(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-505633(P2017-505633A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】バイオマスからの可溶性糖の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C12P 19/02 20060101AFI20170203BHJP
C13K 1/02 20060101ALI20170203BHJP
C07H 3/02 20060101ALI20170203BHJP
C07H 3/04 20060101ALI20170203BHJP
C07H 3/06 20060101ALI20170203BHJP
【FI】
C12P19/02
C13K1/02
C07H3/02
C07H3/04
C07H3/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-564438(P2016-564438)
(86)(22)【出願日】2015年1月16日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月6日
(86)【国際出願番号】IB2015000034
(87)【国際公開番号】WO2015107415
(87)【国際公開日】20150723
(31)【優先権主張番号】154/MUM/2014
(32)【優先日】2014年1月16日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505220114
【氏名又は名称】デパートメント オブ バイオテクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】514017677
【氏名又は名称】インスティテュート・オブ・ケミカル・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】Institute of Chemical Technology
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ラリ、 アルヴィンド マリナース
(72)【発明者】
【氏名】オダネート、 アンナンマ アニル
(72)【発明者】
【氏名】ビルハデ、 サチンクマール ヒラマン
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア、 ジュリエット ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】サワーント、 スネハ チャンドラカント
【テーマコード(参考)】
4B064
4C057
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064CA21
4B064CB01
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4C057AA06
4C057AA19
4C057BB02
4C057BB03
4C057BB04
(57)【要約】
本発明は、可溶性糖の製造のためのバイオマスの酵素介在性加水分解プロセスを提供し、前記プロセスは、酵素溶液へ少量のバイオマスを定常的に添加することを含み、これによりバイオマスの迅速な可溶化を可能にする。酵素的糖化のために使用されるプロセスは、バイオマス充填量の増加、酵素リサイクル、並びに、基質及び生成物の阻害効果の緩和を可能にする。可溶性酵素とともに非加水分解バイオマスをリサイクルすることにより、効果的に加水分解を繰り返すために、前記酵素を確実に完全に再利用できるようになり、これにより、使用される酵素の全体の生産性が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスであって、
a.40〜60℃の温度で、反応容器中で、pH4〜6の酵素溶液を調製するステップ、
b.工程(a)の酵素溶液に、pHを4〜6に、温度を40〜60℃に維持しながら、ホロセルロース%が70〜100%、かつ、水分含量が10〜80%(w/w)のバイオマスを1ロット添加し、所定のバイオマス:酵素比の初期反応混合物を得る工程であって、初期反応混合物中の所定のバイオマス:酵素比が、1:104〜1:106(バイオマス Kg/酵素 FPU)の範囲である工程、
c.残りのバイオマスを、複数のロットで、30〜90分間で、工程(b)と同様にして繰り返し添加し、最終反応混合物の固形分充填量を10〜30%とする工程であって、バイオマス:酵素比が1:103〜1:105(バイオマス Kg/酵素 FPU)に維持される工程、
d.最終反応混合物をさらに5〜120分反応させて、バイオマス加水分解物を得る工程であって、バイオマスの40〜80%の可溶化が達成される工程、
e.工程(d)のバイオマス加水分解物の固液成分を分離して、可溶性糖及び酵素を含むろ液、並びに、非加水分解バイオマス及び吸着酵素の残渣を得る工程、
f.ろ液に含まれる可溶性糖から可溶性酵素を分離する工程、及び
g.工程(e)の残渣、及び、工程(f)で分離した可溶性酵素を、工程(b)にリサイクルし、可溶性糖の製造のために所定のバイオマス:酵素比を維持する工程
