特表2017-503526(P2017-503526A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)の特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ デクス−マルセイユの特許一覧

特表2017-503526修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法
<>
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000037
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000038
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000039
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000040
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000041
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000042
  • 特表2017503526-修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法 図000043
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-503526(P2017-503526A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20170113BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20170113BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   C12Q1/04
   G01N33/569 B
   G01N33/569 F
   G01N33/536 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2016-550993(P2016-550993)
(86)(22)【出願日】2014年10月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2014073252
(87)【国際公開番号】WO2015063173
(87)【国際公開日】20150507
(31)【優先権主張番号】13190794.1
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(71)【出願人】
【識別番号】513109429
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス−マルセイユ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュカン, サム
(72)【発明者】
【氏名】ヴォゼイユ, ボリス
(72)【発明者】
【氏名】バロン, オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】マス ポンス, ジョルディ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ06
4B063QR66
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】修飾単糖化合物の使用を含む生菌を特異的に標識する方法の提供。
【解決手段】本発明は、細菌を含有する試料中に存在する所定のカテゴリーに属するグラム陰性菌の生菌を特異的に標識する方法に関する。該方法は、a)第1の反応性化学基を有する少なくとも1つの修飾単糖化合物と共に上記試料の上記細菌をインキュベートすることにより、上記第1の反応性基を有する単糖残基を、上記細菌の外膜の多糖中に取り込む工程であって、上記第1の反応性化学基は、第2の反応性基と化学的に反応可能なものである工程と、b)上記細菌の外膜中に取り込まれた上記修飾単糖残基を、上記第2の反応性基を有する標識分子と接触させる工程を含む。上記修飾単糖化合物は下記式(I)で表される化合物又はその塩である。
[化1]

(式中、Xは、O、NH又はSであってよく、R1、R2及びR3は、独立にH、OH、NH、OH及びNHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHはその保護基で置換されていてもいなくてもよく、X、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは、上記第1の反応性基R’1で置換されている。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌を含有する試料中に存在する所定の細菌カテゴリーに属する生菌を特異的に標識する方法であって、
a)第1の反応性化学基を有する少なくとも1つの修飾単糖化合物と共に上記試料の上記細菌をインキュベートすることにより、上記第1の反応性基を有する単糖残基を、上記細菌の外膜の多糖、特に上記細菌の外膜のLPS又はCPS中に取り込む工程であって、上記第1の反応性化学基は、第2の反応性基と化学的に反応可能なものである工程と、
b)上記細菌の外膜中に取り込まれた上記修飾単糖残基を、上記第2の反応性基を有する標識分子と接触させることにより、上記生菌の外膜中に取り込まれた上記単糖残基の上記第1の反応性基と、上記標識分子の上記第2の反応性基とを化学反応させて、共有結合を形成させる工程を含み、
上記修飾単糖化合物は、上記細菌の外膜の上記多糖の内在性ウロソン酸残基の修飾された内在性前駆体であり、上記修飾単糖化合物は、下記式(I)で表される化合物又はその塩である方法。
【化1】
(式中、
Xは、O、NH又はSであってよく、好ましくはO及びNHであり、より好ましくはOであり、
R1、R2及びR3は、独立にH、OH、NH、OH及びNHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されており、
R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHは、その保護基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されていてもいなくてもよく、
X、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは、上記第1の反応性基で置換されている。)
【請求項2】
上記修飾単糖化合物は、
XがOであり、
R1が、H、OH、NH、OH及びNHであって、上記保護基で置換されていてもいなくてもよく、
R3が、NHであって、その保護基、好ましくはAcで置換されていてもいなくてもよく、
R2が、OHであって、その保護基で置換されていてもよいが、好ましくは置換されておらず、
R1、R3及びR4のうち少なくとも1つが、上記第1の反応性基で置換されている
上記式(I)で表される化合物又はその塩である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記修飾単糖化合物は、下記式(Ix−1)〜(Ix−4)のいずれかで表される化合物又はその塩である、
請求項1又は2に記載の方法。
【化2】
(式中、
R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHは、その保護基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されていてもいなくてもよく、
R5及びR6は、独立に、置換されていてもいなくてもよいアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基であってよく、
R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは、上記第1の反応性基で置換されている。)
【請求項4】
上記修飾単糖化合物は、
XがOであり、
R1及びR3が、NHであって、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、
R2が、OHであって、その保護基で置換されていてもよいが、好ましくは置換されておらず、
R4が上記第1の反応性基で置換されており、R4が、好ましくはCH、−CHOH又は−CHNHであり、上記第1の反応性基Raが、好ましくはNである
上記式(I)で表される化合物又はその塩である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記修飾単糖化合物は、化合物Ia及びIbから選択され、
上記化合物Iaは、R1及びR3が−NHAcであり、R2が−OAc又は好ましくはOHであり、R4がCH−Ra、好ましくは−CH−Nである上記式(I)で表される化合物であり、
上記化合物Ibは、R1及びR3が−NHCOCHRaであり、Raが好ましくはNであり、R2が−OAc又は好ましくはOHであり、R4がCHOHである上記式(I)で表される化合物である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記細菌は、外膜のLPS層内に内在性単糖残基を有するグラム陰性菌であって、好ましくは、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、テナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、シュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)、シュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、シュードアルテロモナス・ディスティンクタ(Pseudoalteromonas distincta)、シノリゾビウム・フレディ(Sinorhizobium fredii)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)及びエルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、好ましくは、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、シュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びテナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)から選択される、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記修飾単糖化合物は、下記式(Ia−1)、(Ia−1’)及び(Ib−1)のいずれかで表される化合物又はその塩である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【化3】
【請求項8】
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の生菌を特異的に標識するための請求項7に記載の方法であって、
上記修飾単糖化合物は式Ia−1の化合物である方法。
【請求項9】
c)上記細菌がその外膜のグリカンに結合した上記標識分子を含むか否かを検出すること、及び/又は、上記標識分子を含む上記生菌を固体基材に固定化することによって、生菌を検出する工程を更に含み、
上記標識分子は、検出可能な物質を含む分子、又は、検出可能な物質と反応可能若しくは結合可能な分子であるか、又は、
上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1の分子であり、該第1の分子は、第2の分子及び/又は固体基材と反応可能又は結合可能であり、
好ましくは、上記第2の分子は検出可能な物質を含み、及び/又は、上記第2の分子は上記固体基材に結合している若しくは結合可能である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
細菌を含有する試料中に存在する所定の細菌カテゴリーに属する生菌を特異的に検出するための請求項9に記載の方法であって、
上記標識分子は、検出可能な物質を含む検出可能な分子であり、
c)上記細菌が、その外膜のグリカンに結合した上記検出可能な分子を含むか否かを検出することによって、生菌を検出する工程を含む方法。
【請求項11】
上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド又は第1の結合タンパク質であり、
工程c)において、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質を、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質と特異的に反応又は結合する第2のリガンド又は第2の結合タンパク質と接触させることによって、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は検出及び/又は固定化される、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、
工程c)において、上記第1のリガンドに結合した上記生菌は、上記第1のリガンドに特異的な抗体と上記細菌との反応によって検出され、上記抗体は、検出可能な物質、好ましくは蛍光色素若しくは発光分子又は酵素を含む、
請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記第1の反応性基は、アジド基そのもの又はアジド基を有する基、及び、アルキン基そのもの又はアルキン基を有する基から選択され、上記第1の反応性基は好ましくはアジド基であり、
上記第2の反応性基は、それぞれ、アルキン基そのもの又はアルキン基を有する基、及び、アジド基そのもの又はアジド基を有する基から選択され、上記第2の反応性基は好ましくはアルキン基であり、
上記アジド反応性基と上記アルキン反応性基の反応はアジドアルキン付加環化により行われる、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を行うためのキットであって、
上記第1の反応性基で置換された上記式(I)の修飾単糖化合物であって、細菌の外膜の多糖、特に上記細菌の外膜のLPS又はCPS中に取り込まれる修飾された内在性ウロソン酸残基に変換され得る修飾前駆体である上記式(I)の修飾単糖化合物と、
上記第1の反応性基と反応可能な上記第2の反応性基を有する上記標識分子と、
必要であれば、上記細菌の外膜の上記多糖中に取り込まれた上記類似体残基の上記第1の反応性基を、上記標識分子の上記第2の反応性基と反応させるための反応体を備えるキット。
【請求項15】
上記所定のカテゴリーに属する細菌を増殖させることができ、好ましくは上記所定のカテゴリーに属する細菌の増殖に特異的である培養培地又はインキュベーション培地を更に備える、
