(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-503571(P2017-503571A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】脈拍及び飽和度を用いた酸素供給システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A62B 7/14 20060101AFI20170113BHJP
B64D 13/00 20060101ALI20170113BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20170113BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
A62B7/14
B64D13/00
A61B5/14 322
A61M16/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-541424(P2016-541424)
(86)(22)【出願日】2014年12月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月16日
(86)【国際出願番号】US2014071178
(87)【国際公開番号】WO2015095532
(87)【国際公開日】20150625
(31)【優先権主張番号】61/919,007
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/573,998
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500413696
【氏名又は名称】ビーイー・エアロスペース・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】B/E Aerospace, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ナグレチャ、ムリナル
【テーマコード(参考)】
2E185
4C038
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA02
2E185CA03
2E185CB02
2E185DA12
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
(57)【要約】
【解決手段】航空機の乗客に酸素を供給するシステム及び方法であって、酸素供給源と、口鼻マスクと、酸素供給源から口鼻マスクへの酸素の流れを調整する制御器と、ユーザの血中酸素飽和度レベルを判定するセンサとを備え、制御器は、ユーザの血中酸素飽和度レベルのセンサの判定に基づいて酸素の流れを調整するシステム及び方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素をユーザに供給する方法であって、
酸素貯蔵室と、酸素をユーザに送るための導管とを設置し、
制御器を介して前記ユーザへの酸素の流れを調節し、
前記制御器に、前記ユーザの血中酸素飽和度レベルに基づいて酸素の流れを調節するためのルールを設け、
前記ユーザの血中酸素飽和度レベルを非侵襲的に検出するセンサを設け、
前記ユーザの血中酸素飽和度レベルを前記制御器に伝え、
前記ユーザの血中酸素飽和度レベルに基づいて前記ユーザへの酸素の流量を調整する、
酸素をユーザに供給する方法。
【請求項2】
前記制御器は、航空機上の乗客安全装置の一部である、
請求項1に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項3】
前記センサは、パルスオキシメータである、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項4】
前記センサは、カプノメータである、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項5】
前記センサは、Tスタットオキシメータである、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項6】