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記バイオマスは、これらに限定されないが、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、トウモロコシ皮、おがくず、麦わら、サトウキビバガス、スイッチグラス、稲わら、及び草を含む群から選択される農産物であり、好適には、ホロセルロースを>70%に濃縮し、かつ、ホロセルロースが酵素反応を受け入れ易くなるように、前処理されている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酵素は、セルラーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼ、フェルロイルエステラーゼ及び追加の補助的酵素からなる群から選択され、最も好ましくはセルラーゼである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酵素溶液は、約2mg/g〜約95mg/gバイオマス、最も好ましくは4.625〜46.25mg/gバイオマスのタンパク質充填量で、反応容器中で調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記バイオマスは、最初に、1〜10%(w/v)の濃度を有する混合可能なスラリーとして反応容器に充填される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
残りのバイオマスを、0.5〜1.5時間の間に、2、3、4、5、6、7、9、10及び12供給部で定常的に添加して、固形分充填量を少なくとも30%(w/v)増加させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
バイオマスを、0.5〜1.0時間の間に、3〜9供給部で定常的に添加して、固形分充填量を少なくとも15%(w/v)増加させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
最終バイオマス:酵素比が1:103〜1:105(酵素 Kg/バイオマス FPU)の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
バイオマス加水分解物中の可溶性糖濃度は、総可溶性高濃度糖が少なくとも75g/Lである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
バイオマスが0.5〜2時間で可溶性糖に変換される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記可溶性糖は、多糖類及び単糖類、最も好ましくはグルコースを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
可溶性糖の最も高い最終グルコース濃度が50〜150g/Lとなる、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスに関し、可溶性糖は、さらに、エタノール等の、燃料及び他の化学物質等の有価な製品を製造するために使用される。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは、長い間、再生可能な燃料エネルギー源として有望であることが示されてきたが、バイオマスを好適なバイオ燃料に変換するより効率的な手段が未だに必要とされている。農業残渣、木材、林業廃棄物、製紙スラッジ、並びに一般及び産業固体廃棄物等のセルロース系及びリグノセルロース系の原料及び廃棄物は、燃料や他の化学物質等の有価な製品の製造のための潜在的な再生可能原料を提供する。植物材料もまた、バイオ燃料に変換することができるグルコース等の発酵性糖の重要な原料である。植物材料中の糖類は、セルロース、ヘミセルロース、グルカン及びリグニンを含むポリマーの長鎖から構成されている。したがって、これらのポリマーをモノマー糖に分解する必要がある。バイオマスを発酵性糖に変換するための方法は当該技術分野において知られており、一般には、2つの主要な工程、すなわち、植物の構造を緩めるための前処理工程と、セルロース及びヘミセルロースのポリマー鎖をモノマー糖に変換する化学的又は酵素加水分解工程とを含み、モノマー糖は、その後、有用な製品へと発酵させることができる。
【0003】
前処理工程は、糖の損失と阻害剤の発生を最小限に抑えながら、酵素のアクセスが可能になるように繊維を開くことを目的とした、バランスの取れた作業であり、高収量と、酵素加水分解及び発酵に適した基質とを確保するためのものである。前処理方法は、セルロース系材料及びリグノセルロース系材料の炭化水素ポリマーが、糖化酵素/加水分解酵素をより容易に受け入れることができるようにするために用いられる。
【0004】
前処理された混合物は、次いで、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼ等の酵素を用いた酵素加水分解に供され、これらは、加水分解物中で、へミセルロース又はセルロースのオリゴ糖及び/又は単糖への加水分解を触媒する。加水分解物は、バイオ燃料を製造するためにさらに発酵に供される。前処理バイオマスから発酵性糖を生産するために使用される糖化酵素としては、典型的には、セルロース加水分解グリコシダーゼ、ヘミセルロース加水分解グリコシダーゼ、澱粉加水分解グリコシダーゼ等の1つ又はそれ以上のグリコシダーゼ、並びにペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼ及び/又はフェルロイルエステラーゼが挙げられる。糖化酵素及びバイオマス処理のための方法はLynd,L.R.ら(Microbiol.Mol.Biol Rev.(2002)66:506−577)に概説されている。
【0005】
