い、jetPrimeカチオン重合遺伝子導入試薬を用いて、標的細胞に遺伝子導入した。pTRIP-CMV-hTERTプラスミドが遺伝子導入された細胞は、ポジティブコントロールとして使用し、非遺伝子導入細胞またはpNTC8685-eRNA41Hエンプティープラスミド遺伝子導入細胞は、ネガティブコントロールとして使用した。遺伝子導入培地は4時間後に除去し、2mlのDMEM培養培地で置換した。適切な時間、すなわちウエスタンブロットアッセイのためには18-96時間、TRAPアッセイのためには24時間、遺伝子導入した後、細胞を回収して、テロメラーゼの発現および活性を解析した。
【0201】
[ウエスタンブロット]
ウエスタンブロット解析のため、遺伝子導入したCrFKおよびHEK293T細胞は、プロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Diagnostic、Indianapolis、USA)を追加したRIPAバッファー(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)で、10-20分氷上にて溶解した。溶解液は14,000rpmで15分、4℃にて遠心分離することによって清澄にした。上清を回収し、ブラッドフォード比色法を用いて、タンパク質濃度を測定した。タンパク質サンプルを95℃で5分変性させ、Nu-PAGE(登録商標)Novex4-12%Bis-Trisゲル(Invitrogen、Carlsbad、USA)で分離し、iBlot(登録商標)装置(Invitrogen、Carlsbad、USA)を使ってPVDF膜(iBlot(登録商標)transfer stack、Invitrogen、Carlsbad、USA)にエレクトロブロットした。Novex(登録商標)Sharp Prestained Protein Ladder (Invitrogen、Carlsbad、USA)を、分子量決定のために使用した。PVDF膜は約60kDaで切断し、1×PBS、0.05%Tween(登録商標)20、3%ミルクでブロックした。PVDF膜の上部は、ブロッキングバッファーで1/2000に希釈した抗hTERTウサギモノクローナル抗体(Abcam、Cambridge、UK)、または1/5000に希釈した抗V5マウスモノクローナル抗体(Invitrogen、Carlsbad、USA)で探索した。PVDF膜の下部は、1/5000に希釈した抗-β-アクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma Aldrich SARL、Saint-Quentin Fallavier、France)で探索した。最後に関連タンパク質を、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合型二次抗体、すなわち1/5000に希釈した抗マウスHRP結合抗体(GE Healthcare、Velizy、France)またはブロッキングバッファーで1/1000に希釈した抗ウサギHRP結合抗体(GE Healthcare、Velizy、France)で室温にて1時間染色することにより、可視化した。免疫ブロットシグナルは、ECL HRP化学発光基質試薬キットを用いた高感度化学発光アッセイによって検出した。フィルムおよび対応するカセットは、GE Healthcare(Buckinghamshire、UK)から購入した。
【0202】
[TRAPアッセイ]
テロメラーゼ活性は、製造者の説明書に従い、TeloTAGGG Telomerase PCR ELISAPLUS kit(Roche Diagnostic GmbH Mannheim、Germany)を用いるテロメア反復増幅プロトコル(TRAP)の手法(Kim et al.1994)を用いて評価した。上述したように遺伝子導入後24時間後に、CrFK細胞を回収した。細胞は1×PBSで洗浄した後、1600rpmで5分、4℃にて遠心分離した。細胞は、0.2mlの溶解バッファーに再懸濁し、氷上で30分間培養した。溶解液は14,000rpmで20分、4-8℃にて遠心分離することによって清澄にした。上清を回収し、ブラッドフォード比色法を用いて、タンパク質濃度を測定した。上清はテロメラーゼが媒介するテロメア配列の伸長に使用し、伸長産物を、ビオチン化プライマーを使用したPCRによって増幅した。各細胞上清はTRAPアッセイを行う前に、事前に二つに分割した。一方は、85℃10分のテロメラーゼの熱失活によってネガティブコントロールを調製するために使用し、他方は、テロメラーゼが媒介するテロメア配列の伸長を評価するために使用した。さらに、反応混合液中に存在する216bpの長さの内部標準を、溶解液中に存在するであろうTaqDNA-ポリメラーゼ阻害剤による偽陰性の結果を排除するために、同時に増幅した。溶解バッファーをネガティブコントロールとして使用した。全ての反応混合液を25℃で20分加温した後、94℃で5分加温した。テロメラーゼ産物はPCRにより、94℃30秒、50℃30秒、72℃90秒、72℃10分を30サイクル、最後に72℃10分および4℃保持を1サイクル行い、増幅した。
【0203】
PCR増幅産物2.5μlを、キットで提供された変性剤と室温で10分保温した。保温後、各ウェルに100μlのハイブリダイゼーションバッファーを加えた。各溶液を混合し、100μlを、ストレプトアビジンを塗布したマイクロプレートに移し、ゆっくり攪拌(300rpm)しながら37℃で2時間加温した。その後、各ウェルを洗浄バッファーで洗浄し、抗-ジゴキシゲニン西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体(1/50に希釈)と共に室温で30分保温した。その後、HRPの基質(TMB)を室温で15分添加し、比色法に供した。反応は、ELISA停止液で停止させた。
【0204】
各サンプルのテロメラーゼ活性のレベルは、サンプルのシグナルを、ポジティブコントロールテンプレート(8つのテロメア反復を持つテロメラーゼ産物と同じ配列のテンプレートDNA)の既知の量を用いて得られたシグナルと比較することで決定した。吸光度の値は、ブランク(リファレンス波長A
690nm)に対してA
450を測定することによって報告した。相対テロメラーゼ活性(RTA)を、次式を用いて算出した:
RTA=[(A
S-A
S0)]/A
S,IS]/[(A
TS8-A
TS8,0)/A
TS8,IS]×100
ここでは、以下の通りに記載した:
A
S:サンプルの吸光度
A
S0:熱処理したサンプルの吸光度
A
S,IS:サンプルの内部標準(IS)の吸光度
A
TS8:コントロールテンプレート(TS8)の吸光度
A
TS8,0:溶解バッファーの吸光度
A
TS8,IS:コントロールテンプレート(Ts8)の内部標準(IS)の吸光度
【0205】
[免疫蛍光法]
CrFK、HEK293T、HeLaおよびQT6細胞を8穴のLab-Tek(登録商標)チャンバースライド(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)に、200μlの培養培地中で、各ウェル当たり2×10
4個細胞を播種し、37℃、5%二酸化炭素の環境で一晩加温した。翌日、培養培地を廃棄し、新しい培地を200μl添加した。0.2μgのINVAC-1、pTRIP-CMV-hTERTまたはコントロールのエンプティープラスミドpNTC8685-eRNA41Hを含む混合溶液10μlと、OptiMEM(Life Technologies、Saint-Aubin、France)のFugeneHD(Promega France、Charbonnieres-les-bains、France)0.5μlとを、対応するチャンバーに加えた。チャンバー当たり2x10
4個の未処理の細胞をネガティブコントロールとして使用した。チャンバースライドは24時間、および48時間、37℃、5%二酸化炭素の環境で加温した。形質導入した細胞は、1×PBSで丁寧に洗浄し、細胞を固定化し透過処理するために、各ウェルに200μlの2%PFAを4℃で10分添加した。その後、ウェルを1×PBS 0.05% Tween(登録商標)20で2回洗浄し、200μlのブロッキング溶液(1×PBS 0.05% Tween(登録商標)20に溶解した、0.5% Triton X100;Sigma-Aldrich、3% BSA;Sigma-Aldrich、10%ヤギ血清;Invitrogen)と室温で30分加温した。ブロッキングバッファーで1/100に希釈した抗hTERTウサギモノクローナル一次抗体(Abcam、Cambridge、UK)を、細胞に添加し、室温で1.5時間攪拌した。1×PBS 0.05% Tween(登録商標)20で3回洗浄後、ブロッキング溶液に1/500に希釈したヤギ由来抗ウサギAlexaFluor488(登録商標)二次抗体(Life Technologies、Saint-Aubin、France)を添加し、室温で45分攪拌した。ウェルは1×PBS 0.05% Tween(登録商標)20で3回洗浄し、DAPIを含むVECTASHIELD(登録商標)をマウントさせた培地に乗せた。カバーガラスは、画像処理および画像解析システム(Axiovision、Carl Zeiss MicroImaging GmbH、Jena、Germany)を備えた蛍光顕微鏡(Axio observer Z1、Carl Zeiss MicroImaging GmbH、Jena、Germany)で解析した。
【0206】
[マウス]
雌のC57BL/6マウス(6〜8週齢)は、Janvier研究室(Saint-Berthevin、France)から購入した。
【0207】
二系統の遺伝子導入マウス、HLA-B
*0702およびHLA-A2/DR1を使用した。
【0208】
HLA-B
*0702遺伝子導入マウスは、ヒトHLA-B
*0702のα1-α2ドメインと、H2D分子のマウスα3ドメインを発現する。当該マウスは、H2-D
bおよびH2-K
b分子は発現しない(Rohrlich et al.、2003)。
【0209】
HLA-A2/DR1遺伝子導入マウスは、ヒトHLA-A
*0201α1-α2ドメイン、H2D分子のマウスα3、およびヒトβ2-ミクログロブリンを発現する。さらに、当該遺伝子導入マウスは、ヒトHLA-DRB1
*0101およびHLA-DRA
*0101分子を発現する。当該マウスは、マウスH2-D
b、H2-K
bおよびIA
b遺伝子のノックアウトマウスである(Pajot et al.、2004)。
【0210】
両系統の遺伝子導入マウスは、6〜10週齢で使用し、パリのパスツール研究所より提供された。当該マウスは、パスツール研究所の特定病原体を除去した動物の施設(Animal Facilities Lwof fn°22、agreement number B7515-07)で育てられた。皮内(ID)、筋肉内(IM)または皮下(皮下)のワクチン接種または静脈内(IV)注射の前に、マウスは、1×リン酸緩衝食塩水(1×PBS、Life Technologies、Saint-Aubin、France)に溶解した2%キシラジン(Rompun、BayerSante、Loos、France)および8%ケタミン(Imalgen1000、Merial、Lyon、France)の混合溶液で、マウスの個々の体重および麻酔の持続時間に従って、腹腔内(IP)経路で麻酔を行った。マウスは全て、動物治療法に厳密に従い、また地域の動物実験法に従い、扱った(指令2010/63/UE)。
【0211】
[hTERTペプチド]
HLA-B
*0702、HLA-A
*0201またはHLA-DR拘束性のhTERTペプチドは以前に報告されている(表1の参考文献を参照)。H2-D
bおよびH2-K
b拘束性のhTERTペプチドは、4つのオンラインで利用可能なアルゴリズム、Syfpeithi(http://www.syfpeithi.de/)、Bimas(http://www-bimas.cit.nih.gov/)、NetMHCpanおよびSMM(
http://tools.immuneepitope.org/main/)を用いて、マウスMHCクラスI分子と結合させるために、インシリコのエピトープ予測によって決定した。全ての合成ペプチドはProimmune(Oxford、United Kingdom)から、凍結乾燥(90%を超える純度)の状態で購入した。凍結乾燥ペプチドは滅菌水に2mg/mLとなるよう溶解し、使用前は−20℃で保管した。ペプチド配列およびMHC拘束性の詳細は、表1に記載した。
