(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-506151(P2017-506151A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率最適化方法およびそれを実施するための装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20170210BHJP
C25C 7/06 20060101ALI20170210BHJP
C25C 7/00 20060101ALI20170210BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
C02F1/46 101B
C25C7/06 301Z
C25C7/00 301
G21F9/06 561
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-548243(P2016-548243)
(86)(22)【出願日】2014年1月22日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月20日
(86)【国際出願番号】FR2014000016
(87)【国際公開番号】WO2015110713
(87)【国際公開日】20150730
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516219417
【氏名又は名称】ジャン−ミシェル・フジェリュー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ブニェ
【テーマコード(参考)】
4D061
4K058
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB18
4D061EA02
4D061EB19
4D061EB20
4D061EB34
4D061EB39
4D061FA13
4D061GC14
4K058AA22
4K058AA28
4K058BA01
4K058BB02
4K058DD05
4K058DD11
4K058EA05
4K058FB03
4K058FC22
(57)【要約】
本発明は、高塩濃度水溶液から重金属を抽出する既存の方法および装置に適用される構成および使用の技術的条件に関し、前記方法の保護以来の産業技術的、科学技術的、生態学的な発展に前記方法を適合させ、かつ結果を実質的に最適化することを唯一の目的とする。この目的のため、本特許出願の発明は、初期特許の装置に新規の3つの作用を管理できる電子制御手段(CM)を追加する。装置の特定の要素の品質、機能、目的および操作に対する変更、ならびに廃液の品質を最適化することを目的とした電気めっき工程終了時におけるフィルタの追加についても開示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法であって、前記方法の実施のために、
a)高塩濃度水溶液中での電気分解による重金属の抽出に関連する工程の管理、制御、および調整と、
b)電極(6)〜(11)、(22)および高感度プローブ(SP)などの活性元素の新しい技術的定義と、
c)新しい領域の工程と、
d)処理済みの高塩濃度水溶液のろ過の追加手段(EFF)とに関連することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記工程の管理、制御、および調整を行う役割を持つ電子制御手段(CM)は、連続的に稼働時間を制限するための電解装置の電力供給の中断(PC)と、処理対象の溶液(3)の化学組成および使用した電極(6)〜(11)、(22)の構造によって決定される周期性とを制御することを特徴とする、請求項1に記載の高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法。
【請求項3】
前記工程の管理、制御、および調整を行う役割を持つ前記電子制御手段(CM)は、前記装置の前記電極(6)〜(11)の供給とは独立に、連続的な稼働時間のためのグランド電極(22)の分離と、前記方法に関連した様々な要因によって決定される周期性とを制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法。
【請求項4】
前記工程の管理、制御、および調整を行う役割を持つ前記電子制御手段(CM)は、処理対象の溶液(3)中の最適な一定の電圧の制御および調整を、電気めっき工程全体にわたり、前記処理対象の溶液(3)中において対の電極(6)(7)、(8)(9)および(10)(11)の間に導入された前記高感度プローブ(SP)からの情報に基づいて制御することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法。
