(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
個人的な意義を有する物質、例えば生物学的物質、砂、土壌、金属、水、海水、聖水、合成もしくは生物学的ポリマー、火葬灰、セラミックス、動物もしくは植物組織または別の生理的適合成分を個体へ運搬するための組成物を本明細書に記載する。この物質は不活性非生分解性疎水性ポリマー物質内に封入される。個別化物質が封入された微粒子の製造方法および使用方法も提供する。個別化物質はポリマー非生分解性微粒子内に封入されうる。封入個別化物質は個体の皮膚への運搬のための担体と組合されうる。幾つかの実施形態においては、個別化物質を刺青インクに加え、個体の皮膚上に入れられる刺青に取り込ませる。皮膚内への注射の後、封入物質は微粒子内に残留し、経時的に放出されない。
非生分解性ポリマー微粒子内に封入された個別化物質を含む組成物であって、該微粒子が生体適合性疎水性非生分解性ポリマーを含み、該微粒子が個別化物質を放出しない、組成物。
個別化物質がDNAであり、DNAが、短いタンデム反復(STR)、一塩基多型(SNP)、エピジェネティックマーカーおよびメチル化DNAパターンからなる群から選択される個体識別特性を含む、請求項1記載の組成物。
ポリマーが、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリラート、ポリメタクリラートならびにそれらのコポリマーおよびブレンドからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
工程(b)が、溶媒蒸発マイクロカプセル化、溶媒蒸発によるミクロスフェアの2層形成、ホットメルトカプセル化、相分離カプセル化、自然エマルション、溶媒除去マイクロカプセル化およびコアセルベーションからなる群から選択される方法により該微粒子を形成させることを含む、請求項14記載の製造方法。
乾燥微粒子を含む該組成物の単一バッチを形成させ、この場合、乾燥微粒子のバッチの質量が約1g〜3gの範囲、好ましくは約2gである、請求項14〜23のいずれか1項記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中で用いる「個別化物質(パーソナライズ化物質)」なる語は個体にとって有意義な物質を意味する。個別化物質は天然物または合成物であることが可能であり、この場合、該物質の少なくとも一部はポリマー微粒子内に封入されうる。個別化物質なる語は、封入の前および後の両方の物質を意味するものとして本明細書中で用いられる。
【0025】
「添加物」および「添加組成物」なる語は、刺青の前または途中に、担体を伴って又は伴うことなく既存の刺青または刺青インクに加えられる組成物を意味するものとして本明細書中で互換的に用いられる。
【0026】
本明細書中で用いる「非生分解性」および「非分解性」なる語は皮膚における生理的条件下での不活性または非反応性を意味する。本明細書に記載されている非生分解性ポリマーおよび生じるポリマー微粒子は、例えば皮膚内への注射による個体の皮膚への適用の後、典型的には少なくとも5年間、少なくとも10年間、少なくとも15年間、少なくとも20年間またはより一層長い期間にわたって、生物学的組織、特に皮膚の生理的環境下の物理的溶解および/または化学的分解過程に耐えうる。
【0027】
本明細書中で用いる「疎水性ポリマー」なる語は、(生理的温度、例えば37℃において)水に対する低いアフィニティを有し、ポリ乳酸(PLA)より低い水溶性を有するポリマーを意味する。
【0028】
本明細書中で用いる「高分子量」は、10,000ダルトン(Da)を超える、好ましくは20,000 Daを超える分子量を意味する。
【0029】
本明細書中で用いる「担体」または「添加担体」なる語は、封入形態の個別化物質を溶解または貯蔵するための組成物を意味する。担体は、典型的には、ヒトの皮膚への注射に適している。
【0030】
本明細書中で用いる「封入物質」なる語は個別化物質の分子成分を意味する。例えば、個別化物質が砂である場合、封入物質には、シリカ(SiO
2)、ケイ酸カルシウム(Ca
2SiO
4)、窒化カルシウム(CaN
2)および/または窒化ケイ素(Si
3N
4)などが含まれる。
【0031】
本明細書中で用いる「生物学的物質」なる語は、生物学的微小分子、例えばヌクレオチド、アミノ酸、補因子またはホルモン、生物学的巨大分子、例えば核酸、ポリペプチド、タンパク質(例えば、酵素、受容体、分泌性タンパク質、構造およびシグナリングタンパク質、ホルモン、リガンドなど)、多糖および/またはそれらのいずれかの組合せ(これらに限定されるものではない)を含む任意の生物学的物質を意味する。
【0032】
本明細書中で用いる「生理的に許容される成分」なる語は、レシピエント、典型的にはヒトの生理に許容される、組成物中の任意の成分を意味する。
【0033】
本明細書中で用いる「レシピエント」なる語は封入個別化物質のレシピエント(受容者)を意味する。レシピエントは、封入個別化物質を受容しうる任意の対象、ヒト、動物または植物でありうる。
【0034】
本明細書中で用いる「ナノ粒子」は、ナノメートル(nm)範囲、典型的には直径約1〜約1000nmの粒子または構造を意味する。
【0035】
本明細書中で用いる「微粒子」は比較的小さいサイズの粒子であるが、必ずしもミクロンサイズの範囲のものでなくてもよい。この語は、例えば1〜約1000ミクロンであるサイズの粒子に関して用いられる。「微粒子」なる語は、特に示されていない限り、ミクロスフェア、マイクロカプセルおよび微粒子を含む。微粒子は複合構造のものであることが可能であり、必ずしも純粋な物質でなくてもよい。それは球状または任意の他の形状でありうる。
【0036】
本明細書中で用いる「ローディング率(%)」なる語は、微粒子の重量に対する個別化物質の重量の比に100を掛け算したものを意味する。
【0037】
本明細書中で用いる「小バッチ」なる語は、1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下または10以下の個体による使用に適した封入個別化物質のバッチサイズを意味し、所望により、個体への適用後、証明目的のために少量が残されうる。幾つかの実施形態においては、封入個別化物質のバッチサイズは約10,000、5000、4000、3000、2000、1000、500、100、50、10、1、0.1または0.01mg未満である。これらの任意の値が、封入個別化物質のバッチサイズの範囲を定めるために用いられうる。例えば、封入個別化物質のバッチサイズは約10,000mg〜約0.01mg、約10,000mg〜約1000mg、または約5000mg〜約500mgの範囲でありうる。
【0038】
II.組成物
個別化物質を個体の皮膚内に配置して配置部位に残留させるための組成物を本明細書中に記載する。個別化物質は微粒子内に封入され、本明細書においては「封入物質」とも称される。該組成物は、刺青を個別化するため、および/または特別な意義を有する物質を個体の皮膚内に組込むために使用されうる。
【0039】
個体の皮膚への運搬の後、封入物質は微粒子内に残留し、微粒子は浸食(分解)されない。封入物質は微粒子から放出されない。個体の皮膚への運搬の後に微粒子が封入物質を放出しないことを証明するために、簡単なインビトロ試験を用いることが可能である。例えば、封入個別化物質を含有する微粒子の形成の後、微粒子を浴中のpH 7.4および37℃の温度の水溶液またはバッファーに少なくとも約1カ月間浸漬することが可能である。サンプルを定期的に、例えば1時間後、1日後、1週間後および1カ月後に採取し、適当な検出方法を用いて分析して、微量の封入物質が該水溶液、バッファーまたは上清中に存在するかどうかを判定する。
【0040】
適当な検出方法は当技術分野で公知である。例えば、DNAが放出されているかどうかの検出のための適当な方法には、該水溶液、バッファーもしくは上清中に放出された標識DNAの蛍光の検出、および/または該水溶液、バッファーもしくは上清のPCR増幅が含まれる。サンプル中の低レベルのDNAを検出するためのPCR法は当技術分野で公知である。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning. (4th ed.). Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい。DNA放出を検出するためには、通常のPCR、および増幅のリアルタイムモニタリングを伴うリアルタイムPCRが使用されうる。PCR増幅は、封入前のDNAの増幅に使用するものと同じプライマーおよび増幅条件を使用することが可能である。PCR増幅は50増幅サイクルまで追跡可能であり、該水溶液、バッファーまたは上清中にDNAが存在する場合には、検出可能な数の増幅DNA分子(「増幅産物」と称される)を生成する。PCR後、増幅産物が存在すれば、該増幅産物は、二本鎖DNAを検出するための通常のゲル電気泳動技術または紫外可視分光分析により検出されうる。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning. (4th ed.). Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい。前記方法の後の増幅産物の存在は微粒子からのDNAの放出を示し、増幅産物の非存在は、微粒子からDNAが放出されなかったことを示す。
【0041】
非DNA個別化物質の場合、適当な検出方法には、IR、質量分析、例えば同位体比質量分析(IRMS)または液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)が含まれる。
【0042】
本明細書中で用いる「個別化物質を放出しない微粒子」なる語は、前記のインビトロアッセイにより検出された場合、該水溶液またはバッファー中に相当量の個別化物質を放出しない微粒子を意味する。幾つかの実施形態においては、微粒子は、前記のインビトロアッセイにより測定された場合、1時間後、1日後、1週間後、2週間後、3週間後、1カ月後、6カ月後、1年後、5年後、10年後、20年後または30年後、検出可能な量の個別化物質を放出しない。幾つかの実施形態においては、微粒子は、微粒子内に含有されている個別化物質の全量の10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%または0.001%未満を放出する。幾つかの実施形態においては、微粒子は、1時間後、1日後、1週間後、2週間後、3週間後、1カ月後、6カ月後、1年後、5年後、10年後、20年後または30年後、微粒子内に含有されている個別化物質の全量の10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%または0.001%未満を放出する。特定の実施形態においては、微粒子は、2週間後、微粒子内に含有される個別化物質(例えば、DNA)の全量の0.1%未満を放出する。
