(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-502942(P2017-502942A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】膜分離の脱水による(メタ)アクリル酸エステルの精製
(51)【国際特許分類】
C07C 67/48 20060101AFI20170105BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20170105BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20170105BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170105BHJP
【FI】
C07C67/48
C07C69/54 Z
C07C67/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-538618(P2016-538618)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】FR2014053223
(87)【国際公開番号】WO2015086978
(87)【国際公開日】20150618
(31)【優先権主張番号】1362560
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレチャク,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】モルリエール,アンヌ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD11
4H006AD19
4H006BA66
4H006BD84
4H006KA06
4H006KC14
4H039CA66
4H039CD10
(57)【要約】
本発明は、触媒の存在下で4から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐のアルコールとの(メタ)アクリル酸の直接エステル化により、4から??個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、所望のエステル、未反応の酸およびアルコール、軽質副生成物および重質副生成物を含む反応混合物の形成をもたらし、該混合物は精製されたアルキル(メタ)アクリレートを得るために、分離手段により精製処理に供され、該精製処理はそれが、以下の流れ:即ち、精製された(メタ)アクリル酸エステルの回収をもたらす最終蒸留に供された流れ、反応混合物のデカンテーションから生じた水性流れ、または反応混合物中に存在する軽質副生成物の蒸留から生じた流れの少なくとも1つに適用される膜分離による脱水工程を含むことを特徴とする該製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で4から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐のアルコールとの(メタ)アクリル酸の直接エステル化により、4から10個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、所望のエステル、未反応の酸およびアルコール、軽質副生成物および重質副生成物を含む反応混合物の形成をもたらし、該混合物は精製されたアルキル(メタ)アクリレートを得るために、分離手段により精製処理を受け、
該精製処理はそれが、精製された(メタ)アクリル酸エステルの回収をもたらす最終蒸留に供される流れ、反応混合物の沈降から生じた水性流れ、または反応混合物中に存在する軽質副生成物の蒸留から生じた流れの少なくとも1つの流れに適用される膜分離による脱水工程を含むことを特徴とする該製造方法。
【請求項2】
アルコールが、ブタノール、2−エチルヘキサノールまたは2−オクタノールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸がアクリル酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
膜分離による脱水が、パーベーパレーションまたは蒸気透過による脱水であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
膜分離が、無機膜上または親水性高分子膜上の分離、または疎水性高分子膜上の分離であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