US20090053777は、前処理バイオマスを糖化して、高濃度の発酵性糖を得るためのプロセスを開示している。フェドバッチ(fed batch)反応器系は、複数の小サイズ化(size reduction)工程と、垂直の撹拌タンク全体にわたる混合を維持するための混合を含む。当該プロセスは、混合可能な前処理バイオマススラリーの一部、及び、セルロースを加水分解することができる少なくとも1つの酵素を含む、糖化酵素集団(consortium)の一部を提供すること;25℃〜60℃の温度及びpH4.5〜6.0で、前記スラリーと酵素とを反応させること;小サイズ化の機構を適用すること;前処理バイオマスの追加分を添加して、高固形分バイオマススラリーを生成すること;同条件で前記高固形分バイオマススラリーを反応させることであって、当該工程を2回以上繰り返して、より高糖度の加水分解物を生成すること;を含み、ここで、前処理バイオマスの乾燥重量は24%〜30%の範囲であり、最終加水分解物生成物の重量の20%となる。
【0006】
WO2011157427には、セルロース系バイオマスの酵素加水分解のための連続プロセスが記載され、当該プロセスは、セルロース系バイオマスの部分的酵素加水分解のために、連続撹拌タンク反応器に所定量のセルロース系バイオマスと酵素とを添加することを含み、ここで、部分的に加水分解されたセルロース系バイオマスは連続的に除去される。前記セルロース系バイオマスの固形分含量は10〜45%である。
【0007】
WO2006063467は、前処理セルロースの酵素加水分解のための連続プロセスシステムを開示し、当該システムは、前処理されたセルロース系原料の水性スラリーを、垂直カラム加水分解反応器の底部に導入することを含む。混合を避け、平均スラリー流速を毎時約0.1〜約20フィートに維持することにより、反応器内の軸方向の分散を制限し、これにより、未溶解固形分が液体よりも遅い速度で上向きに流れるようにする。反応器に水性スラリーを導入する工程の前又は当該工程の間に、セルラーゼ酵素を水性スラリーに添加する。加水分解生成物と非加水分解固形分とを含む水性ストリームを分離し、非加水分解セルロースを同じ反応器にリサイクルする。当該公報にはまた、加水分解プロセスのために酵素を基質に露出させるための、セルラーゼ酵素と綿状物からなる酵素組成物も記載されている。セルロースをグルコースに変換するために必要な時間は、32ユニット/gセルロース〜5ユニット/gセルロースの酵素充填量でそれぞれ48〜200時間である。
【0008】
US20100255554は、フェドバッチ加水分解プロセスの最適化の方法を開示し、ここで、未加水分解物及び酵素原料のフィード添加容量、及び/又は、バッチ添加頻度を制御することによって、加水分解時間を最小化する。当該プロセスは、反応容器に水を充填すること;セルラーゼ酵素を添加すること;反応容器にリグノセルロース未加水分解物バイオマスフィードを連続的に添加して、反応混合物を生成することを含み、それにより、未加水分解物フィードは、事前に選択されたバッチ容量及びバッチ添加頻度で総供給時間20時間をかけて添加され、最終反応混合物において、予め選択された最終濃度(consistency)と予め選択された乾燥物含量が達成される。この反応混合物では、理論セルロース量の70〜90%のグルコースへの変換が達成され、ここで、バッチ添加頻度は80〜105分毎に1バッチ、予め選択された最終濃度は24%、総供給時間は80〜120時間である。
【0009】
従来技術に記載の方法によれば、バイオ燃料の生産に使用される主要な方法は、3つの主要な工程、すなわち、バイオマス処理、酵素加水分解、及びバイオ燃料を生成するための糖の発酵を含む。低反応速度、酵素の高コスト、及び、低生成物濃度が、酵素加水分解の際に直面する主要な問題である。先行技術に記載された方法によると、上記の課題は、高不溶性固形分濃度で酵素加水分解を行うことによって克服される。しかし、高不溶性固形分濃度での糖化反応では、高濃度繊維懸濁液のレオロジー特性に起因して、粘度増加、混合のためのより高いエネルギー要件、酵素の剪断活性化、及び低熱伝達という課題に直面することになる。したがって、上記の課題を克服することができる方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様の一つは、可溶性糖の製造のためのバイオマスの酵素媒介性加水分解のプロセスを提供することであり、当該プロセスは、少量のバイオマスを酵素溶液に定常的に添加することを含み、これにより迅速な可溶化が可能となる。これにより、バイオマスを添加して反応混合物中の基質濃度を高めることが可能となり、高い基質充填量(loading)での効率的な糖化が可能となる。非加水分解バイオマスを可溶性酵素とともにリサイクルすることにより、繰り返して行われる加水分解のために、当該酵素を確実に完全に再利用することができ、これにより、使用される酵素の全体としての生産性が向上する。
【0011】
本発明の別の態様は、バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスを提供することであり、当該プロセスは、40〜60℃の温度で、反応容器中でpH4〜6の酵素溶液を調製する工程;工程(a)の酵素溶液に、pHを4〜6に、温度を40〜60℃に維持しながら、ホロセルロース率(%)が70〜100%、かつ、水分含量が10〜80%(w/w)のバイオマスを1ロット添加し、所定のバイオマス:酵素比の初期反応混合物を得る工程であって、初期反応混合物中の所定のバイオマス:酵素比が1:10
4〜l:10
6(バイオマス Kg/酵素 FPU)の範囲である工程;残りのバイオマスを、複数のロットで(in lots)、30〜90分間で、工程(b)と同様にして繰り返し添加し、最終反応混合物中の固形分充填量を10〜30%とする工程であって、バイオマス:酵素比を1:10
3〜1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)の範囲に維持する工程;最終反応混合物をさらに5〜120分間反応させバイオマス加水分解物を得る工程であって、バイオマスの40〜80%の可溶化が達成される工程;工程(d)のバイオマス加水分解物の固液成分を分離して、可溶性糖及び酵素を含むろ液、並びに、非加水分解バイオマス及び吸着酵素の残渣を得る工程;ろ液に含まれる可溶性糖から可溶性酵素を分離する工程;並びに、工程(e)の残渣及び工程(f)で分離した可溶性酵素を工程(b)にリサイクルし、可溶性糖の製造のための所定のバイオマス:酵素比を維持する工程、を含む。