請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性菌の外膜の多糖(特にLPS又はCPS)中に修飾単糖化合物を取り込むことによって種特異的な多糖の代謝標識を行うことを含む、生菌を標識する方法に関する。本発明は、より具体的には、特にレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の外膜のLPS中に特異的に存在する内在性単糖の前駆体を用いて、上記細菌を特異的に標識できる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生菌、より具体的にはグラム陰性菌の生菌を標識する方法を開示している。該方法は、アジド基(−N)やアルキン基(−C≡CH)等のいわゆる第1の反応性化学基を有するよう修飾したウロソン酸型単糖化合物の類似体を同化により上記細菌の膜中に取り込むことから実質的になる方法であり、これにより、上記第1の反応性基と、相補的な反応性基を有する分子とを特にいわゆるクリックケミストリー(click chemistry)反応により反応させることができる。
【0003】
より具体的には、特許文献1には、このようなウロソン酸又はウロソン酸塩残基を含む内在性糖の修飾類似体は、上記残基が全てのグラム陰性菌の細菌膜のグリカン、特にLPSに存在する点、また、同じ形態に直接同化されてグラム陰性菌の上記LPSのグリカン中に取り込まれる点で特に有利であると開示されている。
【0004】
ウロソン酸(ケトアルドン酸又はアルドウロソン酸とも呼ばれる)は、ケトース類に属する単糖であり、C−2にケトン基を、C−1にカルボン酸を有する。オクツロソン酸及びノヌロソン酸は、様々な形態の細菌グリカン類(特にLPS、莢膜多糖、糖タンパク質)を含む様々な天然グリカン類に見られる。これらのグリカンの合成へと至る生合成経路には、通常、遊離のウロソン酸が中間体として関与しており、この遊離のウロソン酸がその後、CMP−糖供与体の形態で直接活性化される。全てのグラム陰性菌のLPSは上記ウロソン酸塩残基を含んでいる。
【0005】
より厳密に言えば、特許文献1に開示された方法は、細菌を含有する試料中に存在する所定の細菌カテゴリーに属する生菌を特異的に標識する方法であって、
a)単糖化合物の少なくとも1つの類似体と共に上記試料の上記細菌をインキュベートする工程であって、上記単糖は、上記所定のカテゴリーに属する細菌の外膜のグリカンの内在性単糖残基であり、該内在性単糖残基は、ウロソン酸又はウロソン酸塩残基を含み、上記単糖化合物の類似体は、第1の反応性化学基によって所定の位置が置換された修飾単糖であり、上記第1の反応性化学基は、標識分子が有する第2の反応性基と反応可能なものである工程と、
b)上記細菌を、上記第2の反応性基を有する上記標識分子と接触させることにより、上記生菌の外膜のグリカン中に取り込まれた上記類似体残基の上記第1の反応性基を、上記標識分子の上記第2の反応性基と反応させる工程と
を含む方法である。
【0006】
特に、特許文献1において、上記類似体単糖は、下記式(I’)のいずれかで表される置換ウロソン酸又はそのウロソン酸塩である。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、
A、B及びCは、独立にH、OH、NH、OH及びNHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、
Dは、炭素数2〜4のアルキル鎖であり、
A、B、C又はDのうち少なくとも1つは、上記第1の反応性基で置換されている。)
【0009】
特許文献1において、工程a)で生菌と共にインキュベートされた後で該菌に同化されてその外膜中に取り込まれる上記単糖の類似体は、上記第1の反応性基で置換されて修飾されているだけであれば、それ以外は、外膜のグリカン鎖中に取り込まれている内在性単糖と同一であってよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2013/107759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、グラム陰性菌内に同化され、その外膜のLPS中に取り込まれ得る改良された単糖化合物であって、当該カテゴリーの細菌に対する取り込みの特異性、及び/又は、菌体内へのより優れた浸透能、及び/又は、その化学合成がより容易であることに関して有利な性質を示す改良された単糖化合物を見出すことを目的とする。
【0012】
本発明によれば、工程a)において、上記第1の反応性基により修飾された単糖化合物を用いることができ、この単糖化合物は、上記細菌の外膜のグリカンの多糖(LPSや莢膜多糖(CPS)等)の内在性単糖残基とは異なるものであるが、それにもかかわらず、野生型の細菌、すなわち、対応する内在性単糖の生合成経路に欠陥を持たない細菌の外膜に浸透して取り込まれ得ることが分かった。
【0013】
本発明によれば、上記第1の反応性基により修飾される上記単糖化合物は、内在性単糖の生合成経路においてその前駆体を構成する。より具体的には、本発明に係るそのような前駆体の化合物分子において上記第1の反応性基が置換している部分は、外膜のグリカン鎖中に取り込まれている内在性単糖残基とは異なっているが、後述するように、該外膜のグリカン鎖中に取り込まれている内在性単糖残基が修飾された形態で代謝される。上記内在性単糖は上記第1の反応性基により修飾される。
【0014】
より具体的には、本発明は、特許文献1で開示され請求される上記式I’で表される修飾された内在性単糖の前駆体を提供する。実際に、本発明の修飾前駆体は、インキュベーション工程a)において、上記第1の反応性基を有すること以外は上記細菌の外膜のグリカンの内在性単糖残基と同じ分子形態を有する修飾単糖へと代謝及び変換される。
【0015】
より厳密には、本発明は、細菌を含有する試料中に存在する所定の細菌カテゴリーに属する生菌を特異的に標識する方法であって、
a)第1の反応性化学基を有する少なくとも1つの修飾単糖化合物と共に上記試料の上記細菌をインキュベートすることにより、上記第1の反応性基を有する単糖残基を、上記細菌の外膜の多糖、特に上記細菌の外膜のLPS又はCPS中に取り込む工程であって、上記第1の反応性化学基は、第2の反応性基と化学的に反応可能なものである工程と、
b)上記細菌の外膜中に取り込まれた上記修飾単糖残基を、上記第2の反応性基を有する標識分子と接触させることにより、上記生菌の外膜中に取り込まれた上記単糖残基の上記第1の反応性基と、上記標識分子の上記第2の反応性基とを化学反応させて、共有結合を形成させる工程を含み、
上記修飾単糖化合物は、上記細菌の外膜の上記多糖の内在性ウロソン酸残基の修飾された内在性前駆体であり、上記修飾単糖化合物は、下記式(I)で表される化合物又はその塩である方法を提供する。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、
Xは、O、NH又はSであってよく、好ましくはO及びNHであり、より好ましくはOであり、
R1、R2及びR3は、独立にH、OH、NH、OH及びNHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されており、
R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHは、その保護基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されていてもいなくてもよく、
X、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つ、好ましくはR1、R3又はR4は、上記第1の反応性基Raで置換されている。)
【0018】
上記第1及び第2の反応性基の化学反応によって共有結合が形成される。該共有結合は、ごくわずかな例においては、リガンドが配位した金属錯体における共有配位結合であってもよい。
【0019】
上記修飾単糖化合物の単糖は、上記第1の反応性基を有さないこと以外は式(I)と同じ式で表される(未修飾の)内在性前駆体であることを理解しなければならない。本発明の修飾された内在性前駆体は、上記細菌の外膜の多糖の修飾されたウロソン酸型内在性単糖残基よりも化学的に容易に調製できるが、上記修飾された内在性前駆体は、菌体内で代謝され、外膜中で異なる形態、すなわち当該細菌の外膜の多糖の修飾された内在性単糖残基として同化される。
【0020】
本発明に係る前駆体の別の利点は、−COOH等の極性基を有さないため、より迅速に及び/又はより容易に菌体内へ浸透できることである。
【0021】
本発明に係る前駆体の別の利点は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)と関連させて更に後述するが、同一細菌種の異なる血清群又は亜種にそれぞれ存在するいくつかの異なる修飾された内在性単糖として代謝され得ることである。
【0022】
より具体的には、上記式Iで表される化合物は、上記細菌による同化過程中に、下記式I’で表される修飾されたウロソン酸型内在性単糖へと変換され得ることが分かった。
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、
Yは、R2=YHとなるようにO又はNHであり、R2がOHの場合はYはO、R2がNHの場合はYはNHであり、
Aは、独立にH、OH、NH、好ましくはH又はOHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されており、
Bは、独立にH、OH、NH、好ましくはOH又はNHであってよく、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル(Ac)基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されており、
CはR1であり、
Dは−CHR3−CXHR4である。)
【0025】
したがって、上記式Iの修飾前駆体において、R1、R2、R3及びR4は、上述したように、上記式I’で表される修飾されたウロソン酸型内在性単糖のY、C及びDに含まれるものである。
【0026】
上記式(I)の化合物は、グラム陰性菌のカテゴリーに属する細菌によって同化され、該細菌の外膜のLPSのグリカンの修飾された内在性単糖残基として該細菌の外膜中に取り込まれ得る。上記内在性単糖残基は、ウロソン酸又はウロソン酸塩残基を含んでおり、上記第1の反応性基は、上記修飾単糖化合物が外膜の上記グリカン中に取り込まれた後、上記修飾された内在性単糖残基中の遊離基としての位置に配置される。
【0027】
式(I)の化合物は、充分に高い濃度、特に10−5M以上、より具体的には10−5M〜1Mの濃度で使用すれば、対応する天然前駆体とうまく競合し始めることが分かった。
【0028】
より具体的には、細菌濃度が好ましくは1011cell/ml以下、より具体的には10cell/ml以下のものを検出するためには、工程a)でのインキュベーション時間は、1時間〜24時間、好ましくは2時間〜12時間であり、修飾単糖化合物の濃度は10−5M〜1Mである。
【0029】
より具体的には、OHの保護基は、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基又はホルミル基であってもよい。
【0030】
より具体的には、NHの保護基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基から選択することができる。
【0031】
NHは、1つ又は2つの保護基により保護することができ、特に1つのCH基と1つのアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基とにより保護することができる。より具体的には、上記式Iにおいて、NH基は、N−アセチル(NHAc)基の形態であってもよく、N−アセトイミドイル(NHAm)基、N−(N−メチルアセトイミドイル)基、N−(N,N−ジメチルアセトイミドイル)基、N−ホルミル(NHFo)基、NH−ヒドロキシブタノイル(NH−Hb)基の形態であってもよく、また、更にN−メチル化されていてもいなくてもよい。
【0032】
なお、上記式I及びI’の化合物は、以下のように下記式II及びIIIの化合物並びにそれぞれ下記式II’及びIII’の化合物と平衡状態にあってもよい。
【0033】
【化4】
【0034】
W、Y及びZは、R1=WH、R2=YH及びR3=ZHとなるように、O又はNHである。
【0035】
工程a)において、上記第1の反応性基が上記単糖化合物において置換される位置は、上記細菌の外膜の多糖中に取り込まれた上記内在性単糖残基中で遊離基となる位置であることが好ましい。「遊離基(free group)」とは、上記LPS中で共有結合に関与していない位置を意味する。
【0036】
式(I)の化合物は、外膜LPSにおけるウロソン酸又はウロソン酸塩残基の少なくとも1つの位置が遊離型であるグラム陰性病原菌を標識するのに用いることができ、後述の化合物から選択することができるのは、特に以下の細菌属に見られるウロソン酸型又はその塩型の内在性単糖の前駆体である。レジオネラ属(Legionella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クロストリジウム属(Clostridium)、カンピロバクター属(Campylobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ビブリオ属(Vibrio)、リステリア属(Listeria)、大腸菌属(Escherichia)、シュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)、赤痢菌属(Shigella)、エルシニア属(Yersinia)、シュワネラ属(Schewanella)、サルモネラ属(Salmonella)、プロビデンシア属(Providentia)、プロテウス属(Proteus)、テナキバクラム属(Tenacibaculum)、バクテロイデス属(Bacteroides)、バルトネラ属(Bartonella)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブラキスピラ属(Brachyspira)、ブルセラ属(Brucella)、バークホルデリア属(Burkholderia)、クラミドフィラ属(Chlamydophila)、コクシエラ属(Coxiella)、フランシセラ属(Francisella)、カルディオバクテリウム属(Cardiobacterium)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、エーリキア属(Ehrlichia)、エイケネラ属(Eikenella)、エリザベトキンギア属(Elizabethkingia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フソバクテリウム属(fusobacterium)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レプトスピラ属(Leptospira)、モーガネラ属(Morganella)、ナイセリア属(Neisseria)、ネオリケッチア属(Neorickettsia)、パスツレラ属(pasteurella)、プレジオモナス属(Plesiomonas)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、プロビデンシア属(Providencia)、リケッチア属(Rickettsia)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)及びトレポネーマ属(Treponema)。
