(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-504755(P2017-504755A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(54)【発明の名称】三次元織複合材料からできている部品の耐火
(51)【国際特許分類】
F02C 7/25 20060101AFI20170120BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20170120BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20170120BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20170120BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20170120BHJP
【FI】
F02C7/25
F01D25/24 D
F01D25/24 K
F01D25/00 X
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/00 D
F02C7/00 E
F01D25/24 R
B29C67/14 G
B29C67/14 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-545879(P2016-545879)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月7日
(86)【国際出願番号】FR2015050039
(87)【国際公開番号】WO2015104503
(87)【国際公開日】20150716
(31)【優先権主張番号】1450148
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】サフラン エアクラフト エンジンズ
(71)【出願人】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,ロバン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサルベス,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ル・ボルニュ,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】キレント,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】リエッシュ,ジャン−クリストフ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AA37
4F205AA39
4F205AA40
4F205AD16
4F205AE10
4F205AG03
4F205AH31
4F205HA14
4F205HA19
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC02
4F205HC05
4F205HC06
4F205HC16
4F205HF23
4F205HM13
4F205HT13
4F205HT16
(57)【要約】
本発明は、主マトリックスによって硬化積層された主繊維補強材を備える複合材料でできた、ガスタービンエンジンの部品(1)の耐火方法(S)に関し、耐火方法(S)が、火から保護されるべき部品(1)の表面(3)の形状に相当する同じ形状を与えるように、プレプレグパネル(20)を予備成形するステップ(S1)であって、前記プレプレグパネル(20)が、二次マトリックスによって硬化積層された二次繊維補強材を備える、ステップ(S1)と、そのように予備成形されたプレプレグパネル(20)を部品(1)に付着するステップ(S2)と、耐火層(2)を得るために、前記プレプレグパネル(20)を備え付ける部品(1)の熱処理によって表面(3)にプレプレグパネル(20)を固定するステップ(S3)とを含む耐火方法(S)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主マトリックスによって高密度化された主繊維補強材を備える複合材料でできた、ガスタービンエンジンの部品(1)のための耐火方法(S)であって、
火に対して保護されるべき部品(1)の表面(3)の形状に相当する形状を与えるように、プレプレグパネル(20)を予備成形するステップ(S1)であって、前記プレプレグパネル(20)が、二次マトリックスによって高密度化された二次繊維補強材を備える、ステップ(S1)と、
予備成形されたプレプレグパネル(20)を部品(1)に付着するステップ(S2)と、
耐火保護層(2)を生成するように前記プレプレグパネル(20)で被嵌された部品(1)の熱処理によって表面(3)にプレプレグパネル(20)を固定するステップ(S3)と、
を含む耐火方法(S)。
【請求項2】
熱処理が、部品(1)の劣化温度未満の温度で実施される、請求項1に記載の耐火方法(S)。
【請求項3】
二次繊維補強材が、ガラス繊維を含む、請求項1または2に記載の耐火方法(S)。
