(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-506160(P2017-506160A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】ローラコンパクタ装置のプレスローラを外部滑沢する方法及び装置、並びに該方法の使用
(51)【国際特許分類】
B30B 11/00 20060101AFI20170210BHJP
B30B 11/18 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
B30B11/00 J
B30B11/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-568091(P2016-568091)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月5日
(86)【国際出願番号】CH2015000006
(87)【国際公開番号】WO2015117252
(87)【国際公開日】20150813
(31)【優先権主張番号】147/14
(32)【優先日】2014年2月5日
(33)【優先権主張国】CH
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516237592
【氏名又は名称】パウル ゲアタイス
【氏名又は名称原語表記】Paul Gerteis
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パウル ゲアタイス
(57)【要約】
プレスローラ(2若しくは2.1)の連続コーティングにより、ローラコンパクタ装置(1)の前記プレスローラ(2若しくは2.1)を外部滑沢する方法において、コーティング用に滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜を、前記プレスローラ(2若しくは2.1)に連続的に被着する。前記膜は、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウムを含有する混合物を含んでいる。この方法を実施するためには、ケーシング内にプレスローラ(2及び2.1)が配置されており、少なくとも1つのコーティング装置(13,14,15若しくは13.1,14.1,15.1)が配置されており、該コーティング装置により少なくとも1つのプレスローラに、滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウムを含有する混合物が被着される。この方法は、製薬工業分野及び食品工業分野において乾燥顆粒を製造するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するプレスローラ(2,2.1)の連続コーティングにより、ローラコンパクタ装置の前記プレスローラ(2,2.1)を外部滑沢する方法において、
コーティング用に滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜を、前記プレスローラ(2,2.1)に溶剤無しで連続的に被着することを特徴とする、ローラコンパクタ装置の前記プレスローラ(2,2.1)を外部滑沢する方法。
【請求項2】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムから成る粉体を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムを含有する混合物から成る粉体を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムを含有する混合物から成る、1つ又は複数のプレス成形品を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ローラ圧縮されるべき生成物を介してプレスローラ表面に受け取られるステアリン酸マグネシウムの量は、プレスローラ表面積1平方センチメートルにつき0.015mg〜0.2mg、好適には0.03mg〜0.05mgである、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
前記ローラコンパクタ装置により製造された生成物中の滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの濃度は、0.01%〜0.2%(m/m)未満だけ、好適には0.04%〜0.1%(m/m)未満だけ増大している、請求項1から5に記載の方法。
【請求項7】
力が加えられる前記プレスローラ間に位置するスラグの嵩密度を、3%を上回る精度で、好適には2%を上回る精度で、特に1.5%を上回る精度で検出可能である、請求項1から6に記載の方法。
【請求項8】
特に0.5μm〜1.5μm、好適には0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有するプレスローラ表面が、前記ローラコンパクタ装置を用いた粉体圧縮に適している、請求項1から7に記載の方法。
【請求項9】
特に0.5μm〜1.5μm、好適には0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有するプレスローラ表面を使用して、前記プレスローラからケーキングを除去し続けるか、又はケーキングを、スラグの「ギャップにおける」密度を検出可能な精度が3%を上回るか、特に2%を上回るか、更に特には1.5%を上回る程度の少なさに減少させる、請求項1から7に記載の方法。
【請求項10】