【0043】
封入個別化物質としてDNAを含有する組成物の場合には、前記のインビトロアッセイによる検出方法は、PCRによる増幅、およびそれに続く、通常のゲル電気泳動技術または紫外可視分光分析による検出を含む。封入個別化物質として非DNA物質を含有する組成物の場合には、前記のインビトロアッセイによる検出方法として質量分析が使用されうる。
【0044】
1.個別化物質
一般に、本明細書に記載されている組成物は個別化物質を含む。適当な個別化物質には、生物学的物質、例えば動物または植物組織、砂、土壌、金属、海水、聖水、合成または天然ポリマー、火葬灰、セラミックスおよび他の生理的に許容される成分が含まれるが、これらに限定されるものではない。液体個別化物質、例えば海水および聖水の場合、個別化物質を含む微粒子の凍結乾燥は、微粒子内に含有される液体を除去するであろう。しかし、液体中に含有されるいずれかの塩または他の不揮発性化合物は残留するであろう。
【0045】
幾つかの実施形態においては、該組成物は、いずれかの追加的な個別化物質を伴うことなく、封入DNAを含有しうる。他の実施形態においては、該組成物は、DNAを含む個別化物質と、他の化合物を含む1以上の追加的な個別化物質とを含有する。例えば、追加的な個別化物質は砂、土壌、金属、セラミックスおよび/または植物産物からの1以上のサンプルでありうる。
【0046】
A.典型的な個別化物質
適当な個別化物質には、砂、土壌もしくは岩粒子、または砂、土壌もしくは岩から抽出された化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
砂は、表1に示されているとおり、主として、シリカ(SiO
2)ならびに他の有機および無機ミネラル、例えばケイ酸カルシウム(Ca
2SiO
4)、窒化カルシウム(Ca
3N
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN
3)、アルミナ(Al
2O
3)、ボラゾン「窒化ホウ素」(BN)、酸化マグネシウム(MgO)、オキシ硫化ケイ素(SiOS)、ケイ酸リチウム(Li
2SiO
4)および他の酸化/窒化金属からなる。
【0048】
DNAを含有しない個別化物質、例えば砂、土壌、金属、水、海水、聖水、合成または天然ポリマー、火葬灰、セラミックス、および植物由来の化合物の正体(同一性)は、適当な方法、質量分析、例えば同位体比質量分析(IRMS)または液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により確認されうる。
【0049】
【表1】
例えば、個別化物質は、土壌または岩サンプルから抽出された二酸化ケイ素粒子を含有しうる。適当な抽出技術は公知である。抽出後、粒子は、そのサイズを1ミクロン未満に減少させるために、通常の手段により粉砕されうる。ついで、所望により、粒子を、封入のためのサイズ範囲を有する粒子の集団を得るためにスクリーニングし、または適当なサイズ、典型的には直径約1〜約1000nmのナノ粒子を得るために微粒子化することが可能である。所望により、封入後、該粒子を、粉末化された又は予め分散した刺青インクと混合することが可能である。
【0050】
幾つかの実施形態においては、個別化物質は、該物質を受容する者にとって意義のある金属またはセラミック体の粒子を含む。例えば、そのような金属またはセラミック体を粉砕し、スクリーニングし、抽出し(望ましくない成分を除去するため)、封入し、刺青への取り込みのために刺青インクと混合することが可能である。
【0051】
幾つかの実施形態においては、個別化物質は、個体にとっての個人的な意義を有する木製物品の抽出物を含む。例えば、幾つかの実施形態においては、セルロースを木製物品から抽出し、個体への運搬のために封入する。
【0052】
個別化物質は、固体または液体形態、例えばエマルションの形態として、微粒子形成物質に加えられうる。封入後、個別化物質は、微粒子内で、小粒子、典型的にはナノ粒子の形態である。一般に、個別化物質は微粒子のコア内に存在し、疎水性非分解性ポリマーマトリックス、すなわち、殻によって包囲されている。封入個別化物質は、生じる微粒子より小さいサイズを有し、典型的には、直径(または非球状粒子の場合のその最大寸法)が1ミクロン未満である。
【0053】
B.個別化物質におけるDNA分子のタイプ
個別化物質は不活性かつ非反応性のままであり、皮膚への運搬の後も封入されたままであると意図される。
【0054】
したがって、幾つかの実施形態においては、個別化物質はベクターを含まない。本明細書中で用いる「ベクター」なる語は、組換えDNAの保存、増殖、運搬または組込みのためにバイオテクノロジーにおいて使用されるDNA分子を意味する。ベクターの例には、プラスミドバックボーン、ウイルスベクター、バクミド、コスミドおよび人工染色体が含まれる。
【0055】
一般に、ベクター自体は、インサート(トランスジーンまたは組換えDNA)と、該ベクターの「バックボーン」として働く、より大きな配列とからなるDNA配列である。ベクターの目的は、インサートを別の細胞に導入することであり、この場合、それは単離され、増幅され、または発現されうる。幾つかの実施形態においては、個別化物質は、DNA配列を細胞内に導入するために使用されるDNAを含まない。幾つかの実施形態においては、個別化物質は、それに含まれる遺伝情報を増幅し又は発現させるために使用されるDNAを含まない。
【0056】
C.所望により使用可能な成分
1.個体識別特性
所望により、該組成物は1以上の個体識別特性を含みうる。そのような1以上の個体識別特性は、個別化物質が特定の起源、例えばヒト、非ヒト動物または植物から得られたことを証明するために使用されうる特有の情報を含有する。証明工程は封入の前または後で実施可能であり、所望により、証明は、個別化物質を個体の皮膚内に配置した後で行われうる。
【0057】
DNAに関する典型的な個体識別特性には、マイクロサテライトマーカー、例えば短いタンデム反復(STR)および単純配列反復(SSR)マーカー、一塩基多型(SNP)およびエピジェネティックマーカー、例えばメチル化DNAパターンが含まれるが、これらに限定されるものではない。起源生物に特有である任意のDNA配列が個体識別特性として使用されうる。例えば、起源生物に特有のDNA配列は、当技術分野で公知の配列決定方法、例えばサンガー配列決定法または次世代配列決定法、例えばイルミナ(Illumina)配列決定法を用いて、起源生物から単離されたDNAの配列全体またはその一部を配列決定することにより特定されうる。DNA配列決定法は当技術分野でよく知られており、例えばSambrookら, Molecular Cloning. (4th ed.). Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている。
【0058】
a.多型遺伝マーカー
DNAは、一般に、1以上の多型遺伝マーカーを含む。多型遺伝マーカーは、個体を明確に特定するために使用される親子鑑定および法医学的DNA分析のような種々の用途の開発に寄与してきた、ゲノムの高可変領域である。
【0059】
過去30年間で多数の多型遺伝マーカーの特定が行われている。例えば、タンデム反復数(VNTR)として公知の多型遺伝マーカーは、タンデム(縦列)で反復している14〜80塩基長の、ほぼ同一の配列を含有するDNAの、豊富な高多型領域である。Jeffreysら, 1985, Nature 314: 67-73; Wymanら, 1980, PNAS 77: 6754-6758;およびNakamuraら, 1987, Science 235: 1616-1622を参照されたい。個体間のこれらのマーカーにおける変異は、それらを、特定の個体を特定するのに有用なものにする。VNTRは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、少量のDNAから検出されうる。Kasaiら, 1990, Journal of Forensic Sciences 35(5): 1196-1200を参照されたい。増幅PCR産物におけるサイズの相違はアガロースまたはポリアクリルアミドゲル上で検出される。しかし、限られた数のVNTRはこの方法の広範な適用可能性を制限し、このことは次に短いタンデム反復(STR)の特定へとつながった。
【0060】
b.短いタンデム反復(STR)
STRはポリメラーゼ連鎖反応により増幅可能であり、非常に豊富かつ多型性である。(個体によって異なる)。STRは、2塩基対(ジヌクレオチド)、3塩基対(トリヌクレオチド)、4塩基対(テトラヌクレオチド)または5塩基対(ペンタヌクレオチド)異なるタンデム反復配列を含有しうる。ヒトゲノム内には約50,000〜100,000個のジヌクレオチド反復が存在すると推定されている。トリヌクレオチドおよびテトラヌクレオチド反復はそれほど一般的ではなく、ヒトゲノムは10,000個の各反復タイプを含有すると推定されている。Tautzら, 1989, Nuc. Acids Res. 17: 6464-6471およびHamadaら, 1982, PNAS 79: 6465-6469を参照されたい。テトラヌクレオチドおよびペンタヌクレオチドSTRの使用は、より短い配列と比較して、個々の被験者間の相違の、より良好な識別を可能にする。Weberら, 1989, Am J Hum Genet 44: 388-396を参照されたい。
【0061】
個別化物質は、ジヌクレオチドSTR、トリヌクレオチドSTR、テトラヌクレオチドSTRおよびペンタヌクレオチドSTRからなる群から選択されるヒトDNA配列を含有しうる。
【0062】
ヒトテトラヌクレオチド反復領域からのPCR産物のサイズは典型的には個体間で異なるため、テトラヌクレオチド反復は、個別化物質としての使用のための好ましい個体識別分子である。例えば、各親からの多型マーカーの1コピーの各個体に関する遺伝に基づいて、2つの異なるサイズのPCR産物が観察される。各遺伝コピーは可変数のテトラヌクレオチド反復を含有する。したがって、2つの無関係な個体は、おそらく、同じテトラヌクレオチド多型マーカーからの、異なるサイズのPCR産物を与えるであろう。より多数の異なるテトラヌクレオチド反復領域の数を個体間で比較するにつれて、同一パターンのPCR産物を共有する個体の確率は減少する。
【0063】
c.一塩基多型(SNP)