【0012】
本発明の一態様は、反応容器系における可溶性糖の製造のための、前処理バイオマスの酵素媒介性加水分解のプロセスを提供する。酵素糖化に用いられる方法は3つの主要グループ、すなわち、(a)反応器中の累積バイオマスを増加させること、(b)酵素をリサイクルすること、及び(c)阻害効果を緩和すること、に分類される。したがって、本発明により、可溶性糖の生産において得られる全固形分含量が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明を、以下に関してさらに説明する。
【
図1】
図1は、高基質濃度を達成するためのバイオマスの漸次原料添加のプロセスを示す。プロセスは、一定間隔で原料を添加して、最終固形分充填量15%を達成することを含む。得られる可溶化反応混合物は限外ろ過に供され、非加水分解残渣及び可溶性酵素からなる保持物、並びに、可溶性糖からなる透過物に分離される。本明細書で使用する用語「供給部(feed portion)」は、反応混合物に徐々に添加される基質のバッチを意味する。本明細書で使用される用語、非加水分解残渣は、可溶化後に残る不溶性バイオマスを意味し、これは反応に戻してリサイクルされ、更に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、本発明の説明のために多数の用語を使用する。用語の定義は以下のとおりである。
【0016】
本明細書中で使用される用語「バイオマス」は、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、トウモロコシの皮、おがくず、麦わら、サトウキビバガス、スイッチグラス、稲わら、及び草を含むバイオマスを意味し、好適には、含量70%超の濃縮ホロセルロースとし、また、ホロセルロースが酵素反応を受け入れ易くなるように、前処理されている。
【0017】
本明細書で使用される用語「バイオマス加水分解物」は、反応容器から得られる加水分解バイオマス、酵素、及び非加水分解バイオマスの混合物を含む加水分解生成物を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「可溶性糖」は、水溶性であり、微生物が発酵プロセスにおける炭素基質として使用してバイオ燃料や生化学物質を生産することができ、かつ/又は、任意の食品、製薬及び/又はその他の用途における糖としても使用される、すべての多糖類、単糖類、及びそれらの混合物を意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「ヒール(heel)」は、前処理バイオマスの導入及び糖化工程の開始前に反応器に投入される初期液体又はスラリーを意味する。
【0020】
本発明は、可溶性糖の製造のためのバイオマスの酵素媒介性加水分解のプロセスに関し、ここで、酵素は、加水分解反応のための高バイオマス充填が可能となるようにセルロースを可溶化させるものであり、リサイクルすることができ、かつ、高糖濃度のバイオマス加水分解物を生成することができる。
【0021】
本発明の一つの目的は、バイオマスを高充填するための酵素リサイクルを伴うプロセスを提供することであり、これにより、高糖濃度のバイオマス加水分解物が生成する。
【0022】
本発明の別の目的は、バイオマス材料のバイオマス充填量、粘度、及び酵素触媒セルロース分解の間の相互作用に対する理解をもたらすことを目的として、セルロース変換に対する酵素加水分解時のバイオマス充填量を増加させるため、及び、加水分解中の粘度を低下させるための基質濃度を評価することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、酵素加水分解に更に使用するために、バイオマス加水分解物から酵素を回収及びリサイクルすることを提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、バイオマスの可溶性糖への変換において重要な役割を果たしている基質阻害及び最終生成物阻害を回避するプロセスを提供することである。
【0025】
本発明の実施形態の一つは、バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスを提供し、前記プロセスは、
a.40〜60℃の温度で、反応容器中でpH4〜6の酵素溶液を調製する工程、
b.工程(a)の酵素溶液に、pHを4〜6、温度を40〜60℃に維持しながら、ホロセルロース%が70〜100%、かつ、水分含量が10〜80%(w/w)のバイオマスを1ロット添加して、所定のバイオマス:酵素比を有する初期反応混合物を得る工程であって、初期反応混合物中の所定のバイオマス:酵素比が、1:10
4〜1:10
6(バイオマス Kg/酵素 FPU)の範囲である工程、
c.残りのバイオマスを、複数のロットで、30〜90分間で、工程(b)のように繰り返し添加し、最終反応混合物の固形物充填量を10〜30%とする工程であって、バイオマス:酵素比が1:10
3〜1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)に維持される工程、
d.最終反応混合物をさらに5〜120分反応させてバイオマス加水分解物を得る工程であって、バイオマスの40〜80%の可溶化が達成される工程、
e.工程(d)のバイオマス加水分解物の固液成分を分離し、可溶性糖及び酵素を含むろ液、並びに、非加水分解バイオマス及び吸着酵素の残渣を得る工程、