特に0.5μm〜1.5μm、好適には0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有するプレスローラ表面を使用して、顆粒中のステアリン酸マグネシウムの濃度を0.01%〜0.2%(m/m)未満だけ、特に0.04%〜0.1%(m/m)未満だけ増大させる、請求項1から7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10に記載の方法を実施するための装置において、
ケーシング内に、前記プレスローラ(2,2.1)が配置されており、ローラロールを備えた少なくとも1つのコーティング装置(13,14,15若しくは13.1,14.1,15.1)又はプレス成形品を備えた少なくとも1つのコーティング装置(17,18,19若しくは17.1,18.1,19.1)が設けられており、該コーティング装置により少なくとも1つのプレスローラ(2又は2.1)に、滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウムを含有する混合物が被着されることを特徴とする、請求項1から10に記載の方法を実施するための装置。
【請求項12】
請求項1から10に記載の方法を実施するための装置において、
ケーシング内に、前記プレスローラ(2,2.1)が配置されており、ローラロールを備えた少なくとも1つのコーティング装置(13,14,15若しくは13.1,14.1,15.1)又はプレス成形品を備えた少なくとも1つのコーティング装置(17,18,19若しくは17.1,18.1,19.1)が設けられており、該コーティング装置により前記プレスローラ(2及び/又は2.1)に、滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウムを含有する混合物が被着されることを特徴とする、請求項1から10に記載の方法を実施するための装置。
【請求項13】
引渡しローラ(13若しくは13.1)が、スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と生成物供給部(12)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1から10に記載の方法を実施するための装置。
【請求項14】
プレス成形品(19若しくは19.1)が、スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と生成物供給部(12)との間でプレスローラ表面に押し当てられることを特徴とする、請求項1から10に記載の方法を実施するための装置。
【請求項15】
製薬工業分野及び食品工業分野における乾燥顆粒の製造に関する、請求項1から11に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適当な滑沢剤を用いてプレスローラを連続的にコーティングすることによりローラコンパクタ装置のプレスローラを外部滑沢する方法及び装置、並びに該方法の使用に関する。
【0002】
このような形式のローラプレス機は、欧州特許出願公開第0525135号明細書から公知である。ローラプレス機は、粉体を加圧してスラグ(粗粒体)又はスラグフレークを成形するために用いられ、スラグ又はスラグフレークは次いで顆粒に粉砕される。このプロセスは、乾式造粒とも呼ばれる。乾燥顆粒は引き続き、例えば錠剤、カプセル、サシェ、電池及びインスタント料理の製造に用いられる。
【0003】
欧州特許出願公開第1764661号明細書からは、トナーカセット内で回転する表面に固形潤滑剤を塗布する装置が公知である。この潤滑剤は、溶融押出しにより製造された固形バーから成っている。バーは、ステアリン酸亜鉛及び潤滑油を含有している。多数の可能なステアリン酸のうち、ステアリン酸マグネシウムも挙げられている。潤滑剤を回転する表面に均一に分散させるためには、まず最初に少量の潤滑剤を固形バーから掻き取り、次いで所定の力でローラ表面に押し当てられねばならないスクレーパによりしっかりと押し当てられて薄膜が形成され且つ塗布される。前記用途に関して重要なのは、極めて薄く、表面に良好に付着する潤滑剤膜が、可能な限り均一に隙間無く、回転ローラに塗布される、という事実である。前記膜内には、潤滑剤凝集体が存在していてはならない。塗布される潤滑剤量は、ローラ表面積1平方メートル当たり0.11〜1.2mgである。ローラ表面積1平方メートル当たり1.2mgを上回る量は、全く不適切であると考えられる。
【0004】
トナーカセットは本発明の対象ではないということは別として、特にステアリン酸マグネシウムの付着防止特性は、押出し法によりネガティブな影響を及ぼされる。別の欠点は、潤滑剤をローラ表面に押し当てる追加的なスクレーパの必要性である。更に別の欠点は、プロセス中にローラに塗布される全ての粒子を、次の潤滑剤膜が塗布される前に、クリーニング装置によってローラ表面から完全に除去せねばならない点である。これにより、この欧州特許出願公開第1764661号明細書に記載されたプロセスには、完全に平滑なローラしか使用することができない。
【0005】
独国特許出願公開第19731975号明細書からは、ブリケッティングプレス機のローラ表面における、ブリケット化されるべき材料の付着を防止する方法が公知である。最終生成物はブリケットである。プレスローラの表面にはエマルジョンが吹き付けられる。このエマルジョンは、グラファイト、水及びガスの混合物から成る。エマルジョンの噴射は、大抵低い温度範囲(20〜50℃)における、薬品及び食品分野の乾燥顆粒の製造においては不可能である。それというのも、このことは圧縮された生成物の乾燥を必要とする場合があるからであり、このことは乾燥造粒の利点を大きく損なうと考えられる。
