(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502652(P2017-502652A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】吸着材
(51)【国際特許分類】
A24D 3/16 20060101AFI20170105BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20170105BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20170105BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20170105BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20170105BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20170105BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
A24D3/16
B01J20/28 Z
B01J20/20 A
B01J20/20 D
B01J20/18 A
B01J20/18 E
B01J20/10 A
B01J20/12 A
B01J20/12 C
B01J20/32 Z
B01J20/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-532037(P2016-532037)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月1日
(86)【国際出願番号】GB2014053431
(87)【国際公開番号】WO2015075452
(87)【国際公開日】20150528
(31)【優先権主張番号】1320674.3
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ブラントン、ピーター
【テーマコード(参考)】
4B045
4G066
【Fターム(参考)】
4B045BA03
4B045BB02
4G066AA05B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066AA63B
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4G066CA52
4G066CA56
4G066DA01
4G066DA02
4G066DA03
4G066FA17
4G066FA33
4G066FA38
4G066FA40
(57)【要約】
直径が20nmより小さい細孔を備え、その外表面において添加剤粒子を担持する多孔性担体材料を含む吸着材が提供される。前記添加剤粒子は添加剤を含み、その直径が20nmより大きい。また前記吸着材を含む喫煙品フィルターエレメント、前記吸着材を含む喫煙品、前記吸着材を製造する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が20nmより小さい細孔を備え、その外表面において添加剤粒子を担持する多孔性担体材料を含む吸着材であって、前記添加剤粒子は添加剤を含み、その直径は20nmより大きい吸着材。
【請求項2】
多孔性担体材料の外表面の約10%以上が添加剤粒子によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の吸着材。
【請求項3】
多孔性担体材料は活性炭、シリカ、ゼオライト、セピオライトおよび/または粘土剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の吸着材。
【請求項4】
多孔性担体材料の細孔の約10%以上が気相から化合物を吸着するために使用できることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項5】
添加剤は揮発性材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項6】
添加剤は風味料および/またはアロマであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項7】
風味料および/またはアロマは、ビャクダン、ユーカリ、アニス、ヒマラヤスギなどの植物性化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の吸着材。
【請求項8】
添加剤粒子は、添加剤が蒸気として放出される前に添加剤を安定化および/または貯蔵するための材料を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材を含む喫煙品フィルターエレメント。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材または請求項9に記載の喫煙品フィルターエレメントを含む喫煙品。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材の調製方法であって、直径が20nmより大きい細孔を備える多孔性担体材料を供給する工程と直径が20nmより大きい添加剤粒子を前記多孔性担体材料の外表面に堆積する工程とを含む方法。
【請求項12】
エアロゾルの液相および/または固相から添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させることを特徴とする請求項11に記載の吸着材の調製方法。
【請求項13】
密閉チェンバー内において添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させることを特徴とする請求項11または12に記載の吸着材の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材に関し、特に多孔性担体材料と添加剤とを含む吸着材に関する。限定する意図はないが、特にこの吸着材は煙ろ過の使用に好適な吸着性能を有する。
【背景技術】
【0002】
例えば、喫煙品を通じて喫煙の間吸入されるタバコ煙を含む気体の気相構成要素および/またはある特定の微粒子を減らすためにろ過処理が行われる。フィルターは、典型的には物理吸着によって気体のある特定の構成要素を吸着する吸着材を含む場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様では直径が20nmより小さい細孔を備え、その外表面において添加剤粒子を担持する多孔性担体材料を含む吸着材が提供される。前記添加剤粒子は添加剤を含み、その直径は20nmを超える。
【0004】
一部の実施態様では多孔性担体材料の外表面の約10%以上が添加剤粒子によって覆われている。
【0005】
一部の実施態様では多孔性担体材料は活性炭、シリカ、ゼオライト、セピオライトおよび/または粘土剤を含む。
【0006】