【0037】
より具体的には、上記細菌は以下のものから選択される。アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、バルトネラ・クインターナ(Bartonella quintana)(ロシャリメア・クインターナ(Rochalimaea quintana))、バルトネラ属(Bartonella spp.)(ロシャリメア属(Rochalimaea spp.))、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブラキスピラ属(Brachyspira spp.)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)(狭義)、ブルセラ・メリテンシス次亜種アボルツス(Brucella melitensis biovar Abortus)(ブルセラ・アボルツス(Brucella abortus))、ブルセラ・メリテンシス次亜種カニス(Brucella melitensis biovar Canis)(ブルセラ・カニス(Brucella canis))、ブルセラ・メリテンシス次亜種スイス(Brucella melitensis biovar Suis)(ブルセラ・スイス(Brucella suis))、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(シュードモナス・マレイ(Pseudomonas mallei))、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)(シュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei))、クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)(クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci))、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、野兎病菌亜種チュラレンシス(Francisella tularensis subsp. Tularensis)(「野兎病菌亜種ニアークティカ(Francisella tularensis subsp. nearctica)」、野兎病菌次亜種チュランレンシス(Francisella tularensis biovar Tularensis)、野兎病菌タイプA(Francisella tularensis type A))、カンピロバクター・フェタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター属(Campylobacter spp)、カルジオバクテリウム・ホミニス(Cardiobacterium hominis)、クラミドフィラ・アボルタス(Chlamydophila abortus)、クラミドフィラ・キャビエ(Chlamydophila caviae)、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)(肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae))、エドワジェラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エーリキア属(Ehrlichia spp.)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)(フラボハクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)、エニンゴセプチカム(eningosepticum))、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(=クレブシエラ・モビリス(Klebsiella mobilis))、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌亜種ホルアークティカ(Francisella tularensis subsp. holarctica)(「野兎病菌次変種パレアークティカ(Francisella tularensis var. palaearctica)」)、野兎病菌タイプB(Francisella tularensis type B))、壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス属(Haemophilus spp.)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター・ピロリ(Campylobacter pylori)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、レジオネラ・ボゼマナエ(Legionella bozemanae corrig.)(フルオリバクター・ボゼマナエ(Fluoribacter bozemanae))、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レジオネラ属(Legionella spp.)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レプトスピラ・アレキサンデリを含む広義のレプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans sensu lato inclut Leptospira alexanderi)、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ(Leptospira borgpetersenii)、レプトスピラ・ファイネイ(Leptospira fainei)、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レプストピラ・カースクネリー(Leptospira kirschneri)、レプストピラ・ノグチ(Leptospira noguchii)、レプストピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)、レプトスピラ・ウェイリイ(Leptospira weilii)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)(プロテウス・モーガニイ(Proteus morganii))、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ネオリケッチア・センネツ(Neorickettsia sennetsu)(エーリキア・センネツ(Ehrlichia sennetsu)、リケッチア・センネツ(Rickettsia sennetsu))、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラ属(Pasteurella spp.)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas spp.)、プレボテラ属(Prevotella spp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)(プロテウス・レットゲリ(Proteus rettgeri))、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、プロビデンシア属(Providencia spp.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、シュードアルテロモナス・ディスティンクタ(Pseudoalteromonas distincta)、リケッチア属(Rickettsia spp.)(オリエンティア(リケッチア)・ツツガムシ(Orientia(Rickettsia) tsutsugamushi)を除く)、リケッチア・アカリ(Rickettsia akari)、リケッチア・カナデンシス(Rickettsia canadensis)、リケッチア・コノリイ(Rickettsia conorii)、リケッチア・モンタネンシス(Rickettsia montanensis)、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチィ(Rickettsia rickettsii)及び発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、サルモネラ・エンテリカ亜種アリゾネ(Salmonella enterica subsp. Arizonae)(サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、サルモネラ・コレラエスイス亜種アリゾネ(Salmonella choleraesuis subsp. arizonae))、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型エンテリティディス(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis))、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィA(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A)(サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi))、パラチフィB(Paratyphi B)及びパラチフィC(Paratyphi C)、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウム(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium)(ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))、シュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)、シュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)(タイプ1を除く)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、テナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum))、「トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)」(「梅毒トレポネーマ亜種ペルテヌエ(Treponema pallidum subsp. pertenue)」)、トレポネーマ属(Treponema spp.)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)(=ベネッケア・パラヘモリティカ(Beneckea
parahaemolytica))、ビブリオ属(Vibrio spp.)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、ペスト菌(Yersinia pestis)及び偽結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)。
【0038】
好ましくは、上記修飾単糖化合物は、
XがOであり、
R1が、H、OH、NH、OH及びNHであって、上記保護基で置換されていてもいなくてもよく、
R3が、NHであって、その保護基、好ましくはAcで置換されていてもいなくてもよく、
R2が、OHであって、その保護基で置換されていてもよいが、好ましくは置換されておらず、
R1、R3及びR4のうち少なくとも1つが、上記第1の反応性基Raで置換されている
上記式(I)で表される化合物又はその塩である。
【0039】
より具体的には、R4が−CH、−CHOH又は−CHNHであって、該基が上記第1の反応性基Raで置換されている。
【0040】
好ましくは、上記細菌は、外膜のLPS層内に内在性単糖残基を有するグラム陰性菌であり、上記細菌の標識に後述の化合物を用いることができ、上記細菌は好ましくは以下の細菌から選択される。レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、テナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(以前は滑走細菌症菌(Flexibacter maritimus)、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、シュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)、シュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、シュードアルテロモナス・ディスティンクタ(Pseudoalteromonas distincta)、シノリゾビウム・フレディ(Sinorhizobium fredii)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)及びエルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)。
【0041】
より具体的には、上記修飾単糖化合物は下記式(Ix−1)〜(Ix−4)のいずれかで表される化合物又はその塩である。
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、
R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHは、その保護基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくは、R4はH、CH、CHOH又はCHNHであり、
R5及びR6は、独立に、置換されていてもいなくてもよいアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基であってよく、R5及びR6は好ましくはアシル(Ac)基であり、
R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは、上記第1の反応性基で置換されている。)
【0044】
より具体的には、上記修飾単糖化合物は、
XがOであり、
R1及びR3が、NHであって、その保護基で置換されていてもいなくてもよく、
R2が、OHであって、その保護基で置換されていてもよいが、好ましくは置換されておらず、
R4が、上記第1の反応性基であるRaで置換されており、上記第1の反応性基が、好ましくはNであり、R4が、好ましくはRaで置換されたCH、CHOH又はCHNHである
上記式(I)で表される化合物又はその塩である。
【0045】