【請求項4】
二次マトリックスが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項5】
プレプレグパネル(20)がリングセクタによって予備成形され、前記リングセクタが、重ねることによって、保護される部品(1)の表面(3)に付着される、請求項1から4のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項6】
二次マトリックスが熱可塑性樹脂を備え、予備成形するステップ(S1)が、
保護される部品(1)の表面(3)の形状を与えるように、プレプレグパネル(20)を熱硬化性樹脂のガラス遷移温度よりも高い温度で予備成形するサブステップ(S12)と、
予備成形されたプレプレグパネル(20)と保護される部品(1)の表面(3)との間に粘着フィルムを付着するサブステップ(S14)と、
を含み、熱処理によって固定するステップ(S3)が粘着フィルムを重合するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項7】
リングセクタが互いの上に重なることを保証するために、リングセクタ上に段付けが実施されるサブステップ(S13)を更に含む、組み合わされた請求項5および6による耐火方法(S)。
【請求項8】
二次マトリックスが熱硬化性樹脂を備え、予備成形するステップ(S2)が、保護される部品(1)の表面(3)の形状を与えるように、プレプレグパネル(20)を主マトリックスの重合温度未満の温度で予備成形するサブステップ(S11)を含み、熱処理によって固定するステップ(S3)が、熱硬化性樹脂を重合するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項9】
保護層(2)が、2つの重ねられたプレプレグパネル(20)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項10】
プレプレグパネル(20)が、予備成形するステップ(S1)の間に、同時に重ねられ、予備成形される、請求項9に記載の耐火方法(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、ファン用の保持ケーシングなど、ガスタービンのマトリックスによって高密度化された繊維補強材を含む複合材料からできた部品を備える航空機エンジンのためのガスタービン、およびその関連する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、一般に、ガス流の方向に上流から下流へ、ファン、例えば低圧圧縮機および高圧圧縮機などの1つまたは複数の圧縮機段、燃焼室、例えば高圧タービンおよび低圧タービンなどの1つまたは複数のタービン段、ならびにガス排出管を備える。
【0003】
エンジンは、エンジンの異なる要素に対応する複数の部品を備えるケーシングの内部に格納される。したがって、ファンは、例えばファンケーシングによって取り囲まれ、その軸方向端部にフランジを備える。上流フランジと呼ばれる第1のフランジは、空気入口スリーブをケーシングに固定することができ、一方下流フランジと呼ばれる第2のフランジは、ファンケーシングが中間ケーシングに取り付けられることを可能にする。本明細書では、上流および下流は、ガスタービン内のガス流の方向によって画定される。
【0004】
特にエンジンは、複合材料からできている1つまたは複数の部品を備え、前記複合材料は、マトリックスポリマーによって高密度化された繊維補強材を備える。
【0005】
これは特に、ファンケーシングの場合である。例えば、仏国特許発明第2913053号明細書では、異なる厚さを含む三次元織りによって達成される繊維組織をマンドレル上で重ね合わせた層に巻くことによって、繊維補強材を形成することが提案されている。この技術は、局所化された厚さを容易に増加させることによって、ケーシングの中に保持シールドを更に一体化する。
【0006】
繊維補強材は、繊維、特に炭素、ガラス、アラミドまたはセラミックを含む。そのように、マトリックスは、例えばエポキシド、ビスマレイミドまたはポリイミドなど、典型的にはポリマーマトリックスである。
【0007】
しかし、発火危険区域の中に複合材料でできた部品を導入することは、耐火について様々な法的規制に応じることを意味する。これらの規制は、火事の間、および火事の後で部品の機械的特性を維持すること、更に火事が一旦終了すると、部品を直ちに消火することの両方を含む。このようにして、複合材料でできたファンケーシング上での最初の火事試験は、使用される材料が本質的に自己消火性(または難燃性)ではなく、したがって、保護が絶対に必須であることを示した。
【0008】
欧州特許出願公開第2017072号明細書は、マトリックスを重合するために同時に熱的に処理される、主層および有機マトリックスを含む複合材料でできた耐火層を備える耐火複合材料でできた物品を製造するための方法を既に提案している。
【0009】
ファンケーシングの場合、繊維プリフォームの焼き締り後に達成されるブランクが、一般に機械加工されて、部品の最終的な形状を生成する。特に、この機械加工中に、数ミリメートルがフランジ区域から切断され、その結果プリフォームと共に同時に注入される耐火保護物を使用することができず、それは、プリフォームが複数の区域で除去されることになり、それによって火からファンケーシングを十分に保護しないからである。
