特表2017-506304(P2017-506304A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-506304500から4500KWの内燃機関の酸素に富んだ排気中の窒素酸化物の還元のための小型選択的触媒還元システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-506304(P2017-506304A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】500から4500KWの内燃機関の酸素に富んだ排気中の窒素酸化物の還元のための小型選択的触媒還元システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170210BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20170210BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170210BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20170210BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/36 C
   F01N3/24 L
   F01N3/24 N
   F01N13/08 Z
   B01D53/86 223
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-550238(P2016-550238)
(86)(22)【出願日】2015年2月5日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月30日
(86)【国際出願番号】GB2015050314
(87)【国際公開番号】WO2015118330
(87)【国際公開日】20150813
(31)【優先権主張番号】61/936,611
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キューゲル, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ピルリ, イリル
(72)【発明者】
【氏名】ライヘルト, ディルク
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G004AA05
3G004AA06
3G004BA06
3G004DA01
3G091AA04
3G091AA06
3G091AA18
3G091AB04
3G091BA14
3G091CA17
3G091CA27
3G091GA06
3G091GA21
3G091GB06W
3G091GB09W
3G091GB17X
3G091HA45
3G091HA46
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BB02
4D148CA01
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA08
4D148DA09
4D148DA10
(57)【要約】
選択的触媒還元(SCR)システムは、SCR反応器(3)、吸気流システム(1)、及び気化器モジュールを備え、SCR反応器(3)は、少なくとも1つのSCR触媒を備え、且つ吸気流システム(1)及び気化器モジュールと連通しており、吸気流システム(1)は、エンジンからの排気ガスのための1つ又は複数の入口を備え、入口は、SCR反応器(3)の周囲に配置された少なくとも1つのフローダクト(11、12)を通して、ガスの流れを分配するように構成され、SCRの周囲のフローダクト(11、12)を通る排気ガスの流れが、気化器モジュールに熱を供給し、アンモニアに転換される尿素又はアンモニア前駆体が、SCR反応器(3)内に導入される前に気化器モジュール内に導入され、SCR反応器(3)の断面全体にわたってほぼ均一なガス速度及び濃度プロファイルをもたらすため、アンモニア含有ガス流を導入した後、且つ複数のバッフルプレートを通過した後、それぞれのフローダクト(11、12)内のガスの流れが、SCR反応器内に導入され、気化器モジュールは、加熱された予備反応器内に尿素又はアンモニア前駆体を導入する手段を備え、加熱された予備反応器内では、排気ガス流をSCR反応器(3)に導入する前に、尿素又はアンモニア前駆体が、少なくとも部分的に分解され、続いて排気ガス流内に供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備える選択的触媒還元(SCR)システムであって、
a.前記SCR反応器が、少なくとも1つのSCR触媒を備え、且つ前記吸気流システム及び前記気化器モジュールと連通し、
b.前記吸気流システムが、エンジンからの排気ガスのための1つ又は複数の入口を備え、前記入口が、前記SCR反応器の周囲に配置された少なくとも1つのフローダクトを通して、ガスの流れを分配するように構成され、前記SCRの周囲の前記フローダクトを通る排気ガスの流れが、前記気化器モジュールに熱を供給し、アンモニアに転換される尿素又はアンモニア前駆体が、前記SCR反応器内に導入される前に前記気化器モジュール内に導入され、前記SCR反応器の断面全体にわたってほぼ均一なガス速度及び濃度プロファイルをもたらすため、アンモニア含有ガス流を導入した後、且つ複数のバッフルプレートを通過した後、それぞれの前記フローダクト内のガスの流れが、前記SCR反応器内に導入され、
