特表2017-504585(P2017-504585A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-504585アクリルアミド含有フィルターを使用したタンパク質分離
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-504585(P2017-504585A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(54)【発明の名称】アクリルアミド含有フィルターを使用したタンパク質分離
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/14 20060101AFI20170120BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20170120BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20170120BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170120BHJP
【FI】
   C07K1/14
   B01J20/26 H
   B01D15/38
   G01N30/88 101S
   G01N30/88 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-538540(P2016-538540)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月10日
(86)【国際出願番号】US2014064230
(87)【国際公開番号】WO2015088677
(87)【国際公開日】20150618
(31)【優先権主張番号】61/915,125
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・コズロフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・カタルド
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・キャロン
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4H045
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA13
4D017CB01
4D017CB03
4D017CB05
4D017CB10
4D017DA01
4D017DA03
4D017EA05
4G066AC17B
4G066AC33B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA36
4G066CA54
4G066DA07
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045GA10
4H045GA20
(57)【要約】
目的のタンパク質、例えば抗体を含有するサンプルからタンパク質凝集体などの不純物を除去するための新規組成物を提供する。このような組成物をタンパク質精製の間にウイルスろ過工程前に使用して凝集物を除去し、ウイルスフィルターを汚れから保護し、それによってウイルスのフィルター容量を向上させることができる。多孔質固体支持体は、少なくとも2種の単量体を有する共重合体を含み、ここで、該単量体の少なくとも一方はアクリルアミドを含み、少なくとも第2単量体は疎水性結合基を含み、該固体支持体は、タンパク質凝集体を選択的に結合させ、それによってタンパク質凝集体から目的の単量体タンパク質を分離する。この方法は、中性〜高pH及び高伝導度条件で行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学構造を含む重合体:
【化1】

式中、R1は、エチル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル、ヒドロキシプロピル、フェニル及びベンジルよりなる群から選択される疎水性脂肪族又は疎水性芳香族有機基であり;R2は、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル及びスチレンよりなる群から選択される重合性単量体から誘導される2つの重合体間にある有機リンカーであり;x、y及びzは、該共重合体中における各単量体の平均モル分率であり、独立して約0.01〜0.99の範囲にあり;mは、該リンカーを介した第2重合体への結合を意味する。
【請求項2】
サンプル中のタンパク質凝集体からの目的の単量体タンパク質を分離する方法であって、該方法は、該サンプルと、ベンジルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体を有する多孔質固体支持体とを接触させることを含み、ここで、該固体支持体は、タンパク質凝集体を選択的に結合し、それによって該タンパク質凝集体から目的の単量体タンパク質を分離する方法。
【請求項3】
前記方法を6以上の中性〜高pHで実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法を5mS/cm以上の中〜高伝導度の溶液で実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記固体支持体がクロマトグラフィー樹脂、膜、多孔質ビーズ、多孔質モノリス、翼状繊維、織布及び不織布よりなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質凝集体が低次タンパク質凝集体である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記低次タンパク質凝集体が二量体、三量体及び四量体よりなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質凝集体が高分子量タンパク質凝集体である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子量タンパク質凝集体が五量体以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記目的の単量体タンパク質が抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記目的の単量体タンパク質が組換えタンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記目的の単量体タンパク質がポリクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記目的の単量体タンパク質をさらにウイルス保持フィルターによりろ過する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
目的のタンパク質の精製中にウイルスフィルターのろ過容量を改善させる方法であって、該目的のタンパク質を含むサンプルを、該ウイルスフィルターに通す前にプレフィルトレーションに付すことを含み、該プレフィルトレーション工程は、該サンプルと少なくとも2種の単量体を含む共重合体を有する多孔質固体支持体とを接触させることを含み、ここで、該単量体の少なくとも1種はアクリルアミドを含み、少なくとも第2単量体は疎水性結合基を有する方法。
【請求項16】
前記サンプルを、約6よりも高いpH及び約5mS/cmよりも高い伝導度で前記固体支持体と接触させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固体支持体がクロマトグラフィー樹脂、膜、多孔質ビーズ、多孔質モノリス、翼状繊維、織布及び不織布よりなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスフィルターとプレフィルターとを備える、目的のタンパク質を精製するためのろ過列であって、該プレフィルターが少なくとも2種の単量体を含む共重合体を有する多孔質固体支持体を備え、ここで、該単量体の少なくとも1種はアクリルアミドを含み、少なくとも第2単量体は疎水性結合基を有するろ過列。
【請求項19】
クロマトグラフィー媒体をさらに備える、請求項18に記載のろ過列。
【請求項20】
前記多孔質固体支持体がクロマトグラフィー樹脂、膜、多孔質ビーズ、多孔質モノリス、翼状繊維、織布及び不織布よりなる群から選択される、請求項18に記載のろ過列。
【請求項21】
次の構造を含む重合体:
【化2】

式中、R1は、エチル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル、ヒドロキシプロピル、フェニル及びベンジルよりなる群から選択される疎水性脂肪族又は疎水性芳香族有機基であり;x及びyは、該共重合体中における各単量体の平均モル分率であり、独立して約0.01〜0.99の範囲にあり;ここで、該共重合体は、長方形として示される固体支持体上に共有結合によりグラフトしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年12月12日に出願された米国仮出願第61/915125号の優先権を主張する。その開示を参照により本明細書で援用する。
【0002】
発明の分野
ここに開示される実施形態は、アクリルアミド含有フィルターを使用して、目的の生成物を含有するバイオ医薬製剤からタンパク質凝集体を含む不純物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
タンパク質精製のための従来の方法は、典型的には、例えば、目的のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)を産生するように組換え操作された哺乳動物細胞株又は細菌細胞株を使用する細胞培養法を含み、その後、細胞培養液からの細胞及び細胞残屑を除去するための細胞回収工程が続く。この細胞回収工程の後に、通常、捕捉工程を行い、典型的には、その後に、通常は陽イオン交換クロマトグラフィー及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィー及び/又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの一つ以上を含むポリッシング工程とも呼ばれる1回以上のクロマトグラフィー工程を行う。また、ウイルス不活性化工程を捕捉工程の後に含むこともできる。ポリッシング工程の後に、通常、精製プロセスを完了させるウイルスろ過、限外ろ過/ダイアフィルトレーションを行う。例えば、Shukla外,J.Chromatography B.,848(2007)28−39;Liu外,MAbs,2010:Sep−Oct 2(5):480−499参照。
