(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-504493(P2017-504493A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(54)【発明の名称】内部冷却空洞を有する回転切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20170120BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20170120BHJP
B23B 51/06 20060101ALI20170120BHJP
B23D 77/00 20060101ALI20170120BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20170120BHJP
B23B 27/10 20060101ALN20170120BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23C5/28
B23B51/06 D
B23D77/00
B23Q11/10 D
B23B27/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-547601(P2016-547601)
(86)(22)【出願日】2015年2月2日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月12日
(86)【国際出願番号】US2015014100
(87)【国際公開番号】WO2015117079
(87)【国際公開日】20150806
(31)【優先権主張番号】61/934,257
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516213932
【氏名又は名称】5エムイー・アイピー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ジョージウー,ジョージ
【テーマコード(参考)】
3C011
3C022
3C037
3C046
3C050
【Fターム(参考)】
3C011EE06
3C022KK01
3C037AA02
3C037DD06
3C046BB06
3C050EB06
3C050EB09
(57)【要約】
極低温流体によって内部から冷却される回転切削工具は、概して円筒形の外形を有する。少なくとも1つのフルートが切削工具に形成され、ワークピースを切削するために切削刃がフルートの外縁に形成される。極低温冷媒のための内部低温流送達路は切削刃に近接する。冷媒空洞は、極低温冷媒を内部低温流送達路に供給するために切削工具に形成され、極低温冷媒のための帰還路は、低温流送達路の下流にある。排出口は、極低温冷媒を大気へ排出するために帰還路に結合される。排出口は切削刃から離れており、それにより、極低温冷媒がワークピースを冷却し強靱化することがないように、極低温冷媒は切削刃及びワークピースから離間して排出される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体によって内部から冷却される回転切削工具であって、
概して円筒形の外形を有する工具本体と、
前記切削工具の前方部に形成された少なくとも1つのフルート、及びワークピースを切削するために、前記少なくとも1つのフルートの外縁に形成された切削刃と、
前記切削工具内の極低温冷媒のための内部低温流送達路であって、前記少なくとも1つのフルートの前記切削刃に近接する内部低温流送達路と、
極低温冷媒を前記内部低温流送達路に供給するために、前記切削工具に形成された冷媒空洞と、
前記低温流送達路の下流にある、極低温冷媒のための帰還路と、
極低温冷媒を大気へ排出するために、前記帰還路に結合された排出口と
を備え、前記排出口は切削刃から離れており、それにより、前記極低温冷媒がワークピースを冷却しないように、前記極低温冷媒は前記切削刃及び前記切削刃に係合される前記ワークピースから離間して排出される、回転切削工具。
【請求項2】
前記切削工具の前記前方部に形成された複数のフルートと、
前記複数のフルートのそれぞれに形成された切削刃と、
前記切削刃のそれぞれのための低温流送達路と
を更に備える、請求項1に記載の回転切削工具。
【請求項3】
前記冷媒空洞は、前記切削工具の前部に位置し、前記低温流送達路は、前記切削工具の前記前方部に形成された切削刃に近接する、請求項2に記載の回転切削工具。
【請求項4】
前記帰還路は、前記切削工具の外周に形成された前記切削刃に近接する、請求項3に記載の回転切削工具。