膜分離が、ゼオライト上またはポリビニルアルコールに基づく親水性膜上で実施されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連続、反連続、またはバッチ式タイプであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
膜分離により処理される流れは、50から70重量%の(メタ)アクリル酸エステル、20から30重量%のアルコール、0から12重量%の(メタ)アクリル酸、および3から12重量%の水を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
膜分離により処理される流れは、80から99重量%の水、2重量%未満の(メタ)アクリル酸エステル、および1から20重量%のアルコールを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
膜分離により処理される流れは、0.5から15重量%の(メタ)アクリル酸、25から65重量%の(メタ)アクリル酸エステル、20から60重量%のアルコール、および0.5から15重量%の水を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造に関し、その主題はより具体的にはアルキル(メタ)アクリレートの精製中に発生した少なくとも1つの流れの膜分離による脱水工程を実施することにある、C
4からC
10アルキル(メタ)アクリレートの製造における改良である。
【背景技術】
【0002】
アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応から(メタ)アクリル酸エステルを製造することは既知の実務である。この反応は、水の発生を伴う平衡触媒反応である。それは、また、不純物を生成する副反応を伴う。
【0003】
平衡を移すためには、発生した水を除去することが必要であり、商業用の仕様に合致する製品を得るためには、未反応物(アルコールおよび酸)をリサイクルし、不純物、特にエステルより軽量の化合物およびエステルより重い化合物を除去することが必要である。
【0004】
この目的のために、反応混合物の一連の処理は一般に、蒸留および/もしくは抽出、または沈降操作によって実施され、当該一連の処理は、特に共沸混合物の存在のために実施するのが比較的複雑であり、またエネルギー面でコストがかかる。
【0005】
反応混合物は、所望のエステル、水、未反応の酸およびアルコール、エステルの沸点よりも低い沸点を有する「軽質」副生成物、ならびに「重質」副生成物、即ち、エステルの沸点よりも高い沸点を有する副生成物を含む。反応混合物に適用される精製シーケンスは様々な流れを生み、その組成はアルコールおよびエステルの非極性特性によって、即ち、使用されるアルコールのアルキル鎖の長さに従って変化する。これらの流れは反応および/または抽出工程から生じる水を含むという共通の特徴を共有している。
【0006】
出願人の名称における特許出願FR2980475号に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、膜分離の脱水のためのモジュールが、効果的に水を除去し、(メタ)アクリル酸エステルに対する良好な選択性を生むために、(メタ)アクリル酸エステルおよび未反応アルコールを含む流れを脱水するために使用される。これらのモジュールは、反応工程でまたは様々な化合物の濃度の明確に定義された範囲のための未反応アルコールのリサイクルで、主にC
1からC
4アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレートまたはブチルアクリレートの製造の場合に、特に適用される。
【0007】
驚くべきことに、出願人は、今や、C
4からC
10アルキル(メタ)アクリレートを製造する場合に、文献FR2980475号に記載された濃度範囲外の水性流に膜分離により脱水工程を適用することが可能であることを見出した。これは、精製および/またはリサイクルが意図された、上記文献の方法で処理された水性流から分離された流れに存在する水を効率的に除去することをもたらし、このため方法の生産性およびエネルギー消費に有害な水のループの形成を回避する。特に、脱水工程は、所望のエステルの仕上げ塔の上流で、または軽質化合物の分離塔の頂部で、または粗製反応混合物の沈降後の水槽上で有利に適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許出願第2980475号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の主題は、触媒の存在下で4から10個の炭素原子を含む直鎖または分岐のアルコールとの(メタ)アクリル酸の直接エステル化により、4から10個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、所望のエステル、未反応の酸およびアルコール、軽質副生成物ならびに重質副生成物を含む反応混合物の形成をもたらし、該混合物は精製されたアルキル(メタ)アクリレートを得るために、分離手段により精製処理を受け、該精製処理はそれが、以下の流れ:即ち、精製された(メタ)アクリル酸エステルの回収をもたらす最終蒸留に供される流れ、反応混合物の沈降から生じた水性流れ、または反応混合物中に存在する軽質副生成物の蒸留から生じた流れの少なくとも1つに適用される膜分離による脱水工程を含むことを特徴とする該製造方法である。