より具体的には、上記修飾単糖化合物は、化合物Ia及びIbから選択され、
上記化合物Iaは、R1及びR3が−NHAcであり、R2が−OAc又は好ましくはOHであり、R4がCH−Ra、好ましくは−CH−Nである上記式(I)で表される化合物であり、
上記化合物Ibは、R1及びR3が−NHCOCHRaであり、Raが好ましくはNであり、R2が−OAc又は好ましくはOHであり、R4がCHOHである上記式(I)で表される化合物である。
【0046】
より具体的には、上記修飾単糖化合物は、下記立体異性体の式(Ia−1)〜(Ia−4)及び(Ib−1)〜(Ib−4)のいずれかで表される化合物又はその塩である。
【0047】
【化6】
【0048】
式Ia−1及びIb−1は式Ix−1に含まれる。
【0049】
式(Ix−1)〜(Ix−4)で表される化合物の単糖部分は、それぞれ下記式(Ic−1)〜(Ic−5)で表されるノヌロソン酸型の内在性単糖の前駆体である。すなわち、
(Ix−1)は、下記式(Ic−1)及び(Ic−2)で表される内在性単糖化合物の前駆体であり、
(Ix−2)は、下記式(Ic−3)で表される内在性単糖化合物の前駆体であり、
(Ix−3)は、下記式(Ic−4)で表される内在性単糖化合物の前駆体であり、
(Ix−4)は、下記式(Ic−5)で表される内在性単糖化合物の前駆体である。
【0050】
【化7】
【0051】
Leg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)(Ib−6)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)及びビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)に見られる。
【0052】
【化8】
【0053】
4eLeg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−タロ−ノヌ−2−ウロソン酸)(Ib−1)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)のLPS及びシュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)に見られる。
【0054】
【化9】
【0055】
8eLeg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)(Ib−2)は、大腸菌(E.coli)株、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)及びシュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)に見られる。
【0056】
【化10】
【0057】
Pse(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−L−マンノ−ノヌ−2−ウロソン酸)(Ib−5)は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、シュードアルテロモナス・ディスティンクタ(Pseudoalteromonas distincta)、シノリゾビウム・フレディ(Sinorhizobium fredii)及びコレラ菌(Vibrio cholerae)のO抗原(LPS)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、並びに、クリベラ属(Kribella spp.)5(グラム陽性)及びアクチノプラネス・ウタヘンシス(Actinoplanes utahensis)(グラム陽性)の細胞壁、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)のLPSコア、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)及びボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の鞭毛の糖タンパク質、並びに、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)細菌のCPSに見られる。
【0058】
【化11】
【0059】
5,7,8−トリアミノ−3,5,7,8,9−ペンタデオキシノヌ−2−ウロソン酸(C−8での立体配置は未知)は、テナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(以前は滑走細菌症菌(Flexibacter maritimus))に見られる。
【0060】
したがって、式Ia−1〜Ia−4の化合物の場合、上記細菌は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、シュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びテナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)から選択されることが好ましい。
【0061】
本発明の修飾単糖化合物は、下記式(Ia−1)、(Ia−1’)及び(Ib−1)のいずれかで表される化合物又はその塩であることがより好ましい。
【0062】
【化12】
【0063】
好ましい一実施形態においては、上記方法により、上記式Ia−1又はIb−1の化合物を用いてレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の生菌を標識することができる。
【0064】
実際に、空調設備あるいは機器、特に冷却塔や、水泳プール等の他の含水設備から得られた水等、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)が見られる含水環境媒体から採取した試料は、上記式(Ic−1)又は(Ic−2)の内在性残基を含む他の細菌を含有しない。そのため、標識が検出された場合、上記方法はレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を特異的に標識していると考えられる。
【0065】
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)は、比較的致死率が高く社会に対する影響が重大であることを特徴とする、定期的な集団発生に関与する病原菌である。こうした流行を防ぐためには、環境水試料中にこの細菌が存在しているかどうかを定期的に監視することが不可欠であるが、従来の培養を用いた検出及び同定方法は、最大で10日間を要する。本発明は、他のレジオネラ種や他の属を標識することなく、より迅速且つ特異的にレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を同定できる方法を提供する。
【0066】
上記化合物Ia−1(6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノピラノース)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)のほとんどの血清群に浸透し、Leg−N及び/又は4eLeg−Nへと代謝され、上記細菌の外膜のLPS層の上記内在性単糖残基として外膜中に取り込まれ得る。上記内在性単糖残基は、4eLeg(4−エピレジオナミン酸又は5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−タロ−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくは4−エピレジオナミン酸塩残基、又は、Leg(レジオナミン酸=(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくはレジオナミン酸塩残基であってよい。試験されたレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の様々な血清群において示されるように、これら2つの内在性単糖4eLeg及びLegは、特にレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)種の様々な血清群のほとんどに存在する。
【0067】
より具体的には、上記修飾単糖化合物は、下記式(Iy−1)で表される化合物又はその塩である。
【0068】
【化13】
【0069】
(式中、
R4は、H又は炭素数1〜4のアルキル鎖であって、その各炭素は、OH又はNHで置換されていてもいなくてもよく、該OH又はNHは、その保護基、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されていてもいなくてもよく、好ましくは、R4はCHOHであり、
R5は、置換されていてもいなくてもよいアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基であってよく、好ましくは、R5はCOCHであり、
R4及びR5基の少なくとも1つは、上記第1の反応性基で置換されている。)
【0070】
式(Iy−1)で表される化合物の単糖部分は、下記式Ic−6で表されるノヌロソン酸型の内在性単糖の前駆体である。
【0071】
【化14】
【0072】
Neu(5−アミノ−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)(Ic−6)は、大腸菌(E.coli)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、モラクセラ・ノンリクファシエンス(Moraxella nonliquefaciens)及びマンヘミア(パスツレラ)・ヘモリチカ(Mannheimia(Pasteurella) haemolytica)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)(グラム陽性)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)(グラム陽性)のCPS、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、エシェリヒア・アルベルティ(Escherichia albertii)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、大腸菌(E.coli)、シトロバクター(Citrobacter)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、シュワネラ・アルガ(Shewanella algae)等の細菌が有するLPSのO−抗原、並びに、髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)等のいくつかの病原体が有するLPSコアに見られる。
【0073】
他の具体的な実施形態では、上記方法により、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の生菌を特異的に標識でき、上記細菌の外膜のLPS層の上記内在性単糖残基は、以下のいずれかである。
・8−エピレジオナミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)又は8−エピレジオナミン酸塩残基(この場合、上記修飾単糖化合物は式(Ia−2)の化合物である。)
・プソイダミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−L−マンノ−ノヌ−2−ウロソン酸)又はプソイダミン酸塩残基(この場合、上記修飾単糖化合物は式(Ia−3)の化合物である。)
【0074】
生菌には、増殖可能な細菌だけでなく、増殖できないが生存はしている細菌も含まれる。ほとんどの衛生規則が増殖可能な細菌、特に固体増殖培地上で増殖可能な細菌の計数について言及しているため、本発明は、より具体的には、増殖可能な細菌を特異的に標識する方法であって、上記細菌は培養培地でインキュベートされ、その(液体培地)中又は(固体培地)上で増殖可能である方法を提供する点で有利である。
【0075】
グラム陰性菌のなかには重大な病原体が隠れており、生存細胞を迅速に同定することは衛生上重要な課題である。本発明の修飾単糖は、上記細菌によって迅速に同化され、代謝的に活性/生存している野生型グラム陰性菌を速やかに標識及び検出できる(全工程が1日未満で終了)。細菌株にもよるが、通常は2日間から1ヶ月を超える期間が必要な一般的な生菌検出法に比べると、上記方法は非常に迅速である。
【0076】
本発明は、c)上記細菌がその外膜のグリカンに結合した上記標識分子を含むか否かを検出すること、及び/又は、上記標識分子を含む上記生菌を固体基材に固定化することによって、生菌を検出する工程を更に含み、上記標識分子は、検出可能な物質を含む分子、又は、検出可能な物質と反応可能若しくは結合可能な分子であるか、又は、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1の分子であり、該第1の分子は、第2の分子及び/又は固体基材と反応可能又は結合可能であり、好ましくは、上記第2の分子は検出可能な物質を含み、及び/又は、上記第2の分子は上記固体基材に結合している若しくは結合可能であることが有利である。
【0077】
したがって、本発明によれば、(a)検出された生菌を計数又は同定できると共に、(b)固体基材、特に上記第2の反応性基を有する磁気ビーズで構成された固体基材上に固定化して生菌を濃縮及び/又は単離できる。
【0078】
より具体的には、上記方法により、細菌を含有する試料中に存在する所定の細菌カテゴリーに属する生菌を特異的に検出でき、上記標識分子は、検出可能な物質を含む検出可能な分子であり、上記方法は、c)上記細菌がその外膜のグリカンに結合した上記検出可能な分子を含むか否かを検出することによって、生菌を検出する工程を含む。
【0079】
上記検出工程c)は、液体媒体中又は固体基材上で実施できる。
【0080】
より具体的には、検出は、蛍光によって検出される検出可能な物質を用いて行うことができる。
【0081】
より具体的には、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド又は第1の結合タンパク質であり、工程c)において、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質を、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質と特異的に反応又は結合する第2のリガンド又は第2の結合タンパク質と接触させることによって、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は検出及び/又は固定化される。
【0082】
より具体的には、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、工程c)において、上記第1のリガンドに結合した上記生菌は、上記第1のリガンドに特異的な抗体等のタンパク質と上記細菌との反応によって検出され、上記抗体は、検出可能な物質、好ましくは蛍光色素若しくは発光分子又は酵素を含む。
【0083】