【請求項5】
前記低温流送達路のそれぞれのための帰還路
を更に備える、請求項4に記載の回転切削工具。
【請求項6】
前記回転切削工具はエンドミルである、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項7】
前記回転切削工具はリーマである、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項8】
前記極低温流体は、−196℃の温度を有する液体窒素である、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項9】
前記切削工具本体の止まり穴内に取り付けられた断熱スリーブ
を更に備え、前記断熱スリーブは、前記切削工具本体内に流入する前記極低温冷媒による熱利得を防止し、前記冷媒空洞は、前記断熱スリーブの端部と前記止まり穴の端部との間に配置される、請求項3に記載の回転切削工具。
【請求項10】
前記冷媒空洞は、前記切削工具の中央に位置し、前記低温流送達路は、前記切削工具の外周に形成された切削刃に近接する、請求項2に記載の回転切削工具。
【請求項11】
前記低温流送達路を前記帰還路に結合するクロスオーバー流路
を更に備え、前記クロスオーバー流路は前記回転切削工具の先端部に形成された切削刃に近接する、請求項10に記載の回転切削工具。
【請求項12】
前記低温流送達路は、前記工具の軸に沿って前記冷媒空洞から前記工具の前記先端部まで延在し、前記クロスオーバー流路は、前記工具の前記先端部に配置され、前記帰還路は、前記工具の前記先端部から前記工具の切削部分の端部まで延在する、請求項11に記載の回転切削工具。
【請求項13】
極低温冷媒を前記帰還路から大気へ排出するために、前記帰還路に結合された排出口
を更に備え、前記排出口は前記工具の切削部分の端部に配置され、それにより、前記極低温冷媒がワークピースを冷却しないように、前記極低温冷媒は前記切削刃及び前記切削刃に係合される前記ワークピースから離間して排出される、請求項12に記載の回転切削工具。
【請求項14】
前記極低温流体は、−196℃の温度を有する液体窒素である、請求項13に記載の回転切削工具。
【請求項15】
前記切削工具本体の止まり穴内に取り付けられた断熱スリーブ
を更に備え、前記断熱スリーブは、前記切削工具本体内に流入する前記極低温冷媒による熱利得を防止し、前記冷媒空洞は、前記断熱スリーブの端部と前記止まり穴の端部との間に配置される、請求項14に記載の回転切削工具。
【請求項16】
前記切削工具はドリルである、請求項15に記載の回転切削工具。
【請求項17】
前記切削工具は捩れたフルートを有する、請求項16に記載の回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年1月31日に出願された「Rotary Cutting Tool With an Internal Cooling Cavity」と題された米国仮特許出願第61/934,257号に対する優先権を主張し、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれその一部とされる。
【0002】
本発明は、流路の形状が工具の外形に追従し、ワークピースから離れた場所において工具から冷媒が排出される、極低温に冷却される工具のための冷却流路設計に関する。
【背景技術】
【0003】
インコネル、チタニウム、コバルトなどの六方格子構造を有するワークピース材料は、極低温の流体がその材料の表面に与えられると強靱化し加工がより困難になる。このため、このような材料の加工の際には、極低温冷媒を使用するにあたり、極低温の冷媒をワークピースに噴霧するよりも、内部から切削工具を冷却するのが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削刃に対する冷却を増やすと、切削速度の増大が可能になる。例えば、チタニウム材料において切削速度が100%増大すると、熱は30%増大する。これは、切削刃の熱を30%減少させると、本来の動作温度を超過することなく、切削刃を2倍の切削速度で動作させ得るということを意味する。本来の切削速度の2倍の切削速度で動作する工具は、同じ量の材料を半分の時間で切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】切削工具のコア及びコアに取り付けられたブッシングの透視図である。
【
図3】組み立てられた切削工具を図示する側面図である。
【
図6】ドリル本体及びドリル本体に取り付けられたブッシングの側面図である。
【
図7】組み立てられた