【0006】
適当なプレス機を用いた錠剤の製造においては、(粉体/顆粒圧縮過程後に臼からの)錠剤放出に必要とされる力を減少させるために、通常、加圧成形されるべき粉体に滑沢剤を添加する必要がある。粉体/顆粒に添加されるこの滑沢剤は、内部滑沢剤とも呼ばれる。このような滑沢剤の添加により、打錠機における機械的損傷が防止される。放出力の減少により、ちょうどプレスされてまだ臼内に位置している錠剤が、放出過程において損傷されること(このことは例えば錠剤のキャッピング又はラミネーションにより表面化する)も、やはり頻繁に防止される。打錠工具(上杵及び/又は下杵及び/又は臼)への付着を防止する又は低減させるためには、賦形部にもやはり、前記のような滑沢剤が添加される。
【0007】
特に製薬分野において最もよく使用される滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。しかしながらこの物質は、複数の望ましくない特性をも有している。ステアリン酸マグネシウムの添加は一般に、錠剤強度の低下をもたらす。同様に、この滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)の疎水特性に基づき、有効成分の遊離時に問題が生じる可能性があり、このことは生物薬剤学的な供与を悪化させる恐れがある。更に、遊離時の問題も、例えば錠剤強度の低下等の粉体の加圧成形性における問題も、多少なりとも強力な混合により著しく増大される恐れがある。これによりステアリン酸マグネシウムが分散され、最早十分に固い錠剤は製造不可能になるか、或いは遊離が減少されて、体内での意図した効果は最早得られなくなる、又は十分には得られなくなる。
【0008】
ローラコンパクタ装置を用いた粉体混合処理においても、極めて頻繁に滑沢剤が使用される。このような滑沢剤は、とりわけスクリュによる粉体搬送中の摩擦を低下させるために用いられる。これにより、この搬送領域内での栓形成を概ね防止することができるか、又は少なくとも粉体が十分に搬送される程度に減少させることができることから、選択された製造条件においてプロセスを実施することが可能になる。
【0009】
更に、プレスローラにおける粉体/スラグ残留物の付着を防止するために、ローラ圧縮されるべき混合物に滑沢剤が添加される。但し、これにより打錠の場合と同様の問題が生じる恐れがある。ひとつはスラグ強度の低下であり、これにより同一の処理条件でも、より多くの微粒子を有する顆粒が生じることになる。このこともやはり顆粒の流動特性を悪化させ、これにより打錠時に、より大きな重量変動が生じる恐れがある。また、ステアリン酸マグネシウムが混在している中でスラグを粉砕することにより、遊離時に問題が生じるという危険もある。それというのもこの場合、疎水性のステアリン酸マグネシウムが比較的良好に顆粒粒子表面に分散されるからであり、このことは濡れ性の悪化を招く恐れがある。同様に、顆粒粒子表面にわたる前記比較的良好な分散は、引き続く錠剤の加圧成形に際して、錠剤強度の低下をも招く恐れがある。
【0010】
ローラ圧縮されるべき混合物において、ステアリン酸マグネシウム濃度が例えば0.3%(m/m)未満に低下されると、又はそれどころかステアリン酸マグネシウムが全く添加されないと、ステアリン酸マグネシウムに基づく加圧成形性の低下や、遊離の減少等の問題は解消され得る、又は許容可能な程度に減少され得る。但しこれにより通常は、ローラプレス機の表面に対するスラグ残留物の付着が増大する。これらの残留物が、ローラ表面には接触しない、いわゆるスラグスクレーパによって、当該プレスローラ部分がスラグの加圧に再度使用される前に、プレスローラから再度機械的に除去される(ことができる)としても、通常、プレスローラ表面に、厚さが異なる場合がある複数のケーキングが形成されることは不可避である。このようなケーキングは、比較的大きなギャップ変動を招くので、前記のようなケーキングが形成されない場合よりも嵩密度の変動が著しく大きなスラグが生じることになる。スラグ密度の変動は、スラグ強度の変動につながるので、このことは、顆粒の流動性と、錠剤への加圧成形性とにおいて問題を招く恐れがあり、これは錠剤の重量変動若しくは錠剤強度において表面化する。
【0011】
ケーキングに関連した別の問題は、前記スラグを製造する間の、スラグの嵩密度の検出である。スラグがまだプレスローラ間に位置している間に検出されるこの密度(=いわゆる「ギャップにおける」密度(ギャップ=間隙=プレスローラ間の最小有効間隔))は、単位時間毎に製造されるスラグ量(=「定常状態」条件下での顆粒の量)と、プレスローラ間で製造される体積とから算出される。この体積を算出するためには、選択された期間にわたる平均ギャップを求める必要があり、このことが(1.5%以上の、但しあらゆるケースにおいて3%を上回る)十分な精度を伴って成功するのは、プレスローラ表面にケーキングが存在していないか、又は僅かに存在している場合だけである。
【0012】
前記「ギャップにおける」密度は、やはりスラグとスラグから生ぜしめられる顆粒の特性を実質的に決定するスラグの嵩密度の直接的な基準なので、この「ギャップにおける」密度の監視又はそれどころか制御は、顆粒の品質にとって、とりわけ重要である。極度に低い密度は、極度に低い強度延いては顆粒中の微粒子の増大を招き、その結果、打錠の際の流動性に問題が生じることになる。極度に高い密度は通常、打錠時の所要の錠剤強度(=引張り強さ)の達成において問題を生ぜしめる。「ギャップにおける」密度とスラグ強度との間の関係はバッチ毎に可変なので、スラグ強度の直接的な測定を優先することはできるが、その場合でも「ギャップにおける」密度の確実な検出は依然として重要であり続ける。それというのも、高い嵩密度を有するスラグの製造は、錠剤の硬さに関して加圧成形性に問題のある顆粒を生ぜしめる恐れがあるからである。