一部の実施態様では多孔性担体材料の細孔の約10%以上が気相から化合物を吸着するために利用できる。
【0007】
一部の実施態様では添加剤は揮発性材料である。
【0008】
一部の実施態様では添加剤は風味料および/またはアロマである。一部の実施態様では、風味料および/またはアロマは、ビャクダン、ユーカリ、アニス、ヒマラヤスギなどの植物性化合物またはその誘導体である。
【0009】
一部の実施態様では、添加剤が蒸気として放出される前に添加剤を安定化および/または貯蔵するための材料を添加剤粒子は含んでいる。
【0010】
本発明の第2の態様では本発明の第1の態様による吸着材を含む喫煙品フィルターエレメントが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様では本発明の第1の態様による吸着材または本発明の第2の態様による喫煙品フィルターエレメントを含む喫煙品が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様では本発明の第1の態様による吸着材を製造する方法が提供される。この方法は、直径が20nmより小さい細孔を備える多孔性担体材料を供給する工程と直径が20nmを超える添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させる工程とを含む。
【0013】
一部の実施態様ではエアロゾルの液相および/または固相から添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させる。
【0014】
一部の実施態様では、密閉チェンバー内において添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施態様を添付図面を参照し、あくまで例示を目的として説明する。
【0016】
【
図1】本発明のある実施態様の吸着材の概略図である(正確な縮尺ではない)。
【
図2】本発明のある実施態様のフィルターを含む喫煙品の概略側面図である。
【
図3】本発明のある実施態様の吸着材を含む喫煙品の概略断面図である。
【
図4】活性炭によって吸着される化合物量と活性炭のタバコ煙エアロゾルに晒した回数の関係を示すグラフである。
【
図5】活性炭が吸着する化合物量と活性炭のタバコ煙エアロゾルに晒した回数の関係を示すグラフである。
【
図6】活性炭が吸着する化合物量と活性炭のタバコ煙エアロゾルに晒した回数の関係を示すグラフである。
【
図7】活性炭が吸着する化合物量と活性炭のタバコ煙エアロゾルに晒した回数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は吸着材に関する。本発明は特に喫煙品に導入するのに好適な吸着材に関する。
【0018】
一部の実施態様では吸着材は、吸着材を通過するタバコ煙などの蒸気から構成要素の少なくとも一部を除去することができる。加えて吸着材は、放出され得る添加剤の担体材料としても機能する。
【0019】
従って一部の実施態様では、本発明の吸着材は、それが担持する堆積した添加剤粒子によって1つ以上の添加剤の有効な供給源として、そして直径20nm未満の細孔によって気相中の1以上の他の化合物に対する有効な吸着材として、同時に機能する。
【0020】
吸着性能を備えるように多孔性担体材料は選ばれる。加えて、多孔性担体材料は添加剤粒子が付着する外表面を備える。本明細書において、多孔性担体材料の「外表面」とは、多孔性剤の表面であって細孔の内部にないものを言う。
【0021】
多孔性担体材料は物理吸着および/または化学吸着によって化合物を吸着し得る。化学吸着によって化合物を吸着する多孔性担体材料の方が、物理吸着によって化合物を吸着する多孔性担体材料よりも、吸着するその化合物に対して選択的である可能性が高い。一部の実施態様では吸着するその化合物に対して非選択的であるように本発明の吸着材は物理吸着によって化合物を吸着する多孔性担体材料を含む。一部の実施態様では吸着するその化合物に対して選択的であるように本発明の吸着材は化学吸着によって化合物を吸着する多孔性担体材料を含む。
【0022】
多孔性担体材料の吸着性能は、その表面から最初に放出される添加剤には影響されない。むしろ、吸着材が喫煙品に導入されると速やかに吸着活性のある細孔を露出させる。一部の実施態様では時間経過により添加剤が放出されると、使用できる細孔が増えるため吸着活性は増加する。しかし、この多孔性担体材料はいずれの添加剤が放出されなくとも吸着性能を有する。
【0023】
限定ではなくあくまで例示を目的として
図1を参照すると、本発明の典型的な実施態様による吸着材1は、多数の細孔3を備えた多孔性担体材料2を含む。これら細孔3は非常に小さく添加剤粒子4はこれに入ることができない。内部細孔構造に入り込めないことから添加剤粒子4は多孔性担体材料2の外表面5に付着するだけである。したがって、細孔3は気相から化合物を自由に吸着できる状態のままである。一部の実施態様ではこれら化合物はタバコ煙の構成要素である。
【0024】
一部の実施態様では直径20nm未満の細孔を添加剤粒子が飽和させないため、多孔性担体材料は吸着能力のある使用可能なまたは露出した細孔を有する。一部の実施態様では、多孔性担体材料の細孔はミクロ細孔および/またはメソ細孔を有する。メソ細孔および特にミクロ細孔はタバコ煙気相から化合物を吸着することにおいて特に効果的なサイズであることから有利である。一部の実施態様ではタバコ煙気相からある特定の化合物を吸着することにおいて特に効果的な細孔であることから多孔性担体材料は直径2nm以下の細孔を備える。
【0025】
本発明の多孔性担体材料は直径20nm未満の細孔を備える。エアロゾル供給源(例えばタバコ主流煙)由来の微粒子が直径20nm未満であることは極めて稀であるので、これら微粒子が多孔性担体材料の細孔に入り、塞いだり飽和させたりする度合いを最小限にする。結果として、タバコ煙という気相から化合物を吸着させるための多孔性担体材料の細孔の表面積はより大きくなり、多孔性担体材料はより多くの吸着容量を備えたより効果的な吸着材として機能し得る。
【0026】
多孔性担体材料の直径20nm未満の細孔以外の箇所に添加剤粒子が堆積され易くするため、添加剤粒子の直径は20nmより大きい。つまり多孔性担体材料はこれら細孔を占めるには非常に大きい。加えて、一部の実施態様では、堆積される添加剤粒子が多孔性担体材料の吸着性能を減少させる程度は、堆積される添加剤粒子の数を制限することで制御する。
【0027】
一部の実施態様では何らかの細孔変性剤を多孔性担体材料に晒すことなく、添加剤粒子を多孔性担体材料上に堆積させてもよい。ここで言う「細孔変性剤」とは、多孔性担体材料の細孔の吸着性能を変性するために細孔に添加する物質を言う。場合によっては、1以上の化合物を吸着する細孔の活性を抑制するために細孔変性剤を添加してもよい。場合によっては、1以上の化合物を吸着する比較的強力な吸着細孔の活性を抑制するために細孔変性剤を添加してもよい。
【0028】
