特表2017-502699(P2017-502699A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-502699MIRNA比率を使用する肺がん決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502699(P2017-502699A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】MIRNA比率を使用する肺がん決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170105BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2016-562064(P2016-562064)
(86)(22)【出願日】2014年12月31日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2014079499
(87)【国際公開番号】WO2015101653
(87)【国際公開日】20150709
(31)【優先権主張番号】61/923,758
(32)【優先日】2014年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/926,323
(32)【優先日】2014年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516200529
【氏名又は名称】バイオマーナ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソッツィ, ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】ボエリ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】パストリーノ, ウーゴ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045DA14
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、対象における肺腫瘍の存在を決定する方法を提供する。対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定する方法も提供される。さらに、対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法が提供される。対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法がさらに提供される。対象において肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクを予測するための方法も提供される。肺がん処置の選択肢を確立する方法がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における肺腫瘍の存在を決定する方法であって、
(a)前記対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの前記発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超える場合には、前記比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超えない場合には、前記比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも9種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
前記miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍の存在を、(i)前記miRNA対の発現比率のうちの少なくとも9種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、および320/660、またはその逆の比率を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記miRNA対が、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記miRNA対が、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660、またはその逆の比率をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定する方法であって、
(a)前記対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの前記発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超える場合には、前記比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超えない場合には、前記比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
前記miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍の存在を、(i)前記miRNA対の発現比率のうちの少なくとも14種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む方法。
【請求項6】
前記miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、および320/660、またはその逆の比率を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記miRNA対が、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、もしくは28−3p/486−5p、またはその逆の比率をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記miRNA対が、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、もしくは28−3p/486−5p、またはその逆の比率をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法であって、
(a)前記対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの前記発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超える場合には、前記比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超えない場合には、前記比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、10種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
前記miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、もしくは28−3p/451、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)10種未満のmiRNAの発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、および28−3p/451、またはその逆の比率を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記miRNA対が、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、もしくは320/660、またはその逆の比率をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記miRNA対が、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、および320/660、またはその逆の比率をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法であって、
(a)前記対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの前記発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超える場合には、前記比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)における前記miRNA対の前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超えない場合には、前記比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
前記miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、および28−3p/660、またはその逆の比率を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記miRNA対が、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、もしくは320/92a、またはその逆の比率をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記miRNA対が、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、および320/92a、またはその逆の比率をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
対象において肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクを予測するための方法であって、
(a)請求項1に記載の肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(b)請求項5に記載の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(c)請求項9に記載の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(d)請求項13に記載の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(e)ステップ(a)〜(d)の前記シグネチャーのいずれも陽性にカテゴリー化されない場合に、前記対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが低いとしてカテゴリー化するステップと、
(f)少なくともステップ(a)の肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(c)の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性であり、かつステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーとステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーがどちらも陰性である場合に、前記対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが中間であるとしてカテゴリー化するステップと、
(g)少なくともステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、またはステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性である場合に、前記対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが高いとしてカテゴリー化するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記カットオフ値を、前記複数の対照試料からの比率の平均値として決定する、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記カットオフ値を、前記複数の対照試料からの比率の平均値+/−1標準偏差として決定する、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記カットオフ値を、複数の対照試料からの比率の中央値として決定する、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記miRNA対の発現比率を、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して各miRNA対内の各miRNAのcDNAコピーを作製することによって決定する、請求項1、5、9または13に記載の方法。
【請求項22】
前記発現比率を、リアルタイムPCRを使用してさらに決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記発現比率を、TaqManプローブを使用してさらに決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料が、生体液である、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記生体液が、尿、血液、血漿または血清である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記生体液が、血漿または血清である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記生体試料における溶血を決定し、検出可能な溶血が存在する場合には前記試料を前記方法に供さない、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
溶血を分光光度法で決定する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
溶血を、溶血した試料中で上方制御される溶血関連miRNAの発現レベルを分析することによって決定する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記溶血関連miRNAが、miRNA、miR−451、miR−486−5p、miR−16、miR−92aまたはmiR−140−3pのうちの複数を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶血関連miRNAが、miR−451、miR−486−5p、miR−16、およびmiR−92aである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記溶血関連miRNAの発現レベルを正規化するために、溶血した試料中で上方制御されない複数の正規化用miRNAの発現レベルを決定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記正規化用miRNAが、miR−126、miR−15b、miR−221およびmiR−30bを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
溶血を、
(a)前記試料中のmiR−126、miR−15b、miR−221およびmiR−30bのそれぞれと対になったmiR−451、miR−486−5p、miR−16、およびmiR−92aのそれぞれからなる16種のmiRNA対のそれぞれの発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの前記16種の発現比率のそれぞれを、各発現比率について複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)前記16種のmiRNA対のそれぞれについて、ステップ(a)における前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超える場合には、前記比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)における前記発現比率がステップ(b)における前記カットオフ値を超えない場合には、前記比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)前記試料を、(i)前記16種の比率のうち8種またはそれ超が前記カットオフ値を超える場合には溶血を有するとして、または(ii)前記16種の比率のうち8種未満が前記カットオフ値を超える場合には溶血を有さないとしてカテゴリー化するステップと