【0013】
よって、「ギャップにおける」密度の確実な検出は、経済的に極めて重要である。それというのも、これにより多大なコストに結びつく欠陥製品を回避することができるからである。このためには、プレスローラ表面における前記ケーキングを回避するか、又は「ギャップにおける」密度の測定に必要とされる精度が保証される程度の少なさに減少させる必要がある。
【0014】
先頃文献で説明されたように(Dawes他)、前記のようなケーキングは、溶剤を含有するステアリン酸マグネシウムの懸濁液をプレスローラ表面に吹き付けることによって回避され得る。このためには有機溶剤が使用されるので、スプレー噴流がプレスローラ表面に当たる前に、有機溶剤は概ね気化された状態になる。但しこの場合には、スラグの粉砕がスラグ製造ケーシングに隣接する別個の処理ケーシング内で行われる装置においても、特に粉砕がスラグも製造されるケーシング内で行われる装置においても、溶剤による顆粒の汚染は不可避である。その理由は、溶剤蒸気が顆粒粒子の表面によって吸収されることにあり、その結果、この顆粒から製造される錠剤の汚染も不可避になるか、又は回避困難になる。このような溶剤残留物を顆粒及び/又は錠剤から除去することはかなり難しい上に、費用がかさむことになるので、溶剤を含有するステアリン酸マグネシウム懸濁液の吹付けは、プレスローラ表面におけるケーキング防止及び/又は内部ステアリン酸マグネシウム濃度の低下に関して、経済的に有意な解決手段とはならない。また、前記のような溶剤を含む蒸気の除去も、製造費用の増大を招くと共に、品質管理において更に追加的な分析費用が生じることになる。前記のような吹付けシステムは吹付け空気で作動することが多いため、これに付随する空気量もやはり処理ケーシングから流出可能にする必要があり、このことは追加的な費用を生ぜしめる。なぜならば、処理ケーシングからの微細な粉体粒子の流出は少なくとも望ましいものではなく、それどころか多くの場合は作業員を危険に晒すことにつながるので、このような粒子を含んだ空気量は、フィルタを介して案内せねばならないからである。
【0015】
本発明の課題は、一方ではケーキングとこれに関連した問題を完全に又はほぼ完全に防止することであり、且つ他方では滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの内部量を大幅に減少させ、錠剤の加圧成形時に滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムにより惹起される問題が生じないようにすると共に、錠剤の溶解時に有効成分の遊離にネガティブな影響が及ぼされないようにすることである。この課題は、溶剤の使用に関連した経済的及び処理技術的な欠点に基づき、溶剤を使用せずに実現されねばならない。
【0016】
前記課題は本発明に基づき、コーティング用に滑沢剤及び/又は付着防止剤の薄膜が、プレスローラに溶剤無しで連続的に被着されることによって解決される。
【0017】
溶剤無しのコーティングは、生成物を後処理せずに済む、という利点を有している。生成物からの溶剤の除去には、それが可能であったとしても、大きな手間をかけねばならない。この溶剤無しのコーティングの別の利点は、プレスローラ表面におけるケーキングが回避される、又は概ね回避される点にある。これにより、嵩密度の変動が比較的少ないスラグを製造することができるようになる。このことは、より良好な顆粒品質を生ぜしめる。
【0018】
滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムによるコーティングが有する利点は、製薬分野における滑沢剤及び/又は付着防止剤としてはステアリン酸マグネシウムが最もよく使用されると共に、当局に認可されている点である。
【0019】
更に、ステアリン酸マグネシウムを含有する粉体混合物によるコーティングが有利であるということが判った。既に賦形部に含まれている物質から成る、補助剤又は補助剤混合物とステアリン酸マグネシウムとの混合物も、同様に適していることが判った。
【0020】
また、適当な滑沢剤及び/又は付着防止剤、好適にはステアリン酸マグネシウムを含有する1つ又は複数のプレス成形品によるコーティングも適していることが判った。これらのプレス成形品は例えば、(打錠)プレス機を用いた、ステアリン酸マグネシウムを含有する粉体の加圧成形により製造される。つまり例えば、良好に打錠可能な物質、例えば賦形部に存在していることが非常に多い微結晶セルロースの混加により、ステアリン酸マグネシウムを含有する十分に固いプレス成形品を製造することができ、次いでこれらのプレス成形品が小さな押当て力でプレスローラロール表面に押し当てられることにより、プレスローラ表面が直接にコーティングされることになる。
【0021】
このようなプレス成形品の利点は、これらのプレス成形品を汚染領域に後から容易に足すことができる、という点にある。更に、プレス成形品は、同じステアリン酸マグネシウム濃度を有する粉体よりも少ない体積を占める。
【0022】
このコーティングの別の利点は、これによりローラコンパクタ装置を用いて製造される生成物中の滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの濃度が、0.01%〜0.2%(m/m)未満だけ、通常は0.04〜0.1%(m/m)未満だけ増大する点にある。それにもかかわらず、プレスローラ表面に対するケーキングは完全に防止されるか、又は問題ない程度に減少された。内部滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの添加によりケーキングを防止するためには、通常大幅に高い濃度、つまり0.5%〜1.5%の濃度が必要である。これに対して外部滑沢は、生成物中に、通常0.04%〜0.1%の滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウム濃度の増大しか生ぜしめない。