多孔性担体材料の外表面上にある添加剤粒子は1以上の添加剤の供給源として機能する。添加剤粒子が2以上の添加剤の供給源として機能する実施態様では、個々の粒子が2以上の添加剤の供給源として機能してもよく、および/または別の添加剤粒子が別の添加剤の供給源として機能してもよい。添加剤粒子によって供給される1以上の添加剤は何らかの適切な目的のために供給される。一部の実施態様では1以上の添加剤は喫煙の間にタバコ煙に添加される。
【0029】
一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面上にある添加剤粒子は何らかの適切な組成をしており、添加剤粒子の組成は別の添加剤粒子と実質的に同一であり、および/または相互で異なっている。一部の実施態様では、別の組成を備える2以上の別個のタイプの粒子を吸着材の外表面に適用する。これらの実施態様では、別のアロマおよび/または風味料を供給するなど異なる機能を各タイプの添加剤粒子が発揮してもよい。
【0030】
一部の実施態様では、添加剤粒子は他の1以上の化合物とともに1以上の添加剤を含んでもよい。これらの実施態様の一部では1以上の添加剤は気体または蒸気として添加剤粒子から放出される。従ってより具体的に言えば、添加剤は揮発性化合物である。もしくは添加剤は、特に吸着材の使用時の条件下において、速やかに揮発する化合物であってもよい。一部の実施態様では、他の1以上の化合物は1以上の添加剤が放出される前においてこれらを安定化および/または貯蔵する。一部の実施態様では、添加剤粒子は蒸気として放出される添加剤と、それらが蒸気として放出される前において安定化および/または貯蔵する化合物とを含む。一部の実施態様では、添加剤の放出のタイミングおよび/または程度は、他の1以上の化合物によって制御してもよい。一部の実施態様では、添加剤は時間経過により添加剤粒子から徐々に放出されるようになり、これは制御されないで生じるようにしてもよい。
【0031】
一部の実施態様では、添加剤粒子に保持された1以上の添加剤が放出される間、添加剤粒子は多孔性担体材料の外表面上に結合し続ける。これらの実施態様では、他の1以上の化合物が多孔性担体材料の外表面上に結合し続ける間に1以上の添加剤は添加剤粒子から揮発および/または昇華してもよい。
【0032】
これらの実施態様の一部では、添加剤粒子から放出される1以上の添加剤は揮発性および/または半揮発性化合物であってもよい。こうすることで、添加剤の放出およびその後の拡散が促される。さらに、多孔性担体材料の外表面に結合し続ける非添加剤化合物は、放出される1以上の添加剤よりも低揮発性および/または非揮発性であってもよい。こうすることで、1以上の添加剤が放出される間これらが外表面上に付着しやすくなる。
【0033】
添加剤の供給源としておよび吸着材として機能する本発明の吸着材の活性は、外表面上に添加剤粒子がない多孔性担体材料の吸着容量と、外表面上に添加剤粒子がある多孔性担体材料(つまり本発明による吸着材)の吸着容量とを比較することで定量化してもよい。一部の実施態様では、有利なことに吸着容量の差異は小さい。一部の実施態様では、この差異は最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%または0.1%である。一部の実施態様ではこの差異は約50%未満である。
【0034】
多孔性担体材料の外表面上に添加剤粒子を担持することは多孔性担体材料ひいては吸着材の吸着容量を低下させるので、より多くの多孔性担体材料および/または吸着材を使用すること、または多孔性担体材料の多孔性および/または表面積を増加および/または調整して吸着を促進させることなどによって、これを補完することが望ましい。
【0035】
これらの実施態様の一部では、吸着材の吸着容量は、添加剤粒子がある吸着材の吸着容量と添加剤粒子がない多孔性担体材料との差異(%)と同一または同程度の量(%)だけ増加する。具体的に言えば、本発明の吸着材がその多孔性担体材料よりも50%低い吸着容量を有する実施態様では、吸着剤として使用される吸着材の質量は同一目的に使用されるであろう多孔性担体材料の質量よりも50%多い。
【0036】
一部の実施態様では、吸着材は喫煙品内に導入され、タバコ煙のある構成要素を選択的に吸着し、および/または喫煙品を通過する気体流に1以上の添加剤を添加する。
【0037】
喫煙品および特に喫煙品フィルターは、ある特定の煙構成要素、つまりタバコ煙のある微粒子および/または気相構成要素を、典型的には物理吸着によって、吸着させるために多孔性吸着材を含んでもよい。
【0038】
本明細書に用いられる用語「喫煙品」は、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、またはタバコ代替え品をベースにしているかに関係なくシガレット、シガー、シガリロおよび発熱するが燃焼しない製品などの喫煙可能な製品を含む。喫煙品には、喫煙者によって吸引される気体流用のフィルターを設けてもよい。
【0039】
吸着材として使用される多孔性担体材料の1例としては活性炭が挙げられる。活性炭材料はその大きな表面積および微多孔性構造の関係から、多目的に使用可能な吸着材として幅広く使用されるようになっている。炭素に結合する有機分子の容量の多さの関係から有機および無機の汚染物質の吸着においてこの材料は特に効果的である。活性炭は煙ろ過において効果的であることが知られており、喫煙品フィルター中に導入され得る。
【0040】
ミクロ細孔および/またはメソ細孔などの、直径20nm未満の細孔を含むのであれば活性炭材料はいずれの細孔構造でもよい。一部の実施態様では、活性炭は選択した目的におけるフィルターとして機能するのに最も効果的な細孔構造をしている。具体的には、一部の実施態様では、吸着材が喫煙品中に導入されるように意図されている場合、活性炭はタバコ煙のろ過において最も効果的な細孔構造をしている。
【0041】
さらに活性炭は、マクロ細孔および/またはメソ細孔および/またはミクロ細孔についていずれかの好適な相対量および相対分布を有する、および/または有するように変性される。
【0042】
活性炭はヤシ殻、穀類等の皮、木粉、泥炭、骨、コールタール、樹脂、関連のあるポリマーを含むナッツ殻を含む有機系炭素質出発原料から一般に製造される。安価であり、迅速に入手でき、そしてまた環境的に持続可能であるから、活性炭生産の原料としてはヤシ殻が特に注目されている。さらにヤシ殻からは純度が高く、表面積の大きい活性炭を生産することが可能である。
【0043】
合成炭素系材料から活性炭が調製される実施態様では、合成炭素系材料はポリマーであってもよい。一部の実施態様では、活性炭生成物の細孔の大きさおよび分布、ひいてはろ過特性を制御し易くなることから、炭素系材料はポリマー系であることが有利である。
【0044】
一部の実施態様では、活性炭材料はアルデヒドとフェノールとの重縮合によってできる合成炭素系材料でもよい。これらの実施態様では、好ましいアルデヒドとしてホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フルフラールが挙げられ、また限定するわけではないが好ましいフェノールとしてフェノール、レゾルシノール、カテキン、ヒドロキノン、フロログルシノールが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施態様では、活性炭材料はアルカリ条件下におけるホルムアルデヒドとレゾルシノールとの重縮合によってできる合成炭素系材料でもよい。