【表1】
【0212】
[hTERTペプチドライブラリー]
凍結乾燥hTERTペプチド(70%を超える純度)は、GenScript(USA)から購入した。当該セットは、重複する11AAを含み、INVAC-1 hTERTのタンパク質全ての配列をカバーする、15AAから成る269のペプチドによって構成されている。各ペプチドは、供給元の推奨に従い使用前に2mg/mlの滅菌水に再懸濁し、使用まで−20℃で凍結させた。9-10のhTERT重複ペプチドから成る27プール(表2)を、IFNγELIspotアッセイにてhTERT特異的T細胞応答の幅を調べるために用いた。
【表2】
【0213】
[腫瘍細胞株]
INVAC-1が媒介する抗腫瘍効果を評価するために用いるSarc-2腫瘍細胞株は、自然発症の線維肉腫であるHLA-A2/DR3マウスから取得した。腫瘍マウスは、無菌状態に分離され、初代細胞の懸濁液を産生した。細胞株は、HLA-A
*0201分子の発現を示した。細胞は、10%FBS(Life Technologies)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMIグルタマックス培地(Life Technologies)で培養した。
【0214】
[マウスの免疫化およびインビボエレクトロポレーションの手順]
皮内(ID)免疫化は、剃毛後、マウス側腹部下部に、インスリンシリンジおよび特異的針(U-100、29GX1/2’’−0.33×12mm、Terumo、Belgium)を用いて行った。剃毛後、免疫化の間および免疫化後に、赤斑は観察されなかった。筋肉内免疫化(IM)もまた、インスリンシリンジおよび特異的針U-100を使用して、前脛骨筋(anterior tribialis cranialis)に行われた。皮下免疫化(SC)もまた、インスリンシリンジおよび特異的針U-100を使用して、尾底部に行った。各マウスは、経験に基づき、12.5、25、50、100、200、400、800または1200μgのDNAまたは1×PBSに相当する、プラスミド(INVAC-1、NTC、pUTD10Not、pUTD10CogまたはpUTD23Tyn)による、予備刺激のIM、IDまたはSC注射を受けた。ワクチンレジメンに従い、マウスは同様のDNAまたは1×PBSによる二次注射または三次注射を受けることができた。
【0215】
インビボDNAエレクトロポレーションは、プレート電極(P-30-8G、IGEA)を備えたCLINIPORATOR(登録商標)2エレクトロポレーションシステムおよびソフトウエア(IGEA、Italy)を用いて行った。IDまたはSCワクチン投与の直後、注射部位に皮膚の層を形成し、全体を伝導性ゲル(LaboFH、blue contact gel、NM Medical、France)で覆い、プレート電極間に設置した。異なる電位の二つのパルスを与えた(HV-LV):HV(1250V/cm、1Hz、100μs)1パルス、1000msブレイク、LV(180V/cm、1Hz、400ms)1パルス。IM注射の直後、各筋肉全体を伝導性ゲルで覆い、プレート電極間に設置した。異なる電位の二つのパルスを与えた(HV-LV):HV(750V/cm、1Hz、100μs)1パルス、1000msブレイク、LV(100V/cm、1Hz、400ms)1パルス。
【0216】
ある実験では、DNAワクチン投与の18時間前、またはINVAC-1投与と同時に、最終濃度が25μl/側腹部となるように、0.5μgのマウスGM-CSFまたは1ngのマウスIL-12を、マウスにID注射した。両サイトカインはMiltenyi(Germany)から購入した。
【0217】
[ELIspotアッセイ]
免疫化したマウスの脾臓を採取してすりつぶし、細胞懸濁液を70mmのナイロンメッシュ(Cell Strainer、BD Biosciences、France)に通して脾細胞を単離した。免疫化したマウスの血液を、麻酔下で後眼窩穿刺によって回収し、末梢血単核球(PBMC)を単離した。脾細胞またはPBMCは、フィコール(リンパ球分離培地、Eurobio、France)を用いて精製した。血液または脾臓からフィコール精製したリンパ球はCellometer(登録商標)Auto T4 Plus counter(Ozyme、France)を用いて数えた。
【0218】
ELIspot PVDFマイクロプレート(IFNγELIspotキット、Diaclone、Abcyss、France、ref.862.031.010P)を一晩、捕捉抗体(抗マウスIFN-γ)でコーティングし、1×PBSの2%ミルクでブロックした。細胞懸濁液をウェル当たり2×10
5細胞になるようにトリプリケイトでマイクロプレートに添加し、血清フリー培養培地上のHLA拘束性またはH2拘束性のhTERT由来ペプチド5μg/mlあるいはPMAイオノマイシン(各0.1μMおよび1μM)によって刺激した。19時間後、ビオチン複合型検出抗体とそれに続くストレプトアビジン-APおよびBCIP/NBT基質溶液によって、スポットを出現させた。スポットは、イムノスポットELIspotカウンターおよびソフトウエア(CTL、Germany)を用いて数えた。ELIspotデータを解析する際、スポットの出現頻度が、hTERT特異的CD8またはCD4T細胞に応じて、カットオフ値である10スポット以上であった場合に、ワクチン投与したマウスが応答マウスであると見なした。
【0219】
[インビボ細胞傷害性アッセイ]
標的細胞を調製するために、高(5μM)、中(1μM)または低(0.2μM)濃度のCFSE(Vybrant CFDA-SE cell-tracer kit;Life Technologies、Saint-Aubin、France)を含む1×PBS溶液によって、無感作のHLA-B7マウス由来の脾細胞を標識した。5μMおよび1μMのCFSEで標識した無感作の脾細胞を、5μg/mLの2つの異なるHLA-B7ペプチド、すなわち1123および351で、室温で1.5時間パルスした。低濃度のCFSEによって標識した脾細胞は、パルスしなかった。すでにINVAC-1または1×PBSによってワクチン投与された各マウスは、初回注射の14日後または追加注射の10日後に、後眼窩の血管を通して、各フラクションから、同じ数の細胞を含む10
7CFSE標識細胞の混合物を受け取った。15-18時間後、脾臓由来単一細胞懸濁液を、MACSQUANT(登録商標)フローサイトメーター(Miltenyi、Germany)を用いたフローサイトメトリーによって解析した。
【0220】
ペプチドパルス細胞の消失は、コントロール(1×PBS)マウスに対するINVAC-1免疫化マウス中の、非パルス細胞集団(低(low)CFSE蛍光強度)に対するパルス細胞集団(高/中(high/midium)CFSE蛍光強度)の割合を比較することによって決定した。試験マウス当たりの特異的死亡の割合は、次式に従って算出した:
[1−[平均値(CFSE
lowPBS/CFSE
high/mediumPBS)/(CFSE
lowpDNA/CFSE
high/mediumpDNA)]]×100。
【0221】
[サイトカイン結合アッセイ(CBA)]
ワクチン投与したHLA-A2/DR1マウス由来の脾細胞(6x10
5細胞)を、HLA-DR拘束性hTERT由来ペプチド(578、904、および1029)5mg/mlと、37℃で24時間培養した。サイトカイン培養上清を回収し、試験まで−20℃で凍結させた。市販のキットである、マウスTh1/Th2/Th17 Cytometric Beads Array(CBA、BD Biosciences)キットを使用して、IL-2、IFNγ、TNFα、IL-4、IL-6、IL-17aおよびIL-10の各濃度を定量した。CBA免疫測定法は、製造元の説明書に従って実施した。フローサイトメトリーの取得は、FACScan LSRII フローサイトメトリー(BD Biosciences)を使用して行った。解析は、FCAP Array TM Software version 3.0(BD Biosciences)を用いて行った。
【0222】
[インビボ抗腫瘍効果]
治療的ワクチン投与実験のために、24週齢のHLA-A2/DR1マウスに2.10
4個のSarc-2細胞を、右腹側部に皮下移植した。その後、移植4、21、35日後に、上述したようにマウスをDNAワクチンによってID経路で免疫化した後、エレクトロポレーションした。2〜3日ごとに、腫瘍の成長を、カリパスを使ってモニターした。マウスの体重もまた、2〜3日ごとにモニターした。マウスは、腫瘍が2000mm
3に達した時点で、安楽死させた。癌研究における動物の愛護と使用のためのガイドライン、特に、直ちに治療介入を必要とする臨床徴候のモニターのためのガイドライン(Workman et al.2010、BJC)に従った。腫瘍の体積は、次式を用いて計算した。:(L
*l
2)/2。結果はmm
3で表した(L=長さ;l=幅)。
【0223】
予防的ワクチン投与のために、5-10週齢のHLA-A2/DR1マウスに上述したように二回(0日目と21日目)ワクチン投与した。最後の免疫化から32日後に、マウスに5.10
4個のSarc-2細胞を皮下移植した。マウスの体重と腫瘍の成長は上述したように2〜3日ごとにモニターした。マウスは腫瘍が2000mm
3に達した時点で、安楽死させた。
【0224】
腫瘍の成長遅延(TGD)という判断基準を、ワクチン有効性の評価に使用した。コントロール集団と処理集団において、規定の腫瘍体積(500mm
3)に至るまでの時間を比較する。
【0225】
[統計解析とデータ処理]
Prism5ソフトウエアを、データ処理、解析およびグラフ化に使用した。データは、平均値±標準偏差または中央値として表した。ELIspotアッセイの統計解析は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定および/またはダンの多重比較検定を伴うクラスカル・ワリス検定を用いて行った。有意差は、危険率<0.05で設定した。
【0226】
[結果]
[INVAC-1プラスミドDNAの特徴および配列解析]
様々な制限酵素を用いた制限酵素マッピングによって示されるように、Ubi-hTERT導入遺伝子をpNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaIに挿入することに成功した(
図1Aおよび1B)。結果として得られたpNTC8685-eRNA41H-HindIII-XbaI-Ubi-hTERT(INVAC-1)ベクターはまた、pVAC5’およびpVAC3’プライマーを用いて、接合部位において部分的に配列決定した。当該配列により、クローニング過程が成功したことが確認された。
【0227】
INVAC-1プラスミドの全長の配列決定は、Master Cell Bankのプラスミド材料において行った(配列番号11および
図16)。結果は、1塩基を除いて予想される配列と一致した。実際、全長配列決定によって、データベースに登録されたヒトテロメラーゼ遺伝子(アクセッション番号NM_198253)と比較した際に、サイレント変異(G6064C;GGGグリシンがGGCグリシンへ)が同定された。当該サイレント変異は、INVAC-1の付加的な印と考えられた。なぜなら、この塩基変異は野生型テロメラーゼ遺伝子に存在する特有のBamHIサイトを破壊する(GGATCCがGCATCCへ)からである。
【0228】
[INVAC-1誘導体構築物の特徴および配列解析]
異なるUbi-hTERT融合タンパク質を発現する3つのINVAC-1誘導体DNAプラスミドを、合成してクローン化した(
図2A)。全てのUbi-hTERT導入遺伝子は、HindIIIおよびXbaIによる切断と電気泳動(
図2B)によって示されるように、pcDNA3.1(+)Invitrogen発現ベクターに、正常に連結された。インサートおよび連結部は、当該DNAインサートと隣接するベクター配列を照合するPEGFP-N5’およびBGHプライマーを用いて、配列決定した。配列決定の結果によって、導入遺伝子が正常にクローニングされたことを確認した(配列番号13、15、17および
