(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-503984(P2017-503984A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】アイソレーティング・デカップラ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/36 20060101AFI20170113BHJP
F16D 43/21 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
F16H55/36 H
F16D43/21
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-548245(P2016-548245)
(86)(22)【出願日】2015年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2015011439
(87)【国際公開番号】WO2015112403
(87)【国際公開日】20150730
(31)【優先権主張番号】14/162,564
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】デディ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディーン
【テーマコード(参考)】
3J031
3J068
【Fターム(参考)】
3J031AA04
3J031CA03
3J068AA02
3J068AA07
3J068BA02
3J068BB04
3J068EE12
3J068GA01
(57)【要約】
アイソレーティング・デカップラは、シャフトと、シャフトに軸支されたプーリと、プーリに係合する捻りバネと、シャフトに摩擦係合可能なラップスプリングとを備え、捻りバネとラップスプリングは、各々が巻き方向に捻りの負荷が作用するように、直列に接続され、ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備え、ラップスプリングはオーバートルク状態において、ラップスプリングを解放方向に付勢するプーリに接触することによりシャフトから一時的に解放可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(1)と、
前記シャフトに軸支されたプーリ(2)と、
前記プーリに係合する捻りバネ(10)と、
前記シャフトに摩擦係合可能なラップスプリング(11)とを備え、
前記捻りバネとラップスプリングは、各々が巻き方向に捻りの負荷が作用するように、直列に接続され、
前記ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面(120)を備え、
前記ラップスプリングはオーバートルク状態において、前記ラップスプリングを解放方向に付勢する前記プーリに接触することにより前記シャフトから一時的に解放可能である
アイソレーティング・デカップラ。
【請求項2】
前記ラップスプリングが前記捻りバネの径方向内側に配置される請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項3】
前記捻りバネが前記ラップスプリングに係合するために径方向内側に突出する部材を備える請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項4】
前記ラップスプリングが、前記プーリに一時的に係合するための部材を備える請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項5】
前記プーリが軸方向に延びる内側円筒状部分を備え、前記内側円筒状部分が軸受に係合し、
前記捻りバネが前記内側円筒状部分の径方向外側に配置される
請求項1に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項6】
前記軸受がプーリ負荷作用部の中央に配置される請求項5に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項7】
シャフトと、
プーリ負荷作用部の中央に配置された軸受において前記シャフトに軸支されたプーリと、
前記プーリに係合する捻りバネと、
前記シャフトに摩擦係合可能なラップスプリングとを備え、
前記捻りバネとラップスプリングは、各々が巻き方向に捻りの負荷が作用するように、直列に接続され、
前記ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備え、
前記ラップスプリングはオーバートルク状態において、前記ラップスプリングを解放方向に付勢する前記プーリに接触することにより前記シャフトから一時的に解放可能である
アイソレーティング・デカップラ。
【請求項8】
シャフトと、
プーリ負荷作用部の中央に配置された軸受において前記シャフトに軸支されたプーリと、
前記プーリに係合する捻りバネと、
前記捻りバネの径方向内側に配置され、負荷が作用する状態において前記シャフトに摩擦係合可能なラップスプリングとを備え、
前記捻りバネとラップスプリングは、各々が巻き方向に捻りの負荷が作用するように、直列に接続され、
前記ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備え、
前記ラップスプリングはオーバートルク状態において、前記ラップスプリングを解放方向に付勢する前記プーリに接触することにより前記シャフトから一時的に解放可能である
アイソレーティング・デカップラ。
【請求項9】
前記プーリが軸方向に延びる内側円筒状部分を備え、前記内側円筒状部分が軸受に係合し、
前記捻りバネが前記内側円筒状部分の径方向外側に配置される
請求項8に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項10】
前記捻りバネが前記ラップスプリングに係合するために径方向内側に突出する環状部材を備える請求項8に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【請求項11】