【0045】
異なる環境下における吸着材としての多孔性活性炭材料の性能および適性は、粒子の形状やサイズ、細孔のサイズ、材料の表面積などの材料の様々な物性によって決定される。多孔性カーボンを生産する方法や条件を操作することで、これら様々なパラメータを制御できる。
【0046】
活性炭は物理吸着によってその細孔表面において化合物を吸着する。物理吸着は化学吸着よりも選択性の低い吸着形態である。したがって、活性炭は化合物を幅広く吸着する用途に使用され得る。一部の実施態様では、この理由から活性炭を含有することが本発明の多孔性担体材料にとって有利にもなり得る。より具体的に言えば、本発明の吸着材がタバコ煙のろ過に使用される実施態様では、タバコ煙から幅広くの化合物を吸着することができるため、活性炭を含有することが本発明の多孔性担体材料にとって有利にもなり得る。
【0047】
吸着材中に使用し得る他の多孔性担体材料としては、シリカ、ゼオライト、セピオライトおよび他の多孔性粘土が挙げられる。
【0048】
一般的に、多孔性材料の表面積が増えるほど、その材料の吸着容量は増加する。他方、材料の表面積が増えると密度および構造的一体性は低下する。さらに、細孔の数を増やし細孔を小さくすることによって材料の表面積が増えると、ターゲット分子のサイズに細孔のサイズが近づくため、ターゲット分子が細孔に入りにくくなり材料に吸着されにくくなる。喫煙品中のように、活性炭材料に対してろ過される材料の流量が多い場合、このことは特に顕著である。
【0049】
多孔性炭素材料の製造に用いられる方法は正確に材料の性状に強く影響する。従って、広い範囲の形状、サイズ、サイズ分布、細孔サイズ、細孔容積、細孔サイズ分布および表面積を備えるカーボンを生産することが可能である。これらはいずれも吸着材としての効果に影響する。損耗率も重要な変数である。高速でフィルター製造をする間にダストが発生することを予防できるため低い損耗率が望ましい。
【0050】
Adsorption (2008) 14:335-341に説明されているように、従来のヤシ系炭素は本質的にミクロ多孔質であり、炭素活性時間の増加はミクロ細孔の数および表面積の増加に繋がるが細孔のサイズまたは分布に何ら変化を与えない。
【0051】
当業者が使用する命名法に従って吸着材中の直径が2nm未満の細孔を「ミクロ細孔」と呼称し、直径が2nm〜50nmの細孔を「メソ細孔」と呼称する。直径が50nmを超過した場合にはその細孔は「マクロ細孔」と呼称される。直径が50nmを超える細孔は、吸着全体において通常大きく貢献することはない。
【0052】
一部の実施態様では、提供される吸着材は喫煙品中に導入する用途に使用できる。一部の実施態様では、喫煙の際に喫煙品を通過するタバコ煙のある特定の微粒子および/または気相構成要素を選択的に吸着することを目的として吸着材は導入される。この目的のために多孔性吸着材はミクロ細孔および/またはメソ細孔を備えた状態で提供してもよい。
【0053】
多孔性材料の表面積は、一定温度条件下において窒素分圧と相関して材料によって吸着される窒素の体積の変化を測定することで評価する。ブルナウアー、エメットおよびテラーが提唱した数学的モデルにより得られる結果を解析することで、BET表面積として知られる数値が得られる。
【0054】
一部の実施態様では、本発明の吸着材において、大きいBET表面積を備える多孔性担体材料の方が小さいBET表面積を備える多孔性担体材料よりも好ましい場合がある。大きいBET表面積を備える多孔性担体材料の方が小さいBET表面積を備える多孔性担体材料よりも吸着容量が多い可能性が高いからである。多孔性担体材料が活性炭であり喫煙品中に使用される実施態様では、BET表面積が大きいほど、その吸着容量が多くなって、タバコ煙からより多くの化合物をろ過できる。
【0055】
一部の実施態様では、大きいBET表面積を備える本発明の吸着材の方が小さいBET表面積を備える本発明の吸着材よりも好ましい場合がある。大きいBET表面積を備える吸着材の方が小さいBET表面積を備える吸着材よりも吸着容量が多い可能性が高いからである。
【0056】
一部の実施態様では、本発明の吸着材およびその組成たる多孔性担体材料のBET表面積の差は小さい方が有利である。一部の実施態様では、本発明の吸着材のBET表面積はその組成たる多孔性担体材料のBET表面積とほぼ等しい。
【0057】
一部の実施態様では、本発明で使用される多孔性担体材料のBET表面積は、表面に添加剤が存在しない状態で、少なくとも400、450、500、550、600、650、700、750、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800または少なくとも1900m
2/gである。活性炭の場合、材料のBET表面積は少なくとも800m
2/gであることが有利である。この程度のBET表面積を備える活性炭はタバコ煙のろ過において特に効果的であることが知られている。
【0058】
一部の実施態様では、その外表面に添加剤粒子を担持した多孔性担体材料を含む本発明において使用される吸着材のBET表面積は、少なくとも200、250、300、350400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600または少なくとも1800m
2/gである。活性炭の場合、吸着材のBET表面積は少なくとも800m
2/gであることが有利である。この程度のBET表面積を備える活性炭はタバコ煙のろ過において特に効果的であることが知られている。
【0059】
一部の実施態様では、活性炭などの本発明の多孔性担体材料の細孔容積(窒素吸着により評価)は、その表面に添加剤粒子がない状態で、少なくとも0.3cm
3/gまたは少なくとも0.5cm
3/gである。一部の実施態様では、活性炭などの多孔性担体材料を含む本発明の吸着材の細孔容積(窒素吸着により評価)は、その外表面に添加剤粒子を担持状態で、少なくとも0.3cm
3/gまたは少なくとも0.5cm
3/gである。細孔容積が少なくとも0.5cm
3/gの活性炭などの多孔性担体材料はタバコ煙の吸着材として特に有用であり得る。細孔容積が1cm
3/gを大きく超えた多孔性担体材料は低密度であるため、紙巻きタバコ製造装置中における操作が困難となる。この理由から紙巻きタバコまたは煙ろ過における使用を目的とするには、そのような炭素材料は好ましくない。
【0060】
多孔性吸着材はモノリス形状または微粒子形状として提供され得る。一部の実施態様ではこの吸着材は粒子形状である。一部の実施態様では、この吸着材粒子の粒子径は10μmから1500μmの範囲内である。一部の実施態様では、吸着材粒子の平均粒子径は約100μm〜約1000μmの範囲内、約150μm〜約800μmの範囲内、または約250μm〜約750μmの範囲内である。
【0061】