【0010】
現在、公知の耐火策は、構造の耐火性の問題を概ね包含することができるが、しかし自己消火性の問題を解決していない。複合材料でできた部品の自己消火性を保証する唯一の公知の解決策は、材料に火が付くことを防止するために、材料を十分に断熱することにある。しかし、これらの解決策は実施が容易ではなく、嵩が高いので、それらをガスタービン内で実施することができない。
【0011】
米国特許出願公開第2005/0076504号明細書は、複合材料でできた構造を製造するための方法をやはり提案しているが、その中で、CMC(セラミックマトリックス複合材料)の層が予備成形され、マンドレルに加えられ、次いで構造の部品と共に組み立てられる。
【0012】
最終的に、国際公開第99/48837号パンフレットは、セラミック材料でできた断熱コーティングを製造するための方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許発明第2913053号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2017072号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0076504号明細書
【特許文献4】国際公開第99/48837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、部品の機械耐性を劣化させずに、信頼できる、有効な、工業化可能な方法で、例えばファンケーシングなど、ポリマーマトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできた、ガスタービンエンジンの部品のための自己消火性を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、主マトリックスによって高密度化された主繊維補強材を備える複合材料でできたガスタービンエンジンの部品の耐火方法を提案する。
【0016】
耐火方法は、以下のステップを含む。
【0017】
火炎から保護されるべき部品の表面の形状に相当する形状を与えるように、プレプレグパネルを予備成形するステップであって、前記プレプレグパネルが、二次マトリックスによって高密度化された二次繊維補強材を備える、ステップ。
【0018】
次いで、予備成形されたプレプレグパネルを部品に付着するステップ。
【0019】
耐火保護層を生成するために、前記プレプレグパネルで被嵌された部品の熱処理によって表面にプレプレグパネルを固定するステップ。
【0020】
限定しないが、いくつかの好適な上記に説明される方法の特徴は以下である。
【0021】
熱処理が、部品の劣化温度未満の温度で実施される。
【0022】
二次繊維補強材が、ガラス繊維を備える。
【0023】
二次マトリックスが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含む。
【0024】
プレプレグパネルは、リングセクタによって予備成形され、前記リングセクタは、重ねることによって、保護される部品の表面に付着される。
【0025】
二次マトリックスが熱可塑性樹脂を備え、予備成形するステップが、保護される部品の表面の形状を与えるように、プレプレグパネルを熱硬化性樹脂のガラス遷移温度よりも高い温度で予備成形するサブステップと、予備成形されたプレプレグパネルと保護される部品の表面との間に粘着フィルムを付着するサブステップとを含み、熱処理によって固定するステップが粘着フィルムを重合するように構成される。
【0026】
その方法は、リングセクタが互いに重なることを保証するために、リングセクタ上に段付けが実施されるサブステップを更に含む。
【0027】
二次マトリックスが熱硬化性樹脂を備え、予備成形するステップが、保護される部品の表面の形状を与えるように、プレプレグパネルを主マトリックスの重合温度未満の温度で予備成形するサブステップを含み、熱処理によって固定するステップが、熱硬化性樹脂を重合するように構成される。
【0028】
保護層は、2つの重ねられたプレプレグパネルを備える。
【0029】
プレプレグパネルは、予備成形するステップの間に、同時に重ねられ、予備成形される。
【0030】
本発明の他の特徴、目的および利点が、以下の説明から、および限定しない実施例として与えられる添付の図面に関して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】予備成形されたプレプレグパネルのリングセクタの例示的な実施形態が適用されるガスタービンエンジンの部品の実施例を示す図である。
【
図2】
図1の予備成形されたプレプレグパネルのリングセクタの斜視図である。
【
図3】本発明によるガスタービンエンジンの部品の耐火方法の例示的実施形態の異なるステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明は、特に三次元の、マトリックスポリマーによって高密度化された織物繊維補強材を備える複合材料でできた、ガスタービンエンジンのファンケーシングの場合についてより詳細に説明されることになる。しかし、本発明は、そのようなファンケーシングの製造に限定されるのではなく、そのような複合材料でできたガスタービンエンジンの任意の部品を包含することを理解されたい。