より具体的には、上記第1の反応性基は、アジド基そのもの又はアジド基を有する基、及び、アルキン基そのもの又はアルキン基を有する基から選択され、上記第1の反応性基は好ましくはアジド基であり、上記第2の反応性基は、それぞれ、アルキン基そのもの又はアルキン基を有する基、及び、アジド基そのもの又はアジド基を有する基から選択され、上記第2の反応性基は好ましくはアルキン基であり、上記アジド反応性基と上記アルキン反応性基の反応はアジドアルキン付加環化により行われる。
【0084】
本発明はまた、本発明の方法を行うためのキットを提供する。該キットは、
上記第1の反応性基で置換された上記式(I)の単糖化合物の類似体であって、細菌の外膜の多糖、特に上記細菌の外膜のLPS又はCPS中に取り込まれる修飾された内在性ウロソン酸残基に変換され得る修飾前駆体である上記式(I)の化合物と、
上記第1の反応性基と反応可能な上記第2の反応性基を有する上記標識分子と、
必要であれば、上記細菌の外膜の上記多糖中に取り込まれた上記類似体残基の上記第1の反応性基を、上記標識分子の上記第2の反応性基と反応させるための反応体と、
好ましくは、上記所定のカテゴリーに属する細菌を増殖させることができ、好ましくは上記所定のカテゴリーに属する細菌の増殖に特異的である培養培地又はインキュベーション培地を備える。
【0085】
上記第1の反応性基Raは、アジド基(−N)そのもの又はアジド基を有する基、及び、アルキン基(−C≡C−)そのもの又はアルキン基を有する基から選択され、上記第2の反応性基Rbは、それぞれ、アルキン基(−C≡C−)そのもの又はアルキン基を有する基、及び、アジド基(−N)そのもの又はアジド基を有する基から選択され、上記アジド反応性基と上記アルキン基(−C≡C−)の反応はアジドアルキン付加環化により行われることが好ましい。
【0086】
アジドアルキン付加環化は、銅触媒の存在下又は非存在下で行ういわゆるクリックケミストリー反応として周知のものである。この反応では、アジド基がアルキン基と反応してトリアゾールが生成される。より具体的には、上記反応は、トリス−トリアゾリルリガンド、好ましくはTGTAの存在下、銅触媒条件で実施できる。より具体的には、上記検出可能な分子は、末端アルキン基を有する蛍光色素である。
【0087】
より具体的には、TGTA(トリス((1−(β−D−グリコピラノシル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル)メチル)アミン)又はTBTA(トリス−[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン)等のトリス−トリアゾールリガンドと、末端アルキン基を有するAlexa標識分子と、触媒との存在下で反応を行って、上記蛍光色素と上記式(I)の類似体化合物のアジドアルキン付加環化を行うことができる。
【0088】
よく用いられる他の適したリガンドとしては、トリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)、2−(4−((ビス((1−tert−ブチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)アミノ)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エタンスルホン酸(BTTES)、トリス((1−((O−エチル)カルボキシメチル)−(1,2,3−トリアゾール−4−イル))メチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホネート又はトリス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミン(53)が挙げられる。
【0089】
あるいは、アザジベンゾシクロオクチン(ADIBO、DIBAC又はDBCO)やテトラメチルジベンゾシクロオクチン(TMDIBO)等の歪みアルキンを用いる場合、アジドアルキン付加環化は銅の非存在下で実施できる。
【0090】
銅フリー反応によく用いられる他の適した歪みアルキンとしては、シクロオクチン(OCT)、アリールレスシクロオクチン(ALO)、モノフルオロシクロオクチン(MOFO)、ジフルオロシクロオクチン(DIFO)、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、ジメトキシアザシクロオクチン(DIMAC)、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)、ビシクロノニン(BCN)、テトラメチルチエピニウム(TMTI、TMTH)、ジフルオロベンゾシクロオクチン(DIFBO)、オキサ−ジベンゾシクロオクチン(ODIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(COMBO)又はベンゾシクロノニンが挙げられる。
【0091】
以下のような他の反応性基及び他の反応も可能である。Staudingerライゲーション(第1の反応性基=アジド、第2の反応性基=ホスフィン)、銅フリークリックケミストリー(第1の反応性基=アジド、第2の反応性基=拘束された(constrained)アルキン(環内アルキン))、カルボニル縮合(第1の反応性基=アルデヒド又はケトン、第2の反応性基=ヒドラジド又はオキシアミン)、チオール−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=チオール、第2の反応性基=アルケン)、ニトリル−オキシド−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=ニトリルオキシド若しくはアルデヒド、オキシム又は塩化ヒドロキシモイル若しくはクロロオキシム、第2の反応性基=アルケン又はアルキン)、ニトリルイミン−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=ニトリルイミン若しくはアルデヒド、ヒドラゾン又は塩化ヒドラゾノイル若しくはクロロヒドラゾン、第2の反応性基=アルケン又はアルキン)、逆電子要請型ディールス・アルダーライゲーション(第1の反応性基=アルケン、第2の反応性基=テトラジン)、イソニトリル−テトラジンクリックケミストリー(第1の反応性基=イソニトリル、第2の反応性基=テトラジン)、鈴木・宮浦カップリング(第1の反応性基=ハロゲン化アリール、第2の反応性基=ボロン酸アリール)及びHis−tag(第1の反応性基=オリゴ−ヒスチジン、第2の反応性基=ニッケル錯体又はニッケルリガンド)。
【0092】
上掲した反応に関与する基のリストにおいて、第1の反応性基と第2の反応性基を入れ替えてもよい。上掲の化学反応では全て、共有結合が形成される。
【0093】
他に、2つの異なる上記単糖類似体化合物と2つの異なる検出可能な分子とを用いて細菌試料をインキュベートすることによって、より特異性の高い検出を行うことができる。
【0094】
本発明に係る方法の他の具体的な実施形態においては、上記工程a)のインキュベーション及び上記工程b)の反応はメンブランフィルター上で行われ、それにより、もともと同じ細菌から増殖した培養細菌をひとまとめにして顕微鏡を用いて可視化でき、上記検出可能な分子を上記顕微鏡により可視化して検出できる。その結果、培養可能な細菌の数を定量できる。
【0095】
この実施形態によれば、上記修飾単糖を同化する前に、被験試料をポリエステル膜等の上記メンブランフィルター上でろ過することにより、同化期間に起こり得る増殖によって生存細菌を多く見積もりすぎてしまうことがないようにできる。実際に、上記膜の頂部に固定した細胞が増殖し始める場合、該細胞はまとまって存在し、マイクロコロニーを形成するため、同じ単一の細胞に由来するものとして容易に検出できる。その結果、培養可能な細菌をカウントして計数できる。
【0096】
本発明はまた、本発明の方法を行うためのキットであって、上記所定のカテゴリーに属する細菌を増殖させることができ、好ましくは上記所定のカテゴリーに属する細菌の増殖に特異的である培養培地又はインキュベーション培地を更に備えるキットも提供する。
【0097】
上記培養培地又はインキュベーション培地は、上記所定のカテゴリーに属する細菌の増殖速度及び/又はコロニー形成能を増大及び/又は加速させる物質を更に含有することが好ましい。より具体的には、上記インキュベーション培地は、ピルビン酸塩又はカタラーゼ等の酸化防止剤を少なくとも含有する。
【0098】
グラム陰性菌を特異的に標識するために、工程a)及びb)においてグラム陰性菌に特異的な培養培地を用いることにより、グラム陽性菌を培養させないことがより有利である場合がある。
【0099】
より具体的には、一実施形態において、上記キットは、
上記検出可能な分子又は検出可能な物質を含む上記第2の分子、好ましくは蛍光色素若しくは発光分子又は酵素、及び/又は、
上記標識分子と特異的に反応可能又は結合可能な上記第2の分子を含む固体基材を更に備える。
【0100】
より具体的には、一実施形態において、本発明のキットは、
上記第1の反応性基と反応可能な上記第2の反応性基を有する上記検出可能な分子と、
上記単糖化合物の類似体、上記反応体及び上記検出可能な分子と共にインキュベートした後に上記細菌を可視化できる固体培地を更に備える。
【0101】
また、より具体的には、上記キットは、
アジド基又はアルキン基を有する上記第1の反応性基で置換された上記修飾単糖化合物と、
それぞれアルキン基又はアジド基を有する検出可能な分子の上記第2の反応性基と、
場合によっては、銅触媒及びトリストリアゾリルリガンドを含む上記反応体を備える。
【0102】
第1の具体的な実施形態において、上記標識分子は、検出可能な分子、すなわち検出可能な物質そのものからなる分子又は検出可能な物質を含む分子、すなわち蛍光色素若しくは発光物質又はペルオキシダーゼ等の酵素といったような検出が可能な物質であってよい。上記酵素は、より具体的には、共反応体と反応した後に検出される。
【0103】
更に具体的な実施形態において、生菌を単離及び/又は濃縮するのに有益であることから、工程b)を行う際に上記標識分子は固体基材に結合していてもよい。
【0104】
更に具体的な一実施形態において、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド又は第1の結合タンパク質である分子であり、工程c)において、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質を、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質と特異的に反応又は結合する第2のリガンド又は第2の結合タンパク質である第2の分子と接触させることによって、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は検出及び/又は固定化される。
【0105】
その場合、上記第1又は第2のリガンド又は結合タンパク質は、蛍光色素若しくは発光物質又はペルオキシダーゼ等の酵素といったような上記検出可能な物質を含む第3の結合タンパク質と反応又は結合できることが有利である。上記第3の結合タンパク質は、上記第1及び/又は第2のリガンド又は結合タンパク質と特異的に結合する。上記第2のリガンド若しくは第2の結合タンパク質又は第3の結合タンパク質を介して上記検出可能な物質を検出することによって、上記検出可能な物質のシグナルを増幅できる。
【0106】
より具体的には、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質は以下のものであってもよい。
・ビオチン(この場合、上記第2の結合タンパク質はアビジン又はストレプトアビジンであり、上記第3の結合タンパク質はビオチンに対する抗体である。)
・アビジン又はストレプトアビジン(この場合、上記第2のリガンド結合タンパク質はビオチンであり、上記第3の結合タンパク質はアビジン又はストレプトアビジンに対する抗体である。)
・第1の抗体(この場合、上記第2の結合タンパク質は上記第1の抗体に特異的な第2の抗体であり、上記第3の結合タンパク質は上記第1の抗体に特異的な第3の抗体である。)
【0107】
より具体的には、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、工程c)において、上記第1のリガンドに結合した上記生菌は、上記第1のリガンドに特異的な抗体と上記細菌との反応によって検出され、上記抗体は、検出可能な物質、好ましくは蛍光色素若しくは発光分子又は酵素を含む。
【0108】
また、より具体的には、上記標識分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、工程c)において、上記第1のリガンドと、上記第2の結合タンパク質、好ましくはアビジン又はストレプトアビジンに結合した固体基材、好ましくは磁気ビーズとの反応によって、上記第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は固定化され、その後、細菌DNAの酵素増幅によって、又は、上記第1のリガンド若しくは第2の結合タンパク質と特異的に反応若しくは結合する第3の結合タンパク質と上記細菌との反応によって上記生菌は検出される。上記第3の結合タンパク質は、検出可能な物質、好ましくは蛍光色素若しくは発光分子又は酵素を含み、上記第3の結合タンパク質は、好ましくは上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に特異的な抗体である。
【0109】
このように上記生菌が上記固体基材上に固定化される実施形態によれば、試料を上記細菌にまで濃縮することができ、さらに、PCR、特にリアルタイムPCRのようなDNAの酵素増幅や、ELISA試験のような標識抗体との免疫学的反応を用いた方法等、公知の方法によって上記生菌を定量化できる。
【0110】
本発明の他の特徴や利点は、以下に示す図を参照して、以下に示す発明の詳細な説明及び例示的且つ非限定的な実施形態の例からより明確になるであろう。
【0111】
図3図7は、ビオチン−アルキン5を用いたCu(I)を触媒とするクリックケミストリーと、さらにAlexa Fluor488−IgG抗ビオチン抗体を用いた可視化によって得られる、各種細菌株による代謝的に取り込まれた化合物Ia−1又はIa−1’の検出を示すものであり、Ia−1又はIa−1’を添加した場合(右側のパネル)と、Ia−1又はIa−1’を添加していない場合(左側のパネル)の位相差像及び蛍光像を示す。スケールバーは1μmとした。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】L.ニューモフィラ(L.pneumophila)のLeg(化合物Ib−1)経路を表す。
図2】化合物Ia−1及びIa−1’の合成の連続反応を示す。
図3】L.ニューモフィラ(L.pneumophila)血清群1の各種株による代謝的に取り込まれた化合物Ia−1の検出を示す写真である。
図4】血清群1以外の血清群に属する各種L.ニューモフィラ(L.pneumophila)株による代謝的に取り込まれた化合物Ia−1の検出を示す写真である。
図5】大腸菌(E.coli)及び緑膿菌(P.aeruginosa)による代謝的に取り込まれた化合物Ia−1の検出を示す写真である(化合物Ia−1は、大腸菌(E.coli)及び緑膿菌(P.aeruginosa)には取り込まれない)。
