(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-503722(P2017-503722A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】飲料カプセルに関連する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B65D 85/72 20060101AFI20170113BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
B65D85/72 F
A47J31/06 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-531987(P2016-531987)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】IB2014002626
(87)【国際公開番号】WO2015075543
(87)【国際公開日】20150528
(31)【優先権主張番号】1320483.9
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512164779
【氏名又は名称】コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】メルローズ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハリデー, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー, サイモン フィリップ
【テーマコード(参考)】
3E035
4B104
【Fターム(参考)】
3E035AA20
3E035BA05
3E035BC02
3E035BC03
3E035BD10
3E035CA07
3E035DA03
4B104AA20
4B104BA40
4B104BA53
4B104EA40
(57)【要約】
カプセル(1)の本体部分(2)を生産する方法は、本体部分(2)をポリマー材料から形成することと、その後、本体部分(2)の1つ以上の穿刺ゾーン(30)を処理することにより、穿刺ゾーンのポリマー材料の1つ以上の材料特性を本体部分(2)の残りの部分のポリマー材料の材料特性に対して変化させることとを含む。飲料の調製のためのカプセル(1)は、飲料調製機械の1つ以上の穿刺具(13)によって使用時に穿刺され、圧力下の水をカプセル(1)の内部の中に給送するための1つ以上の入口開口を提供するように意図されている1つ以上の穿刺ゾーン(30)を備えている本体部分(2)を備えている。本体部分(2)は、ポリマー材料から形成されている。穿刺ゾーンのポリマー材料は、本体部分(2)の形成後、その材料特性のうちの1つ以上のものを変化させるように処理された変質させられた構造を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルの本体部分を生産する方法であって、
前記本体部分をポリマー材料から形成するステップと、
その後、前記本体部分の1つ以上の穿刺ゾーンを処理することにより、前記1つ以上の穿刺ゾーンの前記ポリマー材料の1つ以上の材料特性を前記本体部分の残りの部分の前記ポリマー材料の前記材料特性に対して変化させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、前記1つ以上の穿刺ゾーンを放射エネルギーにさらすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、前記1つ以上の穿刺ゾーンを電磁放射にさらすことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射は、赤外線放射、可視光放射、紫外線放射、軟X線放射、X線放射、ガンマ線放射、および電子ビーム放射のうちの1つ以上のものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、前記ポリマー材料を劣化させること、炭化させること、発泡化させること、エージングさせること、または脆化させることのうちの1つ以上のものを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記放射エネルギーは、集束ビームの形態で前記1つ以上の穿刺ゾーンに印加される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の穿刺ゾーンのレーザ処理を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記本体部分は、前記ポリマー材料から成形される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記本体部分は、一体型成形体として形成される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記本体部分は、単一材料から成形される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記本体部分は、射出成形される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記本体部分は、ポリオレフィンを含む材料から形成される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記本体部分は、熱可塑性ポリオレフィンを含む材料から形成される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記本体部分は、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含む材料から形成される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー材料は