一塩基多型は、ゲノム(または他の共有配列)内の単一ヌクレオチド(A、T、CまたはG)が対染色体または生物学的種のメンバー間で異なっている、集団(約1%)内で一般に生じるDNA配列変異である。例えば、異なる個体からの2つの配列決定DNA断片であるAAGC
CTAおよびAAGC
TTAは単一ヌクレオチド(一塩基)における相違を含有する。
【0064】
SNPは遺伝子のコード配列、遺伝子の非コード領域または遺伝子間領域(遺伝子間の領域)に含まれうる。コード配列内のSNPは、遺伝暗号の縮重ゆえに、産生されるタンパク質のアミノ酸配列を必ずしも変化させない。
【0065】
コード領域内のSNPには同義SNPおよび非同義SNPの2つのタイプのものがある。同義SNPはタンパク質配列に影響を及ぼさないが、非同義SNPはタンパク質のアミノ酸配列を変化させる。非同義SNPにはミスセンスおよびナンセンスの2つのタイプのものがある。
【0066】
タンパク質コード領域内に存在しないSNPは遺伝子スプライシング、転写因子結合、メッセンジャーRNA分解または非コードRNAの配列に尚も影響を及ぼしうる。このタイプのSNPにより影響される遺伝子発現はeSNP(発現SNP)と称され、該遺伝子の上流または下流に存在しうる。
【0067】
表現型に対する観察可能な影響を伴わないSNP(いわゆる、サイレント突然変異)は、その量および何世代にもわたる安定な遺伝ゆえに、ゲノムワイド関連研究における遺伝マーカーとして尚も有用である。
【0068】
2.ナノ粒子
所望により、個別化物質は、ポリマー微粒子への封入の前に、ナノ粒子へと形成され、またはナノ粒子内に封入される。
【0069】
前記個別化物質はいずれも、適当なサイズのナノ粒子を得るために、微粒子化されうる。
【0070】
幾つかの実施形態においては、ナノ粒子はヒトからの若しくはコンパニオン・アニマルからのDNAを含む、または該DNAからなる。該DNAはリン酸カルシウムにより沈殿されうる。他の実施形態においては、ナノ粒子は、非DNA個別化物質、例えば砂、土壌、金属、水、海水、聖水、合成もしくは生物学的ポリマー、火葬灰またはセラミックスを含む、またはそれらからなる、またはそれらに由来する。ある実施形態においては、マイクロカプセル化に備えて、個別化物質のサイズを減少させるために個別化物質を微粒子化することにより、ナノ粒子を形成させる。
【0071】
ナノ粒子の直径は、例えば約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30または20ナノメートル(nm)でありうる。ある実施形態においては、ナノ粒子の直径は約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40または30ナノメートル(nm)未満である。これらの任意の値が、ナノ粒子の直径の範囲を定めるために用いられうる。例えば、ナノ粒子の直径は約20nm〜約1000nmまたは約20nm〜約100nmでありうる。
【0072】
2.ポリマー微粒子
個別化物質はポリマー微粒子内に封入される。微粒子のコアは個別化物質を含有し、それは、微粒子の外殻を形成するポリマーマトリックスによって包囲されている。
【0073】
所望により、個別化物質はナノ粒子へと形成され、これはポリマー微粒子内に封入される。幾つかの実施形態においては、個別化物質は、リン酸カルシウム沈殿により製造されるDNAナノ粒子である。リン酸カルシウム沈殿DNAナノ粒子は、該DNAを溶媒に溶解することなくポリマー微粒子内に封入される。
【0074】
幾つかの実施形態においては、微粒子は個別化物質と色素または染料との両方を含む。ポリマー微粒子内の色素または染料粒子は、一般に、100nmより小さく、好ましくは、20nmより小さい。幾つかの実施形態においては、個別化物質を含む微粒子は色素も染料も含まない。
【0075】
A.ポリマー
疎水性であり生体適合性であり非生分解性である任意のポリマーが、微粒子を形成させるために使用されうる。好ましくは、微粒子を形成するポリマーの組成および分子量は、ポリマーのガラス転移温度が60℃以上となり、ポリマーの融点が50℃以上となるものである。ある実施形態においては、ポリマーのガラス転移温度は約60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75または80℃以上である。ある実施形態においては、ポリマーの融点は約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65または70℃以上である。高いガラス転移温度、すなわち、60℃以上のガラス転移温度、または高い融点、すなわち、50℃以上の融点を有する好ましいポリマーには、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレンおよびポリカルボナートが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリラート、ポリメタクリラートならびにそれらのコポリマーおよびブレンド(混合物)からなる群から選択される。もう1つの特定の実施形態においては、ポリマーは、ポリアクリラート、ポリメタクリラートならびにそれらのコポリマーおよびブレンドからなる群から選択される。好ましくは、微粒子がポリマーのコポリマーまたはブレンドから形成される場合、該コポリマーまたはブレンドは、高いガラス転移温度または高い融点を有するポリマーから形成され、低いガラス転移温度、すなわち、60℃未満のガラス転移温度、または50℃未満の融点を有するいずれのポリマーをも含有しない。
【0076】
60℃以上のガラス転移温度を有する適当なポリマーまたは50℃以上の融点を有する適当なポリマーには、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルエーテル、ポリビニルハライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセタート、セルロースプロピオナート、セルロースアセタートブチラート、セルローストリアセタート、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、ポリ(オクタデシルアクリラート)、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタラート ポリ(ビニルアセタート)およびポリビニルクロリド ポリスチレン、ならびにこれらの混合物、コポリマーおよびブレンドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
好ましいポリマーには、ポリアクリラートおよびポリメタクリラートが含まれる。
【0078】
ある実施形態においては、ポリメタクリラートはポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)である。医学等級のPMMA(MW = 35kDa; 残留MMAモノマー < 0.1%)はVista Optics Ltd.(Widnes, UK)から商業的に入手可能である。
【0079】
B.形状およびサイズ
微粒子は任意の形状を有しうる。典型的には、微粒子は球状である。他の適当な形状には、鱗片状、三角形、楕円形、棒状、多角形、針状、管状、立方体および直方体構造が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
ある実施形態においては、微粒子は10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1ミクロン未満の直径を有する。これらの任意の値が、微粒子の直径の範囲を定めるために用いられうる。例えば、微粒子の直径は約0.1〜約10ミクロン、約0.1〜約1ミクロン、または約0.1〜約2ミクロンでありうる。典型的には、微粒子の直径は5ミクロン未満である。好ましくは、刺青インクにおける添加物として使用される組成物の場合、微粒子の直径は約1〜約10ミクロン、より好ましくは約1〜2ミクロンの範囲である。10ミクロン以下の直径を有する微粒子は刺青銃(tattoo gun)またはいずれかの類似装置により皮膚内に導入されうる。
【0081】
他の実施形態においては、より大きな微粒子または粒子が使用されうる。例えば、微粒子は10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の直径を有しうる。これらの実施形態においては、微粒子は皮内注射により皮膚に運搬されうる。
【0082】
C.微粒子内への封入個別化物質のローディング
典型的には、微粒子内に封入された個別化物質の濃度はローディング率(%)として表される。ローディング率(%)の値は個別化物質の重量に左右されるため、異なる個別化物質に関するローディング率(%)の値は有意に変動しうる。したがって、個別化物質が異なれば、異なる範囲のローディング率(%)が想定される。
【0083】
幾つかの実施形態においては、微粒子からの個別化物質の滲出を防ぐために、微粒子内の個別化物質の濃度は低いこと(例えば、0.1% w/w以下まで)が要求される。
【0084】
幾つかの実施形態においては、例えば、封入物質がDNAである場合、封入のためには小さなサンプルが提供されるに過ぎない。これらの実施形態においては、微粒子は、典型的には、低濃度のDNAを含有する。しかし、大量の封入物質が提供される場合には、生じる微粒子がDNAを放出しない限り、微粒子内の封入物質のローディングはより高いことが可能である。
【0085】
幾つかの実施形態においては、微粒子は微粒子の重量に対して約0.00001、0.00005、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%(w/w)の重量の封入物質を含む。幾つかの実施形態においては、微粒子は微粒子の重量に対して約0.00001、0.00005、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%(w/w)未満の重量の封入物質を含む。これらの任意の値が、微粒子内の封入物質の濃度の範囲を定めるために用いられうる。例えば、微粒子は約0.00001〜約10% w/wまたは約0.001〜約2% w/wの範囲の量の封入物質を含有しうる。幾つかの実施形態においては、微粒子内の封入物質の量は約0.1% w/w未満である。
【0086】
1.DNAのローディング率(%)
典型的には、微粒子内のDNAのローディング率(%)は、微粒子の全重量に対するDNA重量(%w/w)として0.000001%〜0.1%である。好ましい実施形態においては、微粒子内のDNAの量はDNA 0.01% (w/w)、より好ましくは、微粒子内のDNAの量は0.001%〜0.00001% (w/w)の範囲である。これらのローディング範囲は、一般に、1層微粒子に適用可能である。