図17〜19)。
【0229】
[INVAC-1およびINVAC-1誘導体タンパク質はインビトロで正常に発現され、プロテアソーム経路によって分解される]
インビトロでのHEK293TおよびCrFK細胞株への一過性の遺伝子導入の18時間から96時間後に、野生型hTERT、INVAC-1およびINVAC-1誘導体タンパク質の全体的な発現に関する情報を提供するために、ウエスタンブロットアッセイを行った。野生型hTERTタンパク質のバンドは、未修飾のhTERTのサイズである124.5kDa(
図3Aおよび3Bの左部分)に一致した。野生型hTERTタンパク質の発現は、特にHEK293T細胞において、全時間帯に渡って安定であると思われた。対照的に、INVAC-1(
図3Aおよび3Bの右部分、および
図3Cの上部分)およびINVAC-1誘導体タンパク質(
図3Cの下部分)は全時間帯に渡って速やかに分解された。
【0230】
野生型hTERT(pTRIP-CMV-hTERT)とは対照的に、INVAC-1構築物は二つの明瞭なバンドを生産した:上部の薄いバンドは、127.4kDaの予想サイズであるUbi-hTERT融合タンパク質に相当し、下部のバンドは、ユビキチンポリペプチドを欠く、INVAC-1にコードされるhTERTタンパク質(119kDa)に相当する。INVAC-1にコードされるhTERTタンパク質の二つの形態は、HEK293TおよびCrFKの両細胞株で検出された(
図3Aおよび3B)。同じパターンが、INVAC-1誘導体構築物、Δ10Not、Δ10CogおよびΔ23で観察された(
図3C)。まとめると、INVAC-1およびINVAC-1誘導体タンパク質の発現が野生型hTERTよりも弱いこと、その発現パターン、および発現タンパク質の全時間帯に渡る消滅の動態によって、当該タンパク質がユビキチン融合タンパク質の分解について提唱されたモデル(Bachmair、1986)に従い、ユビキチン依存プロテアソーム経路によって迅速に分解されたことが示唆される。119kDaのINVAC-1のバンドが迅速に出現したことは、当該タンパク質が、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼによってUbi-hTERT接続部位で翻訳と同時に、またはほぼ同時に切断されたことを示す。従って、当該タンパク質は、タンパク質分解のいわゆるN-end rule(Tasaki、2012;Varshavsky、1996)に従って、迅速なプロテアソーム依存分解経路に入った。
【0231】
本結果によって、INVAC-1およびINVAC-1誘導体にコードされたUbi-hTERTタンパク質のインビトロ発現パターンおよび同一性を確認した。hTERT誘導体タンパク質と融合したユビキチンポリペプチドは、N-end ruleに従ってタンパク質の分解を促進する役割を果たした。N-end ruleに従い、hTERTは、主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスI分子(Cadima-Couto、2009;Michalek et al、1993)による抗原提示のためのペプチド生産に関するプロテアソームシステムによって迅速に分解される、不安定なペプチドになった。従って、本データは、哺乳類の組織培養細胞において分解の促進を受けるUbi-hTERT融合構築物は、インビボでもまた迅速に分解され得ること、および野生型hTERTよりも高いCD8+T細胞応答を効率的に誘発できることを示している。
【0232】
[INVAC-1タンパク質は優勢な細胞質分布および核小体の排除パターンを示す]
INVAC-1誘導体hTERTタンパク質の分解を促進させるために当該タンパク質を非局在化させる考えで、核小体局在化シグナル(hTERTのN末端部分)を除去した。従って、INVAC-1がコードするhTERTの細胞内局在化を、CrFK、HEK293、HeLa、QT6細胞株への遺伝子導入後に、免疫蛍光解析によって評価した(
図4)。
【0233】
野生型hTERT(pTRIP-CMV-hTERT)は、遺伝子導入HEK293T細胞において24時間後に核および核小体に優勢に局在化していることが明らかとなった(
図4A)。対照的に、INVAC-1タンパク質は、何よりもまず、明瞭な核小体排除パターンを示し、核と細胞質との間に分布した(
図4A)。野生型hTERT(pTRIP-CMV-hTERT)およびINVAC-1プラスミドのHeLa細胞への一過性の遺伝子導入では、両タンパク質とも、遺伝子導入後の24時間および48時間後に、同様の局在化パターンを示した(
図4B)。
【0234】
pNTC8685-eRNA41Hエンプティー主鎖ベクターを導入したHEK293TおよびHeLa細胞において見られた、弱い抗hTERT蛍光シグナルは、おそらく内在性のhTERTとの交差反応性が原因
であろう。
【0235】
内在性hTERTタンパク質の発現に起因する非特異的蛍光バックグラウンドを取り除くために、非ヒト細胞株であるQT6ウズラ線維肉腫細胞およびCrFKネコ腎細胞を免疫染色に使用した。pNTC8685-eRNA41Hエンプティー主鎖ベクターによる一過性の遺伝子導入後の両細胞株において、バックグラウンドシグナルは観察されなかった(
図4CおよびD)。予測通り、外因性の野生型hTERTタンパク質(pTRIP-CMV-hTERT)は主に、両細胞株の核および核小体で検出された(
図4CおよびD)。すでにHEK293T細胞およびHeLa細胞で観察されたように、INVAC-1タンパク質は、CrFK細胞において24時間後に核および細胞質分布を示した(
図4D)。興味深いことに、QT6細胞における24時間後および48時間後のINVAC-1の発現は細胞質分布のみを示した。本結果は、核小体局在化シグナルの削除が、本細胞株におけるタンパク質の分布を劇的に変えたことを示唆している。
【0236】
まとめると、本結果は、INVAC-1誘導体hTERTタンパク質が、様々な細胞株において、野生型hTERTと比較して、変化した細胞内分布を示すことを表している。この変化は、特異的細胞免疫応答を生み出すMHCクラスI提示のためのタンパク質のペプチドへのプロテアソーム分解を促進する上で有利であろう(AnderssonおよびBarry、2004)。
【0237】
QT6細胞およびCrFK細胞へのINVAC-1誘導体(pUTD10Not、pUTD10CogおよびpUTD23Tyn)による遺伝子導入(非特異的hTERTバックグラウンドを伴わない)によって、hTERT誘導体タンパク質の核小体排除パターンを確認した(データ不掲載)。hTERT誘導体タンパク質の細胞内分布は、野生型hTERTと比較して、主に細胞質分布であった。
【0238】
[INVAC-1およびINVAC-1誘導体は酵素活性を持たない]
ヒトテロメラーゼは、腫瘍細胞の不死化に関与し、老化を防ぐことによって、腫瘍細胞の増殖において重要な働きを果たしている。従って、野生型テロメラーゼのワクチン製品としての利用は、安全への懸念につながり得る。
【0239】
テロメラーゼ陰性のCrFK細胞株におけるUbi-hTERT構築物のテロメラーゼ活性を評価するために、TRAPアッセイを行った。テロメラーゼ活性は、pTRIP-CMV-hTERTプラスミドを用いた野生型hTERTによって遺伝子導入したCrFK細胞でのみ検出された。INVAC-1またはINVAC-1誘導体を遺伝子導入したCrFK細胞では、テロメラーゼ活性は検出されなかった(
図5)。
【0240】
図5Aおよび5Cに示すように、吸光度の生データは、INVAC-1およびINVAC-1誘導体のテロメラーゼ活性のレベルが、未処理細胞のレベルと同程度であることを示した。
【0241】
当該アッセイの特殊性を考慮に入れ、熱失活サンプルを含む様々なネガティブコントロールを用いて、完全に解析した結果を表す、相対テロメラーゼ活性(RTA)のデータは(
図5Bおよび5D)、INVAC-1およびINVAC-1誘導体が完全にテロメラーゼ活性を欠いていることを示している。
【0242】
増幅の内部標準(IS)コントロールで処理した全てのサンプルは、CrFK可溶化サンプル中のTaqDNAポリメラーゼインヒビターの欠如を強く肯定し、従って、アッセイの特殊性を再度強調した。
【0243】
結論として、本結果によって、INVAC-1およびINVAC-1誘導体が酵素活性を全く持たないことを確認した。従って、テロメラーゼ活性に関して、ヒトにおけるINVAC-1の安全への懸念はない。
【0244】
[INVAC-1のID投与後に、hTERT特異的CD8T細胞のインターフェロンγ分泌を顕著なレベルに誘発する上で、エレクトロポレーションは有利である]
hTERT特異的T細胞応答の強度を、皮内経路でINVAC-1を事前に免疫化した後に皮膚エレクトロポレーションを行った、または行わなかったC57BL/6マウスにおいて評価した(
図6)。免疫注射の14日後に、マウスの脾臓を回収し、H2拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、誘発された免疫応答をモニターした。IFNγ
+CD8T細胞の出現頻度の顕著な違いが、INVAC-1のID注射後にエレクトロポレーションを行ったマウス群と、受けなかった群(p<0.05)の間で見られた。従って、本結果は、INVAC-1のワクチン皮内投与後のhTERT特異的CD8T細胞応答を顕著なレベルに誘発する上で、エレクトロポレーションが有利であることを示す。
【0245】
[様々な投与経路によるINVAC-1ワクチン投与後のエレクトロポレーションは、hTERT特異的CD8T細胞のインターフェロンγの分泌を誘発する。ワクチンID投与が最良の経路と考えられる]
従来のワクチンは、一般的にSCまたはIM経路で投与されている。しかしながら、皮内経路の免疫化は、近年ワクチン投与の分野で再度注目を集めている(Combadiere and Liard、2011)。従って、ID経路をINVAC-1の投与に試し、また従来のSCおよびIM経路と比較した。
【0246】
最初の実験のセットで、遺伝子導入HLA-B7マウスの複数のグループに対し、ID経路またはSC経路で免疫化した後、直ちにエレクトロポレーションを行った(
図7A)。ワクチン投与/エレクトロポレーションの14日後に、マウスの脾臓を回収し、HLA-B7拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって脾臓で誘発された免疫応答をモニターした。次の実験のセットで、遺伝子導入HLA-B7マウスの一つのグループに対し、ID経路でINVAC-1によって、およびIM経路で他のプラスミドによって免疫化し、直後にエレクトロポレーションした。hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度を、HLA-B7拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、PBMCでモニターした。エレクトロポレーションを伴うINVAC-1のワクチン投与により、いずれのワクチン投与経路を使用しても、HLA-B7マウスにおいてhTERT特異的CD8T細胞応答を誘発し得ることを、確立した(
図7Aおよび7B)。
【0247】
さらに、
図7Aに示した通り、応答するマウスの数は、SC経路でワクチン投与したグループと比較して、ID経路でワクチン投与したマウスのグループにおいて多く、それぞれSC経路が8匹中3匹、ID経路が8匹中6匹の応答マウスであった。IM経路でワクチン投与したマウスと比較して、ID経路でワクチン投与したマウスのグループで、hTERT特異的CD8T細胞応答の出現頻度においてもまた、顕著な違いが観察された(p<0.05)(
図7B)。
【0248】
両実験は、INVAC-1が媒介するhTERT特異的CD8T細胞の誘発において、ID経路でのワクチン投与が、IM経路およびSC経路よりも有効であることを証明した。同様のデータが、他のマウスモデル、すなわちHLA-A2-DR1マウス(データ不掲載)を使用しても得られた。従って、後続のINVAC-1を使用して行う免疫原性の研究は全て、エレクトロポレーションを伴うワクチンID投与によって計画した。
【0249】
[INVAC-1およびエレクトロポレーションによる単回ID免疫化後の、hTERT特異的CD8T細胞応答における、ワクチン投与量の影響]