、放射エネルギーによる前記1つ以上の穿刺ゾーンの処理を促進するように意図されている添加剤を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤は、カーボンブラック、黒鉛、およびドープ二酸化スズから成る群から選択される1つ以上の化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記二酸化スズは、アンチモン、フッ素、塩素、タングステン、モリブデン、鉄、またはリンのうちの1つ以上のものでドープされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記本体部分は、カップ形状に成形される、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記本体部分は、入口壁を備え、前記1つ以上の穿刺ゾーンは、前記入口壁上に位置している、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、環状ゾーンを備えている、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記環状ゾーンは、円周方向に連続的である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記環状ゾーンは、円周方向に断続的である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記環状ゾーンは、円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備えている、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、2つ以上の同心円状に配列された環状ゾーンを備えている、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、円形ゾーンを備えている、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記本体部分は、0.20〜0.50mmの範囲内、好ましくは、0.30〜0.40mmの範囲内の前記1つ以上の穿刺ゾーン内の厚さを有する、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、前記本体部分の入口壁面積の10〜90%の面積を備えている、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記本体部分の残りの部分の前記ポリマー材料をマスキングし、処理中の前記本体部分の前記残りの部分の変化を防止することをさらに含む、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記本体部分は、飲料調製機械の封入部材との密閉係合を形成し、それによって、使用時の水のバイパス流を防止または制限するように構成されている密閉部材をさらに備えている、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記密閉部材は、処理されていない前記本体部分の残りの部分の一部を形成している、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記本体部分の前記1つ以上の穿刺ゾーンは、前記密閉部材より低い靱性を有する、請求項29から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
飲料の調製のためのカプセルを生産する方法であって、
請求項1〜31のいずれかに記載の本体部分を生産するステップと、
飲料原料を前記本体部分の中に挿入するステップと、
前記本体部分を蓋で密閉するステップと
を含む、方法。
【請求項33】
請求項1から31のいずれかに記載の方法によって取得可能なカプセルの本体部分。
【請求項34】
飲料調製機械とともに使用される場合の飲料の調製のためのカプセルであって、前記カプセルは、本体部分および蓋を備え、前記本体部分および蓋は、飲料原料を含むための前記カプセルの内部を一緒に画定し、
前記本体部分は、1つ以上の穿刺ゾーンを備え、前記1つ以上の穿刺ゾーンは、使用時、前記飲料調製機械の1つ以上の穿刺具によって穿刺され、それによって、圧力下の水を前記カプセルの前記内部の中に給送するための1つ以上の入口開口を提供するように意図されており、
前記本体部分は、ポリマー材料から形成されており、
前記1つ以上の穿刺ゾーンの前記ポリマー材料は、変質させられた構造を備え、前記変質させられた構造は、前記本体部分の形成後、前記1つ以上の穿刺ゾーンの前記ポリマー材料の1つ以上の材料特性を前記本体部分の残りの部分の前記ポリマー材料の前記材料特性に対して変化させるように処理されている、カプセル。
【請求項35】
前記変質させられた構造は、劣化、炭化、発泡化、エージング、または脆化させられた構造のうちの1つ以上のものを備えている、請求項34に記載のカプセル。
【請求項36】
前記本体部分は、前記ポリマー材料から成形されている、請求項34〜35のいずれかに記載のカプセル。
【請求項37】
前記本体部分は、一体型成形体である、請求項34〜36のいずれかに記載のカプセル。
【請求項38】
前記本体部分は、単一材料から成形されている、請求項34〜37のいずれかに記載のカプセル。
【請求項39】
前記本体部分は、射出成形されている、請求項34〜38のいずれかに記載のカプセル。
【請求項40】
前記本体部分は、ポリオレフィンを含む材料から形成されている、請求項34〜39のいずれかに記載のカプセル。
【請求項41】
前記本体部分は、熱可塑性ポリオレフィンを含む材料から形成されている、請求項34〜40のいずれかに記載のカプセル。
【請求項42】
前記本体部分は、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含む材料から形成されている、請求項34〜41のいずれかに記載のカプセル。