前記ラップスプリングが、オーバートルク状態において前記プーリに一時的に係合するための部材を備える請求項8に記載のアイソレーティング・デカップラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソレーティング・デカップラに関し、特に、ラップスプリングを備え、ラップスプリングが第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備えたアイソレーティング・デカップラに関する。
【背景技術】
【0002】
良好な燃費という利点により、乗用車の分野に利用されるディーゼルエンジンが増加している。さらに、ガソリンエンジンは燃料効率を改善するために圧縮比が増大している。この結果、ディーゼルおよびガソリンエンジンのアクセサリ駆動システムは、上述したエンジンの変化によって、クランクシャフトからの増大した振動に打ち勝たなければならない。
【0003】
増大したクランクシャフトの振動に加えて高い、加減速比および高いオルタネータの慣性のため、エンジンのアクセサリ駆動システムはしばしば、ベルトスリップによるベルト軋み音を経験する。これはベルトの寿命を短くする。
【0004】
クランクシャフトのアイソレータ/デカップラおよびオルタネータのデカップラ/アイソレータは、エンジンの動作スピード範囲において振動を除去するため、およびベルトの軋み音を制御するために、高い角振動を有するエンジンに広く用いられてきている。
【0005】
この技術の代表は米国特許第7,153,227号明細書であり、これは、サーペンタイン駆動システムにおけるオルタネータプーリのためのデカップラが、スプリング保持部材を介してハブ構造にオルタネータプーリを連結する弾性ヘリカルスプリングを有することを開示する。ブッシュがスプリング保持部材とハブ構造の間に配置され、これらの間の摺動係合を促進する。環状のスリーブ部材がスプリング部材とオルタネータプーリの間に配設されて、これらの間の摩擦係合を促進する。スプリング部材はハブ構造に対して一端部において連結され、スプリング保持部材に対して反対側の端部において連結される。弾性スプリング部材は、被駆動回転運動において、オルタネータプーリに対して反対方向への瞬時の相対捻り運動を可能にしつつ、オルタネータシャフトがオルタネータプーリと同じ方向に回転するように、オルタネータプーリの被駆動回転運動をサーペンタインベルトによってハブ構造に伝達する。
【0006】
必要なものは、ラップスプリングを備え、ラップスプリングが第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備えたアイソレーティング・デカップラである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の主な特徴はラップスプリングを備えたアイソレーティング・デカップラであって、ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備える。
【0008】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記載と添付された図面により明確になる。
【0009】
本発明は、シャフトと、シャフトに軸支されたプーリと、プーリに係合する捻りバネと、シャフトに摩擦係合可能なラップスプリングとを備え、捻りバネとラップスプリングは、各々が巻き方向に捻りの負荷が作用するように、直列に接続され、ラップスプリングは第1の断面寸法と第2の断面寸法を有する不定断面を備え、ラップスプリングはオーバートルク状態において、ラップスプリングを解放方向に付勢するプーリに接触することによりシャフトから一時的に解放可能であるアイソレーティング・デカップラである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここに組み込まれ、明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、その記述とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本装置の断面図である。オルタネータ・アイソレーティング・デカップラ100はプーリ2、捻りバネ10、シャフト1、軸受7、端部キャップ5、スラストワッシャ3、6、22、およびラップスプリング11を備える。
図2は本装置の分解図である。
【0012】
シャフト1は、回転軸A−Aから径方向に延びる平板状端部142を備える。円筒状部材140が端部142の外側部から軸A−Aに平行に軸方向に延びている。部材140はプーリ2内において協働凹部21に係合し、これによりラビリンス・シールを形成する。ラビリンス・シールは異物が本装置に侵入することを阻止する。
【0013】
プーリ2は、単一のニードル軸受7を介してシャフト1により軸支される。プーリ2は、スラストワッシャ3とスラストワッシャ6の間において、シャフト1の軸方向に配置される。スラストワッシャ6は、ワッシャ6の一部の周りに延びるギャップ61を有する。プーリ2の部材24はギャップ61を通って延びる。スラストワッシャ6はシャフト1の肩部15に当接する。スラストワッシャ3、プーリ2、軸受7、およびスラストワッシャ6は、端部キャップ5によってシャフト1の所定の位置に保持される。端部キャップ5はシャフト1に圧入される。
【0014】
プーリ2は内側円筒状部分23を有し、これはシャフト1とプーリ2に対して平行に軸方向に延びる。捻りバネ10はプーリ2および部分23の間の部分に配置される。部分23は、プーリ2が本装置の全長にわたって過度に延びることなく、軸受7に係合する手段として作用する。部分23により、軸受7は、捻りバネ10を収容する余地を残しつつ、プーリ2の覆いの中に配置される。軸受7は、マルチリブドベルト(図示せず)に係合するプーリの負荷受け部Lの中央部Mに配置される。軸受7は、プーリ2がシャフト1に軸支される唯一の手段であり、この構成は、2つの軸受、すなわちプーリの各端部に1つの軸受を設ける必要性をなくす。シャフト1および端部キャップ5はオルタネータ・シャフト(図示せず)に設けることができる。
【0015】