前記センサは、航空機乗客用呼吸マスクの一部である、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項7】
前記システムは、脈拍を用いた酸素供給システムである、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項8】
前記センサ、前記ユーザの頬の毛細血管を測定する、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項9】
前記制御器は、酸素の流れを調節するためのルールの一部として、前記航空機の高度を用いる、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項10】
前記制御器は、誤信号を検出し、前記酸素の流量を誤信号の検出に応じて調整することができる、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項11】
前記制御器は、酸素供給中に信号を損失した場合、ユーザの血中飽和度レベルの動作平均値を使用する、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項12】
前記センサは、ユーザの肌に接触する、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項13】
前記制御器は、前記ユーザから生理学的データを受信し、前記ユーザの酸素飽和度レベルだけでなく前記生理学的データを利用して、前記ユーザへの酸素の流れを調節する、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項14】
前記酸素は、前記ユーザに呼吸される前に、航空機の客室空気で希釈される、
請求項2に記載の酸素をユーザに供給する方法。
【請求項15】
航空機の乗客に酸素を供給するシステムであって、
酸素の供給源と、
口鼻マスクと、
前記酸素の供給源から前記口鼻マスクへの酸素の流れを調整する制御器と、
ユーザの血中酸素飽和度レベルを判定するセンサと、を備え、
前記制御器は、前記ユーザの血中酸素飽和度レベルのセンサの判定に基づいて、前記酸素の流れを調整する、
酸素を供給するシステム。
【請求項16】
前記センサは、パルスオキシメータである、
請求項15に記載の酸素を供給するシステム。
【請求項17】
前記センサは、カプノメータである、
請求項15に記載の酸素を供給するシステム。
【請求項18】
前記センサは、Tスタットオキシメータである、
請求項15に記載の酸素を供給するシステム。
【請求項19】
前記システムの状態を示す状態表示システムをさらに備える、
請求項15に記載の酸素を供給するシステム。
【請求項20】
前記表示システムは、複数のLED光源である、
請求項19に記載の酸素を供給するシステム。
【請求項21】
患者に少量の酸素を供給するための適応制御器であって、
前記患者の血中ヘモグロビン飽和度を測定するための前記患者への非侵襲性オキシメータセンサであって、所与の時間にわたって、前記血中ヘモグロビン飽和度を連続的に示す複数の血中ヘモグロビン飽和度出力値を生成する非侵襲性オキシメータセンサと、
前記血中ヘモグロビン飽和度出力値の動作平均値を生成及び調整する手段と、
前記動作平均値に応じた出力値を生成する手段と、
無効と考えられる出力信号値を特定し、前記血中ヘモグロビン飽和度出力信号値に応答して複数の前記血中ヘモグロビン飽和度出力信号値を評価し、前記評価に基づいて、処理された出力信号を提供する処理手段と、
前記無効と考えられる出力信号値のそれぞれをそれぞれ出力信号と置き換えることで、有効出力信号のシーケンスを形成する手段と、
を備える、適応制御器。
【請求項22】
前記オキシメータは、パルスオキシメータであって、前記複数の血中ヘモグロビン飽和度出力信号値は、パルスオキシメータによって測定されたヘモグロビンの酸素飽和度値である、
請求項21に記載の適応制御器。
【請求項23】
前記処理手段は、
無効と考えられる出力信号値を特定し、前記特定された無効と考えられる出力信号値を除外して、有効出力信号値のシーケンスを提供するアーチファクト認識手段と、
前記有効出力信号値のシーケンスの動作平均値を生成し、前記動作平均値を前記処理された出力信号として提供する手段と、