多孔性担体材料のサイズおよび形状は使用可能であれば制限はない。一部の実施態様では多孔性担体材料はモノリスである。一部の実施態様では多孔性担体材料は微粒子、より具体的に言えば塊(lump)、顆粒および/または粉末状である。一部の実施態様では、多孔性材料の粒子は例えばバインダーによって相互に結合し、望ましいサイズ、形状または他の性状を備える大きな形状を形成する。
【0062】
多孔性担体材料の吸着性はその細孔に左右され、細孔が埋まるにつれてその吸着容量は減少する。したがって、吸着容量に悪影響を及ぼすことなく多孔性吸着材に材料や化合物を添加することは困難である。
【0063】
そうであるにもかかわらず、吸着材として機能することに加えて、この多孔性担体材料は添加剤の担体としてさらに機能する。細孔を埋めることおよびこれに附帯する多孔性材料の吸着性の減少を最小化するため、添加剤を多孔性吸着材の内部構造内に位置させるのではなく、多孔性吸着材の外表面に担持させる。
【0064】
添加剤粒子が吸着され細孔を占有しないように吸着材の細孔より大きい添加剤粒子が選ばれる。占有された細孔はタバコ構成要素を吸着することができないからである。特に吸着材の外表面に担持される添加剤粒子の直径は20nmよりも大きい。
【0065】
添加剤粒子は添加剤の供給源として機能する。一部の実施態様では、添加剤粒子は室温において揮発性または半揮発性の化合物である。
【0066】
一部の実施態様では、添加剤は望ましい性状を供給する化学種である。ある実施態様では添加剤は望ましい味および/または香りを提供する。添加剤粒子が多孔性担体材料の表面に存在することで、1以上の望ましい性状を備えた吸着材を提供するようにしてもよい。
【0067】
これとは別にまたはこれに加えて、吸着材をフィルター材の中に導入して、多孔性担体材料の表面にある添加剤粒子は1以上の望ましい性状を備えたフィルター材を提供してもよい。添加剤が添加剤粒子から放出されると該添加剤がフィルター材の中に放出されるようにしてもよい。
【0068】
これとは別にまたはこれに加えて、吸着材をフィルターエレメントの中に導入して、多孔性担体材料の表面にある添加剤粒子は1以上の望ましい性状を備えたフィルターエレメントを提供してもよい。添加剤が添加剤粒子から放出されると該添加剤がフィルターエレメントの中に放出されるようにしてもよい。
【0069】
これとは別にまたはこれに加えて、吸着材を喫煙品の中に導入し、多孔性担体材料の表面にある添加剤粒子は1以上の望ましい性状を備えた喫煙品を提供してもよい。添加剤が添加剤粒子から放出されると該添加剤が喫煙品の中に放出され得る。
【0070】
1以上の添加剤がその目的、例えばタバコの煙を風味付けるなど、を果たすために気体または蒸気に変化する実施態様では、添加剤は一定割合で相変化し、および/またはトリガー、例えば温度上昇など、に反応して速やかに相変化してもよい。
【0071】
1以上の添加剤が一定割合で相変化する実施態様では、一定の香味および/または風味料を備える喫煙品を生み出すように活性炭などの吸着材は喫煙品中に導入され得る。1以上の添加剤が温度上昇に反応して速やかに相変化する実施態様では、ユーザーが喫煙を開始するとより強いアロマおよび/または風味料になる喫煙品を生み出すように活性炭などの吸着材は喫煙中に温度が上昇する喫煙品中に導入され得る。
【0072】
粒子が蒸気に放出させる1以上の添加剤を含有する実施態様では、これら添加剤のうち1以上のものが風味剤および/またはアロマとして機能し得る。本明細書を通して用語「香味」及び「香味料」は、各地の条例で許可されており、成人消費者が望む味や香りを製品に加えるのに用いることができる材料を指す。このような材料としては、抽出物(例えば、カンゾウ、アジサイ、ホオノキの葉、カミツレ、フェヌグリーク、クローブ、メントール、ニホンハッカ、アニシード、シナモン、ハーブ、ヒメコウジ、サクランボ、ベリー、モモ、リンゴ、ドランブイ、バーボン、スコッチ、ウイスキー、スペアミント、ペパーミント、ラベンダー、カルダモン、セロリ、カスカリラ、ナツメグ、サンダルウッド、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエキス、ローズ油、バニラ、レモン油、オレンジ油、カシア、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、イランイランノキ、セージ、ウイキョウ、ピメント、ショウガ、アニス、コリアンダー、コーヒー、ハッカ属のいずれかの種からのハッカ油など)、調味料、苦味受容体部位遮断剤、感覚受容器部位活性化剤または刺激剤、糖及び/または糖置換体(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、サイクラミン酸塩、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールなど)や、木炭、クロロフィル、鉱物、植物息消臭剤などのその他の添加剤などが挙げられる。これら材料は模造品、合成または天然成分であってもよく、またはこれらのブレンドであってもよい。これら材料は、例えば油、液体、粉末などの任意の好適な形態であってもよい。
【0073】
添加剤粒子の1以上の添加剤が風味料および/またはアロマとして機能する実施態様では、これら添加剤はある程度の揮発性を備えることが有利である。ある程度の揮発性があることで喫煙中に蒸気に相変化し易くなるからである。また同実施態様では、これら添加剤は少量でもより強い官能特性を備えることが有利である。強い官能特性を備えることで長期間に亘って香りや匂いなどの官能効果を備えることができるからである。
【0074】
一部の実施態様では、吸着材の外表面にある添加剤粒子は1以上の添加剤を含有する。ここで添加剤のうち1以上のものはいずれかの使用可能な植物化合物またはその誘導体である。使用可能な植物化合物またはその誘導体としては、ビャクダン、ユーカリ、アニス、ヒマラヤスギおよび使用可能なこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。有利なことに、これら例の全てが揮発性であり、少量でも強い香りを備えるものである。
【0075】
一部の実施態様では、吸着材の外表面にある添加剤粒子はユーカリまたはこれの誘導体を含有する。一部の実施態様では、吸着材の外表面にある添加剤粒子はユーカリを含有し、多孔性担体材料は活性炭である。一部の実施態様では、吸着材の外表面にある添加剤粒子はユーカリを含有し、多孔性担体材料は活性炭であり、吸着材は紙巻きタバコなどの喫煙品中に導入される。ユーカリは極めて強い匂いと高い揮発性を備えるため喫煙品内の活性炭の表面にユーカリを含むことは有利である。このためユーカリは添加量が少量の場合ですら喫煙中に生じる煙の官能特性に大きな影響を与えることができる。
【0076】