f.ろ液中の可溶性糖から可溶性酵素を分離する工程、並びに
g.工程(e)の残渣、及び、工程(f)で分離した可溶性酵素を、工程(b)にリサイクルし、可溶性糖の製造のための所定のバイオマス:酵素比を維持する工程
を含む。
【0026】
本発明はまた、反応容器系における可溶性糖の製造のための、前処理バイオマスの酵素媒介性加水分解のプロセスを提供する。酵素糖化のために使用される方法は、3つの主要なグループ、すなわち、(a)反応器中の累積バイオマスを増加させること、(b)酵素をリサイクルすること、及び(c)阻害効果を緩和すること、に分類される。したがって、本発明によって、可溶性糖の製造において得られる全固形分含量が高められる。
【0027】
本発明の最も好ましい態様の一つは、バイオマスの加水分解により可溶性糖を製造するプロセスを提供し、ここで、加水分解プロセスに使用されるバイオマスは、これらに限定されるものではないが、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、トウモロコシの皮、おがくず、麦わら、サトウキビバガス、スイッチグラス、稲わら、及び草からなる群より選択される農産物であり、好適には、セルロース及びヘミセルロース成分が酵素反応を受け入れ易くなるように、前処理される。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態によれば、加水分解プロセスに使用されるバイオマスは、含量70%超の濃縮ホロセルロースとし、また、ホロセルロースが酵素反応を受け入れ易くなるよう、前処理されていてもよい。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、バイオマスは、酸、塩基、有機溶媒、酸化剤又は他の化学物質、及び/又は、スチームと組み合わせて、又はスチーム単独で、又は、破砕、粉砕、又はチョッピング等による機械的破壊により、当業者に知られている任意の方法によって前処理することができる。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、前処理バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスが提供され、前処理バイオマスは、加水分解工程の前に複数の小サイズ化工程に供され、反応器の内容物は十分に混合され、それにより加水分解中のpH及び温度の制御が可能となる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、小サイズ化、より速い酵素加水分解、及び定常的なバイオマスの添加の組み合わせにより、バイオマスの効率的な混合が可能となり、それにより、バイオマス粘度の低い構成が得られる。小サイズ化工程により、湿潤固形バイオマスの迅速な可溶化が可能となる。
【0032】
本発明では、可溶性糖の製造のために、酵素加水分解の間、前処理バイオマスを基質として連続充填する。反応に対して基質が漸次充填され、基質レベルが10〜30%乾燥質量(DM)(w/w)に増加する。最も高い最終グルコース濃度は、2時間後において50〜150gm/リットルの範囲である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、バイオマス充填のプロセスを提供し、ここで、バイオマスは、最初に、1%〜10%の範囲の特定濃度の混合可能なスラリーとして反応容器に充填される。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態によれば、バイオマスの初期充填において、バイオマスは、0.5〜1.5時間の間に、2、3、4、5、6、7、9、10、及び12の供給部(feed portion)で定常的に添加されて、固形分充填量が少なくとも約30%(w/v)増加する。
【0035】
本発明の別の実施形態では、バイオマスは0.5〜1.0時間の間に3〜9の供給部で定常的に添加されて、固形分充填量が少なくとも約15%(w/v)増加する。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態では、バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスが提供され、供給時間は、約0.5〜1.5時間である。
【0037】
本発明のさらに最も好ましい実施形態では、反応混合物に添加されるべき総バイオマスの割り当ては、一回(one portion)、及び/又は、2.5〜50分毎の複数ロット(lots)で行われ、10%〜30%の所定の固形バイオマス充填量、及び、0.5〜1.5時間の所定の総供給時間が達成される。
【0038】
本発明の別の実施形態では、バイオマスからの可溶性糖の製造プロセスが提供され、ここで、酵素溶液へのバイオマスの添加は、200rpm〜400rpmの攪拌能力を有するオーバーヘッドスターラーを用いた攪拌下で定常的に行われ、これにより完全なバイオマス混合が可能となり、その結果、バイオマス粘度が低下し、加水分解プロセスにおいてpH及び温度が均一に制御される。
【0039】
本発明の最も好ましい実施形態では、すべての糖化酵素は、反応開始時に添加される。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、加水分解に使用される糖化酵素は、セルラーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼ及びフェルロイルエステラーゼ並びに追加の補助的な酵素からなる群から選択され、最も好ましくは、セルラーゼである。
【0041】
本発明の一実施形態では、酵素は、約2mg/g〜約95mg/gバイオマスの範囲のタンパク質充填量で反応系に添加される。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態では、加水分解プロセスの最初から反応容器中に存在するバイオマスは混合可能なスラリーの形態であり、撹拌系の作用下で実質的に均一になり、糖化酵素濃度の作用下でより低粘度になる。