c.前記気化器モジュールが、加熱された予備反応器内に尿素又はアンモニア前駆体を導入する手段を備え、前記加熱された予備反応器内では、排気ガス流を前記SCR反応器に導入する前に、尿素又はアンモニア前駆体が、少なくとも部分的に分解され、続いて前記排気ガス流内に供給される、選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項2】
前記加熱された予備反応器が、前記気化器モジュールの一部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加熱された予備反応器が、洗浄された排気ガスの流れによって加熱される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも1つのフローダクトと前記SCR反応器部との間の接続通路内で対角線上に据え付けられた固定板を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記触媒の断面全体にわたってほぼ均一な濃度のアンモニアをもたらすように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
ガスの吸気流が、2つ以上のフローダクト内へと分離される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記フローダクトのうちの少なくとも1つが、前記SCR反応器の第1の側面上に配置され、異なるフローダクトのうちの少なくとも1つが、前記SCR反応器の反対側上に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記バッフルプレートが、前記触媒の上流の排気ガスの均一な運動量分布をもたらすように、且つアンモニアを添加する前に前記排気ガスの移動時間を増加させるように配置且つ配向される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記フローダクトが長方形断面を有し、前記フローダクトの長さがほぼ前記SCR反応器の長さであり、各フローダクトの幅及び高さが、各フローダクトの長さに対して、それぞれ、約8分の1以下及び2分の1である、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのSCR触媒が、モノリスを通るガス流の正味方向において、三角形、長方形、又は円形の形状を有する前記モノリスの形態にある、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記気化器モジュールが、前記SCR反応器を出る清浄な排気ガスの一部を除去する手段、圧力下で前記清浄な排気ガスの一部を収集する手段、加圧された前記清浄な排気ガスを気化チューブ内に供給する手段、及び尿素又はアンモニア前駆体を前記気化チューブ内の前記清浄な排気ガス内に注入する手段を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記SCR反応器を出る前記清浄な排気ガスの一部を除去する前記手段、及び圧力下で前記清浄な排気ガスの一部を収集する前記手段が、熱気体圧縮機又はエンジンからの機械的エネルギーを利用する手段である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記清浄なガスの質量流量及び温度、並びに熱ガス流内の前記尿素又は前記アンモニア前駆体の滞留時間が、水の完全な蒸発、並びに前記尿素又は前記アンモニア前駆体の熱分解を達成するのに十分である、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
除去された清浄なガスの質量流量が、排気の質量流量の総量の約10%未満である、請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記気化チューブが、前記フローダクトのうちの少なくとも1つの中に配置される、請求項11から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
排気流内へのアンモニア含有清浄ガスの分配が、フローダクトと反応器の間の各通路の真ん中に配置されたデバイスを使用して、均一な態様でもたらされ、前記デバイス/チューブが、開口を含み、それにより、前記通路のそれぞれの上の長方形の流通路にわたってほぼ同じ流れが生じる、請求項11から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