【0004】
ウイルスろ過工程は、生成物が診断又は治療用途に使用することが望まれる場合には特に、タンパク質の精製において重要な工程である。ウイルスろ過工程は、典型的には、目的のタンパク質を通過させつつウイルス粒子を保持するウイルス保持フィルターを使用する。効率的なウイルスのろ過を達成することに伴う課題の一つは、不純物、特にタンパク質凝集体のいくらかがウイルス粒子と同様のサイズを有することである。したがって、タンパク質凝集体は、最終的にはウイルス保持フィルターを汚れさせ又は目詰まりさせ、フィルターを通した目的のタンパク質の流れを有意に減少させてしまう。
【0005】
タンパク質凝集体などの不純物は、異なる精製プロセス段階で形成し、そしてウイルス保持フィルターの適切なスループットを維持するために、タンパク質凝集体は、ウイルス保持フィルターに到達する前に除去する必要がある。従来技術では、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)媒体に基づくフロースルー凝集体除去を実現する試みがなされている(例えば、米国特許第7427659号参照)。しかし、HICベースの分取分離は、一般にプロセス開発が困難であり、動作ウィンドウが狭く、また高濃度の塩が緩衝液に必要なため、適用範囲が狭い。
【0006】
弱分配クロマトグラフィー(WPC)がクロマトグラフィー操作の別の態様であり、その際、生成物は、結合−溶出クロマトグラフィーの場合よりも弱く結合するが、フロースルークロマトグラフィーの場合よりも強く結合する(例えば、米国特許第8067182号参照);しかしながら、WPCには、結合及び溶出法と比較して狭い動作ウィンドウ及び不純物除去のための低い結合容量を含めて、それに関連する所定の欠点もある。
【0007】
さらに、タンパク質凝集体を選択的に除去するための最も便利な方法の一つは、タンパク質及び/又は他の生体分子の溶液をウイルス保持フィルターに到達する前にろ過媒体に通し、それによってタンパク質凝集体を除去し、精製されるタンパク質をウイルス保持フィルターにフロースルーさせることによるものである。このようなフィルターの例が、ウイルスろ過工程の前に、タンパク質及びウイルス溶液を、吸着性デプスフィルター又は荷電若しくは表面変性膜を通してろ過することについて説明する米国特許第7118675号に見出すことができる。
【0008】
さらに、国際公開第2010/098867号には、タンパク質凝集体を除去するために負に荷電した多孔質媒体を使用することが記載され、また、国際公開第2012/175156号には、タンパク質凝集体を除去するためのポリアミド系フィルターが記載されている。最後に、米国出願第13/783941号、2013年3月4日に出願されたUS20130245139A1号には、タンパク質凝集体の除去用の陽イオン交換基を含む組成物の使用が記載されているが、そこに記載された組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィーに適したpH及び伝導度条件下でしか良好に機能しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7427659号明細書
【特許文献2】米国特許第8067182号明細書
【特許文献3】米国特許第7118675号明細書
【特許文献4】国際公開第2010/098867号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2012/175156号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第20130245139号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Shukla外,J.Chromatography B.,848(2007)28−39
【非特許文献2】Liu外,MAbs,2010:Sep−Oct 2(5):480−499
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
ここに開示される実施形態は、目的のタンパク質、例えば抗体を含有するサンプルからタンパク質凝集体などの不純物を除去するための新規組成物を提供する。したがって、このような組成物をタンパク質精製の間にウイルスろ過工程前に使用して凝集物を除去し、ウイルスフィルターを汚れから保護し、それによってウイルスのフィルター容量を向上させることができる。
【0012】
ここに記載の組成物には、広範囲の溶液条件下で使用できる点で、タンパク質凝集体などの不純物を除去するためにウイルスろ過工程前に使用される既知の組成物を上回る利点がある。
【0013】
いくつかの実施形態では、組成物は、負に荷電している。他の実施形態では、該組成物は中性(疎水性)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、組成物は、低いpH及び低い伝導度条件下で使用できる(例えば、負に荷電した組成物)。他の実施形態では、組成物は、中性〜高pH及び中〜高伝導度条件下で使用できる(例えば、疎水性組成物)。
【0015】
いくつかの実施形態では、サンプル中のタンパク質凝集体からの目的の単量体タンパク質を分離するフロースルー方法が提供され、ここで、該方法は、該サンプルと少なくとも2種の単量体を含む共重合体を有する多孔質固体支持体とを接触させることを含み、ここで、該単量体の少なくとも1種はアクリルアミドを含み、少なくとも第2単量体は疎水性結合基を有し、ここで、該固体支持体は、タンパク質凝集体を選択的に結合し、それによって該タンパク質凝集体から目的の単量体タンパク質を分離し;しかも、該方法は、疎水性相互作用に貢献する条件下、例えば中性〜高pH及び中〜高伝導度条件下で実行できる。
【0016】
いくつかの実施形態では、疎水性結合基は、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基、ヒドロキシプロピル基、フェニル基及びベンジル基よりなる群から選択される。
【0017】
特定の実施形態では、疎水性結合基は、ベンジルアクリルアミドである。
【0018】
いくつかの実施形態では、ここに記載される組成物に係る共重合体は、次の構造を含む:
【化1】

式中、x、y及びzは、該共重合体中における各単量体の平均モル分率であり、独立して約0.01〜0.99の範囲にあり;
1は、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基、ヒドロキシプロピル基、フェニル基及びベンジル基よりなる群から選択される疎水性脂肪族又は疎水性芳香族結合基であり;
2は、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル及びスチレンよりなる群から選択される重合性単量体から誘導される2つの重合体間にある非荷電脂肪族又は芳香族有機リンカーであり;
mは、同様の共重合体鎖がリンカーの他の末端に結合していることを意味する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ここに記載される組成物に係る共重合体は、次の構造を含む:
【化2】

式中、x及びyは、該共重合体中における各単量体の平均モル分率であり、独立して約0.01〜0.99の範囲にあり;
1は、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基、ヒドロキシプロピル基、フェニル基及びベンジル基よりなる群から選択される疎水性脂肪族又は疎水性芳香族結合基であり、ここで、該共重合体は、長方形として示される固体支持体上に共有結合によりグラフトしている。
【0020】
ここに記載される様々な構造において、疎水性結合基は、ベンジルアクリルアミド基である。所定の実施形態では、プレフィルター、清澄ろ過器、クロマトグラフィー媒体(例えば、陽イオン交換、陰イオン交換)、膜吸着体及び製品/プロセス汚染物質を除去するためのウイルス除去フィルターを備えるろ過列が設けられる。
【0021】
所定の実施形態では、プレフィルターは、少なくとも2種の単量体を含む共重合体を有する多孔質固体支持体を備え、ここで、該単量体の少なくとも1種はアクリルアミドを含み、少なくとも第2単量体は疎水性結合基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、負に荷電したプレフィルターをウイルスフィルターの上流で異なるpH及び伝導度値でのIgG供給溶液と共に使用するときの、ウイルスフィルターViresolve(登録商標)Proのスループットを実証する等高線グラフを示す。X軸は伝導度(mS/cm)を表し、右側のY軸はpHを表す。
図2図2は、ウイルスフィルターの上流に次のプレフィルターを使用する場合のViresolve(登録商標)Pro(VPro)ウイルスフィルターのマススループットを実証する棒グラフを示す:1.8%AMPS及び3.0%AMを含むプレフィルター(3);1.5%AMPS及び3.3%DMAMを含むプレフィルター(4);1.8%AMPS及び3.0%DMAMを含むプレフィルター(5);2.1%AMPS及び2.7%DMAMを含むプレフィルター(6);2.4%AMPS及び2.4%DMAMを含むプレフィルター(7);4.8%AMPS及び0%DMAMを含むプレフィルター(8);1.5%AMPS及び3.3%BMAを含むプレフィルター(9);1.8%AMPS及び3.0%BMAを含むプレフィルター(10);2.1%AMPS及び2.7%BMAを含むプレフィルター(11);1.8%AMPS及び3.0%IOAを含むプレフィルター(12);1.8%AMPS及び6.0%IOAを含むプレフィルター(13);1.5%AMPS及び3.3%HPMAMを含むプレフィルター(14)及び2.5%AMPS及び2.3%HPMAMを含むプレフィルター(15)。棒グラフの最初の2つのバーはコントロールを示す:ウイルスフィルターのみ(1)及びいかなる変性もないプレフィルターベース膜(2)。X軸はプレフィルター組成物を表し、Y軸はV75でのウイルス膜フィルターのIgG/m2のマススループット(kg)を表す。プレフィルター対ウイルスフィルター面積は3.1cm2で1:1である。