を備える、請求項21に記載の適応制御器。
【請求項24】
前記アーチファクト認識手段は、前記複数の出力信号値のそれぞれを前記動作平均値と比較し、前記動作平均値と所定量以上異なる無効と考えられる出力信号値を特定する手段を備える、
請求項23に記載の適応制御器。
【請求項25】
患者に僅かな量の酸素を供給する適応制御器であって、
患者に接続された測定手段であって、前記患者の血中酸素レベルを測定し、前記測定された血中酸素レベルを連続的に示す、複数の出力信号値を提供する測定手段と、
前記測定手段に接続された処理手段であって、前記複数の出力信号値の動作平均値を生成し、前記患者の所望の血中酸素レベルを示す目標値から前記動作平均値を差し引いて差信号を生成する処理手段と、
前記差信号を受信するように接続されたフィードバック制御手段であって、前記患者に供給される僅かな量の酸素を調整して大きさにおいて前記差信号を最小化するフィードバック制御手段と、
を備える、適応制御器。
【請求項26】
患者に供給する僅かな量の酸素を適応的に制御する方法であって、
a)所与の時間にわたって、複数回、前記患者の血中ヘモグロビン飽和度を測定し、前記測定された値を出力信号として提供し、
b)前記出力信号の測定された値のそれぞれを評価して無効と考えられる出力信号値を特定し、
c)前記出力信号から前記特定された無効と考えられる出力信号値を除外して処理された出力信号を生成し、
d)前記患者に供給される僅かな量の酸素をある程度まで調整して、前記処理された出力信号と、所定の所望血中ヘモグロビン飽和度信号との差を最小化する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年12月20日に出願された米国出願第61/919,007号、及び、2014年12月17日に出願された米国出願第14/573,998号の優先権を主張し、それらの内容を参照により組み込む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的に、民間航空機で日常的に運搬されており、客室与圧の低下の際に自動的に配備するような非常用酸素供給システムに関する。本発明は、特に、供給される酸素の使用効率を高めることで、航空機上で運搬される必要がある酸素の総量を削減することに関する。
【0003】
非常用酸素供給システムは、一般的に、約12000フィートより高い高度で客室与圧が低下した際、乗客に酸素を供給するために航空機に搭載される。この種の非常用システムは、一般的に、頭上の収納コンパートメントから解放されると、乗客の口及び鼻に着けられるフェイスマスクを備える。フェイスマスクは、低圧下で乗客に酸素を供給可能な機内酸素貯蔵室に接続される。マスクに供給された補給酸素は、現行の客室与圧高度状況で外気を呼吸するならば、体験するであろうレベルよりも高い血中酸素飽和度に乗客の血中酸素飽和度を上げる。酸素貯蔵室によって供給された酸素流量は、客室与圧が回復するまで、あるいは、低く、安全な高度に下がるまで全ての乗客を維持するのに十分であるように試算されている。
【0004】
非常用酸素供給システムの中には、フェイスマスクが、システムの配備の際、及び、引き紐によって個々のフェイスマスクが起動される際、酸素流が導かれる付属の貯蔵バッグを有するものがある。酸素は、最悪のシナリオを想定して、すなわち、最大巡行高度で、客室与圧が低下した際、平均呼吸速度より早い速度で呼吸する、平均1回呼吸量より極めて多い呼吸量の乗客の要求を満たすように、算出された定速で供給される。一般的な呼吸マスクでは、全部で3つの弁がバッグとマスクとの間、及び、マスクと周辺環境との間の流れを調整するように機能する。吸入弁は、マスクからバッグへの逆流を防ぎながら、呼気後の休止の間だけでなく、乗客が息を吐く間、バッグに流れる酸素をバッグに閉じ込める機能を果たす。乗客が息を吸う際、吸入弁は、開放してバッグに蓄積された酸素の吸入を可能にする。蓄積された酸素が枯渇すると、希釈弁が開放して客室の空気をマスクに引き込むことができる。バッグへの継続した酸素の流れ、及び、マスクへの開放された吸入弁を介した継続した酸素の流れは、こうして、吸入段階のバランスを保ちながら、吸入される客室空気によって希釈される。呼気の間、吸入弁は、マスクからバッグへの流れを防ぐため閉鎖されるとともに、呼気弁が開放されて、マスクから周辺環境への自由な流れが可能となる。呼気後の休止の間、酸素は、貯蔵バッグに流れ続けるが、これらの全ての3つの弁は、閉鎖されたままである。