【0043】
本発明によれば、バイオマスを完全に混合することによって、より良好なpH及び温度制御性が得られ、その結果、バイオマスの乾燥重量が高く、可溶性糖の収率が高いバイオマス加水分解物がもたらされる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、初期反応混合物のインキュベーションは、40〜60℃の温度、かつpH4〜6で、2.5〜120分間行われる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、スラリー中の部分的に加水分解されたバイオマスの粘度をより低くすることができ、これにより、スラリーにバイオマスをさらに添加することが可能となり、一方、加水分解スラリーに充填される全固形分率の増加を伴いながら、スラリーの十分な混合性及び粘度を維持することができる。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態によれば、pH4〜6及び40℃〜60℃の最適温度でバイオマスの加水分解が行われ、バイオマスの40〜80%の可溶化が達成される。
【0047】
本発明によれば、使用される糖化酵素、及び、処理されるバイオマスの特定のタイプに最適な温度に基づいてバイオマススラリーを加熱することによって、40℃〜60℃の所望の温度を達成することができ、可能な限り最大の糖化反応速度を達成することができる。
【0048】
バイオマス材料全体に渡って実質的に均一なpHが確実に達成できるようにバイオマススラリーを混合しながら、必要に応じて酸又は塩基を添加することによって、スラリーの所望のpHがもたらされる。
【0049】
本発明の更に最も好ましい実施形態では、スラリーのpH制御は、酸及び/又は塩基を用いて調整され、酸は、HC1、H
2SO
4、CH
3COOH、H
3PO
4、及びHNO
3からなる群から選択され、又、塩基は、NaOH、KOH、NH
3、Na
2CO
3及びK
2CO
3からなる群より選択される。
【0050】
本発明の態様の一つは、バイオマスの加水分解プロセスを提供し、加水分解プロセスから得られるバイオマス加水分解物は、可溶性糖溶液、酵素及び非加水分解バイオマスの混合物を含有する。
【0051】
本発明によれば、記載のプロセスは、最大量の酵素がバイオマスに吸着されたままとなり、濃縮糖ストリームを生成するように、バイオマスが加水分解するものである。
【0052】
本発明の他の態様では、加水分解生成物からの酵素及び/又は非加水分解バイオマスの分離又は濾過は、マイクロ濾過(MF)を用いて実施され、当該膜の分画分子量(MWCO)は100kDa〜500kDaである。
【0053】
本発明の他の実施形態では、可溶性糖溶液の分離によるセルラーゼ酵素の回収及びリサイクル、並びに、限外濾過後に得られる保持物からのセルラーゼ酵素の回収及びリサイクルは、1kDa〜20kDaの分画分子量(MWCO)を有する膜を用いて行われる。
【0054】
加水分解されずに残るバイオマススラリー、及びそれに吸着した酵素のかなりの量がリサイクルされる。可溶性糖と一緒に加水分解物中に含まれる酵素がさらに濾過によって回収され、リサイクルされる。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、バイオマスは、1〜4時間で可溶性糖に変換される。
【0056】
可溶性糖を含む限外濾過後に得られた透過液は、発酵工程に移すことができる。
【0057】
本発明の最も好ましい態様の一つでは、本発明のプロセスにおいて製造される加水分解物中の可溶性糖の濃度は少なくとも75g/Lであり、典型的には高糖濃度であるとみなされる。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明のプロセスによって製造される可溶性糖は、エタノール等の燃料及び他の化学物質等の有価な製品を製造するための発酵プロセスに用いることができる。
【0059】
本発明の利点
1)本発明は、従来のバッチプロセスに比べて、容積の減少による資本コストの低減、生成物濃度が高いことによる操業コストの低減及びダウンストリーム処理コストの低減等のいくつかの経済的な利点を有している。
2)提供されるプロセスは、従来知られているプロセスよりも、より効果的であり、より迅速な粘度低下、及びより効率的な可溶性糖の生産をもたらす。
3)加水分解プロセスのための酵素の使用は高価であるが、本発明は、使用された酵素の回収及びリサイクルを提供し、このため、バイオマスからの可溶性糖の製造のプロセスが、より費用効果が高く、かつ継続的なプロセスとなる。
4)本発明は、加水分解前にバイオマス上に酵素を吸着させるプロセスを提供し、これにより反応速度及び酵素の回収率の向上がもたらされる。
以下の実施例は、本発明の例示のために与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0060】
例1
様々なセルロース含量でのバイオマスの糖化
麦わらの酸/アルカリ処理によって得られる様々なホロセルロース含量(70〜95%)の前処理バイオマスを、50℃及びpH5.0に維持した、総乾燥固形分充填量15.0%の酵素溶液中で可溶化した。乾燥基準で37.5gのバイオマスからなる初期ヒールを、セルラーゼB(登録商標)(Advanced Enzyme Technology Ltd.、Thane、インド)と750gmの酸性化水からなる酵素溶液と、27.75mg/gバイオマスのタンパク質充填量で混合した。反応マスを、温度を50℃に、pHを5.0に維持して、300rpmで攪拌した。残りのバイオマスを0.5〜1.0時間で徐々に添加し、固形分充填量を15%に増加させた。可溶化されたホロセルロースの割合は、反応に添加した総ホロセルロースの乾燥重量の減少として測定され、下記のように可溶化%として表した。