【請求項5】
前記電極(6)(9)(10)(7)(8)(11)は、固定された汚染元素が放射性元素の場合は閉じ込められ、かつ/または固定された汚染元素およびその汚染の影響のレベルに適合した手段により除去されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法。
【請求項6】
前記工程は連続的なサイクルを交互に実施ことによりまたは連続的に行うことができ、後者の場合、前記処理対象の溶液(3)の供給は、例えばダクト(24)により電解槽(2)の底部を通して低速で行われ、かつ前記処理対象の溶液(3)の化学組成および前記装置の前記電極(6)〜(11)の構造によって決定され、処理済み溶液の除去は、この目的のために設けられたダクト(28)によって前記電気めっき槽(2)の上部で行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化するための方法。
【請求項7】
請求項1から6に記載の方法を実施するための装置であって、
a)高塩濃度水溶液中での電気分解による重金属の抽出に関連する工程の管理、制御、および調整のための電子制御手段(CM)と、
b)陽極(6)(9)(10)および陰極(7)(8)(11)で構成される浸漬された電極(6)〜(11)と、
b)処理対象の溶液(3)に導入し、かつ前記電極(6)〜(11)のイオン脱脂の速度を増加させるためのグランド電極(22)と、
c)前記処理対象の溶液(3)において対の電極(6)(7)、(8)(9)および(10)(11)の間に導入するための高感度プローブ(SP)と、
d)差動電気めっき工程の後に前記溶液(3)中にまだ存在する弱い起電力で残留元素を固定するための少なくとも1つのエレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)とを備えることを特徴とする、請求項1から6に記載の方法を実施するための装置。
【請求項8】
前記浸漬された陽極電極(6)(9)(10)は、前記処理対象の溶液(3)の化学組成および放射化学的組成によって、前記浸漬された陰極電極(7)(8)(11)とは異なる材料および構造でできており、好ましくは板状で、前記装置の操作および性能に適合する組成、材料、形態、および配置で構成されていることを特徴とする、前記方法を実施するための請求項7に記載の装置。
【請求項9】
電子歪みを防止するために絶縁チューブ内部において前記処理対象の溶液(3)に導入され、かつ発電機(4)のグランド(G)に接続されたグランド電極(22)は、前記陽極(6)(9)(10)および前記陰極(7)(8)(11)などの他の電極とは異なる材料および構造でできていることを特徴とする、前記方法を実施するための請求項7および8に記載の装置。
【請求項10】
前記処理対象の溶液(3)において前記対の電極(6)(7)、(8)(9)および(10)(11)の間に導入された前記高感度プローブ(SP)は、化学的に中性な構造、例えばガラス製であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の前記方法を実施するための装置。
【請求項11】
前記差動電気めっき工程の後に前記溶液(3)中にまだ存在する弱い起電力で残留元素を固定するための独立かつ前記電解槽(2)と関連する前記エレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)は、主に中性のろ過材料(FM)を含む円筒状の容器(C)で構成され、2つの電極(EC)が挿入され、例えば陽極(EC1)である前記2つの電極(EC)の一方は、好ましくは前記容器(C)の内周面に押し込まれ、例えば陰極(EC2)である他方は前記容器(C)の下面の内側表面の中心に位置する軸方向支持チューブ(ST)に押し込まれ、前記ろ過材料(FM)を通過する電流は、前記ろ過材料(FM)の導電率は前記ろ過材料を含む水溶液によって多少変化することがわかっているので、電解処理容器から出てくる前記溶液の化学組成によって調整されかつ全体の抵抗率に適合され、前記エレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)を通過することによりろ過された前記溶液は、自然環境への排出や、例えば別の製造方法における再利用を可能にする最適な品質を有することを特徴とする、請求項7に記載の前記方法を実施するための装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水溶液に溶解した重金属は電気分解によって分離できることが知られており、その方法として一方が「陽極」、他方が「陰極」として指定された2つの電極を前記水溶液に浸漬させ、前記水溶液中で正または負に帯電した元素の循環とそれにより分離された重金属の前記電極への濃縮とを引き起こすために、各電極を浸漬後に電流発生器の端子の一方または他方に接続する方法がある。