【0005】
非常用酸素供給システムが非効率的であると、酸素貯蔵または酸素生成手段を大きくする必要があり、それによって、必要以上に重量を増やし、もちろん、航空機の最大積載量及び燃費に悪影響を与える。従って、このようなシステムの効率を、酸素の生成、貯蔵、供給、消費のいずれの観点からも高めることは、特に、何百もの飛行を重ねると、軽量化につながる。逆に、同等の小型化なしに、システムの効率を高めることで、システムの動作が非常に安全となる。従って、いかなる方法であっても、非常用酸素供給システムの効率を高めることが非常に望ましい。
【0006】
キヤノンによる米国特許出願第08/0000480号は、航空機非常用酸素システムの酸素消費率を高めるシステムを開示している。乗客の実際の需要に応じて個々の乗客への酸素の割り当てを調整し、乗客に割り当てられた酸素をより効率よく使用させることで効率が改善される。特に、割り当ては、各乗客の呼吸速度に応じて調整され、速い呼吸に対しては、乗客の酸素割り当ての供給速度は速くされる。肺の最も効率的な吸い込み領域に吸入されるように酸素の供給時間を調整することで、及び、肺のその領域の容積とほぼ一致するように供給される酸素の量を制限することで、供給された酸素はより効率的に使用される。客室の空気は、乗客の呼吸気量のバランスを保つために依存されている。しかし、キヤノンのシステムは、乗客の均一な酸素有効性を仮定しているが、乗客によって酸素の消費効率は異なる。本発明は、乗客のシステムの酸素含有量を測定し、測定結果に基づいてマスクへの酸素の流れを調整する改善されたシステムを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乗客/患者に接続されたパルスオキシメータを利用し、ユーザに酸素を供給する基準として測定値を使用する。パルスオキシメータはユーザの血中酸素飽和度レベル(SpO
2)を計測する多くの非侵襲的技術に基づいてもよい。
【0008】
脈拍及び飽和度を用いたシステムのタイミングは、既存のOCSによって制御されるが、投与量は、ユーザの特定のSpO
2によって異なり、より効率的な供給システムとなっている。一例として、ある人は、酸素脈を半分に削減することができ、それによって、システムの使用時間を倍にするか、または、貯蔵容器の大きさを削減することができる。病院、医療設備、または、非常事態において、患者の血中酸素飽和度を監視して、調節された供給システムに手動で変更を行うのではなく、本システムは、特定の血中酸素飽和度(例えば、97% O
2飽和度)に基づいて酸素供給率を設定することができ、飽和度が達成されるまで、自動的に患者への投与量を調整する。このとき、次第に予定値に向かうかもしれないが、患者が設定されたレベルを再び下回る場合、システムは、飽和度不足を検出し、所要設定量に飽和度を戻すように酸素量を再調整する。本システムは、動作範囲、例えば、最少酸素量及び最大酸素量を有してもよい。この場合、個人の飽和度(すなわち、99.9%)に関わらず、最少量を受け、ユーザの飽和度が常に低かった場合、システムは、提供できる最大量を提供する。これは、システムが時期尚早に酸素不足に陥ることを防止するための予防措置である。
【0009】
この種のシステムは、幅広い用途を有する。例として、航空機上の乗客用の生命維持システム、病院または治療施設での呼吸器系患者、民間または軍隊のMEDEVAC航空機における患者が挙げられる。
【0010】
本発明の他の特徴および利点が、例として、本発明の作用を図示する添付の図面と合わせて以下の好適な実施形態の詳細な記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】乗客酸素供給システムを示す、航空機の一部断面図である。
【
図1B】本発明の第1の好適な実施形態を包含する、
図1Aの酸素システムの立面斜視図である。
【
図2】口鼻マスクの正面を示す拡大立面斜視図である。
【
図3】
