(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502706(P2017-502706A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】改善された経皮臓器機能測定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20170105BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20170105BHJP
G06Q 50/22 20120101ALI20170105BHJP
【FI】
A61B5/00 101A
A61K49/00 A
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-525953(P2016-525953)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014072420
(87)【国際公開番号】WO2015059083
(87)【国際公開日】20150430
(31)【優先権主張番号】13189703.5
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516119162
【氏名又は名称】ハインリッヒ,ラルフ
(71)【出願人】
【識別番号】516119173
【氏名又は名称】ピル,ヨハネス
(71)【出願人】
【識別番号】516119184
【氏名又は名称】ネウデッカー,サビネ
(71)【出願人】
【識別番号】516119195
【氏名又は名称】ショック−クシュ,ダニエル
(71)【出願人】
【識別番号】516119209
【氏名又は名称】ギュンター,ユルゲン
(71)【出願人】
【識別番号】516119210
【氏名又は名称】ケニヒ,シュテファン
(71)【出願人】
【識別番号】516119221
【氏名又は名称】フリードマン,ヨッヒェン
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ネウデッカー,サビネ
(72)【発明者】
【氏名】ショック−クシュ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ケニヒ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ヨッヒェン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C085HH11
4C085KA27
4C085LL11
4C117XB01
4C117XB17
4C117XD27
4C117XE43
5L099AA03
(57)【要約】
本発明は、被検体の臓器機能を判定する方法に関する。同方法は:第1位置において体液の少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第1濃度−時間曲線を提供するステップ;第1位置において体液の少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第2濃度−時間曲線を提供するステップ;少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対して前記第1濃度−時間曲線と前記第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップ;各上記ステップにより被検体の臓器機能を判定するステップ、を有する。本発明はさらに、本発明の方法にしたがって臓器機能を判定するデバイスに関する。前記デバイスは、第1位置において指標物の蛍光を経皮測定する第1センサ;第2位置において指標物の傾向を経皮測定する第2センサ;先行請求項のいずれかに記載の動力学モデルに対して、前記第1センサと前記第2センサが取得した値をフィッティングするデータ処理ユニット、を備える。本発明はさらに、本発明に係るデバイスと指標化合物を備えるキットに関する。本発明はさらに、少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークに関する。前記コンピュータまたはコンピュータネットワークは、本発明に係る方法を実施するように構成されている。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の臓器機能を判定する方法であって、
a)第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第1濃度−時間曲線を提供するステップ、
b)第2位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第2濃度−時間曲線を提供するステップ、
c)少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対して前記第1濃度−時間曲線と前記第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップ、
d)各上記ステップにより被検体の臓器機能を判定するステップ、
を有し、
前記第1位置は前記第2位置とは異なる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)における第1濃度−時間曲線を提供するステップは、第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することにより第1濃度−時間曲線を取得するステップであり、
ステップb)における第2濃度−時間曲線を提供するステップは、第2位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することにより第2濃度−時間曲線を取得するステップである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記動力学モデルは、4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルである
ことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記臓器機能は、糸球体ろ過率(GFR)である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第1および第2位置において指標化合物の蛍光を測定するステップは、同時実施される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記フィッティングの結果は、前記被検体の血漿量ごとのGFRである
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記被検体の総血漿量に対して割り当てられた数値は、前記被検体の体重から判定される
ことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記拡散コンパートメントは、投与コンパートメント、血漿、間質、および局所間質を表す
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法はさらに、指標化合物を前記被検体に対して投与するステップを有し、
前記指標化合物を投与するステップは、前記第1および第7時点の後である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも前記第2時点と前記第8時点は、最大でも前記指標化合物を投与した2時間後である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の方法にしたがって臓器機能を判定するデバイスであって、
a)第1位置において指標物の蛍光を経皮測定する第1センサ、
b)第2位置において指標物の蛍光を経皮測定する第2センサ、
c)請求項1から10のいずれか1項記載の動力学モデルに対して、前記第1センサと前記第2センサが取得した値をフィッティングするデータ処理ユニット、
を備え、