【0002】
この公知の方法では水溶液の塩濃度が低く、分離する金属の濃度が高い時に最良の結果が得られることが最も多い。この関係が逆転し、処理対象の溶液の塩濃度が高く、分離する金属の濃度が低い時、この方法の性能は大幅に低く、実用上は適用不能である。
【0003】
本発明の発明者は、これらの知見を認識しており、1996年11月8日に第2 733 748号として公開された、仏国特許FR 95 05227(以下「初期特許」という。)の1995年5月2日付の出願により、この問題に対する第1の解決策を提供した。
【0004】
この1995年出願の初期仏国特許は方法およびそれを実施するための装置に関し、その方法および装置は、イオン化された元素、放射性廃液の懸濁液中の元素、または電極上にない元素を「差動電気めっき(differential electroplating)」と呼ばれる電解法により捕捉するものである。
【0005】
初期特許では主に、槽に入っている高塩濃度水溶液に、他の電極(陽極および陰極)と同じ材料、および同じ構造で、電流発生器のグランドに独立に接続された「グランド電極」と呼ばれる別の電極を追加することを特徴とする電気分解の方法およびそれを実施するための装置を特許請求している。
【0006】
通常の電解装置に追加されたこのグランド電極は、水溶液中の高い塩濃度の影響を制限する、または打ち消す効果があり、前記溶液中の電流の循環を阻害し、それによりこの方法の有効性を変化させる。
【0007】
電気的接続の機能のみを持ち、装置の陽極および陰極とは異なり重金属を受け取らない前記グランド電極を浸漬することにより、従来の電気分解の場合、すなわち低塩濃度の溶液の場合に得られた結果と同じ結果を同様のサイクル時間で得ることができる。
【0008】
また前記特許では、装置の槽を空にしたり充填したりを同時に行う、例えばポンプのような作動要素により、閉回路において溶液を断続的に混合すること特徴とする電気分解の方法およびそれを実施するための装置も特許請求している。この処理対象の溶液の混合は、電流が通過する影響下で溶液中に存在する様々な種が重金属の固定を妨げるように組織されるのを防ぐために行われる。これにより電気分解の工程中の溶液の均一性を維持することができる。
【0009】
また前記特許では、一方の電解槽と他方の例えば粘土粒子を含むフィルタとの間で、電気分解の工程中に処理対象の溶液を断続的に循環させるステップも特許請求している。好ましくはポンプによって生じる電解槽およびフィルタ間の溶液の循環により、電気分解では分離するのが困難な特定の核分裂生成物をろ過によってせき止めるように、溶液を濾すことができる。そのように処理およびろ過された溶液は、排出前に最大限の重金属を抽出するため、電気分解の終了時に槽に戻り、より精密なろ過を行う最終仕上げフィルタにかけられる。
【0010】
最後に本特許では、様々な電極や接続部等を構成する、例えば形状、配置、および材料などの装置の構成要素についても特許請求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許FR 95 05227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本方法の実施、科学技術の発展、および生態学的観点からの要件が誘因となり、本発明者は前述の初期特許による方法を、これらの変化に適合させ、また適合させることで浄化後に最適な品質の廃液が得られ、例えば原子力、医療、冶金などの分野の有効な現行基準に準拠することができるように変更した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明者は本特許において、初期特許の装置に新規の3つの作用を管理できる電子制御手段を追加する。本発明の装置の特定の要素の品質、機能、目的および操作に対する変更、ならびに残存するイオンの移動によって生じる弱い起電力で構成要素を固定することにより廃液の品質を最適化することを目的とした、電気めっき工程終了時におけるフィルタの追加についても開示している。
【0014】
初期特許の装置に追加された電子制御手段の第1の機能は、処理対象の溶液の化学組成により決定する周期性に従った、装置の電力に対する連続遮断の適用である。
【0015】
電力供給の一時的な停止により、溶液および電極に含まれるイオンの交換によって引き起こされる、溶液および電極中の元素間の相互作用を生じるため、この作用は非常に重要である。したがって、電力の遮断前に堆積した材料を損失することなく電極の全容量を元に戻す電子平衡に戻る結果になる。