図2のマスクを乗客/患者に着けた立面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の範囲は、航空機生命維持システム及び航空機医療支援システムを網羅するが、酸素を患者に供給する従来の医療システムも網羅する。以下の開示の便宜上、乗客用酸素供給システムを中心に記載するが、本発明は、この目的に限定されず、他の用途にも広がることを理解されたい。
【0013】
本発明のシステムは、ユーザの血中酸素レベルのリアルタイムの測定によってユーザへの酸素量を制御及び調整するのに、パルスオキシメータのアプリケーションを基本的に使用する。従来技術の脈拍を用いた酸素システムは、集積回路上のソフトウェアの値表に保存された航空機の高度に基づいて酸素量を供給する。本発明の方法は、患者の血中酸素飽和度を、1つ以上の非侵襲的技術に基づいて検出し、ユーザの酸素レベル(SpO
2)を判定し、それに応じて酸素流量を調整する。血中酸素飽和度を検出する他の技術を以下に記載する。
【0014】
パルスオキシメータは、基本的は、患者の体の薄い部分、通常、指先または耳たぶ、または、乳児の場合、足に亘って配置されるセンサである。2つの異なる波長の光が患者を通り、光検出器に達する。波長のそれぞれの変化する吸光度が測定され、乗客の酸素ヘモグロビンの吸光度が判定される。これらの波長の吸光は、酸素ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとで著しく異なる。吸光度測定値により、赤色及び赤外線の吸光率から、酸素/脱酸素ヘモグロビン割合が算出可能である。
【0015】
カプノメトリは、呼気における二酸化炭素濃度を測定する呼吸観測処置である。この処置の間用いられる本装置は、カプノメータと呼ばれる。患者の換気及び呼吸速度の妥当性の判定も行われる。赤外線の周波数を用いて、呼吸プロセスの間、CO
2分子によって吸光された光の量を測定することで、機能する。
【0016】
Tスタットオキシメータ。最小の毛細血管においても酸素濃度を読み取ることで、Tスタットオキシメータは、脈のない患者であっても酸素濃度を判定する。Tスタット酸素濃度計は、微小血管組織の血中酸素レベルを監視する可視光分光法(VLS)システムである。従来のパルスオキシメータの測定値がSpO
2の割合として示されるとすれば、新しいTスタットオキシメータは、StO
2割合を表示する。Tスタット酸素モニタは、血流が弱い、妨害されている、または、脈が全くない場合であっても、小さな毛細血管に達する酸素量に焦点を合わせる。このTスタットオキシメータは、非侵襲性であり、(パルスオキシメータと同様に)血液の色を読み取ることで動作する。しかし、従来のパルスオキシメータは、赤色及び赤外線の周波数を使用して非飽和ヘモグロビンに対する飽和ヘモグロビンの割合を測定していたが、Tスタットモニタは、より短い波長(緑及び青)を利用する。これらの光の波は、(最小の血管、毛細血管であっても)特定の組織を観察でき、その場所における酸素レベルを検出できる。
【0017】
本装置は、メイン電子モニタ及びセンサプローブから成る。モニタは、データを収集し、解析して結果を表示する。センサは、観察する必要のある特定の組織を照らす光周波数を放出する。モニタに戻ってくると、反射光が分析され、StO
2が推定される。
【0018】
本発明では、上述した技術が個別にまたは並行して実施されて、急速な減圧または酸素レベルが予定値を下回るような環境に晒された乗客の酸素飽和度データを提供する。
図1Aは、座席2を有する航空機1を示し、座席の上方には、乗客用酸素供給システムがある。
図1Bは、より詳細な酸素供給システムを示し、酸素供給システムは、配線22を介して電気的に接続されるとともに、弁26に接続する流管24によっても制御器20に接続された酸素供給タンク10を備える。流管24は、多岐管28に接続され、多岐管28は、処理装置からの命令に基づいて多岐管を通る酸素流量を調節可能である。適応制御器20は、このように、細長い管32を通って、調整可能な、または、伸縮性のあるストラップ42によって所定の位置に保持された口鼻マスク40へと、乗客/患者に少量の酸素を供給する。制御器は、好ましくは、患者の血中ヘモグロビン酸素飽和度を計測するため、患者に接触した非侵襲性のオキシメータセンサ50を利用する。データはその後、酸素マスク40及び/またはマスクストラップ42などの酸素供給システムに一体化されたセンサを介して再コードがされる。マスクピース40のセンサ50は、締め具によってしっかり適合するように支持された鼻筋上、または、頬の毛細血管から測定値を得るようにマスクの側面上(