図3図3は、様々なプレフィルター/ウイルスフィルターの組み合わせ(表2)についての緩衝液及びタンパク質溶液の容量対時間曲線を示すグラフを示す。曲線の傾きは透過性に相当する。X軸は時間(分)を示し、Y軸は容量(ml)を表す。1.8%AMPS及び3.0%AMを含むプレフィルター(3)は、初期フラックスに用いたのと同じ緩衝液中においてIgGの存在下で透過性の増加を示す唯一の列である。
図4図4は、緩衝液のみから同じ緩衝液へのIgG溶液に切り換えたときの、様々なプレフィルター/ウイルスフィルターの組み合わせのろ過列(x軸(表2))の透過性の変化(LMH/psiのy軸)を表す棒グラフを示す。1.8%AMPS及び3.0%AMを含有するプレフィルター(3)を含む列は、IgGの存在下で透過性の増加を示した唯一の列である。
図5図5は、膜表面がアクリルアミドを含有する(プレフィルター3)図3及び4で観察された透過性の増加のための可能なメカニズムの図を示す。プレフィルター3/VProの組合せ(表2)の透過性の増加は、アクリルアミドを含有する独特の負に荷電したヒドロゲル表面が正に荷電したIgGとのイオン性相互作用により収縮した結果である。
図6図6は、pH4.0及び異なる溶液の伝導度(y軸、mS/cm)での表3における様々なCEX表面変性膜のIgG(膜のIgG/mLのmgで表すY軸)についての静的結合容量を示す。膜3及び17におけるCEX結合基AMPSを有する小さな中性及び親水性アクリルアミドの存在は、≦25mS/cmの伝導度でより大きな静的IgG容量を与えるユニークな高分子ヒドロゲルを可能にする。
図7図7は、膜へCEX結合条件下で同等の動負荷後の表3における様々なCEX表面変性膜(x軸)のIgGに対する総結合容量(y軸、mg/ml)を示す。同等の負荷後のCEX溶出液を使用して、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりIgG容量、凝集体選択性を決定し、表4における膜の凝集体容量を算出する。動的CEX凝集体容量を、表3における膜について測定して、表3における膜の総選択性の相違を定量化する。
図8図8は、高い凝集体容量を有する膜(表4、図7)が良好なウイルスフィルター(Viresolve(登録商標)Pro)保護を与え、それによって例1のプロセスを使用してより高いIgGマススループット(右側のY軸)を得る傾向があることを示す。
図9図9は、表4からの膜3、16、5及び8からの供給ローディング溶液及び溶出液を含む正規化されたSEC−HPLCオーバーレイの代表的なクロマトグラムである(y軸はUV230nm Absであり、x軸は分である)。このオーバーレイは、アクリルアミドを含有する膜3の溶出が中性共重合体なしの膜8及び16又は共重合体DMAMを有する膜5よりも高い凝集体の割合を有することを示す。この結果は、アクリルアミドの存在が凝集体(6〜8.5分の大きいピーク面積)に対する膜選択性を改善することを示す。
図10図10、11及び12は、2.5%BAM、1.0又は2.0%アクリルアミドで変性された膜3及び4(表5)が、アクリルアミドを含有しなかった膜5、6、7又は8(表5、x軸)よりも大きいウイルス除去フィルター保護(kg/m2、y軸)(pH7.0及び5mS/cm、pH7.5及び15mS/cm及びpH6.0及び25mS/cmでより大きいマススループット)を与えることを示す。また、アクリルアミド含有膜3及び4は、3つの溶液条件下で、ウイルスプレフィルター(Viresolve(登録商標)Prefilter)(主として疎水性のメカニズム)と同様のマススループットを与え、Viresolve(登録商標)Shield(CEX機構)よりも非常に良好なスループットを与える。
図11図10、11及び12は、2.5%BAM、1.0又は2.0%アクリルアミドで変性された膜3及び4(表5)が、アクリルアミドを含有しなかった膜5、6、7又は8(表5、x軸)よりも大きいウイルス除去フィルター保護(kg/m2、y軸)(pH7.0及び5mS/cm、pH7.5及び15mS/cm及びpH6.0及び25mS/cmでより大きいマススループット)を与えることを示す。また、アクリルアミド含有膜3及び4は、3つの溶液条件下で、ウイルスプレフィルター(Viresolve(登録商標)Prefilter)(主として疎水性のメカニズム)と同様のマススループットを与え、Viresolve(登録商標)Shield(CEX機構)よりも非常に良好なスループットを与える。
図12図10、11及び12は、2.5%BAM、1.0又は2.0%アクリルアミドで変性された膜3及び4(表5)が、アクリルアミドを含有しなかった膜5、6、7又は8(表5、x軸)よりも大きいウイルス除去フィルター保護(kg/m2、y軸)(pH7.0及び5mS/cm、pH7.5及び15mS/cm及びpH6.0及び25mS/cmでより大きいマススループット)を与えることを示す。また、アクリルアミド含有膜3及び4は、3つの溶液条件下で、ウイルスプレフィルター(Viresolve(登録商標)Prefilter)(主として疎水性のメカニズム)と同様のマススループットを与え、Viresolve(登録商標)Shield(CEX機構)よりも非常に良好なスループットを与える。
図13図13は、膜(3)(表5及び6)がpH6.0及び25mS/cmで市販のプレフィルター及び表6からの非変性膜よりも大きいウイルス除去フィルター保護(kg/m2、y軸)を与えることを示す。
図14図14(表7)は、膜(3)が、pH7.0、4.2mS/cm、15.3g/L、0.22ml/分(166LMH)で、プレフィルターされていないVProと比較して、SEC−HPLCにより0.8%の凝集体を含むMAb01に対して汚れを減少させ、かつ、より大きなVProマススループット(x軸)を与えるように圧力上昇(y軸)を低減させる点で有効であることを示す。
図15図15(表7)は、膜(3)が、VProを保護することで、pH7.5、18mS/cm、9.2g/L、0.22ml/分(166LMH)で、SEC−HPLCにより0.4%の凝集体を含有するMAb05に対して、プレフィルターされていないVProと比較して汚れの指標である圧力(y軸)を低下させるによりMAb05のマススループット(x軸)を4倍向上させることを示す。
図16図16(表7)は、膜(3)が、VProを保護することで、SEC−HPLCで4%の凝集体を含むMAb07について、pH7.0、8mS/cm、8g/L、0.22mL/分(166LMH)で、予備ろ過なしでのVProウイルスろ過並びにポリアミドから構成される非変性膜プレフィルター(5)及び市販の滅菌等級膜フィルター(4)でのVProウイルスろ過よりも良好な汚れの指標である圧力上昇(y軸)を低減させることによりマススループット(x軸、kg/m2)を向上させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
ここに開示される実施形態をさらに容易に理解できるように、まず所定の用語を定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体にわたって示されている。
【0024】
I.定義
ここで使用するときに、用語「クロマトグラフィー」とは、生物医薬製剤中における汚染物及び/又はタンパク質凝集体から目的の生成物(例えば、治療用タンパク質又は抗体)を分離する任意の種類の技術をいう。
【0025】
本明細書において区別なく使用される用語「フロースループロセス」、「フロースルーモード」及び「フロースルークロマトグラフィー」とは、目的の生成物を含む生物医薬製剤が材料をフロースルーすることを目的とする生成物分離技術をいう。いくつかの実施形態では、目的の生成物は、材料を通って流れ、そして望ましくない実在物が該材料に結合する。ここに記載される所定の実施形態では、目的の生成物は、アクリルアミドを含む材料を通って流れる。特定の実施形態では、材料は、アクリルアミドを含む共重合体を含有し、ここで、該材料は、タンパク質精製プロセスにおけるウイルスろ過工程(すなわちウイルスフィルターとして)の前に使用される。
【0026】
本明細書において区別なく使用される用語「汚染物」、「不純物」及び「破片」とは、任意の外来又は好ましくない分子、例えば外来又は好ましくない分子の1種以上から分離されている目的の生成物を含有するサンプル中に存在する場合のあるDNA、RNAなどの生体高分子、1種以上の宿主細胞タンパク質、内毒素、脂質、タンパク質凝集物及び1種以上の添加剤をいう。さらに、このような汚染物は、分離工程の前に行う場合のある工程で使用される任意の試薬を含む場合がある。特定の実施形態では、ここに記載の組成物及び方法は、目的の生成物を含有するサンプルからタンパク質凝集体を選択的に除去することを目的とする。いくつかの実施形態では、ここに記載の組成物及び方法は、ウイルスろ過工程の前に使用され、それによって、ウイルス保持フィルターを汚しかつフィルターを通した目的のタンパク質の透過性に悪影響を与えるタンパク質凝集物及び他の不純物を除去する。
【0027】
用語「免疫グロブリン」、「Ig」又は「抗体」(本明細書において区別なく使用される)とは、2個の重鎖及び2個の軽鎖からなる基本的な4つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質であって、該鎖が例えば鎖間ジスルフィド結合によって安定化され、抗原に特異的に結合する能力を有するものをいう。用語「単鎖免疫グロブリン」又は「単鎖抗体」(本明細書において区別なく使用される)とは、重鎖及び軽鎖からなる2つのポリペプチド鎖構造を有するタンパク質であって、該鎖が例えば鎖間ペプチドリンカーによって安定化され、抗原に特異的に結合する能力を有するものをいう。用語「ドメイン」とは、例えばβプリーツシート及び/又は鎖内ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含む(例えば、3〜4個のペプチドループを含む)重鎖又は軽鎖ポリペプチドの球状領域をいう。さらに、ドメインは、「定常」ドメイン又は「可変」ドメインとも呼ばれ、これは、「定常」ドメインの場合には様々なクラスメンバーのドメイン内における配列多様性の相対的な欠如、又は「可変」ドメインの場合には様々なクラスメンバーのドメイン内における有意な多様性に基づく。抗体又はポリペプチド「ドメイン」は、当該技術分野では、抗体又はポリペプチド「領域」と区別なく呼ばれる場合が多い。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域又は「CL」ドメインと区別なく呼ばれる。抗体の重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域又は「CH」ドメインと区別なく呼ばれる。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域又は「VL」ドメインと区別なく呼ばれる。抗体の重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域又は「VH」ドメインと区別なく呼ばれる。
