(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-505448(P2017-505448A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(54)【発明の名称】ルテリアルの形態特性を用いた癌予防剤または抗癌剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20170127BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20170127BHJP
C12Q 1/68 20060101ALI20170127BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20170127BHJP
A61K 36/22 20060101ALN20170127BHJP
A61K 36/634 20060101ALN20170127BHJP
A61K 36/076 20060101ALN20170127BHJP
A61K 36/232 20060101ALN20170127BHJP
A61K 36/185 20060101ALN20170127BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20170127BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/68 Z
C12Q1/02
A61K36/22
A61K36/634
A61K36/076
A61K36/232
A61K36/185
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-564930(P2016-564930)
(86)(22)【出願日】2015年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月14日
(86)【国際出願番号】KR2015000405
(87)【国際公開番号】WO2015108342
(87)【国際公開日】20150723
(31)【優先権主張番号】10-2014-0004527
(32)【優先日】2014年1月14日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516212245
【氏名又は名称】チョイ ウォンチョル
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Won Cheol
(71)【出願人】
【識別番号】516012221
【氏名又は名称】クォン ヨンア
【氏名又は名称原語表記】KWON, Young Ah
(71)【出願人】
【識別番号】516012243
【氏名又は名称】チョイ ソクフン
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Suk Hoon
(71)【出願人】
【識別番号】516012254
【氏名又は名称】チョイ チャンフン
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Chang Hoon
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ウォンチョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンア
(72)【発明者】
【氏名】クォン ソンピル
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヒョンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ソクフン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ チャンフン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
2G045BB20
2G045BB24
2G045CA25
2G045CB01
2G045CB07
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4C088ZB26
(57)【要約】
本発明は、ルテリアルの形態特性を用いた癌予防剤または抗癌剤のスクリーニング方法に関する。本発明は、(a)患者または正常人から既に排出された体液からルテリアル変異体(mutant luterial)または正常ルテリアルを分離する段階と、(b)前記分離したルテリアル変異体に抗癌剤または癌予防剤候補物質を処理する段階と、(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズを減少させるか、形態を変化させるか、または運動性を増加させる候補物質を抗癌剤として、または候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアルのサイズ増加を抑制させるか、形態変化を最小化するか、または運動性を維持させる候補物質を癌予防物質として選別する段階と、を含む抗癌剤または癌予防剤スクリーニング方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者から既に排出された体液からルテリアル変異体を分離する段階と、
(b)前記分離したルテリアル変異体に抗癌剤候補物質を処理する段階と、
(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズを減少させるか、形態を変化させるか、または運動性を増加させる候補物質を抗癌剤として選別する段階と、を含む抗癌剤スクリーニング方法。
【請求項2】
(a)正常人から既に排出された体液から正常なルテリアルを分離する段階と、
(b)癌予防候補物質の存在下で前記分離した正常なルテリアルを培養する段階と、
(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアルのサイズの増加を抑制させるか、形態変化を最小化するか、または運動性を維持させる候補物質を癌予防物質として選別する段階と、を含む癌予防剤スクリーニング方法。
【請求項3】
(a)段階の既に排出された体液は血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳、初乳、臍帯血、脳細胞、脊髄及び骨髄からなる群より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記(b)段階の候補物質は天然抽出物、食品または植物由来ルテリオン、RNAi、アプタマー、および化合物からなる群より選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記植物由来ルテリオンは漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツからなる群より選択される一つ以上の薬用植物であることを特徴とする請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記植物由来ルテリオンは長径または短径が50〜500nmであることを特徴とする請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記(c)段階は、候補物質処理前の対照群と比較して、鞭毛型、微小管型、マス型、ロッド型または複合型を有するルテリアル変異体が80%以下に減少するか、あるいはルテリアル変異体が円形または楕円形のルテリアルに回復する場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記(c)段階は、候補物質処理1時間経過後、ルテリアル変異体の直径が、候補物質処理前のルテリアル変異体直径の70%以下に減少する場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
候補物質処理1時間経過後に、ルテリアル変異体の直径が、候補物質処理前のルテリアル変異体の長径及び短径の70%以下に減少する場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを特徴とする請求項8に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記(c)段階は候補物質処理前の対照群と比較して、ナノトラッキング速度が12nm/sec以上に回復される場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記(c)段階は、候補物質処理前の対照群と比較して、ナノトラッキング速度が100〜500nm/secに回復される場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを特徴とする請求項10に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
前記(c)段階は、候補物質処理前の対照群と比較して、電気泳動移動度が30%以上増加する場合に、抗癌剤候補物質を抗癌剤として選別することを含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
前記(c)段階は、ルテリアルをローダミン123(Rhodamine123)、ミトトラッカー(Mito‐tracker)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、DAPIおよびヤヌスグリーンB(Janus green B)からなる群から選択される1以上の染料で染色し、その変化を顕微鏡で観察することを含む請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