【請求項43】
前記ポリマー材料は、放射エネルギーによる前記1つ以上の穿刺ゾーンの処理を促進するように意図されている添加剤を含む、請求項34〜42のいずれかに記載のカプセル。
【請求項44】
前記添加剤は、カーボンブラック、黒鉛、およびドープ二酸化スズから成る群から選択される1つ以上の化合物である、請求項43に記載のカプセル。
【請求項45】
前記二酸化スズは、アンチモン、フッ素、塩素、タングステン、モリブデン、鉄、またはリンのうちの1つ以上のものでドープされている、請求項44に記載のカプセル。
【請求項46】
前記本体部分は、カップ形状である、請求項34〜45のいずれかに記載のカプセル。
【請求項47】
前記本体部分は、入口壁を備え、前記1つ以上の穿刺ゾーンは、前記入口壁上に位置している、請求項34〜46のいずれかに記載のカプセル。
【請求項48】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、環状ゾーンを備えている、請求項34〜47のいずれかに記載のカプセル。
【請求項49】
前記環状ゾーンは、円周方向に連続的である、請求項48に記載のカプセル。
【請求項50】
前記環状ゾーンは、円周方向に断続的である、請求項48に記載のカプセル。
【請求項51】
前記環状ゾーンは、円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備えている、請求項49または請求項50に記載のカプセル。
【請求項52】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、2つ以上の同心円状に配列された環状ゾーンを備えている、請求項34〜51のいずれかに記載のカプセル。
【請求項53】
前記1つ以上の穿刺ゾーンは、円形ゾーンを備えている、請求項34〜47のいずれかに記載のカプセル。
【請求項54】
前記本体部分は、飲料調製機械の封入部材との密閉係合を形成し、それによって、使用時の水のバイパス流を防止または制限するように構成されている密閉部材をさらに備えている、請求項34〜53のいずれかに記載のカプセル。
【請求項55】
前記密閉部材は、処理されていない前記本体部分の残りの部分の一部を形成している、請求項54に記載のカプセル。
【請求項56】
前記本体部分の1つ以上の穿刺ゾーンは、前記密閉部材より低い靱性を有する、請求項34〜55のいずれかに記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飲料カプセルに関連する方法および装置に関する。特に、飲料調製機械とともに使用されるときの飲料、例えば、コーヒーの調製のためのカプセルに関し、カプセルは、本体部分および蓋を備え、それらは、飲料原料を含むためのカプセルの内部を一緒に画定する、さらに、本開示は、該カプセルおよびその構成要素を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムから形成される使い捨て飲料カプセルが、長年、知られている。実施例は、第EP0512470号に説明されている。当該文書のカプセルは、コーヒーで充填され、カップの側壁から延びる辺縁に接合されたアルミニウムカバーによって閉鎖される、円錐台形形状のカップを備えている。カプセルを受け取るように設計された抽出装置のカプセルホルダは、起伏表面要素部材を伴う、フローグリルを備えている。抽出装置はさらに、水注入器と、カプセルの外側形状に実質的に対応する形状の内部陥凹を伴う、環状要素とを備えている。
【0003】
動作時、第EP0512470号(特許文献1)のカプセルは、カプセルホルダ内に設置される。水注入器は、カプセルの上側入口面を穿孔する。カプセルのアルミニウムカバーは、カプセルホルダの起伏表面要素部材上に据えられる。水が、水注入器を通して注入され、コーヒーに接触する。カプセルは、水によって加圧され、アルミニウムカバーが外向きに変形させられ、起伏表面要素部材に対して引き裂かれることをもたらす。抽出されたコーヒーは、引き裂かれたアルミニウムカバーおよびフローグリルを通して流動し、抽出装置によって、受器、例えば、カップの中に放出される。
【0004】
穿刺を要求しない事前に形成された入口開口をカプセルの入口面に提供することも知られている。しかしながら、これは、コーヒーが、取扱および輸送の間、カプセルから失われ、貯蔵の間、コーヒーの酸化につながり得るという不利点をもたらす。したがって、カプセルの中に飲料原料に接触する水を給送するための入口開口が、飲料形成時に飲料調製機械によって作成される、閉鎖または密閉されたカプセルを使用することが好ましい。この目的のために、抽出デバイスは、典型的には、針またはブレード等の1つ以上の突出部品の形態をとり、カプセルに対して移動され(またはその逆)、カプセルを穿孔する、入口穿刺具を具備する。
【0005】
より最近では、少なくとも部分的に、ポリマー材料から、前述の一般的構成の飲料カプセルを製造することが公知である。例えば、PEまたはPPポリマー等の材料から形成されるカップ形状の本体部分をアルミニウムベースのカバーと組み合わせ、カプセルを形成することが公知である。そのようなものの実施例は、第WO2010/041179号(特許文献2)に説明されている。潜在的問題の1つは、PEまたはPP等のポリマーから作製される飲料カプセルが、公知の飲料調製機械の入口穿刺具を使用して穿孔することが困難であり得ることである。例えば、カプセルの材料は、穿刺段階の間、たわみ、または変形し、入口開口が完全に形成されず、開口が、したがって、所望より小さい開放面積を有する結果をもたらし得る。別の実施例では、入口穿刺具によって加えられる力は、特に、カプセルの材料が、比較的に弾力的なポリマー材料である場合、カプセルの材料内に所望のサイズの入口開口を完全に形成するために不十分であり得る。極端な場合、カプセル材料は、開口が全く形成されない程度まで、たわみ、または変形し得る、またはカプセルの材料は、十分に弾力的であり得る。
【0006】
