特表2017-503771(P2017-503771A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-503771トリプルネガティブ乳癌を治療するためのベリパリブとカルボプラチンの組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-503771(P2017-503771A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】トリプルネガティブ乳癌を治療するためのベリパリブとカルボプラチンの組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20170113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170113BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20170113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170113BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20170113BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20170113BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20170113BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   A61K31/4184
   A61P35/00
   A61P15/14
   A61P43/00 121
   A61K31/337
   A61K31/282
   A61K31/704
   A61K31/675
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-537960(P2016-537960)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2014069501
(87)【国際公開番号】WO2015089159
(87)【国際公開日】20150618
(31)【優先権主張番号】61/914,216
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,ギャリー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC02
4C086BC39
4C086DA35
4C086EA10
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
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4C206GA07
4C206JB16
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4C206ZB26
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(57)【要約】
本発明は、被験者に対して標準治療と一緒に有効量の2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドまたはその医薬的に許容され得る塩及び有効量のカルボプラチンを投与することを含む前記被験者におけるトリプルネガティブ乳癌の治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対して
(a)50mgの2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドを1日2回、連続して12週間;
(b)80mg/mのパクリタキセルを12回の7日間サイクルの1日目に;
(c)AUC 6mg/mL/分のカルボプラチンを4回の21日間サイクルの1日目に;
投与することを含む前記患者におけるERネガティブ、PRネガティブ及びHER−2ネガティブ乳癌の治療方法。
【請求項2】
前記被験者に対して
(a)60mg/mのドキソルビシンを4回の14日間サイクルの1日目に;及び
(b)600mg/mのシクロホスファミドを4回の14日間サイクルの1日目に;
投与することを含む第2化学療法セグメントを続ける請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者に対して
(a)60mg/mのドキソルビシンを4回の21日間サイクルの1日目に;及び
(b)600mg/mのシクロホスファミドを4回の21日間サイクルの1日目に;
投与することを含む第2化学療法セグメントを続ける請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験者は早期乳癌にかかっている請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記被験者は手術の候補者である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記被験者は最後の化学療法から約4〜8週間後に手術を受ける請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被験者は乳房切除術を受ける請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験者は乳房温存術を受ける請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ERネガティブ、PRネガティブ及びHER−2ネガティブ乳癌はBRCA1突然変異を有している請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ERネガティブ、PRネガティブ及びHER−2ネガティブ乳癌はBRCA2突然変異を有している請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプルネガティブ乳癌にかかっている被験者の治療におけるベリパリブ及びカルボプラチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