【0087】
しかし、微粒子が2層微粒子である実施形態には、より高いDNAローディングが用いられうる。2層微粒子の構造は、DNAが微粒子から滲出するのを防ぐと予想される。これらの実施形態においては、微粒子内のDNAの量は、微粒子の全重量に対するDNAの重量(%w/w)として、0.000001%〜約5%、所望により約1%〜5%(w/w)である。
【0088】
2.他の個別化物質のローディング率(%)
典型的には、DNA以外の個別化物質のローディング率(%)は微粒子内のDNAのローディングより高い。例えば、微粒子内の個別化物質の量は約0.001〜約10% w/wまたは約0.001〜約2% w/wの範囲でありうる。所望により、微粒子内の個別化物質の量は約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10% w/w未満である。これらの任意の値が、微粒子内の該物質の濃度の範囲を定めるために用いられうる。例えば、微生物内の個別化物質の量は約0.001〜約10% w/wまたは約0.001〜約2% w/wの範囲でありうる。特定の実施形態においては、微粒子は約0.1% w/w未満の、DNA以外の個別化物質を含む。
【0089】
3.担体
ある実施形態においては、本明細書に記載されている組成物はヒトの皮膚内への注射用に製剤化される。例えば、該組成物は注射によるヒトへの運搬のための適当な生体適合性担体を含みうる。適当な担体には、いずれかのアルコール、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコールまたは水(これらに限定されるものではない)が含まれる。適当な担体には、アルコールと水とのいずれかの組合せも含まれる。典型的には、担体におけるアルコールの量は約5%〜約30%(w/w)の範囲であり、担体における水の量は約40%〜約70%(w/w)の範囲である。
【0090】
好ましい実施形態においては、担体は60% 水、30% グリセリン(グリセロール)および10% エタノールの溶液である。他の担体溶液、例えば、55% 水、30% グリセリンおよび15% エタノール; 50% 水、30% グリセリンおよび20% エタノール; 45% 水、30% グリセリンおよび25% エタノール; または40% 水、30% グリセリンおよび30% エタノールも想定される。
【0091】
4.DNAを含有する典型的な組成物
ある実施形態においては、個体に運搬される個別化物質はヒト、非ヒト動物(例えば、ペット)または植物からのDNAを含有する。
【0092】
特定の実施形態においては、DNAはヒトからのものである。どの2人の人間も彼らの細胞内に厳密に同一のDNA配列を有することはない。個々のヒトにおけるDNAにおける相違は、個体を識別するために使用されうる特有のDNAプロファイルを示す。また、各個体の特有のDNAプロファイルは、個別化物質が特定の個体からのものであることを証明するための手段を提供する。したがって、担体内または刺青インク内へのDNAの取り込みは、例えば遺伝マーカーのDNA配列決定または分析により証明されうる刺青インクまたは担体に特有の特性を与える。
【0093】
DNAはコード化もしくは非コード化ゲノムcDNA、コード化もしくは非コード化ミトコンドリアDNAまたは相補的DNA(cDNA)でありうる。cDNAは、逆転写酵素を使用してRNAから合成される。ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、およびcDNAの合成のためのRNAは、ヒト、動物および植物(これらに限定されるものではない)を含むいずれかの生物から単離されうる。幾つかの実施形態においては、DNAは単一の生物、例えばヒトから単離される。他の実施形態においては、DNAは2以上の生物、例えば2以上のヒトから単離される。ゲノムDNA、ミトコンドリアDNAおよびRNAの単離方法ならびにcDNA合成の方法は当技術分野でよく知られており、例えばSambrookら, Molecular Cloning. (4th ed. ). Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている。
【0094】
D.DNAの単離および増幅
幾つかの実施形態においては、個別化物質に含有されるDNAを、例えばゲノムDNAまたはミトコンドリアDNAのように、生物から直接的に単離する。他の実施形態においては、個別化物質に含有されるDNAを、生物から収集されたサンプルから、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する。テトラヌクレオチドPCR増幅の場合、複数のDNAセグメントを、典型的には、単一チューブ内で増幅することが可能である。幾つかのDNA領域のそのような多重増幅は当技術分野においてはマルチプレクス(多重)PCRとして公知である。複数のPCR産物は、当技術分野で公知のとおりに、例えば電気泳動により分離され、装置が電気泳動ゲルまたはイメージを読取って、PCR産物のサイズを自動的に分析する。幾つかの実施形態においては、個別化物質に含有されるDNAは、前記のとおり、生物から単離されたRNAから逆転写されたcDNAである。
【0095】
DNAは、後記の証明工程が行われうるように配列決定されうる(Sambrookら, Molecular Cloning. (4th ed.). Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratory)。
【0096】
個別化物質として使用されるDNAサンプルの調製は以下のとおりに進められうるが、類似DNAサンプルを調製する他の方法も当業者に公知である。1つの好ましい方法は以下の一般的工程を含む。
【0097】
個別化物質に含有されるDNAの調製のためのサンプルを、当技術分野で公知のとおり、頬スワブ、皮膚、毛、唾液もしくは血液または生物からの他の組織のサンプルから収集する。頬スワブサンプルが好ましい。サンプルを収集し、取り扱うためのプロトコルは当技術分野で公知である。
【0098】
例えば、頬細胞からゲノムDNAを単離するのに適したDNA単離キットが、頬スワブからDNAを単離するために使用されうる。これらのキットは商業的に入手可能であり、通常、0.5〜2マイクログラムの全DNAを与える。ついで、単離されたDNAの多型遺伝マーカー(例えば、STRおよびSNP)を含有する望ましいゲノム領域をPCRにより増幅して、個別化物質として使用する数マイクログラム、典型的には1〜10マイクログラムのDNAを得る。増幅されたDNAは、後記の証明工程が行われうるように配列決定されうる。この増幅DNAは、微粒子内に封入される個別化物質である。
【0099】
所望により、個別化DNA分子の封入は、個別化DNA分子と同じ量で含まれる既知配列の対照DNA分子を含みうる。該対照DNAは、例えば前記のインビトロ法により、封入DNAのいずれかが放出されるかどうかを判断するために試験するために使用されうる。
【0100】
代替的に、または所望により、個別化DNAは、発蛍光団、例えばAlexa Fluor(登録商標)色素(Molecular Probes, Inc.)で部分的または全体的に標識されうる。標識DNAは、例えば封入粒子のフローサイトメトリーにより、該DNAが成功裏に封入されたことを確認するために使用されうる。その代わりに、またはそれに加えて、標識DNAは、個体の皮膚への運搬の後で封入DNAのいずれかが放出されるかどうかを判断するために使用されうる。この試験は、例えば前記のインビトロ方法においてDNA放出に関して空微粒子または標識DNA封入微粒子を試験する際の媒体である水溶液、バッファーまたは上清の蛍光を測定することにより行われうる。
【0101】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、増幅DNAの封入を証明するために使用されうる。
【0102】
幾つかの実施形態においては、当技術分野で公知の方法、例えばSambrookら(前掲)に記載されている方法を用いて、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNAおよび/またはRNAをサンプルから単離する。例えば、PCRもしくは逆転写を続けるべきか又は別のサンプルを得るべきかの判断を得るために、抽出されたDNAまたはRNAの濃度および完全性を決定することが可能である。
【0103】
幾つかの実施形態においては、個別化物質に含有されるDNAはPCRにより得られうる。例えば、当技術分野で公知のとおり、所望により、検出可能な標識、例えば放射能標識または蛍光標識を含む、ゲノムDNAサンプルの、3〜5個のテトラヌクレオチド反復セグメントを増幅するプライマーを使用するPCRにより、STRを含むDNAを増幅することが可能である。DNAを増幅するためのPCRプライマーは商業的供給源から入手可能であり、あるいは当技術分野で公知の方法を用いて合成されうる。PCRプライマーの設計のためのソフトウェアは当技術分野でよく知られている。
【0104】
PCRにより増幅されうる好ましいSTRの例を以下の表2に示す。追加的な適当なテトラヌクレオチドおよびペンタヌクレオチド反復も増幅されうる、と当業者は理解するであろう。適当なテトラヌクレオチドDNA反復の好ましい性質の1つは被験者集団における高いヘテロ接合性(個体間の可変性)である。適当なテトラヌクレオチドDNA反復のもう1つの好ましい性質は、それが生物活性産物、例えばタンパク質、tRNA、rRNA、miRNAまたはsiRNAをコードしていないことである。適当なテトラヌクレオチドDNA反復の更にもう1つの好ましい性質は、それがレシピエントにおいて免疫応答を誘導せず、治療作用をもたらさないことである。
【0105】
【表2】
得られたPCR産物を、典型的には、テトラヌクレオチド反復の産生の成功に関して、およびサンプルが個体からのDNAサンプルの比較的特有の特徴を示すことを確認するために、例えば電気泳動により分析する。
【0106】
E.増幅DNAの証明
幾つかの実施形態においては、個別化物質に含有されるDNAが所望の起源生物から得られた又は産生されたことを確認するために、DNAを分析する。例えば、STRを含むDNAの場合には、個別化物質に含有されるDNAにおけるPCR産物のパターンを、起源生物から得られた対照サンプルと比較することが可能である。個別化物質に含有されるDNAが所望の起源生物からのものであることを証明するために、個別化物質に含有されるDNAをDNA配列決定、例えばcDNA配列決定または全ゲノム配列決定によっても分析することが可能である。