【請求項14】
前記ルテリアルを暗視野顕微鏡(Dark field micro‐scope;Ultra microscope)、ラマン分光計(Raman spectrometer)、Leica、AFM(Atomic Force Microscope)、MFM(Magnetic force microscope)、STM(Scanning tunneling microscope)、CLSM(Confocal Laser Scanning Microscope)、NSOM(Near‐field scanning optical microscope)、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)で観察することを特徴とする請求項13に記載のスクリーニング方法。
【請求項15】
前記ルテリアルを暗視野顕微鏡(Dark field micro‐scope;Ultra microscope)、ラマン分光計(Raman spectrometer)、Leica、AFM(Atomic Force Microscope)、MFM(Magnetic force microscope)、STM(Scanning tunneling microscope)、CLSM(Confocal Laser Scanning Microscope)、NSOM(Near‐field scanning optical microscope)、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)で観察することを特徴とする請求項14に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテリアルの形態特性を用いた抗癌剤スクリーニング方法に関し、具体的には、ルテリアル変異体またはルテリアルに抗癌剤または癌予防剤候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズ、形態または運動性の変化を誘導、またはルテリアルのサイズ、形態または運動性の変化を抑制する候補物質を抗癌剤または癌予防剤として選別する段階を含む抗癌剤または癌予防剤スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、人類の健康を脅す最大の疾病の一つであり、細胞が一連の突然変異過程を経て、無制限的且つ非調節的な方式で増殖し発生する疾病である。癌と関連する様々な生化学的メカニズムが明らかになり、癌に対する改善した検出方法、集団スクリーニング(mass screening)および過去十数年間にわたる治療剤と治療方法の発達により、癌の診断および治療に対する展望が改善しているにもかかわらず、依然として癌に対する根本的な治療方法は提示されておらず、特に、末期癌患者に対する治療は極めて制限されている。
【0003】
様々な抗癌剤が開発され続けており、臨床に適用されてから抗癌治療の効果も高まっているが、依然として各種の癌の治療に対する反応率が十分でなく、相当な数の患者が、非常に毒性の強い抗癌剤に露出されているにもかかわらず、症状の緩和または寿命延長の効果は低い状態である。かかる現象を改善するためには、より優れた抗癌剤の開発およびこれを用いた標準治療法の研究が必須である。
【0004】
かかる状況で、癌と関連する様々な生体内分子を同定し、これを標的として薬物をスクリーニングすることで抗癌剤を開発する努力を傾注している。抗癌剤スクリーニングは、抗癌剤開発の全体過程中に抗癌剤候補物質、例えば、合成化合物または天然物などの癌治療活性および毒性を評価する過程である。
【0005】
具体的に、抗癌剤スクリーニングは、癌細胞を培養しつつ各種の抗癌剤を処理した試料と処理していない試料との間で癌細胞の死滅または増殖抑制を比較し、最も理想的な抗癌剤を探し出すか効果がないと予測される抗癌剤を選別する過程であり、抗癌剤に露出した癌細胞が死滅するか増殖が抑制される程度を測定する一連の過程を意味し得る。
【0006】
従来、in vivoスクリーニング方法としては、腎被膜下移植法(subrenal capsule assay)が使用されてきたが、これは、患者の癌組織を摘出し小さいサイズに切り取った後、マウスの腎被膜下に挿入し、抗癌剤を処理して移植された腫瘍のサイズの変化を測定した方法である。ただし、マウスに投与する抗癌剤の容量と周期に応じて発現される効果をスクリーニングする時間が長くて変換適用が難しいという問題があるため、各種の抗癌剤をスクリーニングする場合、効率的ではないという欠点がある。
【0007】
その他に、in vitroスクリーニング方法としては、癌組織から細胞を分離し、抗癌剤を処理してから培養して、細胞の死滅または増殖抑制可否を測定する過程を経る。
【0008】
これより得られた実験結果により適した抗癌剤としてスクリーニングされるためには、抗癌剤による反応と実験結果を分析する過程が必要であり、腫瘍サイズの変化を観察するか、細胞死滅率(または増殖抑制率)、IC
50、化学敏感度インデックス、抗癌剤反応性データベースにおいて反応性の相対的分布を検討するなど、既に確立されたin vitroデータと比較することもある。
【0009】
かかる過程を経て、効果があると予測される抗癌剤と、効果がないと予測される抗癌剤とを区別することができ、これを繰り返し適用する過程を経て正確性を改善することができる。
【0010】
かかる背景下で、本発明者らは、患者から既に排出された体液内に存在する微細物質の特性を観察することにより、疾病を診断および予測できることを見出し、これに関する内容を2014年1月14日付で特許出願している(PCT/KR2014/00393)。本発明者らは、前記微細物質を「ルテリアル(luterial)」と名付けた。
【0011】
また、本発明者らは、患者または正常人から既に排出された体液内に存在する微細物質であるルテリアルを効果的に分離できる方法を開発し、分離したルテリアルの特性を明らかにした内容を2014年5月9日付で特許出願している(PCT/KR2014/004197)。
【0012】
「ルテリアル(luterial)」とは、すべての動物に存在する生存因子(living organism)であり、ウイルスと類似の程度から約800nmまで(正常フィッション段階50〜800nm/非正常フュージョン段階800nm以上)のサイズを有する微細物質を本発明者らが名付けたものである。
【0013】
ルテリアルは、DNAとRNAの両方を含んでおり、付着性と運動性を有する点でエキソソーム(exosome)や微小胞(microvesicle)とは区別される(
図1)。ヒトを含む動物の場合には、血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳(特に、初乳)、臍帯血、脳細胞、脊髄、骨髄に存在し、「ルテリアル」と称される。なお、植物に存在するルテリアル類似物質は、「ルテリオン(Luterion)」と称され、血液などの体液から発見されるルテリアルの起源は、植物由来ルテリオンであると推定される(
図2)。
【0014】
ルテリアルは、(1)原核細胞と真核細胞の中間段階の融合特性を有する細胞類似体であり、(2)血液、精液、腸液、唾液、細胞液などの体液に存在し、(3)免疫蛍光試験において、ヤヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、およびローダミン123(Rhodamine123)に陽性の発色反応を示し、(4)最適状態(pH7.2〜7.4)では、ベータ‐プロテオバクテリアとガンマ‐プロテオバクテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30〜800nmのサイズを有し、(5)酸性化状態ではベータ‐プロテオバクテリアとガンマ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だけでなく、真核細胞由来遺伝子の発現特性を示しており、主に、Sterptophyta遺伝子を発現し、400nm以上から2000nm以上までサイズが大きくなり、(6)正常条件でATP生成に関り、および(7)ミトコンドリアとは相違し、エキソソームとは全く異なる細胞類似体である(PCT/KR2014/004197)。
【0015】
ルテリアルは、ヒトを含む動物の場合には、血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳(特に、初乳)、臍帯血、脳細胞、脊髄、骨髄に存在する。その他、角がある動物の場合には、角内にもルテリアルが存在する(PCT/KR2014/00393)。
【0016】
正常ルテリアルのサイズは、50〜800nmであり、融合しルテリアル変異体を形成して数十マイクロメータのサイズを有する。ルテリアルは、mRNAとmiRNAだけでなく、DNAをも含む未成熟ミトコンドリア段階を称するものであり得る。ルテリアルは、消化液で溶けず、血液に流入される特徴がある(PCT/KR2014/004197)。
【0017】
ルテリアルはまた、シグナリング、細胞分化、細胞死滅だけでなく、細胞サイクルおよび細胞成長の調節にも関係すると予想されるが、本発明者らは、その中でもルテリアルが、癌の診断と密接な関係があることを見出した(PCT/KR2014/00393)。
【0018】