図6のドリル本体及びブッシングの側面図である。
【
図8】
図7のドリル本体及びブッシングの端面図である。
【
図10】
図7の線10−10に沿った断面図である。
【
図11】
図8の線11−11に沿った組み立てられたドリル本体及びブッシングの透視図である。
【
図12】捩れたフルートを有するドリルの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、切削工具50の分解側面断面図である。切削工具50は、概して円筒形の本体54を備え、円筒形本体54は、その長手軸に沿って後方面56から前方面58に近接する位置まで延在する中央止まり穴55を有する。低温流送達路は、円筒形本体54の前方面58に近接して形成され得て中央穴55と交差し得る半径方向穴52によって形成される。低温流送達路は、前方面58に配置され得る切削刃に近接するように配置される。長手方向溝59は、円筒形本体54の外面の前方部分60に沿って半径方向穴52から後方面56に向かう位置まで形成され得る。長手方向溝59は、半径方向穴52によって形成される低温流送達路の下流にあり、極低温冷媒のための帰還路を形成する。長手方向溝59は、前方部分60の外周の周りに成された排出マニホルド溝61と交差し得る。図示された実施形態において、長手方向溝59は、円筒形本体54に形成された肩部分62において終わり得る。肩部分62は、長手方向溝59が形成された円筒形本体54の前方部分60の径よりも大きな径を有する。ブッシング64は、ブッシング64の後方面65が肩部分62に当接するまで、円筒形本体54の前方部分60の上に挿入され得る。ブッシング64は、円筒形本体54の前方部分60の上に密接に嵌合することを可能にするような内径を有する穴66を有し得る。排出口68は、穴66の内部に、ブッシング64の後方面65に近接して形成され得る。ブッシング64の長さは、切削工具50の前方部分60の長さにほぼ等しくてよい。ブッシング64が定位置にあると、長手方向溝59は、円筒形本体54の前方部分60の半径方向穴52からブッシング64の後方面65に近接して形成された排出口68に至る長手方向の流れ路を形成する。円筒形本体54及びブッシング64は、高速度鋼、工具鋼、カーバイド又は切削工具装置の製造に通常使用される任意の他の材料から作られてよい。
【0007】
図2は、円筒形本体54の前方部分60及びブッシング64の透視図である。長手方向溝59は、前方部分60に沿って半径方向穴52から肩部分62まで形成され得る。半径方向穴52は長手方向溝59と交差し、長手方向溝は排出マニホルド溝61と交差する。
【0008】
図3は、組み立てられた切削工具50を図示する側面図である。貫通通路76を有する断熱材料70のスリーブは、中央の長手方向止まり穴55に設置され得る。断熱材料70のスリーブは長手方向穴55内に位置し、穴55の盲端に、切削工具50の前方面58に近接して前方冷媒空洞72を形成する。半径方向穴52は、冷媒空洞72を長手方向溝59に結合する。断熱スリーブ70は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の適切な断熱材料からなり得る。断熱スリーブ70は、スリーブ70を通って前方冷媒空洞72へと送達される冷媒による熱利得を妨げて、冷媒の極低温の維持を助ける。ブッシング64の端部の排出口68は、工具50の切削部分の端部に、排出マニホルド溝61から大気に至り、冷媒がワークピースを冷却して強靱化することを防止するために冷媒をワークピースから離間させる方向へ送る出口穴を形成する。切削工具50は、切削工具50が従来の方法で主軸に設置され得るように工具保持部75に取り付けられ得る。少なくとも1つのフルート57は、切削工具の前方面58に形成され得、
図4に図示されるように、切削刃78は、フルート77の外縁に形成され得る。
【0009】
図3に図示される切削工具50を組み立てるために、前方部分60は、長手方向溝59を形成するために加工され得、半径方向穴52が、溝59を前方冷媒空洞72に接続するために形成され得る。明確にするために、長手方向溝59は直線状のものとして示されているが、もしも最終的な切削工具が螺旋状のフルートに形成された螺旋状の切削刃を備えるならば、螺旋状の溝が用いられることは理解されよう。次いで、ブッシング64がコアの前方部分60の上に嵌合され得る。次いで、組み立てられた本体54及びブッシング64は、互いに融着するように焼結され得る。円筒形本体54及びブッシング64の前方面58は、フルート57を形成するために加工され得、次いで、ブッシング64の外面は、フルート77を形成するために加工され得る。切削刃78を形成するために、工具の表面のフルート57は研がれ得、工具の外側円筒形面のフルート77は研がれ得る。或いは、切削刃78は、フルート57及び77の端部にろう付け又は他の方法で固定されてもよい。次いで、断熱スリーブ70が、本体54の止まり穴55に嵌入される。他の組み立て方法が使用されてもよい。