【0028】
免疫グロブリン又は抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナルであることができ、かつ、単量体又は重合体形態で存在することができ、例えば、五量体形態で存在するIgM抗体及び/又は単量体、二量体又は多量体形態で存在するIgA抗体であることができる。用語「断片」とは、そのままの若しくは完全な抗体又は抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体又は抗体鎖の一部又は部分をいう。断片は、そのままの若しくは完全な抗体又は抗体鎖の化学的又は酵素的処理によって得ることができる。また、断片は、組換え手段によって得ることもできる。典型的な断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc及び/又はFv断片が挙げられる。
【0029】
用語「抗原結合断片」とは、免疫グロブリン又は抗体のポリペプチド部分であって、抗原を結合させる又は抗原結合(すなわち、特異的結合)に対してそのままの抗体と(すなわち、これらのものが由来するそのままの抗体と)拮抗するものをいう。結合断片は、組換えDNA技術によって又はそのままの免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的切断によって産生できる。結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖及び単鎖抗体が挙げられる。
【0030】
ここで使用するときに、用語「サンプル」とは、精製される標的タンパク質を含む任意の組成物又は混合物をいう。サンプルは、生物学的源又は他の源に由来してもよい。生物学的源としては、植物及び動物の細胞、組織及び臓器などの真核生物源及び原核生物源が挙げられる。いくつかの実施形態では、サンプルは、精製されるべき目的のタンパク質を含む生物医薬製剤を含む。特定の実施形態では、サンプルは、精製されるべき目的のタンパク質を含有する細胞培養原料である。また、サンプルとしては、標的タンパク質又は目的のタンパク質と混合した状態で見出される希釈液、緩衝液、界面活性剤及び汚染性種、破片等を挙げることもできる。サンプルは、「部分的に精製された」ものであってよく(すなわち、ろ過工程などの1回以上の精製工程に供されている)又は標的分子を産生する宿主細胞若しくは生物から直接得たものでもよい(例えば、サンプルは、採取された細胞培養液を含むことができる)。いくつかの実施形態では、ここに記載のフロースルー精製プロセスに供されるサンプルは、結合及び溶出クロマトグラフィー工程、例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーからの溶出液である。
【0031】
用語「ウイルス膜目詰まり不純物」又は「ウイルス膜目詰まり種」とは、ウイルス粒子を保持するように設計された多孔質膜、すなわち、ウイルスろ過膜又はウイルス保持膜の孔閉塞又は汚れに有意に寄与する溶液の任意の可溶性又は可溶化成分をいうことができる。一般に、これらの種のサイズは、目的のタンパク質よりも大きく、場合によってはウイルス膜によって保持されることを目的とするウイルス粒子の大きさに匹敵し得る。
【0032】
様々な実施形態において、ここで提供される組成物は、このようなウイルス膜目詰まり種を捕捉するために意図され、かつ、タンパク質精製プロセス中におけるウイルス保持膜の前に使用される。様々な実施形態では、ウイルス膜目詰まり種としては、タンパク質凝集体が挙げられる。
【0033】
本明細書において区別なく使用される用語「タンパク質凝集体」又は「複数のタンパク質凝集体」とは、目的の生成物、例えば治療用タンパク質又は抗体の少なくとも2種の分子の会合物をいう。目的の生成物のうちの少なくとも2種の分子の会合物は、共有結合、非共有結合、ジスルフィド又は非還元性架橋(これらに限定されない)を含めた任意の手段によって生じる場合がある。
【0034】
凝集体の濃度は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、すなわち当該技術分野において周知であり、広く受け入れられている方法を使用してタンパク質サンプル中において測定できる(例えば、Gabrielson外,J.Pharm.Sci.,96,(2007),268−279)。様々な分子量の種の相対的濃度は、UV吸光度を用いて流出液で測定される一方で、それらの画分の分子量は、カラムメーカーの指示に従って、系の検定を実行することによって決定される。
【0035】
本明細書において区別なく使用される用語「二量体」、「複数の二量体」又は「タンパク質二量体」又は「複数のタンパク質二量体」は、主として2種の単量体分子を含む集合体から構成されるが、所定量の三量体及び四量体を含有してもよいタンパク質凝集体の低次画分をいう。この画分は、通常、SECクロマトグラムにおける主単量体ピークの直前の最初の分解可能ピークとして観察される。
【0036】
本明細書において区別なく使用される用語「高分子量凝集体」又は「HMW」とは、タンパク質凝集体の高次画分、すなわち五量体以上をいう。この画分は、通常、SECクロマトグラムにおいて二量体のピークの前の1以上のピークとして観察される。
【0037】
ここで使用するときに、用語「固体支持体」とは、一般に、アクリルアミド及び疎水性結合基を有する共重合体を含む任意の材料(多孔質又は非多孔質)をいう。ここに記載される方法及び組成物において使用される固体支持体形式の例としては、膜、多孔質ビーズ、翼状繊維、モノリス、クロマトグラフィー樹脂、織布及び不織布が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
ここで使用するときに、用語「選択性」とは、移動相と固定相との間の2つの種の分配係数の無次元比をいう。分配係数(Kp)が比Q/Cであり、ここで、Q及びCは、それぞれ結合及び遊離タンパク質濃度である。
【0039】
ここで使用するときに、用語「疎水性結合基」とは、疎水性相互作用として定義される、別の疎水性表面との分子間会合が可能な非極性脂肪族又は芳香族有機「疎水性」残基をいう。典型的な疎水性基は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、フルオロアルキル、アリール等である。特定の実施形態では、疎水性結合基はベンジルアクリルアミドである。
【0040】
用語「中性〜高pH」とは、[H3+][OH-]=1.0×10-14(ここで、pH=−log[H3+])である水中でのイオン平衡から決定される0〜14のスケールで6以上のpHをいう。
【0041】
用語「中〜高伝導度」とは、ミリジーメンス/センチメートルで測定されたイオン伝導度が5mS/cmに等しい又は典型的にそれよりも大きい溶液状態をいう。この溶液の伝導度は、一定の間隔で分離された2つの平坦又は円筒形電極間の溶液の抵抗を決定することによって測定される電解質を有する溶液の電気伝導度である。
【0042】
用語「ウイルスプレフィルター」又は「プレフィルター」とは、ウイルスフィルター若しくはウイルス保持フィルターの上流で使用され、かつ、ウイルスフィルターを早期に詰まらせる不純物、例えば、タンパク質凝集体を除去することによってウイルスフィルターのスループットを改善させるために使用される正方向流れろ過媒体、膜、又は装置をいう。
【0043】
用語「ウイルスフィルター」又は「ウイルス保持フィルター」とは、タンパク質精製プロセスの間にウイルス除去を与えるための、サイズ排除メカニズムによる約20〜100nmのウイルス又はウイルス粒子を保持する膜又は媒体をいう。ウイルス保持フィルターの例としては、Viresolve(登録商標)Pro、Viresolve(登録商標)NFP及びVirosolve(登録商標)NFRが挙げられる。
【0044】
II.例示的な固体支持体
本明細書に開示される実施形態は、単量体の少なくとも1種がアクリルアミドである共重合体を含む固体支持体を提供する。ここに記載される固体支持体は、好ましくは、通常は目的の生成物であるタンパク質の単量体形態よりも、タンパク質凝集体などのウイルスフィルター目詰まり種又は不純物を結合させる。理論に束縛されるものではないが、任意の好適な固体支持体形式を使用することができることが意図される。例えば、固体支持体は、多孔性又は非多孔性であることができ、あるいはモノリス又は膜の形態のように連続的であることができる。また、固体支持体は、粒子、ビーズ又は繊維の形態のように不連続であってもよい。いずれの場合(連続又は不連続)にも、固体支持体の重要な特徴は、高表面積、機械的完全性、水性環境中での完全性及び結合基の近づきやすさを確保するように流れ分布を与える能力を有するというものである。
【0045】
典型的な連続多孔質固体支持体としては、微多孔膜、すなわち約0.05ミクロン〜10ミクロンの間の孔径を有するものが挙げられる。本明細書に開示される実施形態に係る組成物及び方法で使用できる多孔質膜は、本質的に対称又は非対称として分類でき、これは、膜の厚さにわたる又は中空繊維については繊維の微多孔質壁にわたる孔径の均一性をいう。ここで使用するときに、用語「対称膜」とは、膜断面にわたって実質的に均一な孔径を有する膜をいう。ここで使用するときに、用語「非対称膜」とは、平均孔径が膜断面にわたって一定ではない膜をいう。いくつかの実施形態では、非対称膜の場合には、孔径は、膜断面全体にわたる位置に応じて均一に又は不連続的に変化できる。いくつかの実施形態では、非対称膜は、外部表面上の孔径対反対側の外部表面上の孔径の所定の比を有することができ、その比は1よりも実質的に大きい
【0046】
様々な材料から製造された様々な微孔質膜をここに記載組成物及び方法で使用することができる。このような材料の例としては、多糖類、合成及び半合成重合体、金属、金属酸化物、セラミック、ガラス及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