一部の実施態様では添加剤は希釈剤である。具体的に、希釈剤とは喫煙品中に使用される添加剤であり、これらは揮発してエアロゾル形態で主流煙に移る化合物である。実質的に損なわれることなく煙に移るようなものが一般的に選択される。煙の他の構成要素(タバコ含有喫煙品の場合ではタバコ由来構成要素であり、タバコ非含有喫煙品の場合ではニコチンおよび/または風味料構成要素)はこの手段によって希釈される。一部の実施態様では、希釈剤は1以上のエアロゾル形成剤であり、例えばポリオール系エアロゾル発生剤または非ポリオール系エアロゾル発生剤であり、好ましくは非ポリオール系エアロゾル発生剤である。これらは室温で固体または液体でもよい。使用可能なポリオールとしては、ソルビトール、グリセロールおよびプロピレングリコールやトリエチレングリコールのようなグリコールが挙げられる。使用可能な非ポリオールとしては、一価アルコール、高沸点炭化水素、乳酸などの酸、ジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレートまたはイソプロピルミリステートなどのエステルが挙げられる。複数の希釈剤の組み合わせは同じ割合または異なる割合で使用してもよい。一部の実施態様では、トリアセチン、トリエチルシトレートまたはイソプロピルミリステートが好ましい。
【0077】
一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面上に担持されている直径が20nmより大きい添加剤粒子を含む吸着材に加えて、添加剤を含む場合もある比較的小さな添加剤粒子を添加してもよく、またこれら比較的小さな添加剤粒子のいくらかは多孔性担体材料の細孔の内部に位置してもよい。一部の実施態様では、外表面に適用される添加剤粒子供給源が、直径20nm未満の吸着材細孔を占有するほど充分に小さい添加剤粒子と同一組成の材料を含む場合があるからである。
【0078】
一部の実施態様では、多孔性担体材料の細孔内に存在する添加剤と、直径が20nmより大きく多孔性担体材料の外表面上に位置する添加剤粒子内に存在する添加剤は同一である。これとは別にはまたはこれに加えて、細孔内にある添加剤は異なってもよい。
【0079】
一部の実施態様では、添加剤を含有するような比較的小さな添加剤粒子に占有される細孔の割合は、約90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下または0.1%以下である。
【0080】
多孔性担体材料の外表面に担持される添加剤粒子は多孔性担体材料ひいては吸着材の吸着容量を減らすものである以上、例えばより多くの多孔性担体材料および/もしくは吸着材を使用し、または多孔性担体材料の多孔性および/もしくは表面積を増加あるいは調整して吸着を促すことによって、これを補うことが好ましい場合がある。
【0081】
多孔性担体材料の外表面上にある添加剤粒子の形状は、そのサイズ・形状が直径20nm以下の細孔に適合しないのであれば、特に制限はなく使用可能な如何なる形状をしていてもよい。一部の実施態様では、添加剤粒子の直径は約20〜2000、20〜1500、20〜1000、20〜500、20〜100または20〜50nmの範囲内にある。
【0082】
多孔性担体材料の外表面上にある添加剤粒子は外表面のいずれの断片を覆っていてもよい。一部の実施態様では、所望の水準の添加剤供給および吸着の双方を提供できるように覆われる割合を選択することが有利である。より広範囲が覆われる場合、より多くの添加剤を供給できるようになる。他方、この範囲が狭いと、場合によっては、外表面上の粒子による細孔障害が最小化されることで吸着が向上する。一部の実施態様では、添加剤粒子は多孔性担体材料の外表面の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%または99.9%を覆う。
【0083】
本発明の吸着材は、添加剤供給源としても吸着材としても機能する能力があるため、異なる適用範囲において有用となり得る。一部の実施態様では、例えば、効果的にタバコ煙から分子を吸着する点および効果的に風味料および/またはアロマを送出する点の双方から、本発明の吸着材は喫煙品または喫煙品フィルターエレメントの中に導入される。
【0084】
吸着材が喫煙品中に使用される実施態様では、多孔性担体材料および吸着材はある特定の煙変性性状を備える吸着材を提供することを目的として選択してもよい。例えば一部の実施態様では、添加剤粒子中の添加剤は、ビャクダン、アニス、ヒマラヤスギおよび/またはユーカリから誘導されるものであってもよく、そうすることで吸着材がタバコ煙にこれらの風味料を送出し得る。加えて一部の実施態様では、効果的および/または選択的にタバコ煙からある特定の構成要素を吸着するように多孔性担体材料は選択される。
【0085】
本発明の第2の態様によるフィルターエレメントおよび/またはフィルターは、本発明の第1の態様によるフィルター材料および吸着材を含有する。これらフィルターエレメントおよびフィルターは喫煙品中に導入してもよい。
【0086】
従って、本発明よるフィルターエレメントおよび/またはフィルターはセルロースアセテートトウなどのフィルター材料および本発明による吸着材を含む場合がある。一部の実施態様では、吸着材はチェンバー内に設けられるか、またはフィルター材料内に分散させてもよい。他の実施態様では、フィルターエレメントを形成するフィルター材料の周囲にあるラッパーの内表面に貼付されるパッチまたは層の中に吸着材を設けてもよい。
【0087】
本明細書で説明するように、従来あるプロセス、技術および装置を用いて、吸着材とフィルター材料からフィルターおよびフィルターエレメントを作製することが可能である。
【0088】
本発明の第3の態様による喫煙品は第1の実施態様による吸着材を含む。
【0089】
限定する意図はなくあくまで例示を目的として
図2を参照すると、本発明の代表的な実施態様による喫煙品6はフィルター7とタバコなどの喫煙材の円筒状ロッド8とを含み、この円筒形ロッド8はその片方の端がフィルター7の一端と当接するように位置合わせされている。従来手段を用いてフィルター7はプラグラッパー(図示せず)に包まれ、喫煙材ロッド8はチッピング紙(図示せず)によってフィルター7と結合している。フィルター7は実質的に円筒形であり、吸い口端9および喫煙材端10を有する。フィルター7はフィルター材プラグ11を含む。フィルター材に分散されているのは本発明による吸着材の添加剤粒子(図示せず)である。
【0090】
フィルター材プラグは好ましくは、完成喫煙品中でそれが接合する喫煙材ロッドのサイズおよび形状に合致するような好適なサイズおよび形状をしている。
【0091】
本明細書で説明するように図示した喫煙品6は、吸着材を含有する1つのフィルターエレメントまたはセグメントを備えるフィルター7を含むが、他の構成もあり得る。例えばフィルター7は2つ、3つまたはそれ以上の複数のセグメントを備えることが可能であり、これらセグメントのいくつかまたは全てが本発明による吸着材を含有することが可能である。一部の実施態様では、本発明による吸着材は喫煙品のフィルターとは別のセクションにおいて喫煙品に導入されてもよい。
【0092】
限定する意図はなくあくまで例示を目的として
図3を参照すると、本発明の代表的な実施態様による喫煙品12は、セクション18と位置合わせされ、これに当接するフィルター13を含む。このセクション18は、タバコなどの喫煙材の円筒形ロッド14と位置合わせされ、これに当接する。従来手段を用いてフィルター13はプラグラッパー(図示せず)に包まれ、喫煙材ロッド14はチッピング紙(図示せず)によってセクション18およびフィルター13と結合している。フィルター13は実質的に円筒形であり、吸い口端15および喫煙材端16を有する。フィルター13はフィルター材プラグ17を含む。セクション18は本発明による吸着材の粒子(図示せず)を含む。