【0010】
図4は、
図3の線4−4に沿った断面図である。半径方向穴52は、止まり穴55の端部に形成された冷媒空洞72から本体の前方部分60に形成された長手方向溝59への通路を提供する。半径方向穴52は、切削工具の前方面58に形成され得るフルート57と位置が揃い近接する位置にある。長手方向溝59は、ブッシング64の外面に形成されたフルート77及び切削刃78と位置が揃い近接する位置にある。半径方向穴52及び長手方向溝59内の冷媒は、工具の前方面58の切削刃及び工具の外周の切削刃78から熱を除去することに有効である。単純化のために、
図3及び
図4のフルート77は、直線状のものとして図示されたが、螺旋状のフルートも用いられてよい。フルート77が直線状のものとして図示されているので、長手方向溝59も直線状のものとして図示されているが、螺旋状のフルートを有する切削工具においては、溝がフルートの経路に追従するように螺旋状の溝も用いられてよいことは理解されよう。
【0011】
図5は、
図3の線5−5に沿った断面図である。長手方向溝59は、フルート77の最も外側の末端部の近くで、工具本体の前方部分に形成された切削刃78の隣に位置する。長手方向溝59は、工具保持部及び主軸に向かって後ろ方向に開口し、排出口68を介して大気に開口する。排出口68は、工具の前部から離間させる方向へ冷媒を送り、ワークピースを冷却して強靱化することを防止する。
【0012】
使用に際しては、冷媒源が、切削工具50の後方面56及び断熱材料70のスリーブに形成された通路76に結合される。冷媒は、工具50の後方面56から止まり穴の端部に形成された冷媒空洞72へと流れ、冷媒空洞72の端部から半径方向穴52を通って工具の前方部60に形成された長手方向溝59の端部に流入する。冷媒は、長手方向溝59に沿って工具の前方面58から後方面56に向かって流れ、排出口68に到達する。排出口68は、大気への冷媒の出口穴を形成し、ワークピースから離間させる方向へ冷媒を送る。使用される冷媒は、−196℃の温度を有する液体窒素などの極低温冷媒でよく、又は他の極低温冷媒が使用され得る。非極低温冷媒も使用され得る。半径方向穴52及び長手方向溝59内の冷媒は、工具の面58のフルート及び切削刃57に対して、及び工具の長さ方向に沿った切削刃78に対して、冷媒空洞72内の冷媒よりも著しく近くにあり、切削刃がより低い温度で動作することを可能にする。
【0013】
工具50の外面のフルート77は、本明細書において説明される設計から逸脱することなく、右回り、左回り、可変性、ジグザグ状、又は直線状であり得る。冷媒空洞内の冷媒の冷却効果を最大化するために、冷媒空洞及び冷媒のための流れ路の内側形状は、工具の外形に密接に追従しなくてはならない。このようにして、熱源である工具の切削刃とフルート77内の冷媒との間の距離は最小化され、結果として空洞内の冷媒によって最大限に熱が吸収される。
【0014】
図示された装置は、穴加工工具、ドリル、リーマ、エンドミル、ねじフライス削り、ねじ切り工具、プレス超硬インサート(pressed carbide insert)に適用できる。
【0015】
回転工具によって生じる遠心力は、冷媒を冷媒空洞72から半径方向穴52の最も外側の端部へと移動させ、次いで長手方向溝59を通って排出口68へと移動させる。
図6から
図11は、ドリルなどの切削工具に冷却が施された装置の実施形態を示す。
図6は、ドリル本体80及び以下により完全に説明されるドリルを作り出すためにドリル本体80の前端部84に嵌合するブッシング82の側面図である。ドリル本体80の前端部84は、ブッシング82に形成された止まり穴86に嵌入するための縮径部分85を有する。ブッシング82の止まり穴86は、ドリル本体80の縮径部分85の上に密接に嵌合する寸法である。ドリル本体80は、
図7に図示されるようにドリル本体80の端部91から本体の前端部84の縮径部分85まで延在する軸方向止まり穴88を、軸端部90に有する。交差ドリル孔92は、縮径部分85に、縮径部分85の外面から以下により完全に説明されるドリル本体の止まり穴88の端部に形成された冷媒空洞89まで形成される。溝94は、以下により完全に説明される完成したドリルにおける冷媒のための通路を提供するために、縮径部分85の長さ方向の一部分に沿って形成され得る。溝94は、U字形路93に沿って工具80の切削部の開始部分の交差ドリル孔92から縮径部分85の先端部95まで延在した後、工具の切削部分の端部に向かって戻るように延在し得る。各U字形路93は、低温流送達路96と、クロスオーバー部分97と、帰還路98とを備え得る。各低温流送達路96は、交差ドリル孔92と連通し得、各帰還路98は、ブッシング82の端部99とドリル本体80の軸端部90に形成された肩部100との間に形成された排出間隙101と連通し得る。