前記第1センサと前記第2センサは、前記データ処理ユニットが各前記センサによる測定結果を収集して少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対してフィッティングするように、リンクされている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項12】
前記デバイスはさらに、少なくとも体重に相関付けられた総血漿量の参照値を格納するデータ記憶ユニットを備える
ことを特徴とする請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
請求項11または12記載のデバイスと指標化合物を備えることを特徴とするキット。
【請求項14】
前記指標化合物は、親水性化合物と共有結合した蛍光低分子量化合物を含み、
前記親水性化合物は、オリゴ糖・多糖、オリゴ糖・ポリアルコール、オリゴ糖・ポリエーテルを含むリストから選択されている
ことを特徴とする請求項13記載のキット、または請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行される
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、
前記コンピュータまたはコンピュータネットワークは、請求項1から10のいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている
ことを特徴とするコンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の臓器機能を判定する方法に関する。同方法は:第1位置において体液の少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第1濃度−時間曲線を提供するステップ;第1位置において体液の少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第2濃度−時間曲線を提供するステップ;少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対して前記第1濃度−時間曲線と前記第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップ;各上記ステップにより被検体の臓器機能を判定するステップ、を有する。本発明はさらに、本発明の方法にしたがって臓器機能を判定するデバイスに関する。前記デバイスは、第1位置において指標物の蛍光を経皮測定する第1センサ;第2位置において指標物の傾向を経皮測定する第2センサ;先行請求項のいずれかに記載の動力学モデルに対して、前記第1センサと前記第2センサが取得した値をフィッティングするデータ処理ユニット、を備える。本発明はさらに、本発明に係るデバイスと指標化合物を備えるキットに関する。本発明はさらに、少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークに関する。前記コンピュータまたはコンピュータネットワークは、本発明に係る方法を実施するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
臨床分野および前臨床分野においては、様々な臓器機能を判定することは非常に重要である。これは例えば、その臓器機能にしたがって、対応する治療や薬物をコントロールできるからである。本発明は以下の記載において、腎機能について説明する。ただし原理的には、本明細書記載の手段や方法によって特定臓器の機能を検出可能なその他アプリケーションを考えることもできる。したがって原理的には、血液中の任意の外因性物質または内因性物質を指標化合物として用いることができる。
【0003】
腎臓診断において、腎臓の定量的機能テストおよび定性的機能テストは、非常に重要である。腎臓機能の1つの指標は、いわゆる糸球体ろ過率(GFR)である。これは、腎臓の糸球体が単位時間ごとに生成する原尿量を示す。
【0004】
GFRを定量化するための方法が、従来技術および医療行為においていくつか知られている。1つの手法タイプは、本発明が分類されるものでもあるが、1以上の指標化合物を用いることに基づいている。この指標化合物は、少なくとも大部分は腎臓機能によって血液から除去される。これは、指標化合物が少なくとも大部分は糸球体のフィルタ効果によって身体から除去されることを意味する。この場合、原尿からの尿細管分泌や再吸収は実質的に生じない。一般にクリアランスがその血漿量としてミリリットルで毎分割り当てられる。これは指標化合物が存在しないものである。
【0005】
糸球体ろ過率を判定するための様々な外因性および/または内因性指標化合物が知られている。内因性指標化合物の例は、クレアチニンまたはシスタチンCである。様々な外因性指標化合物も、従来技術において知られている。具体的には、サッカリド(例えばポリフルクトサン)は、指標化合物として用いることができる。適当な指標化合物の例は、WO2001/85799またはWO2006/32441に記載されている。この従来技術を本発明の文脈で用いることができる。
【0006】
計量的な観点からは、課題の1つは特に、指標化合物の濃度プロファイルとそのクリアランスを判定することである。計量的にクリアランスを検出することができる様々な方法が、WO99/31183に記載されている。したがって、いくつかの方法は、血液サンプルおよび/または尿サンプルが定期的または不定期に取得され、マーカ物質の濃度が分析的に判定されるという事実に基づいている。例えば酵素検出法である。その他方法は、放射性指標化合物および/またはX線造影剤を用いることに基づいている。ただし被験者がこのような指標化合物を受容する度合いは一般に低い。化学的または生化学的分析によりまたは放射性指標化合物を用いることにより腎クリアランスを判定することに基づく方法は、一般に複雑かつ負担が大きく、エラーが大きい。したがって日常的臨床診療においては、多くの場合は近似式に基づき腎機能を推定する。しかし近似式は非常に不正確であることが多く、30〜40%のエラー公差を有する。
【0007】
したがって従来技術は、蛍光マーカを用いることに基づく手法を開示している。この場合、光学的に検出できるダイによってマークされた指標化合物を用いる。例えば蛍光マーカであり、指標化合物と混合されまたは結合される。これは例えば共有結合による。マークした指標化合物の例は、WO2001/85799またはWO2006/32441に記載されている。この場合、これらマークした指標化合物を、本発明の文脈で用いることができる。
【0008】
したがって、上述の後者の手法において、指標化合物の濃度の測定結果として、光信号を用いる。この場合、指標化合物の対応する濃度は、例えば光信号と濃度との間の既知の関係から推定することができる。この既知の関係は例えば、実験的なもの、準実験的なもの、または分析的性質によるものであり、例えば較正測定によって判定する関係である。したがって例えばDE10023051A1において、指標化合物は、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)でマークしたシニストリンである、この場合、非侵襲測定ヘッドによる非侵襲で経皮的なFITC蛍光信号の測定について、特に記載されている。この測定ヘッドは、光ファイバ測定ヘッドとして構成されている。外部光源は、光ファイバを介して皮膚を照射し、そこに含まれているFITC−シニストリン分子を励起する。FITCが発する蛍光は光ファイバによって取り出され、外部検出器へ転送される。
【0009】
しかし、DE10023051A1に記載されているような蛍光信号の測定は、装置技術の観点から非常に複雑である。測定信号を評価するために複雑なスペクトルグラフを提供する必要があるからである。さらに、光ファイバシステムが必要であり、関連する励起光損失により、高強度光源(具体的にはレーザ)を用いることが必要になる。ただし光ファイバシステムは、複雑な光源およびレーザとともに用いると、可動的な態様またはポータブル機器によって腎クリアランスの測定を実施することができないという効果をもたらす。むしろ実際には、当該目的のために特別に設計された光学ラボにおいて実施しなければならない。
【0010】