浸潤性乳癌は、隣接組織の浸潤及び著しい遠隔部位への転移傾向により特徴づけられる悪性上皮性腫瘍の群である。乳癌は、広範囲の形態学的表現型及び特定の予後及び臨床特徴を有する具体的病理学的タイプを示す。例えば、サブタイプはそのエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びヒト上皮成長因子受容体(HER2)ステータスに従って層化される。多くの患者に対して受容体標的の1つに対する標的治療が利用されている。しかしながら、哺乳動物腫瘍の10〜20%はホルモン受容体(ER/PR)を欠いており、Her2/neuタンバク質を過剰発現せず、臨床的にトリプルネガティブ乳癌と規定されている。
【0003】
トリプルネガティブ乳癌はER/PR+腫瘍またはHer2+腫瘍よりもより侵襲性であり、この病気に対して利用できる標的治療はない。アントラサイクリン、タキサン及びアルキル化剤の使用が推奨されている。しかしながら、早期乳癌(EBC)のために化学療法及び手術の治療を受けた多数の患者はその病気を治していない。TNBCにかかっている患者の約30〜40%が術前補助療法及び手術の治療から3〜10年以内に病気を再発するであろう。病気を再発した多くの患者は乳癌で死亡するであろう。従って、治療の進化の同定が重要である。
【0004】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)はDNA損傷を認識し、DNA修復を促進する核酵素である。塩基除去修復経路により一本鎖DNA切断を修復させるためにPARP活性が必要である。癌細胞はしばしば二本鎖DNA修復能力を欠いており、従って正常細胞よりもPARP指向性一本鎖DNA修復により依存している。従って、多くの癌細胞においてPARPの阻害はDNA傷害剤の抗腫瘍作用を強化する。
【0005】
多くの早期乳癌は集学的治療(手術±放射線療法+化学療法)で治療されている。複数の大規模ランダム化トライアルは、手術及び化学療法の順序に関係なく同一のアウトカムが得られ得ることを立証している。よって、術前補助(化学療法後手術)及び補助(手術後化学療法)治療レジメンは均等であると見なされる。術前補助療法の1つの利点は、すべてのわかっている腫瘍を化学療法前に外科的に除去する補助療法とは異なり、化学療法に対する腫瘍反応を調べることができることである。術前補助化学療法に対する腫瘍反応は重要な予後情報を与える。完全な病理学的腫瘍反応(手術標本中に生存癌細胞が確認され得ない)を達成する患者の予後はそうでない患者よりも有意に良好である。
【0006】
PARP阻害剤ベリパリブの2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドは早期トリプルネガティブ乳癌に対する現在の標準治療の有効性を向上させるためにDNA傷害剤カルボプラチンと一緒に相乗的に作用することが知見された。標準治療に対してベリパリブ及びカルボプラチンを加えると、術前補助療法においてpCR状態を達成する女性の数が増加する。これは、追加の治療を受けると5年目に病気にかかっていない女性に変わると推定される。このことから、あまり広範囲でない手術(より少ない乳房切除術、より多くの乳房保存術)に対して適確になる患者の数が増えるとも予想される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、被験者に対して50mgの2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドを1日2回、連続して12週間;80mg/mのパクリタキセルを12回の7日間サイクルの1日目に;及びAUC 6mg/mL/分のカルボプラチンを4回の21日間サイクルの1日目に投与すること含む前記被験者におけるERネガティブ、PRネガティブ及びHER−2ネガティブ乳癌の治療方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
【0009】
用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」及び「治療(treatment)」は疾患及び/またはその随伴症状を緩和するかまたは無くす方法を指す。
【0010】
「医薬的に許容され得る」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0011】
本明細書中、「被験者」は哺乳動物のような動物を含むと定義され、哺乳動物には霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、家兔、ラット、マウス等が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、被験者はヒトである。
【0012】
2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドに関する「有効量」または「医薬有効量」は、被験者において所望の生物学的、薬理的または治療アウトカムを誘発させるのに十分な量を指す。
【0013】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びHER2/neu過剰発現の不在により規定される。
【0014】