【0016】
初期特許の装置に追加された電子制御手段の第2の機能は、電極のイオンスケール除去速度を増加させるため、初期特許第2 733 748号の方法において提供されている内部グランド電極を分離することである。
【0017】
このグランド電極を分離する作用は、自由電子が各電極の経路に戻り、イオンが堆積するべき場所に再度堆積するようイオン系を無秩序化することを目的としている。
【0018】
初期特許の装置に追加された電子制御手段の第3の機能は、差動電気めっきの工程中全体にわたり、処理対象の溶液中において装置の電極間に配置されたセンサを用いて、処理対象の溶液中の一定の最適な電圧を維持および調整することである。
【0019】
全体の抵抗率は電極に堆積した質量によって連続的に変化することが知られている。したがって、電極間の一定の電圧を制御および維持することは本方法において必須要素である。
【0020】
追加の電子制御手段により初期特許の装置の工程に適用されたこれらの特定の作用は、科学技術の発展や新しい技術的および生態学的要件により良く適合するように、重金属の抽出方法の有効性を強化する。
【0021】
この電子制御手段はそれ自身が全ての制御、調節、調整、ならびに工程の適切な展開に必要な情報の伝達および記録を可能にする。
【0022】
初期特許の装置の性能の改善に対する懸念がまだあるため、本特許の装置では、装置のグランド電極の材料および構造を、電極すなわち陽極および陰極の材料や構造とは異なるものとしている。
【0023】
また本特許の装置では電極の材料および構造も異なるものとしている。このように陽極および陰極は、処理対象の溶液の化学組成および放射化学的組成(放射性廃液)によって決定される全く異なる材料で製造することができる。
【0024】
初期特許の装置にその性能および収率を改善するために加えられた特徴として、本特許の装置では、差動電気分解(differential electrolysis)の工程中全体にわたり処理中の溶液の電圧を制御および調整することを可能にするため、電極間に配置されたセンサが、例えば化学測定に使用される基準ガラス電極などの化学的に中性な構造のものであるとしている。
【0025】
初期特許の装置の特徴、構成、および操作を補足して変更する本特許の装置では、電気分解の工程中に捕捉された汚染元素で帯電した電極を、工程終了時に汚染の影響の種類や程度により燃やすか閉じ込め(放射性元素)、処理済み廃液は自然環境に排出するか品質を考慮して産業的に再利用することとしている。
【0026】
また、差動電気めっき槽に挿入した電極は、初期特許においては円筒状の同軸形状であったが、本発明の特許においては異なる形状、具体的には板状のものであるとしている。そのような場合においては初期の原理に変化はなく、電極は電極板の中性の支持部の対向面に適用され、差動グランド(differential ground)はあらゆる電子歪み(electronic distortion)を防止するために絶縁チューブに設置される。
【0027】
本発明の特許では装置が連続的な交互のサイクルまたは連続工程での使用が可能であるとしている。後者の場合、処理対象の溶液の供給は槽の底部付近において低速で行われ、かつ処理対象の溶液の化学組成および構造によって決定される。また処理済み溶液の除去は、この目的のために設けられたダクトによって槽の上部で行われる。
【0028】
工程の終了時に可能な限り浄化された廃液を得ることに懸念があるため、本特許では差動電気めっきの方法の終了時に溶液中にまだ存在する弱い起電力で残留元素を固定することを主に意図したエレクトロフィルトレーションフィルタを、装置の端部において追加または交換する。
【0029】
実際に、起電力が非常に弱いかゼロである廃液中に含まれるイオン化された元素が、捕捉されずにまたは微小な割合でのみ捕捉され、一次フィルタおよび電解処理浴を通過するのが観察された。これらの元素はその後二次フィルタ上に容易に固定される。
【0030】
この状態は電気分解を終えた廃液が、ろ過材料に固定されるコロイドの形成を引き起こすイオン安定状態にまだ達していないという事実によるものと思われる。
【0031】
本発明のエレクトロフィルトレーションフィルタは、弱い起電力で前記構成要素をより容易に固定するためにこの特徴を利用することを目的としており、この弱い起電力はまだ存在している一連の弱いイオンの移動によって生じ、前記エレクトロフィルトレーションフィルタの構成によって増幅される。
【0032】
前記電気めっきフィルタは主に、例えば電気めっきフィルタの操作および性能に適合するプラスチック材料などでできた円筒状の容器からなる。前記電気めっきフィルタは、好ましくは電気めっきフィルタの操作および最適性能に適合する寸法(高さ/直径)であり、中性のろ過材料に挿入された2つの電極を有し、この2つの電極の一方は例えば陽極で、好ましくは容器の内周面に押し込まれ、他方は例えば陰極で、容器の下面の内側表面の中心に位置する軸方向支持チューブに押し込まれている。