によってさらに決定する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
溶血を分光光度法でも決定する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
miRNA発現分析の前に、またはそれと同時に、前記対象を、miRNA発現の分析を含まないシステムを使用して肺がんについてスクリーニングするステップをさらに含む、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記システムが、血液検査、X線、コンピュータ断層撮影法、陽電子放出断層撮影法、胸腔穿刺、気管支鏡検査、細針吸引、胸腔鏡検査、開胸術、縦隔鏡検査を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記システムが、低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象由来の少なくとも2種の異なる生体試料に対して実施する、請求項1、5、9または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも2種の異なる生体試料のうちの少なくとも1種が、前記対象が肺がんに対する処置を受けた後に前記対象から取得される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
存在またはリスクが陰性であることが決定された場合、またはリスクが低いことが決定された場合、前記対象に肺がんに対する処置を行わない、請求項1、5、9、13または17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
存在またはリスクが陽性であることが決定された場合、またはリスクが中間であるまたは高いことが決定された場合、前記対象に肺がんに対する処置を行う、請求項1、5、9、13または17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
対象に対する肺がん処置の選択肢を確立する方法であって、請求項1、5、9、13または17のいずれか一項に記載の方法を使用して前記対象を検査するステップと、前記方法の結果に従って処置の選択肢を決定するステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年1月5日に出願された米国仮出願第61/923,758号および2014年1月12日に出願された米国仮出願第61/926,323号に対する優先権および利益を主張し、その両方の全体が参考として本願明細書に援用される。
【0002】
本出願は、一般に、肺がんのリスクの診断および決定に関する。より詳細には、本出願は、肺腫瘍または侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定するため、および肺腫瘍または侵襲性肺腫瘍の存在を決定するための、miRNAの発現比率の使用を対象とする。
【背景技術】
【0003】
肺がんは、世界的に、がんによる死亡の主な原因である(Jemalら、CA Cancer J Clin、61巻:69〜9頁、2011年)。現在、肺がんの大多数は処置の有効性が限られ、生存率が低い進行期に検出されている。肺がんを早い段階で検出することにより、死亡率が有意に低下する可能性がある。
観察に基づく対照アーム(arm)を伴うが、サイズが限定されたヨーロッパのランダム化肺がんスクリーニング試験では、死亡率の低下はこれまでに実証されていないが(Infanteら、Am J Respir Crit Care Med 180巻:445〜453頁、2009年;Saghirら、Thorax 67巻:296〜301頁、2012年;Pastorinoら、Eur J Cancer Prev 21巻:308〜315頁、2012年)、大規模なNCI−sponsored National Lung Screening Trial(NSLT)では、30パックイヤー以上かつ喫煙をやめてから15年以下の履歴を有する、高リスクの個体の低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)スクリーニングを用いて、年1回の胸部X線撮影法と比較して死亡率の20%の低下が示された(Aberleら、N Engl J Med 365巻:395〜409頁、2011年)。偽陽性率が高いこと、多数の高リスクの個体をスクリーニングする費用(USでは推定3.5百万ドル)、およびLDCTスクリーニングに付随する潜在的な害が臨床の場では依然として考慮すべき事項になっている(Aberleら、2011年;Goulartら、J Natl Compr Canc Netw 10巻:267〜275頁、2012年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jemalら、CA Cancer J Clin、61巻:69〜9頁、2011年
【非特許文献2】Infanteら、Am J Respir Crit Care Med 180巻:445〜453頁、2009年
【非特許文献3】Saghirら、Thorax 67巻:296〜301頁、2012年
【非特許文献4】Pastorinoら、Eur J Cancer Prev 21巻:308〜315頁、2012年
【非特許文献5】Aberleら、N Engl J Med 365巻:395〜409頁、2011年
【非特許文献6】Goulartら、J Natl Compr Canc Netw 10巻:267〜275頁、2012年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、肺がんの予測、予後判定および診断を改善するための追加的な方法体系が必要とされている。本発明は、その必要性に対処するものである。
【0006】
本発明は、一部において、全体的な「肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスク」アッセイのための3レベルの分類子をもたらすために、アッセイ方法に循環miRNAバイオマーカーを利用することができるという発見に基づく。
【0007】
したがって、一部の実施形態では、対象における肺腫瘍の存在を決定する方法が提供される。方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも9種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも9種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0008】
別の実施形態によると、対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定する方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも14種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0009】
さらに別の実施形態によると、対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、10種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、もしくは28−3p/451、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)10種未満のmiRNAの発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0010】
他の実施形態によると、侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0011】
他の実施形態では、対象において肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクを予測するための方法は、
(a)上記の肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(b)上記の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(c)上記の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(d)上記の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(e)ステップ(a)〜(d)のシグネチャーのいずれも陽性にカテゴリー化されない場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが低いとしてカテゴリー化するステップと、
(f)少なくともステップ(a)の肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(c)の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性であり、かつ、ステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーとステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーがどちらも陰性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが中間であるとしてカテゴリー化するステップと、
(g)少なくともステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、またはステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが高いとしてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0012】
対象に対する処置の選択肢を確立する方法がさらに提供される。方法は、上記の方法のいずれかを使用して対象を検査するステップと、当該方法の結果に従って処置の選択肢を決定するステップとを含む。方法は、そのような処置を必要とする対象に対して処置を施行するステップをさらに含んでよい。
【0013】
本開示は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本開示の範囲を例示するものであり、限定するものではない。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0014】
本明細書で言及される特許および科学文献は、当業者が利用可能な知見を確立するものである。本明細書において引用されている米国特許および公開されたまたは公開されていない米国特許出願は全て、参照により組み込まれる。本明細書において引用されている公開された外国特許および特許出願は全て、これによって参照により組み込まれる。本明細書において引用されている受託番号によって示されるGenbankおよびNCBIへの寄託は、これによって参照により組み込まれる。本明細書において引用されている他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は全て、これによって参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1、The Multicentric Italian Lung Detection(MILD)study、2005〜2012年におけるSample Consortの特性を記載する図である。
【0016】
図2図2は、全対象間の miRNAシグネチャー分類子(MSC)に応じた血液試料採取の日からの3年生存を示すグラフおよび表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態によると、本発明は、多数のmiRNA発現レベルの比率を利用して、(a)肺腫瘍が顕在化するリスク、(b)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスク、(c)肺腫瘍の存在、(d)侵襲性腫瘍の存在を決定するものであり、ステップ(a)〜(d)において検出されたリスクを組み合わせると、肺腫瘍を有するまたはそれが発症する総合的なリスクが決定される。
【0018】
本発明は、検出可能なレベルの溶血を有する試料を、例えば、miRNA溶血分類子を使用すること;2レベル(低、高)の分類子の代わりに3レベル(低、中間または高)の「疾患のリスク」分類子を使用すること;またはプールの代わりに単一の対象由来の対照血漿試料を使用することを含めることによって取り除くことを含み得る。対照プール内の変動性が高いことが原因で以前のアッセイの検証ステップでは排除されていた3種のmiRNAは、miR−101、miR−145およびmiR−133aを含めることができる。
【0019】
本発明の例示的な方法によると、「マイクロRNAシグネチャー分類子」(MSC)によりもたらされるスクリーニング感度は、MSC単独では87%、低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)スクリーニングと組み合わせると98%である。したがって、MSCは別々で使用することもでき、LDCTなどの他の方法と相乗的な手法において組み合わせて使用して、対象の大部分におけるLDCTのさらなるラウンドおよび不必要な浸潤性の診断的経過観察を回避することによって肺がんスクリーニングに関するLDCTの効果を改善することもできる。本出願において詳述されている通り、MSC単独での予後判定能および診断能により、腫瘍の病期とは無関係に、MSC内で測定されたmiRNAは、単に腫瘍負荷量のアウトプットではなく、腫瘍の攻撃性に関連する病原の指標であることが実証される。
【0020】
MSCの開発は、肺がん検出および予後不良との関連に関して最適なmiRNA比率のセットを選択するために、100種の異なる血漿miRNAの4,950種の比率をスクリーニングする偏りのないコンピュータによる手法に基づくものであった(Boeriら、Proc Natl Acad Sci USA 108巻:3713〜3718頁、2011年)。これらのmiRNA比率は、腫瘍の異なる細胞成分および周囲の微小環境内のmiRNAの競合するmiRNA調節の機構間の調節を反映する可能性がある。いかなる特定の理論にも縛られることなく、間質細胞は、肺微小環境の炎症、悪性形質転換に関連する標的遺伝子の調節に機能的に関与し得る、特定のmiRNAの循環中への放出によって活性化し得る。
【0021】
MSCでは、血漿由来のmiRNAシグネチャーのロバストなアッセイを利用する。MSCは、悪性疾患の存在、今後の悪性腫瘍のリスクに関する診断能および肺がんと大きな大多数の良性のLDCTにより検出される肺小結節とを区別する能力を有する。MSCで利用することができる特定のシグネチャーは、本明細書に詳述されている。
「肺腫瘍の存在」シグネチャー
【0022】
一部の実施形態では、対象における肺腫瘍の存在を決定する方法が提供される。方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも9種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも9種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0023】
一部の実施形態では、このアッセイのmiRNA対は、比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、10種超、11種超、12種超、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。
【0024】
他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率をさらに含んでよい。
【0025】
さらに他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、320/660、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660のうちの少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。これらの27種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、腫瘍の存在を正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0026】