【0023】
滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウム濃度の低下もやはり、十分に固い錠剤を形成するように顆粒を打錠する際に滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムにより誘発される問題の解決に、とりわけ有利に作用する。同様に前記(濃度の)低下は、錠剤又はカプセルからの有効成分の遊離に際して滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムにより誘発される問題の解決においても有利である。
【0024】
本発明の別の利点は、プレスローラ表面におけるケーキングが防止されることで、力が加えられるプレスローラ間で単位時間当たりに製造されるスラグの体積が、3%を上回る精度で、好適には2%を上回る精度で、特に1.5%を上回る精度で検出可能である点にある。このことは、力が加えられるプレスローラ間に位置するスラグの嵩密度(=「ギャップにおける」密度)の相応して精密な検出の基礎となる。それというのも、この嵩密度は、単位時間当たりに製造されるスラグ若しくは顆粒の質量と、プレスローラ間で単位時間当たりに製造されるスラグ体積とから算出されるからである。前記精度は、プレスローラにケーキングが存在していないか、又はケーキングが問題ない程度に減少される場合にのみ可能である。
【0025】
外部滑沢により、場合によってはローラ圧縮されるべき粉体に対する滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの添加でさえも完全に省くことができ、これにより、元の粉体混合物を十分に固い錠剤に再度加圧成形する可能性(=得られた顆粒の加圧成形性)及び/又は錠剤又はカプセルからの有効成分の遊離に関して場合により生じる問題も解消されることになる。
【0026】
別の利点は、特に本発明による粉体膜の被着に際して、付着防止剤を含有する凝集体がプレスローラ表面には押し当てられずに、可能な限り均一にプレスローラ表面に分散される点にある。これにより、ローラ圧縮されるべき生成物とプレスローラ表面との間に最小限の摩擦係数が発生して、プレスローラロール間への粉体の進入が不必要に困難になることが回避される。このような進入は、ローラ圧縮プロセスにとって重要である。
【0027】
本発明を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】本発明による装置の変化態様を示す図である。
【0029】
図1には符号1で処理ケーシングが示されている。処理ケーシング1内にはプレスローラ2及び2.1が配置されている。これに付属する測定装置2.2は、プレスローラ2及び2.1の回転数測定に用いられる。処理ケーシング1の下部には、スクリーンケージ3.1を備えた造粒ローラ3が配置されている。ローラプレス力は測定装置4により測定され、ローラギャップ(=プレスローラ間の最小有効間隔)は測定装置5により測定される。処理ケーシング1の下側には、乾燥顆粒用の捕集容器6が位置しており、捕集容器6は計量装置7上に載置されている。この計量装置7は、集合線路9を介してコンピュータ8に接続されている。計量容器の所要数に応じて、2つ以上の信号線路が必要とされることもある。
【0030】
図2及び
図3において、
図1に示したものと同じ構成部材には同一符号が付されている。
図2では、処理ケーシング1内に2つのプレスローラ2及び2.1が位置している。生成物は、搬送スクリュ12により供給され、互いに逆方向に回転して力を加える各プレスローラ2及び2.1間でのプレス過程の後に、スラグ若しくはスラグフレーク10を形成する。プレスローラ2及び2.1の側方領域のリザーバ容器15及び15.1には、各1つの滑沢剤供給部が配置されている。各容器15及び15.1の下方には、引渡しローラ13及び13.1並びに搬送ローラ14及び14.1が1つずつ配置されている。滑沢剤及び/又は付着防止剤供給部15及び15.1は、引渡しローラ13及び13.1がそれぞれ、スラグスクレーパ11及び11.1の下流側で且つ生成物供給部12の上流側においてプレスローラの領域16及び16.1に接触するように、ローラコンパクタ装置の処理ケーシング1に配置されている。つまり前記領域内では、ローラ圧縮中、プレスローラ表面上にスラグ又はスラグ片は最早存在しないことが想定される。強調しておくと、前記スラグスクレーパはプレスローラ表面には接触しないので、プレスローラ表面とスラグスクレーパとの間の摩耗は原則として回避される。
【0031】
搬送ローラ及び引渡しローラによる薄い滑沢剤膜及び/又は付着防止膜の被着は、例えば2つの搬送ローラと1つの引渡しローラ等の、3つ以上のローラから成る装置によっても同様に行うことができる。また、粉体薄膜をプレスローラ表面に被着させるためには、各プレスローラに複数の前記のような被着装置が備えられていてもよい。この場合、搬送ローラと引渡しローラの直径は同一であるが、異なっていてもよい。搬送ローラの直径が引渡しローラの直径よりも大きいか小さいかということは重要ではない。
【0032】
運転中、リザーバ容器15若しくは15.1(