【0033】
ろ過材料を通過する電流は、ろ過材料の導電率はそのろ過材料を含む水溶液によって多少変化することがわかっているので、電解処理容器から出てくる溶液の化学組成によって調節され、全体の抵抗率に適合される。
【0034】
したがって、本発明のエレクトロフィルトレーションフィルタを通過することによりろ過された溶液は、自然環境への排出や、例えば別の製造方法における再利用を可能にする最適な品質を有する。
【0035】
原子力用途においては放射性元素が実際に廃液から抽出され、その廃液はその後リスクなく自然環境に排出することができるが、放射性元素は公知の方法により閉じ込められている。
【0036】
下記は非限定的な例として添付した図面に関する説明であり、これにより本発明がどのように実用化できるかが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】初期特許の装置の主要部の中央断面図であり、例えば円筒状で、電極と電気エネルギーおよび処理対象の溶液の供給手段とを備えた電解槽で構成されている。
【
図2】本特許で特許請求する技術要素により変更した初期特許の装置の主要部の断面図である。
【
図3】本発明のエレクトロフィルトレーションフィルタの中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は同じ発明者により1995年5月に出願され、1996年11月8日に第2 733 748号として公開された特許に続くもので、電気分解により高塩濃度の水溶液から重金属を抽出する方法に関する。本特許は以下「初期特許」という名称にて表記する。
【0039】
本特許出願の理解を深めるために、以下に前記初期特許の主請求項の決定要素について本特許の
図1を参照して再度述べる。
【0040】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する方法および装置では、高塩濃度の水溶液(3)を含む軸(14)を有し、かつ少なくとも1対の電極が挿入されている、円筒形状の電解槽(2)を特許請求している。本特許の
図1において、例えば陽極(6)および陰極(7)、陽極(9)および陰極(8)、ならびに陽極(10)および陰極(11)の3対の電極が示されており、該電極は発電機(4)の各端子および好ましくは前記発電機(4)のグランド(G)に接続されたグランド電極(22)において給電される。グランド電極(22)は電極(11)とのあらゆる電解相互作用を防止するため、ポリアミド製の仕切り(23)によって電極(11)から分離されている。
【0041】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する方法および装置では、電気分解のサイクル中に閉回路において行う混合のステップを特許請求しており、該混合のステップは、溶液(3)を移動させるポンプ(不図示)により、槽の底部および底部(5)付近の溶液を吸い込む吸引流路(24)を介して溶液(3)の槽(2)を空にすることで行われ、流路(28)を介して槽(2)の外のポンプの作用の下で同じ槽(2)および電極間に同時に溶液を再導入するためのステップである(
図1参照)。
【0042】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する方法および装置では、処理済み溶液(3)の断続によるろ過を特許請求しており、該ろ過は電気分解の工程中に例えば粘土粒子などのろ過材料を含む槽(2)に付属する独立なフィルタ(32)(不図示)によって行われる。
【0043】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する装置では、例えば陽極(6)(9)(10)、陰極(7)(8)(11)、およびグランド電極(22)などの電極に共通の材料および共通の構造を特許請求している。
【0044】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する装置では、電極(6)(9)(10)(7)(8)(11)の形状および位置の特徴、すなわち各電極が同軸状でほぼ円筒の形状を有し、装置が少なくとも1つの中性の支持部を備えることを特許請求しており、
図1においては不活性材料でできた円筒形状の中性の支持部(16)(17)として示されており、内面と外面がそれぞれ電極で覆われ、電極は別の対の電極に付属する同じ支持部の表面を覆っている。