ここに記載の組成物及び方法において使用できる微孔質膜を製造するために使用できる例示的な重合体としては、置換又は非置換ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリメタクリルアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリビニル親水性重合体、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体、芳香族ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、過フッ素化熱可塑性重合体、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、超高分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエステル及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
典型的な市販の微孔質膜は、EMDミリポア社(米国マサチューセッツ州ビレリカ)から入手できるDurapore(登録商標)及びMillipore Express(登録商標);ポール・コーポレーション(米国ニューヨーク州ポートワシントン)から入手できるSupor(登録商標);及びSartorius Stedim Biotech S.A.(フランス国オバーニュセデックス)から入手できるSartopore(登録商標)及びSartobran(登録商標)である。
【0049】
他の例示的な連続固体支持体は、BIA Separations(オーストリア国フィラッハ)から入手できるCIM(登録商標)モノリシック材料などのモノリスである。
【0050】
代表的な不連続固体支持体としては、多孔質クロマトグラフィービーズが挙げられる。当業者であれば容易に認識されるように、クロマトグラフィービーズは、多糖類、アクリレート、メタクリレート、ポリスチレン、ビニルエーテル、制御孔ガラス、セラミック等といった多種多様の重合体材料及び無機材料から製造できる。
【0051】
典型的な市販のクロマトグラフィービーズは、EMDミリポア社製のCPG;GE Healthcare Life Sciences AB社製のSepharose(登録商標);東ソー株式会社性のTOYOPEARL(登録商標);及びライフテクノロジーズ社製のPOROS(登録商標)である。
【0052】
他の例示的な固体支持体は、繊維マット及びフェルトなどの製織又は不織繊維材料、並びに好適なハウジング、例えばクロマトグラフィーカラム、使い捨てプラスチックハウジングなどに充填される繊維である。また、典型的な固体支持体としては、翼状繊維も挙げられる。
【0053】
III.例示的な結合基
本明細書に記載される様々な実施形態において、組成物は、アクリルアミド及び結合基の共重合体を含む。
【0054】
多種多様の結合基又はリガンドを固体支持体に結合させ、そしてここで記載されるようにサンプルからのタンパク質凝集体の効果的な除去のために使用することができる。一般に、結合基は、溶液中のタンパク質凝集体を求引しかつそれに結合することが可能でなければならない。結合基へのタンパク質求引は、イオン性(例えば、陽イオン交換基)、極性、分散性、疎水性、親和性、金属キレート化又はファンデルワールスを含めて、任意のタイプのものとすることができる。
【0055】
例示的なイオン結合基としては、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシレート、第一級、第二級、第三級アミン及び第四級アンモニウム;複素環式アミン、例えばピリジン、ピリミジン、ピリジニウム、ピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
極性基としては、C−O、C=O、C−N、C=N、C≡N、N−H、O−H、C−F、C−Cl、C−Br、C−S、S−H、S−O、S=O、C−P、P−O、P=O、P−Hなどの分極化化学結合を有する様々な化学物質が挙げられる。例示的な極性基としては、カルボニル、カルボキシル、アルコール、チオール、アミド、ハロゲン化物、アミン、エステル、エーテル、チオエステルなどである。
【0057】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ここに記載される組成物は、アクリルアミド及び疎水性結合基の共重合体を含む。疎水性結合基は、疎水性相互作用が可能である。典型的な疎水性基は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、フルオロアルキル、アリール等である。例示的なアリール基は、ベンジル、フェニル、ナフチル、トリル等である。
【0058】
親和性結合基は、一斉に標的タンパク質との高特異的相互作用を与える数個の結合官能基の配列である。例示的な親和性結合基としては、プロテインA及びプロテインG並びにそれらのドメイン及び変異体が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、結合基はイオン性基である。特定の実施形態では、結合基は、負に荷電したスルホン酸基である。一般に、負に荷電したスルホン酸基はいくつかの利点を有する。例えば、これらのものは、溶液状の正に荷電したタンパク質を結合させる広範な適用可能性を示す;その化学物質は、安価でかつ簡単であり、多くの合成製造方法が容易に利用できる;結合基とタンパク質との間の相互作用はよく理解されており(例えば、Stein外,J.Chrom.B,848(2007)151−158参照)、この相互作用は、溶液条件を変更することによって容易に操作でき、また、このような相互作用は、他の相互作用から隔離できる。
【0060】
いくつかの実施形態では、好ましい結合基は疎水性基である。疎水性結合基は、イオン結合基があまり効果的でない高イオン伝導度条件下で溶液種を結合させるという利点を与える。特定の実施形態では、結合基は、芳香族炭化水素基、例えば、ベンジル基又はエチル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基、ヒドロキシプロピル基若しくはフェニル基である。
【0061】
結合基の他に、固体支持体は、結合基と共に存在し、かつ、次のいずれか1つ以上を与える中性基(例えば、アクリルアミド)を含有することができる:結合基を互いに最適な距離に分離し、多孔質支持体に水湿潤性を与え、サンプルと固体支持体との間の非特異的相互作用を低減し、吸水率を制御し、そして結合基を含む重合体構造を膨潤させ、結合基を含む重合体構造に適切な機械的特性を与え、固体支持体に対する重合体構造の密着性を向上させ、容量及び/又は選択性を増大させる、サンプルとの二次相互作用を与える。
【0062】
例示的な中性基は、アルコール、糖、グリコール、エーテル、アミド、ニトリルなどである。好適な中性基は、単純なアミド基C(=O)−NH2である。
【0063】
IV.固体支持体に結合基を結合させる方法
ここに記載の組成物及び方法では、好適な結合基(例えば、イオン性又は疎水性結合基)を固体支持体に結合させて、目的の生成物に対する、より高いタンパク質凝集体結合容量を与える。
【0064】
ここに記載の組成物及び方法は、該組成物中にアクリルアミドが存在すると、高次のタンパク質凝集体を含めてウイルス膜目詰まり種に対する固体支持体の選択性が有意に向上するという驚くべきかつ予想外の発見に基づくものである。
【0065】
ここに記載される組成物及び方法は、フロースルーモードで、一般に例えば五量体以上などの高次の凝集体と比較してタンパク質の単量体形態から分離するのがより困難な例えば二量体、三量体及び四量体などの低次タンパク質凝集体の除去に特に効果的である。
【0066】
当該技術分野で知られている様々な方法及び本明細書に記載のものは、ここに記載される方法で使用するための固体支持体に結合基を結合させるために使用できる。一般に、成功する結合の基準としては、所望の結合基密度の達成及び結合基の脱離率の低さ(すなわち、結合基の低浸出)が挙げられる。結合基は、固体支持体に直接結合でき、又は重合体分子に取り入れられることができ、これをその後固体支持体に結合させることができる。あるいは、結合基を、固体支持体上に塗布された架橋被膜に、被膜と固体支持体との間に化学結合を形成させて又は形成させずに取り入れることができる。
【0067】
固体支持体に結合する基を結合させるための多数の方法が当該技術分野で知られている(例えば、Ulbricht,M.,Advanced Functional Polymer Membranes,Polymer,47,2006,2217−2262)。これらの方法としては、好適なカップリング化学により固体支持体を結合基により直接変性させること;重合体分子を吸着及び結合させることが挙げられる。後者は、「に」グラフトさせる(重合体が表面との反応の前に予め作製されている場合)又は「から」グラフトする(重合が表面基を使用して開始される場合)ことによって達成できる。
【0068】
結合基を有する重合体を生じさせる際に使用される単量体の選択は、単量体の反応性によって決定される。様々な単量体の種類の反応性及び重合体組成物に及ぼす影響は、十分に研究され、文書化されている(例えば、Polymer Handbook,第3版,John Wiley & Sons,1989,p.II参照)。重合体の組成及びその構造を予測する単量体の十分に受け入れられているパラメータは単量体の反応性比である(例えば、Odian,J.,Principles of Polymerization,第4版,John Wiley & Sons,2004,p.466参照)。
【0069】
固体支持体にイオン性又は疎水性結合基を結合させるための好ましい方法は、固体支持体上に塗布された架橋被膜に結合基を導入する現場重合反応である。この方法は、米国特許第4944879号及び同4618533号並びに米国特許出願公開第US2009/208784号に開示されている。この方法は、容易なだけでなく経済的である。疎水性又は荷電結合リガンドの密度を減少させるために使用できる中性単量体は、例えば、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシエチルといったアクリル系、メタクリル系及びアクリルアミド単量体の大きな基から選択できる。本明細書に記載された様々な実施形態では、中性単量体はアクリルアミドである。
【0070】