一部の実施形態では、本発明は、対象における肺腫瘍の存在を決定することにおいて有用な診断用試薬の製造における、27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブの使用であって、検出は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも9種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも9種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む、使用を提供する。
【0027】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、10種超、11種超、12種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0028】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0029】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、320/660、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660のうちの少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。これらの27種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、腫瘍の存在を正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0030】
一部の実施形態では、複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、320/660、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660のうちの少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
【0031】
一部の実施形態では、本発明は、対象における肺腫瘍の存在を決定するためのキットを提供する。キットは、診断用試薬の製造において27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブ、および複数のプライマーまたはプローブを利用して対象における肺腫瘍の存在を決定するための説明書を含む。説明書は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも9種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも9種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)9種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0032】
一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、10種超、11種超、12種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0033】
他の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0034】
さらに他の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、320/660、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660のうちの少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0035】
一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、320/660、106a/660、106a/92a、126/660、140−5p/197、140−5p/28−3p、142−3p/145、142−3p/197、142−3p/28−3p、17/660、17/92a、197/660、197/92a、19b/660、および28−3p/660のうちの少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
「侵襲性肺腫瘍の存在」シグネチャー
【0036】
他の実施形態では、対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定する方法が提供される。方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも14種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0037】
一部の実施形態では、このアッセイのmiRNA対は、比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。
【0038】
他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、もしくは28−3p/486−5p、またはその逆の比率をさらに含んでよい。
【0039】
さらに他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、320/660、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、または28−3p/486−5pのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。これらの28種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、侵襲性腫瘍の存在を正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定することにおいて有用な診断用試薬の製造における、28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブの使用であって、検出は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも14種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む、使用を提供する。
【0041】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0042】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、もしくは28−3p/486−5p、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0043】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、320/660、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、または28−3p/486−5pのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。これらの28種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、侵襲性腫瘍の存在を正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0044】
一部の実施形態では、複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、320/660、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、または28−3p/486−5pのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
【0045】
他の実施形態では、本発明は、対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定するためのキットを提供する。キットは、診断用試薬の製造において28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブ、および複数のプライマーまたはプローブを利用して対象における侵襲性肺腫瘍の存在を決定するための説明書を含む。説明書は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、もしくは320/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍の存在を、(i)miRNA対の発現比率のうちの少なくとも14種が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0046】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、および320/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0047】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、もしくは28−3p/486−5p、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0048】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、320/660、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、または28−3p/486−5pのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0049】
一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率106a/16、106/660、16/17、16/320、17/660、197/30b、197/30c、320/451、320/486−5p、320/660、106a/451、106a/486−5p、126/451、126/486−5p、126/660、140−5p/197、16/197、17/451、17/486−5p、197/451、197/486−5p、197/660、197/92a、19b/451、19b/486−5p、19b/660、28−3p/451、または28−3p/486−5pのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
【0050】
上記の2つの診断シグネチャー(「肺腫瘍の存在」および「侵襲性肺腫瘍の存在」)と共に、2つの予後判定シグネチャー、「肺腫瘍が顕在化するリスク」シグネチャー、および「侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスク」シグネチャーが提供される。これらの予後判定シグネチャーは、試料を取得した後の任意の期間内、例えば、3カ月、6カ月、12カ月、18カ月、24カ月、36カ月、またはこれらの期間外またはこれらの期間の間の任意の時間にリスクを決定するために利用することができる。
「肺腫瘍が顕在化するリスク」シグネチャー
【0051】
したがって、さらなる実施形態では、対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法が提供される。方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、10種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、もしくは28−3p/451、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)10種未満のmiRNAの発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0052】
一部の実施形態では、このアッセイのmiRNA対は、比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、および28−3p/451、またはその逆の比率のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、または各々を含む。
【0053】
他の実施形態では、miRNA対は、比率101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、もしくは320/660、またはその逆の比率をさらに含んでよい。
【0054】
さらに他の実施形態では、miRNA対は、比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、28−3p/451、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、または320/660のうちの少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。これらの27種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、肺腫瘍が顕在化するリスクを正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0055】
一部の実施形態では、本発明は、対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定することにおいて有用な診断用または予後判定用試薬の製造における、27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブの使用であって、検出は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、10種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、もしくは28−3p/451、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)10種未満のmiRNAの発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む、使用を提供する。
【0056】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、および28−3p/451のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0057】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、もしくは320/660、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0058】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、28−3p/451、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、または320/660のうちの少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。これらの27種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、肺腫瘍が顕在化するリスクを正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0059】
一部の実施形態では、複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、28−3p/451、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、または320/660のうちの少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
【0060】