【数1】
【表1】
【0061】
例2
様々なバイオマス充填量でのバイオマスの糖化
麦わらの酸/アルカリ処理から得られたホロセルロース含量(70〜95%)の前処理バイオマスを、15.0%、20.0%及び30.0%の異なる総乾燥固形分充填量の50℃及びpH5.0に維持した酵素溶液で可溶化した。乾燥基準で37.5gのバイオマスからなる初期ヒールを、セルラーゼB(登録商標)(Advanced Enzyme Technology Ltd.、Thane、インド)と750gmの酸性化水からなる酵素溶液と、27.75mg/gバイオマスのタンパク質充填量で混合した。反応マスを、温度を50℃に、pHを5.0に維持して、300rpmで攪拌した。残りのバイオマスを0.5〜1.0時間で徐々に添加し、固形分充填量を15.0%、20.0%及び30.0%に増加させた。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。
【表2】
【0062】
例3
前処理バイオマスの糖化
麦わらの酸/アルカリ処理により得られる前処理バイオマスを、50℃、pH5.0に維持した、総乾燥固形分充填量15%の酵素溶液で可溶化した。乾燥基準で37.5gのバイオマスからなる初期ヒールを、セルラーゼB(登録商標)(Advanced Enzyme Technology Ltd.、Thane、インド)と750gmの酸性化水からなる酵素溶液と、27.75mg/gバイオマスのタンパク質充填量で混合した。反応マスを、温度を50℃に、pHを5.0に維持して、300rpmで攪拌した。残りのバイオマスを0.5〜1.0時間で徐々に添加し、固形分充填量を15%に増加させた。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。
【表3】
【0063】
例4
バイオマス可溶化に対する供給部(〜85%ホロセルロース)
100gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(〜85%ホロセルロース)を、50℃及びpH5.0に維持した2Lの酵素溶液に添加し、基質:酵素比1:10
6(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。200gmの前処理バイオマスを、3、5、7、及び9供給部で、次の1時間をかけて徐々に添加し、基質:酵素比1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。上記条件で反応を1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、糖及び酵素を分離するために膜ろ過に供する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表4】
【0064】
例5
バイオマス可溶化に対する供給部(〜92%セルロース)
100gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(〜92%セルロース)を、50℃及びpH5.0に維持した2Lの酵素溶液に添加し、基質:酵素比1:10
6(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。200gmの前処理バイオマスを、3、5、7、及び9供給部で、次の1時間をかけて徐々に添加し、基質:酵素比1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。上記条件で反応を1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過に供して糖及び酵素を分離する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表5】
【0065】
例6
バイオマス可溶化のための粒子サイズ
稲わらを小サイズ化(size reduced)し、ホロセルロースのアルカリ前処理に供した(>80%セルロース)。上記の前処理サンプルを、50℃及びpH5.0に維持した酵素溶液に添加し、初期濃度5%とした。前処理バイオマスを、次の1時間かけて徐々に添加し、バイオマス濃度を15%に高めた。上記条件で反応をさらに1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過に供して糖及び酵素を分離する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表6】
【0066】
例7
バッチ及びフェドバッチセルロース加水分解の比較
300gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(>80%セルロース)を、50℃及びpH5.0に維持した2Lの酵素溶液に、a)単回添加−バッチ、及び、b)1時間かけて徐々に添加−フェドバッチの2つの異なる反応モードで添加した。上記条件で反応を1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過に供して、糖及び酵素を分離する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表7】
【0067】
例8
バイオマス加水分解に対する酵素充填量の影響
100gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(>80%セルロース)を、異なるタンパク質充填量の2Lの酵素溶液に添加し、基質:酵素比1:10
4〜1:10