試験した別の重要なパラメーターは、hTERT特異的CD8T細胞応答における、ワクチン投与量の影響であった。C57BL/6マウスを、INVAC-1の投与量を増やして、両側腹部下部に、エレクトロポレーションを伴って、ID経路で免疫化した。ワクチンの容量は、50μL/部位の一定のままであった。マウスは、最後に受けたワクチン投与量に応じて、2カ所または4カ所の部位でワクチン投与した。ワクチン投与/エレクトロポレーションの14日後に、マウスの脾臓を回収し、H2拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、特異的細胞免疫応答をモニターした。
【0250】
最初の実験のセットで、C57BL/6マウスは、2.5μgから100μgに渡る投与量の、INVAC-1/エレクトロポレーションによる単回ID注射を受けた(
図8A)。PBSをワクチン投与したコントロールマウスと比較して100μgのINVAC-1をワクチン投与したマウスのグループで、hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度において、顕著な違いが観察された(p<0.01)(
図8A)。hTERT特異的CD8T細胞の中央値は、接種されたワクチンの投与量(12.5μgから100μgまで)に比例して、増加することもまた、観察された。応答するマウスの数はまた、ワクチン投与量に従って増加し、それぞれ、投与量12.5μgに対して6匹中4匹の応答マウス、投与量25μgに対して5匹中4匹の応答マウス、50μgおよび100μgの投与量に対し6匹中6匹の応答マウスであった。
【0251】
次の実験のセットで、C57BL/6マウスは、100μg〜1200μgの投与量のINVAC-1/エレクトロポレーションによる単回ID注射を受けた(
図8B)。PBSでワクチン投与したコントロールマウスと比較して、800μgのINVAC-1を4mg/mLで投与したワクチン投与マウスのグループで、hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度において、顕著な違いが見られた(p<0.05)(
図8B)。hTERT特異的CD8T細胞の中央値は、100μgから800μgまでにおいて、接種されたワクチン投与量に比例すること、および、1200μgを注射すると当該中央値は減少することが分かった。応答する動物の中央値は、ワクチン投与量に応じて増加し、それぞれ、100μgの投与量に対して5匹中4匹の応答マウス、200μg以上の投与量に対して5匹中5匹または4匹中4匹の応答マウスであった。1200μgの投与量に対しては、全マウスが応答マウスであったが、カットオフ値に近い特異的応答のレベルのマウスが、5匹中2匹存在した。
【0252】
結論として、C57BL/6マウスにおけるワクチン特異的CD8T細胞の判断基準に対し、異なる量のINVAC-1の投与の結果として、容量反応が見られた。興味深いことに、コントロールマウスと比較して最大投与量(800および1200μg)でワクチンを注射したマウスにおいて、ワクチン毒性の兆候は見られなかった(体重観察および屠殺での目視による検死において)。同様のデータが、遺伝子導入HLA-B7マウスにおいて取得された(データ不掲載)。
【0253】
[hTERT特異的CD8T細胞応答のレベルを増加させるために、プライムブーストレジメンが、INVAC-1ワクチン投与において推奨される]
従来のワクチン(BCG、麻疹、インフルエンザなど)に推奨されるたいていのワクチン投与プロコトールは、ワクチン特異的免疫応答の出現頻度を改善する目的で、プライムブーストレジメンを含む。従って、hTERT特異的CD8T細胞応答の発生におけるプライムブーストレジメンの影響を、NVAC-1ワクチンID投与およびエレクトロポレーションで試験した。当該目的のために、遺伝子導入HLA-B7マウスをINVAC-1によるID投与で免疫化し、皮膚のワクチン投与部位をワクチン投与直後にエレクトロポレーションした。最初の免疫化の21日後に、マウスは、同じワクチン投与手順を用いて、二回目のINVAC-1注射を接種した。HLA-B7拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイにより、hTERT特異的CD8T細胞応答をモニターする目的で、プライムブースト免疫化の後いくつかの時点で、末梢血液を採取した(
図9)。hTERT特異的CD8T細胞応答のピークが初回投与の14日後に観察された。しかしながら、ワクチン投与したマウスのグループにおけるhTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の中央値は、相対的に低く(11.3スポット/200,000個のPBMC)、ワクチンに応答しないマウスが5匹中2匹存在した。追加免疫の後、hTERT特異的CD8T細胞のピークが注射の10日後に観察された。当該時点(初回投与の31日後、追加投与の10日後)のワクチン投与したマウスのグループにおけるhTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の中央値は、免疫前のサンプルにおけるhTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の中央値と顕著に異なった(p<0.05)。追加投与後は、5匹中4匹の応答マウスが存在した。
【0254】
結論として、プライムブーストワクチン投与レジメンは、第一に、血液中を循環するhTERT特異的CD8T細胞(エフェクターT細胞)の出現頻度の上昇を可能にするため、第二に、抗癌ワクチン投与に関する重要なパラメーターである、特異的細胞免疫応答のピークに達するまでに必要な時間を短縮するために、INVAC-1ワクチン皮内投与/エレクトロポレーションにおいて推奨される。
【0255】
[エレクトロポレーションを伴うΔ10Not、Δ10CogまたはΔ23構築物によるワクチンID投与はまた、hTERT特異的CD8T細胞応答を誘発する。プライムブーストワクチン投与レジメンが、ワクチン特異的CD8T細胞の出現頻度を上昇させるために推奨される。]
INVAC-1の開発と共に、他の3つのDNAプラスミド構築物(INVAC-1誘導体)を設計した:Δ10Not(pUTD10Not)、Δ10Cog(pUTD10Cog)またはΔ23(pUTD23Tyn)。3つの欠失は、hTERT酵素の触媒部位で行われた。これらの欠失は10-23アミノ酸残基に渡り、バリン−アスパラギン酸−アスパラギン酸(Val-Asp-Asp、または1文字表記ではVDD)の3つの決定的な残基に及んだ(
図2A)。当該構築物は、酵素活性を取り除くいずれの欠失も、免疫原性を保持し得ることを示すために、設計された。
【0256】
当該仮定を確認するために、C57BL/6マウスを、INVAC-1、Δ10Not、Δ10Cog、Δ23またはPBSによって、エレクトロポレーションを伴うID経路で免疫化した(
図10A)。マウスの半数に、同様の手順を用いて、最初の免疫化の21日後にDNAまたはPBSの二回目の注射を接種した。マウスは、最後のワクチン投与/エレクトロポレーションの14日後(単回投与されたマウスのグループにおいて)または10日後(二回注射されたマウスのグループにおいて)に屠殺した。マウスの脾臓を回収し、誘発されたT細胞応答を、H2拘束性のhTERTペプチド(4ペプチドのプール)を用いたIFN-γELIspotアッセイによってモニターした。
【0257】
単回DNA注射を受けたマウスにおいて、PBSでワクチン投与されたコントロールマウスと比較して100μgのINVAC-1でワクチン投与したマウスのグループにおいてのみ、hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の顕著な違いが観察された(p<0.05)(
図10A、黒点)。応答マウスの出現頻度を解析すると、INVAC-1およびΔ10Cogでワクチン投与したマウスのグループにおいて、4匹中3匹の応答マウスであった。しかしながら、Δ10Cogにおいて、マウスは50/200,000個以下の脾細胞でhTERT特異的CD8T細胞応答が見られた、低い応答マウスであった。Δ23でワクチン投与したマウスのグループにおいて4匹中1匹のみが応答マウスであり、Δ10Notで処理したマウスには応答マウスは存在しなかった。二回のワクチン投与を受けたマウスにおいて(
図10A、白点)、PBSで注射したコントロールマウスと比較してINVAC-1、Δ10Not、およびΔ10Cogで免疫化したマウスの脾臓において、hTERT特異的IFN-γ分泌CD8T細胞の有意な出現頻度の中央値が観察された(p<0.001)。Δ23によってワクチン投与したマウスのグループにおいて、4匹中2匹のみが応答マウスであり、統計学的に有意ではなかった。結論として、1回または2回のワクチン投与の後、INVAC-1およびINVAC-1誘導体構築物はhTERT特異的CD8T細胞の誘発を可能とし、INVAC-1はC57BL/6マウスにおいてより強い免疫原性を有していた。
【0258】
次の実験のセットで、遺伝子導入HLA-B7マウスにINVAC-1、Δ10Not、Δ10Cog、Δ23またはPBS(
図10B)によって、エレクトロポレーションを伴うIDワクチン投与をし、同様の手順を用いて初回投与の21日後に2回目の注射を接種した。最後の注射の10日後に脾臓を採取し、誘発されたCD8T細胞応答を、B7拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによってモニターした。
図10Bに示したように、PBSを注射したコントロールマウスと比較して、INVAC-1、Δ10Not、Δ10CogおよびΔ23で免疫化したマウスの脾臓において、hTERT特異的IFN-γ分泌CD8T細胞の有意な出現頻度の中央値が観察された(p<0.001)。
【0259】
INVAC-1で示したように、3つのINVAC-1誘導体Δ10Not、Δ10CogおよびΔ23もまた、二つの異なるマウス系統において、IDワクチン投与およびエレクトロポレーションの後、hTERT特異的CD8T細胞のインビボでの誘発が可能であった。プライムブーストワクチン投与レジメンはまた、有意なhTERT特異的CD8T細胞応答のレベルに達するために、INVAC-1誘導体に対しても推奨された。まとめると、本結果は、INVAC-1が、最善のhTERT特異的CD8T細胞応答の誘発を可能にする構築物であることを証明する。本結果は、おそらく、ウエスタンブロット法(
図3)によって示したように、プラスミド遺伝子導入後のΔhTERTタンパク質発現レベルにおいて観察される違いによるものであろう。
【0260】
[エレクトロポレーションを伴うワクチンID投与後のhTERT特異的T細胞応答の幅は、ワクチン投与に使用したhTERTプラスミド構築物(INVAC-1、pNTC-hTERTまたはpNTC-hTERT-ΔVDD)によって異なる]
INVAC-1構築物内で操作されたhTERT配列の修飾、すなわち、(1)核小体局在化シグナルの欠失、(2)ユビキチン配列の付与、(3)触媒部位内の欠失、の影響を、hTERTに対するT細胞免疫応答のレパートリーにおいて、評価した。INVAC-1のhTERT特異的細胞免疫応答を、INVAC-1によるID免疫化/エレクトロポレーションの後に評価し、天然/野生型のヒトTERT配列をコードするDNA(pNTC-hTERT)およびVDD領域のみ欠失したhTERT配列をコードするDNA(pNTC-hTERT-ΔVDD)によって誘発された応答と比較した。コントロールマウスは、25μgのpNTCエンプティーベクターでID注射を接種した後、エレクトロポレーションした。
【0261】
HLA-B7遺伝子導入マウスの最初のシリーズは、上述したワクチン投与プロコールを用いて(25μg/マウス)、4つの構築物のうちのいずれか一つによる単回投与を受けた。二つ目のシリーズのマウスには、上述したワクチン投与プロコールを用いて(25μg/マウス)、4つの構築物のうちのいずれか一つにより、初回注射および初回ワクチン投与の21日後に追加注射を接種した。
【0262】