他の実施形態では、本発明は、対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定するためのキットを提供する。キットは、診断用または予後判定用試薬の製造において27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブ、および、複数のプライマーまたはプローブを利用して対象における肺腫瘍が顕在化するリスクを決定するための説明書を含む。説明書は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)27種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、10種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、もしくは28−3p/451、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも10種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)10種未満のmiRNAの発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0061】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、および28−3p/451のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0062】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、もしくは320/660、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0063】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、28−3p/451、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、または320/660のうちの少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0064】
一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率133a/92a、15b/21、15b/30b、15b/30c、16/197、28−3p/451、101/140−3p、106a/451、106a/660、106a/92a、126/660、133a/451、133a/660、140−3p/660、142−3p/15b、15b/451、15b/660、17/451、17/660、17/92a、197/19b、197/451、197/660、197/92a、19b/660、28−3p/660、または320/660のうちの少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
「侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスク」シグネチャー
【0065】
対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定する方法も本発明で提供される。方法は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0066】
一部の実施形態では、このアッセイのmiRNA対は、比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、および28−3p/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。
【0067】
他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、もしくは320/92a、またはその逆の比率をさらに含んでよい。
【0068】
さらに他の実施形態では、miRNA対は、比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、28−3p/660、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、および320/92aのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を含む。これらの28種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、侵襲性腫瘍が顕在化するリスクを正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0069】
一部の実施形態では、本発明は、対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定することにおいて有用な診断用または予後判定用試薬の製造における、28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブの使用であって、検出は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む、使用を提供する。
【0070】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、および28−3p/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0071】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、もしくは320/92a、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0072】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、28−3p/660、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、および320/92aのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。これらの28種の比率のうちの全てではないがいくつかを利用することにより、侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを正確に同定するアッセイがもたらされることが予測されることが当業者には理解されよう。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定するためのキットを提供する。キットは、診断用または予後判定用試薬の製造において28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブ、および、複数のプライマーまたはプローブを利用して対象における侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを決定するための説明書を含む。説明書は、
(a)対象由来の生体試料におけるmiRNA対の発現比率を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの発現比率を複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)ステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)におけるmiRNA対の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)(1)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで、または(2)28種のmiRNA対の発現比率を比較した後に、14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられるまで追加的なmiRNA対に対してステップ(a)〜(c)を繰り返すステップであって、
miRNA対が、106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、もしくは28−3p/660、またはその逆の比率を含むステップと、
(e)侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクを、(i)少なくとも14種のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陽性として、または(ii)14種未満のmiRNA対の発現比率が陽性スコアに割り当てられた場合には陰性としてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0074】
一部の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、および28−3p/660のうちの2種超、3種超、4種超、5種超、6種超、7種超、8種超、9種超、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0075】
他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、さらに、miRNA対の発現比率106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、もしくは320/92a、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0076】
さらに他の実施形態では、複数のプライマーまたはプローブは、miRNA対の発現比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、28−3p/660、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、および320/92aのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、もしくは各々、またはその逆の比率を検出するために有用である。
【0077】
一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものである。一部の実施形態では、このキットで提供される複数のプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の発現比率106a/142−3p、126/142−3p、126/21、126/92a、142−3p/17、142−3p/197、142−3p/28−3p、197/19b、197/660、28−3p/660、106a/451、126/451、145/197、17/451、197/21、197/30b、197/30c、197/451、197/92a、19b/451、21/221、21/28−3p、28−3p/30b、28−3p/30c、28−3p/451、28−3p/92a、320/451、および320/92aのうちの少なくとも14種、少なくとも15種、少なくとも16種、少なくとも17種、少なくとも18種、少なくとも19種、少なくとも20種、少なくとも21種、少なくとも22種、少なくとも23種、少なくとも24種、少なくとも25種、少なくとも26種、少なくとも27種、または各々のうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含む。
「肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスク」分類子
【0078】
上記の4つの方法を組み合わせて、対象において肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクを予測するための方法にすることができる。その方法は、
(a)上記の肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(b)上記の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定するステップと、
(c)上記の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(d)上記の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定するステップと、
(e)ステップ(a)〜(d)のシグネチャーのいずれも陽性にカテゴリー化されない場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが低いとしてカテゴリー化するステップと、
(f)少なくともステップ(a)の肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(c)の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性であり、かつ、ステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーとステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーがどちらも陰性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが中間であるとしてカテゴリー化するステップと、
(g)少なくともステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが高いとしてカテゴリー化するステップと
を含む。
【0079】
上記の4つの使用を組み合わせて、対象において肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクを予測するための使用にすることができる。その使用は、
(a)上記の肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定することにおいて有用な診断用試薬の製造において、27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブを使用するステップと、
(b)上記の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーを決定することにおいて有用な診断用試薬の製造において28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブを使用するステップと、
(c)上記の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定することにおいて有用な診断用または予後判定用試薬の製造において27種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブを使用するステップと、
(d)上記の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーを決定することにおいて有用な診断用または予後判定用試薬の製造において28種のmiRNA対のいずれかを検出するために有用な複数のプライマーまたはプローブを使用するステップと、
(e)ステップ(a)〜(d)のシグネチャーのいずれも陽性にカテゴリー化されない場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが低いとしてカテゴリー化するステップと、
(f)少なくともステップ(a)の肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(c)の肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性であり、かつ、ステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーとステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーがどちらも陰性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが中間であるとしてカテゴリー化するステップと、
(g)少なくともステップ(b)の侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャーが陽性であるか、ステップ(d)の侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャーが陽性である場合に、対象を、肺腫瘍が発症するまたはそれを有するリスクが高いとしてカテゴリー化するステップと、
を含む。
【0080】
A.定義