図6】各種レジオネラ菌(Legionella)株による代謝的に取り込まれた化合物Ia−1の検出を示す写真である(化合物Ia−1は、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)に属さないレジオネラ菌(Legionella)には取り込まれない)。
図7】代謝的に取り込まれた化合物Ia−1’の検出を示す写真である(Ia−1’は、R3位のOHがAcOであるIa−1。化合物Ia−1’は、これらの条件下ではL.ニューモフィラ(L.pneumophila)には取り込まれない)。
【発明を実施するための形態】
【0113】
感染例において多く見られるL.ニューモフィラ(L.pneumophila)血清群1のO抗原は、5−N−アセトイミドイル−7−N−アセチル−レジオナミン酸(Leg5Am7Ac)のα(2→4)結合型のホモ多糖の繰り返しで構成されることが示されており[1]、Pontiac亜型では8−O−アセチル化されている[2]。Legの生合成(図1)は、UDP−N,N’−ジアセチルバシロサミン(A)を出発物質とし、加水分解酵素である2−エピメラーゼ(B)の二重作用によって2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノピラノース(Ia)へと変換される。次の工程において、上記遊離の前駆体Iaが、ホスホエノールピルビン酸塩(PEP)の存在下、アルドラーゼ(C)の作用により、直接Ib−1(=N,N’−ジアセチルレジオナミン酸(Leg5Ac7Ac)Ib−1)へと変換される[3]。これにより、新たに生成されるC−4の不斉中心の立体化学が制御される。その後、レジオナミン酸はシチジン一リン酸供与体(CMP)−Leg5Ac7Acの形態で活性化される。後の段階において、さらに変換されると考えられる。
【0114】
グリカンの代謝標識のためにLeg経路を標的とする目的で、Iaのアジド誘導体(Ia−1)、すなわち6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノピラノース(Ia−1)を合成し、さらに、より極性の低いそのモノアセチル化誘導体(Ia−1’)を合成した。Ia−1’は、受動輸送によりヒト細胞内又はアメーバ内又はヒト試料等の真核細胞を含む生物学的試料中により進入しやすい場合や、細胞内非特異的エステラーゼの作用によってIa−1へと更に変換される場合がある。D−ガラクトースを出発物質とした合成ストラテジーを開発し、最終生成物を単離し、そのL.ニューモフィラ(L.pneumophila)血清群1の生菌のLPSを特異的に標識する能力を試験した。
【0115】
1の合成では、Tsvetkov and coll[7]に記載された手法に着想を得た方法を用いて化合物Ia−1及びIa−1’を合成した(図2)。標的化合物である6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノースIa−1は、市販のβ−D−ガラクトースペンタアセテートから11工程を経て調製し、全収率は17%であった。一方、3−O−アセチル−6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノースIa−1’は、同じ出発物質から12工程を経て得られ、全収率は15%であった。
【0116】
図2の合成では、以下の試薬及び条件を用いた。(i)パラ−メトキシフェノール、BF.EtO、CHCl;(ii)CHONa、CHOH;(iii)ジフェニルボリン酸2−アミノエチル、DIPEA、塩化ベンゾイル、CHCN;(iv)TfO、ピリジン、CHCl;(v)BuNN、トルエン;(vi)Pd(OH)/C、H、CHOH、ii)AcO、CHOH;(viii)塩化トシル、ピリジン;(ix)塩化メシル、ピリジン;(x)NaN、DMF;(xi)CAN、CHCN/HO(3:1);(xii)AcO、ピリジン、CHCl
【0117】
三フッ化ホウ素エーテラートの存在下、β−D−ガラクトースペンタアセテートをp−メトキシフェノールでグリコシル化し、6を83%という良好な収率で得た[4]。ナトリウムメトキシドを用いてZemplen法により脱アセチル化し[5]、その後、触媒としてジフェニルボリン酸2−アミノエチルを使用し、Taylorによる方法で選択的にベンゾイル化することにより、7を得た(2工程での収率70%)[6]。7をビストリフラート誘導体に変換した後、トルエン中でテトラブチルアンモニウムアジドと反応させて、ビス−アジド化合物8を得た(2工程での収率89%)[7]。化合物8のマンノ立体配置をH NMRで確認した(J1,2=1.2Hz;J2,3=3.6Hz;J3,4=10.0Hz;J4,5=10.2Hz)。ナトリウムメトキシドを用いて従来の方法で8を脱ベンゾイル化し、Pd(OH)/Cの存在下、二水素を用いてアジド基を還元した後、N−アセチル化することにより、高収率(3工程で82%)で9を得た[7]。ピリジン中で選択的にトシル化又はメシル化した後、ジメチルホルムアミド中でアジ化ナトリウムを用いて求核置換することによって、アジド誘導体11を2工程で得た[8]。
【0118】
このストラテジーにおいては、上記置換の前にメシル化を行う方が、トシル化ルート(32%)よりも良い結果(50%)が得られた。硝酸セリウムアンモニウムを使用し、アセトニトリル/水混合液中でアノマー位を脱保護することによって、11から良好な収率(82%)で最終生成物Ia−1を得た[9]。あるいは、アセチル化した後、上記と同じ条件でアノマー位を脱保護することによって、11から2工程で生成物Ia−1’を71%というかなりの収率で調製した[9]。
【0119】
実施例1:化合物Ia−1、Ia−1’及びIb−1の合成
1)合成用原料
Merck 60 F254上で薄層クロマトグラフィーを行い、UV及び/又は硫酸、KMnO若しくはリンモリブデン酸溶液を用いた炭化により検出した。シリカゲル60(40〜63μm)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーを行った。
【0120】
残留プロトン化溶媒を内部標準とし、Bruker Avance300又は500MHz分光計を用いてNMRスペクトルを測定した。化学シフトδはパーツ・パー・ミリオン(ppm)で表し、結合定数はヘルツ(Hz)で示す。分裂パターンは、シングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、ダブレットのダブレット(dd)、ダブレットのダブレットのダブレット(ddd)として記載する。判断できない又は容易に可視化できない分裂パターンは、マルチプレット(m)として記載する。
【0121】
Thermo Scientific TSQ、Bruker micrOTOFq又はWaters LCT Premier XE(ToF)を用いて、ポジティブ(ESI+)検出モードでエレクトロスプレーイオン化法により質量スペクトルを測定した。
【0122】
Perkin Elmer Spectrum 100分光計を用いてIR−FTスペクトルを記録した。特徴的な吸収をcm−1で示す。
【0123】
Anton Paar MCP300旋光計を用いて、10cmセル内において20℃、589nmで比旋光度を測定した。
【0124】
Buchi melting point B−540装置を用いて融点を測定した。
【0125】
2)化合物Ia−1及びIa−1’の合成方法
2.1)下記式で表される4−メトキシフェニル2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド(6)の調製(図2の第1工程)
【0126】
【化15】
【0127】
β−D−ガラクトースペンタアセテート5(25.00g、64.0mmol)及びp−メトキシフェノール(9.54g、76.9mmol)のCHCl(500mL)溶液に、BF.EtO(9.73mL、76.9mmol)を0℃で添加した。反応系を室温まで昇温し、15時間撹拌した後、HCl(1mol/L、250mL)でクエンチした。有機層を飽和NaHCO水溶液(2×250mL)及び塩水(150mL)で洗浄してから、無水NaSOで乾燥させ、濾過及び濃縮して淡黄色の油状物を得た。残渣をCHOHから再結晶化して、化合物6(24.1g、83%)を白色結晶として得た。
【0128】
2.2)下記式で表される4−メトキシフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(6’)の調製
【0129】
【化16】
【0130】
新たに調製したナトリウムメトキシド(0.2mol/L、4.4mL)溶液を、化合物6(4.0g、8.80mmol)のCHOH(44mL)撹拌溶液に添加した。混合物を室温で40分間撹拌した後、Amberlite IRN−77樹脂(H型)を添加して溶液を中和した。濾過を行い、濾液から溶媒を蒸発させて、白色の非晶質固体(6’、2.52g)を得た。この非晶質固体はそれ以上精製しなかった。少量をエタノールから再結晶化して得た白色の針状結晶をこの化合物の特性決定に用いた。
【0131】
2.3)下記式で表される4−メトキシフェニル3,6−ジ−O−ベンゾイル−β−D−ガラクトピラノシド(7)の調製(図2の第2工程)
【0132】
【化17】
【0133】
ジフェニルボリン酸2−アミノエチル(79mg、0.35mmol)及び化合物6’(1.00g、3.49mmol)を50mL丸底フラスコに入れ、真空下で30分間乾燥させた後、無水CHCN(17.5mL)に溶解させた。N,N−ジイソロピルエチルアミン(2.43mL、13.96mmol)及び塩化ベンゾイル(1.62mL、13.96mmol)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、HO(30mL)で洗浄し、酢酸エチル(30mL)で3回抽出した。ひとまとめにした有機層をNaSO無水物で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた未精製物を、シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/酢酸エチル=92:8)で精製して、化合物7(1.21g、70%)を白色粉末として得た。
【0134】
2.4)下記式で表される4−メトキシフェニル2,4−ジアジド−2,4−ジデオキシ−3,6−ジ−O−ベンゾイル−β−D−マンノピラノシド(8)の調製(図2の第3工程)
【0135】
【化18】
【0136】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.02mL、12.0mmol)を、化合物7(1.98g、4.0mmol)及び無水ピリジン(1.94mL、24.0mmol)のCHCl(27.0mL)溶液に0℃で滴下した。混合物を0℃で1時間30分撹拌し、CHCl(60mL)で希釈し、HO(50mL)、1N HCl水溶液(50mL)、HO(50mL)、飽和CuSO水溶液及び飽和NaCl溶液で順に洗浄した後、真空下で濃縮した。得られた未精製のビス−トリフラート(Rf=0.48、シクロヘキサン/酢酸エチル=7:3)をトルエン(27.0mL)に溶解させ、テトラ−n−ブチルアンモニウムアジド(6.83g、24.0mmol)を添加した。65〜70℃で1時間30分、100℃で1時間30分撹拌した後、混合物を冷却し、トルエン(60mL)で希釈し、水(50mL)、飽和NaCl溶液で2回洗浄し、濃縮した。残渣をシリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=8:2)にかけて、化合物8(1.95g、89%)を白色発泡体として得た。
【0137】
2.5)下記式で表される4−メトキシフェニル2,4−ジアジド−2,4−ジデオキシ−β−D−マンノピラノシド(8’)の調製
【0138】
【化19】
【0139】
ナトリウムメトキシドのCHOH(2mol/L、0.22mL、0.44mmol)溶液を、化合物8(630mg、1.15mmol)の無水CHOH(4.6mL)溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、Amberlite IRN−77(H型)イオン交換樹脂を添加して反応混合物を中和した。濾過を行い、濾液を蒸発させて、未精製の化合物8’(380mg)を白色固体として得た。この白色固体は、それ以上精製することなく次の工程で用いた。分析用試料は、シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1〜6:4)で精製して、特性決定した。
【0140】
2.6)下記式で表される4−メトキシフェニル2,4−ジアセトアミド−2,4−ジデオキシ−β−D−マンノピラノシド(9)の調製
【0141】
【化20】
【0142】
未精製の化合物8’(380mg、1.13mmol)のCHOH(8.5mL)溶液を、20%Pd(OH)/C(101mg)を用いて30℃で1.5時間、水素添加した。触媒をCelite(登録商標)で濾別し、濾液を濃縮乾固した。未精製の残渣をCHOH(5mL)に溶解させ、無水酢酸(0.43mL、4.52mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させて得られた残渣を、シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=92:8)で精製して、化合物9(342mg、82%)を白色固体として得た。
【0143】
2.7)下記式で表される4−メトキシフェニル2,4−ジアセトアミド−2,4−ジデオキシ−6−O−トシル−β−D−マンノピラノシド(10a)の調製
【0144】
【化21】
【0145】
化合物9(100mg、0.27mmol)の無水ピリジン(0.6mL)溶液に、塩化トシル(207mg、1.09mmol)の無水ピリジン(0.5mL)溶液を0℃で添加し、混合物を30分間撹拌した。その後、反応混合物をCHOH(1.0mL)でクエンチし、減圧下で溶媒を蒸発させた。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=92:8)で固体残渣を精製して、化合物10a(90mg、64%)を白色粉末として得た。
【0146】
2.8)下記式で表される4−メトキシフェニル2,4−ジアセトアミド−2,4−ジデオキシ−6−O−メシル−β−D−マンノピラノシド(10b)の調製
【0147】
【化22】
【0148】
−10℃の化合物9(460mg、1.25mmol)の無水ピリジン(5.1mL)溶液に、塩化メシル(0.145mL、1.88mmol)を添加し、混合物を−10℃で45分間撹拌した。その後、反応系をCHOHでクエンチし、真空下で溶媒を蒸発させた。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=92:8)で未精製の残渣を精製して、化合物10b(411mg、74%)を白色固体として得た。
【0149】
2.9)下記式で表される4−メトキシフェニル6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−β−D−マンノピラノシド(11)の調製
【0150】
【化23】
【0151】
2.9.1)トシレート(10a)を出発物質として
トシレート10a(43mg、0.08mmol)及びNaN(16mg、0.25mmol)を無水ジメチルホルムアミド(0.80mL)に溶解させ、反応混合物を80℃で15時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=92:8)で未精製の固体を精製して、化合物11(16mg、50%)を得た。