【0010】
一実施形態によると、膜分離による脱水は、パーベーパレーションまたは蒸気透過による脱水である。
【0011】
一実施形態によれば、膜分離は、無機膜、好ましくはゼオライト、より好ましくはT型ゼオライト上の、または親水性高分子膜、好ましくは、ポリビニルアルコールに基づく親水性膜上の分離である。
【0012】
一実施形態によれば、膜分離は、スルザーにより販売されている4060膜のような疎水性高分子膜上の分離である。
【0013】
一実施形態によれば、この方法は、連続式、半連続式またはバッチ式の方法から選択される。
【0014】
本発明は、より具体的には、膜に基づく方法について設置された膜の1平方メートル当たりの透過液の1時間当たりの流量に正比例する設置コストを最小限に抑えながら、良好な選択性を有し、水の効率的な除去を可能にし、エネルギーコストを低減することを可能にする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供する。
【0015】
また、疎水性膜を使用する特定の場合には、7%未満の有機化合物を含有する水性流を処理できるため、下流に配置される精製塔のサイズを減らし、ひいてはそのエテルギー消費を減らし、またはそれを完全に排除することが可能になる。
【0016】
驚くべきことに、文献FR2980475号に記載された方法に関して、本発明の膜分離による処理工程は、記載された濃度範囲外で非常に良好な性能を有し、1時間当たりより高い速度で水性流を処理することを可能にする。これらの性能レベルは、特に水が親水性膜を通過することを容易にする非極性特性のために、アルコール、ひいては使用されるエステルの選択に本質的に関連している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(メタ)アクリル酸エステルを製造するための半連続方法を実施するための設備を概略的に示す。
【
図2】均一系触媒反応を用いて(メタ)アクリル酸エステルを製造するための連続方法を実施するための設備を概略的に示す。
【
図3】不均一系触媒反応を用いて(メタ)アクリル酸エステルを製造するための連続方法を実施するための設備を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明をより詳細に、以下の説明では非限定的に説明する。
【0019】
用語「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリレート」は、恒例により、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」および「アクリレートまたはメタクリレート」を意味する。
【0020】
特に断らない限り、百分率で与えられた組成物は重量値として理解される。
【0021】
本発明の文脈において使用されるアルコール化合物は直鎖状または分枝状であってもよい。アルコール化合物は第1級アルコールまたは第2級アルコールであってもよい。アルコール化合物は4または5または6または7または8または9または10個の炭素原子を含んでもよい。アルコール化合物は置換されていても非置換でもよく、好ましくは置換されていない。アルコール化合物は、特に、ブタノール、2−エチルヘキサノールまたは2−オクタノールであってもよい。
【0022】
得られた対応するエステルは、ブチルアクリレートもしくはブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートもしくは2−エチルヘキシルメタクリレート、2−オクチルアクリレートもしくは2−オクチルメタクリレートである。
【0023】
好ましくは、(メタ)アクリル酸はアクリル酸である。
【0024】
(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル化反応は触媒の存在下で行われ、触媒は例えば、不均一触媒の場合には酸性カチオン交換樹脂とすることができ、均一触媒の場合には、硫酸型の無機酸、またはメタンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸またはそれらの混合物のような有機スルホン酸とすることができる。