「肺腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、良性肺腫瘍または悪性肺腫瘍のいずれかであり得る。肺腫瘍は、1つまたは複数の肺の状態と関連するものであってよく、また、例えば肺小結節または肺腫瘤の形態をとるものであってよい。
【0081】
「肺の状態」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば肺がんおよび種々の非がん性の状態を含めた、肺に関する疾患、事象、または健康状態の変化を指す。非がん性の肺の状態の例としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、良性肺腫瘍または細胞(例えば、過誤腫、線維腫、神経線維腫)の腫瘤、肉芽腫、サルコイドーシス、および細菌病原体によって引き起こされる感染(例えば、結核)または真菌病原体によって引き起こされる感染(例えば、ヒストプラスマ症)が挙げられる。ある特定の実施形態では、肺の状態は、X線検査による肺小結節の出現を伴う。
【0082】
上記の方法は、任意の特定の肺がんの診断および/または予後判定を狭く限定するものではない。本明細書で使用される場合、「肺がん」とは、肺のがんを指すことが好ましいが、ヒトまたは他の哺乳動物の呼吸器系の任意の疾患または他の障害を含み得る。呼吸器の新生物疾患としては、例えば、小細胞細胞腫もしくは小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞癌もしくは非小細胞肺がん(NSCLC)、扁平上皮癌(SCC)、腺癌、気管支肺胞癌(BAC)、混合肺癌、悪性胸膜中皮腫、未分化大細胞癌、巨細胞癌、同時期性腫瘍(synchronous tumor)、大細胞神経内分泌癌、腺扁平上皮癌、未分化癌;ならびに、燕麦細胞がん、混合型小細胞/大細胞癌(LC)、大細胞癌、および複合型小細胞細胞腫を含めた小細胞細胞腫;ならびに、腺様嚢胞癌、過誤腫、粘液類上皮腫、定型カルチノイド肺腫瘍、非定型カルチノイド肺腫瘍、末梢カルチノイド肺腫瘍、中枢カルチノイド肺腫瘍、胸膜中皮腫、未分化肺癌および体の他の部分から肺に転移した二次がんなどの、肺の外側に由来するがん、または、現在公知であるまたは後に発見される任意の他の肺がんが挙げられる。肺がんは、任意の病期またはグレードのものであってよい。
【0083】
「対象由来の生体試料」という用語は、本明細書で使用される場合、喫煙者、非喫煙者、元喫煙者、がん患者(例えば、処置後のがんの再発を診断および/またはモニタリングするため)、元がん患者などを含めた任意の対象由来の試料を指す。特定の実施形態では、生体試料の起源は、画像診断法に供しても試料採取時に肺腫瘍が示されない喫煙個体、特に、スパイラルCTスキャンに供しても5mmを超える寸法の小結節が示されない喫煙個体である。
【0084】
「生体試料」という用語は、本明細書で使用される場合、対象におけるmiRNAプロファイルの正確な測定をもたらす任意の組織であり得る。一部の実施形態では、生体試料は、生体液である。miRNAは基本的に全ての体液中に存在するので、これらの実施形態は任意の特定の体液に狭く限定されない(Weberら、The microRNA spectrum in 12 body fluids、Clin Chem 56巻:1733〜1741頁、2010年;De Guireら、Clin Biochem 46巻:846〜860頁、2013年;Rodriguez−Dorantesら、Meth Mol Biol 1165巻:81〜87頁、2014年も参照されたい)。有用な体液の例は、末梢血、血清、血漿、復水、尿、痰、唾液、気管支肺胞(broncheoalveolar)洗浄液、嚢胞液、胸膜液、腹腔液、リンパ液、膿、洞腔(sinus cavity)からの洗浄液、気管支肺吸引液、および骨髄穿刺液である。当業者は、過度な実験を伴わずに、任意の特定の体液が任意の特定の適用に対して有用であるかどうかを決定することができる。一部の実施形態では、体液は、血漿または血清である。一部の実施形態では、生体試料は、組織試料である。
【0085】
本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」とは、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、複数の形態も含むものとする。さらに、「または(or)」の使用は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、「および/または(and/or)」を含むものとする。
【0086】
本明細書で使用される場合、「個体」、「対象」、「患者」または「それを必要とする対象」とは、腫瘍もしくは侵襲性腫瘍が発症するリスクを有する個体、または腫瘍もしくは侵襲性腫瘍を有する可能性があるもしくはそれを患っている可能性があるもしくはそれを有すると診断された個体である。これらの用語は、互換的に利用することができる。個体は、哺乳動物であることが好ましい。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、鳥類、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであってよい。哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0087】
本明細書で使用される場合、複数のプライマーまたはプローブ内の「プライマー」または「プローブ」は、核酸分子である。プライマーまたはプローブは、DNA、RNA、またはcDNAであってよい。プライマーまたはプローブは天然に存在するものであっても合成されたものであってもよい。プライマーまたはプローブは、少なくとも5核酸、少なくとも10核酸、少なくとも15核酸、少なくとも20核酸、少なくとも25核酸、少なくとも50核酸、少なくとも75核酸、少なくとも100核酸の長さであってよい。複数のプライマーおよびプローブ内の少なくとも1つのプライマーまたはプローブは、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なものであることが好ましい。複数のプライマーまたはプローブは、試料中の全てのmiRNA対発現割り当てのうちの少なくとも1つのmiRNAに選択的に結合することが可能なプライマーまたはプローブを少なくとも1つ含むことが好ましい。「選択的に結合する」という用語は、プライマーまたはプローブが、試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAとの結合に対する親和性が高いことまたは試料中のmiRNA対の少なくとも1つのmiRNAとの結合に対する親和性が他のあらゆるmiRNAと比較して高いことを意味する。「プライマー」という用語は、当該核酸分子が、DNA合成の開始点としての機能を果たすことが可能なものであることを意味する。すなわち、DNAポリメラーゼがプライマーの3’末端から複製を開始することが可能である。
【0088】
上記の方法のいずれかについて「miRNA対の発現比率」という用語は、本明細書で使用される場合、2種の特定のmiRNAの発現レベルの比率である。本明細書に記載の任意の方法において明記されているmiRNA対のいずれかの比率は、明記されているものの逆の比率として算出できることが理解されるべきである。非限定的な例として、特定の方法に関してmiRNA対が「106a/140−5p、106a/142−3p、126/140−5p、126/142−3p、133a/142−3p、140−5p/17、142−3p/148a、142−3p/15b、142−3p/17、142−3p/21、142−3p/221、142−3p/30b、および320/660、またはその逆の比率」である場合、これらのmiRNA対のうちの任意の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種または13種の発現比率は、逆の比率として算出することができ、その場合、カットオフ値を適宜調整する。
【0089】
「カットオフ値」という用語は、本明細書で使用される場合、負の数または正の数であり得る。いくつかの比率を用いると、「カットオフ値を超える」発現比率は、大きさがカットオフ値よりも小さい値である。他の比率を用いると、「カットオフ値を超える」発現比率は、大きさがカットオフ値よりも大きい値である。例えば、表9を参照されたい。表9では、「>」は、大きさがカットオフ値よりも大きい数がカットオフを超える比率を示すことを示し、「<」は、大きさがカットオフ値よりも小さい数がカットオフ値を超える比率を示すことを示す。
【0090】
この「カットオフ値を超える」の定義の下では、(i)比率133a/92aについての−4.50の値は、表9に列挙されている−4.18のカットオフ値を超え、(ii)比率17/451についての3.50の値は、表9に列挙されている3.33のカットオフ値を超え、(iii)比率142−3p/17についての−1.80の値は、表9に列挙されている−1.95のカットオフ値を超え、(iv)比率16/197についての4.50の値は、表9に列挙されている5.00のカットオフ値を超える。
【0091】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、任意の特定のmiRNA対の発現比率についてのカットオフ値は、複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定される。「複数の対照試料」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の定義済みの集団、例えば、いかなるがんの病歴も有さない健康な対象、肺がんの病歴を有さない健康な対象、肺がんを有する対象、喫煙したことのない対象、喫煙していたがもう喫煙しない対象などに由来するものであってよい。好ましい実施形態では、複数の対照試料は健康な対象に由来し、カットオフ値は、複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率である。これらの実施形態の一部では、「平均」という用語は、本明細書で使用される場合、平均値または中央値であり得る。他の実施形態では、カットオフは、平均+/−1標準偏差、または任意のより小さなまたはより大きな割合の標準偏差、例えば、+/−1/2標準偏差、+/−3/4標準偏差、+/−1.5標準偏差、+/−2標準偏差、または任意のより大きな、より小さな、または中間の割合の標準偏差である。
【0092】
カットオフ値は、任意の対照集団由来の任意の複数の対照試料について、公知の方法を使用することによって、例えば、実施例に記載の通り訓練セットを使用することによって、過度な実験を伴わずに決定することができる。カットオフは、所望の感度(SE)、特異性(SP)、陽性的中率(PPV)および陰性的中率(NPV)が実現されるように確立する。
【0093】
これらの診断方法(腫瘍の存在;侵襲性腫瘍の存在)および予後判定方法(腫瘍が顕在化するリスク;侵襲性腫瘍が顕在化するリスク)を評価するために、臨床の場ではカテゴリー化によって検査の結果を解釈する。方法の診断値または予後判定値は、そのSE、SP、PPVおよびNPVによって定義することができる。任意の検査方法により、真陽性(TP)、偽陰性(FN)、偽陽性(FP)、および真陰性(TN)が生じる。検査の「感度」は、疾患が存在するもしくは応答する、検査陽性の患者全ての百分率または(TP/TP+FN)×100%である。検査の「特異度」は、疾患を有さないもしくは応答しない、検査陰性の患者全ての百分率または(TN/FP+TN)×100%である。検査の「的中率」または「PV」は、値(陽性または陰性)が真の値である回数の尺度(%)であり、すなわち、真陽性である全ての検査陽性のパーセントが陽性的中率(PV+)または(TP/TP+FP)×100%である。「陰性的中率」(PV)は、応答しない検査陰性の患者の百分率または(TN/FN+TN)×100%である。別の尺度である検査の「正確度」または「効率」は、検査の総数と比較した検査によって正確な答えがもたらされる回数の百分率または(TP+TN/TP+TN+FP+FN)×100%である。「誤差率」は、応答すると予測されたが応答しなかった患者および応答すると予測されなかったが応答した患者または(FP+FN/TP+TN+FP+FN)×100%から算出される。全体的な検査「特異度」は、集団における疾患変化の全体的な尤度、的中率が変化するにつれ検査の感度および特異度の正確度が変化しないことの尺度である。PVは、所与の患者における疾患の有無または臨床応答の有無に関する医師の臨床的評価に伴って変化する。
【0094】
任意の所与の検査に関して、TP、FN、FPおよびTNは、当業者が過度な実験を伴わずに、例えば、予後判定的または診断的な決定を行うためにカットオフ値を調整すること、統計的有意性(例えば、P値)を調整すること;検査手順の正確度を調整することなどによって決定し、調整することができる。
【0095】
B.方法
miRNAの発現レベルは、当技術分野で公知の任意の手段によって決定することができる。一部の実施形態では、発現レベルを、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して各miRNA対内の各miRNAのcDNAコピーを作製することによって決定する。種々の実施形態では、発現比率を、リアルタイムPCRを使用してさらに決定する。これらの方法の特定の実施形態では、発現比率を、TaqManプローブを使用してさらに決定する。しかし、方法は、これらの実施形態に限定されず、miRNA発現レベルを決定するための、現在公知であるまたは後に発見される任意の適切な方法を使用して実施することができる。
【0096】
本発明の方法の一部の実施形態では、miRNAを測定する前に増幅する。他の実施形態では、これらの核酸のレベルを増幅プロセス中に測定する。さらに他の方法では、核酸を測定する前に増幅しない。
【0097】
成熟miRNA、前駆体miRNA、および一次miRNAなどのmiRNAの核酸配列を増幅するための多くの方法が存在する。適切な核酸の重合技法および増幅技法としては、逆転写(RT)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR(定量的PCR(q−PCR))、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応、多重ライゲーション可能プローブ増幅(multiplex ligateable probe amplification)、インベーダー技術(invader technology)(Third Wave)、ローリングサークル増幅、in vitro転写(IVT)、鎖置換増幅、転写媒介性増幅(TMA)、RNA(Eberwine)増幅、および当業者に公知の他の方法が挙げられる。ある特定の実施形態では、例えば、逆転写、その後にリアルタイム定量的PCR(qRT−PCR)など、1つ超の増幅方法を使用する。PCR法およびq−PCR法では、例えば、各標的配列に対してプライマーのセットを使用する。ある特定の実施形態では、プライマーの長さは、これだけに限定されないが、プライマー間の望ましいハイブリダイゼーション温度、標的核酸配列、および増幅される種々の標的核酸配列の複雑さを含めた多くの因子に左右される。ある特定の実施形態では、プライマーは、約15〜約35ヌクレオチドの長さである。他の実施形態では、プライマーは、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、または35ヌクレオチドと等しいまたはそれ未満の長さである。追加的な実施形態では、プライマーは少なくとも35ヌクレオチドの長さである。
【0098】
さらなる態様では、フォワードプライマーは、miRNAとアニーリングする配列を少なくとも1つ含んでよく、あるいは、追加的な5’非相補的領域を含んでよい。別の態様では、リバースプライマーは、逆転写されたmiRNAの相補体にアニーリングするように設計することができる。リバースプライマーは、miRNA配列とは独立したものであってよく、同じリバースプライマーを使用して多数のmiRNAバイオマーカーを増幅することができる。あるいは、リバースプライマーは、miRNAバイオマーカーに特異的なものであってもよい。
【0099】
qRT−PCR反応は、さらに、逆転写酵素とDNAに基づく熱安定性DNAポリメラーゼを両方含めることによって逆転写反応と組み合わせることができる。2種のポリメラーゼを使用する場合、アッセイの性能を最大にするために「ホットスタート」手法を使用することができる(米国特許第5,411,876号および同第5,985,619号)。例えば、重合効率を改善するために、逆転写酵素反応およびPCR反応の成分を、1つまたは複数の熱活性化法または化学的変質を使用して隔離することができる(米国特許第5,550,044号、同第5,413,924号、および同第6,403,341号)。
【0100】