固体支持体上に被覆される結合基含有重合体の代表的な化学構造を式Aに示す。重合体を被覆するために、一般には、このものは他の重合体に架橋される。式Aでは、R1が疎水性又は陽イオン交換基を有する任意の脂肪族又は芳香族有機残基であり、例えば、エチル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル、ヒドロキシプロピル、フェニル及びベンジル基から選択される疎水性脂肪族若しくは芳香族有機基又はスルホン酸、スルフェート、リン酸、ホスホン酸又はカルボン酸基から選択される陽イオン交換基などであり、R2が任意の非荷電脂肪族又は芳香族有機リンカー、例えば、任意の2個以上の重合体鎖間のアクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル及びスチレンなどである重合体構造が示されている。
【0071】
式Aに示される重合体構造において、x、y及びzは重合体中における各単量体の平均モル分率であり、かつ、独立して約0.01〜0.99の範囲にあり;mは、リンカーを介した第2の重合体への結合を意味する。
【0072】
固体支持体にグラフトする結合基含有重合体の代表的な化学構造を式Bに示す。式Bにおいて、R1が疎水性又は陽イオン交換基を含有する任意の脂肪族又は芳香族有機残基、例えば、エチル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル、ヒドロキシプロピル、フェニル及びベンジルからなる群から選択される疎水性脂肪族若しくは芳香族有機基又はスルホン酸、スルフェート、リン酸、ホスホン酸若しくはカルボン酸基から選択される陽イオン交換基などである重合体構造が示されている。
【0073】
式Bに示された重合体構造において、x及びyは重合体中における各単量体の平均モル分率であり、独立して約0.01〜0.99の範囲である。
【0074】
いくつかの実施形態では、結合基(例えば、疎水性結合基)を含む重合体は、ブロック共重合体であり、これは、このものが一方のタイプの単量体の長いストリング又はブロック、その後異なるタイプの単量体の長いストリング又はブロックを有することを意味する。
【0075】
他の実施形態では、結合基を含有する共重合体は、単量体をランダムな順序で含有する。
【0076】
さらに他の実施形態では、結合基を含有する共重合体は、各単量体が、常に、異なる種類の2つの単量体にどちらかの側で隣接している交互共重合体である。
【0077】
他の実施形態では、結合基(例えば、疎水性結合基)を含む共重合体は、単量体をランダムな順序で含有する。
【0078】
他の実施形態では、結合基を含有する共重合体は交互共重合体であるのに対し、各単量体は、常に異なる種類の2つの単量体に隣接している。
【0079】
IV.ここに記載される組成物を取り入れた装置
いくつかの実施形態では、ここに記載された組成物は、装置に取り入れられる。微孔質膜などの固体支持体に適した装置としては、ろ過カートリッジ、カプセル及びポッドが挙げられる。また、例示的な装置としては、本明細書において参照により援用される米国特許公開第US20100288690A1号及び同20080257814A1号に開示された積層板ろ過カートリッジが挙げられる。これらの装置の場合には、固体支持体は、重合体ハウジングに永久的に結合され、該装置は、液体入口、出口及び通気口を有し、さらに、保持される液体の量を最小限に抑える。他の例示的な装置としては、プリーツフィルターカートリッジ及び渦巻きフィルターカートリッジが挙げられる。他の例示的な装置はクロマトグラフィーカラムである。クロマトグラフィーカラムは、ガラス、金属、セラミック及びプラスチックといった多数の好適な材料から製造できる。これらのカラムに、エンドユーザーが固体支持体を充填することができ、又は製造業者が予め充填し、そして充填された状態でエンドユーザーに出荷できる。
【0080】
V.ここに記載された組成物及び装置の使用方法
ここに記載された組成物を含む装置は、フロースルーモードでのタンパク質凝集体の除去のために使用できる。実験規模分離のための適用前に、プロセスを開発し、そしてpH及び伝導度などの適切な溶液条件について検証しなければならず、また、装置へのタンパク質負荷の範囲を決定しなければならない。プロセス開発及び検証のための方法は広く知られており、当該技術分野において日常的に実施されている。
【0081】
装置は、一般に、使用前にフラッシュされ、消毒され、そして適切な緩衝液で平衡化される。タンパク質溶液は、所望の伝導度及びpHに調整され、続いて一定の圧力又は一定の流量のいずれかで装置を通してポンピングされる。流出液を回収し、そしてタンパク質の収量及び凝集体濃度を分析することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、ここに記載されるように、凝集体除去用の装置は、例えば、米国特許第7118675号(その全体が参照により本明細書で援用される)に教示されるようなウイルス粒子のサイズベースの除去を確実にするように設計されるウイルスろ過装置に直接接続される。
【0083】
限定として解釈されるべきではない以下の例により実施形態をさらに例示する。本願を通して引用した全ての参考文献、特許及び公開特許出願並びに図面の内容は、参照により本明細書で援用する。
【実施例】
【0084】
例1.アクリルアミドを含有する負に荷電したフィルターの製造及びジメチルアクリルアミドを含むフィルターとの比較
この実験は、タンパク質凝集体などの不純物を除去するために使用される吸着膜を製造するために共単量体としてアクリルアミドを添加することの予想外の利点を実証するものである。
【0085】
一連の陽イオン交換(CEX)表面変性膜を結合基で製造し、この場合に、これらのものは負に荷電されたスルホン酸残基である。CEX密度を、表面変性のために使用される反応溶液の配合によって制御する。より低いCEX密度を達成するために使用される非荷電反応性共単量体の効果を評価するために、荷電していない反応性単量体であるアクリルアミド(AM)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM)、メタクリル酸ベンジル(BMA)又はアクリル酸イソオクチル(IOA)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMAM)を様々な量で反応溶液に添加する。これらの共単量体は、様々なサイズ及び疎水性又は親水性の程度をカバーするように選択される。
【0086】
1.5〜2.5重量%の範囲のCEX単量体2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)をAM、DMAM、BMA、IOA又はHPMAM及び架橋剤のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.8重量%)とUV開始剤イルガキュア2959(0.2重量%)(2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン)との一定質量パーセントと共に含有する一連の水性又は水:アセトニトリル(50:50)溶液を製造する。0.10μmの孔径等級及び0.100mmの厚さを有する親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜を、14cm×14cmの正方形片に切断し、そして各片を30秒間にわたって溶液の一つに浸漬して完全な湿潤を確保する。過剰の溶液を除去し、そして膜をUV放射線に曝露する。その後、この膜を脱イオン水ですすぎ、そして空気中で乾燥させる。表Iは、共単量体の効果を評価するために製造されたCEX表面変性膜の変形例を列挙する。
【0087】
【表1】
【0088】
アクリルアミドを含有する負に荷電したプレフィルター及び他の共単量体含有プレフィルターの評価を、ろ過中に下流のウイルス保持フィルターのスループットを向上させるためにそれらのプレフィルトレーション性能を決定することによって達成する。供給流れは、一般に、フィルターの上流にウイルスプレフィルターを有しないウイルスフィルターを急速に汚すポリクローナルIgG凝集体を含有する。使用される結合基は負に荷電しているため、IgGに対する強CEX溶液結合条件を使用してプレフィルターの性能を評価する。
【0089】
ウイルスフィルターによって与えられる保護を試験するためのポリクローナルIgG供給液を4.0g/LのIgG濃度で、SeraCare Life Sciences社のヒトガンマグロブリン粉末(カタログ番号HS−470−90)を使用してpH4、2.0mS/cmでの10mM酢酸ナトリウムで新たに調製する。最終pH及び伝導度の調節は、10MのHCl、NaOH又は4MのNaClを使用して行い、そしてこの溶液を使用前に滅菌ろ過する。
【0090】
3.1cm2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を、膜の3層を使用して予備成形し、そしてViresolve(登録商標)Pro Micro装置(EMDミリポア社、米国マサチューセッツ州ビレリカ)と1:1の面積比で直列に取り付ける。両方の装置を、緩衝液(pH4、10mM酢酸、2mS/cm)のみを使用して予め湿らせ、空気を除去するように排気する。30psiの一定圧力下で、1分当たりの緩衝液の初期フラックス(mL)を、初期透過率の値に到達させるために20分間かけて質量を測定することによって決定する。供給物を30psiで4g/LポリクローナルIgG供給物に切り替え、容量スループットを、フラックスが初期緩衝液のみのフラックスの25%に低下するまで測定し、時間に対してプロットする。ポリクローナルIgG溶液の総スループットをV75でL/m2で測定し、膜のm2当たりのポリクローナルIgGのkgに変換する。
【0091】
表1及び図2から分かるように、1.8%のAMPS、3.0%のアクリルアミドで変性された膜3は、他のAMPSと共単量体との組み合わせよりも大きいウイルス除去フィルターに対する保護(大きいマススループット)を与える。アクリルアミド含有膜3は、ベース膜制御膜2及びプレフィルターされていないウイルス膜1を超える高いマススループットを与える。
【0092】
例2.溶液中におけるタンパク質の存在に応じた透過性の変化はアクリルアミドを含む表面被膜の3次元的性質の指標である
この例は、共単量体としてアクリルアミドを使用して調製された表面化学の性質を実証するものである。例1で使用した装置の組み合わせの透過性を、4g/LのIgGを含む供給溶液及びいかなるタンパク質も含まない同一の緩衝液の両方を使用して試験する。共単量体としてアクリルアミドを含む装置は、列の透過性がIgGの存在下で他のプレフィルター及び非プレフィルターVPro(膜1)の場合における透過性と比較して増加する(表2、図3及び4)点で、いくつかの独特の特性を有することが観察される。理論に束縛されるものではないが、膜3においてCEX結合基AMPSを有する小さな親水性共重合アクリルアミドを使用すると、独特の高分子ヒドロゲル(図5)が可能になり、これはIgGが架橋イオンを形成したときに容易に収縮し、それによって膜孔を開き、透過性の増加をもたらすと仮定される。