【0016】
図7及び
図11は、組み立てられたドリル本体80及びブッシング82の側面図である。PTFEなどの断熱材料のスリーブ87は、ドリル本体80からの熱利得から極低温冷媒を断熱するために、止まり穴88に挿入され得る。冷媒空洞89は、工具の中央で、スリーブ87の端部と止まり穴88の端部との間に形成され得、交差ドリル孔92は冷媒空洞89と交差し得る。ブッシング82の外面は、
図8及び
図9から最もよくわかるように、ドリルフルート102を形成するために加工され得、フルート102は、切削刃104を形成するために研がれ得る。低温流送達路96は、工具の軸103に沿って冷媒空洞89から工具の先端部106まで延在する。クロスオーバー流路97は、工具の先端部106に配置され、帰還路98は、工具の先端部106から工具の軸端部90まで延在する。
【0017】
図8は、
図7のドリル本体80及びブッシング82の端面図である。ブッシング82は、ブッシングの長さ方向に沿って2つのフルート102を形成するために加工され得るが、所望によって、他の個数のフルートがブッシング82に形成されてよい。切削刃108を有する尖った先端部106が、2つのフルート102の合併によって形成され、動作中には、尖った先端部106を包囲する切削刃108が、穿孔動作中に最も多い量の材料を除去する。その結果、切削刃108及び尖った先端部106は、切削動作中に、ドリルの他の部分よりも熱くなり、したがって、ドリルのこの部分は冷却から最も大きな恩恵を受ける。低温流送達路96は、切削工具の外周のフルート102の切削刃104に近接して位置し、帰還路98は、フルートの後縁110に隣接する。各U字形路93のクロスオーバー部分97は、低温流送達路96を帰還路98に接続し、尖った先端部106の切削刃108に近接する。ブッシング82は、当技術分野において周知であるように、3つ以上のフルートを形成するために加工されてもよい。
【0018】
図7〜
図11の組み立てられたドリルを製造するために、まずブッシング82がドリルの本体部分80の縮径部分85の上に嵌合される。次いで、ブッシング82及び縮胴部分85が、互いに融着するように焼結される。次いで、フルート102がブッシング82に形成され、フルートは、フルートの研がれた刃104を形成するために仕上げ研削される。フルートの研がれた刃104がドリル本体80の縮径部分85に形成された低温流送達路96と尖った先端部106の切削刃108とに隣接するように、フルート102はブッシング82の外面に形成される。次いで、断熱材料のスリーブ87が、本体部分80の止まり穴に挿入される。
【0019】
使用に際しては、冷媒は、断熱スリーブ87を通ってドリル本体80に進入し、断熱スリーブ87の端部と止まり穴88の端部との間に形成された冷媒空洞89に集まる。冷媒空洞89内の冷媒は、交差ドリル孔92を通って低温流送達路96へと流れ、低温流送達路96からクロスオーバー部分97を通って帰還路98へと流れ、帰還路98から排出マニホルド溝101、排出口99及び大気へと流れる。低温流送達路96は、冷媒をドリルの研がれたフルート104のできる限り近くに位置させ、クロスオーバー部分97は、冷媒をドリルの先端部の切削刃108のできる限り近くに位置させて、ドリルのこれらの領域から冷媒によって除去される熱を最大化する。帰還路98は、冷媒が大気へ排出されてワークピースから遠ざけられ得るように、ドリルの先端部106から離れた工具の切削部分の端部に配置された排出間隙101に、冷媒を送る。これによって、極低温冷媒がワークピースに影響を及ぼして強靱化することが防止される。使用される冷媒は、−196℃の温度を有する液体窒素などの極低温冷媒でよく、又は他の極低温冷媒が使用され得る。非極低温冷媒も使用され得る。
【0020】
図12は、捩れたフルートを有するドリル112の透視図である。図示されるドリル112は、捩れて螺旋を形成する2つのフルート114を有する。フルート114は、尖った先端部116で終わっている。
図6〜
図11に関連して示され、説明された構成は、
図12に図示される捩れた2つフルートを有するドリルに適用され得る。当業者には理解されるであろうように、捩れたフルートを有するドリルは、3つ以上のフルートが形成されてもよい。
【0021】