カプセルの幾何学形状を改変し、入口開口が形成される領域においてカプセルを補強することによって、本問題を克服するための試みが成されている。第WO2010/041179号は、カプセルが、入口壁内に提供されるくぼんだ部分を備え得ることを説明している。このくぼんだ部分は、入口壁上の対応する半径方向リッジと協働する、補強要素であるように意図される。第WO2012/080501号(特許文献3)は、カプセルのベース(入口壁である)が、複数の陥凹としてベース上に円周方向に配列される補強ゾーンを具備する、カプセルを説明している。しかしながら、カプセルの幾何学形状の改変は、カプセルの完全な再設計を要求し、カプセルがいくつかの飲料調製機械における使用のために適合性のないものにし得る。加えて、入口壁の補強の増加は、入口穿刺具によって加えられる力が比較的に弱い場合、入口開口を形成する問題を増加させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0512470号明細書
【特許文献2】国際出願第2010/041179号明細書
【特許文献3】国際出願第2012/080501号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面では、本開示は、カプセルの本体部分を生産する方法であって、
―本体部分をポリマー材料から形成するステップと、
―その後、本体部分の1つ以上の穿刺ゾーンを処理することにより、1つ以上の穿刺ゾーンのポリマー材料の1つ以上の材料特性を本体部分の残りの部分のポリマー材料の材料特性に対して変化させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0009】
有利には、1つ以上の穿刺ゾーンの材料特性のうちの1つ以上のものを変化させることによって、本体部分は、飲料調製機械によって使用時に十分かつ確実に穿刺されることを可能にするように、所望に応じて構成されることができる。変化は、本体部分の形成後に生じるため、技法は、任意の幾何学形状の本体部分に適用されることができ、本体部分から形成されるように意図されるカプセルの形状の全体的変化を要求しない。
【0010】
加えて、有利には、本体部分の異なるゾーンの材料特性は、成形後、本体部分の1つ以上のゾーンを処理することによって制御されることができる。これは、複数の異なる材料から本体部分の形成を試みる必要性および複雑性を回避することができる。例えば、本体部分は、使用されるであろう飲料調製機械の封入部材と密閉界面を形成するように意図されているゾーンを備え得る。本体部分のこのゾーンに対して比較的に靱性または軟質の材料を使用して、より良好なシールが形成されることを可能にすることは、有益であり得る。しかしながら、穿刺されるように意図される本体部分のゾーンまたは複数のゾーンは、比較的に脆いまたは穿刺がより容易であるように作製されることから利益を享受し得る。本開示は、有利には、本体部分の異なる部分の材料特性が正確に制御されることを可能にする。
【0011】
1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、1つ以上の穿刺ゾーンを放射エネルギーにさらすことを含み得る。
【0012】
有利には、放射エネルギーの使用は、本体部分の一部を選択的に処理するための正確な手段を提供する。処理されるように意図されない部分は、放射エネルギーにさらされないようにマスキングされ得る。
【0013】
1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、1つ以上の穿刺ゾーンを電磁放射にさらすことを含み得る。
【0014】
電磁放射は、赤外線放射、可視光放射、紫外線放射、軟X線放射、X線放射、ガンマ線放射、および電子ビーム放射のうちの1つ以上のものであり得る。
【0015】
1つ以上の穿刺ゾーンを処理することは、ポリマー材料を劣化させること、炭化させること、発泡化させること、エージングさせること、または脆化させることのうちの1つ以上のものを含み得る。
【0016】
ポリマー材料の劣化、発泡化、および/または炭化は、1つ以上の穿刺ゾーンのポリマー材料が、構造的により脆弱となるように作製され、故に、入口穿刺具の針またはブレードによってより容易に穿刺されるという利点を有することができる。特に、理論によって拘束されることを所望するわけではないが、処理は、ポリマー分子鎖切断プロセスおよび/または後結晶化を通して、物理的材料特性の変化につながり得る。
【0017】
ポリマー材料のエージングまたは脆化は、1つ以上の穿刺ゾーンのポリマー材料が、ばく露前より脆くされるので、穿刺の間のカプセルの過剰たわみまたは変形が、制限もしくは防止され得るという利点を有することができる。加えて、比較的エージングした、すなわち、脆いポリマー材料は、入口穿刺具の針またはブレード(1つ以上の点荷重をポリマー材料に加える傾向がある)の荷重下、破壊において亀裂および/または破断を生じる(より軟質のポリマー材料に主な、しなやかな「引き裂き」破壊モードとは対照的)傾向が増す。ポリマー材料の破断および/または亀裂は、ポリマー材料の破断および/または亀裂が、点荷重の場所から外向きに伝搬する傾向を有するため、衝突する入口穿刺具の面積より大きい面積の入口開口を形成する傾向を有することが見出されている。その結果、比較的脆い材料の提供は、カプセルの中への加圧された水の進入のために得られる流動面積が増加した拡大入口開口の形成につながり得る。
【0018】
放射エネルギーは、集束ビームの形態で1つ以上の穿刺ゾーンに印加され得る。
【0019】
1つ以上の穿刺ゾーンは、レーザ処理を受け得る。
【0020】
本体部分は、ポリマー材料から成形され得る。本体部分は、一体型成形体として形成され得る。本体部分は、単一材料から成形され得る。本体部分は、射出成形され得る。
【0021】
本体部分は、ポリオレフィンを含む材料から形成され得る。本体部分は、熱可塑性ポリオレフィンを含む材料から形成され得る。本体部分は、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含む材料から形成され得る。代替として、他のポリマー、例えば、ポリ乳酸(PLA)が、使用され得る。