上述の同様の指標化合物が、WO2010/020673に記載されている。本文書は簡易化された測定法を記載しており、例えばプラスタの形態のポータブルセンサを用いるものである。
【0011】
原理的には、ポータブル装置として適しているその他分析システムが、一般に医療診断のその他分野において知られている。したがって、例えばUS2004/0210280A1は、経皮治療および診断のために用いることができるプラスタ状のシステムを記載している。同文書は特に、同システムが個別に皮膚から液体サンプルを収集し取り出すことを提案している。A.Pais等:“High−sensitivity, disposable lab−on−a−chip with thin−film organic electronics for fluorescence detection”,Lab Chip,2008,8,794−800において、廃棄可能なラボオンチップテスト素子が提案されている。後者は、有機LEDと有機光検出器に基づいている。テスト素子は、マイクロ流体テスト素子として構成されており、蛍光検出によって流体サンプルを分析することができる。DE102004048864A1は、無線データ送信機能を有する分析テスト素子を記載している。同素子は、体液からの検体の濃度を判定するために用いられる。同文献は、システムの電気部品の少なくとも一部をポリマ電子部品に基づき構成することを提案している。US2006/020216A1は、ポータブル健康管理装置を記載している。同装置は特に、血圧測定のために用いることができる。同文書は特に、経皮入射する光の吸収によって血管内の血液の動きを測定することを提案している。
【0012】
一般に、従来技術における腎機能テストについては、代表例としてイヌリンに依拠している。この場合、イヌリン測定は通常、血清サンプルまたは尿サンプルにおいて酵素的に影響を受ける。蛍光マークしたイヌリンを用いる非侵襲手法は、結果があいまいであった(WO2001/85799)。FITCシニストリンは、蛍光ベースGFR判定の標準として確立された(WO2001/85799;Pill 2005,Anal Bioanal Chem 382:59−64;Pill 2005,Europ J Medicinal Chem 40:1056−1061)。分離サンプルにおいて計測結果は大部分が影響を受ける。
【0013】
しかし、これら最後に述べた従来技術から知られている手法とデバイスは、血液サンプルおよび/または尿サンプルをサンプリングすることを必要とする。これは被験者の許容度を低下させるか、またはGFRもしくはこれに比例するパラメータを直接判定することができない。この理由により多くの手法は、近似値として指標化合物の血漿クリアランスを判定している(Frennby等(2002),Eur.Radiol 12:475に記載されている)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的の1つは、既知のデバイスと方法の不利益を回避する、臓器機能(具体的には腎機能)を判定するためのデバイスと方法を提供することである。具体的には、被検体のGFRを判定する方法を提供することを意図する。本目的は、独立項の特徴を有する本発明によって実現される。本発明の独立したまたは組み合わせによるさらなる有利な点は、従属項に提示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって本発明は、被検体の臓器機能を判定する方法に関し、同方法は:
a)第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第1濃度−時間曲線を提供するステップ、
b)第1位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第2濃度−時間曲線を提供するステップ、
c)少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対して前記第1濃度−時間曲線と前記第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップ、
d)各上記ステップにより被検体の臓器機能を判定するステップ、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】腎機能測定のための2コンパートメントモデルの例である。
【
図1B】2コンパートメントモデル数式から得られる測定例のフィッティングである。
【
図2A】腎機能測定のための3コンパートメントモデルの例である。
【
図2B】3コンパートメントモデル数式から得られる測定例のフィッティングである。
【
図3A】腎機能測定のための4コンパートメントモデルの例である。
【
図3B】4つ同時に記録した濃度−時間曲線の測定例である。
【
図3C】静脈内ボーラスの測定後に安定状態に達するまで一定注入した結果である。
【
図4】本発明に係るデバイスの例であり、第1センサ110、第2センサ120、データ処理ユニット130を備える。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、用語“有する”“備える”“含む”その他任意の文法的変形語は、非排他的に用いられる。したがってこれら用語は、本文脈が記載する主体においてこれら用語によってもたらされる特徴以外のものが存在しない場合と、1以上のその他特徴が存在する場合との双方を表す。例えば“AはBを有する”“AはBを備える”“AはBを含む”は、AにおいてB以外の要素が存在しない場合(すなわちBのみから構成されている場合)と、主体AにおいてB以外に1以上の要素が存在する場合との双方を表す。例えば要素C、要素CとD、その他要素である。このことから当業者は、本発明の方法が例えば3以上の濃度−時間曲線を有し得ることを理解するであろう。
【0018】
以下において、用語“望ましい”“より望ましい”“最も望ましい”“具体的に”“より具体的に”“特に”“より特定的に”その他同様の用語は、オプション要素とともに用いられ代替可能性を排除しない。したがってこれら用語によってもたらされる特徴は、オプション要素であって特許請求範囲を制限することを意図したものではない。本発明は、当業者が理解するように、代替要素を用いて実施することができる。同様に、“本発明の実施形態”または同様の表現によってもたらされる特徴は、オプション要素であることを意図しており、本発明の代替実施形態に関して何ら制限するものではなく、本発明の範囲を何ら制限するものではなく、本発明のその他オプション要素や非オプション要素によってもたらされる組み合わせの可能性を何ら制限するものではない。
【0019】
本明細書において、用語“被検体”は動物に関するものであり、望ましくは哺乳類に関するものであり、より望ましくは家畜や愛玩動物に関するものである。最も望ましくは、被検体は人間である。
【0020】
本明細書において、用語“臓器機能”は、血液に対するまたは血液からの物質通過を調節および/または制御する被検体の臓器の活動に関するものである。したがって望ましくは、同用語は血液脳関門機能、腸壁関門機能、肺機能、肝臓機能、または脾臓機能に関するものである。より望ましくは、同用語は腎機能に関するものである。本明細書における用語“臓器機能を判定する”は、望ましくは関連する臓器の機能に比例する測定可能パラメータを判定することに関するものであることを、当業者は理解するであろう。臓器は1以上の機能を有すること、臓器の個別機能を判定するために個別パラメータを測定できることを、当業者は理解するであろう。したがって望ましくは、腎機能を判定することは、GFRを判定することに関するものである。
【0021】
本明細書において、用語“濃度−時間曲線を提供する”は、濃度−時間曲線を以下に説明するように利用可能にすること関するものである。望ましくは、濃度−時間曲線を提供することは、本発明にしたがって測定曲線を取得することに関するものである。したがってより望ましくは、第1濃度−時間曲線を提供するステップは、第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって第1濃度−時間曲線を取得するものである。またステップb)において第2濃度−時間曲線を提供することは、第1位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって第2濃度−時間曲線を取得するものである。上述のように、両濃度−時間曲線について、指標化合物を投与する前に少なくとも1つの時点において蛍光を測定してバックグラウンド信号(ベースライン)を測定する。当業者は同用語がその他ステップを含み得ることを理解するであろう。例えば望ましくは、被検体を測定デバイスに接触させるステップ、測定値を記録するステップ、などである。