図2)は、搬送ローラ14若しくは14.1により引渡しローラ13若しくは13.1に引き渡される適当な滑沢剤及び/又は付着防止剤、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウム含有粉体混合物を有している。この場合は引渡しローラ13若しくは13.1が滑沢剤及び/又は付着防止剤を、プレスローラ2若しくは2.1の表面に被着する。
【0033】
本発明の課題は、適当な滑沢剤及び/又は付着防止剤、好適にはステアリン酸マグネシウムを含むプレス成形品によっても同様に解決され得る。これらのプレス成形品は、例えば適当な(打錠)プレス機による、ステアリン酸マグネシウム含有粉体の加圧成形により製造される。製造に際して保証せねばならないのは、使用物質の滑沢作用及び/又は付着防止作用が十分に保持され続けることである。この理由から、前記のようなステアリン酸マグネシウムを含有する成形品の製造に関して、押出し成形法又は溶融法は排除されている。なぜならば、これによりステアリン酸マグネシウムの滑沢特性及び/又は付着防止特性が著しく低減されるからである。
【0034】
滑沢剤及び/又は付着防止剤を含有するプレス成形品は、符号19若しくは19.1(
図3)で概略的に図示されている。これらの十分に固いプレス成形品は、
図3に略示したばね積層体18若しくは18.1による調節可能な、好適には一定の力で以て、プレスローラ2若しくは2.1の表面に直接に押し当てられる。前記プレス成形品をプレスローラ表面に押し当てる装置と、プレス成形品自体とは、1つのケーシング17若しくは17.1内に位置している。プレス成形品を有するこのケーシングもやはり原則として、各プレスローラの表面(=転動表面)上にスラグ又はスラグ片が最早存在していないか、又はプロセスにとって重要でない極少量のスラグ又はスラグ片しか存在していないことが想定される、プレスローラの領域に取り付けられる。よって、プレス成形品を内蔵する各プレス成形品押当て装置は、各スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と生成物供給装置(12)との間の領域に取り付けられており、このことは
図3においてハッチングされた領域16及び16.1により概略的に図示されている。
【0035】
図2及び
図3にそれぞれ概略的に示した両方の装置によって、滑沢剤及び/又は付着防止剤、好適にはステアリン酸マグネシウムの薄膜が、プレスローラ表面に再現可能に被着される。このためにはプレスローラ1つにつき、前記両装置のうちの一方だけを使用すれば十分であるが、このために前記両コーティング装置を組み合わせて使用することも勿論可能である。
【0036】
前記コーティング装置により被着され、かつ、最終的にはローラ圧縮されるべき粉体を介してプレスローラ表面に受け取られる滑沢剤及び/又は付着防止剤、好適にはステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸マグネシウム含有混合物の正確な量は、例えば搬送ローラ及び引渡しローラ(
図2の13若しくは13.1)の表面の性質、プレス成形品(
図3の19若しくは19.1)の押当て力及び機械的強度、プレスローラ(
図3の2若しくは2.1)の表面の性質(例えば平滑な、粗面化された、刻み目を付けられた、溝付けされた、又はポケット凹部状のプレスローラ表面)、及び圧縮されるべき粉体の特性等の、選択される処理条件に左右される。このことは、最終的に粉体を介してプレスローラ表面に受け取られる滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの、プレスローラ表面1平方センチメートル当たり0.015mg〜0.2mg、特に0.03mg〜0.05mgの、ステアリン酸マグネシウム量の変動をもたらす。その場合は圧縮するローラプレス力及びギャップに応じて、スラグ若しくは顆粒内のステアリン酸マグネシウムの濃度が0.01%〜0.2%(m/m)、特に0.04%〜0.1%(m/m)高められる。つまり、この溶剤無しのコーティングにより生成物中にもたらされるステアリン酸マグネシウム量は、内部滑沢の場合の所要量よりも大幅に少なく、これによりプレスローラ表面におけるケーキングを完全に又はほぼ完全に防止することができる。内部滑沢を用いてプレスローラにおけるケーキングを回避するためには、一般に生成物の特性及びプレスローラ表面の性質に応じて、0.5%〜1.5%(m/m)の内部濃度が必要とされる。
【0037】
このようなステアリン酸マグネシウム被着装置によって、複数の物質を被覆形成すること無しに、プレスローラにおいて申し分無くローラ圧縮して粉砕することができた。この場合、大抵は、ローラ圧縮による乾式造粒にとって重要な、ローラプレス力、ローラギャップ及び/又はプレスローラ回転数等の、製造パラメータとも呼ばれる可能なプロセスパラメータの大幅な制約を全く甘受せずに済んだ。
【0038】