本発明者らは、かかるルテリアルまたはその変異体を用いて、抗癌剤候補物質のうちルテリアルの正常状態の維持または非正常状態の抑制、減少または回復に影響を及ぼす物質を選別することにより、癌の予防または治療剤をスクリーニングできることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、癌患者から特異的に発見されるルテリアル変異体を腫瘍マーカーおよび癌治療のためのターゲットとし、癌の予防または治療に使用可能な抗癌剤をスクリーニングする方法を提供することにある。
【0020】
本発明は、(a)患者から既に排出された体液からルテリアル変異体(mutant luterial)を分離する段階と、
(b)前記分離したルテリアル変異体に抗癌剤候補物質を処理する段階と、
(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズを減少させるか、形態を変化させるか、または運動性を増加させる候補物質を抗癌剤として選別する段階と、を含む抗癌剤スクリーニング方法に関する。
【0021】
本発明はまた、(a)正常人の既に排出された体液からルテリアルを分離する段階と、
(b)癌予防候補物質の存在下で前記分離したルテリアルを培養する段階と、
(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアルのサイズの増加を抑制させるか、形態変化を最小化するか、または運動性を維持させる候補物質を癌予防物質として選別する段階と、を含む癌予防剤スクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】正常ルテリアルを光学顕微鏡(SR‐GSDまたはCLSM)または電子顕微鏡(SEMまたはTEM)で観察した結果を示す写真である。
【
図2】ルテリアルのlife cycleを概略的に図示している図である。
【
図3】ルテリアルと関連する癌発病のメカニズムを示す模式図である。
【
図4】鞭毛型のルテリアルを暗視野顕微鏡で観察した写真である。
【
図5】微小管型のルテリアルを暗視野顕微鏡で観察した写真である。
【
図6】マス型のルテリアルを暗視野顕微鏡で観察した写真である。
【
図7】ロッド型のルテリアルを暗視野顕微鏡で観察した写真である。
【
図8】肺癌ステージ4患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図9】肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図10】肺癌ステージ3b患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図11】肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図12】脳転移された非小細胞肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図13】鎖骨上リンパ節、肝転移された肺癌(扁平上皮癌)患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図14】骨転移された肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図15】肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図16】肺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図17】膵臓癌患者由来ルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図18】肝転移された膵臓癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図19】子宮転移された大腸癌患者由来ルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図20】肝、肺に転移された大腸癌患者由来ルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図21】肝、肺、脳に転移された大腸癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図22】肝転移された大腸癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図23】肺転移された肝癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図24】肝血管肉腫(angiosarcoma of liver)患者由来ルテリアルを共焦点レーザ走査型顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図25】胆嚢癌末期患者由来ルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図26】骨転移された前立腺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図27】前立腺癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図28】乳癌ステージ3患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図29】乳癌ステージ3b患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図30】甲状腺乳頭癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図31】腎癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図32】胃癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図33】胃癌患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図34】乳癌ステージ3b患者由来のルテリアルを暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図35】正常人の血液のルテリアル(1段階)を暗視野顕微鏡で撮影した写真を示す図である。
【
図36】漆皮から分離されたルテリオン処理時のルテリアル変異体で示されるサイズ、形態の変化または運動性回復の効果を示す図であり、(a)候補物質処理前、(b)候補物質処理後、30分経過、および(c)候補物質処理後、1時間経過の結果を示す。
【
図37】レンギョウから分離されたルテリオン処理時のルテリアル変異体で示されるサイズ、形態の変化または運動性回復の効果を示す図であり、(a)候補物質処理前、(b)候補物質処理後、30分経過、および(c)候補物質処理後、1時間経過の結果を示す。
【
図38】白茯苓から分離されたルテリオン処理時のルテリアル変異体で示されるサイズ、形態の変化または運動性回復の効果を示す図であり、(a)候補物質処理前、(b)候補物質処理後、30分経過、および(c)候補物質処理後、1時間経過の結果を示す。
【
図39】トウキから分離されたルテリオン処理時のルテリアル変異体で示されるサイズ、形態の変化または運動性回復の効果を示す図であり、(a)候補物質処理前、(b)候補物質処理後、30分経過、および(c)候補物質処理後、1時間経過の結果を示す。
【
図40】キウイフルーツから分離されたルテリオン処理時のルテリアル変異体で示されるサイズ、形態の変化または運動性回復の効果を示す図であり、(a)候補物質処理前、(b)候補物質処理後、30分経過、および(c)候補物質処理後、1時間経過の結果を示す。
【
図41】AsPC‐1(Pancreatic cancer cell line)で漆皮由来ルテリオン(a)、レンギョウ由来ルテリオン(b)、白茯苓由来ルテリオン(c)、トウキ由来ルテリオン(d)およびキウイフルーツ由来ルテリオン(e)処理時の癌細胞株の増殖抑制を確認した結果を示す。
【
図42】A549(Lung cancer cell line)で漆皮由来ルテリオン(a)、レンギョウ由来ルテリオン(b)、白茯苓由来ルテリオン(c)、トウキ由来ルテリオン(d)およびキウイフルーツ由来ルテリオン(e)処理時の癌細胞株の増殖抑制を確認した結果を示す。
【
図43】BT‐20(Breast cancer cell line)で漆皮由来ルテリオン(a)、レンギョウ由来ルテリオン(b)、白茯苓由来ルテリオン(c)、トウキ由来ルテリオン(d)およびキウイフルーツ由来ルテリオン(e)処理時の癌細胞株の増殖抑制を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
他に定義されない限り、本明細書において使用されているすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野において熟練された専門家が通常理解しているものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において使用されている命名法は、本技術分野において公知の通常使用されるものである。
【0024】
本発明において使用されている用語「ルテリアル(Luterial)」および「ルテリオン(Luterion)」は、それぞれ動物および植物に存在する生存因子(living organism)であり、ウイルスと類似の程度から約500nmまで(正常フィッション段階50〜500nm/非正常フュージョン段階800nm以上)のサイズを有する微細物質を本発明者らが名付けたものである。
【0025】