【0022】
本明細書において、用語“指標化合物”は、少なくとも1つの励起波長における光子照射時またはその後に放射波長における光子を出射する化合物に関するものである。望ましくは放射波長は励起波長と同一ではないことを、当業者は理解するであろう。より望ましくは、放射波長は励起波長よりも短い(“アップコンバート”)。最も望ましくは、放射波長は励起波長よりも長い。原理的には、発光する全ての種類の物質は、本発明の方法に適している。ただし、照射後の短時間の間に発光する物質が望ましい。したがって指標化合物は、吸収した照射を平均1s以下で再放射することが望ましい。より望ましくは1ms以下である。さらに望ましくは1μs以下である。したがって最も望ましくは、本発明の指標化合物は蛍光化合物である。
【0023】
望ましくは、本発明の指標化合物は内因性化合物である。すなわち、被検体の身体内に存在し、および/または被検体の身体内で生成される化合物である。より望ましくは、指標化合物は外因性化合物である。すなわち、被検体の身体内には通常存在しない化合物である。内因性化合物を被検体に投与して血液内のその当業者は理解するであろう。
【0024】
望ましくは、指標化合物は親水性化合物と共有結合した蛍光低分子量化合物を含む。望ましくは、指標化合物は20kg/mol以下のモル質量を有する。より望ましくは10kg/mol以下である。さらに望ましくは5kg/mol以下である。最も望ましくは3kg/mol以下である。望ましくは、指標化合物は両性イオン化合物または酸性化合物である。より望ましくは、指標化合物は中性化合物である。最も望ましくは、指標化合物は塩基性化合物である。望ましくは、親水性化合物は以下のリストから選択される:オリゴ糖・多糖、オリゴ糖・ポリアルコール、オリゴ糖・ポリエーテル。望ましくは、オリゴ糖はシクロデキストリン、フルクタン、またはデキストランである。望ましくは、オリゴアルコールはオリゴビニルアルコールであり、ポリアルコールはポリビニルアルコールである。望ましくは、ポリエーテルはポリエチレングリコール(PEG)である。望ましくは、指標化合物は薬理学的に許容可能な化合物であり、または薬理学的に許容可能な調合によって提供される。
【0025】
指標化合物は、被検体の血液に対して確実に配送するのに適した任意手法によって、被検体に対して投与される。したがって、経口投与可能な指標化合物を用いることが望ましい。より望ましくは、指標化合物は動脈投与または静脈投与によって被検体の血流に対して投与される。望ましくは、指標化合物は持続注入として投与される。より望ましくは、指標化合物は静脈内ボーラスとして投与される。
【0026】
本明細書において、用語“蛍光を測定する”は、被験者内に存在する指標化合物の蛍光を準定量的にまたは望ましくは定量的に判定することに関するものである。蛍光を測定する方法は、当該分野においてよく知られており、一般に指標化合物を光子照射するステップ、励起照射の結果として指標化合物が放射する光子を検出するステップ、を含む。照射と検出に適した手段については以下に説明する。望ましくは、蛍光測定はWO2010/020673が記載しているセンサデバイスによって実現される。
【0027】
望ましくは、蛍光は第1位置で少なくとも6つの異なる時点において測定される。すなわち、第1時点、第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、第6時点である。第1時点において、バックグラウンド蛍光を判定する。したがって、少なくとも6つのデータペアを含む第1データセットが提供される。それぞれ、指標化合物の蛍光値と相関を有する。第1データセットは、第1位置で測定する体液内における指標化合物の濃度変化に対応することを、当業者は理解するであろう。したがってこのデータセットを用いて、第1位置下の組織における指標化合物の濃度変化に対応する濃度−時間曲線を得ることができる。望ましくは、第1時点においてバックグラウンド蛍光として測定される値は、第2〜第6時点において測定した値から差し引かれ、これにより測定値を訂正する。
【0028】
望ましくは、第2位置で少なくとも6つの異なる時点において蛍光を測定する。すなわち、第7時点、第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、第12時点である。したがって、少なくとも6つのデータペアを含む第2データセットが提供される。それぞれ指標化合物の蛍光値と相関を有する。第2データセットは、第2位置で測定する体液内における指標化合物の濃度変化に対応することを、当業者は理解するであろう。したがってこの第2データセットを用いて、第2位置下の組織における指標化合物の濃度変化に対応する濃度−時間曲線を得ることができる。望ましくは、第7時点においてバックグラウンド蛍光として測定される値は、第2〜第6時点において測定した値から差し引かれ、これにより測定値を訂正する。
【0029】
望ましくは、第1〜第6時点が包含するタイムフレームは、第7〜第12時点が包含するタイムフレームと重なり合う。より望ましくは、タイムフレームは少なくとも短い方のタイムフレーム期間の50%が重なり合う。最も望ましくは、タイムフレームは同一である。望ましくは、第1〜第6時点と第7〜第12時点は、包含するタイムフレームにわたって等間隔に配置される。望ましくは、少なくとも2つの位置における測定は、交互に実施される。すなわち、第1位置における測定の後に第2位置における測定を実施し、あるいはその反対である。より望ましくは、第1位置および第2位置における指標化合物の蛍光の測定は、同時に実施される。すなわち、第1時点と第7時点における測定を同時に実施し、第2時点と第8時点における測定を同時に実施し、以下同様である。
【0030】
望ましくは、測定する時点は、第1時点と第7時点が指標化合物の投与前となるように選択され、第2〜第5時点と第8〜第11時点の少なくとも1つは血液中の指標化合物の濃度が経時増加するように選択され、第3〜第6時点と第9〜第12時点の少なくとも1つは血液中の指標化合物の濃度が経時減少するように選択される。当業者が理解するように、このように時点を選択することは、定期的に測定値を取得し後述するように関連する時点を選択することによって実現することが望ましい。望ましくは、上述の時点選択は、適当なアルゴリズムによってアシストされる。指標化合物の濃度は2つの隣接時点間で変化しないかまたは実質的に変化しない場合があることを、当業者は理解するであろう。例えばGFRが測定され被験者が腎疾患で苦しんでいる場合である。したがって最も望ましくは、健常な基準被検体において指標化合物の濃度が最初は経時増加し次に経時減少するように、時点が選択される。
【0031】
したがって、臓器機能が腎機能またはGFRである場合、望ましくは第1時点と第7時点は、指標化合物投与の0〜1時間前となるように選択され、その後の時点は指標化合物投与から0〜24時間後となるように選択される。より望ましくは、第1および第7時点は、指標化合物投与の0〜0.5時間前となるように選択され、その後の時点は指標化合物投与の0〜12時間後となるように選択される。最も望ましくは、第1および第7時点は指標化合物投与の0〜0.25時間前となるように選択され、その後の時点は指標化合物投与の0〜6時間後となるように選択される。望ましくは、全ての時点が8時間以内であり、より望ましくは6時間以内であり、さらに望ましくは4時間以内であり、最も望ましくは2時間以内である。ただし当業者が理解するように、特に損傷した臓器機能の場合は、より長い間隔が必要になり、その場合の測定期間は8時間を超える場合がある。したがって望ましい実施形態において、本発明に係る方法は、2つの同一でない時点において指標化合物の濃度を判定するステップ、測定結果に基づき測定間隔を決定するステップ、を有する。