【0022】
ポリマー材料は、放射エネルギーによる1つ以上の穿刺ゾーンの処理を促進するように意図されている添加剤を含み得る。添加剤は、カーボンブラック、黒鉛、およびドープ二酸化スズから成る群から選択される1つ以上の化合物であり得る。
【0023】
二酸化スズは、アンチモン、フッ素、塩素、タングステン、モリブデン、鉄、またはリンのうちの1つ以上のものでドープされ得る。
【0024】
本体部分は、カップ形状に成形され得る。本体部分は、入口壁を備え得、1つ以上の穿刺ゾーンは、入口壁上に位置する。
【0025】
1つ以上の穿刺ゾーンは、環状ゾーンを備え得る。環状ゾーンは、円周方向に連続的であり得る。代替として、環状ゾーンは、円周方向に断続的であり得る。ある実施例では、環状ゾーンは、円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備え得る。
【0026】
1つ以上の穿刺ゾーンは、2つ以上の同心円状に配列された環状ゾーンを備え得る。
【0027】
1つ以上の穿刺ゾーンは、円形ゾーンを備え得る。
【0028】
本体部分は、0.20〜0.50mmの範囲内、好ましくは、0.30〜0.40mmの範囲内の1つ以上の穿刺ゾーン内の厚さを有し得る。
【0029】
1つ以上の穿刺ゾーンは、本体部分の入口壁面積の10〜90%の面積を備え得る。
【0030】
本方法はさらに、処理中の本体部分の残りの部分の変化を防止するために、本体部分の残りの部分のポリマー材料をマスキングすることを含み得る。
【0031】
本体部分はさらに、飲料調製機械の封入部材との密閉係合を形成し、それによって、使用時の水のバイパス流を防止または制限するように構成されている密閉部材を備え得る。密閉部材は、処理されていない本体部分の残りの部分の一部を形成し得る。本体部分の1つ以上の穿刺ゾーンは、密閉部材より低い靱性を有し得る。
【0032】
本開示はまた、飲料の調製のためのカプセルを生産する方法であって、
―前述のように本体部分を生産するステップと、
―飲料原料を本体部分の中に挿入するステップと、
―本体部分を蓋で密閉するステップと
を含む、方法に関する。
【0033】
本開示はさらに、前述のような方法によって取得可能なカプセルの本体部分に関する。
【0034】
別の側面では、本開示は、飲料調製機械とともに使用される場合の飲料の調製のためのカプセルであって、飲料原料を含むためのカプセルの内部を一緒に画定する、本体部分および蓋を備え、
本体部分は、使用時、飲料調製機械の1つ以上の穿刺具によって穿刺され、それによって、圧力下の水をカプセルの内部の中に給送するための1つ以上の入口開口を提供するように意図されている、1つ以上の穿刺ゾーンを備え、
本体部分は、ポリマー材料から形成され、
1つ以上の穿刺ゾーンのポリマー材料は、本体部分の形成後、1つ以上の穿刺ゾーンのポリマー材料の1つ以上の材料特性を本体部分の残りの部分のポリマー材料の材料特性に対して変化させるように処理された変質させられた構造を備えている、
カプセルを提供する。
【0035】
変質させられた構造は、劣化、炭化、発泡化、エージング、または脆化させられた構造のうちの1つ以上のものを備え得る。
【0036】
本体部分は、ポリマー材料から成形され得る。本体部分は、一体型成形体であり得る。本体部分は、単一材料から成形され得る。本体部分は、射出成形され得る。
【0037】
本体部分は、ポリオレフィンを含む材料から形成され得る。本体部分は、熱可塑性ポリオレフィンを含む材料から形成され得る。一実施例では、本体部分は、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含む材料から形成され得る。
【0038】
ポリマー材料は、放射エネルギーによる1つ以上の穿刺ゾーンの処理を促進するように意図されている添加剤を備え得る。添加剤は、カーボンブラック、黒鉛、およびドープ二酸化スズから成る群から選択される1つ以上の化合物であり得る。二酸化スズは、アンチモン、フッ素、塩素、タングステン、モリブデン、鉄、またはリンのうちの1つ以上のものでドープされ得る。
【0039】
本体部分は、カップ形状であり得る。本体部分は、入口壁を備え得、1つ以上の穿刺ゾーンは、入口壁上に位置する。
【0040】
1つ以上の穿刺ゾーンは、環状ゾーンを備え得る。環状ゾーンは、円周方向に連続的であり得る。代替として、環状ゾーンは、円周方向に断続的であり得る。ある実施例では、環状ゾーンは、円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備え得る。
【0041】
1つ以上の穿刺ゾーンは、2つ以上の同心円状に配列された環状ゾーンを備え得る。
【0042】
1つ以上の穿刺ゾーンは、円形ゾーンを備え得る。
【0043】
本体部分はさらに、飲料調製機械の封入部材との密閉係合を形成し、それによって、使用時の水のバイパス流を防止または制限するように構成されている密閉部材を備え得る。
【0044】
密閉部材は、処理されていない本体部分の残りの部分の一部を形成し得る。
【0045】
本体部分の1つ以上の穿刺ゾーンは、密閉部材より低い靱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本開示の実施形態が、ここで、付随の図面を参照して、単なる一例として説明される。
【
図1】
図1は、本開示による、カプセルの概略図である。
【
図2】
図2は、穿刺に先立って、飲料調製機械の中に挿入される、
図1のカプセルの概略図である。
【
図3】
図3は、カプセルの入口端の穿刺後の
図2に相当する図である。
【
図5】
図5は、
図1のカプセルのカップ形状の本体を処理するための第1の装置の略図である。
【
図6】
図6aおよび6bは、本開示の処理を受けないサンプルカプセル内の穿刺された入口孔を示す、写真である。
【
図7】
図7aおよび7bは、本開示の易壊化処理を受けたサンプルカプセル内の穿刺された入口孔を示す、写真である。