病理学的完全奏功(pCR)は、術前補助全身療法の終了後の切除乳房標本及び切除リンパ節組織のへマトキシリン及びエオシン評価で残存浸潤癌が存在しないことである。
【0015】
乳房温存率(BCR)は、診断時に乳房切除術が計画されていた被験者の中で術前補助治療後乳房温存に適格する割合である。
【0016】
無再発生存率(EFS)は、ランダム割り当てから以下の事象の最初の記録までの時間と定義される。治癒の可能性のある手術に至らない;根治手術後の乳癌の局所限局性または遠隔性再発;新しい乳癌;別の新しく発生した悪性腫瘍、または任意の原因の結果としての死亡。
【0017】
全生存率(OS)は、被験者をランダム化した日から被験者の死亡日までの日数と定義される。
【0018】
臨床的奏功率(CRR)は、画像診断により調べて完全または部分奏功を得た被験者の比率と定義される。例えば、CR及びPRは、治療期間(例えば、12週間)後MRIにより評価され、腫瘍サイズの縮小率に従って分類され得る。
【0019】
残存腫瘍量は、残存腫瘍の組織病理学的要素(リンパ節転移の細胞性、全径、数及び程度)を組み合わせることにより残存腫瘍を調べるための4つのクラスの数値順索引である。RCB=0の被験者はpCRに分類される。
【0020】
早期乳癌は乳房または腋窩リンパ節を超えて広がっていない癌である。
【0021】
原発腫瘍カテゴリー
【0022】
T1:腫瘍の幅が2cm(3/4インチ)以下である。
【0023】
T2:腫瘍の幅が2cmより大きく、5cm(2インチ)以下である。
【0024】
T3:腫瘍の幅が5cmより大きい。
【0025】
T4:胸壁または皮膚まで大きくなったサイズの腫瘍。
【0026】
隣接リンパ節
【0027】
N0:癌は隣接リンパ節まで広がっていない。
【0028】
N1:癌が1〜3個の腋窩(脇の下)リンパ節まで広がっており、及び/またはセンチネルリンパ節生検でごく少量の癌が内乳房リンパ節(胸骨の近くのリンパ節)にみられる。
【0029】
N2:癌が腋の下の4〜9個のリンパ節まで広がっているか、または癌が内乳房リンパ節に肥大化している(両方ではない)。
【0030】
本発明は、被験者に対して標準治療に加えて有効量のベリパリブまたはその医薬的に許容され得る塩を有効量のカルボプラチンと一緒に投与することを含む前記被験者におけるトリプルネガティブ乳癌の治療方法を提供する。
【0031】
現在のガイドラインに従えば、標準化学療法はアントラサイクリン及びタキサンを含んでいなければならない。推奨されている複数の組合せ及びスケジュールは同時または逐次アントラサイクリン及びタキサンを含む。現在使用されているレジメンでは、ドキソルビシン及びシクロホスファミドの後にパクリタキセルを与え、或いは同一の組合せを逆の順序で与える。
【0032】
本発明では、被験者はERネガティブ、PRネガティブ及びHER−2ネガティブ(トリプルネガティブ)乳癌にかかっている。トリプルネガティブ腫瘍は以下のように定義される:
【0033】
ER−及びPRネガティブ:免疫組織化学による腫瘍染色が1%以下。
【0034】
HER−2ネガティブ:ASCO−CAPガイドライン推奨によれば、IHC 0−1+OR HER2−neuネガティブとして規定される。
【0035】
別の実施形態では、被験者はBRCA1及び/またはBRCA2突然変異の診断を受けている。突然変異は有害突然変異であり得る。突然変異は生殖細胞突然変異または体細胞突然変異であり得る。
【0036】
1つの実施形態では、被験者は早期乳癌にかかっている。1つの実施形態では、被験者は臨床段階T2−4 N0−2またはT1 N1−2浸潤性乳癌にかかっている。被験者は複数(例えば、最高2つ)の病変を有し得る。別の実施形態では、被験者は治癒の可能性のある手術の候補者である。
【0037】
1つの実施形態では、被験者は乳房切除術または乳房保存手術のいずれかの根治的乳房手術を受ける。本発明の化学療法は補助療法(手術後化学療法)または術前補助療法(化学療法後手術)であり得る。術前補助療法の場合、乳房手術は被験者が最後の投与を受けてから約4〜8週間後に実施される。
【0038】
2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドはポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤であり、既にWO 2006−110816に記載されている。ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼはDNA修復の促進、RNA転写のコントロール、細胞死の媒介及び免疫応答の調節において必須の役割を有している。これらの作用により、PARP阻害剤は広範囲の障害を標的とする(Virag L.ら,Pharmacol.Rev.,2002 54(3):375−429)。各種の前臨床癌モデル及びヒト臨床トライアルにおいて、PARP阻害剤が癌細胞のアポトーシスを増加させ、腫瘍増殖を制限し、転移を減らし、担癌被験者の生存を延長させることにより放射線及び化学療法の有効性を高めることが判明している(WO 2007−084532;Donawho C.K.ら,Clin Cancer Res,2007 13(9):2728−37;Kummar S.ら,J Clin Oncol,2009 27(16):2705−11)。
【0039】
本発明は、一部、2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドのすべての塩及びその使用方法にも関する。化合物の塩は、1つ以上の塩の特性、例えば異なる温度及び湿度での高い医薬安定性、または水または他の溶媒中の所望の溶解度のために有利であり得る。塩を患者に対して投与しようとする場合(例えば、インビトロ状況での使用と対照的に)、塩は好ましくは医薬的に許容され得、及び/または生理学的に適合し得る。用語「医薬的に許容され得る」は、被修飾名詞が医薬品として、または医薬品の一部として使用するのに適していることを意味すべく本明細書中で形容詞的に使用されている。医薬的に許容され得る塩には、アルカリ金属塩を形成するために、また遊離酸または遊離塩基の付加塩を形成するために通常使用されている塩が含まれる。一般的に、これらの塩は典型的には例えば適切な酸または塩基を本発明の化合物と反応させることにより慣用手段により製造され得る。