【0093】
複数の別個のフィルターエレメントまたはセクションを含み異なるフィルター能を備える合成フィルターを含んだり、異なるフィルター材料および吸着材や風味剤などの添加剤など異なる材料を含んだり、喫煙品について数多くの異なるフィルター構成が考えられる。本明細書で使用する「風味剤」は各国の規制が認可し所望の味または香りを作り出すために製品に使用してよい材料を意味する。
【0094】
第4の態様では本発明は、本発明の吸着材を調製する方法に関する。
【0095】
特に本発明は、直径20nm未満の細孔を備える多孔性担体材料が供され、添加剤粒子がこの多孔性担体材料の外表面上に堆積され、添加剤粒子が20nmを超える直径を有し、添加剤を含む、吸着材を調製する方法に関する。
【0096】
本発明の方法において、好適ないずれの方法で、および好適ないずれの段階から、多孔性担体材料の外表面上に添加剤粒子を堆積させてもよい。さらに添加剤粒子は1以上の工程において堆積させてもよい。一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面のうち添加剤粒子によって覆われる部分が増加する可能性が高いため、複数の工程において添加剤粒子を堆積させることが有利である。
【0097】
一部の実施態様では、添加剤粒子はエアロゾルの固相および/または液相から堆積させてもよい。
【0098】
一部の実施態様では、2以上の異なるタイプの添加剤粒子が吸着材の外表面上に堆積される。異なるタイプの添加剤粒子は同時および/または順次に堆積させてもよい。
【0099】
一部の実施態様では、添加剤粒子はエアロゾルの固相および/または液相から多孔性吸着材の外表面上に堆積され、この堆積はチェンバーの内側で生じてもよい。この容器は周囲に対して密閉状態でも開放状態でもよく、堆積プロセス全体またはその一部だけを通じて密閉状態でも開放状態でもよい。ここでいう「密閉」とは、周囲に漏れるエアロゾルの比率が無視できるほど十分小さいことを意味する。ここでいう「開放」とは、周囲に漏れるエアロゾルの比率が顕著で十分大きいことを意味する。
【0100】
一部の実施態様では、エアロゾルの液相および/または固相中の添加剤粒子が多孔性担体材料の外表面状に堆積させる際、チェンバーは密閉状態である。こうすることで吸着材の外表面上への堆積を促進させる。
【0101】
チェンバー内で堆積が生じる実施態様では、あらゆる好適なチェンバーを使用してもよい。一部の実施態様では、好適なチェンバーは添加剤粒子を含むエアロゾルに対して実質的に非浸透性の壁を含む。
【0102】
一部の実施態様では、本発明の方法は温度や圧力などのあらゆる好適な物理条件の調整または制御を含んでもよい。一部の実施態様では、この物理条件は本発明の方法を実施する間一定に保ってもよく、または変化させてもよい。物理条件の最適な組み合わせは、添加剤粒子が適用される多孔性担体材料、添加剤粒子、添加剤粒子を適用して得られる吸着材の所望の性能に依存する。
【0103】
異なる物理条件を使用すると、多孔性担体材料の外表面上に異なる量の添加剤粒子を備えた吸着材や異なるろ過特性を備えた吸着材を調製し易くなる。従って、一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面上に所定量の添加剤粒子を備えた吸着材やある特定のろ過特性を備えた吸着材を調製するために、ある特定の物理条件が調整される。
【0104】
本発明の方法において、あらゆる好適な温度を使用でき、この温度は一定に保ってもよく、または変化させてもよい。一部の実施態様では、温度は本発明の方法を通じて外気温である。別の実施態様では、温度は本発明の方法全体を通じてまたはその一部において、外気温よりも高いまたは低い。
【0105】
一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面上への添加剤粒子の堆積を促すことを目的として、調整または制御される温度が選ばれる。
【0106】
本発明の方法において、あらゆる好適な圧力を使用でき、この圧力は一定に保ってもよく、または変化させてもよい。一部の実施態様では、圧力は本発明の方法を通じて大気圧と等しい。別の実施態様では、圧力は本発明の方法全体を通じてまたはその一部において、大気圧よりも高くてもよく、または低くてもよい。
【0107】
本発明の方法において、堆積させるために添加剤粒子を含むエアロゾルに多孔性担体材料をあらゆる好適な時間晒してもよい。多孔性担体材料の性質、得られる吸着材の所望の性状、および本発明の方法において使用される他の条件の性質に最適時間は依存する。
【0108】
一部の実施態様では、多孔性担体材料の外表面のうち添加剤粒子が覆う部分を最大化するため、比較的長い時間をかけて添加剤粒子を堆積させることが有利である。一部の実施態様では、こうすることでその外表面上により多くの風味剤を有し、より強い風味および/またはアロマを送出することが可能な吸着材を形成できる。一部の実施態様では、本発明の方法にかかるエネルギー的および金銭的コストを減らすため比較的短い時間で添加剤粒子を堆積させることが有利である。
【0109】
一部の実施態様では、系が熱力学的平衡状態に達するのに十分な時間多孔性担体材料はエアロゾルに晒され、これにより系がより長い時間放置されても堆積量が変化しない。こうすると多孔性担体材料の外表面上に堆積する添加剤粒子の量が最大化され有利である。
【0110】
一部の実施態様では、系が熱力学的平衡状態に達するには不十分な時間多孔性担体材料はエアロゾルに晒され、系がより長い時間放置されることで堆積量が変化する。こうすると物理条件の変化ではなく晒す時間を変えることによって多孔性担体材料の外表面上に堆積する添加剤粒子の量を制御することが可能になるので有利である。
【0111】
一部の実施態様では、本発明の吸着材の調製方法は、微多孔性活性炭の外表面上にユーカリを含む添加剤粒子を堆積させることを含む。
【実施例】
【0112】
エアロゾルに晒された多孔性材料が化合物を吸着する活性をどの程度維持しているのかを評価するため、タバコ煙を例として使用して実験を行った。多孔性材料は複数回タバコ煙に晒されても大丈夫であること、および効果的に化合物を吸着できる活性を依然として維持していることを実験は示した。
【0113】
実験で試験した多孔性材料はミクロ/メソ/マクロ多孔性微粒子活性炭素である。活性炭はBlucher GmbHから入手したものである。
【0114】
活性炭のいくつかの性状を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
2つの活性炭の質量を測定したところ、60mgと150mgであった。
【0117】
この方法で使用した全ての紙巻きタバコは、喫煙前に温度22℃、相対湿度60%で最低48時間保管された非換気式バージニアキングサイズ紙巻きタバコである。全てISO喫煙法(つまり1分毎に1回2秒間に35mLのパフを行った)の下で喫煙した。