前記ルテリアルおよびルテリオンは、DNAおよびRNAを含んでおり、運動性と付着性を有する点で、エキソソーム(exosome)や微小胞(microvesicle)とは区別される。ミトコンドリアは、ヤヌスグリーンB(Janus green B)および蛍光染色であるローダミン123(Rhodamine123)、ミトトラッカ(Mitotracker)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、およびDAPIにより発色が確認されるが、前記ルテリオンもミトコンドリアと同一の染料により発色が確認され、ミトコンドリアと同様に二重膜を有する膜構造として内部クリステ(cristae)構造を完成していない状態の構造を有しており、ミトコンドリアと同一のレーザ波長範囲で観察される点で、「類似ミトコンドリア」、「ミトコンドリア類似体」あるいは「ミトコンドリア前駆体(proto‐mitochondria)」とも称し得る。
【0026】
ヒトを含む動物の場合には、血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳(特に、初乳)、臍帯血、脳細胞、脊髄、骨髄に存在し、「ルテリアル」と称される。なお、植物に存在する物質は、「ルテリオン」と称される。植物の場合には、特に、茎部分に多量存在する。
【0027】
正常ルテリアルおよびルテリオンのサイズは、50〜200nmであり、変異ルテリアルおよび変異ルテリオンは、融合して変異体を形成し、数十マイクロメータサイズを有する。ルテリアルおよびルテリオンは、mRNAとmiRNAを含む(まれにDNAも含む)未成熟ミトコンドリア段階を称するものであってもよい。ルテリアルおよびルテリオンは、消化液で溶けず、血液に流入される特徴があり、シグナリング、細胞分化、細胞死滅だけでなく、細胞サイクルおよび細胞成長の調節にも関係すると予想されるが、本発明者らは、その中でもルテリアルが、癌の診断に密接な関係があることを見出した(PCT/KR2014/00393)。
【0028】
正常ルテリアルおよびルテリオンは、癌細胞の成長を防ぎ、細胞を健康な免疫系に戻す役割をすると予想されるが、その役割は、遺伝子を正常化する可能性を有するRNAi(RNA interference;RNA干渉)により行われると推定される。
【0029】
正常ルテリアルおよびルテリオンのうち、200nm以下、例えば、50〜150nmのサイズを有するルテリアルは、癌細胞の成長を防ぎ、細胞を健康な免疫系に戻す役割をすると予想され、その役割は、遺伝子を正常化する可能性を有するRNAi(RNA interference;RNA干渉)により行われる。正常ルテリアルのRNA内に存在する情報系が正常な軌道から離脱し異常疾患を誘発するタンパク質を生産するように指示する場合、これを人為的に干渉して癌などの疾病の発生を抑制するように作用し、サイズが200〜500nm以上に成熟した時には、エネルギー代謝にも関り、特定の波長を照射した時に、反応発現として光エネルギー増幅の機能を果たし、葉緑体のように反応することが確認される。これに対し、かかるルテリアルが正常な役割を行うことができない場合には、恒常性およびATP生産に決定的な障害を起こし、呼吸およびエネルギー代謝の両方に疾病を起こし得る。
【0030】
ルテリアルは、以下の特性を有することを確認した。
(a)正常の場合、赤血球より小さいサイズ(50〜200nm)の円形乃至楕円形であり、運動性がある。
(b)核酸含有。
(c)免疫化学蛍光染色時にミトコンドリアと類似の反応を示す。
(d)フュージョン(fusion)および/またはフィッション(fission)生態様式を示す。
(e)フュージョンがない場合には、サイズが300nmまで成熟し、DNA含有類似ミトコンドリアに成熟し、SEMまたはTEM電子顕微鏡写真上でミトコンドリアと類似の構造を示す。
(f)フュージョンが発生した場合には、数千nmまでサイズが大きくなる。
(g)癌患者由来の場合、正常人由来よりサイズ(長径500nm以上)が大きく、形態が不均一な変異ルテリアル発生。
(h)エキソソームとは異なる光反応を示す。
【0031】
さらに、以下の特性の一つ以上を有することを特徴とすることができる。
(i)自己蛍光(autofluorescence)を示す。
(j)200〜400nmサイズでATPを生産する。
(k)付着性がある。
(l)二重膜構造。
(m)特定の条件で変異ルテリアルはburstingされ、bursting後にはstemnessを有する。
(n)p53遺伝子およびテロメア調節機能を有する。
(o)CD39またはCD73の表面抗原を有する。
【0032】
これとは反対に、正常な役割を行うことができない癌患者由来ルテリアルは、サイズや形態が様々であり、正常ルテリアルとは相違する生態および特性を示す(
図2および
図3)。具体的には、正常ルテリアルの場合には、二重胞子(double‐spore)を形成した後、それ以上増殖しないが、癌患者や慢性疾病を有する患者の既に排出された体液で発見される突然変異ルテリアルの場合には、幹細胞と同様に無限に増殖する特性を有し、800nm以上から200μm(200,000nm)以上のサイズを有する。また、ウイルスと同様に、赤血球、白血球、血小板などに浸入して生長するか、他のルテリアルと凝集する特性を示す(PCT/KR2014/00393)。かかるルテリアルを正常ルテリアルと区分するために、「変異ルテリアル」、「ルテリアル変異体」、「突然変異ルテリアル」、「ミュータントルテリアル」、「Mutant Luterial」と称する。
【0033】
一方、ヒトまたは動物の血液から由来したルテリアルの場合には、生体外では短い時間内に溶解されて消滅するか形態が変化する特性があり、観察自体が難しく、非正常な環境下で放置する場合には、24時間内に正常ルテリアルも突然変異ルテリアルに変異し、疾病の治療への利用に困難がある。
【0034】
しかし、植物由来ルテリオンは、血液由来ルテリアルとは異なり、室温でも短い時間内に溶解されるか消滅されず、長期間保管してもフュージョン(fusion)されて突然変異化しない特性がある。それだけでなく、患者の血液由来突然変異ルテリアルと反応してそれ以上フュージョン(fussion)が発生しないようにその生長を抑制し、患者の血液由来の成熟段階にあるルテリアルの成熟を抑制し、ルテリアルが突然変異するかフュージョン(fusion)して生長することを抑制することができる。
【0035】
前記植物由来ルテリオンの特性は、ルテリオンのRNAi機能によるものと予想されるところ、かかるRNAi機能を用いて特定の疾病を有する患者由来のルテリアルの突然変異化または成熟を抑制するか予防することができ、最終的には、特定の疾病を治療するか予防する物質として用いられることができると予想される。
【0036】
本発明による段階(a)は、患者または正常人から既に排出された体液からルテリアル変異体を分離する段階である。本発明において使用されている「患者から既に排出された体液」は、血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳(初乳)、臍帯血、脳細胞、脊髄または骨髄であってもよく、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明による「癌」は、脳腫瘍、頭頸部腫瘍、乳癌、甲状腺癌、肺癌、胃癌、肝癌、膵臓癌、小腸癌、大腸(直腸)癌、腎癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌および卵巣癌からなる群から選択されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0038】
一つの方法として、癌患者から容易に取得可能な血液からルテリアルを分離することができ、血液に含まれたルテリアルは、例えば、下記の段階を経て分離することができる。
【0039】
血液からルテリアルを分離する方法は、血液から血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離する第1分離段階と、前記血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離させた血液を遠心分離する第2分離段階と、前記遠心分離により取得した上澄み液からルテリアルを分離する第3分離段階と、前記分離したルテリアルを洗浄する段階と、を含むことができる。
【0040】
より詳細には、前記第1分離段階は、患者から血液を採取し、0.8〜1.2μmの空隙を有するフィルタを通過させてフィルタリングされていない物質は分離する段階を含むことができる。前記第2分離段階は、1200〜5000rpmで5〜10分間繰り返して遠心分離を行い、エキソソーム(exosome)のような一般の微小胞を除去して上澄み液を取得する段階を含むことができる。前記第3分離段階は、遠心分離により取得した上澄み液に赤外線を照射し、運動性を有して集まるルテリアル粒子をピペットを用いて分離する段階を含むことができる。ルテリアルは、自己蛍光および運動性の特性を有することから前記のように赤外線を照射した時に上澄み液からルテリアル粒子を確認することができる。この際、暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で動くルテリアル粒子を確認しながらピペットを使用して分離することができる。前記第3段階で分離されたルテリアルを50nmの直径を有する空隙を備えるフィルタを通過させてフィルタリングされていない部分のみPBSで洗浄し、ルテリアルを取得することができる。ルテリアルは、長径約50nm以上のサイズを有するため、前記過程を経てルテリアル以外の血液由来微細物質を除去することができる。前記過程により、長径50〜800nmのルテリアルを取得することができ、これは、暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で観察が可能である。前記取得したルテリアルは、それぞれ200nm、400nm、600nm、800nmおよび1000nmのフィルタを順に用いて、サイズに応じて、50〜200nm(発生期)/200〜400nm(成熟期)/400〜600nm(分裂期)/600〜800nm(過分裂期)/800nm以上(変異体)に区分することができる。