【0032】
用語“濃度−時間曲線”は、当業者が理解できるものであり、望ましくは被検体の体液内における指標化合物の濃度変化と時間との間の数学的相関に関するものである。したがって濃度−時間曲線は、異なる時点において取得された複数の濃度値を含む。濃度値は、固定レートおよび/または規定もしくは既知の時点で取得することができる。特に固定取得レートを用いる場合、測定曲線は単に濃度値のシーケンスを含む。測定曲線はさらに、各濃度値の時間情報を含むこともできる。したがって例えば、測定曲線は値ペアを含み、各値ペアは濃度値と各濃度値の取得時刻についての時間情報を含む。したがって濃度−時間曲線は、望ましくは、同一ではない時点における少なくとも6つの濃度値を判定するステップ、および取得した時間/濃度ペアを数学的に相関付けるステップ、によって取得される。例えば濃度時間グラフまたは濃度時間データベースに格納することができる。希薄溶液における指標化合物の蛍光は当該指標化合物の濃度に比例するので、当業者は濃度−時間曲線を、被検体の体液内における指標化合物の蛍光変化と時間との間の数学的相関によって表すことができることを理解するであろう。
【0033】
本明細書において、用語“経皮的”“経皮的に”は、血液(望ましくは被検体の間質液)内に存在する指標化合物を照射する光子を提供するステップ、または指標化合物が放射する光を検出するステップの少なくとも1つを、被検体の体表に対して実施する測定モードに関するものである。望ましくは、指標化合物を照射する光子を提供するステップと指標化合物が放射する光を検出するステップを、ともに被検体の体表に対して実施する。用語“体表”は、周辺環境と接した身体の全ての外表と内表に関するものである。したがって望ましくは、本発明の体表は、外科的手段を実施することなくアクセス可能な身体の一部である。例えば切開や皮膚切断である。望ましくは、体表は粘膜または皮膚であり、より望ましくは皮膚の体毛がないかまたは少ない領域である。望ましくは、体表は指またはつま先の皮膚、腕または脚の皮膚、胴体の皮膚、または指の爪もしくはつま先の爪である。
【0034】
本明細書において、用語“間質液”“間質”は、血管外において被検体の細胞を囲む体内液体に関するものである。当業者が理解するように、本用語は上皮体腔内の流体を除く。例えば脳脊髄液、関節液、膀胱尿である。
【0035】
用語“位置”は、特定位置における測定に関する場合、被検体の体表上の位置に関するものである。望ましくは、位置は信頼性の高い測定を可能にするために選択され、より望ましくは妨害のない測定のために選択される。本明細書によれば、第1位置と第2位置は同一ではない。これは、光源と指標化合物分子との間の光路のうち少なくとも1つと、指標化合物分子と検出器との間の光路が、その2つの位置について同一ではないことを意味する。より望ましくは、光源と指標化合物分子との間の光路と、指標化合物分子と検出器との間の光路は、その2つの位置について同一ではない。望ましい実施形態において、第1位置は第2位置とは異なる。これは、第1位置が第2位置から少なくとも0.001m離れていることを意味する。より望ましくは、第1位置は第2位置から少なくとも0.005m離れている。さらに望ましくは、少なくとも0.01m離れている。最も望ましくは、少なくとも0.1m離れている。
【0036】
本明細書において、用語“動力学モデル”は、拡散コンパートメント内の化合物の濃度変化の動力学モデルに関するものである。このモデルは原理的に、従来技術において知られており、本発明の実施例において詳細に説明している。
【0037】
同じ数学的原理を、2以上のコンパートメントモデルを記述するモデルに対して適用することができる。望ましくは、本発明の動力学モデルは、3コンパートメントモデルである。望ましくは、臓器機能が腎機能である場合、4コンパートメントモデルは以下の仮定に基づく:(i)指標化合物の配送に関する4つのコンパートメントは、血漿、間質液、測定位置における局所間質、配送コンパートメントであり、被検体の身体に対して投与する前の指標化合物を含むコンテナに対応する;(ii)指標化合物は、血漿からのみ除去され、その他コンパートメントからは除去されない;(iii)指標化合物は、配送コンパートメントから血漿へ配送される;(iv)指標化合物は、両方向において血漿と間質液との間で配送される;(v)配送コンパートメントにおける指標化合物の濃度は、時刻0において最大である;(vi)配送コンパートメントから指標化合物を配送するために必要な時間は>0であり、これは投与時刻における指標化合物の血漿濃度が取得可能な最大濃度ではないことを意味する;(vii)局所間質は、指標化合物を血漿コンパートメントと交換する;(viii)局所間質との小容積の交換は、血漿または間質液における指標化合物の濃度を変化させない。
【0038】
望ましくは、臓器機能が腎機能である場合、取得される濃度−時間曲線は、4コンパートメントモデルへフィッティングされる。望ましくは、フィッティングの結果は被検体の血漿量当たりのGFRである。より望ましくは、GFRは、当該結果と被検体の血漿量を乗じることにより、上記結果から計算される。上記のように曲線フィッティングの結果からGFRを計算することは、GFRが計算結果として直接求められるように濃度−時間曲線をフィッティングした後の計算ステップとして含まれる場合があることを、当業者は理解するであろう。望ましくは、フィッティングは、濃度−時間曲線の基礎になっているデータをデータ処理ユニットによって処理するステップによって実施される。例えば望ましくは、コンピュータまたはコンピュータネットワークである。
【0039】
上記仮定に基づき、動力学モデルを構築することができ、少なくとも6時点において第1位置と第2位置で濃度を測定することにより得られる濃度−時間曲線を上記動力学モデルへフィッティングできることを、当業者は理解するであろう。これは本明細書において実施例として記載する。望ましくは、フィッティングは、関連パラメータの最適値を推定するステップによって実施される。例えばGFR/VP、指数λ1・・・λ3、R3、L/VI,Lである。これは適当な数学的手法を用いて実施される。例えばリデュースドカイ2乗検定である。望ましくは、フィッティングは、濃度−時間曲線の基礎になっているデータをデータ処理ユニットで処理するステップによって実施される。例えばコンピュータやコンピュータネットワークである。
【0040】
望ましくは、被検体の血漿量は、当業者にとって既知の手法の1つによって判定される。例えば以下に記載されているものである:Margouleff(2013)Clin Nucl Med.38(7)534−7;Wang等(2010)Am J Physiol Renal Physiol.299(5)F1048−55。より望ましくは、被検体の血漿量は、利用可能な実験データにしたがって被検体の体重から判定される。例えば、Probst等(2006),Journal of the American Association for Laboratory Animal Science:JAALAS,45(2)49に記載されているものである。
【0041】
他の望ましい実施形態において、少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルへ第1および第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップは、第1および第2濃度−時間曲線を3コンパートメントモデルへフィッティングし、その結果に対して4番目のコンパートメントを組み込むステップを有する。
【0042】
望ましくは、本発明の方法は、以下のステップによって変更または補完することができる。
【0043】
望ましくは、濃度−時間曲線を取得する前に、体液内における指標化合物の蛍光を少なくとも2時点において測定し、2つの蛍光値が大きく異なるか否かを判定する。また、第1〜第5時点と第6〜第10時点の間隔は、その判定結果に基づき調整される。
【0044】
望ましくは、濃度−時間曲線のデータセットは継続的に取得され、品質制御アルゴリズムを濃度−時間曲線のフィッティングに対して適用する。既定の有意範囲内でデータにより臓器機能を判定できたとき、信号が出力される。当該信号は例えば望ましくは蛍光測定終了信号であることを、当業者は理解するであろう。