【0118】
所定量の活性炭を紙巻きタバコの凹部が設けられたフィルターに配置し、この紙巻きタバコを喫煙した。活性炭を速やかに別の未使用の紙巻きタバコに移動させ、この紙巻きタバコを速やかに喫煙した。これを何度か繰り返した。つまり、同一バッチの材料が間断なく数本の紙巻きタバコの中でタバコ煙のろ過に使用された。
【0119】
各紙巻きタバコが喫煙されている時そして喫煙が終わった後、データをリアルタイムで収集した。活性炭によって吸着された特定化合物の量を評価するために収集データを使用した。
【0120】
飛行時間質量分析計(TOF-MS)を2回、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を3回実行してろ過された煙の化学的性質を解析した。アセトアルデヒド、1,3−ブタジエン、アセトン、イソプレン、MEK、ベンゼンおよびトルエンの濃度をリアルタイムで測定するためにTOF-MSを使用した。アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ホルムアルデヒド、MEKおよびプロピオンアルデヒドの濃度をリアルタイムで測定するためにHPLCを使用した。
【0121】
個々の煙構成要素の減少割合を紙巻きタバコ使用の関数として算出した。
【0122】
図4は60mgの活性炭サンプルのHPLCで得られたデータのグラフである。
【0123】
図5は60mgの活性炭サンプルのTOF-MSで得られたデータのグラフである。
【0124】
図6は150mgの活性炭サンプルのHPLCで得られたデータのグラフである。
【0125】
図7は150mgの活性炭サンプルのTOF-MSで得られたデータのグラフである。
【0126】
喫煙する紙巻きタバコの数が増えるほど活性炭が除去する化合物の量が減少することを全てのグラフが示している。従って活性炭が除去する化合物の量は、活性炭の重量、吸着される化合物、既に使用された紙巻きタバコの数に依存する。
【0127】
9本の紙巻きタバコで使用された後で化合物を吸着する活性を活性炭が維持していることも全てのグラフが示している。活性炭は粒状物の堆積のせいで細孔が塞がれることなくエアロゾルに複数回晒され得ることをこれは意味している。
【0128】
活性炭に堆積させた化合物に由来する匂いが喫煙した紙巻きタバコの数に応じて強まったこともわかった。匂いが検知されたことは、エアロゾルから粒子を堆積させることで活性炭の官能特性が変性可能であることを意味する。
【0129】
(結論)
実験により以下の結論に至った。
1)活性炭はタバコ煙(つまり固相エアロゾル)に複数回晒すことが可能であり、多くの異なる化合物を効果的に吸着する活性を依然として維持することができる。
2)吸着材がある化合物を吸着する活性の程度は吸着されるその化合物に依存する。化合物の揮発性が高いほど、吸着材がその化合物を吸着する活性を失う程度は大きくなる傾向がある。
3)活性炭はタバコ煙(つまり固相エアロゾル)に晒された後で強い匂いを備えている。匂いの強さは使用した紙巻きタバコの数に応じて強くなる。
【0130】
様々な課題を解決し技術を発展させることを目的として、図示を含むこの開示全体は、請求項に係る発明を実施して優れたろ過媒体を提供し得る種々の実施態様を示している。この開示の利点および特徴は、実施態様という典型的な例を示すことのみであって、包括的および/または排他的ではない。それらは理解を助けるため、および請求された原理を教示するためだけに提出される。当然のことながら、開示の利点、実施態様、例示、機能、特徴、構造および/または他の側面は請求項または請求項の均等物の限定によって定義されるように、開示されたものに限定されず、また開示の範囲および/またはその意図から外れない限り他の実施態様を利用しても良く、変更を加えてもよい。種々の実施態様は、説明した要素、成分、特徴、部品、工程、手法などの種々の組み合わせを適宜含んでもよいし、それらのみから構成されてもよいし、またはそれらを主に構成されてもよい。加えて、この開示は現在請求していないが将来請求し得る他の発明を含んでいる。
【手続補正書】
【提出日】2015年12月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が20nmより小さい細孔を備え、その外表面において添加剤粒子を担持する多孔性担体材料を含む吸着材であって、前記添加剤粒子は添加剤を含み、その直径は20nmより大きい吸着材。
【請求項2】
多孔性担体材料の外表面の約10%以上が添加剤粒子によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の吸着材。
【請求項3】
多孔性担体材料は活性炭、シリカ、ゼオライト、セピオライトおよび/または粘土剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の吸着材。
【請求項4】
多孔性担体材料の細孔の約10%以上が気相から化合物を吸着するために使用できることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項5】
添加剤は揮発性材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項6】
添加剤は風味料および/またはアロマであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項7】
風味料および/またはアロマは、ビャクダン、ユーカリ、アニス、ヒマラヤスギなどの植物性化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の吸着材。
【請求項8】
添加剤粒子は、添加剤が蒸気として放出される前に添加剤を安定化および/または貯蔵するための材料を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吸着材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材を含む喫煙品フィルターエレメント。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材または請求項9に記載の喫煙品フィルターエレメントを含む喫煙品。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸着材の調製方法であって、直径が20nmより小さい細孔を備える多孔性担体材料を供給する工程と直径が20nmより大きい添加剤粒子を前記多孔性担体材料の外表面に堆積する工程とを含む方法。
【請求項12】
エアロゾルの液相および/または固相から添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させることを特徴とする請求項11に記載の吸着材の調製方法。
【請求項13】
密閉チェンバー内において添加剤粒子を多孔性担体材料の外表面に堆積させることを特徴とする請求項11または12に記載の吸着材の調製方法。
【国際調査報告】