【0041】
他の方法として、血液に、ルテリアル表面抗原に特異的に結合する抗体が固定された粒子を添加して、ルテリアルと粒子との結合を誘導し、粒子に結合したルテリアルを回収し分離することもできる。この際、ルテリアル表面抗原は、CD39またはCD73であり、各抗原に特異的に結合する抗‐CD39または抗‐CD73抗体を磁性粒子に固定させ、磁石を用いて(磁性を加えて)ルテリアルと結合した粒子のみを分離した後、ルテリアルを回収することにより、ルテリアルを取得することができる(韓国出願番号第10‐2015‐0004287号)。
【0042】
健康なヒト内の正常ルテリアルの場合には、単純に二重胞子(double‐spore)を形成(fission)するだけであるが、慢性疾病や癌患者内のルテリアル(変異ルテリアル)の場合には、ルテリアル同士が融合(fussion)または凝集(coagulation)するか爆発(bursting)して赤血球や癌細胞などの細胞にも付着し、その形態およびサイズが正常ルテリアルとは異なり、非正常に巨大になる特徴がある。変異ルテリアルは、付着性が高くて、前記のようなcycleにより融合(fusion)がより加速化し、そのサイズとして長径および/または短径が約800nm以上と大きくなり、そのうちあるものなどは200μm(200,000nm)以上のサイズを有することもある。
【0043】
前記(b)は、患者から既に排出された体液から分離されたルテリアル変異体または正常人から既に排出された体液から分離されたルテリアルに抗癌剤または癌予防剤候補物質を処理する段階である。
【0044】
一つの実施例において、前記候補物質は、ルテリアルの正常状態を維持または非正常状態を抑制、減少または回復させる製剤の集合であってもよく、例えば、天然抽出物、食品または植物由来ルテリオン、RNAi、アプタマおよび化合物からなる群から選択される一つ以上であってもよく、これに限定されるものではない。
【0045】
前記候補物質は、例えば、アレルゲン除去ウルシ(Rhus Verniciflua Stokes)抽出物またはアレルゲン除去ウルシ抽出物と様々な追加食品または薬用植物由来抽出物の組み合わせであってもよく、より具体的には、前記候補物質は、アレルゲン除去ウルシ由来ルテリオンを含有する抽出物であってもよい。
【0046】
前記アレルゲン除去ウルシ抽出物は、ウルシを採取し、ウルシを摂取する時に毒性によるアレルギーの生成を防止するために、酸素濃度が25〜100%(v/v)である状態に大気圧より0.01〜1気圧高く維持し、温度を25〜100℃に加熱処理することにより取得されることができる。
【0047】
また、アレルゲン除去ウルシ抽出物に加え、これとは異なる種類の食品または薬用植物由来抽出物またはその分画物を公知の方法で取得し、アレルゲン除去ウルシ抽出物と同一の割合で混合することができる。
【0048】
一つの実施例において、前記候補物質は、RNAi(miRNAまたはsiRNA)、食品または植物由来ルテリオンまたはアプタマであってもよい。具体的には、癌細胞から発現される特徴的miRNAに対するRNAi分子(アンチセンスmiRNAまたはsiRNA)であってもよい。食品または植物由来ルテリオンはRNAi分子であり、長径および/または短径50〜500nmサイズのルテリオンに含まれてRNA干渉が起こり得、例えば、アレルゲン除去ウルシ(Rhus Verniciflua Stokes)のような食品または薬用植物由来ルテリアルに含まれたRNAi分子であってもよい。
【0049】
miRNAは、21〜25ヌクレオチドの一本鎖(single‐stranded)non‐coding RNA分子として真核生物の遺伝子発現を制御するものであり、特定の遺伝子のmRNA3´ UTR(untranslated region)に結合して遺伝子の翻訳過程を抑制すると知られている。実質的に動物で研究されたmiRNAは、特定の遺伝子のmRNA濃度に影響を与えることなくタンパク質の発現量を減少させる。miRNAは、RISC(RNA‐induced silencing complex)に連結され特定のmRNAに相補的に結合するが、miRNAの中央部分はミスマッチ(mismatch)に残っており、既存のsiRNAとは異なり、mRNAを分解しない。しかし、かかる動物miRNAとは異なり、食品または植物miRNAは、標的mRNAと完全に一致しmRNA分解を誘導することによりRNA干渉現象を誘導する。
【0050】
siRNAは、RNA干渉(RNAi)経路で、特に、二本鎖RNA(dsRNA)により促進される配列特異的RNA分解過程であるRNAサイレンシングにおいて所定の役割をする。siRNAは、小型3´‐突出部(overhang)を有する二本鎖であり、サイレンシングを誘導するより長いdsRNA前駆体から誘導される。これは、標的RNAの破壊を導くガイド(guide)として作用する。
【0051】
食品または薬用植物由来ルテリオンは、血液から分離したルテリアルと類似の方法を用いてルテリオン含有食品または植物抽出物または凝縮液から分離されたものを意味する。「ルテリオン(Luterion)」は、植物または食品に存在する生存因子(living organism)であり、ウイルスと類似の程度から約500nmまで(正常フィッション段階50〜500nm/非正常フュージョン段階800nm内外あるいはそれ以上)のサイズを有する微細物質を本発明者らが名付けたものである。
【0052】
前記ルテリオンは、DNAおよびRNAを含んでおり、運動性と付着性を有する点でエキソソーム(exosome)や微小胞(microvesicle)とは区別される。ミトコンドリアは、ヤヌスグリーンB(Janus green B)および蛍光染色であるローダミン123(Rhodamine123)、ミトトラッカ(Mitotracker)、およびDAPIにより発色が確認されるが、ミトコンドリアと同一の染料により発色が確認されており、ミトコンドリアと同様に二重膜を有する膜構造として内部クリステ(cristae)構造を完成していない状態の構造を有しており、ミトコンドリアと同一のレーザ波長範囲で観察される点で、「類似ミトコンドリア」、「ミトコンドリア類似体」あるいは「ミトコンドリア前駆体(proto‐mitochondria)」とも称し得る。
【0053】
前記食品または植物由来ルテリオンは、血液由来ルテリアルとは異なり、室温でも短い時間内に溶解されるか消滅されず、長期間保管してもフュージョン(fusion)して突然変異化しない特性がある。それだけでなく、患者の血液由来の突然変異したルテリアルと反応し、それ以上フュージョン(fussion)が発生しないようにその生長を抑制し、患者の血液由来の成熟段階にあるルテリアルの成熟を抑制してルテリアルが突然変異するかフュージョン(fusion)して生長することを抑制することができる。
【0054】
前記食品または植物由来ルテリオンの特性は、ルテリオンのRNAi機能によるものと予想されるところ、かかるRNAi機能を用いて特定の疾病を有する患者由来ルテリアルの突然変異化または成熟を抑制するか予防することができ、最終的には、特定の疾病を治療するか予防する物質として用いられることができる。
【0055】
前記食品または植物由来ルテリオンは、その密度が1以下であり、脂肪および脂質より高い密度を有し、タンパク質より低い密度を有することから、水蒸気蒸留法により植物から分離することができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
例えば、前記食品または植物由来ルテリオンは、以下の段階を含み、分離することができる。
【0057】
(a)食品または植物に溶媒を添加し、50〜90℃で空気または酸素を用いて断続的にバブリングさせるとともに振盪する段階;(b)前記振盪により気化する水蒸気またはガスを捕集した後、冷却させて凝縮液を取得する段階;(c)0.8〜1.2μmの空隙を有するフィルタを用いて前記取得された凝縮液をフィルタリングする段階;(d)前記フィルタリングされた凝縮液を遠心分離する段階;(e)前記遠心分離された上澄み液から食品または植物由来ルテリオンを分離する段階(韓国出願番号第10‐2015‐00001195号)。
【0058】
場合に応じて、ルテリオンを含有する食品または植物抽出物にルテリオン表面抗原に特異的に結合する抗体が固定された粒子を添加してルテリオンと粒子の結合を誘導し、粒子に結合したルテリオンを回収して分離することもできる。この際、ルテリオン表面抗原は、CD39またはCD73であり、各抗原に特異的に結合する抗‐CD39または抗‐CD73抗体を磁性粒子に固定し、磁石を用いて(磁性を加えて)ルテリオンと結合した粒子のみを分離した後、ルテリオンを回収することにより、ルテリオンを取得することができる(韓国出願番号第10‐2015‐0004288号)。
【0059】
前記の段階を経てIR光源に反応する運動性のある長径および/または短径が50〜800nmであるルテリオンを分離することができ、暗視野顕微鏡や共焦点顕微鏡により運動性を観察することができる。
【0060】
前記過程により取得した食品または植物由来のルテリオンは、暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で観察が可能であり、それぞれ200nm、400nm、600nmおよび800nmのフィルタを順に用いてサイズに応じて50〜200nm(発生期)/200〜400nm(成熟期)/400〜600nm(分裂期)/600〜800nm(過分裂期)に区分することができる。