【0033】
ファンケーシング1は、ガス流に対して略平行に長手方向軸Xに従って延在する主方向を含む、略円柱形の円筒10を備える。ケーシングの円筒10は、仏国特許発明第2913053号明細書に示されるように、可変の厚さを含むことができ、上流端部で上流フランジ12に、下流端部で下流フランジ14にそれぞれ嵌合することができて、空気入口スリーブ、中間ケーシングまたは環状フェルールさえも含む他の部品に取り付ける、および付着することを可能にする。
【0034】
上流フランジ12および下流フランジ14は、環状の形状であり、ファンケーシング1の長手方向軸Xに同軸に延在する。
【0035】
上流フランジ12は、上流径方向面(流れに面する)、および下流径方向面(下流フランジ14に面する)を備える。上流フランジ12は、円筒10から少し離れて、上流面と下流面との間に長手方向軸Xに同軸に延在する環状頂部を更に備える。同様に、下流フランジ14は、上流径方向面(上流フランジ12に面する)、および下流径方向面34(上流面に面する)を備える。下流フランジ14は、円筒10から少し離れて、上流面と下流面との間に長手方向軸Xに同軸に延在する環状頂部を更に備える。
【0036】
本明細書では、ファンケーシング1は、主マトリックスによって高密度化された主繊維補強材を備える複合材料でできている。主補強材は、特に炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維またはセラミック繊維を含むことができ、マトリックスは、例えばエポキシド、ビスマレイミドまたはポリイミドタイプなど、典型的にはポリマー材料でできている可能性がある。
【0037】
主補強材は、仏国特許発明第2913053号明細書の記載により、異なる厚さを含む三次元織り込みによって作製される繊維組織をマンドレル上に巻くことによって形成されることができ、繊維補強材は、フランジに相当する補強材部品と共に単一の部品に形成されるファンケーシング1の完全な繊維プリフォームを構成する。
【0038】
特に火災時など、その適切な稼働を害する可能性がある温度の過剰な上昇の場合、部品1を保護するために、本発明は、保護層2を保護される表面3に付着することを提案する。
【0039】
特に、保護層2は、火炎によって劣化される領域の程度を制限するように構成され、熱発生率、および部品1を形成する複合材料の主マトリックスからの劣化による排気ガスの温度範囲を制限することによって、その火炎を消火することに役立つ。
【0040】
ファンケーシング1の場合、保護される表面3は、上流フランジ12の上流径方向面および下流径方向面と、円筒の外側面と、下流フランジ14の上流径方向面を主に備える。
【0041】
出願人は、ファンケーシング1の火炎に敏感な小さい表面だけが火炎にさらされる必要性によって、ファンケーシング1の全体が劣化することにつながることに注目した。そのように、一実施形態では、火炎にさらされる可能性があり、X方向に2mm以上の長さを含むファンケーシング1の任意の表面が、耐火保護されることが好ましい。例えば、上流フランジ12の頂部は、2mmよりも大きい軸方向の長さを含み、典型的には10mm程度の軸方向の長さを含む。上流フランジ12の頂部は、実際に火にさらされる可能性があり、したがって、保護層2によって覆われることが好ましい。
【0042】
しかし下流フランジ14が通常はスカラップ形にされ、したがって、本質的に上流フランジ12よりもより良好に耐火保護されるので、下流フランジ14は必ずしも耐火の必要はなく、したがって耐火保護層2によって覆われない可能性がある。しかし、下流フランジ14は予防的に覆われることができる。
【0043】
耐火保護層2は、二次マトリックスによって高密度化された二次繊維補強材を備える1つまたは複数のプレプレグパネル20を特に備えることができる。
【0044】
保護層2は、機械加工された後、部品1に直接付着されることが好ましい。典型的には、ファンケーシング1の場合、保護層2は、主マトリックスを重合化するステップおよびファンケーシング1を機械加工するステップの後、付着されることが可能である。
【0045】
プレプレグパネル20は、耐火保護される部品1の表面3の形状に相当する形状を与えるために、最初に予備成形される得るS1。次いで、プレプレグパネル20は、保護される表面3に付着されS2、次いで部品1の適合された熱処理によってこれらの表面3に固定されることS3が可能である。
【0046】
プレプレグパネル20を予備成形するステップS1は、パネル20を部品1に付着するステップS2のために必要な時間を大幅に低減する。更に、予備成形は、保護される全体の面が、覆われることを保証して、オペレータの作業を制御する必要性を制限する。
【0047】
形状が環状であるファンケーシング1の場合、プレプレグパネル20は、リングセクタに予備成形されることS1が可能である。パネル20を扇形分割することによって、環状保護層2を形成し、ファンケーシング1の保護される表面3の全体を覆うために、ケーシング上に付着することが容易になる。