【
図8】
図8は、
図1のカプセルのカップ形状の本体を処理するための第2の装置の略図である。
【
図9】
図9は、
図1のカプセルのカップ形状の本体を処理するための第3の装置の略図である。
【
図10-1】
図10a―10fは、穿刺ゾーンの配列の実施例を図式的に示す。
【
図10-2】
図10a―10fは、穿刺ゾーンの配列の実施例を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の説明では、本開示の実施形態が、
図1に示されるようなカプセル1の代表的設計を参照して、単なる一例として説明される。しかしながら、本開示は、
図1に示される特定の設計のカプセルとの使用に限定されない。
【0048】
図1の例示的カプセルは、カップ形状の本体部分2と、蓋3とを備えている。
【0049】
カップ形状の本体部分2は、単一の一体型射出成形体として、ポリマー材料から形成される。カップ形状の本体部分2を形成するための好適な材料の実施例として、熱可塑性ポリオレフィンを含むポリオレフィンが挙げられる。一実施例では、カップ形状の本体部分2は、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンを含む材料から形成される。
【0050】
カップ形状の本体部分2は、カプセル1の入口端を形成する底壁5と、底壁5から延びる側壁4と、外向きに延びるフランジ6とを備えている。密閉要素7が、フランジ6上に提供され得る。図示される実施例では、密閉要素7は、フランジ6の表面から突出する一体型円周方向リブの形態をとる。
【0051】
アルミニウム箔、ポリマー積層、またはそれらの組み合わせ等の好適な材料から形成され得る蓋3は、カップ形状の本体部分2を閉鎖し、使用時、焙煎挽豆コーヒー等の飲料原料で充塞され得るカプセルの内部8を画定するように、フランジ6に接着または別様に密閉される。
【0052】
本開示によると、以下により詳細に説明される実施形態の各々に一般的であるように、カップ形状の本体部分2は、その形成後、処理ステップを受ける。処理は、カップ形状の本体部分2の残りの部分のポリマー材料と比較して、カップ形状の本体部分2の少なくとも一部の材料特性の改変をもたらす。より具体的には、カップ形状の本体部分2の1つ以上の穿刺ゾーン30が、そのように処理される。
【0053】
カップ形状の本体部分2の「1つ以上の穿刺ゾーン」30は、使用時、カプセル1が利用される飲料調製機械によって穿刺されることが意図される、カップ形状の本体部分2のそれらの1つ以上の面積を包含する。1つ以上の穿刺ゾーン30の場所は、飲料調製機械の入口穿刺配列の設計に応じて、変動し得る。例えば、入口穿刺配列のタイプの1つの略図は、
図2および3に示される。これらの図では、飲料調製機械の一部のみが、示され、これは、理解を容易にするために図式的に示される。示されるように、飲料調製機械の上側封入部材10は、3つの穿刺具13の形態における入口穿刺配列が延びる、ベース壁12を有するように提供される。加えて、上側封入部材10は、環状辺縁14で終了する円周方向側壁11を備えている。
【0054】
本図示される実施例では、3つの穿刺具13が、上側封入部材10の名目上の中心縦軸の周囲に円形配列で位置する。その結果、使用時、カプセル1の底壁5は、カプセル1の中心縦軸の周囲の円形配列内にある3つの点で穿刺されるであろう。その結果、本実施例のための1つ以上の穿刺ゾーン30は、
図4に示されるように、単一環状穿刺ゾーン30と見なされ得る。本実施例では、穿刺ゾーン30は、底壁5の一部のみを形成する。この環状穿刺ゾーン30は、その縦軸の周囲のカプセル1の回転の向きがどのようなものであれ、使用時、飲料調製機械の穿刺具13によって穿刺されるであろう3つの場所の各々を包含する。使用時、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料の全てが、穿刺具13によって穿刺される必要がないことに留意されたい。
【0055】
図10a−10fは、単なる一例として、使用され得る1つ以上の穿刺ゾーン30のための種々の配列を図式的に図示する。
【0056】
図10aの実施例では、
図4におけるように、1つ以上の穿刺ゾーン30は、単一の円周方向に連続した環状ゾーンを備えている。
【0057】
図10bの実施例では、1つ以上の穿刺ゾーン30は、好ましくは、カップ形状の本体部分2の縦軸を中心として互に同心円状に配列される、2つの円周方向に連続した環状ゾーンを備えている。
【0058】
図10cの実施例では、1つ以上の穿刺ゾーン30は、好ましくは、カップ形状の本体部分2の縦軸を中心として互に同心円状に配列される、互に対して同心円状に配列される、「破線」外観を有する、2つの円周方向に連続した環状ゾーンを備えている。
【0059】
図10dの実施例では、1つ以上の穿刺ゾーン30は、示されるように、単一環状円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備えている。本実施例では、繰り返されるユニットは、三角形として成形され、繰り返されるユニットは、円周方向パターンが円周方向に連続するように、直接、互に隣接する。
【0060】
図10eの実施例は、
図10dのものに類似するが、繰り返されるユニットは、反転ポイントを有する六角形形状に成形され、繰り返されるユニットは、円周方向パターンが円周方向に断続するように、互から間隔を置かれる。
【0061】
図10fの実施例では、1つ以上の穿刺ゾーン30は、再び、示されるように、円周方向パターン、好ましくは、繰り返しパターンを備えている。本実施例では、繰り返されるユニットは、サイズが減少する3つの円形面積群として成形される。各繰り返されるユニットは、互から間隔を置かれる。
【0062】
1つ以上の穿刺ゾーン30の種々の配列が、本開示の範囲から逸脱することなく、使用されることができることを理解されるであろう。
【0063】