【0025】
一般に、エステル化反応は、化学量論的過剰量のアルコールの存在下で行われる。
【0026】
反応混合物(以下、反応流とも称する)は、生成されたエステル、および分離されるべき軽質化合物、そしてリサイクル可能であれば、副反応から生じる重質副生成物を表す未反応物、主にアルコールを含む。
【0027】
本発明によれば、膜分離による脱水を受ける流れは重質副生成物を含まない、または実質的に含まない水性流であり、即ち、(メタ)アクリル酸エステルの沸点よりも高い沸点を有する副生成物の分離処理の下流の流れである。
【0028】
一実施形態によれば、膜分離によって処理された流れは、精製された(メタ)アクリル酸エステルの回収をもたらす最終蒸留に供される流れである。この実施形態によれば、水性流は、結果的に、一般に50%を超える、高い含有率の(メタ)アクリル酸エステルを含む。
【0029】
一実施形態によれば、膜分離によって処理された流れは、反応混合物の沈降から発生した水性流であり、沈降によって分離された有機相は水を実質的に含まない。この実施形態によれば、水性流は、80%を超える水、および一般に10%未満である、低い含有率の有機化合物を含む。
【0030】
一実施形態によれば、膜分離により処理される流れは、反応混合物中に存在する軽質副生成物の蒸留から生じた流れである。この実施形態によれば、水性流は、結果的に、一般に20%を超える、高い含有率のアルコールを含む。
【0031】
本発明によれば、膜分離により処理される流れは、0.5から99%の広い範囲の水、約1から60%にわたる濃度範囲のアルコール、約0.5から70%にわたる濃度範囲のエステル、およびより少ない程度で、15%までに及び得る濃度範囲の酸を含む場合がある。
【0032】
一実施形態によれば、膜分離により処理される流れは、50から70%の(メタ)アクリル酸エステル、20から30%のアルコール、0から12%の(メタ)アクリル酸、および3から12%の水を含む。
【0033】
一実施形態によれば、膜分離により処理される流れは、80から99%の水、2%未満の(メタ)アクリル酸エステル、および1から20%のアルコールを含む。
【0034】
一実施形態によれば、膜分離により処理される流れは、0.5から15重量%の(メタ)アクリル酸、25から65%の(メタ)アクリル酸エステル、20から60%のアルコール、および0.5から15重量%の水を含む。
【0035】
本発明によれば、膜分離による脱水工程は、好ましくは50℃から100℃、より好ましくは55℃から85℃の範囲の温度で、パーベーパレーション(液相中の原料および膜を通過する透過液の蒸発)、または蒸気透過(気相中の原料)によって実施される。
【0036】
図1は、膜分離工程が、精製された(メタ)アクリル酸エステルの回収をもたらす最終蒸留に供された流れに適用される実施形態を示す。
図1は、(「バッチ」式反応を用いる)半連続法に対応し、この設備は単一の反応器35を備える。この反応器35は、アルコール化合物のための供給ライン32(アルコール化合物用タンク31から始まる)、(メタ)アクリル酸のための供給ライン33、および添加剤(複数可)供給ライン34、例えば、硫酸のような酸触媒および/または重合禁止剤のための供給ラインによって供給される。
【0037】
反応器35は、塔、沈降タンク、リサイクルライン、水除去ラインを含む水除去システム36を備える。
【0038】
反応器35の出口では、反応流は反応流の抜き出しライン37によって回収される。このラインは貯蔵タンク38に供給し、このタンクの出口では反応流が第1の移送ライン40によって回収される。化合物を中和する供給ライン39は第1の移送ライン40に接続され、反応流の中和を可能にする。中和化合物としては、水酸化ナトリウムのような塩基性化合物が用いられる。
【0039】
第1の移送ライン40は反応流40に含まれる水の一部を除去することを可能にする沈降タンク41に供給する。沈降タンク41の出口では、第2の移送ライン42が接続され、このラインは水供給ライン44を備える洗浄塔43に供給する。第3の移送ライン45は洗浄塔43の出口で接続され、移送ライン45上に配置された膜分離脱水装置50による水の除去後に蒸留塔46に供給する。
【0040】
蒸留塔46の底部では、(メタ)アクリル酸エステル化合物に富む流れを抜き出すためのライン47が接続されており、このラインを介して本質的に精製された(メタ)アクリル酸エステル化合物が回収される。
【0041】
蒸留塔46の頂部では、未反応物に富む、特に未反応アルコール化合物に富む流れをリサイクルするためのライン48が接続されており、このラインを介して、酸、アルコール化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物および水の混合物が回収される。この混合物は反応に戻され、未反応アルコール化合物に富む流れをリサイクルするためのライン48は、混合物に含まれる水の任意の付加的な除去の後、反応器35の入り口に接続される。