7(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。50℃及びpH5.0で反応を行った。200gmの前処理バイオマスを次の1時間をかけて徐々に添加し、バイオマス濃度を15%に高め、上記条件で反応をさらに1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過に供して糖及び酵素を分離する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表8】
【0068】
例9
酵素リサイクルを用いたホロセルロース(〜85%ホロセルロース)の連続加水分解
100gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(〜85%セルロース)を、50℃及びpH5.0に維持した2Lの酵素溶液に添加し、基質:酵素比1:10
6(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。200gmの前処理バイオマスを次の1時間をかけて徐々に添加し、基質:酵素比1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。上記条件で反応を1時間進行させる。全反応混合物を遠心分離して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過に供して糖及び酵素を分離する。固体残渣と可溶性酵素をリサイクルして戻し、150gの新しいバイオマスを次の1時間かけて徐々に添加し、基質:酵素比1:10
5(バイオマス Kg/酵素 FPU)とした。全反応混合物を再度遠心分離及び膜ろ過に供し固体残渣及び酵素溶液を得、これを連続する3サイクルの間、再度戻してリサイクルする。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。
【表9】
【0069】
例10
反応混合物の基質:酵素比
300gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(>80%ホロセルロース)を、2Lの酵素溶液に、異なる基質:酵素比(1:10
2〜1:10
7)で、50℃及びpH5.0に維持して、5回の漸次添加により1.5時間で添加した。上記の条件で反応を1時間攪拌する。全反応混合物をナイロンメッシュでろ過して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過(マイクロ+限外)に供して可溶性糖及び酵素を分離する。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、達成できる可溶化%を示す。
【表10】
【0070】
例11
ホロセルロース(>95%ホロセルロース)の可溶化のための酵素の再利用
300gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(>95%ホロセルロース)を、50℃及びpH5.0に維持した2Lの酵素溶液に、5回の漸次添加により1.5時間で添加した。上記条件で反応を1時間攪拌する。全反応混合物をナイロンメッシュでろ過し、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜ろ過(マイクロ+限外)に供して可溶化糖及び酵素を分離する。膜ろ過後に回収した酵素溶液を、ろ過後に得られた固体残渣と混合する。ここで、新しい前処理バイオマスを混合物に添加して、固形分充填量を15%とする。上記の作業スキームを5サイクル繰り返す。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、各サイクルにおいて達成できる可溶化%を示す。
【表11】
【0071】
例12
バイオマス可溶化のための可溶性酵素のリサイクル
450gm(乾燥質量)の前処理バイオマス(>85%ホロセルロース)を、50℃、pH5.0に維持した酵素溶液2Lに、5回の漸次添加により1.5時間で添加する。反応を上記条件で1時間撹拌する。全反応混合物をナイロンメッシュで濾過して、可溶化マスから固体残渣を分離し、さらに、膜濾過(マイクロ+限外)に供して可溶性糖及び酵素を分離する。膜濾過後に回収された酵素溶液を新鮮な酸性化緩衝液で2Lに希釈する。ここで、酵素溶液に新しい前処理バイオマスを添加し、固形分充填量を15%とする。上記の操作スキームを5回繰り返す。可溶化率を上述の例1において述べたように測定した。下表に、各サイクルにおいて達成できる可溶化%を示す。
【表12】
【0072】
例13
異なる酵素濃度による、セルロースの可溶化(mg/gバイオマス)
麦わらのアルカリ処理から得られたセルロースを、50℃及びpH5.0で、乾燥固形分充填量15.0%で、反応に使用した。初期ヒールは、水1000g(pH5)及ビセルロース37.5gからなるものとした。反応マスを300rpmで撹拌した。温度を50℃に、pHを5.0に維持した。反応系に添加した酵素は、4.625mg/g、11.56mg/g、18.5mg/g、27.75mg/g、及び46.25mg/gバイオマスのタンパク質充填量のセルラーゼB(登録商標)(Advanced Enzyme Technology Ltd., Thane、インド)である。液化後、残りのバイオマスを5供給部で1.0〜1.5時間で徐々に添加し、固形分充填量を15%に増加させた。反応マス中の糖含量を、糖測定のためのプロトコル(Ghoseら、Measurement of cellulase activity. Pure and Applied Chemistry、59(2)257−268、1988)によって測定した。放出されたグルコースの量は酵素充填量に伴って増加し、表13に示される。
【表13】
【国際調査報告】