カプセル1の底壁5は、典型的には、0.20〜0.50mmの範囲内、より典型的には、0.30〜0.40mmの範囲内の厚さを有し得る。一実施例では、厚さは、0.35〜0.38mmである。底壁5の厚さは、底壁5の範囲にわたり変動するか、代替として、均一であり得る。
【0064】
カプセル1は、上側封入部材10内に受け取られるようにサイズ決定され、構成される。
【0065】
使用時、カプセル1は、飲料調製機械の中に挿入され、上側封入部材10は、概して、
図2に示される位置から、環状辺縁14がカプセル1のフランジ6に対して密閉するように、上側封入部材10がカプセル1に対して移動された
図3に示されるような位置に移動される。(参照を容易にするために、蓋3を穿刺する飲料調製機械の下側封入部材およびその関連付けられた出口穿刺配列は、図から省略されている)。そうすることによって、密閉要素7は、そのように形成されたシールの完全性に寄与し得る。
図3から分かるように、上側封入部材10の移動は、穿刺具13をカプセル1の底壁5のポリマー材料に接触および穿刺させる。底壁5の穿刺は、内部8の中への水の進入を可能にし、カプセル1内に保持される飲料原料との相互作用から飲料を形成する。飲料は、次いで、飲料調製機械の出口穿刺配列によって蓋3内に形成される開口を介して出力される。
【0066】
処理ステップは、1つ以上の穿刺ゾーン30を放射エネルギーにさらすステップであり得る。この処理を達成するために、1つ以上の穿刺ゾーン30のポリマー材料は、放射エネルギー源にさらされ得る。放射エネルギー源は、1つ以上の穿刺ゾーン30が放射エネルギーにさらされるような様式において、放射エネルギーを放出する。
【0067】
放射エネルギー源の一部としてのマスク、またはそれとは別個のマスクが、カップ形状の本体部分2の材料のどの部分が放射エネルギーにさらされるかを制御するために提供され得る。例えば、マスクは、カップ形状の本体部分2と放射エネルギー源との間に挿入される、カップ形状の本体部分2と別個の要素であり得るか、または代替として、カップ形状の本体部分2のポリマー材料の表面に一時的または恒久的に適用される、好適な材料の層であり得る。利用されている放射エネルギーに不透過性である、マスクのための任意の好適な材料が、使用され得る。
【0068】
放射エネルギー源は、要求されるタイプの放射エネルギーを発生および放出可能な好適な源でありさえすれば任意のものであり得る。放射エネルギー源は、放射エネルギーの集束ビームを発生させるための機構を備え得る。代替として、または加えて、1つ以上の集束要素が、放射エネルギー源とカップ形状の本体部分2との間に挿入され、放射エネルギーを1つ以上の穿刺ゾーン30のポリマー材料上に集束させ得る。
【0069】
図5は、処理装置の第1の実施例を図示し、1つ以上の穿刺ゾーン30のポリマー材料が、UV源50からの紫外線(UV)放射51へのばく露を伴う処理を受ける。処理は、カップ形状の本体部分2の成形後に実施され、カップ形状の本体部分2の残りの部分のポリマー材料と比較して、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料を比較に脆くする。
【0070】
図示されるように、マスク40が、UV源50とカップ形状の本体部分2との間に挿入される。マスク40は、環状開口41の直下の環状ゾーン内において、UV放射51がカップ形状の本体部分2のポリマー材料に接触することを可能にするが、カップ形状の本体部分2のポリマー材料の残りの部分のばく露を防止する環状開口41を備えている。
【0071】
所望に応じて、添加剤が、ポリマー材料に添加され、脆化反応を加速させ得る。
【0072】
UV放射を使用して脆化されたカップ形状の本体部分2の比較研究が、行われる。カップ形状の本体部分2は、高密度ポリエチレンである、Rigidex(登録商標)ポリマーから射出成形された。カップ形状の本体部分2は、厚さ0.3mmの底壁5を有するように成形された。
【0073】
カップ形状の本体部分2の第1の試験群は、波長254nmにおいて紫外線放射を放出する、2つの9W紫外線ランプの形態における紫外線(UV)光源にさらされた。ばく露は、190時間継続された。カップ形状の本体部分2の第2の対照群は、UV光源にさらされず、190時間の同一期間の間、静置された。
【0074】
ばく露の完了時、穿刺試験が、15mm/分の速度において、Zwick 250kN試験機械を使用して、カップ形状の本体部分2の底壁5に実施された。
図6aおよび6bは、穿刺後の第2の対照群のカップ形状の本体部分2の底壁5の典型的外観を図示する。
図7aおよび7bは、UV放射エネルギー源にさらされた第1の試験群からのカップ形状の本体部分2に対する等価な図を示す。
【0075】
対照群および試験群に関して得られた破壊モードの比較は、ポリマー材料の破壊の性質上の明確な差異を示す。ばく露されなかったカップ形状の本体部分2の穿刺された領域は、靱性の指示とともに、より平滑な境界の破壊を示す。対照的に、UV放射にさらされたカップ形状の本体部分2は、不均一な境界破壊、および穿刺具の場所から半径方向外向きに広がる亀裂の証拠とともに、ひびで覆われた破壊領域を示す。
【0076】
図8および9は、1つ以上の穿刺ゾーン30のポリマー材料が、レーザ源50からの放射51へのばく露を伴う処理を受ける、処理装置の第2のおよび第3の実施例を図示する。処理は、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料の劣化、発泡化、および/または炭化させるために、カップ形状の本体部分2の成形後に実施される。これは、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料を脆弱化させ、より容易に穿刺可能にする。
【0077】
図8に図式的に図示される装置は、フォトマスキングレーザ処理の実施例を描写する。フォトマスキングレーザ処理では、レーザ源は、処理される面積を表すマスク40またはテンプレートに投影される。図示される実施例では、マスク40は、環状処理面積を画定する。フィルタ処理されたレーザビームが、次いで、高エネルギーを伴うレーザビームをカップ形状の本体部分2上に集中させる、光学レンズ配列を通して通過する。