【0048】
好適には、重ねることによって(すなわち、隣接するリングセクタを部分的に覆うことによって)リングセクタが付着されてS2、結果として得られる保護層2の耐火および機械耐性を改良する。
【0049】
リングセクタの形状のプレプレグパネル20の実施例が、
図1および
図2に図示される。
【0050】
二次繊維補強材は、好適にはガラス繊維を含むが、一方で二次マトリックスは、直接火炎にさらされる保護層2と部品1との間に空気間隙を形成することによって、部品1を熱的に耐火保護することができる樹脂を含むことができ、温度範囲および分解ガスの比率を低減することによって、部品1を保護する。典型的には、最も適合する樹脂は、熱の影響下で膨張することができ、保護層2を層間剥離させることができて、断熱空気間隙を生成し、三次元補強材の内部に熱の伝達を低減する樹脂を含むことができる。したがって、火炎にさらされる後で劣化された領域の程度がより制限され、温度範囲が、そのような保護層2を含まない部品1の場合よりもより低くなる。保護層2が火炎にさらされる第1の層であると仮定すると、その二次マトリックスが劣化し、層間剥離を生成し、空気間隙を生成し、それによって部品1を保護し、火炎の広がりを遅くする。
【0051】
二次マトリックスの樹脂は、プレプレグパネル20を部品1の上に固定するステップS3が、部品1の劣化温度未満の温度で実施され得るように、更に選択される。ファンケーシング1の場合、部品1の劣化温度は、135℃程度である。したがって、熱処理は120℃から125℃程度の温度で行われることが可能でなければならない。同時に、エンジンを通常の稼働中に劣化させないために、二次マトリックスの樹脂は、エンジンの稼働温度よりも高いガラス遷移温度を含まなければならない。例えば、樹脂は、熱クラス180℃を含むことができる。
【0052】
上記を前提として、二次マトリックスが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含むことができる。
【0053】
保護層2を予備成形するステップS1は、プレプレグを構成する二次マトリックスタイプに応じて変化することができる。
【0054】
そのように二次マトリックスが熱硬化性樹脂を含むので、パネル20は、部品1の複合材料の主マトリックスを形成する樹脂の重合温度未満の温度で予備成形されるS11。したがって、パネル20は、最小の剛性を含み、ケーシングの形状に適合することができる。プレプレグパネル20を部品1に固定するステップS3は、熱硬化性樹脂を重合するために、プレプレグパネル20で被嵌される部品1の熱処理を実施するステップによって達成され得る。
【0055】
変形形態として、二次マトリックスは、熱可塑性樹脂を含むことができる。この変形形態では、パネル20が、部品1の複合材料の主マトリックスの融解温度より高い温度で予備成形されるS12。したがって、結果として得られるパネル20は剛性である。部品1上にプレプレグパネル20を固定するステップS3は、プレプレグパネル20を部品1の対応する表面3上に粘着すること、例えば、プレプレグパネル20と保護される部品の表面3との間に付着される、エポキシ樹脂などの、熱硬化性樹脂によって達成され得る。この目的のために、熱硬化性樹脂を重合するために、プレプレグパネル20で被嵌される部品1の熱処理が実施される。
【0056】
パネル20がリングセクタの形状に付着される場合、リングセクタを段付けするステップS13が、それらが重なることを保証するために行われることができる。
【0057】
選択される樹脂のタイプに関わらず、固定するステップS3は、必要である場合は圧力下で、部品1の複合材料の主マトリックスの劣化温度未満の温度で熱処理(二次マトリックスまたは接着剤の重合のために)によって実施され得る。したがって、樹脂がこの劣化温度を超える重合温度を含む場合、熱処理が樹脂の重合温度未満の温度で実施される。その結果、熱処理の持続期間は、樹脂の重合を保証するために適合されなければならない。
【0058】
例えば、従来のファンケーシング1について、部品1の劣化温度は135℃程度である。したがって、熱処理が、選択される二次マトリックスのタイプに応じて、熱硬化性樹脂または接着剤の重合を保証するために、好適には4時間を超える相対的に長いサイクル時間に亘って、120℃から125℃程度の温度で実施され得る。
【0059】
好適には、保護層2を形成するために、複数のパネル20が重ねられる。
【0060】
パネル20が部品1上のリングセクタの中に付着される場合、したがって、各リングセクタは複数の重ねられた、予備成形されたパネル20を備えることができる。次いで、予備成形されたプレプレグパネル20がファンケーシング1に付着され、次いで熱処理によって固定される。
【0061】
重ねられるパネル20の数は、部品1の寸法、火災の開始を遅らせ、または少なくとも遅くするために選択されるプレプレグの能力、および結果として得られる保護層2の全重量に依存する可能性がある。例えば、ファンケーシング1の場合、効果的にファンケーシング1を火炎から保護するために、2つのパネル20が、保護層2の各リングセクタの中で重ねられることが可能である。
【国際調査報告】