【0045】
本発明の基礎となっている研究において、臓器機能(望ましくは腎機能、より望ましくはGFR)は、被検体内の指標化合物の濃度変化を経皮測定することによって判定できることが分かった。具体的には、適当な数学的モデルを適用すること、および被検体の皮膚上の2つの異なる位置において2つの濃度−時間曲線を記録することにより、局所パラメータを計算結果から除去し、曲線フィッティングの直接結果として被検体の血漿量ごとのGFRを取得することができる。本発明の方法は、静脈内ボーラスにおいてマーカを適用する場合にも適用できるので、被検体の体表をさらに切開することなくGFRを判定することができる。経口投与するマーカを用いる場合、判定全体を非侵襲で完了することができる。
【0046】
上記定義は以下においても準用することができる。以下に説明する追加的定義および説明は、本明細書が記載する全ての実施形態においても準用することができる。
【0047】
本発明はさらに、本発明の方法にしたがって臓器機能を判定するデバイスに関するものである。同デバイスは、a)第1位置において指標物の蛍光を経皮測定する第1センサ、b)第2位置において指標物の蛍光を経皮測定する第2センサ、c)本発明の動力学モデルに対して、前記第1センサと前記第2センサが取得した値をフィッティングするデータ処理ユニット、を備える。
【0048】
本明細書において、用語“デバイス”は、少なくとも上記判定をすることができるように互いにリンクされた上記手段を備えるシステム手段に関するものである。指標化合物の蛍光を経皮測定する望ましい手段、およびフィッティングを実施する手段は、本発明の方法とともに上述し、データ処理に関連して以下に説明する。手段を動作可能にリンクする方法は、デバイスが備える手段のタイプに依拠する。例えば、指標化合物の蛍光を経皮測定する手段が適用される場合、その結果得られたデータは、例えばコンピュータプログラムによって処理し、所望の結果を得ることができる。この場合は望ましくは、上記手段は単一デバイスによって構成される。したがってデバイスは、指標化合物の蛍光を経皮測定する2つのセンサユニットと、得られたデータを処理して評価するコンピュータユニットを備える。
【0049】
本明細書において、用語“センサ”は、励起光を照射したとき指標化合物が放射する光子を検出することができるデバイスまたはその一部に関するものである。望ましくは、センサユニットはさらに、励起光源を備える。当業者は、上記手段をリンクする方法を理解するであろう。望ましいセンサは、例えばWO2010/020673に記載されており、例えばセンサプラスタの形態である。望ましくは、2つのセンサ(例えばセンサプラスタ)は、システムのデータ処理ユニットがセンサによる測定結果を統合してデータを動力学モデルへフィッティングできるように、リンクされる。この場合、センサは個別デバイスとして構成され、望ましくはキットとしてパッケージングされている。ただし、2つのセンサユニットを1つのケース内に構成することも考えられる。例えば第1計測位置と第2計測位置の距離が近い場合においてはこれが望ましい。他の望ましい実施形態において、励起光の1つの光源は、2つの異なる計測位置における指標化合物が照射されるように構成される。望ましいデバイスは、専門臨床医の専門知識なしで適用することができるものである。測定結果は、臨床医が解釈することを要する生データの出力として与えられる場合がある。ただし望ましくは、デバイス出力は臨床医の解釈を必要としない生データである。
【0050】
望ましくは、デバイスはさらに、少なくとも体重に相関を有する総血漿量の参照値を有するデータ記憶ユニットを備える。上述のように、臓器機能がGFRである場合と被検体の体重が提供される場合において、デバイスは、被検体の体重から血漿量を推定した結果と組み合わせて、濃度−時間曲線を動力学モデルへフィッティングした結果からGFRを直接計算することができる。
【0051】
さらに本発明は、本発明のデバイスと指標化合物を備えたキットに関するものである。
【0052】
本明細書において、用語“キット”は、本発明に係る上述の化合物、手段、試薬の集合であり、パッケージされまたはパッケージされていないものに関するものである。キットの構成要素は、個別ユニット(すなわち分離した部品のキット)によって構成することができる。さらに、本発明のキットは上記方法を実施するために用いることができることを理解されたい。望ましくは、全ての構成要素が上記方法を実施するため即時使用可能な態様で提供されることが考えられる。さらに同キットは、上記方法を実施する指示を含むことが望ましい。同指示は、ユーザの紙マニュアルまたは電子フォームによって提供される。望ましくは同マニュアルは、本発明のキットを用いて上記方法を実施したとき得られた結果を解釈するための指示を含む。これに代えてまたは追加して、同マニュアルは被検体の体重に応じて血漿量の参照値を含む。
【0053】
本発明はさらに、コンピュータプログラムに関するものである。コンピュータプログラムは、上記方法のいずれかを実施するように構成されている。同プログラムは、コンピュータ上で実行される。
【0054】
したがって、本発明はさらに、本明細書が開示する実施形態の1以上における本発明の方法を実施するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムを開示し提案する。プログラムは、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行される。具体的には、コンピュータプログラムはコンピュータ読取可能データ媒体上に格納することができる。したがって、上述のステップa)〜d)のうち1以上またはすべては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを用いることにより実施しまたはアシストすることができる。コンピュータプログラムを用いることが望ましい、具体的には、ステップc)とd)はその全てまたは一部を、コンピュータまたはコンピュータネットワークを陥ることにより実施することができる。例えば、コンピュータまたはコンピュータネットワークが第1および第2濃度−時間曲線を提供することによる。したがって一般に、第1および第2測定曲線を“取得する”ことは、測定曲線を提供することも含む。例えば、ステップc)とd)を実施するため、データメモリまたはデータベースに格納された測定曲線を提供することによる。
【0055】
本発明はさらに、本明細書が開示する実施形態の1以上における本発明の方法を実施するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品を開示し提案する。プログラムは、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行される。具体的には、コンピュータプログラムはコンピュータ読取可能データ媒体上に格納することができる。
【0056】
さらに本発明は、データ構造を有するデータ媒体を開示し提案する。同データ構造は、コンピュータまたはコンピュータネットワーク(例えば当該コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリ)へ読み込まれると、本明細書の実施形態の1以上に係る方法を実行することができる。
【0057】
本発明はさらに、本明細書が開示する実施形態の1以上に係る方法を実施するための、機械読取可能媒体に格納されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを提案し開示する。プログラムは、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行される。本明細書において、コンピュータプログラム製品は、取引可能製品としてのプログラムを指す。製品は一般に、任意フォーマットで存在し得る。例えば紙フォーマット、コンピュータ読取可能データ媒体、である。具体的には、コンピュータプログラム製品はデータネットワーク上で配信することができる。
【0058】
本発明は、本明細書が開示する実施形態の1以上に係る方法を実施するためにコンピュータシステムまたはコンピュータネットワークが読み取ることができる命令を含む変調データ信号を提案し開示する。