ある特定の実施形態では、増幅されたmiRNAまたは増幅されなかったmiRNAを検出するために、標識、色素、または標識されたプローブおよび/またはプライマーを使用する。当業者には、どの検出方法が適切であるかが、検出方法の感度および標的の存在量に基づいて認識されよう。検出方法の感度および標的の存在量に応じて、検出の前に増幅が必要な場合もあり、必要でない場合もある。miRNAを増幅することが好ましい検出方法は当業者には認識されよう。
【0101】
プローブまたはプライマーは、ワトソンクリック塩基または修飾塩基を含んでよい。修飾塩基としては、これだけに限定されないが、例えば、米国特許第5,432,272号、同第5,965,364号、および同第6,001,983号に記載されている、AEGIS塩基(Eragen Biosciences)が挙げられる。ある特定の態様では、塩基は、天然のリン酸ジエステル結合または別の化学的連結によってつながっている。別の化学的連結としては、これだけに限定されないが、例えば、米国特許第7,060,809号に記載されているペプチド結合またはロックド核酸(LNA)連結が挙げられる。
【0102】
さらなる態様では、増幅反応において存在するオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、時間に応じて産生される増幅産物の量をモニタリングするのに適している。ある特定の態様では、二本鎖特性に対して異なる一本鎖特性を有するプローブを使用して核酸を検出する。プローブとしては、これだけに限定されないが、5’−エキソヌクレアーゼアッセイ(例えば、TaqMan(商標))プローブ(米国特許第5,538,848号を参照されたい)、ステムループ分子ビーコン(例えば、米国特許第6,103,476号および同第5,925,517号を参照されたい)、ステムレスまたは直鎖状ビーコン(例えば、WO9921881、米国特許第6,485,901号および同第6,649,349号を参照されたい)、ペプチド核酸(PNA)分子ビーコン(例えば、米国特許第6,355,421号および同第6,593,091号を参照されたい)、直鎖状PNAビーコン(例えば、米国特許第6,329,144号を参照されたい)、非FRETプローブ(例えば、米国特許第6,150,097号を参照されたい)、Sunrise(商標)/AmplifluorB(商標)プローブ(例えば、米国特許第6,548,250号を参照されたい)、ステムループおよび二重鎖Scorpion(商標)(例えば、米国特許第6,589,743号を参照されたい)、バルジループプローブ(例えば、米国特許第6,590,091号を参照されたい)、シュードノットプローブ(例えば、米国特許第6,548,250号を参照されたい)、サイクリコン(cyclicon)(例えば、米国特許第6,383,752号を参照されたい)、MGB Eclipse(商標)probe(Epoch Biosciences)、ヘアピンプローブ(例えば、米国特許第6,596,490号を参照されたい)、PNAライトアッププローブ(PNA light−up probe)、アンチプライマークエンチプローブ(antiprimer quench probe)(Liら、Clin. Chem. 53巻:624〜633頁(2006年))、自己組織化ナノ粒子プローブ、および、例えば米国特許第6,485,901号に記載されているフェロセン修飾されたプローブが挙げられる。
【0103】
ある特定の実施形態では、増幅反応におけるプライマーの1つまたは複数は、標識を含む。またさらなる実施形態では、異なるプローブまたはプライマーは、互いを区別することができる検出可能な標識を含む。一部の実施形態では、プローブまたはプライマーなどの核酸を2つまたはそれ超の区別することができる標識で標識することができる。
【0104】
一部の実施形態では、マイクロアレイまたは別の支持体を使用してmiRNAの濃度を測定する。
【0105】
「マイクロアレイ」は、それぞれが定義済みの領域を有し、例えば、これだけに限定されないが、ガラス、プラスチック、または合成膜などの固体支持体の表面上に形成された別個の領域の直線状または2次元または3次元の(および固相)アレイである。マイクロアレイ上の別個の領域の密度は、単一の固相支持体の表面上で検出される、固定化したポリヌクレオチドの総数によって決定され、例えば、少なくとも約50/cm、少なくとも約100/cm、または少なくとも約500/cm、約1,000/cmに至るまでまたはそれ超などである。アレイは、固定化したポリヌクレオチドを全部で約500未満、約1000未満、約1500未満、約2000未満、約2500未満、約3000未満、またはそれ超未満含有してよい。本明細書で使用される場合、DNAマイクロアレイは、試料から増幅またはクローニングされたポリヌクレオチドをハイブリダイズさせるために使用するチップまたは他の表面に配置されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブのアレイである。アレイ内のプローブの特定の群のそれぞれの位置は分かっているので、マイクロアレイ内の特定の位置への試料ポリヌクレオチドの結合に基づいて、試料ポリヌクレオチドの同一性を決定することができる。
【0106】
マイクロアレイの使用に対する代替として、miRNAの発現を検出するための2次元の1つまたは複数の位置の配置または3次元配置を含めた、支持体上の任意のサイズのアレイを本開示の実施において使用することができる。
【0107】
一部の態様では、標識を1つまたは複数のプローブに付着させ、標識は、以下の性質のうちの1つまたは複数を有する:(i)検出可能なシグナルをもたらす;(ii)第2の標識と相互作用して、第2の標識によってもたらされる検出可能なシグナル、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を改変する;(iii)ハイブリダイゼーション、例えば、二重鎖の形成を安定化する;および(iv)結合複合体または親和性のセット、例えば、親和性、抗体−抗原、イオン結合性錯体、ハプテン−リガンド(例えば、ビオチン−アビジン)のメンバーをもたらす。さらに他の態様では、標識の使用は、公知の標識、連結、連結基、試薬、反応条件、分析方法および精製方法を使用する多数の公知の技法の任意の1つを使用して実現することができる。
【0108】
miRNAは、直接的な方法によっても間接的な方法によっても検出することができる。直接的な検出方法では、1つまたは複数のmiRNAを、核酸分子に連結した検出可能な標識によって検出する。そのような方法では、miRNAをプローブに結合させる前に標識することができる。したがって、結合を、プローブに結合した、標識したmiRNAについてのスクリーニングによって検出する。プローブは、任意選択で、反応体積内でビーズに連結させる。
【0109】
ある特定の実施形態では、核酸を、標識したプローブと直接結合させることによって検出し、その後にプローブを検出する。本発明の一実施形態では、増幅されたmiRNAなどの核酸を、所望の核酸を捕捉するためのプローブとコンジュゲートしたFIexMAP Microspheres(Luminex)を使用して検出する。いくつかの方法は、例えば、蛍光標識で修飾したポリヌクレオチドプローブを用いた検出または分岐DNA(bDNA)検出を伴い得る。
【0110】
他の実施形態では、核酸を、間接的な検出方法によって検出する。例えば、ビオチン化したプローブを、ストレプトアビジンとコンジュゲートした色素と組み合わせて、結合した核酸を検出することができる。ストレプトアビジン分子が増幅されたmiRNA上のビオチン標識に結合し、結合したmiRNAを、ストレプトアビジン分子に付着した色素分子を検出することによって検出する。一実施形態では、ストレプトアビジンとコンジュゲートした色素分子は、Phycolink(登録商標)Streptavidin R−Phycoerythrin(PROzyme)を含む。他のコンジュゲートした色素分子は当業者に公知である。
【0111】
標識としては、これだけに限定されないが、検出可能な蛍光シグナル、化学発光シグナル、または生物発光シグナルを生じさせるまたはクエンチする光放射性化合物、光散乱性化合物、および光吸収性化合物が挙げられる(例えば、Kricka, L.、Nonisotopic DNA Probe Techniques、Academic Press、San Diego(1992年)およびGarman A.、Non−Radioactive Labeling、Academic Press(1997年)を参照されたい)。標識として有用な蛍光レポーター色素としては、これだけに限定されないが、フルオレセイン(例えば、米国特許第5,188,934号、同第6,008,379号、および同第6,020,481号を参照されたい)、ローダミン(例えば、米国特許第5,366,860号、同第5,847,162号、同第5,936,087号、同第6,051,719号、および同第6,191,278号)、ベンゾフェノキサジン(例えば、米国特許第6,140,500号を参照されたい)、ドナーとアクセプターの対を含むエネルギー移動蛍光色素(例えば、米国特許第5,863,727号;同第5,800,996号;および同第5,945,526号を参照されたい)、およびシアニン(例えば、WO9745539を参照されたい)、リサミン、フィコエリトリン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)、Alexa350、Alexa430、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5、6−FAM、Fluorescein Isothiocyanate、HEX、6−JOE、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、SYPRO、TAMRA、Tetramethylrhodamine、および/またはTexas Red、ならびに検出可能なシグナルを生じさせることが可能な任意の他の蛍光部分が挙げられる。フルオレセイン色素の例としては、これだけに限定されないが、6−カルボキシフルオレセイン;2’,4’,1,4,−テトラクロロフルオレセイン;および2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセインが挙げられる。ある特定の態様では、蛍光標識は、SYBR−Green、6−カルボキシフルオレセイン(「FAM」)、TET、ROX、VICTM、およびJOEから選択される。例えば、ある特定の実施形態では、標識は、異なる、スペクトル的に分解可能な波長で光を放射することが可能な異なるフルオロフォア(例えば、4種の色が異なるフルオロフォア)であり、ある特定のそのような標識したプローブは、当技術分野で公知であり、上記されており、また、米国特許第6,140,054号に記載されている。一部の実施形態では、レポーターフルオロフォアおよびクエンチャーフルオロフォアを含む二重標識蛍光プローブを使用する。フルオロフォアの対は、それらを容易に区別することができるように別個の発光スペクトルを有するものを選択することが理解されよう。
【0112】
またさらなる態様では、標識は、二重鎖のハイブリダイゼーションを増強する、安定化する、またはそれに影響を及ぼす機能を果たすハイブリダイゼーション安定化部分、例えば、インターカレーターおよびインターカレート色素(これだけに限定されないが、臭化エチジウムおよびSYBR−Greenを含む)、副溝結合物質、および架橋官能基である(例えば、Blackburnら編、「DNA and RNA Structure」、Nucleic Acids in Chemistry and Biology(1996年)を参照されたい)。
【0113】
さらなる態様では、オリゴヌクレオチドライゲーション(OLA)法および標的核酸配列にハイブリダイズする区別可能なプローブを、結合していないプローブから分離することを可能にする方法を含めた、ハイブリダイゼーションおよび/またはライゲーションに依拠してmiRNAを定量する方法を使用することができる。例として、米国特許出願公開第2006/0078894号に開示されているHARP様プローブを使用してmiRNAの量を測定することができる。
【0114】
方法のさらなる実施形態では、miRNAを定量するためにプローブライゲーション反応を使用することができる。マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)技法(Schoutenら、Nucleic Acids Research 30巻:e57頁(2002年))では、標的核酸上で互いのすぐ隣にハイブリダイズするプローブの対が、標的核酸が存在するときにのみ互いとライゲーションする。一部の態様では、MLPAプローブは隣接PCRプライマー結合部位を有する。MLPAプローブは、ライゲーションしている場合にのみ、増幅することができ、したがって、miRNAバイオマーカーを検出し、定量することが可能になる。
【0115】
C.溶血の検出
赤血球および血小板の溶血により、上記の方法に干渉し得るmiRNAが放出される(Kirschnerら、PLoS One 6巻:e24145頁、2011年;Pritchardら、Cancer Prev Res(Phila)5巻:492〜497頁、2012年)。したがって、上記の方法の一部の実施形態では、生体試料における溶血を決定し、溶血が決定された場合には試料を方法に供さない。
【0116】
溶血は、対象試料において、当技術分野で公知の任意の手段によって決定することができる。一部の実施形態では、溶血を、例えば、異なる波長(414nm、541nm、576nm)における吸光度を測定して試料中の遊離のヘモグロビンの存在および量を同定することによって、分光光度法で決定する(Kirschnerら、2011年)。
【0117】
他の実施形態では、溶血を、溶血した試料中で上方制御される溶血関連miRNAの発現レベルを分析することによって決定する。これらの実施形態の一部では、溶血していない試料に対して溶血した試料では有意に上方制御されるmiRNAであるmiR−451、miR−486−5p、miR−16、miR−92aまたはmiR−140−3pのいずれかを利用する。これらの実施形態の種々の態様では、溶血関連miRNAは、miR−451、miR−486−5p、miR−16、およびmiR−92aである。
【0118】
さらなる実施形態では、溶血した試料において上方制御されない複数の正規化用miRNAの発現レベルを決定し、溶血関連miRNAの発現レベルを正規化するために使用する。これらの正規化用miRNAを溶血関連miRNAとの比率で使用して、後者のmiRNAの決定された発現レベルを正規化することができる。これらの実施形態の一部では、正規化用miRNAは、miR−126、miR−15b、miR−221およびmiR−30bを含む。
【0119】
「溶血」シグネチャー
一部の実施形態では、溶血を、
(a)試料中のmiR−126、miR−15b、miR−221およびmiR−30bのそれぞれと対になったmiR−451、miR−486−5p、miR−16、およびmiR−92aのそれぞれからなる16種のmiRNA対のそれぞれの発現比率(すなわち、miR−451/miR−126、miR−451/miR−15b、miR−451/miR−221、miR−451/miR−30b、miR−486−5p/miR−126、miR−486−5p/miR−15b、miR−486−5p/miR−221、miR−486−5p/miR−30b、miR−16/miR−126、miR−16/miR−15b、miR−16/miR−221、miR−16/miR−30b、miR−92a/miR−126、miR−92a/miR−15b、miR−92a/miR−221、およびmiR−92a/miR−30bまたはその逆の比率)を決定するステップと、
(b)ステップ(a)からの16種の発現比率のそれぞれを、各発現比率について複数の対照試料由来の複数の対応するmiRNA対の平均比率から決定されたカットオフ値と比較するステップと、
(c)16種のmiRNA対のそれぞれについて、ステップ(a)における発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超える場合には、当該比率に対して陽性スコアを割り当てるか、またはステップ(a)の発現比率がステップ(b)におけるカットオフ値を超えない場合には、当該比率に対して非陽性スコアを割り当てるステップと、
(d)試料を、(i)16種の比率のうち8種またはそれ超がカットオフ値を超える場合には溶血を有するとして、または(ii)16種の比率のうち8種未満がカットオフ値を超える場合には溶血を有さないとしてカテゴリー化するステップと
によってさらに決定する。
【0120】