【0040】
2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドの医薬的に許容され得る酸付加塩は無機または有機酸から製造され得る。しばしば適切な無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が含まれる。適切な有機酸には、通常例えば有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、ヘテロ環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスが含まれる。しばしば適切な有機酸の具体例には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ジグルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸、メシル酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩、エンボン酸塩(パモ酸塩)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パントテン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、アルギン酸、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、硫酸水素酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が含まれる。
【0041】
2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドの医薬的に許容され得る塩基付加塩には、例えば金属塩及び有機塩が含まれる。好ましい金属塩には、アルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩、及び他の生理学的に許容され得る金属塩が含まれる。そのような塩はアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から作成され得る。好ましい有機塩はアミン、例えばトロメタミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから作成され得る。塩基性窒素含有基は低級アルキル(C−C)ハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド)、ジアルキルスルフェート(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミルスルフェート)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージド)、アリールアルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロミド)等のような物質で4級化され得る。
【0042】
本発明は、部分的に、2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドのすべての組成物及びその使用方法に関する。2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドは賦形剤と一緒に、または賦形剤なしで投与され得る。賦形剤には、カプセル化剤及び添加剤、例えば吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、エクステンダー、増量剤、着香料、保湿剤、滑沢剤、芳香剤、保存剤、噴射剤、離型剤、滅菌剤、甘味剤、可溶化剤、湿潤剤、その混合物等が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
経口投与しようとする2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドを含む組成物を製造するための賦形剤には、寒天、アルギン酸、水酸化アルミニウム、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、1,3−ブチレングリコール、カルボマー、ヒマシ油、セルロース、酢酸セルロース、コロイドシリカ、カカオ脂、コーンスターチ、コーン油、綿実油、クロスポビドン、ジグリセリド、エタノール、エチルセルロース、ラウリン酸エチル、オレイン酸エチル、脂肪酸エステル、ゼラチン、胚芽油、グルコース、グリセロール、落花生油、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソプロパノール、等張食塩水、ラクトース、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、麦芽、マンニトール、結晶セルロース、モノグリセリド、オリーブ油、ピーナッツオイル、リン酸カリウム塩、ジャガイモデンプン、ポビドン、プロピレングリコール、リンガー液、サフラワー油、ゴマ油、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、リン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムソルビトール、大豆油、ステアリン酸、フマル酸ステアリル、スクロース、界面活性剤、タルク、二酸化チタン、トラガカント、テトラヒドロフルフリルアルコール、トリグリセリド、水、その混合物等が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、ベリパリブ、或いはその医薬的に許容され得る塩またはその溶媒和物の用量は50mgを1日2回、連続して12週間(第1セグメント)である。