【0059】
望ましくは、本発明をコンピュータ実装した側面にしたがって、本明細書が開示する実施形態の1以上に係る方法のステップの1以上または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを用いて実施しまたはアシストすることができる。したがって一般に、データの提供および/または操作を含むステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを用いて実施することができる。一般にこれらステップは、マニュアル操作を必要とするステップ以外のステップを含む。例えば実際の測定を実施することに関するものである。
【0060】
具体的には、本発明はさらに以下を開示する:
少なくとも1つのプロセッサを備えたコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、前記プロセッサは本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するように構成されている、
コンピュータ読取可能データ構造であって、本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するように構成され、前記データ構造はコンピュータ上で実行される、
コンピュータプログラムであって、本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するように構成され、コンピュータ上で実行される、
本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するプログラム手段を備えたコンピュータプログラムであって、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行される、
上記実施形態に係るプログラム手段を備えたコンピュータプログラムであって、コンピュータ読取可能な記憶媒体に格納される、
データ構造を格納する記憶媒体であって、前記データ構造は、コンピュータまたはコンピュータネットワークのメインメモリおよび/またはワーキングストレージに読み込まれると本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するように構成されている、
プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード手段は、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行することにより本明細書が記載する実施形態の1つに係る方法を実施するため記憶媒体上に格納することができる。
【0061】
本明細書が引用する全ての文献は、参照によりその全開示内容および本明細書が特に言及する開示内容が本明細書に組み込まれる。
【0062】
以下の例は、本発明を説明するためのものである。これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0063】
例1:2コンパートメントモデル
腎機能測定のため当該分野で知られている2コンパートメントモデルを
図1Aに示す。
【0064】
例2:3コンパートメントモデル
腎機能測定のための3コンパートメントモデルを
図2Aに示す。
【0065】
動力学モデル:
E.L.Cussler.Diffusion:Mass transfer in fluid systems,Cambridge university press,1997が記載しているように:
【0067】
界面面積は未知なので、以下のように簡易化できる:
【0069】
図2Aのモデルにおける質量の経時変化は、以下のように表すことができる:
【0071】
信号は質量m
Iに比例するのではなく間質における濃度c
Iに比例するので、式0.1〜0.3は式0.5で変形する必要がある。Vは体積である:
【0078】
式0.7において式0.10、0.9、0.11を用いると:
【0080】
式0.12は、固定係数を有する不均質の2次微分方程式である。
【0088】
一般溶液−均一溶液と不均質溶液の線形結合
【0100】
血漿濃度c
P
式0.8によりc
Pは:
【0105】
例3:4コンパートメントモデル
腎機能測定のための4コンパートメントモデルの例を
図3Aに示す。
【0106】
局所間質c
I;L
皮膚の質は局所的に様々異なるので、同時計測した排泄曲線は差異点がある。この課題に対処するため、コンパートメント“局所間質”を導入する。2つの同時測定を用いて局所的差異を除去する。
【0109】
局所間質はシステムのその他部分と比較すると非常に小さいので、血漿マーカ濃度は微小質量フローdm
I;L/dtによって変更されないと仮定する。したがってc
Pについて式0.30を用いることができる:
【0122】
測定信号c
M
測定信号は、局所間質c
I;Lからの複合信号であり、血漿(センサ近傍)からの非常に小さい信号である。血漿信号は、ヘモグロビンが緑波長を吸収することを通じて大きく減少する。
【0127】
簡易化:R
2=R
3
血漿と間質との間の拡散について、進行方向と逆行方向の拡散係数は等しい:
【0129】
したがって式0.25は以下のように簡易化される:
【0131】
式0.52は以下のように変形できる:
【0133】
フィット関数
式0.54を用いて、式0.48のR
23を置き換えることができる:
【0139】
関数0.57を用いて、グローバル(両曲線において同じ値)またはローカルパラメータで2つの同時測定データをフィッティングする。表1:フィット関数0.57のグローバルおよびローカルパラメータ:
【0141】
関数0.57において、RとVの割合のみが直接判定される。V
P/R1が判定される場合、血漿量V
PはR1に達する必要がある。V
Pは入力パラメータとなり、個別の実験によりまたは文献値から判定することができる。例えばProbst等(2006), Journal of the American Association for Laboratory Animal Science:JAALAS,45(2):49である。
【0146】
例4:実験的検証
1 はじめに
1.1 目的
薬物動態モデルを、以下の実験により検証した。マーカの分布および排泄動態を、4つのNIC−腎臓デバイスを用いて、実験動物に対するi.v.ボーラス注入の後における皮膚上の蛍光測定によって判定した。120分後、マーカの大部分が排泄され、同じマーカの一定注入を開始して安定状態に達するまで継続した。この状態の血液サンプルを用いて、マーカの血漿濃度を判定した。一定注入実験は、GFR評価の代表的手法と考えることができ、これにより新規な薬理動態モデル(Schock−Kusch等(2012)Kidney Int.82(3):314−20)と組み合わせてボーラス実験のGFR評価結果を検証することができる。
【0147】
1.2 装置
・リアルタイムデータ観測のための無線ユニットを有する1つのNIC−腎臓デバイス(Mannheim Pharma&Diagnostics GmbH,Mannheim Germany)
・内部メモリを有する3つのNIC−腎臓デバイス(Mannheim Pharma&Diagnostics GmbH,Mannheim Germany)
注入ポンプ
・上述の血液サンプリングおよび血漿の蛍光測定のための装置(Kidney International 2011 Jun;79(11):1254−8)。
【0148】
1.3 動物
体重300〜350gの雄のSprague−Dawley(SD)ラット。測定は、起きている動物に対して実施した。動物数n=6。
【0149】
1.4 薬剤
・注入溶液ボーラス:FITC−シニストリン40mg/ml(Mannheim Pharma&Diagnostics GmbH,Mannheim Germany)
・注入溶液一定注入:FITC−シニストリン15mg/ml
・ボーラス投与:5mg/100g.b.w
・一定注入の間におけるポンプフローレート:0.01ml/分
・イソフルラン(Baxter Deutschland GmbH)
【0150】
2 プロトコル
2.1 処置