【0078】
典型的には、フォトマスキングレーザ処理のために、レーザは、波長10600nmを伴う、CO
2レーザである。レーザのパルス周波数は、典型的には、100Hzより高く、レーザパワーは、典型的には、範囲10〜200Wの範囲内である。処理される面積全体が、同時にばく露されるため、処理は、非常に迅速である。
【0079】
図9に図式的に図示される装置は、ビーム操向レーザ処理の実施例を描写する。ビーム操向レーザ処理では、レーザビーム51は、2つの検流計動作式ミラーを使用して、要求される処理面積をトレースするように操向される。したがって、マスクの使用は、不可欠ではない(但し、挿入されるマスクは、所望に応じて、同様に使用されることができる)。
【0080】
典型的には、ビーム操向レーザ処理のために、レーザは、波長1064nm(赤外線光)を伴うNd:YAG(ネオジムドープされたイットリウムアルミニウムガーネット)レーザまたは波長532nm(緑色光)を伴う二重Nd:YAGレーザである。レーザパワーは、典型的には、Nd:YAGレーザに対して2.5〜10W、二重Nd:YAGレーザに対して1〜3Wの範囲内である。ポリマー材料内に熱発生を有益に産生するために、1〜50kHzの範囲内の高パルスレート周波数を使用することが典型的である。
【0081】
前述のように、レーザ処理の両方法では、目標は、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料の劣化、発泡化、および/または炭化をもたらすことである。劣化は、事例において、ポリマー材料の局所加熱に起因する、ポリマー材料の材料特性(強度、靱性、弾性等)のうちの1つ以上のものの劣化である。発泡化は、化合物の燃焼または蒸発に起因する、ポリマー内のガスの発生である。産生された高温ガスは、ポリマーマトリクス内にあり、したがって、拡張泡を産生する。炭化または乾留(charring)は、ポリマー材料の劣化がポリマー材料の局所燃焼を生じさせるために十分である場合に生じる。
【0082】
レーザ処理によってもたらされる効果は、1つ以上の穿刺ゾーン30の材料の厚さ全体を通して生成され得るか、または材料の表面領域にのみ影響を及ぼすために使用され得る。
【0083】
異なるポリマー材料は、レーザ処理に対して異なる応答を有する。同一ポリマーでも、異なるグレードおよび異なる色のポリマーは、レーザ放射に異なって応答し得る。その結果、1つ以上の添加剤が、ポリマー材料に添加され、レーザ処理の好適性を改善することができる。例えば、カーボンブラック、黒鉛、およびドープ二酸化スズ等の添加剤が、添加され得る。一実施例は、アンチモンドープスズ酸化物顔料を含む、BASF Corporation製Mark−it
TMレーザマーキング顔料である。典型的には、ポリマー中の添加剤は、レーザ放射を容易に吸収し、熱を発生させ、次いで、周囲ポリマーマトリクスに影響を及ぼす、要素として作用する。したがって、そうでなければレーザ源の波長における放射に対して「透過性」であり得る、ポリマーでさえ、処理されることができる。
【0084】
本説明では、本開示は、添付図に示されるカプセル1の設計を参照して、単なる一例として説明された。いくつかの代替も、添付の請求項に記載される本開示の範囲内であることが理解されるであろう。
【0085】
例えば、カプセルの本体部分2は、カップ形状以外であり得る。
【0086】
例えば、カップ形状の本体部分2は、フランジ6の表面から突出する円周方向リブの形態で密閉要素7を備え得るように説明された。しかしながら、他の形態の密閉要素もまた、フランジ6または底壁5もしくは側壁4等のカップ形状の本体部分2の他の部分のいずれか上に提供され得る。例えば、密閉要素7は、複数のリッジ、ステップ形成、傾斜表面、または飲料調製機械の上側封入部材との必要密閉界面を達成する、類似幾何学的形態の形態をとり得る。
【0087】
例えば、説明は、カップ形状の本体部分2が単一の一体型成形体から形成されるように説明したが、カップ形状の本体部分2は、2つ以上の部片から形成され得、射出成形以外の方法によって形成され得る。加えて、カップ形状の本体部分2は、2つ以上の異なる材料から形成され得る。例えば、2つの異なるポリマー材料の共成形体として形成され得る。
【0088】
例えば、添付図では、カプセルは、概略形態で示され、特に、カップ形状の本体部分2は、単に、底壁5、側壁4、および外向きに延びるフランジ6を示す、簡略化された様式で示された。しかしながら、他の特徴が、当技術分野において周知のように、カップ形状の本体部分2の一部として存在し得る。例えば、1つ以上の補強構造、例えば、カップ形状の本体部分2の構造を強化するためのリッジまたはリブが、提供され得る。カプセル1はまた、底壁5の入口端および/または蓋3の出口端もしくはその近傍に、内部フィルタを具備し得る。
【0089】
例えば、前述の説明では、飲料調製機械は、カプセル1の縦軸の周囲の環状または円形経路に沿って底壁5を穿刺する、3つの穿刺具13を具備する。読者は、広範囲の他の穿刺配列も検討され得ることを理解するであろう。その結果、1つ以上の穿刺ゾーン30の等しく広範囲の形状、サイズ、および場所も、検討され得る。例えば、1つ以上の穿刺ゾーン30は、環状面積とは対照的に、1つ以上の円形面積を備え得る。1つ以上の穿刺ゾーン30は、底壁5の全体を被覆するように延在し得る。1つ以上の穿刺ゾーン30は、特に、カプセル1の形状または設計が、飲料調製機械の上側封入部材内におけるその回転を妨害する場合、カプセル1の縦軸を中心として回転対称でないこともある。
【0090】
例えば、前述の説明では、カプセル1は、使用時、飲料調製機械の下側封入部材によって引き裂かれ、また穿刺される、蓋3を有するように説明された。しかしながら、カプセル1は、他の形態をとってもよく、例えば、カプセルの出口は、使用時、飲料調製機械の下側封入部材によって穿刺され、または引き裂かれるように意図されない、事前に穿刺された、すなわち、多孔性シートまたは壁として形成される。
【国際調査報告】