【0107】
DNAの配列決定は、当技術分野で公知の方法を用いて行われうる。これらには、限定的なものではないが、基本的な配列決定方法、例えばサンガー(Sanger)法、マクサム-ギルバート(Maxam-Gilbert)配列決定および鎖終結(chain termination)法(Francaら, Quarterly Review of Biophysics, 35(2):169-200, 2002)、高度な方法およびデノボ(de novo)配列決定、例えばショットガン配列決定およびブリッジ(bridge)PCR(Braslavkyら, Proc. Natl. Acad. Sci, 100(7):3960-3964, 2003)または次世代方法が含まれる。次世代配列決定はゲノム配列決定、ゲノム再配列決定、トランスクリプトームプロファイリング(RNA-SEQ)、DNA-タンパク質相互作用(ChlP-配列決定)およびエピゲノム特徴づけ(de Magalhaesら, Ageing Res Rev. 9(3)315-323, 2010; Liuら, Journal of Biomedicine and Biotechnology, 2012:1-11, article ID 251364, 2012; およびHall, The Journal of Experimental Biology, 209:1518-1525, 2007)に適用される。再配列決定が必要なのは、種の単一個体のゲノムは同じサンプル種の他の個体間のゲノム変異の全てを示すわけではないからである。
【0108】
次世代配列決定は、単分子リアルタイム配列決定、大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)、ポロニー(Polony)配列決定、454ピロシーケンス、イオン急流半導体配列決定(ion torrent semiconductor sequencing)、DNAナノボール配列決定、ヘリスコープ単一分子配列決定(heliscope single molecule sequencing)、連結による配列決定(SOLiD配列決定)および単一分子リアルタイム配列決定(SMRT)(これらに限定されるものではない)などの幾つかの方法を含む。これらの方法はLiuら, Journal of Biomedicine and Biotechnology, 2012:1-11, article ID 251364, 2012およびHall, The Journal of Experimental Biology, 209:1518-1525, 2007に詳細に記載されており、比較されている。
【0109】
幾つかの実施形態においては、個別化物質を担体または刺青インクと一緒にする前に、個別化物質に含有されるDNAを分析する。他の実施形態においては、個別化物質を担体または刺青インクと一緒にした後、個別化物質に含有されるDNAを分析する。
【0110】
汚染物(コンタミ)を適切には含有しない医薬/生物等級DNAを得るために、DNAを精製することが可能である。
【0111】
II.組成物の製造方法
微粒子は、種々の公知マイクロカプセル化方法、例えば溶媒蒸発、多層(または2層)マイクロカプセル化、コアセルベーションおよび溶融加工を用いて製造されうる。
【0112】
前記の任意の非生分解性疎水性ポリマーが、ポリマー微粒子を形成させるために使用されうる。
【0113】
1.溶媒
微粒子の形成において使用されうる溶媒には、有機溶媒、例えば塩化メチレンが含まれ、これは、安全であると一般に受け入れられている低い残留物レベルを与える。適当な水不溶性溶媒には、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、酢酸エチルおよびシクロヘキサンが含まれる。追加的な溶媒には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:アルコール、例えばメタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、1-プロパノール(n-プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(t-ブチルアルコール)、1-ペンタノール(n-ペンチルアルコール)、3-メチル-1-ブタノール(イソペンチルアルコール)、2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)、シクロペンタノール(シクロペンチルアルコール)、1-ヘキサノール(n-ヘキサノール)、シクロヘキサノール(シクロヘキシルアルコール)、1-ヘプタノール(n-ヘプチルアルコール)、1-オクタノール(n-オクチルアルコール)、1-ノナノール(n-ノニルアルコール)、1-デカノール(n-デシルアルコール)、2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、ジフェニルメタノール(ジフェニルカルビノール)、トリフェニルメタノール(トリフェニルカルビノール)、グリセリン、フェノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、3-エトキシ1,2-プロパンジオール、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ペンタンジオール、3,4-ペンタンジオール、3,5-ペンタンジオールおよびそれらの組合せ。好ましいアルコールはイソプロパノールである。
【0114】
コアセルベート系を生成させるために使用されうる物質はアニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤にはジ-(2-エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシナートが含まれ、非イオン性界面活性剤には脂肪酸およびそのエステルが含まれ、両性グループにおける界面活性剤には、(1)単純タンパク質、複合タンパク質および誘導タンパク質、例えばアルブミン、ゼラチンおよび糖タンパク質、ならびに(2)リン脂質の分類に含まれる物質、例えばレシチンが含まれる。カチオン性グループ内のアミン塩および第四級アンモニウム塩も、有用な界面活性剤を含む。コアセルベートを形成させるのに有用な他の界面活性化合物には、多糖およびその誘導体、ムコ多糖およびポリソルベートならびにそれらの誘導体が含まれる。界面活性剤として使用されうる合成ポリマーには、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールのような組成物が含まれる。コアセルベート系を得るために使用されうる適当な化合物の更なる例には、糖タンパク質、糖脂質、ガラクトース、ゼラチン、修飾流動性ゼラチンおよびガラクツロン酸が含まれる。
【0115】
3.界面活性剤
微粒子の製造中に、疎水性ポリマー微粒子における疎水性個別化物質の生じる分布を改善するために、疎水性界面活性剤、例えば脂肪酸コレステロールが加えられうる。適当な脂肪酸の例には、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸が含まれる。
【0116】
親水性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)20およびポリビニルアルコール(PVA)はポリマー内の親水性色素の分布を改善する。色素が親水性であり、ポリマーが疎水性である場合には、両性界面活性剤が好ましい。
【0117】
脂肪酸またはその医薬上許容される塩のような界面活性剤は、典型的には、1重量部の色素に対して0.2〜1重量部の脂肪酸またはその塩の比で加えられる。
【0118】
4.微粒子化およびナノ粒子形成
必要な場合にナノ粒子の製造のために個別化物質を微粒子化するための方法には、例えば、超音波処理および/またはせん断力の生成、ならびにローターステーター混合または同心シャフトを使用する粉砕(例えば、5,000 RPM〜25,000 RPMの速度のもの)が含まれる。
【0119】
DNAが個別化物質である幾つかの実施形態においては、DNAは、標準的な技術、例えばエタノールもしくはイソプロパノール沈殿または塩沈殿を用いる沈殿により調製されうる。幾つかの実施形態においては、リン酸カルシウムでの沈殿によりDNAを微粒子化し、沈殿物は溶解せず、その代わりに、ナノ粒子として微粒子内に直接的に取り込まれる。幾つかの実施形態においては、封入プロセス後に除去される水中のエマルションとしてDNAを封入して、DNAの小さな固体粒子を得る。また、DNAは固体ナノ粒子、例えば二酸化ケイ素または金に結合可能であり、あるいは互いに架橋されて凝集物を形成しうる。
【0120】
DNAをナノ粒子内に封入する方法は当技術分野において記載されている。例えば、US 2009/0311295およびvan de Bergら, 2010, Journal of Controlled Release 141: 234-240を参照されたい。
【0121】
5.微粒子内のナノ粒子の分布
好ましくは、個別化物質を含有するナノ粒子を、封入個別化物質の滲出を回避するために低いローディングレベルでポリマー微粒子内に均一に分布させる。これは、封入物質がDNAである又はDNAを含有する場合に特に望ましい。
【0122】
ほとんどの微粒子製造方法における問題は、ポリマー溶液への添加の後の初期にはナノ粒子は分散するが、ナノ粒子が急速に底へと沈降することである。ついで溶媒を除去した場合、ナノ粒子はポリマーの一部分に優先的に存在する。ナノ粒子を分散状態で維持すると同時にポリマー溶媒を除去して微粒子を形成させることは困難である。したがって、微粒子を形成するのに十分な時間にわたってナノ粒子がポリマー内に均一に分布し続けるように溶液が「安定化」されるように、ナノ粒子をポリマー溶液中に分散させる方法を開発した。この時間は、短ければ10分間、または長ければ数時間でありうる。ナノ粒子がポリマーに懸濁したままとなる時間の長さはナノ粒子のサイズおよび組成に左右される。
【0123】
安定性はポリマーの選択、溶媒組成ならびに分散方法および封入物質の密度に左右される。例えば、封入プロセス中にナノ粒子が分散状態で維持されナノ粒子の沈降が防止されるように、有機ポリマー溶液の濃度を調節する必要がある。卵白を泡立てることと(機構的にではないとしても)理論的に類似した方法においては、安定状態になるまで、ポリマー溶液を超音波処理し、あるいはせん断力に付し(オープンブレードミキサーまたはローターステーターを5000〜25,000 RPMで使用する)、あるいは同心シャフトを使用して粉砕する。その代わりに又はそれに加えて、ナノ粒子がポリマー溶液に懸濁したままとなるように、ナノ粒子の表面特性を改変するために、溶媒および界面活性剤(存在する場合)を使用することが可能である。ついで溶媒を除去して、ポリマー内にナノ粒子が均一に分散した微粒子を得る。