【0045】
第1セグメントの間、カルボプラチンもAUC 6mg/mL/分の用量で4回の21日間サイクルの1日目に静脈内投与する。
【0046】
第1セグメントの間、パクリタキセルも80mg/mの用量で12回の週1回サイクルの1日目に静脈内投与する。
【0047】
本発明の別の実施形態では、第1セグメントの後に第2化学療法セグメントが続く。第2セグメントでは、60mg/mのドキソルビシンを4回の14日間サイクルの1日目に静脈内投与し、600mg/mのシクロホスファミドを4回の14日間サイクルの1日目に静脈内投与する。或いは、60mg/mのドキソルビシンを4回の21日間サイクルの1日目に静脈内投与し、600mg/mのシクロホスファミドを4回の21日間サイクルの1日目に静脈内投与する。
【0048】
ベリパリブの投与を第1セグメントの間の任意の時間に毒性のために遅らし、出発用量で再開してもよい。
【0049】
また、カルボプラチンの投与及び/またはパクリタキセルの投与を独立して第1セグメントの間の任意の時間に毒性のために遅らし、出発用量で再開してもよい。カルボプラチン及びパクリタキセルの両方を遅らした場合、2−[(2R)−2−メチルピロリジン−2−イル]−1H−ベンゾイミダゾール−4−カルボキサミドも遅らす。遅らす場合、第1セグメントの期間は12週間、13週間、14週間、15週間、または16週間であり得る。第1セグメントの期間は16週間を超え得ない。第1セグメントが16週間まで延長するならば、第1セグメントを中止し、第2セグメントを開始する。
【0050】
或いは、ベリパリブ、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン及び/またはシクロホスファミドの用量を減量させてもよい。用量レベルの低下を表1に示す。一旦用量レベルを低下させたならば、用量レベルを再び段階的に増加させない。
【0051】
【表1】
【0052】
オラパリブ、BMN 673、ルカパリブ、イニパリブ、INO−1001、E7016、CEP−9722、AZD2461、MK−4827及びJP−289を含めた他のPARP阻害剤が当業界で公知である。
【0053】
これらの他のPARP阻害剤を第1セグメントにおいて標準治療に加えて白金と組み合わせることもできる。
【0054】
第1セグメントにおけるPARP阻害剤の適切な用量は5mg/日〜250mg/日である。或いは、第1セグメントにおけるPARP阻害剤の適切な用量は10mg/日〜150mg/日である。或いは、第1セグメントにおけるPARP阻害剤の適切な用量は25mg/日〜100mg/日である。適切な用量には、5mg/日、10mg/日、15mg/日、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日、50mg/日、55mg/日、60mg/日、65mg/日、70mg/日、75mg/日、80mg/日、85mg/日、90mg/日、95mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、130mg/日、140mg/日、150mg/日、160mg/日、170mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、220mg/日、230mg/日、240mg/日、または250mg/日が含まれる。
【0055】
本発明の第1セグメント及び第2セグメントの術前補助療法の場合、被験者は病理学的完全奏功(pCR)を得ることができる。pCRは、術前補助療法の終了後の切除乳房標本及び切除リンパ節組織のへマトキシリン及びエオシン評価で残存浸潤癌が存在してないことと定義される。
【0056】
本発明の第1セグメント及び第2セグメントの術前補助療法の場合にも、たとえ乳房切除術が診断時に計画されていたとしても被験者は乳房温存の適格者であり得る。
【0057】
本明細書中で引用されている刊行物、特許出願明細書及び特許明細書を含めたすべての参考文献は、各参考文献が個別に、具体的に参照により組み入れると示されているのと同程度に参照により本明細書に組み入れられ、本明細書に全体として記載した。
【0058】
本発明を説明している文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)中の用語“a”、“an”、“the”及び類似の指示物は、本明細書中に別段の指示がない限り、また文脈により明確に否定されていない限り、単数及び複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載がない限り制約のない用語(すなわち、「を含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。値の範囲の記述は、本明細書中に別段の指示がない限りこの範囲に入る各々の別々の値を個別に言及する簡略表記方法として役立つと単に意図され、本明細書中に個別に記述されているように各々の別々の値は明細書中に含まれる。本明細書中に記載されている方法はすべて、本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈により明確に否定されていない限り、適切な順序で実施され得る。本明細書中に挙げられているいずれか及びすべての例、または例示的言語(例:「例えば」)の使用は本発明をよりうまく解明するようにだけ意図されており、別段の特許請求がない限り本発明の範囲に限定を加えない。明細書中の言語は、本発明の実施に必須として特許請求されていないエレメントを示すと解釈されるべきである。
【0059】