【0061】
前記のように分離した食品または植物由来ルテリオンは、以下の特性を有する。
【0062】
(a)長径および/または短径が50〜800nmである円形乃至楕円形であり、運動性がある。
(b)核酸含有。
(c)免疫化学蛍光染色時にミトコンドリアと類似の反応を示す。
(d)フュージョン(fusion)および/またはフィッション(fission)生態様式を示す。
(e)フュージョンがない場合、サイズが500nmまで成熟し、DNA含有類似ミトコンドリアに成熟し、SEMまたはTEM電子顕微鏡写真上でミトコンドリアと類似の構造を示す。
(f)エキソソームとは異なる光反応を示す。
(g)IR照射時にフィッション(fission)が発生する。
【0063】
場合に応じて、前記ルテリオンは、以下の特性の一つ以上をさらに有することを特徴とすることができる。
【0064】
(i)自己蛍光(autofluorescence)を示す。
(j)長径および/または短径200〜400nmのサイズでATPを生産する。
(k)付着性がある。
(l)血液由来ルテリアルと反応する時に、血液由来ルテリアルの融合(fusion)を抑制するかフィッション(fission)を促進する。
(j)CD39またはCD73の表面抗原を有する。
【0065】
前記食品または植物由来ルテリオンを50〜200nm/200〜400nm/400〜600nm/600〜800nmの4種類に分類保管することができる。ルテリオンを分離した後、容易に溶解されるか形態が変化する特徴があり、注意する必要であり、長期保管時には短い時間内に零下80℃以下で冷凍保管することが好ましい。短期保管時(ライブ状態)には零上4℃内外が好ましく、食塩水溶液0.5%に浸漬して保管し、30cm距離内外で低温IRを照射することが好ましい。短期保管時にはPBS溶液に保管することができ、密閉保管として窒素充填パッキングすることもできる。場合に応じて、食品または植物ルテリオンは、フラボノイドフィセチン、ブテインおよびスルフレチンからなる群から選択される一つ以上の保存剤を含んで保管することができる。
【0066】
場合に応じて、ルテリオンに水分を添加し、IR光線の照射下で18〜30℃で培養して植物ルテリオンを培養するか、長径および/または短径400nm〜800nmの植物由来ルテリオンに水分を添加し、IR光線の照射下で18〜30℃(好ましくは20〜25℃)で培養(これにより、植物ルテリオンのフィッション(fission)誘導)することができる。前記培養時に添加される水分は、食塩水またはPBS溶液であってもよく、これに制限されない。培養前の植物由来ルテリオンは、上述の分離方法により取得することができ、そのサイズが長径および/または短径50〜500nmのものを使用することができる。前記本発明の培養方法により培養された植物由来ルテリオンの培養後、サイズは、長径および/または短径300〜500nmであってもよい。この際、顕微鏡で観察しながらルテリオンのサイズが長径および/または短径500nmを超えないようにすることができ、培養が終了すると、サイズ別に分類して零下80℃に冷却して保管するか、窒素で充填して保管または零上で保管することができ、保管時に保存剤を添加することができる。
【0067】
ルテリオンは、すべての植物に存在するため、制限されないが、好ましくは、表1〜4から選択される薬用植物を使用することができる。ルテリオンは、植物の茎側に多量分布すると予想されるところ、茎部分からルテリオンを分離するのが好ましい。
【0072】
また、アプタマは、古典的なワトソン‐クリック(Watson‐Crick)塩基対形成以外の相互作用により分子に対して高度の特異的結合親和度を示す核酸分子である。アプタマは、選択された標的に特異的に結合して標的の活性を調整できるものであり、例えば、アプタマ結合により標的の作用能力を遮断することができる。アプタマは、サイズが10〜15kDa(30〜45ヌクレオシド)であり、ナノモル以下の親和度でその標的に結合し、密接に関連する標的に対して差別性を示す。
【0073】
前記候補物質は、合成または天然化合物のライブラリから得ることができる。化合物のライブラリを得る方法は、当業界において公知となっており、Brandon Associates(Merrimack、NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee、WI)から商業的に入手可能である。Biotics(Sussex、UK)、Xenova(Slough、UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft.Pierce,FIa.)、およびPharmaMar,U.S.A。(Cambridge,Mass.)を含む様々な出処からバクテリア、真菌、食品または薬用植物、および動物抽出物形態の天然化合物ライブラリが商業的に入手可能である。
【0074】
前記(c)は、候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズを減少させるか、形態を変化させるか、または運動性を増加させる候補物質を抗癌剤として選別する段階、または(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアルのサイズ増加を抑制させるか、形態変化を最小化するか、または運動性を維持させる候補物質を癌予防物質として選別する段階である。
【0075】
正常状態のルテリアルは、二重胞子(double‐spore)を形成した後、それ以上増殖しないが(
図35)、癌に確定診断された患者の血液内で発見されるルテリアル変異体は、幹細胞と同様に無限に増殖する特性を有し、800nm以上から200μm(200,000nm)以上のサイズを有する。また、癌に確定診断された患者の血液内で発見されるルテリアル変異体は、運動性が正常状態のルテリアルに比べて著しく低くなる。かかるルテリアルの運動性は、ナノトラッキング速度により定量することができる。
【0076】
一つの実施例において、候補物質処理前のルテリアル変異体対照群と比較して、ルテリアル変異体のサイズを減少させる候補物質を抗癌剤として選別することができる。前記段階(c)において、抗癌剤候補物質が存在しない状態で癌患者のルテリアル変異体は、変形された群集形態を形成する現象に非正常融合を示し、サイズが正常ルテリアルに比べて大きくなる。しかし、抗癌剤候補物質の存在により融合が抑制されてサイズが減少する場合、抗癌剤として選択することができる。
【0077】
前記段階(c)において、抗癌剤候補物質が存在しない状態で癌患者由来ルテリアル変異体は、例えば、長径および/または短径が約1000nm以上であるサイズで3500nm以下、最大200μmのサイズを有するものであってもよい。しかし、候補物質処理30分以上、好ましくは、1時間以上後、候補物質処理前の対照群と比較して、200〜2,000nmのサイズに減少することができる。
【0078】
また、ルテリアル変異体のサイズに関連し、候補物質処理30分以上、好ましくは、1時間以上後、候補物質処理前のルテリアル変異体の直径の約70%以下、例えば、候補物質処理前のルテリアル変異体の長径または短径の約10〜70%に減少すると、候補物質を有効な抗癌剤として選別することができる。本出願の試験例1によると、抗癌剤候補物質である漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオン処理1時間後、各処理群において、ルテリアル変異体は、対照群に比べて候補物質処理前のルテリアル変異体の長径の13〜63%、候補物質処理前のルテリアル変異体の短径の12〜67%に減少したことを確認した。
【0079】
また一つの実施例において、候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアル変異体の形態を変化させる候補物質を抗癌剤として選別することができる。
【0080】
抗癌剤候補物質の存在により癌患者のルテリアルで観察される形態が変形される場合、抗癌剤として選択することができるが、形態変形の減少は、鞭毛型、微小管型、マス型、ロッド型または複合型を有するルテリアル変異体の数が減少するか、正常人のルテリアル形態である円形または楕円形に回復することを意味することができる。例えば、抗癌剤候補物質が存在していない対照群と比較して、30分以上、好ましくは、1時間以上後、鞭毛型(
図4)、微小管型(
図5)、マス型(
図6)、ロッド型(
図7)または複合型ルテリアルが80%以下、好ましくは、50%以下、より好ましくは、30%以下に減少すると、抗癌剤として選択することができる。この際、候補物質を処理して鞭毛型、微小管型、マス型、ロッド型または複合型を有するルテリアル変異体の数が抗癌剤候補物質が存在していない対照群と比較して、例えば、5〜80%、好ましくは、10〜50%、より好ましくは、10〜30%に存在した場合、抗癌剤として選択することができる。
【0081】
前記鞭毛型のルテリアルが発見された腫瘍の疑いがある患者の場合、ほとんどの場合、ステージ4癌診断を受けた患者から鞭毛型の腫瘍が発見される傾向が観察された。これに対し、鞭毛型の形態変形を減少または緩和させるか、円形または楕円形に回復させるものとしてスクリーニングされた治療剤は、ステージ4癌患者の治療に適する治療剤であり得る。
【0082】
前記マス型のルテリアルが発見された腫瘍の疑いがある患者の場合、肝、大腸、消化器、男性の直腸、および/または女性の子宮に腫瘍が発見される傾向が観察された。これに対し、マス型への形態変形を減少または緩和させるか、円形または楕円形に回復させるものとしてスクリーニングされた治療剤は、肝、大腸、消化器、男性の直腸および/または女性の子宮癌に適する治療剤であり得る。
【0083】