エンジンからの排気内で形成された窒素酸化物の量を還元させる方法であって、前記エンジンからの排気ガスを、請求項1から16のいずれか一項に記載のSCRシステムを通過させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋、機関車、(固定式)発電用途のためのディーゼル及びガスなど、内燃機関の酸素に富んだ排気中の窒素酸化物(NO)の還元のための選択的触媒還元(SCR)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼排ガス内の窒素酸化物(NO)の選択的触媒還元(SCR)は、国内及び国際排気規制に準拠するために世界中において多くの産業で用いられている。化石及び再生可能燃料の燃焼プロセスで形成された窒素酸化物は、触媒表面上でアンモニアなどの還元剤で還元される。様々な触媒が、酸化パナジウム、イオン交換ゼオライトなどの様々な基材上で使用されてきた。触媒は、種々の組成で調製されてもよく、押し出されたハニカム又は被覆されたハニカム、金属基材など、種々の形態で存在してもよい。適切な触媒の選択を決定する主な要因の一つは燃焼排ガスの温度である。還元剤としてはアンモニアが好まれているが、ガス状アンモニアは危険性を有するため、アンモニアを直接使用することは問題がある。したがって、高温の燃焼排ガス内に注入されたとき、アンモニアを形成するために取扱い及び分解が容易な物質が通常使用される。例えば、尿素水溶液は、アンモニア及びイソシアン酸(HNCO)を形成するために140℃を越える温度で分解され、次いで加水分解されてアンモニア及び二酸化炭素が形成される。しかしながら、尿素水溶液からアンモニアを生成することは、比較的遅いプロセスである。高温ガス流中の尿素の滞留時間が短すぎると、反応器上への沈殿、更に望ましくない場合には、触媒上への沈殿に至る場合がある。したがって、数メートルの長さを有する比較的長い注入ダクトが、現況技術のSCR用途で使用される実際の触媒の上流に配置される。こうした長いダクトは、典型的に直管である。この直管を通して、排気が流れ、この直管内で注入器又はランスによって還元剤が高温ガス流中に注入される。
【0003】
上述のSCRシステムは、発電所などの大きな固定式システム上で一般的に使用されてきた。より小さなSCRシステムは、自動車用途及び一般的に600kW未満のエンジンで使用されてきた。こうしたより小さなSCRシステムは、排気量がより低いため、種々のデザインを有し、したがって、より小さな質量流量の還元剤をシステム内に導入しなければならない。最近、海洋、オフロード、及び発電セクターでは、500から4500キロワット(kW)のディーゼル及びガスエンジンに対してエミッション規制が設定された。現在、こうしたサイズのエンジンで使用されているシステムは、長い直径(最大約0.6m)を有する長い排気パイプ(最大で約10m)、及び排気ガスの流れの中に配置されているSCR反応器から構成されている。尿素水溶液が、ランス(lance)によって排気ガス内に直接注入される。尿素が、次いで、全量の排気ガス流の中でアンモニアに転換される。触媒の断面全体にわたって均一なアンモニア濃度パターンを達成するためには、静的混合器によって流れが意図的に中断される。多くの場合、アンモニアは、1つ又は複数の混合器、次いでSCR触媒を通過する前に、アンモニア注入グリッド(AIG)を通して、全量の排気流の中に直接導入される。流れの分配が不均一であることにより、低温部分でシミが生じる場合があり、それにより、部分的に分解された尿素による沈殿又は腐食に至る。沈殿物は、尿素をアンモニアに転換する反応に関与できないため、こうした尿素の損失により、更にNO転換活性が減少する。
【0004】
海洋、オフロード、及び発電セクターの用途において、空間は重要な要素である。空間の使用により、これらのセクターのオペレーションの経済状況が影響を受ける。例えば、スーパーヨット又はフェリーは、乗客のための空間を失う場合があり、それにより収入が失われる結果となる。大きな採鉱掘削機及びトラックは、移動又は運搬できる荷重を減少させる必要があり、結果として、同じ量の材料を移動させるために追加の掘削を行ったり、何度も行ったり来たりしなければならない。タグボートなどの特定のビークルの機械室には、現況技術のSCR機構の据え付けに必要な空間がない場合がある。
【0005】
本明細書に記載のSCRシステムは、排気後処理システムの空間上の制約が使用上の障害であった大きさを有するエンジンにおいて、SCRプロセスを使用して、排気ガス中の窒素酸化物(NO)のレベルを減少させることに尿素を使用することを可能にする。本明細書に記載のコンパクトSCRシステムの利点のうちの1つは、該システムを、上述のセクターの新しいエンジンとともに使用できることに加えて、既存のエンジンが同様にエミッションを還元できるように、更にアフターマーケットシステムの据え付けを可能にすることである。
【発明の概要】
【0006】
一態様によると、本発明は、SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備える選択的触媒還元(SCR)システムを提供し、
a.SCR反応器は、少なくとも1つのSCR触媒を備え、且つ吸気流システム及び気化器モジュールと連通しており、
b.吸気流システムは、エンジンからの排気ガスのための1つ又は複数の入口を備え、入口は、SCR反応器の周囲に配置された少なくとも1つのフローダクトを通して、ガスの流れを分配するように構成され、SCRの周囲のフローダクトを通る排気ガスの流れは、気化器モジュールに熱を供給し、アンモニアに転換される尿素又はアンモニア前駆体は、SCR反応器内に導入される前に気化器モジュール内に導入され、SCR反応器の断面全体にわたってほぼ均一なガス速度及び濃度プロファイルをもたらすため、アンモニア含有ガス流を導入した後、且つ複数のバッフルプレートを通過した後、それぞれのフローダクト内のガスの流れが、SCR反応器内に導入され、