単回注射の14日後または追加注射の10日後に、ワクチン投与したマウスおよびコントロールマウス由来の脾細胞を、hTERTの全タンパク質配列をカバーする11AAが重複する15AAの、269ペプチド(各10ペプチドから成る27プール)を用いて、IFNγELIspotアッセイに供した。
【0263】
初回投与後にペプチドの約12プールが認識されたことから、INVAC-Iによる免疫化は、膨大なhTERTエピトープに対するT細胞の大きなレパートリーを誘発した(
図11A)。本データは、HLA-B7拘束性の最低12個のエピトープが、プロセシングの後に、樹状細胞表面に、MHCペプチド複合体として強力なT細胞応答の誘発を可能にする密度で、発現したことを示している。重要な本結果は、INVAC-1のプロセシングおよび莫大なhTERTペプチドのAPC表面への発現の能力を示している。他の構築物(hTERTおよびhTERTΔVDD)によって得られた応答との違いは、hTERTに対するT細胞レパートリーの幅を増やすという、INVAC-1で生み出された最適化された特徴を確証するものである。さらに、本結果は、ペプチド免疫化に比べてDNAワクチン投与の優位性を強調するものである。
【0264】
遺伝子導入マウスにおけるINVAC-1による二巡目の免疫化(プライムブースト)の二巡目の有効性が、本研究で確認された。少なくとも5つの新しいエピトープが明らかになったため、インビボT細胞レパートリーが改善された(
図11B)。追加投与後、全部で、少なくとも17のエピトープが認められた。当該データによって、患者への数回の注射が、より良い抗腫瘍応答を獲得する上で有益であろうことが確認された。
【0265】
27プールのペプチドで検出された特異的T細胞の全出現頻度の中央値を合計することによって、当該データを包括的に解析したところ、1回(初回投与)または2回(プライムブースト)の免疫化の後に、3つのhTERT構築物の間で、大きな違いは見られなかった(
図11C)。本結果は、INVAC-1による追加投与後に顕著に高いT細胞媒介免疫応答が見られたが、INVAC-1 hTERTに行った改変は、免疫応答の幅に影響を与えなかったことを示唆する。
【0266】
結論として、INVAC-1ワクチン投与は、T細胞が認識するペプチド/エピトープという点で野生型hTERTおよびhTERTΔVDD構築物とは異なり、膨大なhTERTエピトープに対する、幅広いレパートリーのT細胞免疫応答を媒介した。
【0267】
[エレクトロポレーションを伴うINVAC-1によるワクチンID投与は、抗癌免疫応答の特徴を有したhTERT特異的T細胞応答:細胞傷害性CD8T細胞およびTh1CD4T細胞を誘発する]
抗腫瘍免疫応答に関連している免疫細胞の中で、細胞傷害性CD8Tリンパ球(CTL)およびTh1CD4T細胞が、最も強力なエフェクター細胞(Vesely et al.、2011)(Braumuller et al.、2013)として同定されている。
【0268】
第一のステップとして、hTERT特異的CD8T細胞の細胞傷害性活性を、INVAC-1によるワクチン皮内投与/エレクトロポレーションの後に、インビボで調べた。実際、当該活性は腫瘍細胞を死滅させるために必要である。INVAC-1免疫化によって誘発されたhTERT特異的CD8
+T細胞応答のインビボでの細胞溶解性の強さを測るために、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)で標識した、ペプチドパルスした脾細胞を標識細胞として使用して、インビボ細胞傷害性アッセイを行った。INVAC-1(またはコントロールとしてPBS)によって、上述のようにID経路で初回投与またはプライムブーストワクチン投与したHLA-B7遺伝子導入マウスに対して、7.10
6の標的細胞を静脈内注射した。標的細胞は、3つの異なる濃度のCFSEでそれぞれ標識し、HLA-B7拘束性のhTERTペプチド(免疫優性ペプチドのp351、または準優位なペプチドのp1123)でパルスした、あるいは内部標準としてパルスしないままの、抗原刺激を受けていない類遺伝子性マウスの脾細胞由来であった。15〜18時間後、脾細胞を回収し、コントロールマウスに対する免疫化マウスでのペプチドパルス細胞の消失を、フローサイトメトリーで定量した。
【0269】
結果は、全てのマウスが、免疫優性ペプチドp351に対して、単回注射後に、特異的なCTLを発生させ、特異的溶解の中央値は35だったことを示している(
図12A、白点)。三分の一のマウスが、準優位なペプチドp1123に対して、特異的なCTLを発生させた(
図12A、黒点)。複数の注射サイクルが、準優位なペプチドp1123に対して特異的なCTLを発生させるマウスの数の増加を可能にすることが、期待できる。
【0270】
hTERT特異的CD4T細胞応答が、非小細胞肺癌(NSCLC)患者におけるより良い化学療法と関連し得ることが、近年述べられている(Godet et al.、2012)。それゆえ、INVAC-1ID注射後のhTERT特異的CD4T細胞応答の存在を調べた。当該目的のために、HLA-A2/DR1遺伝子導入マウスに対し、INVAC-1によるエレクトロポレーションを伴うID免疫化を行い、hTERT特異的CD4T細胞応答を、DR1拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、ワクチン投与後14日目の脾臓においてモニターした。
図12Bに示したように、PBSを注射したコントロールマウスと比較して、IDワクチン投与したマウスの脾臓において、hTERT特異的IFN-γ分泌CD4T細胞の有意な出現頻度の中央値が見られた(p<0.001)。
【0271】
Th1免疫が、インビボでの癌細胞の消失において、明確なポジティブな効果をもたらしたことが強調されている(Braumuller et al.、2013)。実際のところ、CD4
+Th1細胞は、腫瘍に対する細胞媒介免疫を誘発する上で重要ないくつかのサイトカイン(IFN-γ、TNF-αおよびIL-2など)を産生する。従って、INVAC-1ワクチン皮内投与後に、hTERT特異的CD4T細胞によって分泌された様々なサイトカインを調べた。当該目的のために、INVAC-1をワクチン投与したHLA-A2/DR1遺伝子導入マウスを、hTERTによって24時間、インビトロで刺激するか、あるいは刺激しないままとした。上清を回収し、hTERT特異的CD4T細胞によって分泌されたTh1、Th2およびTh17サイトカインの濃度を評価するために、サイトカイン結合アッセイ(CBA)で試験した。
【0272】
図12Cに示したように、コントロールマウスの上清と比較して、INVAC-1によってワクチン投与したマウスから回収した脾細胞の上清において、有意な、Th1サイトカイン、IL-2、TNFαおよびIFNγの濃度が検出された(p<0.05)。
【0273】
従って、INVAC-1によるワクチン皮内投与/エレクトロポレーションは、Th1のプロファイルを持った特異的CD4T細胞の増殖促進と共に、インビボでの細胞傷害性活性を示すhTERT特異的CD8T細胞の増殖促進を可能にする。両応答タイプは、有利な抗癌免疫応答の特徴である。
【0274】
[エレクトロポレーションを伴うINVAC-1による治療的または予防的ワクチンID投与は、HLA-A2/DR1遺伝子導入マウスにおける同型の腫瘍接種後の腫瘍の成長を遅延させる]
ここまでの結果で、エレクトロポレーションを伴うINVAC-1のID注射が、マウスにおいて細胞傷害性CD8T細胞およびTh1CD4T細胞を誘発できたことが示された。従って、次のステップは、INVAC-1ワクチン皮内投与およびエレクトロポレーションによって与えられた遺伝子導入HLA-A2/DR1マウスの防御作用を、Sarc-2(線維肉腫)腫瘍細胞接種後に評価することであった。最初の試みとして、遺伝子導入HLA-A2/DR1マウスに、プライムブースト戦略で、INVAC-1によってエレクトロポレーションを伴うIDワクチン投与を、あるいは、PBSでニセのワクチン投与を行った。予防的なワクチン投与の一ヶ月後に、50,000個のSarc-2細胞をSC経路でマウスに負荷した。腫瘍体積は2〜3日ごとに計測した。
図13Aは、マウスの処置に従った腫瘍細胞負荷後の腫瘍体積の中央値の動態を示している。次いで、腫瘍成長遅延(TGD)は500mm
3で計算した。当該判断基準は、コントロールグループと処置グループとで、規定の腫瘍に達する時間を比較することにより、腫瘍成長におけるワクチン処置の効果を計ることを可能にする。11日の腫瘍成長遅延が、INVAC-1をワクチン投与したマウスグループと、PBSを投与したマウスグループとの間で観察された。従って、INVAC-1による予防的なワクチン投与は、腫瘍成長を遅らせる原因であった。腫瘍接種は、最後のワクチン投与の1ヶ月後に行われたため、抗腫瘍効果は、ある程度、hTERT特異的記憶T細胞の存在に起因しているかもしれない。
【0275】
次の一連の実験で、遺伝子導入マウスに20,000個のSarc-2細胞を移植し、細胞接種の4日後に、INVAC-1により、エレクトロポレーションを伴うIDワクチン投与を行った(
図13B)。コントロールマウスに、INVAC-1と同様の主鎖を有するが、いずれの腫瘍抗原もコードしていない「エンプティー」プラスミド(NTC)のID注射を接種した。腫瘍移植後
、21日目と35日目に、同様の手順で、二回の追加ワクチン投与を行った。500mm
3において腫瘍成長遅延を計算した。INVAC-1でワクチン投与したマウスグループと、NTCエンプティープラスミドを投与したマウスグループとの間で、4日の腫瘍成長遅延が観察された。結論として、INVAC-1による治療的ワクチン投与は、比較的弱いが、それにもかかわらず繰り返し観察される、腫瘍成長の遅延を可能にした。
【0276】
[INVAC-1ワクチンID投与/エレクトロポレーションと同時のマウスGM-CSF投与は、hTERT特異的細胞免疫応答の強度と質を改善し、HLA-A2/DR1遺伝子導入マウスにおける同系の腫瘍負荷後の腫瘍の成長を遅延させる]
様々なサイトカインが、これまで、動物モデルおよびヒトの両方の、抗癌ワクチン投与の研究において、抗原認識およびT細胞増殖を促進させる免疫調製物質として使用されてきた。最も頻繁に使用されるサイトカインの一つは、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)である。当該サイトカインは、抗原提示細胞の成熟を助け、Th1細胞免疫応答を支持することが知られている(Parmiani et al.、2007)。抗腫瘍ワクチンに関してGM-CSFが果たす主な役割に関して、INVAC-1ワクチンID投与およびエレクトロポレーション後のhTERT特異的T細胞応答に対するマウスGM-CSF(mGM-CSF)の追加の影響を試験した。当該目的のために、C57BL/6マウスに、エレクトロポレーションを伴うID経路でのINVAC-1ワクチン投与の18時間前に、mGM-CSFのID注射を接種した(
図14A)。別のマウスのグループは、mGM-CSFを接種することなく、INVAC-1/エレクトロポレーションでIDワクチン投与した。コントロールマウスはPBSによってニセのワクチン投与行い、エレクトロポレーションした。注射の14日後に、マウス脾臓を回収し、H2拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、誘発された免疫応答をモニターした。INVAC-1のID注射の前にmGM-CSFを接種したマウスのグループと、mGM-CSFを接種しなかったマウスのグループの間には、IFNγ
+CD8T細胞の出現頻度において、有意な違いが観察された(p<0.001)。従って、mGM-CSFの接種は、hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の大幅な増加を可能にした。第二のステップは、hTERT特異的CD4T細胞の質、および、特にTh1特異的T細胞の産生に対する免疫調整物質の影響を調査することにあった。当該目的のために、INVAC-1またはINVAC-1/mGM-CSFをワクチン投与したHLA-A2/DR1遺伝子導入マウス由来の脾細胞を、DR1拘束性のhTERTペプチドのプールで、24時間、インビトロで刺激するか、あるいは、刺激しないままとした。上清を回収し、hTERT特異的CD4T細胞が分泌したTh1、Th2およびTh17サイトカインの濃度を評価するために、サイトカイン結合アッセイ(CBA)によって試験した。