【0093】
共単量体BMA及びDMAMを使用した表2におけるより疎水性の配合物(膜4、5、及び9)は、透過性に及ぼす同じ効果を有しない(表2、図3及び4)。
【0094】
【表2】
【0095】
例3.伝導度に応じたタンパク質結合容量
この例は、pH4.0及び様々な溶液伝導度で表3の表面変性膜の静的IgG結合容量を測定することによって、共単量体としてのアクリルアミドのユニークな効果を実証するものである。
【0096】
静的結合容量を測定するためのポリクローナルIgG供給液を1.0g/LのIgG濃度で、SeraCare Life Sciences社のヒトガンマグロブリン粉末(カタログ番号HS−470−90)を使用してpH4、10mM酢酸ナトリウムで新たに調製する。表3における最終pH4.0及び伝導度を、10MのHCl、NaOH又はNaClを使用して作製する。この溶液を使用前に滅菌ろ過する。
【0097】
膜サンプルを、環状ダイを使用して既知の半径に切断する。膜体積(V=πr2h)を、100ミクロンの膜の厚さを使用して計算する。膜ディスクサンプルを水で予め湿らせ、そして表3の通りに適切なpH4.0緩衝液に交換する。その後、膜ディスクを、pH4.0で1g/LのIgGの適切な容量に入れる。目標負荷は、2mS/cmについて約100mg/ml、15及び25mS/cmについて50mg/ml、37及び49mS/cmについて25mg/mlである。膜サンプル及びIgG溶液を8時間にわたって回転混合させ、そして上清をUV280吸光度によって最終IgG濃度について測定する。膜の1mLの当たりのIgG(mg)で表される静的IgG容量を、最終上清濃度に基づいて物質収支によって算出する。表3及び図6における最終膜静的IgG容量は、アクリルアミドを含み(すなわち膜3及び17)、かつ、MBAMの代わりにテトラ(エチレングリコール)ジアクリレート架橋剤を有する膜が試験を受けた他の膜(すなわち、ベース膜2)、より多くの結合基を有する膜(すなわち、膜7及び8)、アクリルアミドなしの膜(すなわち、膜8、16、18)及び共単量体DMAM有する膜(すなわち、膜7、5、19)よりもpH4、25mS/cmまでで高い静的IgG容量を有することを示す。
【0098】
膜3及び17においてCEX結合基AMPSを有する小さな中性の水性アクリルアミドの存在は、より大きな静的IgG容量を与えるユニークな高分子ヒドロゲルを可能にする。
【0099】
【表3】
【0100】
例4.CEX動的結合からの溶出液のSEC測定によって評価されるときのタンパク質凝集体に対するアクリルアミド含有膜の選択性
この例は、IgG凝集体に対するアクリルアミド含有膜の選択性を実証する。
【0101】
動的CEX凝集体容量を表3の膜について測定して、膜の凝集体選択性の差を定量化する。凝集体を含むポリクローナルIgG供給物を使用して、表3における膜に対する結合条件下で同等の動的CEX負荷を与える。同等の負荷後のCEXの溶出液を使用して、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、表4の膜のIgG容量、凝集態選択性及び凝集体容量を決定する。
【0102】
この供給物を10.0g/LのIgGで、SeraCare Life Sciences社のヒトガンマグロブリン粉末(カタログ番号HS−470−90)を使用して2.0mS/cm(NaClを使用)でのpH4の10mM酢酸ナトリウムで新たに調製する。最終pH及び伝導度の調節を、10MのHCl、NaOH又は4MのNaClを使用して行い、この溶液を使用前に滅菌ろ過する。
【0103】
3.1cm2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を、膜の3層を使用して予備成形する。装置を20mlの緩衝液、pH4、10mM酢酸塩、2mS/cmで予め湿らせ、そしてフラッシュし、その後40mLの10g/L IgG(4.0kg/L又は1.3kg/m2の負荷)を0.2mL/分(2CV/分)で個々の装置に流す。装置を2mL(20CV)の緩衝液で洗浄し、そして2mL(20CV)のpH4、0.5MのNaClで溶出させる。
【0104】
溶出液を、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して分子量種について分析する。SECクロマトグラムとIgG結合容量(UV280の溶出液濃度から)との積分から決定されるパーセント凝集体を使用して、表4並びに図7及び8における膜の凝集体容量を算出する。
【0105】
図9は、表4からの膜3、16、5及び8からの供給ローディング溶液及び溶出液を含む正規化SEC−HPLCオーバーレイの代表的なクロマトグラムである。このオーバーレイは、アクリルアミドを含有する膜3の溶出が中性共単量体なしの膜8及び16又は共単量体DMAMを有する膜5よりも高い凝集体割合を有することを示す。この結果は、アクリルアミドの存在が凝集体に対する膜選択性を改善することを実証するものである。
【0106】
表4並びに図7及び8における凝集体容量は、アクリルアミド含有膜3及び17(MBAMの代わりにテトラ(エチレングリコール)ジアクリレート架橋剤を有する)について最も高い。アクリルアミドを含有する膜は、ベース膜2、多くの結合基を有する膜(膜8及び7)、アクリルアミドのない膜(膜8、16、18)並びにDMAMを有する膜(膜7、5、19)よりも高い凝集体容量を有する。
【0107】
図8は、より高い凝集体容量を有する膜が良好なViresolve(登録商標)Pro保護を与え、それにより例1のプロセスを使用して、より高いIgGマススループットをもたらす傾向があることを示す。
【0108】
【表4】
【0109】
例5.アクリルアミドなしのプレフィルターと比較したアクリルアミド含有疎水性プレフィルターの製造及び試験
この例は、疎水性結合条件(中性〜高pH及び中〜高伝導度)下でウイルスフィルターを保護するために疎水性結合基を有する共単量体としてアクリルアミドを使用することの利点を実証するものである。
【0110】
疎水性単量体のN−ベンジルアクリルアミド2.5重量%(Alfa Aesar L11450)を結合基として使用し、そして2.0重量%のアクリルアミド及び架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.8重量%)と共重合させる。これらの単量体を50:50水:MPD((±)−2−メチル−2,4−ペンタンジオール)に溶解させ、そして0.22ミクロン定格親水性ポリエーテルスルホン(PES)膜の14×14cmシートを30秒間にわたってこの溶液に浸漬させ、そして過剰の溶液を除去する。重合を、電子ビーム(170kVで2.5MRad)を使用して開始させ、その後、膜を脱イオン水ですすぎ、そして空気中で乾燥させた。アクリルアミド共単量体あり及びなしの疎水性結合基を有するプレフィルター膜について、下流ウイルスフィルターのスループットを向上させるためにそれらのプレフィルトレーション性能を評価する。供給流れは、一般にプレフィルターしていないウイルスフィルターを急速に汚すポリクローナルIgG凝集体を含有する(例1)。結合基は疎水性なので、アクリルアミドあり及びなしの効果を、一般に抗体の疎水性相互作用を強化する中性〜高pH及び中〜高伝導度の溶液条件下で評価する。
【0111】
ポリクローナルIgG供給物を0.5又は2.0g/LのIgG、SeraCare Life Sciences社のヒトガンマグロブリン粉末(カタログ番号HS−470−90)で、トリス緩衝液及びNaClを使用してpH7.0、5mS/cm、pH7.5、15mS/cm及びpH6.0、25mS/cmを使用して新たに調製する。最終pH及び伝導度の調節を、10MのHCl、NaOH又は4MのNaClを使用して行い、この溶液を使用前に滅菌ろ過する。
【0112】
3.1cm2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を、膜の3層を使用して予備成形し、そしてViresolve(登録商標)Pro Micro装置(EMDミリポア社、米国マサチューセッツ州ビレリカ)と1:1の面積比で直列に取り付ける。両方の装置を、緩衝液を使用して予め湿らせ、空気を除去するように排気する。30psiの一定圧力下で、緩衝液の初期フラックス(mL/分)を、初期の一定の透過率値を決定するために20分間かけて質量で測定する。供給物を30psiでポリクローナルIgG溶液に切り替え、そして容量スループットを、フラックスが初期緩衝液のフラックスの25%に低下するまで測定し、時間に対してプロットする。ポリクローナルIgG溶液の総スループットをV75でL/m2で測定し、膜のm2当たりのポリクローナルIgGのkgに変換する。表5並びに図10、11及び12から分かるように、2.5%のBAM、1.0又は2.0%のアクリルアミドで変性された膜3及び4は、アクリルアミドを含有しない膜5、6、7又は8よりも大きいウイルス除去フィルターに対する保護(大きいマススループット)を与える。また、アクリルアミド含有膜3及び4は、3つの溶液条件下で、Viresolve(登録商標)プレフィルター(主として親水性メカニズム)と同様のマススループットを与え、Viresolve(登録商標)Shield(CEXメカニズム)プレフィルターよりもかなり良好なスループットを与える。
【0113】
【表5】
【0114】
例6.ポリクローナルIgGを使用した、アクリルアミド含有疎水性プレフィルターと市販のプレフィルター及び未変性ベース膜との比較
この例は、疎水性結合リガンドN−ベンジルアクリルアミド(BAM)及びアクリルアミド(AM)の表面変性化学的性質を有する例5(表5)からの膜(3)が、疎水性結合条件(中性〜高pH及び中〜高伝導度)下でウイルスフィルターを保護することを実証するものである。観察されるように、膜(3)は、市販のプレフィルター及び非変性ベース重合体膜よりも良好に、下流ウイルスフィルター(Viresolve(登録商標)Pro、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)のポリクローナルIgGマススループットを向上させる。
【0115】