上記のように装置について説明したが、様々な修正及び改変が当業者には思い浮かぶであろう。これらの修正及び改変は、添付の特許請求の範囲に規定される装置の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2016年9月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体によって内部から冷却される回転切削工具であって、
概して円筒形の外形を有する工具本体と、
前記切削工具の前方部に形成された少なくとも1つのフルート、及びワークピースを切削するために、前記少なくとも1つのフルートの外縁に形成された切削刃と、
前記切削工具内の極低温冷媒のための内部低温流送達路であって、前記少なくとも1つのフルートの前記切削刃に近接する内部低温流送達路と、
極低温冷媒を前記内部低温流送達路に供給するために、前記切削工具に形成された冷媒空洞と、
前記低温流送達路の下流にある、極低温冷媒のための内部帰還路と、
極低温冷媒を大気へ排出するために、前記内部帰還路に結合された排出口と
を備え、前記排出口は切削刃から離れており、それにより、前記極低温冷媒がワークピースを冷却しないように、前記極低温冷媒は前記切削刃及び前記切削刃に係合される前記ワークピースから離間して排出される、回転切削工具。
【請求項2】
前記切削工具の前記前方部に形成された複数のフルートと、
前記複数のフルートのそれぞれに形成された切削刃と、
前記切削刃のそれぞれのための低温流送達路と
を更に備える、請求項1に記載の回転切削工具。
【請求項3】
前記冷媒空洞は、前記切削工具の前部に位置し、前記低温流送達路は、前記切削工具の前記前方部に形成された切削刃に近接する、請求項2に記載の回転切削工具。
【請求項4】
前記内部帰還路は、前記切削工具の外周に形成された前記切削刃に近接する、請求項3に記載の回転切削工具。
【請求項5】
前記低温流送達路のそれぞれのための内部帰還路
を更に備える、請求項4に記載の回転切削工具。
【請求項6】
前記回転切削工具はエンドミルである、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項7】
前記回転切削工具はリーマである、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項8】
前記極低温流体は、−196℃の温度を有する液体窒素である、請求項5に記載の回転切削工具。
【請求項9】
前記切削工具本体の止まり穴内に取り付けられた断熱スリーブ
を更に備え、前記断熱スリーブは、前記切削工具本体内に流入する前記極低温冷媒による熱利得を防止し、前記冷媒空洞は、前記断熱スリーブの端部と前記止まり穴の端部との間に配置される、請求項3に記載の回転切削工具。
【請求項10】
前記冷媒空洞は、前記切削工具の中央に位置し、前記低温流送達路は、前記切削工具の外周に形成された切削刃に近接する、請求項2に記載の回転切削工具。
【請求項11】
前記低温流送達路を前記内部帰還路に結合する内部クロスオーバー流路
を更に備え、前記内部クロスオーバー流路は前記回転切削工具の先端部に形成された切削刃に近接する、請求項10に記載の回転切削工具。
【請求項12】
前記低温流送達路は、前記工具の軸に沿って前記冷媒空洞から前記工具の前記先端部まで延在し、前記内部クロスオーバー流路は、前記工具の前記先端部に配置され、前記内部帰還路は、前記工具の前記先端部から前記工具の切削部分の端部まで延在する、請求項11に記載の回転切削工具。
【請求項13】
極低温冷媒を前記内部帰還路から大気へ排出するために、前記内部帰還路に結合された排出口
を更に備え、前記排出口は前記工具の切削部分の端部に配置され、それにより、前記極低温冷媒がワークピースを冷却しないように、前記極低温冷媒は前記切削刃及び前記切削刃に係合される前記ワークピースから離間して排出される、請求項12に記載の回転切削工具。
【請求項14】
前記極低温流体は、−196℃の温度を有する液体窒素である、請求項13に記載の回転切削工具。
【請求項15】
前記切削工具本体の止まり穴内に取り付けられた断熱スリーブ
を更に備え、前記断熱スリーブは、前記切削工具本体内に流入する前記極低温冷媒による熱利得を防止し、前記冷媒空洞は、前記断熱スリーブの端部と前記止まり穴の端部との間に配置される、請求項14に記載の回転切削工具。
【請求項16】
前記切削工具はドリルである、請求項15に記載の回転切削工具。
【請求項17】
前記切削工具は捩れたフルートを有する、請求項16に記載の回転切削工具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】