【0045】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する装置では、例えば陽極(6)および陰極(7)、陽極(9)および陰極(8)、ならびに陽極(10)および陰極(11)の少なくとも3対の電極および、少なくとも2つの不活性な支持部(16)および(17)の存在を特許請求しており、該電極は発電機(4)の同じ端子に接続された同じ支持部の表面を覆っている。
【0046】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する装置では、各対の少なくとも1つの電極が、該電極の一方の端部から他方の端部に延在する軸方向の連続開口部(不図示)を有するという特徴を特許請求しており、該電極は例えば電極(8)および(9)ならびに/もしくは電極(7)および(9)である。
【0047】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する前記装置では、処理槽(2)を空にする手段(24)および閉回路中で連通する前記槽(2)を充填する手段(28)の存在を特許請求している。
【0048】
初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する装置では、少なくとも2つのフィルタ(不図示)、すなわち槽(2)に付属し、粘土粒子を含む産出フィルタ(production filter)(32a)および仕上げフィルタ(32b)の存在を特許請求している。
【0049】
本発明は、本発明者により1995年に出願され、1996年11月8日に第2 733 748号として公開された初期特許の対象である高塩濃度水溶液から重金属を抽出する方法に追加された構成および使用の技術的条件に関し、前記特許の出願以来の産業技術的、科学技術的、生態学的な発展に前記方法を適合させ、かつ前記方法の結果を実質的に最適化することを唯一の目的としている。
【0050】
この目的のため、本発明者は本特許において、初期特許の装置に新規の3つの作用を管理できる電子制御手段(CM)を追加する。本発明の装置の特定の要素の品質、機能、目的および操作に対する変更、ならびに残存するイオンの移動によって生じる弱い起電力で構成要素を固定することにより廃液の品質を最適化することを目的とした、電気めっき工程終了時における特定の電子フィルタの追加についても開示している(
図2参照)。
【0051】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、処理対象の溶液(3)の化学組成および浸漬した電極(6)〜(11)の構造によって決定される継続時間および周期性に従い、装置の電力の連続遮断(PC)を可能にする電子制御手段(CM)を有する。
【0052】
電力供給の一時的な停止により、溶液(3)および電極(6)〜(11)に含まれるイオンの交換によって引き起こされる、溶液(3)および前記電極中の元素間の相互作用を生じるため、この作用は非常に重要である。したがって、電力の遮断前に堆積した材料を損失することなく電極(6)〜(11)の全容量を元に戻す電子平衡に戻る結果になる。
【0053】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、電極(6)〜(11)のイオンスケール除去速度を増加させるために、初期特許第2 733 748号の方法において設けられているグランド電極(22)の分離(DC)を可能にする電子制御手段(CM)を有する。
【0054】
このグランド電極(22)を分離する作用は、自由電子が各電極の経路に戻り、イオンが堆積するべき場所に再度堆積するようイオン系を無秩序化することを目的としている。
【0055】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、装置の対の電極(6)(7)、(8)(9)、(10)(11)の間に導入された高感度プローブ(SP)による、処理済み溶液(3)中における処理時間全体にわたる電圧の恒久的制御および最適調整を可能にする電子制御手段(CM)を有する。これらの手段は装置の適切な管理を可能にするための制御、調整および情報の通信に関する全ての機能も可能にする(
図2参照)。
【0056】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、他の陽極(6)(9)(10)および陰極(7)(8)(11)の電極とは異なる材料および/または構造のグランド電極(22)を含む。グランド電極(22)で構成されたグランドは、系において唯一のもののままである必要があるため、例えば槽、フィルタ、チューブ、パイプ、ポンプなどの液体(3)と接する装置の他の全ての構成要素は決して導電体であってはならず、それゆえ適切な絶縁材料から製造される(
図2参照)。