上記の診断アッセイおよび予後判定アッセイと同様に、この溶血アッセイのカットオフ値は対照集団に左右され、例えば、複数の溶血していない血清試料を対照試料として使用する場合のカットオフは、複数の溶血した血清試料を対照試料として使用する場合のカットオフとは異なる。実施例を参照されたい。さらに、カットオフは、例えば、所望のSE値、SP値、PPV値およびNPV値が実現されるように調整することができる。一部の実施形態では、溶血していない血清試料を対照試料として使用する場合、カットオフは、複数の対照試料の比率の平均(平均値または中央値)になる。任意選択で、このカットオフは、カットオフ値を決定するために使用した試料の間の変動性の差異を説明するために+/−部分標準偏差を有する。
【0121】
種々の実施形態では、上記のmiRNA発現レベルを使用した溶血アッセイのいずれかを別の溶血アッセイ、例えば、Kirschnerら、2011年に記載の分光光度アッセイと組み合わせもする。
【0122】
D.診断の組合せ
実施例において考察されている通り、実施例に記載されているMSCシグネチャーを低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)と組み合わせることにより、LDCTによって検出されなかった追加的ながんを検出することが可能になり、それにより、スクリーニング感度が、MSC単独では87%、LDCT単独では84%から、LDCTとMSCを組み合わせた場合には98%まで上昇する。LDCT以外のがんスクリーニングアッセイと組み合わせて、上記の診断方法および予後判定方法では、診断感度にも同様の改善が示されることが予測される。
【0123】
LDCTスクリーニングおよび関連する経過観察手順の健康管理費用は著しいものである。米国における、LDCTを広範に採用することが検討された最近の財政インパクトモデルから、LDCTスクリーニングにより、75%スクリーニング率で最大8100件の早発性肺がんによる死亡が回避され、肺がんによる死亡を1件回避するための追加的なスクリーニング費用が240,000ドルであることが示された(Goulartら、2012年)。非侵襲的バイオマーカー検査を用いてLDCTスクリーニングを補完することで、下流の費用が縮小されることにより、LDCTスクリーニングに登録される個体の数が増加し得る(Peres、J Natl Cancer Inst 105巻:1〜2頁、2013年)。
【0124】
したがって、上記の診断的なまたは予後判定方法はいずれも、miRNA発現の分析を含まないシステムを使用した対象の肺がんについてのスクリーニングと組み合わせることができる。このシステムは、miRNA発現分析の前、それと同時に、またはその後に使用することができる。現在公知であるまたは後に発見される任意のシステムに、MSCを用いた追加的な分析による利点がもたらされることが予測される。そのようなシステムの非限定的な例としては、血液検査、X線、コンピュータ断層撮影法、陽電子放出断層撮影法、胸腔穿刺、気管支鏡検査、細針吸引、胸腔鏡検査、開胸術、または縦隔鏡検査が挙げられる。一部の実施形態では、システムは、低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)である。
【0125】
E.モニタリング
上記の方法はいずれも、対象を肺がんの存在および/または肺がんが発症するリスクについてモニタリングするために使用することができる。上記の方法のいずれかを、対象から違う時間に取得した少なくとも2種の異なる生体試料に対して実施すると対象がモニタリングされる。一部の実施形態では、少なくとも2種の異なる生体試料のうちの少なくとも1種は、対象が肺がんに対する処置を受けた後に対象から取得される。そのようなモニタリングにより、肺がんの再発または再発のリスクを評価する。
【0126】
F.処置
上記の方法を利用して、処置の選択肢を選択することができる。本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」という用語は、肺がんの徴候または症状の重症度を取り除くまたは軽減するために薬剤を投与することについて記載するものを意味する。その代わりに、またはそれに加えて、療法が多数の場所の少なくとも1つにおける障害に適用される場合には、多数の場所において起こり得る障害が処置される。
【0127】
一実施形態によると、上記の方法を利用して処置の選択肢を選択することができるというのは、腫瘍が発症するまたは腫瘍を有するリスクを予測するための方法の組合せにおいて存在またはリスクが陰性であることが決定された場合、またはリスクが低いことが決定された場合には対象に肺がんに対する処置を行わない場合である。別の実施形態では、方法の組合せにおいて存在またはリスクが陽性であることが決定された場合、または中間もしくは高いリスクが決定された場合には対象に肺がんに対する処置を行う。
【0128】
したがって、対象に対する肺がん処置の選択肢を確立する方法も本発明で提供される。方法は、上記の診断方法および/または予後判定方法を使用して対象を検査するステップと、方法の結果に従って処置の選択肢を決定するステップとを含む。方法は、それを必要とする対象に処置を施行するステップをさらに含んでよい。
【0129】
G.miRNA
全体として、24種のmiRNAにより、肺腫瘍の存在のシグネチャー(PD)、侵襲性肺腫瘍の存在のシグネチャー(PAD)、肺腫瘍が顕在化するリスクのシグネチャー(RD)、および侵襲性肺腫瘍が顕在化するリスク(RAD)のシグネチャーが構成される。表1に、各シグネチャーに存在し得るこれらの24種のmiRNAを列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【0130】
表2に、本発明の全ての態様において使用するためのmiRNAの要約を提示する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0131】
以下の実施例は、特許請求された発明をよりよく例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特定の材料について言及している場合には、それはただ単に例示を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。当業者は、発明能力を発揮することなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく等価の手段または反応物を開発することができる。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、Correlative MILD Trial Studyとも称されるコンピュータ断層撮影法肺がんスクリーニング内での、血漿に基づくマイクロRNAシグネチャー分類子の臨床的な有用性に関する。LDCTのランダム化Multicentre Italian Lung Detection(MILD)臨床試験内の喫煙者の対象と、観察の喫煙者の対象から前向きに採取した試料において遡及的に評価した対象939名における、予め指定されたmiRNAシグネチャー分類子(MSC)アルゴリズムの診断能を決定するための検証試験(Pastorinoら、2012年)からの結果が提供される。我々は、MSCが有意な診断能および予後判定能を有することを実証する。
【0133】
(実施例1)
方法
A.試験集団。ランダム化前向き臨床試験であるMulticentre Italian Lung Detection(MILD)試験が2005年に開始され、Istituto Nazionale dei Tumori of Milanにおいて、現在の喫煙者または元喫煙者であり、少なくとも50歳であり、ここ5年以内にがんの病歴を有さない4,099名が登録され、2,376名(58%)がLDCTアームにランダム化され(1190名が1年に1回のLDCT、1186名が2年に1回のLDCT)、1,723名(42%)が観察に基づくアームにランダム化された(Pastorinoら、2012年)。試験の全志願者の登録時(ベースライン)および年に1回または2年に1回の呼び戻しのそれぞれの時点で、全血を、Istituto Nazionale dei Tumori of MilanのInternal Review and the Ethics Boardsに従って記載の通り採取した(Boeriら、2011年)。
【0134】
この試験のために、試験に登録された肺がんを有さない個体の間で2009年6月から2010年7月までに採取した1,000の連続した血漿試料を使用して、MSCの特異度を決定した。まず、血漿試料を溶血についてアッセイして(以下を参照されたい)、赤血球miRNAにより潜在的に汚染された患者由来の試料を取り除いた(Kirschnerら、2011年;Pritchardら、2012年)。1000の試料のうち130が、溶血が原因で評価できないものであった。残りの870の対象のうち、594(68%)はLDCTアームに属し、276(32%)は観察に基づくアームに属した。MSCの感度性能を決定するためのコホートを得るために、2012年9月までに診断されたほとんど全ての肺がんの患者由来の血漿試料を得た(N=85)。症例と対照を適合させる代わりに、大きな、選択されなかった一連の対象における陰性的中率(NPV)を測定することを選び、これにより、対照の数および試験の力が著しく減少した。これらの85名の患者のうち69名について、評価可能な試料が少なくとも1つ採取された。患者全てについて、がん診断をもたらすLDCT検査に最も近い試料を検討した。具体的には、50名の患者に関して診断時の試料が入手可能であり、19名の患者に関して疾患前の試料が入手可能であった(図1)。疾患前の試料は、肺がん検出の8〜35カ月前に採取され、遅延時間の中央値は18カ月であった。
【0135】
B.マイクロRNAプロファイリング。全RNAを、血漿試料200μlからmirVana PARISKit(Life Technologies、Ambion)を用いて抽出し、緩衝液50μl中に溶出させた。miRNA発現を、溶出したRNA3μl中、Multiplex Pools Protocolを24種のmiRNAを2連でスポットした特注のマイクロフルイディクスカード(Life Technologies、Applied Biosystems)に対して使用して決定した。各試料について、個々のmiRNAのCt’を、ViiA7 software(Life Technologies、Applied Biosystems)を使用し、閾値0.15および自動ベースラインを用いて決定した。MSCへのインプットのために、所定のmiRNA比率の2連の読み取りの平均を以前に記載されている通り算出した(Boeriら、2011年)。
【0136】
C.統計分析。個々の対象に関する臨床転帰を盲検化したMSCリスクスコアを独立した研究センター、Istituto Mario Negri of Milanに提出し、予め指定された統計分析計画の通りデータ分析を完了した。肺がんと診断された患者と疾患を有さない対象とを分類するためのMSCの識別能を、全体的に、および試験のLDCTアームおよび観察に基づくアームの両方について評価するために、MSCの感度(SE)、特異度(SP)、陽性的中率(PPV)および陰性的中率(NPV)を計算した。診断能については、MSC−低リスク群内にカテゴリー化された個体を、MSC−中間またはMSC−高のいずれかにカテゴリー化された個体と比較した。2成分MSCおよびLDCTを組み合わせた使用に関しても、単一の陽性および二重の検査陽性を考慮して、SEおよびSPを計算した。
【0137】
疾患発症の予測因子としてMSCの時間依存性を説明するために、血液試料採取から肺がん診断までの種々の時間間隔(6カ月、12カ月、18カ月および24カ月)について、Heagertyら、Biometrics 56巻:337〜344頁(2000年)およびZhengおよびHeagerty、Biometrics 63巻:332〜341頁(2007年)に記載されている方法体系を使用してSE、SP、PPVおよびNPVを算出した。
【0138】
MSCの予後判定能を決定するために、939名の対象全員の間でMSCに従って、3つのリスク群全てを検査し、血液試料採取日からのカプランマイヤー推定量として生存曲線を得た。コックス比例ハザードモデルを使用し、年齢および性別に関してさらに調整したモデルも考慮して生存におけるMSCの不均一性を推定し、高/中間MSCと低MSCの間のχ21検定をコンピュータで行った。
【0139】
D.溶血の影響を受けている血漿試料の評価。赤血球(RBC)または血小板などの血液細胞の溶血により、汚染miRNAが放出されるので、溶血が存在する血漿試料はその後の分析から取り除いた(Kirschnerら、2011年;Pritchardら、2012年)。2種の品質管理(QC)測定をこの評価のために使用した。第1に、RNA抽出前の予備分析ステップにおいて、異なる波長(414nm、541nm、576nm)における吸光度を測定して試料中の遊離のヘモグロビンの存在および量を同定することによって分光光度分析を完了した(Kirschnerら、2011年)。
【0140】
第2のQCステップを実行して、全ての試料についてmiRNAシグネチャー分類子(MSC;mir−451、486−5p、16、92a)に含有される溶血関連miRNAの発現レベルを分析することによって溶血のさらに大きな感度を得た。溶血関連miRNAの発現レベルが全ての試料の全体的な平均値からの2標準偏差を超える血漿試料をその後の分析から排除した。検出可能な、分光光度法で測定された溶血を伴う試料もこの第2のQCステップにおいて排除した。分光光度法でまたは溶血関連miRNA分析によって測定した溶血の発生頻度または量に、がんと対照試料とで差異は観察されなかった。
【0141】
溶血によって放出される汚染miRNAの潜在性に加えて、血漿中に示差的に発現するmiRNAは、単に異なる血液細胞数を反映する可能性がある(Pritchard、2012年)。この仮説を分析するために、好中球により発現されるmiRNAとRBCにより発現されるmiRNAで構成されるmiRNA比率(同文献)を、本試験の肺がん患者23名から全血球計算(CBC)によって得られた好中球のレベルとRBCのレベルの間の比率と比較した。表3において報告する通り、シグネチャー内に存在するmiRNA比率のいずれも、それぞれのCBC比率との有意な相関を有することは見いだされなかった。
表3.肺がん患者23名における血漿miRNA比率と血液細胞数の相関。この表には、23試料における好中球とRBCのmiRNA比率および好中球数とRBC数のピアソン相関係数が示されている。統計的に有意な相関(両側p値<0.05)が報告されている。
【表3】
【0142】
溶血関連miRNAの分析を伴う第2のQCステップでは、それに加えて、またはその代わりに、本明細書に記載のMSCに含有されるmiRNAを含む溶血miRNAシグネチャーを利用することができる。
【0143】
i.miRNAシグネチャーを使用した溶血の検出:血漿採取
全血の試料を採取し、EDTAを添加し、処理前1〜2時間以下にわたって室温で保管した。温度を下げての保管は、miRNAの非特異的放出を導く可能性があるので回避するべきである。試料を4℃、およそ1250回gで10分遠心分離して血漿を分離し、それを、リンパ球環(lymphocytic ring)に最も近い材料を回避しながら慎重に移した。血漿を同じ条件で再度遠心分離し、次いで、ペレット化した材料を回避しながら一定分量に分離し、それを1年またはそれ超に至るまで−80℃で保管した。
【0144】
ii.溶血した試料と溶血していない試料におけるmiRNA発現レベル
溶血を検出するためのmiRNAシグネチャーを開発するために、24の血漿試料を溶血させた。溶血を目視検査によって評価した。溶血した試料を、特注のマイクロ流体カードを使用したmiRNAのパネルを発現させるためにプロファイルした。溶血した試料におけるmiRNAの発現を、疾患を有さない個体98名由来の溶血していない(視覚的評価に基づいて)試料におけるmiRNAの発現と比較した。
【0145】
4種のmiRNA(miR−16、miR−451、miR−486−5p、およびmiR−92a)をmiRNAシグネチャーの開発に含めた。生のCt値(発現レベルの尺度)を表4に示す。4種のmiRNA、miR−16、miR−451、miR−486−5pおよびmiR−92aは、miR−140−3pに加えて、溶血した試料において、溶血していない試料に対して有意に上方制御された(p<0.001)。
【表4】
【0146】
iii.溶血に関するシグネチャーにおけるmiRNA比率の生成
miRNA比率を使用して溶血した試料と溶血していない試料を識別するために、in vitroで溶血させた血漿試料の段階希釈物を含有する正常な血漿試料をmiRNA発現レベルについて分析した。様々なmiRNAの、表4に上方制御されることが示されている4種のmiRNA(miR−16、miR−451、miR−486−5p、およびmiR−92a)のそれぞれに対する比率を算出した。miR−126、miR−15b、miR−221、およびmiR−30bは、4種の上方制御されるmiRNAとの比率が溶血と最も良好に相関するmiRNAとして同定された(表5)。