図3参照)にあってもよい。マスクストラップ42上のセンサ52は、首の後ろの測定値を取得する。指先または耳たぶに位置する昔からあるセンサも、このシステムと互換性を有してもよい。
【0019】
オキシメータ50は、所与の時間にわたって、患者の血中ヘモグロビン飽和度を連続的に表す複数の血中飽和度出力信号を生成する。制御器20は、管42に沿ってセンサ50から制御器20まで送られる複数のオキシメータ出力信号を評価し、この評価に基づいて、血中飽和度信号を供給する。出力信号に応答して、フィードバック制御器は、酸素レベル測定値に基づいて患者に供給される各酸素ラインへの多岐管を通る僅かな量の酸素を設定する。マスク40は、好ましくは、システムの動作状態を示す1つ以上のLED55を内蔵する。例えば、赤色LEDが光ると、マスクが機能していないことを示し、黄色LEDは、マスクが機能しているが、酸素検知機能が動作していないことを示す。この指示は、センサが乗客から正確に情報を得ていない、または、マスクが使用されていないことにより起こる。最後に、緑色LEDは、マスクが正しく使用されており、酸素飽和度システムが正しく機能していることを示す。他の設備及び警報/ディスプレイも本発明によって検討される。
【0020】
本発明は、用途及び使用目的によって、多くの異なる形式をとってもよい。例えば、オキシメータを用いる酸素マスク(
図2)は、吸入弁60、排出弁62、信号だけでなく酸素を供給する管32の入口64であって、もしあれば、電力線への入口64、前述した口鼻マスクへの酸素供給を調節する、個人サービスユニット(PSU)の一部としての制御器、及び、(限定されないが)鼻栓で固定された鼻筋、頬、耳たぶ、指先、または、首の後ろに実装された酸素検知機器を内蔵する口鼻マスク40を備えてもよい。以下のうち1つ以上は、酸素レベルを測定するのに用いられる。(1)パルスオキシメータは、乗客の動脈血の酸素飽和度を検出するように実装される。(2)カプノメトリの技術が、乗客の呼気における二酸化炭素の割合を検出して酸素飽和度及び呼吸速度を導出するように実装される。(3)Tスタットオキシメータ。Tスタットオキシメータは、通常のパルスオキシメータと同様に動作するが、より強力で、人体の最小の毛細血管から飽和度を検出可能である。
【0021】
本発明を実施する好適なモードは、PSUの設備のそばに着席した乗客に航空グレードの酸素を供給するため、加圧された航空機の客室内部の呼吸装置、または、携帯型呼吸装置を用いる。この場合、コントローラ基板などの制御装置は、PSUに配置されてもよく、PSUは、上述した1つまたは複数の技術を利用して航空機の乗客の酸素ヘモグロビンレベルを検出し、乗客から引き出したデータを利用し、所定の飽和度レベルに対応する酸素出力を調整するアルゴリズムまたはルックアップテーブルを実施し、制御装置は、航空機の高度及び客室与圧だけでなく複数の生理学的基準を検討して、目標飽和度レベルを規定する。好適な実施形態において、システムは、誤信号を検出するための検査機能を備え、過剰投与を防止するため、信号の損失または誤測定値に対処するように一連の動作平均値を維持する。
【0022】
マスク40は、マスクを乗客に固定する調整可能なストラップ42を備え、マスクは、一般的に、乗客の顔に対して気密密閉する、円錐台形の薄い壁付き構造を有する。マスクには3つの弁があり、それぞれ、呼吸周期の異なる部分で動作する。吸入弁60は、呼吸後の休止の間だけでなく、乗客が息を吐く間、バッグへ流れ込む酸素を(図示しない)バッグに閉じ込めるように機能し、また、常に、マスクからバッグへの流れを防止する。乗客が息を吸うと、吸入弁60が開放してバッグに蓄積された酸素の吸入が可能となる。蓄積された酸素が枯渇すると、希釈弁62が開放して、マスク40に客室空気が引き込まれる。バッグへの酸素の連続した流れ、及び、開放した吸入弁60を介したマスクへの酸素の連続した流れは、吸入段階のバランスを保ちながら、吸入される客室の空気によって希釈される。呼気の間、呼気弁が開放して、マスクから周辺環境への自由な流れが可能となるとともに、吸入弁は閉鎖して、マスクからバッグに戻る流れが止められる。3つの全ての弁は、呼吸後の休止の間、閉鎖されるが、酸素は、貯蔵バッグに流れ続ける。