【0057】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、処理対象の液体(3)の化学組成および放射化学的組成(放射性廃液)によって異なる材料および構造の電極、陽極(6)(9)(10)および陰極(7)(8)(11)を含む(
図2参照)。
【0058】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、工程の継続時間全体にわたり、処理対象の溶液(3)中の電圧の制御および調整を可能にするために、化学的に中性な構造、例えばガラス製の高感度プローブ(SP)を含む(
図2参照)。
【0059】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、サイクル終了時に、固定された汚染元素に応じて、汚染元素および汚染の影響のレベルに適合した手段により、閉じ込めた電極(6)〜(11)(放射性元素)の回収および/または除去を行う(
図2参照)。
【0060】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、差動電気めっき槽(2)に挿入された電極(6)〜(11)は、初期特許においては円筒形で同軸状に設けられていたが、異なる形状、具体的には板状のものであるとしている。そのような場合においては初期の原理に変化はなく、電極は電極板の中性の支持部の対向面に適用され、差動グランド(22)はあらゆる電子歪みを防止するために絶縁チューブに設置される。
【0061】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、該装置が連続的な交流サイクルまたは連続工程での使用が可能であるとしている。後者の場合、処理対象の溶液の供給は、例えばダクト(24)により槽(2)の底部(5)を通して低速で行われ、かつ処理対象の溶液(3)の化学組成および構造によって決定される。また処理済み溶液(3)の除去は、この目的のために設けられたダクト(28)によって槽の上部で行われる(
図2参照)。
【0062】
本発明の好適な実施形態によれば、高塩濃度水溶液中の重金属の電解抽出の収率を最適化する装置は、より好ましくは処理中の溶液(3)の循環のための回路内で、更により好ましくは回路の端部で、差動電気めっき工程の後に溶液(3)中にまだ存在する弱い起電力で残留元素を固定することを主に意図した少なくとも1つのエレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)を備える(
図3参照)。
【0063】
エレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)は主に、例えば該フィルタの操作および性能に適合するプラスチック材料などでできた円筒状の容器(C)からなる。エレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)は、好ましくは該フィルタの操作および最適性能に適合する寸法(高さ/直径)のものであり、中性のろ過材料(FM)に挿入された2つの電極(EC1)および(EC2)を有し、この2つの電極の一方は例えば陽極(EC1)で、好ましくは容器(C)の内周面に押し込まれ、他方は例えば陰極(EC2)で、容器の下面の内側表面の中心に位置する軸方向支持チューブ(ST)に押し込まれており、それ自体は格子(GR)と近距離に設けられている。ろ過材料(FM)を通過する電流は、ろ過材料(FM)の導電率はそのろ過材料を含む水溶液によって多少変化することがわかっているので、電解処理容器(2)から出てくる溶液(3)の化学組成によって調整され、全体の抵抗率に適合される(
図3参照)。
【0064】
したがって、本発明のエレクトロフィルトレーションフィルタ(EFF)を通過することによりろ過された溶液(3)は、自然環境への排出や、例えば別の製造方法における再利用を可能にする最適な品質を有する。
【0065】
原子力用途においては放射性元素が実際に廃液(3)から抽出され、その廃液はその後リスクなく自然環境に排出することができるが、放射性元素は公知の方法により閉じ込められている。
【符号の説明】
【0066】
2 槽、電解槽、電解処理容器
3 溶液、水溶液、液体、廃液
4 発電機
5 底部
6、9、10 陽極
7、8、11 陰極
14 軸
16、17 支持部
22 グランド電極、差動グランド
23 仕切り
24 吸引流路、ダクト
28 流路、ダクト
32 フィルタ
32a 産出フィルタ
32b 仕上げフィルタ
C 容器
CM 電子制御手段
DC 分離
EC1、EC2 電極
EFF エレクトロフィルトレーションフィルタ
FM ろ過材料
G グランド
GR 格子
PC 電力の連続遮断
SP 高感度プローブ
ST 支持チューブ
【国際調査報告】