【0152】
2.9.2)メシレート10bを出発物質として
メシレート10b(100mg、0.22mmol)及びNaN(44mg、0.67mmol)を無水ジメチルホルムアミド(2.2mL)に溶解させ、反応混合物を80℃で15時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で溶媒を蒸発させた。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=92:8)で残渣を精製して、化合物11(59mg、67%)を白色固体として得た。
【0153】
2.10)下記式で表される4−メトキシフェニル3−O−アセチル−6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−β−D−マンノピラノシド(11’)の調製
【0154】
【化24】
【0155】
無水ピリジン(0.015mL、0.18mmol)及び無水酢酸(0.008mL、0.09mmol)を、化合物11(12mg、0.03mmol)の無水CHCl(0.25mL)撹拌溶液に添加し、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。更にピリジン(0.008mL、0.09mmol)及び無水酢酸(0.005mL、0.05mmol)を添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。その後、飽和NHCl溶液を添加し、水層をCHClで抽出した。ひとまとめにした有機抽出物を塩水で洗浄し、NaSO無水物で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=95:5)で未精製の残渣を精製して、化合物11’(12mg、90%)を白色固体として得た。
【0156】
2.11)下記式で表される3−O−アセチル−6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノース(Ia−1’)の調製
【0157】
【化25】
【0158】
化合物11’(20mg、0.046mmol)のCHCN/HO(0.8mL、3:1)溶液に、硝酸セリウムアンモニウム(75mg、0.138mmol)を添加した。得られた透明なオレンジ色の溶液を室温で20分間撹拌した後、シリカゲルカラムに供した。CHCl/CHOH(94:6)で溶離して、化合物3と、その他の化合物の混合物を得た。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=94:6)で混合物を精製して、α/βアノマー(17:83)の混合物である化合物3(12mg、79%)を白色固体として得た。
【0159】
Rf(CHCl/CHOH=9:1):0.46
【0160】
IR(cm−1):3277、2103、1660、1372、1071
【0161】
H−NMR(500MHz,CDOD)δ:5.27(dd,0.8H,J=10.7及び4.3Hz,H−3β);5.07(d,0.8H,J=1.4Hz,H−1β);4.95(d,0.2H,J=1.4Hz,H−1α);4.92(dd,0.2H,J=11.1及び4.2Hz,H−3α);4.57(dd,0.2H,J=4.2及び1.4Hz,H−2α);4.46(dd,0.8H,J=4.3及び1.4Hz,H−2β);4.13(dd,0.8H,J=10.7及び10.5Hz,H−4β);4.08(ddd,0.8H,J=10.5及び7.3及び1.9Hz,H−5β);4.02(dd,0.2H,J=11及び9.8Hz,H−4α);3.55(ddd,0.2H,J=9.8及び7.9及び2.1Hz,H−5α);3.51(dd,0.2H,J=12.6及び7.9,H−6aα);3.46(dd,0.8H,J=13.1及び7.3Hz,H−6aβ);3.32−3.3(m,0.2H,H−6bα);3.28(dd,0.8H,J=13.1及び1.9Hz,H−6bβ);2.06,2.05,2.03,2.02,1.95,1.93(s,9H,3 CO−CH
【0162】
13C−NMR(75MHz,CDOD)δ:174.0,173.9,172.1(3 C=O α及びβ);94.7(C−1β);94.5(C−1α);76.4(C−5α);73.4(C−3α);71.9(C−5β);70.8(C−3β);53.3(C−6β);53.2(C−6α);52.6(C−2α);52.0(C−2β);48.5(C−4β),47.7(C−4α);22.8,22.6(2 CO−CH(NHAc)α及びβ);21.0(CO−CHα及びβ)
【0163】
HMRS(ESI+):[M+H]+(C1220)Calc.m/z:330.1408、found:330.1391
【0164】
2.12)下記式で表される6−アジド−2,4−ジアセトアミド−2,4,6−トリデオキシ−D−マンノース(Ia−1)の調製
【0165】
【化26】
【0166】
化合物11(90mg、0.23mmol)のCHCN/HO(3.6mL,3:1)溶液に、硝酸セリウムアンモニウム(376mg、0.69mmol)を添加した。得られた透明なオレンジ色の溶液を室温で20分間撹拌した後、シリカゲルカラムに供した。CHCl/CHOH(88:12)で溶離して、化合物2と、その他の化合物の混合物を得た。シリカゲルによるフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=88:12)で混合物を精製して、α/βアノマー(12:88)の混合物である化合物2(54mg、82%)を白色固体として得た。
【0167】
Rf(CHCl/CHOH=88:12):0.23
【0168】
IR(cm−1):3302、2988、2107、1646、1552、1376、1075
【0169】
H−NMR(500MHz,CDOD)δ:5.09(d,0.88H,J=1.2Hz,H−1β);4.84(d,0.12H,J=0.9Hz,H−1α);4.44(dd,0.12H,J=4.0及び0.9Hz,H−2α);4.26(dd,0.88H,J=4.5及び1.2Hz,H−2β);4.07(dd,0.88H,J=10.0及び4.5Hz,H−3β);3.96(ddd,0.88H,J=10.2及び6.9及び2.1Hz,H−5β);3.93(dd,0.88H,J=10.2及び10.0Hz,H−4β);3.79(dd,0.12H,J=10.4及び9.7Hz,H−4α);3.73(dd,0.12H,J=10.4及び4.0Hz,H−3α);3.38(dd,0.12H,J=12.7及び8.0,H−6aα);3.44(ddd,0.12H,J=9.7及び8.0及び2.3Hz,H−5α);3.40(dd,0.88H,J=13.2及び6.9Hz,H−6aβ);3.34−3.24(m,0.12H,H−6bα);3.27(dd,0.88H,J=13.2及び2.1Hz,H−6bβ);2.08,2.05,2.00,1.98(s,6H,2 CO−CH
【0170】
13C−NMR(75MHz,CDOD)δ:174.5,174.3(2 C=O α及びβ);95.1(C−1α);94.6(C−1β);76.6(C−5α);72.0(C−3α);71.9(C−5β);68.3(C−3β);55.5(C−2α);54.9(C−2β);53.5(C−6β);53.4(C−6α);51.3(C−4β),51.3(C−4α);23.0,22.9,22.7(2 CO−CH(NHAc)α及びβ)
【0171】
HMRS(ESI+):[M+H]+(C1018)Calc.m/z:288.1302、found:288.1297
【0172】
3)2,4−ジアジドアセタミド−2,4−ジデオキシ−D−マンノースの合成
【0173】
【化27】
【0174】
条件及び試薬:(i)H、Pd(OH)/C、CHOH、30℃、4時間;(ii)(ClCHCO)O、EtN、CHOH、室温、2日間;(iii)NaN、DMF、50℃、一晩;(iv)TFA、CHCl、1時間
【0175】
3.1)1−トリメチルシリルエタニル2,4−ジクロロアセトアミド−2,4−ジデオキシ−β−D−マンノピラノシド(2)の合成
【0176】
化合物1(80.0mg、0.24mmol、1.0eq.)のCHOH(1.8mL、0.13M)溶液を、20%Pd(OH)/C(23.4mg)を用いて30℃で4時間、水素添加した。触媒をCelite(登録商標)プラグで濾別し、濾液を真空下で濃縮した。未精製の残渣(70.8mg、0.25mmol、1.0eq.)をCHOH(2.1mL、0.12M)に溶解させ、クロロ酢酸無水物(299.3mg、1.75mmol、7.0eq.)及びEtN(244μL、1.75mmol、3.0eq.)を添加した。混合物を室温で2日間撹拌した後、減圧濃縮した。シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー(CHCl/CHOH=100:0〜80:20)で残渣を精製して、化合物2(33.1mg、31%)を無色の油状物として得た。
【0177】
3.2)1’−トリメチルシリルエタニル2,4−ジアジドアセトアミド−2,4−ジデオキシ−β−D−マンノピラノシド(3)
【0178】
2(30.3mg、72.0umol、1.0eq.)の無水DMF(0.5mL、0.14M)溶液に、NaN(54.5mg、1.24mmol、11.8eq.)を添加した。反応混合物を50℃で一晩撹拌した後、減圧濃縮した。シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー(CHCl/アセトン/CHOH=90:6:4)で未精製の残渣を精製して、化合物3(26.8mg、86%)を白色発泡体として得た。
【0179】
3.3)2,4−ジアジドアセトアミド−2,4−ジデオキシ−D−マンノース(4/Ib−1)
【0180】
3(20.6mg、46.0umol、1.0eq.)のCHCl(460μL、0.10M)溶液に、TFA(528μL、6.9mmol、150.0eq.)をゆっくりと添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、トルエン/EtOAc混合液で3回共蒸発させた。C−18カラムクロマトグラフィー(HO)で未精製の残渣を精製し、凍結乾燥して、α/βアノマー(1:3)混合物である化合物4(13.8mg、87%)を白色発泡体として得た。
【0181】
Rf(CHCl/CHOH=95:5):0.28
【0182】
IR(cm−1):3283、2952、2841、2120、1646、1450、1409、1013
【0183】
HRMS(ESI+):[M+H]+(C1017)Calc.m/z:345.1271、found:345.1233
【0184】
アルファアノマー:
H−NMR(500MHz,CDOD)δ:5.10(d,1H,J1,2 1.7Hz,H−1);4.34(dd,1H,J2,3 4.4,J2,1 1.7Hz,H−2);4.17(dd,1H,J3,4 10.9,J3,2 4.4Hz,H−3);3.97(d,1H,J2”a,2”b 16.5Hz,CH−2”a);3.94(d,1H,J2”a,2”b 16.5Hz,CH−2”b);3.94(d,1H,J2”c,2”d 16.1Hz,CH−2”c);3.91(d,1H,J2”c,2”d 16.1Hz,CH−2”d);3.90−3.79(m,1H,H−5);3.83(dd,1H,J4,3 10.9,J4,5 9.8Hz,H−4);3.70−3.60(m,2H,H−6)
【0185】
13C−NMR(125MHz,CDOD)δ:171.4,171.1(2C=O);94.8(C−1);72.5(C−5);68.0(C−3);62.8(C−6);54.9(C−2);53.2,52.8(CH−N);50.2(C−4)
【0186】
ベータアノマー:
H−NMR(500MHz,CDOD)δ:4.88(d,1H,J1,2 1.6Hz,H−1);4.46(dd,1H,J2,3 3.9,J2,1 1.6Hz,H−2);3.99−3.79(m,4H,2CH−2”);3.92−3.80(m,1H,H−4);3.92−3.80(m,1H,H−3);3.70−3.60(m,2H,H−6);3.36(ddd,0.6H,J5,4 9.7,J5,6 4.0,J5,6 2.6Hz,H−5)
【0187】
13C−NMR(125MHz,CDOD)δ:171.4,171.1(2 C=O);95.0(C−1);77.4(C−5);71.8(C−3);62.7(C−6);55.7(C−2);53.2,52.8(CH−N);50.1(C−4)
【0188】
実施例2:L.ニューモフィラ(L.pneumophila)の生菌のLPSの標識
1)原料及び方法
1.1)細菌株及び増殖条件
L−システイン、ピロリン酸第2鉄及びα−ケトグルタル酸塩(YEC)を添加したイーストエキス培地でレジオネラ菌(Legionella)株(表1)を増殖させる。ルリアベルターニ(LB)培地で大腸菌(E.coli)K12(MG1655)及び緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC9027)を増殖させた。全菌株は、回転式振盪機(160rpm)において37℃で増殖させた。全菌株は、CNRL(Centre National de Reference sur Legionella)より提供されたものである。
【0189】
【表1】
【0190】
1.2)銅を触媒とするクリックケミストリー
一晩培養した培養物を、2又は3(4mM)を含有する新鮮培地で100倍に希釈した(最終体積100μl)。細菌を37℃で12時間インキュベートした後、室温下、13000×gで2分間遠心分離することによってリン酸緩衝液(0.05M、pH7.5)で3回洗浄した。
【0191】
下記式4のビオチン−アルキンプローブを用いた。
【0192】
【化28】
【0193】
その後、以下のように蛍光標識した抗ビオチン抗体に認識させることによって、ビオチン標識を可視化した。
【0194】
CuSO及びTGTAをそれぞれ最終濃度を2mM、4mMとして、リン酸緩衝液(0.05M、pH7.5)中、37℃で激しく振盪させながら一晩混合した。次に、アミノグアニジン、アスコルビン酸ナトリウム及びビオチン−アルキン(4)をそれぞれ最終濃度を4mM、5mM、1mMとして、一晩混合したCuSO/TGTA混合物に添加した。最後に、細菌をこの溶液に再懸濁させ、37℃で30分間インキュベートした。その後、細胞を室温下、13000×gで2分間遠心分離することによってリン酸緩衝液で3回洗浄した後、Alexa Fluor488−IgG画分モノクローナルマウス抗体抗ビオチン(0.62mg/ml原液、Jackson ImmunoResearch)0.5μlを添加したリン酸緩衝液(0.05M、pH7.5)10μlに再懸濁させ、更に顕微鏡で観察した。
【0195】
1.3)蛍光顕微鏡観察
細菌をカバーガラス上に接種し、希釈LB(リン酸緩衝液(0.05M、pH7.5)により1/10)で作製した薄い(厚さ1mm)半固形状1%寒天パッドで覆った。CoolSNAP HQ2カメラ(Roper Scientific、Roper Scientific SARL、フランス)と100×/1.4DLL対物レンズを備えたエピ蛍光自動顕微鏡(Nikon TE2000−E−PFS、Nikon、フランス)を用いて画像を記録した。120Wメタルハライドライトから励起光を放射し、適当なフィルターを用いてシグナルをモニターした。上述の方法[1]に従い、カスタム自動化スクリプト(Visual Basic)を用いてMetamorph7.5(Molecular Devices、Molecular Devices France、フランス)の下でデジタル分析及び画像処理を行った。