【0042】
この付加的な除去は、未反応アルコール化合物に富む流れをリサイクルするためのライン48上に配置された膜分離脱水装置(図示せず)によって行うことができる。
【0043】
膜分離脱水装置50は、パーベーパレーション装置(液相中の原料および膜を通る透過液の蒸発)、または蒸気透過装置(気相中の原料)とすることができる。
【0044】
脱水は、好ましくは、50℃から100℃、より好ましくは55℃から85℃の範囲の温度で行われる。
【0045】
使用される膜は、好ましくは、ポリビニルアルコールに基づく親水性膜、またはゼオライトのような無機セラミック膜である。
【0046】
膜分離脱水装置50内で脱水される混合物は、50から70%の(メタ)アクリル酸エステル、20から30%のアルコール、0から12%の(メタ)アクリル酸、および3から12%の水を含む。
【0047】
図1に示されている設備は、特に、ブタノールからのブチルアクリレート、2−エチルヘキサノールからの2−エチルヘキシルアクリレート、または2−オクタノールからの2−オクチルアクリレートの半連続式製造に使用することができる。
【0048】
図2は、膜分離工程が反応混合物の沈降によって発生した水性流に適用される実施形態を示す。
【0049】
連続方法を示す
図2によれば、設備は単一の反応器R1を備える。この反応器R1は、アルコール化合物のための供給ライン1、(メタ)アクリル酸のための供給ライン2、および添加剤(複数可)のための供給ライン3、例えば、硫酸、メタンスルホン酸またはパラ−トルエンスルホン酸のような触媒のための供給ライン3によって供給される。
【0050】
反応器R1は、塔(図示せず)、沈降タンクD1およびリサイクルラインに接続される。
【0051】
反応器出口とその塔では、頂部生成物がライン12を介して沈降タンクD1に送達される。
【0052】
有機相はライン13を介して抜き出されて、ライン22を介して反応器に、またはライン21を介して蒸留塔C1のいずれかに戻される。塔C1での蒸留後の最終生成物は、横引き出しライン26を介してS1に送られる。
【0053】
軽質生成物がライン25を介して除去処理システムに送達される間、形成されたエステルおよび重質生成物を本質的に含有する塔C1の底部からの生成物は、ライン20を介して反応にリサイクルされる。
【0054】
沈降タンクD1からの水相はライン14を介して送達され、15を介して反応塔の還流に、または16を介して蒸留塔C2のいずれかへ送達される。塔C2は、この水相に含まれる有機化合物を回収して、ライン17を介してそれらを反応器に戻すことを可能にする。
【0055】
本発明によれば、膜分離脱水装置51は、水相のためのライン14上に沈降タンクD1の出口に配置される。この水に富む相に含まれ、前記脱水装置によって分離された有機相を、ライン18を介して反応器に送達し、有機化合物を含まない水相を、ライン16を介して塔C2に、またはライン27を介して膜処理の分離段階の数に応じて水処理プラントに直接送達することが可能である。
【0056】
反応器R1への熱の供給は、ボイラーH1で加熱され、次いで、ライン7を介して反応器に戻される循環ループ4によって確保され、または流れの一部を再生して、それをライン9を介して反応器に戻すために、ライン8を介して薄膜蒸発器または熱分解装置のような熱処理システムに送達される。処理された流れ10(重質生成物)はライン11を介して除去されるか、ライン5を介して部分的にリサイクルされる。
【0057】
膜分離脱水装置51は
図1に関連して先に説明されたようなものであることができるが、好ましくはスルザーによって販売される4060膜のような疎水性膜を有する。
【0058】
この実施形態では、膜分離脱水51に供される流れは、80から99%の水、2%未満の(メタ)アクリル酸エステルおよび1から20%のアルコールを含む水に富む流れである。
【0059】
図2に示される設備は、均一酸触媒反応によってブタノールおよびアクリル酸からブチルアクリレートを連続的に製造するために特に使用することができる。
【0060】
図3は、膜分離工程が、反応混合物中に存在する軽質副生成物の蒸留から生じる流れに適用される実施形態を示す。
【0061】
図3を参照すると、連続方法の別の実施形態によれば、設備は単一の反応器RSを備える。この反応器RSは、不均一触媒として酸性樹脂を含む。設備は、廃水処理プラントに向けて反応水を除去することを可能にする蒸留塔C3オーバーヘッドを有する。塔C3は頂部で冷たいアルコールの流れ28によって供給される。塔C3の底部は反応器RSに送達される。反応に使用されるアクリル酸またはメタクリル酸はライン27を介して注入される。反応器RSの頂部の生成物はライン38を介して塔底部に戻され、その一部は蒸留塔C4を通過する。ライン54を介して塔C4の頂部から生じるリサイクルされたアルコールは、ライン27を介して反応器に送達される。