このようにして、例えば平滑なプレスローラ表面を使用した場合には、ケーキングをもたらす物質であるクエン酸を、(内部)滑沢剤のステアリン酸マグネシウムを添加せずに、ステアリン酸マグネシウムでコーティングされたプレスローラと同じ製造パラメータ範囲にわたって処理することができた。勿論、ステアリン酸マグネシウムでのコーティングにより、ケーキングは完全に回避されるか、又は問題ない程度に減少させられた。この製造範囲は、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1メートルにつき80kNのローラプレス力範囲全体にわたり、プレスローラ直径1メートルにつき24mmのギャップまでである。この粉体に1%のステアリン酸マグネシウムを添加することにより(いわゆる内部のステアリン酸マグネシウム)、確かにケーキングは同様に概ね防止され得るが、これにより製造範囲が大幅に制限された。つまり、平滑な表面を有するプレスローラを使用した場合には、選択したギャップに関係無く、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1メートルにつき最大でも48kNのプレス力しか実現することができなかった。そしてプレスローラ直径1メートルにつき18mmのギャップの場合には、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1メートルにつき最大でも20kNの力しか適用することができなかった。同じ平滑なプレスローラ表面を、内部のステアリン酸マグネシウム無しのクエン酸を圧縮する際にも使用したが、プレスローラはステアリン酸マグネシウムでコーティングしてあった。但し、ステアリン酸マグネシウムを用いて外部コーティングした場合、スラグは、粉体コーティング装置の使用されるプレスローラ、又はプレス成形品の押当て力(後者の場合、ステアリン酸マグネシウムを含有する粉体混合物から製造されたプレス成形品)及びその機械的強度に応じて、1%を大幅に下回るステアリン酸マグネシウム、つまり0.01%〜最大でも0.1%(m/m)のステアリン酸マグネシウムを含んでいた。
【0039】
マンニトールを圧縮した場合も、平滑なプレスローラ表面を使用し且つステアリン酸マグネシウムによりプレスローラをコーティングした場合の滑沢されていない粉体に比べ、ローラ圧縮による乾式造粒にとって重要なローラ圧縮製造パラメータの大幅な制約は生じなかった。またマンニトールの場合も、プレスローラ表面の外側コーティングにより、ローラ圧縮された生成物中のステアリン酸マグネシウムの濃度を少なくとも10倍低下させて、0.1%(m/m)にすることができた。通常、0.02%〜0.05%(m/m)の濃度が実現され、これは内部滑沢の場合よりも最大50倍低い。
【0040】
滑沢されない粉体と比較して、大抵は、ステアリン酸マグネシウムでプレスローラ表面をコーティングすることによる、ローラ圧縮を用いた乾式造粒にとって重要なローラ圧縮パラメータの大幅な制約を甘受せずに済むとしても、このことはローラ圧縮されるべき全ての粉体に当てはまるわけではない。ローラプレス機間での圧縮における制約は、例えば、ステアリン酸マグネシウムの薄膜が、いわゆる進入問題を生ぜしめることによって惹起される可能性がある。この現象は、まさに平滑なプレスローラ表面を使用した場合に、例えばコーンスターチ等の特定の物質に現れ、これにより、ローラ圧縮は小さな力及び/又はギャップ幅でしか可能でなくなる。
【0041】
平滑なプレスローラ表面を使用した場合には、既に0.1%(m/m)の内部ステアリン酸マグネシウム量において、コーンスターチのローラ圧縮における製造パラメータ範囲が著しく縮小された。つまり、平滑なプレスローラを使用した場合には、たった0.1%の内部ステアリン酸マグネシウム量が、プレスローラ直径1メートルにつき4mmのギャップにおいて、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1メートルにつき最大28kNの力を適用可能にした。プレスローラ直径1メートルにつき8mmのギャップからは、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1メートルにつき12kNの力しか加えることができなくなった。プレスローラ直径1メートルにつき12mmのギャップからは、最早ほとんど力を加えることはできなくなった。
【0042】
但し、平滑なローラの表面が粗面化され、これによりプレスローラが0.5μm〜1.5μm、特に0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有している場合には、コーンスターチ生成物中の0.1%の内部ステアリン酸マグネシウム濃度が、滑沢されない生成物に比べると、依然として可能なローラ圧縮パラメータの減少をもたらすが、この減少は通常、ローラ圧縮による乾式造粒にとって実際にはあまり重要でない。1%の内部ステアリン酸マグネシウムを添加した場合でも、粗面化された前記の平滑なプレスローラ表面を使用した場合の製造パラメータ範囲は、(0.1%(m/m)の内部ステアリン酸マグネシウム濃度の場合よりもやや小さいとしても)未だ十分に大きかったが、しかしながらプレスローラ表面の外部滑沢は、1%の内部ステアリン酸マグネシウム量におけるよりもわずかに大きな製造パラメータ範囲をもたらしただけでなく、ローラ圧縮された生成物中のステアリン酸マグネシウムの極めて大幅に低い濃度をももたらした。この濃度は、ローラに基づくコーティング装置(
図2参照)を使用した場合は引渡しローラの性質に応じて10〜50倍だけ、つまり0.1%〜0.02%だけ低いものであった。そしてこの場合、プレスローラ表面からケーキングは除去され続けた。
【0043】
この結果が示すのは明らかに、粗面化されたプレスローラ表面の使用は、プレスローラ表面が0.5μm〜1.5μm、好適には0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有しており、滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの薄膜を被着する装置との組合せにおいて、ローラコンパクタ装置を用いた粉体圧縮に特に適しており、しかも、十分に大きな製造パラメータ範囲が保証されているだけでなく、顆粒中のステアリン酸マグネシウム濃度も0.01%〜0.2%(m/m)、特に0.04%〜0.1%(m/m)だけしか増大しないことを特徴とする、という点である。この場合、プレスローラ表面からケーキングは除去され続けるか、又はケーキングの量は、顆粒品質に何ら又はほとんど影響を及ぼさない程度に少ないものである。更にこれにより、「ギャップにおける」密度が1.5%以上の精度で、しかもあらゆるケースにおいて3%を上回る精度で検出され得る、ということも保証される。