【0023】
マスク40のストラップ42は、後部に、乗客の首と接触するセンサ52であって、上述した方法のうち1つを用いて乗客の酸素飽和度を判定可能なセンサ52を備えてもよい。センサは、乗客へ供給する酸素脈を判定する、乗客の座席に隣接した酸素流量調節装置に接続される。センサからの信号は、酸素流管32に沿って供給され、マスク40につながる管/ケーブルの数を制限する。センサは、乗客の肌に接触するマスクの壁に配置されてもよく、または、指または他の場所に着けられてもよい。
【0024】
連続ガスシステムにとって、乗客の血液の酸素飽和度レベルを測定及び監視するコントローラ基板への応答装置として機能するアクティブ調節システムが好ましい。パルス要求システムの場合、変調速度は、個々の乗客の呼気の頻度によって、決定される。結果として、変調パターンは、適切に変化する必要がある。キーボード77または他の入力装置を介して、コントローラ基板から受信した、乗客の生理学的状態に関するデータを、客室与圧及び高度の観点からの航空機の状態と合わせて利用することで、システムは、酸素流量を調節し、乗客への酸素の供給を開始する。
【0025】
本発明は、さらに、患者に少量の酸素を供給する適応制御器の特徴を有し、当該適応制御器は、患者の血中ヘモグロビン飽和度を計測する非侵襲性オキシメータセンサを備え、当該オキシメータセンサは、所与の時間にわたって、血中ヘモグロビン飽和度を連続的に示す複数の血中ヘモグロビン飽和度出力信号値を生成する。当該適応制御器は、血中ヘモグロビン飽和度出力値の動作平均値を生成及び調整し、動作平均値に応じた出力信号を生成する装置を備える。処理装置は、検査機能を備え、検査機能は、無効と考えられる出力信号値を特定し、血中ヘモグロビン飽和度出力信号値に応答して複数の血中ヘモグロビン飽和度出力信号値を評価し、評価に基づいて、処理された出力信号を供給する。誤検出の場合、無効と考えられる出力信号値のそれぞれをそれぞれの出力信号と置き換えることで、有効な出力信号のシーケンスを形成する手段があることが好ましい。
【0026】
適応制御器は、パルスオキシメータとして機能するオキシメータを備えてもよく、複数の血中ヘモグロビン飽和度出力信号値は、パルスオキシメータ(SpO
2)によって測定されたヘモグロビンの酸素飽和度値である。適応制御器の処理装置は、無効と考えられる出力信号値を特定し、特定された無効と考えられる出力信号値を除外して、有効出力信号値のシーケンスを提供するアーチファクト認識手段と、有効出力信号値のシーケンスの動作平均値を生成し、動作平均値を処理された出力信号として提供する手段とを備える。
【0027】
図4は、不揮発性メモリを用いるシステムを概略的に示し、不揮発性メモリは、開始の第1基準点を保存し、酸素制御器20に接続された酸素ボトルまたはタンク10から呼吸装置/マスク40への酸素供給を増加させ、第1基準点より高い事前に設定された気圧高度での加圧された航空機客室から呼吸装置への希釈空気の流れを止めるように構成される。当該システムは、不揮発性メモリ80及び圧力センサ85に接続された論理制御装置70であって、第1基準点及び圧力データを処理することで、酸素ボトルからの酸素の供給、及び、酸素調節器を介した加圧された航空機客室から呼吸装置への希釈空気の流れを調節する制御信号を生成するように構成された論理制御装置70を備えてもよい。用途によって、不揮発性メモリ80は、フラッシュメモリである。別の選択肢としては、対象者に着用されたパルスオキシメータ50によって転送された酸素ヘモグロビン飽和度データを受けるため、論理制御装置に接続されたシリアルポートである。論理制御装置70は、回転性変位に基づいて制御信号を生成するため、第1ルックアップテーブル及び第2比較器モジュール96を用いて対応する高度を判定する第1比較器モジュール95を備えてもよい。制御信号を増幅する増幅器を内蔵してもよい。
【0028】
本発明の特定の形態について例示及び記載したが、種々の改良が、本発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲で可能であることは、前述により明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲以外によって限定を受けることを意図されていない。
【国際調査報告】