表6のプレフィルターを、下流ウイルスフィルターのポリクローナルIgGマススループットを向上させるためにプレフィルトレーション性能について評価した。膜サンプル(1)は、Viresolve(登録商標)Shield、すなわち、CEXメカニズムを基礎とする表面変性を有する膜フィルターであり(VPMSKITNB9、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社);サンプル(2)は、OptiScale−40 Viresolve(登録商標)プレフィルター、すなわち5cm2のろ過面積を有する疎水性メカニズムを基礎とするデプスフィルター(SSPVA40NM9、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)である。
【0116】
膜(4)は、110μmの厚さを有する親水化ポリエーテルスルホン(PES)0.2μm膜(エクスプレス滅菌グレード、GEPP、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)である。膜(5)は、170μmの厚さを有する親水性ナイロン(ポリアミド)0.20μm膜(GNWP、米国マサチューセッツ州ビレリカEMDミリポア社)である。膜(6)は、110μmの厚さを有する非変性ポリエーテルスルホン(PES)0.2μm膜(GEHP、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)である。
【0117】
供給流れは、プレフィルターされていないウイルスフィルターを急速に汚すポリクローナルIgG凝集体を含有する(例1)。膜(3)の結合基は疎水性のため、そのプレフィルトレーション性能を、一般に抗体の疎水性相互作用を強化する溶液条件(中性〜高pH及び中〜高伝導度)下で評価した。
【0118】
ポリクローナルIgG供給物を2.0g/LのIgG、SeraCare Life Sciences社のヒトガンマグロブリン粉末(カタログ番号HS−470−90)で、酢酸塩緩衝液及びNaClを使用してpH6.0、25mS/cmで新たに調製する。最終pH及び伝導度の調節を、10MのHCl、NaOH又は4MのNaClを使用して行い、この溶液を使用前に滅菌ろ過する。
【0119】
3.1cm2のろ過面積を有するマイクロろ過装置を、膜の2又は3層を使用して予備成形して同等の厚さ又は総容量を得、そしてウイルスろ過装置Viresolve(登録商標)Pro Micro(EMDミリポア社、米国マサチューセッツ州ビレリカ)と1:1の面積比で直列に取り付ける。両方の装置を、緩衝液を使用して予め湿らせ、空気を除去するように排気する。30psiの一定圧力下で、緩衝液のみの初期フラックス(mL/分)を、初期の一定のフラックス値を決定するために20分間かけて質量で測定する。供給物を30psiでポリクローナルIgGの緩衝溶液に切り替え、そして容量スループットを、フラックスが初期緩衝液のフラックスの25%及び10%に低下するまで測定し、時間に対してプロットする。ポリクローナルIgG溶液の総スループットをV75でL/m2で測定し、膜のm2当たりのポリクローナルIgGのkgに変換する。
【0120】
表6並びに図13から分かるように、2.5%のBAM、2.0%のアクリルアミド、0.8%のMBAMで変性された膜(3)は、市販の膜フィルター(1)及び(4)並びに非変性ベース重合体膜(5)及び(6)よりも大きなウイルス除去フィルターに対する保護(大きいポリクローナルIgGのマススループット)を与える。これは、アクリルアミドを有する疎水性リガンドBAM共重合体を使用した表面変性が、市販の膜フィルター(1)、すなわちCEX機構及び親水化PES(4)並びにポリアミドから構成される非変性膜(5)及びポリエーテルスルホンから構成される非変性膜(6)よりも、典型的な疎水性結合条件(pH6、25mS/cm)下で良好に保護されたことを実証するものである。膜(3)は、3.1cm2に正規化されたときに、主として疎水性メカニズムによりタンパク質を吸着することが知られているサンプル(2)のViresolve(登録商標)プレフィルター(マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)に対してより大きなマススループットを与えた。
【0121】
【表6】
【0122】
例7.モノクローナル抗体によるアクリルアミド含有疎水性プレフィルター性能
この例は、疎水性結合リガンドN−ベンジルアクリルアミド(BAM)と共にアクリルアミド(AM)の表面変性化学的性質を有する例6(表6)からの膜(3)が、疎水性結合条件下でウイルスフィルター(Viresolve(登録商標)Pro、マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)を保護してモノクローナル抗体(MAb)のマススループットを改善することを実証するものである。これらの例は、膜(3)を有するウイルスフィルターをプレフィルターすると、ポリアミド(5)から構成される非変性プレフィルター又は親水化PES膜(4)を使用したプレフィルトレーションなしのウイルスろ過よりも良好に機能することを実証した。
【0123】
表7における膜プレフィルター(3)、(4)及び(5)を、下流のウイルスフィルター(Viresolve(登録商標)Pro、マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)によるモノクローナル抗体(MAb)のマススループットを向上させるために、疎水性結合条件下(中性〜高pH及び中〜高伝導度)でそれらのプレフィルトレーション性能について評価した。
【0124】
膜(4)は、110μmの厚さを有する親水化ポリエーテルスルホン(PES)0.2μm膜(エクスプレス滅菌グレード、GEPP、米国マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)である。膜(5)は、170μmの厚さを有する親水性ナイロン(ポリアミド)0.20μm膜(GNWP、米国マサチューセッツ州ビレリカEMDミリポア社)である。
【0125】
MAb供給流れMAb01、05及び07の詳細並びにろ過容量実験条件及び結果を表7、図14〜16に詳しく示す。3種のMAbを、全て少なくともプロテインA溶出後の状態にまで精製し、そして溶液条件を10M HCl、NaOH又は4M NaClを使用して表7の条件に調節した。
【0126】
0.8cm2のろ過面積を有するステンレス鋼Swinney13mm直径フィルターホルダー(XX3001200、マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)を、プレフィルトレーション膜(3)、(4)及び(5)の2又は3層を使用して組み立てて、同等の厚さ及び総容量を得、そしてViresolve(登録商標)Proウイルスろ過膜(マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポア社)の2層を有する同じホルダーを使用して、1:1の面積比で直列に取り付けた。
【0127】
プレフィルター及びウイルス膜装置を、30psiで緩衝液により予め湿らせ、そして試験のためにモノクローナル抗体供給物に移した。容量実験を、166LMH(L/m2.hr)の一定流量で実行し、そして圧力をろ過の上流で監視してろ過列の詰まりを検出した。MAb溶液の総スループットを容量で測定し、そしてウイルス膜のm2当たりのMAbのkgに変換した。
【0128】
3種の異なるMAbを使用した3つの例は、全て、MAbの等電点及び/又は中程度の溶液伝導度に近い、より有利な疎水性結合条件下であった(中性〜高pH及び中〜高伝導度)。
【0129】
図14は、膜(3)が、プレフィルターされていないVProと比較して圧力上昇を低減させる点で有効であることを示す。図15は、膜(3)が、プレフィルターされていないVProと比較してMAb05のマススループットを4倍向上させるようにVProを保護することを示す。図16は、MAb07について、膜(3)が、プレフィルトレーションなしでのVProウイルスろ過並びにポリアミドから構成される非変性膜プレフィルター(5)及び市販の滅菌等級膜フィルター(4)よりも良好に機能するようにVProを保護することを示す。
【0130】
【表7】
【0131】
まとめると、新たに見出された膜の化学的性質は、ウイルスフィルターの保護用のプレフィルターの性能の大幅な改善を可能にする。
【0132】
本明細書は、ほぼ全体が本明細書の範囲内で引用された文献(参照により本明細書で援用する)の教示に照らして理解される。明細書内の実施形態は、実施形態の例示を与えるものであり、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、本開示によって多くの他の実施形態が包含されることが分かる。全ての刊行物及び参考資料は、その全体が参考として援用される。参考資料によって援用されるものが本願明細書と反する又は矛盾する限り、本明細書は、このようなものに取って代わるであろう。ここで、任意の文献の引用は、そのような文献が先行技術であることを認めるものではない。
【0133】
特に断りのない限り、特許請求の範囲を含めて本明細書において使用される成分の量、細胞培養、処理条件などを表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものと理解すべきである。したがって、特に断らない限り、数値パラメータは近似値であり、本明細書に開示された実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化する場合がある。特に断らない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の全ての要素をいうものと理解すべきである。当業者であれば、日常的な実験のみを用いて、ここに記載した特定の実施形態に対する多くの均等を認識し又は確認することができるであろう。このような均等は、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0134】
当業者であれば明らかなように、本明細書に開示された実施形態の多くの改変及び変更を、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例示としてのみ提供され、決して限定を意味するものではない。本明細書及び実施例は、単なる例示であるとみなされるべきであり、本開示の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲によって示されるものとする。
図2
図5
図8
図12
図1
図3
図4
図6
図7
図9
図10
図11
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】