Schock−Kusch等(Kidney International 2011 Jun;79(11):1254−8)が記載しているように、動物に対してカテーテル法の標準処置とシェービングを施した。デバイスを取り付けるため、動物はイソフルランによって麻酔を施した。
【0151】
デバイスを取り付けた後、注入前に10分間スイッチを入れた。注入前に1つの血液サンプルを取り出す必要がある。
【0152】
2.2 ボーラスパート
t=0においてFITC−シニストリン注入後、ボーラス実験はt=120分継続した(Kidney International 2011 Jun;79(11):1254−8)。この期間の間、4つのデバイスがデータを記録した。
【0153】
2.3 一定注入パート
t>120分において、注入ポンプをONし、RFデバイスを介して蛍光レベルをモニタリングする。安定状態に達すると、2つの血液サンプルを10分間隔で取り出す。これらサンプルの血漿におけるFITC−シニストリン濃度は、上述のように蛍光測定によって判定される(Nephrol Dial Transplant.2009 Oct;24(10):2997−3001)。
【0154】
2.4 データ処理
取得したデータから、一定注入技術(Kidney Int.2012 Aug;82(3):314−20)にしたがって、および新規薬理動態モデルを用いてボーラス実験の間に評価した4つの排泄動態ペアの組み合わせから、GFRを評価する。
【0156】
2.6 結果
式0.57を用いるデバイス組み合わせのフィッティングペア
【0158】
動物(健康なSDラット)は、体重m=309gであった。体重ごとの血漿量レート0.0412ml/g(R.J.Probst,J.M.Lim,D.N.Bird,G.L.Pole,A.K.Sato,J.R.Claybaugh.Gender differences in the blood volume of conscious Sprague−Dawley rats.Journal of the American Association for Laboratory Animal Science:JAALAS,45(2):49,2006)について、血漿量VP=12.7mlである。
【0160】
その後の一定注入実験の間に採取した血液サンプルは、平均マーカ濃度0.093mg/mlを示した。動物に対する質量フローマーカ0.15mg/分は、GFR=1.61ml/分を示した(式0.65参照)。
【符号の説明】
【0161】
t:時間(分)
nsig:正規化信号
D:デバイス
H:配送コンパートメント
P:血漿コンパートメント
I:間質コンパートメント
I、L:局所間質コンパートメント
R:拡散レート×界面面積
M:測定データポイント
FC:フィッティングした曲線
110:第1センサ
120:第2センサ
130:データ処理ユニット
【手続補正書】
【提出日】2015年12月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の臓器機能を判定する方法であって、
a)第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第1濃度−時間曲線を提供するステップ、
b)第2位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することによって得られる、第2濃度−時間曲線を提供するステップ、
c)少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対して前記第1濃度−時間曲線と前記第2濃度−時間曲線をフィッティングするステップであって、前記拡散コンパートメントは、投与コンパートメント、血漿、間質、および局所間質を表し、グローバルまたはローカルのパラメータを割り当てる、ステップ、
d)各上記ステップにより被検体の臓器機能を判定するステップ、
を有し、
前記第1位置は前記第2位置とは異なり、第1および第2位置において指標化合物の蛍光を測定するステップは、同時実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)における第1濃度−時間曲線を提供するステップは、第1位置において体液の(i)少なくとも第1時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、および第6時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することにより第1濃度−時間曲線を取得するステップであり、
ステップb)における第2濃度−時間曲線を提供するステップは、第2位置において体液の(i)少なくとも第7時点におけるバックグラウンド蛍光、および(ii)少なくとも第8時点、第9時点、第10時点、第11時点、および第12時点における指標化合物の蛍光を経皮測定することにより第2濃度−時間曲線を取得するステップである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記動力学モデルは、4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルである
ことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記臓器機能は、糸球体ろ過率(GFR)である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記フィッティングの結果は、前記被検体の血漿量ごとのGFRである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記被検体の総血漿量に対して割り当てられた数値は、前記被検体の体重から判定される
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、指標化合物を前記被検体に対して投与するステップを有し、
前記指標化合物を投与するステップは、前記第1および第7時点の後である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記第2時点と前記第8時点は、最大でも前記指標化合物を投与した2時間後である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の方法にしたがって臓器機能を判定するデバイスであって、
a)第1位置において指標物の蛍光を経皮測定する第1センサ、
b)第2位置において指標物の蛍光を経皮測定する第2センサ、
c)請求項1から8のいずれか1項記載の動力学モデルに対して、前記第1センサと前記第2センサが取得した値をフィッティングするデータ処理ユニット、
を備え、
前記第1センサと前記第2センサは、前記データ処理ユニットが各前記センサによる測定結果を収集して少なくとも4つの拡散コンパートメントを表す動力学モデルに対してフィッティングするように、リンクされている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
前記デバイスはさらに、少なくとも体重に相関付けられた総血漿量の参照値を格納するデータ記憶ユニットを備える
ことを特徴とする請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
請求項9または10記載のデバイスと指標化合物を備えることを特徴とするキット。
【請求項12】
前記指標化合物は、親水性化合物と共有結合した蛍光低分子量化合物を含み、
前記親水性化合物は、オリゴ糖・多糖、オリゴ糖・ポリアルコール、オリゴ糖・ポリエーテルを含むリストから選択されている
ことを特徴とする請求項11記載のキット、または請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行される
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、
前記コンピュータまたはコンピュータネットワークは、請求項1記載の方法を実施するように構成されている
ことを特徴とするコンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【国際調査報告】