また、前記ロッド型のルテリアルが発見された腫瘍の疑いがある患者の場合、肺、膵臓、甲状腺、骨、脳、男性の前立腺、女性の卵巣および/または乳に腫瘍が発見される傾向が観察された。これに対し、ロッド型への形態変形を減少または緩和させるか、円形または楕円形に回復させるものとしてスクリーニングされた治療剤は、肺、膵臓、甲状腺、骨、脳、男性の前立腺、女性の卵巣および/または乳癌に適する治療剤であり得る。
【0084】
前記マス型とロッド型が複合された複合型のルテリアルが発見された腫瘍の疑いがある患者の場合、ステージ4転移癌に診断された。これに対し、複合型への形態変形を減少または緩和させるか、円形または楕円形に回復させるものとしてスクリーニングされた治療剤は、ステージ4転移癌の予防または治療に適するものであり得る。
【0085】
他の実施例において、ルテリアル変異体では、運動性が減少してナノトラッキング速度が10nm/sec未満から0.5nm/sec乃至運動性のない0nm/secを示すことができる。しかし、候補物質処理30分以上、好ましくは、1時間以上後、運動性低下度の変化幅が減少または抑制されるか、ナノトラッキング速度が12nm/sec以上、例えば、50nm/sec以上600nm/sec以下、好ましくは、100nm/sec以上500nm/sec以下に回復すると、有効な抗癌剤として選択することができる。
【0086】
運動性と関連し、本発明では、電気泳動移動度を測定して候補物質処理時の運動性の変化を確認することができる。本発明における「電気泳動移動度」とは、電気泳動による荷電粒子の移動速度をその場所の電場の強度で除算して得た値であり、粒子の移動速度が高いと、粒子の運動性が高いと決定することができる。
【0087】
ルテリアル変異体では、運動性が減少して電気泳動移動度が0.5μm cm/Vs未満から運動性のない0μm cm/Vsであり得る。ルテリアル変異体の運動性と関連して候補物質処理30分以上、好ましくは、1時間以上後、運動性が回復して候補物質処理前のルテリアル変異体の対照群と比較して電気泳動移動度が30%以上増加、例えば、30〜300%増加すると、有効な抗癌剤として選択することができる。本出願の試験例1によると、抗癌剤候補物質である漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオン処理1時間後、各処理群において、ルテリアル変異体は、対照群に比べて電気泳動移動度が33〜270%増加したことを確認した。
【0088】
本出願の発明者らは、サイズが1100〜3100nmであり、運動性が極めて低いか、運動性がない状態である癌患者由来ルテリアル変異体を用いて候補物質の投与に伴う変化を確認することにより抗癌剤をスクリーニングした結果、候補物質処理1時間経過後、ルテリアル変異体の直径が、候補物質処理前のルテリアル変異体直径の70%以下に減少し、サイズが減少するか、ナノトラッキング速度が100nm/sec以上に回復、電気泳動移動度が30%以上増加し、運動性が回復すると、候補物質を抗癌剤として選別することができることを示している。
【0089】
癌予防剤のスクリーニングは、(c)候補物質処理前の対照群と比較して、ルテリアルのサイズ増加を抑制させるか、形態変化を最小化するか、または運動性を維持させる候補物質を癌予防物質として選別する段階を含む。
【0090】
癌予防剤をスクリーニングする場合、前記段階(c)は、癌予防剤候補物質を処理した群で正常人由来ルテリアルの融合が、例えば、30分以上、好ましくは1時間以上の間に観察されず、サイズが維持されるか、正常人由来ルテリアルの長径または短径が癌予防剤候補物質処理前の正常人由来ルテリアルの10%以上増加しない場合、候補物質を癌予防物質として選別することができる。
【0091】
また、癌予防剤候補物質を処理した群で30分以上、好ましくは、1時間以上の間に正常人由来ルテリアルが円形または楕円形に維持、すなわち、100%のルテリアルが円形または楕円形、若しくは鞭毛型、微小管型、マス型、ロッド型または複合型ルテリアルへの形態変化を最小化、すなわち鞭毛型、微小管型、マス型、ロッド型または複合型ルテリアルに形態が変化したルテリアルが20%以下である場合、候補物質を癌予防物質として選別することができる。
【0092】
さらに、癌予防剤候補物質を処理した群で30分以上、好ましくは、1時間以上の間に運動性が維持、すなわちナノトラッキング速度100nm/sec以上に維持されていると、候補物質を癌予防剤として選別することができる。
【0093】
場合に応じて、明らかな癌予防剤スクリーニングのために、化学的または物理的処理により、ルテリアルに融合(fusion)のような変形を誘導(negative control)するか、変異誘発条件、例えば、36℃、湿度50%以上の条件で変異ルテリアルを培養した後、候補物質を処理してルテリアルのサイズ、形態または運動性の変化が小さいか減少すると観察される場合の候補物質を癌予防剤として選別することができる。
【0094】
例えば、リゾレシチン(lysolecithin)やポリエチレングリコール6000(polyethylen glycol 6000)のような細胞融合誘導物質を処理してルテリアルの融合を誘導した後、癌予防剤候補物質の存在下で培養して、ルテリアルのサイズ増加、形態変形または運動性低下度のような変化を減少させるか抑制させる場合の候補物質を癌予防物質として選別することができる。
【0095】
前記候補物質によるルテリアルのサイズ、形態または運動性の変化可否は、例えば、ローダミン123(Rhodamine123)、ミトトラッカ(Mito‐tracker)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、DAPIおよびヤヌスグリーンB(Janus green B)からなる群から選択される1以上の染料で染色し、発色が確認されるルテリアルを顕微鏡で撮影することにより確認することができる。
【0096】
前記ルテリアルの融合抑制、サイズ、形態または運動性の変化可否の確認に使用される顕微鏡は、蛍光発色を確認できる顕微鏡であれば特に制限されず、当業者が通常使用する暗視野顕微鏡(Dark field micro‐scope;Ultra microscope)、ラマン分光計(Raman spectrometer、532nmの波長使用)、Leica、AFM(Atomic Force Microscope)、MFM(Magnetic force microscope)、STM(Scanning tunneling microscope)、CLSM(Confocal Laser Scanning Microscope)、NSOM(Near‐field scanning optical microscope)、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)などにより確認することができる。
【0097】
[実施例]
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例により制限されると解釈しないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0098】
実施例1:ルテリアルの分離
表5のように、(1)肺癌患者、(2)膵臓癌患者、(3)大腸癌患者、(4)肝癌患者、(5)前立腺癌患者、(6)乳癌患者、(7)甲状腺乳頭癌患者、(8)腎癌患者、(9)白血病患者、(10)末期癌(胃癌、大腸癌、胆嚢癌)患者および(11)ステージ4転移癌(肺癌、前立腺癌、乳癌)に確定診断された患者の血液からルテリアルを取得した。癌に確定診断された患者から1次的に血液分離後、遠心分離して血液内物質をダウンさせ、5〜10分間放置した後、上澄み液をピペットで分離した後、血液100〜200μlに5μlのCD39抗体‐強磁性ナノ粒子またはCD73抗体‐強磁性ナノ粒子を添加して30分間結合させた後、磁石分離器に1〜2分間放置してルテリアル‐磁性ナノ粒子を集め、上澄み液を捨て洗浄した。その後、ルテリアルと結合した強磁性ナノ粒子に0.033wt%のBSA(Bovine Serum Albumin)/PBS緩衝溶液を加え、25℃で1時間インキュベーティングさせた後、磁石を用いてBSAが吸着された強磁性ナノ粒子のみを分離し、BSAが吸着された強磁性ナノ粒子にまた一定量のPBSを加えてインキュベーティングにより脱着させてルテリアルを分離した。分離したルテリアルは、FP‐640分光蛍光計(spectrofluorometer)(JASCO)により280nmで標準検量線法を用いて定量分析した(放出スリット:0.5nm、吸収スリット:0.5nm)。共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて癌患者由来サイズが1,000〜3,200nmであるルテリアル変異体を取得した。
【0100】
実施例2:候補物質の取得
薬用植物である漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツそれぞれ100gに20〜30倍サイズ、すなわち、2〜3リットル容器のサイズに合わせて切断し容器に入れ、植物の5〜8倍である500〜800g(好ましくは、植物の6倍、すなわち、600g)の蒸留水を容器に投入した後、80℃で約8時間程度煎出して熱水抽出した。100〜200μlの熱水抽出物にCD39抗体‐強磁性ナノ粒子またはCD73抗体‐強磁性ナノ粒子を添加して30分間結合させた後、磁石分離器に1〜2分間放置してルテリオン‐磁性ナノ粒子を集めて上澄み液を捨て洗浄した。その後、ルテリオンと結合した強磁性ナノ粒子に0.033wt%のBSA(Bovine Serum Albumin)/PBS緩衝溶液を加え、25℃で1時間インキュベーティングさせた後、磁石を用いてBSAが吸着された強磁性ナノ粒子のみを分離し、BSAが吸着された強磁性ナノ粒子にまた一定量のPBSを加えてインキュベーティングにより脱着させ、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツそれぞれで由来したルテリオンを分離した。