図14Bに示したように、INVAC-1のみでワクチン投与したマウス由来の上清と比較して、INVAC-1/mGM-CSFでワクチン投与したマウスから回収した脾細胞の上清では、Th1サイトカイン、IL-2、TNFαおよびIFNγの有意な濃度が見られた。mGM-CSFを接種すると、Th1抗腫瘍サイトカインであるTNFα(p<0.01)、IFNγ(p<0.05)およびIL-2(p<0.05)の濃度において、大幅な増加が見られた。
【0277】
その後、mGM-CSFが抗腫瘍効果を増強できるかどうかを評価するために、mGM-CSF/INVAC-1の組み合わせを、Sarc-2動物腫瘍モデルで研究した。
【0278】
当該目的のために、HLA-A2/DR1遺伝子導入マウスに、20,000個のSarc-2細胞を移植し、細胞移植の4日後に、エレクトロポレーションを伴うINVAC-1およびmGM-CSFのIDワクチン投与を行った(
図14C)。コントロールマウスには、エンプティープラスミド(NTC)およびmGM-CSF、あるいはPBSおよびmGM-CSFを、ID注射した。二回の追加ワクチン投与は、腫瘍移植の21日後および35日後に、同様の手順で行った。腫瘍成長遅延(TGD)は、500mm
3で計算した。14日のTGDが、INVAC-1/mGM-CSFをワクチン投与したマウスグループと、NTC/mGM-CSFを接種したマウスグループとの間に見られた;10日のTGDが、INVAC-1/mGM-CSFを接種したグループと、PBS/mGM-CSFを接種したグループとの間に見られた。当該結果は、mGM-CSFを併用するINVAC-1の治療的ワクチン投与が、腫瘍成長の遅延も可能にしたことを示している。
【0279】
[INVAC-1ワクチン皮内投与/エレクトロポレーションと共にマウスのIL-12を投与することは、hTERT特異的CD8T細胞応答の強度を改善させる]
INVAC-1ワクチン皮内投与およびエレクトロポレーション後のhTERT特異的CD8T細胞応答におけるIL-12サイトカインの影響もまた、調べた。当該目的のために、HLA-A2/DR1マウスに、エレクトロポレーションを伴うINVAC-1のID投与と共に、IL-12のID注射を接種した(
図15)。別のグループのマウスには、IL-12の接種を行わずに、INVAC-1/エレクトロポレーションによるIDワクチン投与を行った。コントロールのマウスは、PBSとIL-12、またはPBS単独で、エレクトロポレーションを伴うニセのワクチン投与を行った。注射の14日後に、マウスの脾臓を回収し、A2拘束性のhTERTペプチドを用いたIFN-γELIspotアッセイによって、誘発された免疫応答をモニターした。応答マウスの出現頻度は、IL-12を注射すると増加した。実際、INVAC-1によってワクチン投与したグループおよびINVAC-1/IL-12によってワクチン投与したグループのそれぞれにおいて、5匹中2匹、および5匹中4匹の応答マウスが存在した。
【0280】
[実施例2]
[略号]
AA:アミノ酸、bp:塩基対、CTL:細胞傷害性Tリンパ球、CMV:サイトメガロウイルス、DNA:デオキシリボ核酸、EP:エレクトロポレーション、ID:皮内、NoLS:核小体局在化配列、RNA:リボ核酸、RTA:相対テロメラーゼ活性、TRAP:テロメア反復増幅プロトコール、TERT:テロメラーゼ逆転写酵素、Ubi:ユビキチン、VDD:バリン-アスパラギン酸-アスパラギン酸
【0281】
[材料と方法]
[プラスミドDNAベクター]
[INVAC-1]
INVAC-1構築物は実施例1に記載されている。
【0282】
[INVAC-1組換え(shuffled)誘導体]
pUTScramおよびpUTInv構築物は、酵素的に不活性な、ヒトユビキチン−テロメラーゼに基づく融合タンパク質をコードする約8.9kbの二本鎖DNAプラスミドである。Scrambledの、およびInvertedの導入遺伝子は、哺乳類細胞において安定かつ一過性の発現を高レベルで行うように設計されたpcDNA3.0由来のInvitrogen pcDNA3.1(+)ベクター(5.4kb)に挿入した。導入遺伝子の発現は、広範囲の哺乳類細胞において効率的で高レベルな発現を可能にする、ヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV)プロモーターから行われる。ベクターは、クローニングを可能にするマルチクローニングサイト(MCS)を含む。効率的な転写終結は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナルによって行われる。
【0283】
[pUTScram(Scrambledと命名)]
Ubi-Scrambled hTERTインサート(Scrambled、1184AA)は、pUTScramプラスミドの923の位置で始まり、4474の位置で終わる(
図20A)。pUTScramは、約130.2kDaのタンパク質に相当する、1184AAのヒトユビキチン−テロメラーゼに基づく融合構築物(Scrambled)をコードする。hTERTタンパク質は、最初の23アミノ酸(1-23AA)を削除し、ユビキチンポリペプチド(76AA)で置換した。触媒部位は、VDDをコードし、野生型ヒトテロメラーゼ(hTERT;特許WO2007/014740およびhTERTアイソフォーム1 アクセッション番号NM_198253)のAA867-869に相当する、9bpの欠失(*マーク;
図28)により不活性化した。hTERT配列を10個の免疫原性のフラグメントに分け、次の特異的な順番に再構成した:フラグメント7(210bp)、フラグメント2(201bp)、フラグメント6(312bp)、フラグメント4(117bp)、フラグメント9(576bp)、フラグメント3(120bp)、フラグメント1(258bp)、フラグメント8(477bp)、フラグメント10(516bp)、フラグメント5(303bp)。これらの10個のフラグメントは、6xGlyリンカー(Gリンカー;18bp)で架橋されている。結果として、76個の非免疫原性のAA(228bp)はhTERT配列から削除された。Ubi-hTERT組換え(shuffled)インサートのC末端配列の14アミノ酸は、V5エピトープタグをコードしている(
図22)。
【0284】
[pUTInv(Invertedと命名)]
Ubi-inverted hTERTインサート(Inverted、1184AA)は、pUTInvプラスミドの923の位置で始まり、4474の位置で終わる(
図20B)。pUTInvは、約130.2kDaのタンパク質に相当する、1184AAのヒトユビキチン−テロメラーゼに基づく融合構築物(Inverted)をコードする。hTERTタンパク質は、最初の23アミノ酸(1-23AA)を削除し、ユビキチンポリペプチド(76AA)で置換した。触媒部位は、VDDをコードし、野生型ヒトテロメラーゼ(hTERT;特許WO2007/014740;アクセッション番号NM_198253)のAA867-869に相当する、9bpの欠失(*マーク;
図29)により不活性化した。hTERT配列を10個の免疫原性のフラグメントに分け、次の特異的な順番に再構成した:フラグメント10(516bp)、フラグメント9(576bp)、フラグメント8(477bp)、フラグメント7(210bp)、フラグメント6(312bp)、フラグメント5(303bp)、フラグメント4(117bp)、フラグメント3(120bp)、フラグメント2(201bp)、フラグメント1(258bp)。これらの10個のフラグメントは、6xGlyリンカー(Gリンカー;18bp)で架橋されている。結果として、76個の非免疫原性のAA(228bp)はhTERT配列から削除された。Ubi-hTERT組換え(shuffled)インサートのC末端配列の14アミノ酸は、V5エピトープタグをコードしている(
図22)。
【0285】
[遺伝子合成およびクローニング]
当該遺伝子は、ユビキチン-テロメラーゼに基づく融合構築物として、重複する40塩基長のオリゴヌクレオチドアセンブリープロセス(GeneCust、Luxembourg)によって、新規合成した。制限酵素部位を削除し、かつGCリッチ配列を弱めるために、いくつかの保守的な塩基改変を行った。遺伝子合成により、望ましい発現システムに当該遺伝子をサブクローニングできるようにする、特有の隣接した制限酵素サイトHindIII/XbaIを含めた。合成した遺伝子は、pcDNA3.1(+)発現ベクター(Invitrogen、Carlsbad、USA)の制限酵素サイトHindIIIとXbaIとの間にクローニングした。プラスミドの配列は、PEGFP-N5’CGGTGGGAGGTCTATATAAG(配列番号27)およびBGH CAGGGTCAAGGAAGGCAC(配列番号28)プライマーを用いた配列決定によって、確認した。
【0286】
[プラスミド製造]
GeneCustによって合成したINVAC-1組換え誘導体は、RD Biotech(Besancon、France)の大腸菌(E.coli)5-α細胞(fhuA2Δ(argF-lacZ)U169 phoA glnV44 Φ80 Δ(lacZ)M15 gyrA96 recA1 relA1 endA1 thi-1 hsdR17)(Lucigen Corporation、Middleton、USA、ref.60602-2)に形質転換して製造した。細胞はアンピシリン(#EU04000D、Euromedex)を含有するLeno×Broth培地に蒔き、増殖させた。抽出および精製した後、1×の滅菌PBSに再懸濁した、濃縮されたエンドトキシンフリーギガプレッププラスミドストック(2mg/mL)を調製した。ベクターは、制限酵素マッピングによって確認した(HindIII-XbaI;
図21)。
【0287】
[pTRIP-CMV-hTERT]
当該DNAプラスミドは、すでに実施例1に記載した。
【0288】
[ウエスタンブロットおよびTRAPアッセイのための細胞培養物と一過性の遺伝子導入物]
CrFK細胞(クランデルリース(Crandell Rees)ネコ腎細胞)、HEK293T細胞(ヒト胚性腎細胞)は、10%熱失活ウシ胎児血清(PAA、Velizy-Villacoublay、France)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies、Saint-Aubin、France)を添加した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。
【0289】
細胞は、37℃の、5%CO
2を含む加湿した環境下で、75cm
2のフラスコにおいて単層で増殖させた。細胞は、遺伝子導入当日に、コンフルエンスの70-80%まで増殖した。ウエスタンブロットアッセイのために、5×10
5の細胞を6穴の組織培養プレートに播種し、24時間培養した。TRAPアッセイのために、7×10
5の細胞を6穴の組織培養プレートに播種し、24時間培養した。
【0290】
INVAC-1、pUTScramおよびpUTInv構築物を、jetPrimeカチオンポリマー遺伝子導入試薬を用いて、製造元の説明書(Polyplus-transfection Inc.、France)に従い、標的細胞に遺伝子導入した。pTRIP-CMV-hTERTプラスミドを遺伝子導入した細胞をポジティブコントロールとして用い、非遺伝子導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。遺伝子導入培地は4時間後に取り除き、2mLのDMEM培養培地で置換した。適切な遺伝子導入時間(ウエスタンブロットアッセイでは18-96時間、TRAPアッセイでは24時間)の後、細胞を回収してテロメラーゼの発現および活性を解析した。
【0291】
[ウエスタンブロット]
ウエスタンブロット解析は、遺伝子導入したHEK293T細胞を用いて行った。ウエスタンブロットの手順は実施例1に記載した通りである。
【0292】
[TRAPアッセイ]
手順は、実施例1に記載した通りである。
【0293】
[マウス]
本実験では、HLA-B
*0702遺伝子導入マウス系統を使用した。
【0294】
HLA-B
*0702遺伝子導入マウスは、当該分子のヒトHLA-B
*0702α1-α2ドメインおよびH2D分子のマウスα3ドメインを発現する。当該マウスは、H2-D