【0124】
6.微粒子の製造方法
微粒子が製造されうる幾つかの方法が存在し、それらには、例えば、多層マイクロカプセル化、ホットメルトカプセル化、、相分離カプセル化、自然エマルション、溶媒蒸発マイクロカプセル化、溶媒除去マイクロカプセル化およびコアセルベーションが含まれる。これらの方法は当技術分野で公知である。該方法の詳細な説明はMathiowitzら,”Microencapsulation”, Encyclopedia of Controlled Drug Delivery, vol. 2, pp. 495-546, 1999, John Wiley & Sons, Inc.. New York, N.Y.に記載されており、後記に簡潔に示されている。好ましい方法は溶媒蒸発マイクロカプセル化である(特に、小さな粒子を得るための高い油相対水相比、およびポリマー相内の個別化断片の分散を改善するためのオレイン酸のような界面活性剤の添加)。溶媒蒸発の場合、最小濃度は0.1% w/v(ポリビニルアルコール対水)である。もう1つの好ましい方法は、均一な分散を確保するために溶融により液化されたポリマー内にナノ粒子を加えることを含む。
【0125】
ポリマーマトリックス内のナノ粒子の分散は、(1)ポリマーを溶媒和させるために使用される溶媒または溶媒の組合せ、(2)溶媒に対するポリマーの比、(3)封入されるナノ粒子のサイズ、および(4)ポリマーに対するナノ粒子の比率(すなわち、ナノ粒子ローディング)を変化させることにより増強されうる。ポリマーマトリックス内のナノ粒子の分散は界面活性剤の使用によっても増強されうる。
【0126】
ある実施形態においては、個別化物質の同一性を確認するために、微粒子の製造方法の実施中、例えば微粒子化後および/または封入後、個別化物質を分析する。一般に、微粒子は小さなバッチで製造される。
【0127】
A.ホットメルトマイクロカプセル化
ホットメルトマイクロカプセル化においては、封入する個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を加えてポリマーを溶融させる。この混合物を、ポリマーの融点より約10℃高い温度に加熱されたポリマー(しばしば油性)に対する非溶媒に溶融液滴として懸濁させる。該エマルションを激しい撹拌により維持しながら、非溶媒浴をポリマーのガラス転移温度未満に素早く冷却して、溶融液滴を固化させ、コア物質を捕捉させる。
【0128】
B.相分離マイクロカプセル化
相分離マイクロカプセル化においては、封入する個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を、撹拌しながらポリマー溶液に分散させる。該物質を均一に懸濁させるために絶えず撹拌しながら、ポリマーに対する非溶媒を該溶液にゆっくり加えてポリマーの溶解性を低下させる。溶媒および非溶媒中のポリマーの溶解性に応じて、ポリマーは沈殿し、または相が、ポリマーに富む相およびポリマーに乏しい相に分離する。適切な条件下、ポリマーに富む相におけるポリマーは連続相との界面に移動して、外側ポリマー殻を有する液滴内に個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を封入する。
【0129】
C.自然乳化
自然乳化は、温度の変化、溶媒の蒸発または化学的架橋剤の添加により乳化液体ポリマー滴を固化させることを含む。封入する個別化物質および封入剤の物理的および化学的特性が適当な封入方法を決定する。疎水性、分子量、化学的安定性および熱安定性のような要因が封入に影響を及ぼす。
【0130】
D.溶融溶媒蒸発法
溶融溶媒(melt-solvent)蒸発法においては、容易な操作(例えば、スパチュラでの撹拌)を可能にする十分な流動性の点までポリマーを加熱する。これを行うのに必要な温度はポリマーの固有の特性に左右される。例えば、結晶性ポリマーの場合には、該温度はポリマーの融点より高いであろう。所望の温度に達した後、個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を該溶融ポリマーに加え、該温度を維持しながら物理的に混合する。該溶融ポリマーおよび個別化物質を、それらの混合物がその特定の系に関する最高の均一性レベルに達するまで、混合する。該混合物を室温に冷却し、固化させる。この技術はポリマーにおける個別化物質の分散をもたらす。
【0131】
分散液を撹拌するために高せん断タービンを使用することが可能であり、これは、所望のローディングが達成されるまでポリマー溶液内にナノ粒子を徐々に加えることにより補完される。あるいは、撹拌中のナノ粒子の沈降を防ぐために、ポリマー溶液の密度が調節されうる。
【0132】
E.溶媒蒸発マイクロカプセル化
溶媒蒸発マイクロカプセル化においては、ポリマーを典型的には水不混和性有機溶媒に溶解し、封入する個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を有機溶媒中の分散液、懸濁液またはエマルション(乳濁液)として該ポリマー溶液に加える。この分散液、懸濁液またはエマルションをビーカーに加え、該系を激しく撹拌することにより、エマルション(すなわち、封入物質をエマルションとして加える場合には、第2のエマルション)を形成させる。該エマルションを安定化させるために、いずれかの適当な界面活性剤が使用されうる。典型的な界面活性剤には、ポリエチレングリコールまたはポリビニルアルコール(PVA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。絶えず撹拌しながら、有機溶媒を蒸発させる。蒸発はポリマーの沈殿も引き起こして、コア封入物質を含有する固体マイクロカプセルを形成し、この場合、該封入物質はエマルションまたは固体の形態である。
【0133】
溶媒蒸発法は、ポリマー内またはコポリマーマイクロカプセル内に液体コア物質を捕捉するために使用されうるが、該液体は、ポリマーが該物質を封入した後、通常の方法により除去される。
【0134】
溶媒蒸発法は、DNAを封入するための好ましい方法である。
【0135】
F.溶媒除去マイクロカプセル化
溶媒除去マイクロカプセル化においては、ポリマーを、典型的には、油混和性有機溶媒に溶解し、封入する個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を有機溶媒中の懸濁液または溶液として該ポリマー溶液に加える。封入する物質の分散を改善するために、界面活性剤が加えられうる。この懸濁液または溶液を、激しい撹拌下の油(ここで、該油はポリマーに対する非溶媒であり、ポリマー/溶媒溶液は該油に不混和性である)に加えることにより、エマルションを形成させる。絶えず撹拌しながら、油相内への拡散により有機溶媒を除去する。溶媒除去はポリマーの沈殿を引き起こして、コア物質を含有する固体マイクロカプセルを形成する。
【0136】
G.コアセルベーション
コアセルベーション技術を用いる種々の物質の封入法が当技術分野において、例えばGB-B-929 406; GB-B-929 401; 米国特許第3,266,987号、第4,794,000号および第4,460,563号に記載されている。コアセルベーションは、2以上の不混和性液体層内へのコロイド溶液の分離を含むプロセスである(Dowben, R. General Physiology, Harper & Row, New York, 1969, pp. 142-143を参照されたい)。コアセルベーションのプロセスにより、コアセルベートとして公知の2以上の相を含む組成物が生成されうる。該2相コアセルベート系を構成する成分は両方の相内に存在するが、コロイドに富む相は、コロイドに乏しい相より大きな成分濃度を有する。
【0137】
コアセルベーションプロセスにおいては、ポリマーまたはコポリマーを溶媒および非溶媒の混和性混合物に溶解し、この場合、非溶媒濃度は、相分離をもたらす濃度の直ぐ下の濃度(すなわち、曇点)である。液体コア物質を撹拌下で該溶液に加えて、エマルションを形成させ、該物質を滴として分散させる。溶媒および非溶媒を蒸発させる。この場合、溶媒はより速い速度で蒸発して、ポリマーまたはコポリマーは相分離を引き起こして、コア物質滴の表面に向かって移動する。ついで、この相分離溶液を撹拌下の或る容量の非溶媒中に移して、残留溶解ポリマーまたはコポリマーを沈殿させ、残留溶媒を形成膜から抽出する。その生成物は、液体物質のコアを有するポリマーまたはコポリマー殻から構成されるマイクロカプセルである。
【0138】
例えば、DNAを水に溶解することが可能であり、ついで溶解DNAのエマルションを有機ポリマー溶液中で形成させる。ついで、このエマルションを水溶液に加え、有機溶媒が蒸発するまで混合し(所望により、2キロベース(kb)未満の長さを有するDNAの場合には、高いせん断力が用いられうる)、ついで混合物全体を洗浄し、凍結させ、凍結乾燥させて、ポリマー内にDNAの乾燥粒子を得る。
【0139】
該物質は、乳化剤、例えばTween 80(登録商標)、オレイン酸、レシチン、Brij(登録商標)92、Span(登録商標)80、Arlacel(登録商標)83およびSpan(登録商標)85を使用して封入されうる。あるいは、該物質は、乳化剤を使用することなく封入されうる。
【0140】
H.多層マイクロカプセル化
多層ポリマーミクロスフェアは、2つのポリマーを溶媒に溶解することにより製造されうる。封入する個別化物質を該ポリマー溶液に分散させ、該混合物を連続相に懸濁させる。ついで溶媒をゆっくりと蒸発させて、1つのポリマーにより形成された内側コアと第2ポリマーの外層とを有するミクロスフェアを形成させる。連続相は有機油、揮発性有機溶媒または水溶液(ポリマーの第1混合物に可溶性ではなく、該混合物を撹拌すると最初の2つのポリマーの相分離を引き起こす第3ポリマーを含有するもの)のいずれかでありうる。
【0141】
状態図により決定される特定の濃度において互いに可溶性ではないいずれかの2以上の異なる非生分解性疎水性ポリマーが使用されうる。多層マイクロカプセルは均一寸法のポリマー層を有し、ある範囲の物質を取り込みうる。
【0142】