捻りバネ10の一端はプーリ2に連結される。捻りバネ10の他端はラップスプリング11に連結される。ラップスプリング11はシャフト1に摩擦係合する。捻りバネ10とラップスプリング11は直列に接続される。
【0016】
動作中、ラップスプリング11はシャフト1に巻かれる。ラップスプリング11は、軸A−Aに関して、捻りバネ10の径方向内側に配置される。巻き方向に負荷がかかったとき、ラップスプリングの直径は減少し、これによりラップスプリング11はシャフト1を摩擦によりグリップする。逆方向のトルクがかかるとき、シャフト1は、オルタネータのような連結された負荷の慣性を与えられたプーリ2に対して、僅かに過回転する。ラップスプリング11とシャフト1の間に摩擦係合が付与されると、ラップスプリング11は僅かに解放し、これによりその直径が増加して、ラップスプリング11はシャフト1に対する摩擦によるグリップを部分的あるいは完全に解放する。これによりシャフト1は、プーリ2が減速するときに、過回転し続ける。このように、ラップスプリング11はワンウェイクラッチと同様にして作用する。
【0017】
典型的なオルタネータにおいて、最大トルクは約16Nmから20Nmの範囲である。このトルクは、ラップスプリング11を介して捻りバネ10により、プーリ2の回転方向にプーリ2からシャフト1に伝達される。捻りバネ10は、トルクがシャフト1に伝達されるとき、巻き方向に負荷をかけられる。
【0018】
図3は本装置の詳細斜視図である。捻りバネ10はこの図から省略されている。オーバートルク状態では、ラップスプリング11はまたシャフト1から解放可能である。トルクが増加すると、プーリ2はシャフト1に対して漸増的に前進する。プーリ2が前進し続けると、部分23の部材24はラップスプリング11の部材85に係合する。部材85はラップスプリング11の端部から径方向外方に突出する。部材24は部分23から軸方向に延びる。正常トルク状態において、部材24は部材85に係合しない。伝達されるトルクが増加すると、部材24は部材85に接触し、そしてラップスプリング11の解放方向に押圧する。これは延いてはラップスプリング11を部分的に解放し、これによりラップスプリング11の直径を増加させる。直径の増加は、シャフト1からラップスプリング11の摩擦によるグリップを部分的あるいは完全に解放し、これにより、オーバートルク状態において、プーリ2はシャフト1を過回転させる。この特徴は、オーバートルク状態において本装置が損傷することを防止する。
【0019】
図4はラップスプリングの詳細斜視図である。ラップスプリング11は機械加工されたスプリングであり、捻りバネ10に永久に連結される。捻りバネ10も同様に機械加工されたスプリングである。ラップスプリング11は、その長さ方向に沿って変化する断面形状を有する。ラップスプリング11は3つの部分、すなわち一定断面部分110、不定断面部分120、およびハブ130を有する。
【0020】
「機械加工された」とは、ワインディングに加えて、スプリングに施されるあらゆる製造工程を指し、例えば、均一な円筒に斜めのスロットを切り込んでスプリングを成形することも指す。それはまた、円筒の内面および外面を好ましいODおよびID寸法に機械加工することも指し、あるいはスプリングに螺旋を機械加工して、断面の寸法および形状を変化させることを指す。機械加工は一般に、スプリングの動作性能を決定するために、スプリングの1以上の物理的特性を調整あるいは変化させることを指す。
【0021】
ラップスプリング11のハブ130は捻りバネ10の端部に取付けられる。特に、ハブ130は捻りバネ10の環状端部150内に圧入される。ラップスプリング11は2つの不定断面部分を有する。部分120は、ハブ130との接続部121における2.4mm×1.2mmの断面と、一定断面部分110との接続部1210における0.6mm×1.2mmの第2の断面とを有する。ハブ130は、ラップスプリング11の不可欠な部分であるが、スプリングの螺旋すなわち巻きを有しない。部材85は部分110の端部から延びる。
【0022】
この明細書に含まれる全ての数値は、本発明を説明するための目的のみに示され、如何なる方法においても本発明の幅すなわち範囲を限定することを意図していない。
【0023】
ハブ130と不定断面部分120の間の接続部121において、ラップスプリングの張力は16−20Nmのトルクを生じる。不定断面部分120と一定断面部分110の間の接続部1210において、ラップスプリングの張力は、捻りバネにより伝達される最大トルクすなわち2−3Nmより約6.5から10倍小さいトルクを生じる。これは、不定断面部分120とシャフト1の間の摩擦がシャフト1に約17Nmから18Nmのトルクを発生させるからである。一定断面部分110はこのトルクを吸収する。部分110の断面は約0.6mm×1.2mmである。ラップスプリング110の巻き数は約9から10である。
【0024】
不定断面部分120とシャフト1の間には、干渉がないか、または非常に小さいIDがある。ラップスプリング110は、シャフト1に対して約2から3Nmのトルクを伝達するのに十分な、シャフト1に対するIDの締りばめを有する。ハブ130が捻りバネ10によって引っ張られると、不定断面部分120も引っ張られ、部分110についても同様である。
【0025】
図5は捻りバネの斜視図である。捻りバネ10は、径方向内側に突出する突出部材150を有する。ラップスプリング11のハブ130は、環状の突出部材150内に圧入され、これにより捻りバネ10の内部においてラップスプリング11に接続し、軸方向に位置決めする。従来技術とは異なり、本装置は捻りバネとラップスプリングの間にスプリングを有しない。
図6は
図5の破断斜視図である。
【0026】
本装置の利点は、特に軸方向がより小さいワンウェイクラッチ(ラップスプリング11)と、軸受7の中心位置によるより小さい全長と、ラップスプリングを固定するための実質的により小さい干渉および摩擦トルクの要求と、過回転のときの実質的により小さい抗力トルクと、ラップスプリングとシャフトの間のより小さい摩擦によるより低い作動温度とを含む。
【0027】
本発明の一形態を説明したが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と関連した部分を変形することは当業者にとって自明である。
【国際調査報告】