【0101】
かかる過程によって長径50〜500nmのルテリオンを取得することができ、これは、暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で観察確認が可能であった。前記と同一の方法で表1〜4に記載の薬用植物からルテリオンを取得することができる。
【0102】
試験例1:抗癌剤スクリーニング
実施例2においてPBS溶液中に含まれた漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを実施例1から分離されたルテリアル変異体に処理した。レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンを1、5、10、50、100および500μg/mlの濃度で処理(50μg/mlの場合、約7×10
8個/mlのルテリオンを含む)しており、漆皮由来ルテリオンを追加希釈して0.1,0.5、1、5、10および50μg/mlの濃度で処理(5μg/mlの場合、約7×10
7個/mlのルテリオンを含む)した。
【0103】
PBS中に30℃、pH7.3の条件で30分および1時間経過した後、サイズおよび運動性の変化を確認した。ルテリアル変異体のサイズ変化は、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いてルテリアル変異体の直径変化を撮影して確認しており、運動性の変化は、米国3i社製のナノトラッキングでルテリアル変異体中心にトラッキングを設定し、ナノトラッキングを作動させてルテリアル変異体の移動とともにリアルタイム移動軌跡を表記して1秒当たりの速度を計算することによりナノトラッキング速度を測定した。また、Malvern ZetaSizer Nano ZSP装備を用いてルテリアル変異体をセル(Universal Dip Cell:ZEN1002)に入れ、電極2個を浸漬させた後、荷電された粒子が反対電荷の電極側に移動する電気泳動移動度(electrophoretic mobility)の値を測定した。
【0104】
表6のように、漆皮(ルテリオンサイズ:長径×短径:400nm×350nm)、レンギョウ(400nm×370nm)、白茯苓(450nm×300nm)、トウキ(400nm×300nm)およびキウイフルーツ(420nm×330nm)由来ルテリオンそれぞれ投与前のルテリアル変異体(対照群)と比較して、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれ投与後、癌患者由来ルテリアル変異体のサイズが減少し、運動性が回復したことを確認した。
【0106】
その結果をそれぞれ
図36〜
図40に示しており、
図36〜
図40によると、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを処理していない癌患者由来のルテリアル変異体対照群(
図36〜
図40の(a))では、i)約1,100〜3,100nmのサイズおよびii)約0〜10nm/secのナノトラッキング速度、約0〜0.5μm cm/Vsの電気泳動移動度が示されることを確認した。
【0107】
しかし、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを処理した群(30分経過後:
図36〜
図40の(b)および1時間経過後:
図36〜
図40の(c))において1時間経過後、ルテリアル変異体のサイズが著しく減少し、一部は、正常状態のルテリアル(約800nm以下)にサイズが減少したことを確認した。
【0108】
漆皮由来ルテリオンを処理した群(
図36(c))では、1時間経過後、ルテリアル変異体(対照群)の長径の約28%に減少、ルテリアル変異体の短径の約22%に減少し、レンギョウ由来ルテリオンを処理した群(
図37(c))では、1時間経過後、ルテリアル変異体(対照群)の長径の約63%に減少、ルテリアル変異体の短径の約67%に減少し、白茯苓由来ルテリオンを処理した群(
図38(c))では、1時間経過後、ルテリアル変異体(対照群)の長径の約57%に減少、ルテリアル変異体の短径の約38%に減少し、トウキ由来ルテリオンを処理した群(
図39(c))では、1時間経過後、ルテリアル変異体(対照群)の長径の約13%に減少、ルテリアル変異体の短径の約12%に減少し、キウイフルーツ由来ルテリオンを処理した群(
図40(c))では、1時間経過後、ルテリアル変異体(対照群)の長径の約27%に減少、ルテリアル変異体の短径の約30%に減少したことを確認した。
【0109】
運動性と関連し、ナノトラッキング速度は、ルテリアル変異体において10nm/sec未満であったが、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを処理した群において約100〜500nm/secの運動性を回復したことを確認した。
【0110】
また、電気泳動移動度の測定結果、ルテリアル変異体において約0〜0.5μm cm/Vs未満の電気泳動移動度が測定されたが、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを処理した群で運動性が回復され、漆皮由来ルテリオン処理群では、電気泳動移動度が約0.73μm cm/Vsと、ルテリアル変異体(対照群)に比べて約46%増加し、レンギョウ由来ルテリオン処理群では、約0.4μm cm/Vsと、ルテリアル変異体(対照群)に比べて約33%増加し、白茯苓由来ルテリオン処理群では、約0.31μm cm/Vsと、ルテリアル変異体(対照群)に比べて約210%増加したことを確認することができ、トウキ由来ルテリオン処理群では、約0.37μm cm/Vsと、ルテリアル変異体(対照群)に比べて約270%増加したことを確認することができ、キウイフルーツ由来ルテリオン処理群では、約0.86μm cm/Vsと、ルテリアル変異体(対照群)に比べて約72%増加したことを確認することができる。
【0111】
つまり、薬用植物である漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを処理したルテリアルにおいて、対照群に比べて凝集を減少させ、サイズを減少させ、形態変化を制御するだけでなく、癌患者から発見されるルテリアル運動性の低下を回復させることができることを確認することができる。したがって、薬用植物である漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれを抗癌剤として選別した。
【0112】
試験例2:選別された候補物質のin vitro癌細胞株viabilityの測定
試験例1で抗癌効果があると確認された漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれに対する癌細胞株の増殖抑制効果を確認した。韓国細胞株銀行(KCLB)から提供された癌細胞株AsPC‐1(Pancreatic cancer cell line)、A549(Lung cancer cell line)およびBT‐20(Breast cancer cell line)それぞれを使用しており、10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640とDMEM培地を使用して培養した。
【0113】
各細胞株を成長速度に応じて濃度を異にして96‐well plateにseedingした後、16〜24時間37℃で培養した後、実施例2で分離された漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンを5種の濃度で段階的に処理した。
【0114】
72時間後に各ウェル(well)に15μlのMTT染色溶液(Promega)を入れた後、37℃で4時間放置した後、水溶化溶液/停止溶液混合物を一つのwell当たり100μlずつ処理して37℃で一晩中放置した。各ウェルに150μlのDMSOを添加した後、590nmの波長でマイクロプレートリーダー(Bio‐rad、米国)を使用して、各細胞株の細胞生存力を測定した。
【0115】
その結果、
図41〜
図43に示されているように、漆皮、レンギョウ、白茯苓、トウキおよびキウイフルーツ由来ルテリオンそれぞれは、濃度依存的にAsPC‐1(Pancreatic cancer cell line)、A549(Lung cancer cell line)およびBT‐20(Breast cancer cell line)癌細胞株それぞれの生存力の減少、すなわち、癌細胞株それぞれの増殖を有意に抑制させることを確認することができた。
【0116】
以上、本発明における内容について詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとってかかる具体的な記述は、単に好ましい実施様態であって、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明者により新規確認された癌患者から分離されたルテリアル変異体をベースとし、抗癌剤または癌予防剤をスクリーニングすることができる方法を提供することにより、抗癌剤または癌予防剤候補物質の処理時に示されるルテリアル変異体のサイズ、形態または運動性の変化や、正常ルテリアルの正常状態維持可否を観察し、抗癌剤または癌予防剤を比較的短時間で容易にスクリーニングすることができる。
【国際調査報告】