2層ミクロスフェアの製造の場合には、各ポリマーをそのポリマーに対する適当な溶媒に別々の容器内で溶解し、界面活性剤、例えばオレイン酸と混合し、個別化物質(所望により、ナノ粒子の形態)を該ポリマー溶液の1つに加える。ついで、それらの2つ(またはそれ以上)のポリマー溶液を混合し、ついで該混合物を、界面活性剤、例えばPVAを含有する大容量の水相に加えて、エマルション(水および幾らかの界面活性剤の水溶液)を形成させる。高いせん断力を適用する。1〜5ミクロンの範囲の小さな微粒子サイズ、またはより一層小さな微粒子、例えば1〜2ミクロンの範囲の微粒子を確保するために、油対水相比は典型的には1:20である。
【0143】
第1ポリマーから構成されるポリマーコアおよび第2ポリマーの均一コーティング、およびそれらのポリマーの少なくとも1つに封入された物質を含有するミクロスフェアは、米国特許第4,861,627号に記載されているとおりに製造されうる。
【0144】
I.溶媒蒸発はナノ粒子マイクロカプセル化に有利である
溶媒蒸発マイクロカプセル化は、ナノ粒子の封入(カプセル化)に十分な時間にわたってポリマー溶液中のナノ粒子の安定化をもたらしうる。ある実施形態においては、ナノ粒子はポリマー溶液中で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30分間にわたって安定化される。ある実施形態においては、ナノ粒子はポリマー溶液中で少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30分間にわたって安定化される。ある実施形態においては、ナノ粒子はポリマー溶液中で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30分未満の時間にわたって安定化される。これらの任意の値が、ナノ粒子がポリマー溶液において安定化される時間の長さの範囲を定めるために用いられうる。例えば、ナノ粒子はポリマー溶液において約10分間〜約30分間にわたって安定化されうる。
【0145】
個別化物質を分散相(典型的には揮発性有機溶媒)内で安定化させることは、フィルムキャスティング、溶媒蒸発、溶媒除去、噴霧乾燥、転相および多数の他の方法を含む、分散相に基づくマイクロカプセル化のほとんどの方法に有用でありうる。
【0146】
懸濁化ナノ粒子を分散相内で安定化させることにより、ナノ粒子はポリマー溶液全体において、およびマイクロカプセル化のプロセス中に形成する生じたポリマーマトリックス全体において均一に分散したままとなる。
【0147】
溶媒蒸発マイクロカプセル化は幾つかの利点を有する。例えば、溶媒蒸発マイクロカプセル化は、ナノ粒子を封入するために使用されうる均一懸濁液の形成を促進する最良のポリマー-溶媒-ナノ粒子混合物の決定を可能にする。溶媒蒸発マイクロカプセル化はナノ粒子をポリマー溶液内で安定化させる。ナノ粒子のこの安定化は小規模操作中に有利である。なぜなら、不溶性粒子の懸濁液を短時間静置させて、該プロセスをより確かなものとし、クライアント間の混合を回避することが可能だからである。溶媒蒸発マイクロカプセル化は、封入物質を放出しない微粒子の生成を可能にする。溶媒蒸発マイクロカプセル化は、ナノ粒子または個別化物質の非常に低いローディングを可能にすることにより、および最小孔を有する微粒子を生成させることにより、他のカプセル化法で生じる「バースト効果(burst effect)」、すなわち、投与から1時間以内の封入物質の放出の問題を回避する。
【0148】
7.小バッチ製造
幾つかの実施形態においては、該組成物を小さなバッチで製造する。バッチのサイズは、個別化物質の性質および量によって、またはエンドユーザーの数によって制限されうる。
【0149】
好ましい実施形態においては、1つ又は少数の個体による個別的使用のために個別化物質をポリマー微粒子内に封入する。したがって、個別化物質が封入されたポリマー微粒子の小さなバッチを製造することが好ましい。幾つかの実施形態においては、製造バッチサイズは単一個体による単一使用のためのような小さなものでありうる。他の実施形態においては、好ましいバッチサイズは少数、例えば、せいぜい2、せいぜい3、せいぜい4、せいぜい5、せいぜい6、せいぜい7、せいぜい8、せいぜい9またはせいぜい10個体による単一使用のためのような小さなものでありうる。他の実施形態においては、バッチサイズは同一個体による複数使用のためのような小さなものでありうる。
【0150】
他の実施形態においては、小バッチ製造のサイズは、入手可能な個別化物質の量によって決定されうる。例えば、個別化物質としてDNAを使用する場合には、頬スワブにより1個体から得られるDNAの量は、単一レシピエントによる単一使用のためのバッチを与えるのに十分な程度の小さいものでしかないかもしれない。好ましい実施形態においては、単一の小さなバッチは、1つのエンドユーザーによる単一使用のための、個別化物質が封入された微粒子の十分な量を与える。
【0151】
好ましい実施形態においては、小バッチ製造方法は、個別化物質が封入された、乾燥形態の約1〜10gの微粒子を与え、好ましくは、個別化物質が封入された、乾燥形態の約1〜2gの微粒子を与える。例えば、幾つかの実施形態においては、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0または10グラムの微粒子を製造する。幾つかの実施形態においては、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0または10グラム未満の微粒子を製造する。これらの任意の値が、微粒子が製造される量の範囲を定めるために用いられうる。例えば、0.5〜5グラムまたは2〜5グラムの微粒子が製造されうる。特定の実施形態においては、約2グラムの微粒子を製造する。
【0152】
IV.使用方法
本明細書に記載されている組成物は、単独で、または担体と組合せて、または物質への添加物、例えば刺青インクへの添加物として、典型的には注射による皮膚への運搬のために使用されうる。
【0153】
1.組成物としての使用
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている組成物は個人的に有意義な組成物としての使用に適している。該組成物の使用はエンドユーザーにより選択されうる。例えば、該組成物は、個人的に有意義な物質を長期間にわたって保持するために、エンドユーザーにより使用されうる。エンドユーザーは該組成物を保存し、または他の人への贈り物として該組成物をプレゼントすることを選択するかもしれない。あるいは、エンドユーザーは、他の物質への添加物として該組成物を使用することを選択するかもしれない。
【0154】
幾つかの実施形態においては、該組成物を個体の所望の皮膚部位に注射により投与する。典型的には、その位置における封入個別化物質の存在を示すために、該部位はマーキングを含有し、あるいは該部位にマーキングが加えられる。
【0155】
2.添加物としての使用
ある実施形態においては、個別化物質は刺青インクへの添加物として使用されうる。該添加物は、人または場所または事象との物理的関係を有する一種の刺青を入れるために使用されうる。
【0156】
個別化インク刺青を入れることは人、物、場所または事象との物理的な関係を築く。なぜなら、個別化刺青は個別化物質を刺青インク内に、したがって、皮膚に表される像(イメージ)内に含むからである。
【0157】
商業的に入手可能な刺青インク色素は、典型的には、着色のための重金属塩をしばしば含む粉末の形態の組成物である。刺青インク色素を、皮膚への注射のために、および真皮内に色素を分布させるために、担体、好ましくはアルコールまたは水に溶解する。アルコールは抗微生物効果をももたらしうる。担体と予め混合された色素を含有する予め分散したインクも商業的に入手可能である。
【0158】
ある実施形態においては、マイクロカプセル化個別化物質は、刺青師による担体との混合に適した乾燥粉末形態で製剤化される。幾つかの実施形態においては、マイクロカプセル化個別化物質は担体と混合され、予め分散した溶液として供給されうる。個別化物質と共に使用される刺青インクは、当技術分野で公知のいずれかの所望の色のものでありうる。
【0159】
幾つかの実施形態においては、個別化物質を含む刺青インクは、個別化物質を含有する微粒子を、液体、例えば水、グリセリンまたはウィッチヘーゼルに懸濁された刺青インクと混合することにより製造されうる。微粒子および刺青インクは、刺青インクと共に微粒子を振とう、撹拌、ボルテックスまたは光超音波処理に付すことより混合されうる。幾つかの実施形態においては、微粒子と刺青インクとの混合物中の微粒子の濃度は0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10% w/wである。
【0160】
個別化物質を含有する微粒子を刺青インクに懸濁させたら、少量(例えば、10グラム未満)の微粒子-装飾刺青インクスラリーをカップまたは他の容器(刺青針または針セットを含む刺青装置を該カップまたは容器内に浸すのに十分なサイズのもの)内に注ぐことにより、刺青インクを個体に投与することが可能である。微粒子-刺青インク混合物を含むカップまたは容器内に刺青針を浸し、ついで該針を皮膚に突き刺して微粒子-刺青インク混合物を皮膚内に注射(注入)することにより、刺青を入れることが可能である。
【0161】
個別化物質は、皮膚に適用された場合にレシピエントにおいて非免疫原性でなければならない。幾つかの実施形態においては、個別化物質をナノ粒子および/または微粒子内に封入した後、それを刺青インクに加えて、レシピエントにおける免疫応答を防ぐ。
【0162】
V.キット
エンドユーザーから個別化物質を得るためのキット、および封入個別化物質をエンドユーザーに送り届けるためのキットを提供する。個別化物質を得、ついで封入個別化物質を単離し、調製し、エンドユーザーに運搬するエンド・ツー・エンド(end-to-end)プロセスを示すフローチャートを
図2に示す。典型的な個別化物質として使用されるDNAに関する類似フローチャートを
図1に示す。
【0163】
図1に例示されているプロセスにおいては、頬スワブキットを顧客に提供する。顧客は頬スワブを使用して、顧客にとって関心のあるヒトまたは非ヒト動物からサンプルを得る。ついで顧客はサンプルを郵送または他の手段により検査施設へ送る。検査施設はDNAを単離し、(必要に応じて)増幅し、(必要に応じて)精製し、ついでDNAを微粒子内に封入する。ついで封入DNAを粉末へと凍結乾燥する。所望により、該粉末を、注射に適した担体に加える(示されていない)。ついで該粉末または溶液を顧客に送り届ける。ついで顧客は該溶液または粉末を刺青店に送り届け、該店はそれを顧客における所望の部位に注射し、またはそれを刺青インクに加え、顧客に刺青を入れる。
【0164】