【0196】
2)結果
21.)血清群1に属する4つの異なるL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株を選択した。該4種の株には、(a)フィラデルフィアでの歴史的な集団発生における犠牲者の1人から単離した株[10]、(b)2000年にパリに新しく建設された近代的な病院であるGeorges Pompidou Hospitalの開院直後に発生した院内流行の原因であり、ヨーロッパ全土に広まったParis株[11]、(c)2003〜2004年の冬にフランス北部で86人が感染し、17人が死亡したことから、フランスにおける最も重大な流行の原因となったLens株が含まれる。
【0197】
まず、これらの株を化合物Ia−1の存在下で増殖させ、その後の工程で、上述の条件下[12]、硫酸銅、アスコルビン酸ナトリウム、TGTA、銅(I)に対する水溶性トリス(トリアゾリル)リガンド、及び、蛍光色素の代わりに上記式4のビオチン−アルキンプローブを使用し、銅を触媒とするアジド−アルキン付加環化を上述の通り30分間行って、LPS中へのアジド化学レポーターの取り込みをモニターした。
【0198】
その後、蛍光標識した抗ビオチン抗体に認識させることによって、ビオチン標識を可視化した。これらの実験において、全ての株がその膜上で非常にはっきりした蛍光を示した。これは、化学レポーターが効果的に代謝的に取り込まれたことを意味する(図3)。この結果は、同じ条件下で何ら標識を示さなかった大腸菌(E.coli)や緑膿菌(P.aeruginosa)等の他の細菌とは対照的である(図5)。
【0199】
この結果を受け、ニューモフィラ(pneumophila)種に属さず、したがってLPS中にレジオナミン酸を含有しないと言われている他のレジオネラ属(Legionella)株に対してこの標識ストラテジーの特異性を試験した。したがって、L.ゴルマニ(L.gormanii)、L.マセアチェルニ(L.maceachernii)、L.ミクダデイ(L.micdadei)、L.アニサ(L.anisa)、L.フィーリ(L.feeli)、L.ジョルダニス(L.jordanis)、L.タクソネンシス(L.tucsonensis)及びL.ボゼマニ(L.bozemanii)を含む上記株の代表的な一群を同じ標識条件下に供したところ、膜に蛍光は観察されなかった(図6)。この結果は、これらの菌のリポ多糖内にLegが存在しないことと一致する。したがって、上記方法は、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)血清群1と、ニューモフィラ(pneumophila)種に属さない他のレジオネラ属菌とを効率的に区別できる。
【0200】
さらに、他の血清群に属するL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株に対して上記方法が有する標識能を評価した。これは、ほとんどの感染例において血清群1が見つかるものの、環境中には他の血清群も豊富に存在することから、興味深い観点である。したがって、これら他の血清群を標識し得る可能性は、所定の試料中のL.ニューモフィラ(L.pneumophila)の有無のより良好な評価を可能とする重要な結果となるであろう。これらの血清群のほとんどは、5−アセトアミジノ−7−アセトアミド−3,5,7,9−テトラデオキシノヌ−2−ウロソン酸の別の異性体、すなわち5−N−アセトイミドイル−7−N−アセチル−4−エピ−レジオナミン酸(4eLeg5Am7Ac)を含み[13]、血清群によって8−O−アセチル化度が様々であることが示されている。Leg経路とは異なり、4eLeg生合成経路は未だ特定されていないが、この経路にも類似の中間体が関与し得ると推測できる。血清群1と合わせて、環境中に存在するL.ニューモフィラ(L.pneumophila)の68〜85%を構成する血清群3、4、5、6[1]に属している4種の株は、非常に鮮やかな膜標識を示した(図4)。このことから、Leg及び4eLeg生合成がIaを共通の前駆体として共有しているようであると解されやすい。しかしながら、例えば2つの異なるアルドラーゼ等によってこの共通の前駆体が修飾されることによってLeg及び4eLegが直接得られるのか、あるいは、全ての株においてLegが生産され、更に経路の後の段階でエピメラーゼにより4eLegに変換されるのかは、現時点では結論できない。それでもなお、上記方法によれば、血清群1に属さないL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株を明確且つ特異的に検出できる。
【0201】
興味深いことに、観察された唯一の例外において、血清群7に属するL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株が関係していた(図4)。血清群7は、感染例においても環境中においても存在量が極めて乏しい血清群である。血清群7は、そのO−多糖内に5−アセトアミジノ−7−アセトアミド−3,5,7,9−テトラデオキシノヌ−2−ウロソン酸の未同定の異性体を有すると言われている[13]。この観察結果は、標識が見られなかったことと一致しており、このことから、化合物Iaが、対応する生合成経路の中間体ではないと解されやすい。Iaの異性体は、アルドラーゼの基質としてほぼ確実に関与している。
【0202】
R2が−OAcであるIa−1のモノアセチル化誘導体であるIa−1’を用いて、別の一連の実験を行った。より極性の低いこのエステル化化合物は、受動輸送により菌体内へより効率的に進入し、更に細胞内で非特異的エステラーゼ活性によりIa−1へと脱アセチル化された後にLPS中に取り込まれることが予想された。近年の科学界では、細菌内部のそのような活性の有効性及び程度が議論の対象となっている[14]。実験室においてin vitro条件でIa−1’を用いた場合、2で効率的に標識されたL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株であっても、標識は観察されなかった(図7)。このことから、上記エステラーゼ活性は、Ia−1’からIa−1を効率的に生産し、更に検出可能な割合までIa−1を代謝し、取り込むことができるほど菌体内において充分なレベルではないと示唆される。
【0203】
上記方法は、衛生的にも経済的にも影響力の大きい病原菌であるL.ニューモフィラ(L.pneumophila)の生菌を特異的に検出及び同定するための効率的なストラテジーであるように思われる。上記実験室条件下でアセチル化前駆体を用いた場合に標識が見られなかったことは、そのようなレジオネラ菌内での非特異的エステラーゼ活性が、事前にアセチル化された炭水化物前駆体を菌体内で効率的に遊離させるには不充分な場合があるという事実で説明できる。しかしながら、そのような非特異的エステラーゼは存在はするため、レジオネラ菌がアメーバ内に保持され得る冷却塔において起こる状況や、ヒト試料等の真核細胞を含む生物学的試料といったような真核細胞環境においてIa−1’を用いた代謝及び取り込みは起こり得る。
【0204】
2.2)Ib−1の取り込みを試験するために、表1から4つの異なるL.ニューモフィラ(L.pneumophila)株を選択した(表2参照)。
【0205】
【表2】
【0206】
上記と同じ実験手順を実施した。まず、上記株を化合物Ib−1の存在下で増殖させ、その後の工程で、上述の条件下、蛍光色素の代わりに上記式4のビオチン−アルキンプローブを使用し、銅を触媒とするアジド−アルキン付加環化を上述の通り30分間行って、LPS中へのアジド化学レポーターの取り込みをモニターした。その後、蛍光標識した抗ビオチン抗体に認識させることによって、ビオチン標識を可視化した。これらの実験において、全ての株がその膜上で非常にはっきりした蛍光を示した。これは、化学レポーターが効果的に代謝的に取り込まれたことを意味する。この結果から、予想された通り、化合物Ib−1もまたL.ニューモフィラ(L.pneumophila)に同化されることが分かった。
【0207】
引用文献
[1]Yu,V.L.et al.Distribution of Legionella Species and Serogroups Isolated by Culture in Patients with Sporadic Community−Acquired Legionellosis:An International Collaborative Survey.J.Infect.Dis.186,127−128(2002);Doleans,A.et al.Clinical and Environmental Distributions of Legionella Strains in France Are Different.J.Clin.Microbiol.42,458−460(2004);Harrison,T.G.,Afshar,B.,Doshi,N.,Fry,N.K.&Lee,J.V.Distribution of Legionella pneumophila serogroups,monoclonal antibody subgroups and DNA sequence types in recent clinical and environmental isolates from England and Wales(2000−2008).Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.28,781−791(2009).
【0208】
[2]Knirel,Y.A.,Rietschel,E.T.,Marre,R.&Zahringer,U.The structure of the O−specific chain of Legionella pneumophila serogroup 1 lipopolysaccharide.Eur.J.Biochem.221,239−245(1994).
【0209】
[3]Glaze,P.A.,Watson,D.C.,Young,N.M.&Tanner,M.E.Biosynthesis of CMP−N,N’−diacetyllegionaminic acid from UDP−N,N’−diacetylbacillosamine in Legionella pneumophila.Biochemistry 47,3272−3282(2008).
【0210】
[4]McGill,N.W.&Williams,S.J.2,6−Disubstituted Benzoates As Neighboring Groups for Enhanced Diastereoselectivity in β−Galactosylation Reactions:Synthesis of β−1,3−Linked Oligogalactosides Related to Arabinogalactan Proteins.J.Org.Chem.74,9388−9398(2009).
【0211】
[5]Zemplen,G.,Kunz,A.Uber die Natriumverbindungen der Glucose und die Verseifung der acylierten Zucker.Chem Ber 56,1705−1710(1923).
【0212】
[6]Lee,D.&Taylor,M.S.Borinic Acid−Catalyzed Regioselective Acylation of Carbohydrate Derivatives.J.Am.Chem.Soc.133,3724−3727(2011).
【0213】
[7]Tsvetkov,Y.E.,Shashkov,A.S.,Knirel,Y.A.&Zahringer,U.Synthesis and NMR spectroscopy of nine stereoisomeric 5,7−diacetamido−3,5,7,9−tetradeoxynon−2−ulosonic acids.Carbohydr Res 335,221−243(2001).
【0214】
[8]Dumont,A.,Malleron,A.,Awwad,M.,Dukan,S.&Vauzeilles,B.Click−mediated labeling of bacterial membranes through metabolic modification of the lipopolysaccharide inner core.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.51,3143−3146(2012).
【0215】
[9]Hewitt,M.C.&Seeberger,P.H.Solution and Solid−Support Synthesis of a Potential Leishmaniasis Carbohydrate Vaccine.J.Org.Chem.66,4233−4243(2001).
【0216】
[10]Moss,C.W.,Weaver,R.E.,Dees,S.B.&Cherry,W.B.Cellular fatty acid composition of isolates from Legionnaires disease.J.Clin.Microbiol.6,140−143(1977).
[11]Aurell,H.et al.Legionella pneumophila Serogroup 1 Strain Paris:Endemic Distribution throughout France.J.Clin.Microbiol.41,3320(2003).
【0217】
[12]Baron,A.,Bleriot,Y.,Sollogoub,M.&Vauzeilles,B.Phenylenediamine catalysis of “click glycosylations” in water:practical and direct access to unprotected neoglycoconjugates.Org.Biomol.Chem.6,1898−1901(2008).
【0218】
[13]Knirel,Y.A.et al.Identification of a Homopolymer of 5−Acetamidino−7−acetamido−3,5,7,9−tetradeoxy−d−glycero−d−talo−nonulosonic Acid in the Lipopolysaccharides of Legionella pneumophila Non−1 Serogroups.Biochemistry(Moscow)66,1035−1041(2001).
【0219】
[14]Antonczak,A.K.,Simova,Z.&Tippmann,E.M.A critical examination of Escherichia coli esterase activity.J.Biol.Chem.284,28795−28800(2009).
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】