bおよびH2-K
b分子を発現しない(Rohrlich、Cardinaud et al. 2003)。
【0295】
マウスは、9〜15週齢で使用し、パリのパスツール研究所より提供された。当該マウスは、パスツール研究所の特定病原体を除去した動物の施設(Animal Facilities Lwof fn°22、agreement number B75 15-07)で育てられた。皮内(ID)または静脈内(IV)注射の前に、マウスは1×リン酸緩衝食塩水(1×PBS、Life Technologies、Saint-Aubin、France)に溶解した2%キシラジン(Rompun、BayerSante、Loos、France)および8%ケタミン(Imalgen1000、Merial、Lyon、France)の混合溶液で、マウスの個々の体重および麻酔の持続時間に従って、腹腔内(IP)経路で麻酔を行った。マウスは全て、動物治療法に厳密に従い、また地域の動物実験法に従い、扱った(指令2010/63/UE)。
【0296】
[hTERTペプチド]
HLA-B
*0702拘束性のhTERTペプチドは、実施例1に既に記載した。凍結乾燥したペプチドは、2mg/mLで滅菌水に溶解し、使用するまで−20℃で保管した。
【0297】
[マウスの免疫化およびインビボエレクトロポレーションの手順]
皮内(ID)免疫化は、マウス側腹部の下部に、インスリンシリンジおよび特殊な針(U-100、29GX1/2’’-0.33x12mm、Terumo、Belgium)で剃毛後に行った。剃毛後、免疫化手順の間および後に赤斑は観察されなかった。各マウスは、プラスミド(INVAC-1、pUTScramまたはpUTInv)による初回刺激のID注射を、100μgのDNAまたは1×PBSで受けた。ワクチンレジメンに従って、マウスは、DNAまたは1×PBSの二回目の注射を同様に受けることができた。
【0298】
インビボDNAエレクトロポレーションは、プレート電極が付属したCLINIPORATOR(登録商標)2エレクトロポレーションシステムおよびソフトウエア(IGEA、Italy)を用いて行った。ワクチン皮内投与の直後、注射部位に皮膚の層を形成し、全体を伝導性ゲル(LaboFH、青色接触ゲル、NM Medical、France)で覆い、プレート電極間に設置した。異なる電位の二つのパルスを与えた(HV-LV):HV(1250V/cm、1Hz、100μs)1パルス、1000msブレイク、LV(180V/cm、1Hz、400ms)1パルス。
【0299】
[ELIspotアッセイ]
ELIspotアッセイは、実施例1に記載の方法に従って行った。HLA-B
*0702拘束性の三つの特異的hTERTペプチド(p277、p351およびp1123)から成る一つのプールのみ、実施例2では使用した。
【0300】
[インビボ細胞傷害性アッセイ]
インビボ溶解アッセイは、実施例1に記載した手順に従って行った。HLA-B
*0702拘束性の二つの特異的hTERTペプチド(p351およびp1123)のみ、それぞれ免疫優勢のペプチドおよび準優位のペプチドとして、実施例2では使用した。
【0301】
[統計解析とデータ処理]
GraphPadPrism5ソフトウエアを、データ処理、解析およびグラフ化に使用した。データは、平均値±標準偏差または中央値として表している。ELIspotアッセイの統計解析は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定および/またはダンの多重比較検定を伴うクラスカル・ワリス検定を用いて行った。有意差は、危険率<0.05で設定した。
【0302】
[結果]
[INVAC-1プラスミドDNAの特徴および配列解析]
INVAC-1プラスミドDNAの特徴および配列解析は、すでに実施例1に記載した。
【0303】
[INVAC-1組換え(shuffled)誘導体構築物(pUTScramおよびpUTInv)の特徴および配列解析]
二つのINVAC-1組換え(shuffled)誘導体遺伝子を合成してクローニングした(
図20)。当該構築物は、実施例1に記載されたINVAC-1ヌクレオチド配列、および国際特許出願WO2007/014740に記載された野生型hTERTアミノ酸配列に基づいている。
【0304】
哺乳類細胞において高レベルで発現するために、コドンの最適化を行った(
図27)。Scrambledの、およびInvertedのUbi-hTERT組換え(shuffled)導入遺伝子は、HindIIIおよびXbaIによる切断および電気泳動(
図21)に示したように、pcDNA3.1(+)Invitrogen発現ベクターに連結させることに成功した。インサートおよび接続部位は、DNAインサートと隣接したベクター配列を照合するPEGFP-N5’およびBGHプライマーを用いて配列決定した。配列決定の結果によって、導入遺伝子が正常にクローニングされたことを確認した(
図28および29)。
【0305】
[INVAC-1組換え(shuffled)誘導体タンパク質は、インビトロで正常に発現し、プロテアソーム経路によって分解される]
インビトロでのHEK293T細胞株への一過性の遺伝子導入の18時間から96時間後に、野生型hTERT、INVAC-1、pUTScramおよびpUTInvタンパク質の全体的な発現に関する情報を提供するために、ウエスタンブロットアッセイを行った。野生型hTERTタンパク質のバンドは、未修飾のhTERTのサイズである124.5kDa(
図23Aおよび23Cの左部分)に一致した。実施例1において、INVAC-1タンパク質は、安定なレベルに発現された野生型hTERTタンパク質とは反対に、全時間帯に渡って速やかに分解されることが分かった。Scrambledの、およびInvertedの組換え(shuffled)タンパク質の特異的なバンドが全時間帯に渡って検出された(
図23Aおよび23Cの右側)。両タンパク質において、特異的なバンドはタンパク質全体の予想サイズ(130.2kDa)よりも小さいサイズ(<110kDa)で観察された。Scrambledの、およびInvertedのタンパク質のこれらの形態は、分解産物に相当する。実際、Scrambledの、およびInvertedの発現した未分解の産物は、ウエスタンブロット解析においては検出不可能だった。当該構築物は、生産後直ちにタンパク質の分解が高速で行われたこと示唆する1つから3つまでの特異的なバンドを、それぞれ提示した。INVAC-1のような、Scrambledの分解産物の全時間帯に渡る同様の分解パターンは、βアクチンローディングコントロールへの標準化後に、証明した(ImageJ解析:
図23B)。Invertedの分解産物は、他のINVAC-1誘導体タンパク質に、より近いパターンを持っている(
図23C、23Dおよび
図3C:pUTD10Not、pUTD10CogおよびpUTD23Tyn、実施例1参照)。
【0306】
[INVAC-1組換え(shuffled)誘導体は優勢な細胞質分布および核小体排除パターンを示す]
INVAC-1およびINVAC-1誘導体(pUTD10Not、pUTD10CogおよびpUTD23Tyn、実施例1参照)で示したように、pUTScramおよびpUTInvがコードするScrambledの、およびInvertedの組換えタンパク質は、核小体排除パターンによって、核と細胞質との間に分布した(データ不掲載)。
【0307】
[INVAC-1組換え(shuffled)誘導体は、酵素活性を持たない]
テロメラーゼ陰性CrFK細胞株中の、Ubi-hTERT組換え(shuffled)構築物のテロメラーゼ活性を評価するために、TRAPアッセイを行った。テロメラーゼ活性は、pTRIP-CMV-hTERTプラスミドを用いて野生型hTERTを遺伝子導入したCrFK細胞でのみ見られた。
【0308】
図24Aに示したように、吸光度の生データは、Scrambledの、およびInvertedのタンパク質のテロメラーゼ活性のレベルが、未処理の細胞のレベルと同程度であることを示した。当該アッセイの特殊性を考慮に入れ、熱失活サンプルを含む様々なネガティブコントロールを用いて完全に解析した結果を表す、相対テロメラーゼ活性(RTA)のデータは(
図24B)、当該組換え(shuffled)タンパク質が、完全にテロメラーゼ活性を欠いていることを示している。
【0309】
[組換え(shuffled)hTERT構築物は、hTERT特異的CD8T細胞応答を誘発する]
INVAC-1の特徴の範囲を広げる多様なhTERTエピトープの抗原提示を誘発するよう、pUTScramおよびpUTInv構築物を設計した。pUTScram、pUTInvおよびINVAC-1の免疫原性の比較は、各種構築物によって皮膚エレクトロポレーションを伴ってID免疫化されたHLA-B7マウスにおいて、二回の免疫化(プライムブーストレジメン)の後、行った。マウスは、二回目のワクチン投与/エレクトロポレーションの10日後に屠殺した。マウスの脾臓を回収し、誘発されたCD8T細胞応答を、HLA-B7MHCクラスI拘束性のhTERTペプチド(3つのペプチドp277、p351およびp1123のプール)を用いたIFN-γELIspotアッセイによって、モニターした。コントロールマウスと比較して、INVAC-1、pUTScram(Scrambled)およびpUTInv(Inverted)によってワクチン投与したマウスで、hTERT特異的CD8T細胞の出現頻度の有意な差が見られた(
図25)。
【0310】
当該結果は、人工的なhTERT組換え(shuffled)構築物pUTScram(Scrambled)およびpUTInv(Inverted)は、INVAC-1と同様に、二回の免疫化サイクルの後、有意に高レベルなhTERT特異的CD8T細胞応答を誘発することができたことを示している。実際、INVAC-1で既に示したように、プライムブーストワクチン投与レジメンの利点は、既に活性化した特異的T細胞を選択的に刺激することと、新しい特異的TCRを含む二次的なhTERT特異的T細胞を産生するために、エピトープの提示の幅を広げることである。
【0311】
[人工的に組換えた(shuffled)hTERT構築物であるpUTScramおよびpUTInvによるワクチン投与は、インビボの細胞傷害性hTERT特異的CD8T細胞を誘発する]
抗腫瘍免疫応答に関連している免疫細胞の中で、細胞傷害性CD8Tリンパ球(CTL)およびTh1CD4T細胞が、最も強力なエフェクター細胞(Vesely、Kershaw et al.2011)(Braumuller、Wieder et al.2013)として同定されている。
【0312】
hTERT特異的CD8T細胞の細胞傷害性活性を、INVAC-1、pUTScramおよびpUTInvによるワクチンID投与/エレクトロポレーションの後、インビボで調べた。DNA免疫化によって誘発されたhTERT特異的CD8
+T細胞応答のインビボでの細胞溶解性の強度を測定するために、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)で標識した、ペプチドパルスした脾細胞を標識細胞として使用して、インビボ細胞傷害性アッセイを行った。DNA構築物(またはコントロールとしてPBS)によって上述のようにID経路で一回のワクチン投与を受けたHLA-B7遺伝子導入マウスに対し、10
7個の標的細胞を静脈内に注射した。標的細胞は、3つの異なる濃度のCFSEでそれぞれ標識し、HLA-B7拘束性のhTERTペプチド(免疫優性のペプチドp351、または準優位なペプチドp1123)でパルスした、あるいは内部標準としてパルスしないままの、抗原刺激を受けていない類遺伝子性マウスの脾細胞由来であった。15〜18時間後、免疫化したマウスの脾臓を回収し、脾細胞懸濁液をフローサイトメトリーで解析した。特異的溶解の割合は、コントロールマウスに対するワクチン投与マウスでの、非パルスCFSE標識細胞に対するパルス細胞の割合を比較することで評価した。
【0313】
結果は、種々の構築物で免疫化した全てのマウスが、一回の免疫化後に、hTERT特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を発生させたことを示す。
【0314】