【0062】
本発明によれば、塔C4の頂部からの流れは、反応にリサイクルする前に流れに含まれる水の大部分を除去することを可能にする膜分離装置52内で脱水工程を受ける。塔C4の底部からの流れはライン35を介して、底部で重質副生成物を、頂部で所望のエステルを分離することを可能にする最後のテーリングカラムC5に送達される。精製されたエステルは、ライン58を介して貯蔵タンクPFに送達される。カラムC5の底部からの流れは塔C4への供給原料に部分的にリサイクルされるか、廃水処理プラントに送達される。
【0063】
膜分離脱水装置52は、
図1に関連して上述したようなものとすることができる。
【0064】
この実施形態によれば、膜分離脱水装置52に供される流れは0.5から15%の(メタ)アクリル酸、25から65%の(メタ)アクリル酸エステル、20から60%のアルコールおよび0.5から15%の水を含む。
【0065】
図3に示される設備は、不均一系酸触媒反応により2−エチルヘキサノールおよびアクリル酸から2−エチルヘキシルアクリレートを連続的に製造するために特に使用することができる。
【0066】
以下の実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することなく、本発明を説明する。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
試験は、170cm
2の膜表面積を有するスルザー膜分離パイロット上で行った。試験された膜は、参照Pervap(R) 1201を用いたポリビニルアルコールに基づく親水性膜である。
【0068】
ブチルアクリレートを製造するための実際の設備から生じる種々の流れを膜に適用した。これらの流れは、
図1に示された流れ45に対応する。これらの流れは、主に、ブチルアクリレート、ブタノール、水、および場合によりアクリル酸を含む。
【0069】
得られた透過液は95%から99%の間の水を含む。換言すれば、膜の選択性は優れており、後者はエステルの存在によって実質的に影響されない。
【0070】
試験条件および温度に応じて、膜を通る流れは0.8kg/m
2.hから2.7kg/m
2.hまで変化し、これは従来技術の方法において一般に達成された値と比較して高い値を示す。
【0071】
アクリル酸およびアクリル酸エステルの存在にもかかわらず、膜の劣化は観察されなかった。
【0072】
Pervap(R) 1201膜で得られた結果を表1にまとめる。
【0073】
【表1】
【0074】
分離係数αは以下により計算される。
【数1】
式中、y
H2Oおよびx
H2Oは、それぞれ透過液中および供給原料中の水の重量分率である。多成分混合物のパーベーパレーションの場合には、y
Rおよびx
Rは、それぞれ(1−y
H2O)および(1−x
H2O)である。
【0075】
β因子または濃縮係数は、供給原料中の水濃度に対する透過液中の水の濃度の比である。
【0076】
[実施例2]
試験は、170cm
2の膜表面積を有するスルザー膜分離パイロット上で行った。試験された膜は、参照Pervap(R) 4060を用いた疎水性膜である。
【0077】
ブチルアクリレートを製造するための実際の設備から生じる流れを膜に適用した。これらの流れは、
図2に示された流れ14に対応する。これらの流れは主に水(95.2%)を含み、少量のブタノール(4.7%)および微量のブチルアクリレート(0.1%)を含む。
【0078】
Pervap(R)4060膜を用いて異なる温度で得られた結果を表2にまとめる。
【0079】
【表2】
【0080】
アルコールに富んだ透過液は、有利には、反応にリサイクルすることができる。
【0081】
[実施例3]
試験は、170cm
2の膜表面積を有するスルザー膜分離パイロット上で行った。試験された膜は、参照Pervap(R) 1201を用いたポリビニルアルコールに基づく親水性膜である。
【0082】
2−エチルヘキサノール(2EHeOH)から2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を製造するための実際の設備から生じる2つの流れを異なる温度で膜に適用した。これらの流れは、
図3に示された流れ54に対応する。これらの流れは、アルコール、エステル、酸および少量の水を含む。
【0083】
Pervap(R) 1201膜で得られた結果を表3にまとめる。
【0084】
【表3】
【0085】
脱水装置は、水が反応にリサイクルされる前に残留2−エチルヘキサノールを含む流れ中に存在する水の大部分を除去することを可能にする。
【国際調査報告】