図2に例示されているプロセスにおいては、収集キットを顧客に提供する。顧客は、顧客にとって関心のあるサンプル源からのサンプルを収集容器(例えば、バイアル)に入れる。ついで顧客はサンプルを郵送または他の手段により検査施設へ送る。検査施設は個別化物質から1以上の化合物を抽出し、所望により精製および/または滅菌し、ついで個別化物質を微粒子内に封入する。ついで封入個別化物質を粉末へと凍結乾燥する。所望により、該粉末を、注射に適した担体に加える(示されていない)。ついで該粉末または溶液を顧客に送り届ける。ついで顧客は該溶液または粉末を刺青店に送り届け、該店はそれを顧客における所望の部位に注射し、またはそれを刺青インクに加え、顧客に刺青を入れる。
【0165】
幾つかの実施形態においては、キットは、個別化物質のサンプルを得るための装置を提供する。該装置は、提供される個別化物質の性質に適合化されうる。例えば、個別化物質がDNAである場合には、キットは泡または綿棒スワブ、該スワブ用の保護容器および使用説明を含みうる。個別化物質が砂である場合には、キットは防水容器および使用説明を含みうる。
【0166】
他の実施形態においては、キットは、エンドユーザーによる使用のための最終製品を提供する。これらの実施形態においては、キットは個別化物質、担体および使用説明を含みうる。キットは、エンドユーザーの好みに応じてカスタマイズされうる。例えば、キットは粉末形態の個別化物質および担体を含有する。他の実施形態においては、キットは、担体と予め混合された個別化物質を含有しうる。
【0167】
キットはエンドユーザーに送り届けられうる。あるいは、キットは刺青店に送り届けられることが可能であり、該刺青店においてエンドユーザーによりキット成分が使用されうる。
(実施例)
材料
医学等級PMMA(Mw=35 kDa; 残留MMA単量体<0.1%)をVista Optics Ltd.(Widnes, UK)から購入した。PVA(Mw=25 kDa; 88% 加水分解)をPolysciences, Inc.(Warrington, Pa., USA)から購入した。ジクロロメタン(DCM; Burdick and Jackson, Muskegon, Mich., USA)、酢酸エチル(EA; Mallinckrodt, Hazelwood, Mo., USA)および1-オクタノール(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo., USA)は分析等級溶媒であった。溶媒蒸発マイクロカプセル化により粒子を製造した。
【0168】
実施例1.ブランク ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)微粒子の製造
材料および方法
500mgのPMMA(約25,000 MW)を20ml ガラスシンチレーションバイアル内で秤量し、15mlのジクロロメタン(DCM)をPMMAに加え、30秒間ボルテックスし、溶液が透明になるまで5分間超音波処理した(1)。この時点で、該ポリマーは完全に溶解し、粒状物は存在しなかった。
【0169】
250mlの界面活性剤、1.0% ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(MW≒25,000 Da; 88% 加水分解)を1L Virtis(登録商標)フラスコ内に注いだ(2)。
【0170】
100mlの0.5% PVA(MW≒25,000 Da; 88% 加水分解)を800mlビーカー内に注いだ(3)。該ビーカーを、3,000 RPMに設定された速度のインペラ(ビーカーの底から約0.5cm)下に配置した。
【0171】
Virtis(登録商標)Cycloneを“55”(13,750 RPM)に設定し、ついで100マイクロリットルの1-オクタノールを1% PVA溶液(2)に加え、5分間撹拌した(4)。PMMA溶液(1)を1-L Virtis(登録商標)フラスコ内の(4)に加えた。この混合物をサイクロン(Cyclone)上で13,750 rpmで15分間混合した。
【0172】
内容物をVirtis(登録商標)フラスコから、0.5% PVAを含有する800mlビーカー(3)内に注ぎ、約24時間撹拌して粒子のスラリーを形成させた。
【0173】
粒子のスラリーを50ml Eppendorf(登録商標)チューブ内に注ぎ、キャップをねじ込み、4,000 RPM(3345×g)で20分間遠心分離した。50ml ピペットチップを使用してPVA溶液を吸引除去した。この溶液を更なる評価のために維持した。40mlの蒸留水をチューブに加え、混合し、十分に振とうした後、粒子を蒸留水に再懸濁させた。キャップをねじ込み、4,500 RPMで更に20分間遠心分離した。50mlピペットチップを使用して蒸留水を吸引除去した。40mlの蒸留水を該チューブに加え、混合し、十分に振とうした後、粒子を蒸留水に再懸濁させた。キャップをねじ込み、4,500 RPM(3345×g)で更に20分間遠心分離した。50mlピペットチップを使用して蒸留水を吸引除去した。粒子のスラリーを1個または2個のチューブ内で一緒にし、急速冷凍し、48〜72時間凍結乾燥した。
【0174】
変法:前記の工程を、PMMAの異なる質量(約1M MW)で反復した。唯一の相違はPMMA溶液の形成において生じた。
【0175】
実施例1の変法において、500mgのPMMAを50mlファルコン(Falcon)チューブ内で秤量し(約1M MW)、30mlのジクロロメタン(DCM)をPMMAに加え、ボルテックスし(30秒間)、溶液が透明になるまで超音波処理した(5分間)。
【0176】
結果
この方法において使用したPMMAの約80%がブランクPMMA微粒子を形成した。
【0177】
実施例1の変法において、実質的に同じ収率が得られた。
【0178】
実施例2.低いローディングのDNAを含有するポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)微粒子、およびPMMA微粒子を含む刺青インクの製造
材料および方法
1000mgのPMMA(25,000 MW)を40ml ガラスシンチレーションバイアル内で秤量した(1)。ミトコンドリア遺伝子座において増幅されたDNAを調製した。10% キレックス(Chelex)樹脂の存在下で10分間煮沸することにより、DNAを、集めたヒト頬粘膜細胞から抽出した。抽出されたDNAの一部を、ヒトミトコンドリアゲノム(15,971-16411)の非コード領域に特異的な以下のプライマーを使用してPCR増幅した。
5'-TTAACTCCACCATTAGCACC-3' (配列番号1)
5'-GAGGATGGTGGTCAAGGGAC-3' (配列番号2)
PCR産物を、Invitrogen PureLink Quick Gel Extraction & PCR Purification Comboキットを使用して精製した。精製されたDNAの一部をAlexaFluor 488で標識し、過剰の標識を除去するためにエタノール沈殿させ、水に再懸濁させ、残りのDNAと混合して、1マイクロリットル当たり5.6ナノグラムのDNAを含有する封入に適した溶液を得た。該DNAを水に溶解し、該溶液の濃度は5マイクログラム/mLであった(2)。0.56マイクログラムに相当する約100マイクロリットルのDNA溶液を微粒子製造のために取っておいた。
【0179】
30mlのジクロロメタン(DCM)をPMMAバイアル(1)に加えた。10マイクロリットルのSpan(登録商標)80(ソルビタンモノオレアート)をPMMA溶液に加え、15分間超音波処理した(3)。DNA(2)をPMMA溶液(3)中にピペッティングし、10,000 rpmで1分間混合してエマルション(4)を形成させた。
【0180】
250mlの界面活性剤、1.0% PVA(MW≒25,000 Da; 88% 加水分解)を1L Virtis(登録商標)フラスコ内に注いだ。Virtis(登録商標)Cycloneを10000 RPMに設定した。250マイクロリットルの1-オクタノールを1% PVA溶液に加え、1分間混合し、ついで5分間放置した(5)。
【0181】
PMMA-DNAエマルション(4)を1.0% PVA溶液(5)に加え、7,000 rpmで15分間混合した(6)。
【0182】
200mlの0.5% PVA(MW≒25,000 Da; 88% 加水分解)を800mlビーカー内に注いだ。該ビーカーをインペラ(ビーカーの底から約0.5cm)下に配置し、該インペラ速度を3,000 RPMに設定した。
【0183】
Virtis(登録商標)フラスコ(6)からの内容物を、0.5% PVAを含有する800mlビーカー内に注ぎ、約24時間撹拌して粒子のスラリーを形成させた。
【0184】
粒子のスラリーを50ml Eppendorf(登録商標)チューブ内に注ぎ、キャップをねじ込み、4,000 RPM(3345×g)で20分間遠心分離した。50ml ピペットチップを使用してPVA溶液を吸引除去した。この溶液を更なる評価のために維持した。40mlの蒸留水をチューブに加え、混合し、十分に振とうした後、粒子を蒸留水に再懸濁させた。必要に応じて、チューブの底に付着した粒子凝集物を破壊するために超音波処理を行った。キャップをねじ込み、4,500 RPMで更に20分間遠心分離した。50mlピペットチップを使用して蒸留水を吸引除去した。40mlの蒸留水を該チューブに加え、混合し、十分に振とうした後、粒子を蒸留水に再懸濁させた。キャップをねじ込み、4,500 RPM(3345×g)で更に20分間遠心分離した。50mlピペットチップを使用して蒸留水を吸引除去した。粒子のスラリーを1個または2個のチューブ内で一緒にし、急速冷凍し、48〜72時間凍結乾燥した。
【0185】
結果
この方法において使用したPMMAの約60%が、少量のDNAを含有するPMMA微粒子を形成した。
【0186】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して該粒子の形態学的特徴を観察した。一般に、該粒子は形状が球状であり、平滑な表面の形態を有していた。高い倍率(4,000×)においてさえも、孔は全く視認できなかった。該ミクロスフェアは、一般に、1〜2マイクロメートルの粒径を有していた。顕微鏡写真においてはポリマーまたはDNAの断片は全く観察されなかった。蛍光顕微鏡下のこれらの微粒子の観察は、それらの一部が、AlexaFluor 488で標識されたDNAを含有することを示した。
【0187】
前記のDNAを含有する1gのPMMA微粒子を19gの装飾用黒色刺青インクと混合し、該混合物を手で振とうすることにより、個別化物質を含有する刺青インクを製造した。該装飾用黒色刺青インクは約70% (w/w)の液体混合物(水、グリセリンおよびウィッチヘーゼル)および約30% (w/w)のD&C Black No. 2カーボンブラック色素を含んでいた。