【0044】
それどころか相当数のケースにおいて(例えば生成物ネオソルブに関して)、意外にも外部滑沢は、可能なローラ圧縮パラメータの(乾式造粒にとって実際にはあまり重要でない)僅かな拡張につながることが判った。この例では、粗面化された平滑なプレスローラが使用された。ステアリン酸マグネシウムを含有するプレス成形品を表面に押し当てる、
図3に略示した装置によってプレスローラにステアリン酸マグネシウム薄膜を外部被着することにより、製造範囲を、プレスローラ直径1メートルにつき16mmのギャップにおいて、プレスローラ幅1cm及びプレスローラ直径1mにつき72kNから80kNへ拡張することができた。この場合も、ローラ圧縮された生成物中では僅かな、つまり0.04%〜最大でも0.12%(m/m)のステアリン酸マグネシウム濃度しか測定されなかった。
【手続補正書】
【提出日】2016年5月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着防止剤の薄膜により、ローラコンパクタ装置の回転プレスローラ(2,2.1)を溶剤無しで連続的に外部滑沢する方法において、
(イ)粉体の形態で供給される付着防止剤が、ローラロール(13,14,13.1,14.1)により受け取られ、少なくとも1つのプレスローラ(2若しくは2.1)の表面に引き渡される、又は
(ロ)プレス成形品(19,19.1)の形態で供給される付着防止剤が、プレス成形品押当て装置により、プレスローラ(2若しくは2.1)の表面に直接に押し当てられることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムから成る粉体を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムを含有する混合物から成る粉体を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングを、ステアリン酸マグネシウムを含有する混合物から成る、1つ又は複数のプレス成形品を用いて行う、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記プレスローラ表面は、0.5μm〜1.5μm、好適には0.8μm〜1.2μmの表面粗さを有している、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ローラ圧縮されるべき生成物を介してプレスローラ表面に受け取られるステアリン酸マグネシウムの量は、プレスローラ表面積1平方センチメートルにつき0.015mg〜0.2mg、好適には0.03mg〜0.05mgである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
乾燥顆粒中の滑沢剤及び/又は付着防止剤、特にステアリン酸マグネシウムの濃度は、0.01%〜0.2%(m/m)未満だけ、好適には0.04%〜0.1%(m/m)未満だけ増大している、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
力が加えられる前記プレスローラ間に位置するスラグの嵩密度を、3%を上回る精度で、好適には2%を上回る精度で、特に1.5%を上回る精度で検出可能である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コーティング装置を介して付着防止剤により回転プレスローラ(2,2.1)を連続的にコーティングすることで、ローラコンパクタ装置の前記プレスローラ(2,2.1)を外部滑沢する装置において、
前記コーティング装置は、
(イ)粉体の形態で供給される付着防止剤用の付着防止剤供給部(15,15.1)、並びに前記粉体を受け取り、少なくとも1つのプレスローラ(2又は2.1)に引き渡すローラロール(13,14,15若しくは13.1,14.1,15.1)を有している、又は
(ロ)プレス成形品(19,19.1)の形態で供給される付着防止剤を収容するケーシング(17,17.1)を備えたプレス成形品押当て装置を有しており、該プレス成形品押当て装置は、前記プレス成形品を、少なくとも1つのプレスローラ(2又は2.1)の表面に直接に押し当てることを特徴とする、装置。
【請求項10】
前記ローラコンパクタ装置は、スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と生成物供給部(12)とを有しており、前記ローラロール(13,14,15若しくは13.1,14.1,15.1)には、引渡しローラ(13若しくは13.1)が含まれており、該引渡しローラ(13若しくは13.1)は、前記スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と前記生成物供給部(12)との間に配置されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記ローラコンパクタ装置は、スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と生成物供給部(12)とを有しており、前記プレス成形品(19若しくは19.1)は、前記スラグスクレーパ(11若しくは11.1)と前記生成物供給部(12)との間で前記プレスローラ表面に押し当てられる、請求項9記載の装置。
【国際調査報告】