本発明を実施するために本発明者らに公知の最良モードを含めた本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態の改変は先の記述を読むと当業者に自明となり得る。本発明者らは当業者が前記改変を適切として使用することを期待しており、本発明者らは本発明を本明細書中に具体的に記載されているのとは他の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、施行されている法律により許可される添付の特許請求の範囲に記載されている主題のすべての改変物及び均等物を包含する。更に、別段の指示がない限り、または文脈により明確に否定されていない限り、すべての考えられる改変における上記したエレメントの組合せが本発明に包含される。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
【0061】
本実施例は、早期トリプルネガティブ乳癌にかかっている被験者において標準化学療法と同時に投与されたベリパリブ及びカルボプラチンの安全性及び有効性を評価するフェーズ2介入ランダム化オープンラベル研究である。
【0062】
選択基準:
【0063】
女性。
【0064】
組織学的に確認された浸潤性乳癌にかかっている患者。
【0065】
診断生検後、乳房中に最長直径が25mm(2.5cm)以上と規定されている臨床的または放射線的に測定可能な疾患。
【0066】
この悪性腫瘍に対して細胞毒性レジメンの前治療はない。患者にはこの悪性腫瘍のために同側の乳房に対して化学療法または放射線療法の前治療はない。ビスホスホネートの前治療あり。
【0067】
年齢 ≧18才。
【0068】
ECOG全身状態 0〜1。
【0069】
基準バイオマーカーを評価するために原発性乳房病変のコア生検を受ける意志がある。
【0070】
妊娠も授乳もしていない。
【0071】
強磁性プロステーシスなし。MRI装置に適合しない金属性手術インプラントを有している患者は適格でない。
【0072】
書面によるインフォームド・コンセントを理解でき、サインする意向がある。
【0073】
適確な腫瘍は以下の基準の1つを満たしていなければならない:ステージIIまたはIII、或いは臨床性または病理性炎症性癌を含めたT4、N、M0、または鎖骨上リンパ節が唯一の転移部位である限局性ステージIV。
【0074】
地域病院病理部門が調べて腫瘍ER/PgRステータス、HER−2/neuステータス、プロトコルセクション4.1.2Fに記載されている腫瘍アッセイプロフィールを満たす。
【0075】
正常な臓器及び骨髄機能:白血球 ≧3000/μL;好中球絶対数 ≧1500/μL;血小板 ≧100,000/μL;患者はビリルビンが≦2.0×ULNでなければならないジルベール病にかかっていない限り、正常施設限界内の総ビリルビン;AST(SGOT)/ALT(SGPT) ≦1.5×施設ULN;クレアチニン <1.5×施設ULN。
【0076】
コントロールされないまたは重篤な心疾患がない。(核イメージングまたは心エコー検査による)基準駆出分画は≧50%でなければならない。
【0077】
PA及び側面CXR、放射性核種骨スキャン、及び総ビリルビン、ALT、AST及びアルカリホスファターゼを含めたLFTにより遠隔転移の臨床的またはイメージング証拠がない。
【0078】
腫瘍アッセイプロフィールは以下の1つを含んでいなければならない:使用した3の方法(IHC、FISH、ターゲットプリント(TM))の1つにより、マンマプリント高、ERステータス、HER2ステータス;またはマンマプリント低、ERネガティブ(<5%)、HER2ステータス;またはマンマプリント低、ERポジティブ、HER2/neuポジティブ。
【0079】
除外基準:
【0080】
研究治療の開始から30日以内に他の治療薬の使用。
【0081】
研究薬物またはそれに伴う支援薬物に類似の化学的または生物学的組成の化合物に起因するアレルギー反応の病歴。
【0082】
非限定的に挙げられる継続的または活動性感染、症候性鬱血性心不全、不安定狭心症、不整脈、または研究要件の順守を制限する精神疾患/社会情勢を含めたコントロールされない併発疾患。
【0083】
投与:
【0084】
患者は、標準化学療法と一緒にランダム化後の12回の週1回治療サイクル中に50mgの を1日2回po投与され、ランダム化後の12回の週1回治療サイクル中にAUC6のカルボプラチンを4週間の間3週間毎にIV投与されるか、または単独で標準化学療法を受けた。標準化学療法は、パクリタキセル:ランダム化後の12回の週1回治療サイクル中に80mg/mのIV投与;ドキソルビシン:12回の週1回治療サイクルの終了後、手術前の13〜16週の間に60mg/mのIV投与;シクロホスファミド:12回の週1回治療サイクルの終了後、手術前の13〜16週の間に600mg/mのIV投与である。
【0085】
有効性:
【0086】
主要アウトカム項目
【0087】
標準術前補助薬物療法にベリパリブ及びカルボプラチンを加えると、トリプルネガティブ乳癌に対する標準術前補助化学療法に比して病理学的完全奏功(pCR)の確率が高まるかどうかを調べる。
【0088】
副次アウトカム項目
【0089】
pCR及び残存腫瘍量(RCB)を予測するために資格及び探索マーカーに基づいて予測及び予後インデックスを確立する。
【0090】
治療アームの中で3年及び5年無再発生存期間(RFS)及びOSを調べる[時間枠:3年及び5年術後フォローアップ]。
【0091】
試験した各治験薬の副作用(AE)、重篤有害事象(SAE)及び検査所見の異常の頻度を調べる[時間枠:ランダム化後、AC前、手術前、手術後からフォローアップ中1年まで]。
【0092】
22人の被験者が標準化学療法を受けた後手術を受け(対照)、39人の患者が標準化学療法に加えてベリパリブ及びカルボプラチンを受けた後手術を受けた。
【0093】
【表2】
【国際調査報告】