予想通り、3つのグループで、免疫優勢のペプチドp351に対する細胞傷害性は、準優位のペプチドp1123に対する細胞傷害性よりも強かった(
図26)。
【0315】
INVAC-1およびpUTInvによる免疫化は、テロメラーゼ免疫優勢の(p351)エピトープを有する標的細胞のうち、それぞれ37%および35%の特異的溶解を引き起こした(
図26、黒点)。比較すると、pUTScramによる免疫化は、20%の特異的溶解を引き起こした。準優位のペプチドp1123に対しては、INVAC-1免疫化マウスで5匹中2匹、および、pUTScram免疫化マウスで6匹中1匹が、特異的CTLを発生させた(
図26、灰色点)。
【0316】
上述の通り、複数の注射サイクルが、免疫優勢のペプチドおよび準優位のペプチドの両方に対して、特異的CTL溶解を発生させるマウス数の増加を可能にすることが期待できる。実際、上述の結果(実施例1参照)は、二回目の免疫化が、準優位のエピトープに対する免疫応答の幅を広げることを示した。
【0317】
結論として、INVAC-1と同様に、人工的に組換えた(shuffled)、ScrambledのまたはInvertedのhTERTが媒介する免疫化は、インビボで細胞溶解性活性を示すhTERT特異的CD8T細胞を産生することができる。
【0318】
[参考文献]
- Adolph, K. 1996 ed. “Viral Genome Methods” CRC Press, Florida
- Adotevi, O., Mollier, K., Neuveut, C., Cardinaud, S., Boulanger, E., Mignen, B., Fridman, W.H., Zanetti, M., Charneau, P., Tartour, E., et al. (2006). Immunogenic HLA-B*0702-restricted epitopes derived from human telomerase reverse transcriptase that elicit antitumor cytotoxic T-cell responses. Clin Cancer Res 12, 3158-3167.
- Andersson, H.A., and Barry, M.A. (2004). Maximizing antigen targeting to the proteasome for gene-based vaccines. Mol Ther 10, 432-446.
- Bachmair, A., Finley, D., and Varshavsky, A. (1986). In vivo half-life of a protein is a function of its amino-terminal residue. Science 234, 179-186.
- Braumuller, H., Wieder, T., Brenner, E., Assmann, S., Hahn, M., Alkhaled, M., Schilbach, K., Essmann, F., Kneilling, M., Griessinger, C., et al. (2013). T-helper-1-cell cytokines drive cancer into senescence. Nature 494, 361-365.
- Cadima-Couto, I., Freitas-Vieira, A., Nowarski, R., Britan-Rosich, E., Kotler, M., and Goncalves, J. (2009). Ubiquitin-fusion as a strategy to modulate protein half-life: A3G antiviral activity revisited. Virology 393, 286-294.
- Cheever et al., The prioritization of cancer antigens: a national cancer institute pilot project for the acceleration of translational research. Clin Cancer Res, 2009. 15(17): p. 5323-37.
- Combadiere, B., and Liard, C. (2011). Transcutaneous and intradermal vaccination. Human Vaccines 7, 811-827.
- Cortez-Gonzalez, X., Sidney, J., Adotevi, O., Sette, A., Millard, F., Lemonnier, F., Langlade-Demoyen, P., and Zanetti, M. (2006). Immunogenic HLA-B7-restricted peptides of hTRT. Int Immunol 18, 1707-1718.
- Dosset, M., Godet, Y., Vauchy, C., Beziaud, L., Lone, Y.C., Sedlik, C., Liard, C., Levionnois, E., Clerc, B., Sandoval, F., et al. (2012). Universal cancer peptide-based therapeutic vaccine breaks tolerance against telomerase and eradicates established tumor. Clin Cancer Res 18, 6284-6295.
- Firat, H., Cochet, M., Rohrlich, P.S., Garcia-Pons, F., Darche, S., Danos, O., Lemonnier, F.A., and Langlade-Demoyen, P. (2002). Comparative analysis of the CD8(+) T cell repertoires of H-2 class I wild-type/HLA-A2.1 and H-2 class I knockout/HLA-A2.1 transgenic mice. Internat Immunol 14, 925-934.
- Godet, Y., Fabre-Guillevin, E., Dosset, M., Lamuraglia, M., Levionnois, E., Ravel, P., Benhamouda, N., Cazes, A., Le Pimpec-Barthes, F., Gaugler, B., et al. (2012). Analysis of spontaneous tumor-specific CD4 T cell immunity in lung cancer using promiscuous HLA-DR telomerase-derived epitopes: potential synergistic effect with chemotherapy response. Clin Cancer Res 18, 2943-2953.
- Lavigueur, A., H. La Branche, et al. (1993). A splicing enhancer in the human fibronectin alternate ED1 exon interacts with SR proteins and stimulates U2 snRNP binding. Genes Dev 7: 2405-2417.
- Michalek, M.T., Grant, E.P., Gramm, C., Goldberg, A.L., and Rock, K.L. (1993). A role for the ubiquitin-dependent proteolytic pathway in MHC class I-restricted antigen presentation. Nature 363, 552-554.
- Mir LM. 2008. Application of electroporation gene therapy: past, current, and future. Methods Mol Biol 423: 3-17.
- Murray, 1991, ed. "Gene Transfer and Expression Protocols" Humana Pres, Clifton, N.J.
- Pajot, A., Michel, M.L., Fazilleau, N., Pancre, V., Auriault, C., Ojcius, D.M., Lemonnier, F.A., and Lone, Y.C. (2004). A mouse model of human adaptive immune functions: HLA-A2.1-/HLA-DR1-transgenic H-2 class I-/class II-knockout mice. Eur J Immunol 34, 3060-3069.
- Parmiani, G., Castelli, C., Pilla, L., Santinami, M., Colombo, M.P., and Rivoltini, L. (2007). Opposite immune functions of GM-CSF administered as vaccine adjuvant in cancer patients. Ann Oncol 18, 226-232.
- Rohrlich, P.S., Cardinaud, S., Firat, H., Lamari, M., Briand, P., Escriou, N., and Lemonnier, F.A. (2003). HLA-B
*0702 transgenic, H-2KbDb double-knockout mice: phenotypical and functional characterization in response to influenza virus. Int Immunol 15, 765-772.
- Rosenberg SA, Yang JC, Restifo NP (2004). Cancer immunotherapy: moving beyond current vaccines. Nat Med. 10:909-15.
- Sardesai NY, Weiner DB. 2011. Electroporation delivery of DNA vaccines: prospects for success. Curr Opin Immunol 23: 421-429.
- Tasaki, T., Sriram, S.M., Park, K.S., and Kwon, Y.T. (2012). The N-end rule pathway. Annu Rev Biochem 81, 261-289.
- Varshavsky, A. (1996). The N-end rule: functions, mysteries, uses. Proc Natl Acad Sci U S A 93, 12142-12149.
- Vesely, M.D., Kershaw, M.H., Schreiber, R.D., and Smyth, M.J. (2011). Natural innate and adaptive immunity to cancer. Annu Rev Immunol 29, 235-271.
- Yang, 1992, “Gene transfer into mammalian somatic cells in vivo”, Crit. Rev. Biotech. 12: 335-356
- Yang, Y., Chen, Y., Zhang, C., Huang, H., and Weissman, S.M. (2002). Nucleolar localization of hTERT protein is associated with telomerase function. Exp Cell Res 277, 201-209.