【表5】
【0147】
ベースラインmiRNA比率の平均値を、疾患を有さない個体98名由来の溶血していない血漿試料から、次式、比率の平均値+1.5s.d.(標準偏差)を使用して算出した。これらのベースライン比率を、溶血に関するmiRNAシグネチャーの開発における16種のmiRNA比率のそれぞれについてのカットオフとして設定した。
【0148】
iv.溶血を検出するための溶血miRNAシグネチャーの使用
溶血miRNAシグネチャーを使用して、血漿試料における溶血を検出することができる。表6に、8種のmiRNA(miR−126、15b、30b、221、451、16、486−5pおよび92a)で構成される16種の比率の一覧を示す。特に、4種のmiRNA、miR−451、miR−486−5p、miR−16およびmiR−92aは全て、溶血した試料において過剰発現した。この過剰発現を血漿試料における溶血の指標として使用することができる。さらに、表6に示されている16種の比率のうち8種、またはそれ超がカットオフ値を超える場合、血漿試料は溶血について陽性である。
【表6】
【0149】
v.溶血を検出するための溶血miRNAシグネチャーとヘモグロビン吸光度法の比較
ヘモグロビンは、波長414nmの吸光度を有することが当技術分野で公知である。科学的実施および臨床的実施のどちらにおいても溶血を分析するために使用される1つの標準方法は、血漿試料中の遊離のヘモグロビンの、波長414nmにおける分光学的測定である(吸光度閾値0.2を使用する)。本実験では、いくつかの試料(例えば、脂肪血症(lipemic)試料)における高バックグラウンドシグナルを克服するために、414nmにおける吸光度を375nmにおける吸光度に対して正規化した。414nmにおける吸光度と375nmにおける吸光度比率について1.4のカットオフを設定した。
【0150】
表5の最後の行に示されている通り、A414nm/A375nmの値が1.40を超える試料はmiRNAシグネチャーに対応し、16種のmiRNA比率のうち少なくとも8種がそれらのそれぞれのカットオフを超えた。これらの設定を使用して、24の溶血した血漿試料と98の溶血していない血漿試料(目視検査に基づく)を区別することにおけるmiRNAシグネチャーの力を評価した。miRNAシグネチャー法は、感度0.88および特異度0.93を示した。感度に関しては、溶血していると視覚的に評価された24の試料が実際に溶血していたことが明白であった。
【0151】
視覚的に溶血している(赤色、オレンジ色または暗い黄色)60の血漿試料および目視検査に基づいて溶血していない43の血漿試料の選択で構成される独立したシリーズを使用して、溶血miRNAシグネチャーと分光光度法を比較した。感度に関しては(表7)、最も溶血していた(赤色)試料5つは全て、どちらの方法によっても溶血について陽性と認識された。しかし、オレンジ色および暗い黄色の試料の評価では、miRNAシグネチャー法がより感度が高かった(>90%、対して分光光度的方法は76%)。
表7.60の視覚的に溶血している血漿試料における溶血を評価するための分光光度計の結果とmiRNAの結果の比較
【表7】
【0152】
他方では、目視検査に基づいて溶血していなかった43の血漿試料では(表8)、結果から、3つ(7%)の試料がどちらの方法を使用しても溶血について陽性であり、1つ(2%)の試料が分光光度的方法でのみ陽性であり、2つ(5%)の試料がmiRNAシグネチャー法でのみ陽性であったことが示された。40(93%)の試料では2つの方法の間で溶血分類が一致した。どちらの方法でも陽性の3つの場合を除いて、分光光度的方法の特異度は97.5%であり、miRNAシグネチャー法の特異度は95%であった。
表8.43の溶血していない(目視検査に基づく)血漿試料における溶血を評価するための分光光度計の結果とmiRNAの結果の比較
【表8】
【0153】
E.miRNAシグネチャー分類子(MSC)アルゴリズム。MSCアルゴリズムは、本明細書において詳細に記載されている通りである。このアルゴリズムの開発のために、以前に記載されているINT/IEO肺がんスクリーニング試験(Boeriら、2011年)から診断前または診断時に前向きに採取した肺がん患者由来の試料の訓練セットにおいて、血漿中を(安定に)循環している100種の異なるmiRNA4,950種の比率から開始して、24種の異なるmiRNAの異なる遺伝子発現比率を生成した。この試験において使用した予め指定されたMSCアルゴリズムは、2つのやり方の以前の試験から改良したものであった。
【0154】
第1に、検出可能な溶血を伴う試料を元の訓練セットから取り除いた(Boeriら、2011年)。その刊行物の後に、研究者らにより、溶血が血漿および血清試料中のmiRNAの正確な発現測定に影響を及ぼしたことが報告された。したがって、MSCについての最適な訓練セットを生成するために、元の訓練セット内の5つの試料を、分光光度分析による検出可能なヘモグロビンおよび溶血関連miRNAレベルに起因して排除した(本明細書に記載の通り)。次いで、miRNA比率を最適な訓練セットにおいて使用して、疾患のリスク(RD)、疾患の存在(PD)、侵襲性疾患のリスク(RAD)および侵襲性疾患の存在(PAD;表9)についてのmiRNAシグネチャーを開発した。
【表9】
【0155】
第2のやり方では、MSCアルゴリズムの開発は、この試験では、80%以上の特異度を得るために939の対象検証コホートを含まないMILD試験からの84名の疾患を有さない個体の訓練セットからの血漿試料を使用して予め定義された比率カットオフ値を生成したという点で以前の試験とは異なる。
【0156】
プール(Boeriら、2011年において使用された)の代わりに単一の対象由来の血漿試料を使用することにより、訓練セットにおいて最初に同定された24種のmiRNAの全てを考慮し、正確なカットオフを生成することが可能になった。したがって、本試験では、前者の検証セットではその試験において使用した対照プール内の対象の間で変動性が高いことが原因で排除されたmir−101、145および133aを含めることができた。
【0157】
疾患に対する3レベルリスクのカテゴリー化(MSC低、中間および高)を構築するために、訓練セットも使用して、陽性とみなす必要があるそれぞれのカットオフ値を超える最小数の比率を確立した:RDに対して10/27、PDに対して9/27、RADに対して14/28、PADに対して14/28。次いで、3レベルMSCを以下の通り定義した:低リスク(L)、RDneg ∩ PDneg ∩ RADneg ∩ PADnegの場合;中間リスク(I)、RDpos U PDpos ∩ RADneg ∩ PADnegの場合;または高リスク(H)、RADpos U PADposの場合。次いで、これらの予め指定されたリスク群を使用して、MILDスクリーニング試験からの939名の対象の独立したセット内の診断能および予後判定能を検定した。
【0158】
F.対象の特性。肺がんの患者69名および肺がんを有さない対象870名を含めた、MILD試験に登録された、血漿試料が評価可能な対象939名の特性(2005〜2012年;LDCT:N=652;観察に基づく:N=287)が年齢、性別、およびタバコ喫煙の状態、持続時間および1日当たりのタバコ数の数に従って示されている(表10)。肺がん患者は、肺がんでない患者よりも年齢が上であり(p<0.0001)、男性の割合が高かった(81.2%対63.3%;p=0.0029)。喫煙の状態は、がんを有する群とがんを有さない群の間で有意に異ならなかったが、がんが発症した対象はより長い期間にわたって喫煙していた(p<0.0001)。
表10.肺がんを有する対象69名および肺がんを有さない対象870名の年齢、性別、およびタバコ喫煙に応じた分布。Multicentric Italian Lung Detection(MILD)試験、2005〜2012年。
【表10】
【0159】
がん患者に関して、ランダム化から診断までの時間の中央値は29カ月(範囲1〜82)であり、血漿サンプリングから診断までの時間の中央値は2カ月(範囲0〜35)であった。肺がんを有さない対象では、ランダム化から血漿サンプリングまでの時間の中央値は44カ月(範囲0〜58)であり、血漿サンプリングから最後の経過観察までの時間の中央値は27カ月(範囲3〜41)であった。
【0160】
(実施例2)
MSCの診断能および予後判定能
LDCTアームおよび観察に基づくアームにわたって939名の対象から診断前または診断時に得た評価可能な血漿試料を、リアルタイムRT−PCRに基づくアッセイを使用し、低リスク、中間リスクおよび高リスクのがん群の予め指定されたMSCアルゴリズムを用いて分析した。939名の対象全てについて、肺がん出現、肺がんによる死亡、および腫瘍の病期に従ってMSCリスク群を調査した(表11)。MSC中間および高には、肺がん患者69名のうち60名が正確に分類され、SE87%、SP81%、PPV27%およびNPV99%であった。経過観察の間に死亡した肺がん患者19名のうち、18名はMSC検査で陽性であり、SE95%、SP81%、PPV10%およびNPV100%であった。経過観察の間に肺がん以外の原因による死亡は観察されなかった。2つのアーム内でのMSCの肺がん検出についての比較的診断能は同様であり、LDCTアームおよび観察に基づくアームについて、それぞれSE88%、SP80%、PPV31%、NPV99%およびSE82%、SP83%、PPV16%、NPV99%であった。
表11.肺がんを有する対象69名および肺がんを有さない対象870名の肺がん分布率、肺がんによる死亡、および肺がん段階およびmiRNAシグネチャー分類子(MSC)に応じた分布、ならびに対応する感度(SE)、特異度(SP)、陽性的中率(PPV)、および陰性的中率(NPV)。Multicentric Italian Lung Detection(MILD)試験、2005〜2012年。
【表11】
【0161】
3つのMSCリスク群全てにわたって、疾患による死亡の割合に有意な傾向が観察され、それぞれ低、中間および高に伴って肺がんによる死亡の割合が上昇した(p=0.0336)。MSCリスク群は、腫瘍の病期の変動(I、II〜IIIまたはIV;表11)とは有意に関連しなかった(p=0.40)。
【0162】
MSCリスク群と組織学的サブタイプの間(χ=1.60、p=0.4485)、および腺癌と扁平上皮癌の間(χ=0.55、p=0.759)に有意差は確認されなかった。MSCの診断能の時間依存性分析により示されたSE、SP、PPVおよびNPVの値は、血液サンプリングと肺がん診断の間隔が6カ月、12カ月、18カ月および24カ月の時点で同様であった(表12)。
表12.miRNAシグネチャー分類子(MSC)の時間依存性分析、血液サンプリングから肺がん検出まで6カ月、12カ月、18カ月および24カ月の時点で算出した感度(SE)、特異度(SP)、陽性的中率(PPV)、および陰性的中率(NPV)。
【表12】
【0163】
(実施例3)
LDCTとMSCの相補的診断能
分析をLDCTアーム内の総数652名の対象に制限することにより、LDCTにより、肺がん対象58名のうち46名が同定され、肺小結節が検出されなかった251名の対象内で3名の患者が見逃され、9名の患者が、中間期がんが原因で見逃され、SEは79%であった(表13)。「肺小結節がない」3例のがんは、非固形病変が1例、縦隔腺症が1例、および胸水が1例で構成された。予め指定されたMSCの2成分リスク群(高および中間とみなすか低とみなすか)により、LDCTにより検出されたがん46例のうち40例、中間期がん9例のうち8例、および「肺小結節がない」対象3名全てが同定された。
【0164】
表13.対象939名の、miRNAシグネチャー分類子(MSC)および低線量コンピュータ断層撮影法(LDCT)による、LDCT(スクリーニングで検出された肺がんおよびスクリーニングで検出されたものではない肺がんを含む)および観察に基づくアームごとの分布。Multicentric Italian Lung Detection(MILD)試験、2005〜2012年。
【表13】
【0165】
LDCTでは、非石灰化小結節>5mmの臨床的に使用可能なサブグループについてのSPは81%であり、関連する偽陽性率は19.4%(115/594)であった(表13)。二重陽性(LDCTおよびMSC)対象について検討したところ、偽陽性率が3.7%(22/594)に低下し、同時にSEも低下した(40/58、69%)。逆に、少なくとも1つの検査陽性(LDCTまたはMSC)の対象を陽性とみなした場合、LDCTとMSCを組み合わせて使用することにより、58症例のうち57症例が同定され、SEは98%、SPは65%であった。他方では、MSCにより、観察に基づくアームにおいて生じた肺がん11例中9例(82%)が検出された(表13)。
【0166】
(実施例4)
MSCリスク群と生存の関連性
分析を完了して、3つの所定のMSCリスク群の、3年の経過観察で全対象から採取した血漿試料(N=939)から全生存を予測する予後判定能を決定した。2年生存は、低MSCの対象については100%、中間MSCについては98%であり、高MSCについては87%であり、一方、3年生存は、低、中間および高についてそれぞれ100%、97%および77%であった(図2)。高/中間MSCとおよび低MSCの間の生存の差異は統計的に有意であった(χ=49.53、P<0.0001)。不均一性は、年齢および性別について調整した後になお有意であった(χ=12.57、P=0.0004)。
【0167】
(実施例5)
分析
感度が高いことと併せてNPVが99%であるという診断特性により、MSCが、臨床的に検証されたスクリーニング検査であることが示される。さらに、肺がん発症の予測因子としてのMSCの診断能が時間依存性分析によって確認された。
【0168】
MSCにより、疾患による死亡の尤度が高い対象が同定された。2成分診断として、両方のアームにわたって939名の対象についての疾患による死亡に関してMSCのSEは95%であり、NPVは100%であった。さらに、MSCリスク群は、対象939名のコホート全体について3年の時点での有意に異なる生存と関連した(低MSC、中間MSCおよび高MSCについて、それぞれ100%、97%および77%)。これらの所見により、血漿miRNAにより悪性腫瘍と腫瘍の攻撃性の両方が同定されることが実証される。
【0169】
MILDを含めた3つの小規模のヨーロッパにおけるランダム化試験では、現在までに有意でない死亡率の低下が報告されている(Infanteら、2009年;Saghirら、2012年;Pastorinoら、2012年)。3ラウンドのLDCTによる年1回のスクリーニングと、胸部X線とに53,454名が登録されたランダム化臨床スクリーニング試験であるNational Lung Screening Trial(NSLT)により、肺がんによる死亡率の20%の低下が実証された(Aberleら、2011年)。3ラウンドのスクリーニング後に、対象の24.2%が陽性として分類され、これらの96.4%が偽陽性であり、1件の肺がんによる死亡を予防するために320名の対象をスクリーニングする必要があった。
【0170】
LDCTスクリーニングの利益および損害を調査した全てのランダム化臨床試験のシステマティックレビューでは、平均小結節検出率は20%であり、小結節の90%が良性であった(Bachら、JAMA 307巻:2418〜2429頁、2012年)。この試験では、MSCにより、LDCTアームの652名の個体の中で74%(485名)が低リスクに分類され、478名が真陰性であり、7名が偽陰性であった。MSCにより、LDCTによって検出されなかった中間期がん9例のうち8例を同定することができた。したがって、MSCとLDCTの統合(少なくとも1つの検査陽性)により、スクリーニング感度が、MSC単独では87%、LDCT単独では84%から、98%(57/58)まで上昇し、偽陽性率は35%になる。逆に、二重陽性対象(MSC陽性かつLDCT陽性)を検討すると、MSCとLDCTの統合により、LDCTスクリーニングの偽陽性率が5分の1超低下する。具体的には、二重偽陽性MSCおよびLDCTの発生頻度は、LDCT単独での19.7%(115/594)と比較してわずか3.7%(22/594)であったが、SEは69%に低下した。
【0171】
したがって、MSCにより、偽陽性の結果を減少させることによりLDCTスクリーニングを補完することができ、また、診断アルゴリズムをより大きく標準化することが可能になり、それにより、健康管理費用が減少する。さらに、低MSC対象の3年の時点での死亡がないことを考慮すると、低MSC個体に対してLDCTではなくMSCをさらに繰り返すことが提唱され得る。予め指定された血漿に基づくアッセイの本盲検化試験は、LDCTスクリーニング試験内でバイオマーカーを試験する最も大きな試験を表すものであり、LDCTをMSCと組み合わせた場合の優れた診断能を実証するものである。
図1
図2
【配列表】
2017502699000001.app
【国際調査報告】