c.気化器モジュールは、加熱された予備反応器内に尿素又はアンモニア前駆体を導入する手段を備え、加熱された予備反応器内では、排気ガス流をSCR反応器に導入する前に、尿素又はアンモニア前駆体が、少なくとも部分的に分解され、続いて排気ガス流内に供給される。
【0007】
SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備えるコンパクト選択的触媒還元システムが説明される。このSCRシステムでは、尿素を活性成分(アンモニアを含む)に分解するために熱処理された排気ガスの流れが用いられる。このシステムにより、還元剤が排気ガス内に供給される前に、気化器モジュール内での尿素/アンモニアの比較的長い滞留時間が可能となる。排気ガスは、続いてSCR反応器内でSCR触媒内に移る。SCR反応器は、少なくとも1つのSCR触媒を備え、吸気流システム及び気化器モジュールと連通している。吸気流システムは、エンジンからの排気ガスが入るための1つ又は複数の入口を備える。入口は、SCR反応器の周囲のフローダクトを通して、ガスの流れを流ストリームに分配するように構成される。SCRの周囲のフローダクトを通る排気ガスの流れは、更なる熱を気化器モジュールに供給し、気化器モジュール内に導入される尿素又はアンモニア前駆体の溶液を揮発する。気化器モジュールは、更に清浄な高温の排気の流れによって加熱される。フローダクトは、幾つかの実施形態では、システム内のガスの移動時間を制御し得る一連のバッフルを含む。尿素又はアンモニア前駆体は、気化器モジュール内でSCR反応器を通過したガスの流れの中に導入される。ここで、揮発された尿素又はアンモニア前駆体は、SCR反応器を通過した高温ガスの流れと混合され、アンモニアに転換される。気化器モジュールからのガス含有アンモニアは、フローダクト内で排気ガスと混合される。組み合わされたガスは混合され、次いでSCR反応器内に導入される。SCR反応器では、ガスの混合物は、SCR反応器の断面にわたってほぼ均一な速度及び濃度プロファイルを有する。該システムは、従来のSCRプロセスでよく使用されるアンモニア注入グリッド(AIG)を使用しない。SCR触媒を通過した後、処理された排気ガスは、システムから排気される一次流と、気化器モジュールに移る二次流とに分けられる。
【0008】
本発明の多くの好適な態様が以下で説明される。均等な構成物が企図される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、特に添付の図面と共に参照したとき、以下の記載により、容易に理解でき、利点がより明らかになるであろう。
【0010】
図1】吸気流が、2つのフローダクトを通してシステムの背面に移送され、背面で方向転換してSCR触媒を通過し、洗浄された排気ガスの一部が、尿素と混合され、次いで、触媒を通過する前に排気ガス流内に導入される、コンパクトSCRシステムの実施形態の概略図である。
図2】触媒を通過することに先立って、洗浄された排気ガス及び尿素の混合物が排気ガス内に導入される前に、排気ガス流が反応器の両側の2つのフローダクトを通過するコンパクトSCRシステムの実施形態の三次元概略図である。
図3】触媒を通過することに先立って、アンモニア導入前の排気ガスの移動時間が、流れ平行バッフル(flow−parallel baffle)を通して増大するフローダクトの実施形態の概略図である。
図4】触媒の上流で比較的均質な運動量分布を可能にする、コンパクトSCRシステムの背面にある1つの角度付けられたフロープレートの実施形態の概略図である。
図5】触媒を通過することに先立って、洗浄された排気ガスの一部が尿素と混合され、次いで、排気ガス内に再導入されるコンパクトSCRシステムの実施形態の側面図である。
図6】尿素気化チューブが、図2で示されたチューブの長さの約2倍の長さを有する、気化器モジュールの実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、尿素を活性成分(アンモニアを含む)に分解するために熱処理された排気ガスの流れが用いられる、Noの還元のためのコンパクト選択的触媒還元システム(SCR)に関する。SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備えるコンパクトシステムが説明されている。SCR反応器は、少なくとも1つのSCR触媒を備え、吸気流システム及び気化器モジュールと連通している。吸気流システムは、SCR反応器の少なくとも4つの面に隣接するように配置され、触媒を通して排気ガスのほぼ均一な流れをもたらし、気化器モジュールに熱を供給するように構成される。気化器モジュールは、尿素からアンモニアへの転換を可能にし、次いで、アンモニアをSCR反応器内の排気ガスと接触させるように構成される。コンパクトシステムの構成によって、還元剤を主な排気流内に注入する前に還元剤の前駆体を活性還元剤に分解することが可能となり、結果として、500から4500キロワット(kW)エンジンと使用される最新技術エンジンに比べて、混合に必要とされる距離がより短くなり、システムがよりコンパクトとなる。
【0012】
本発明は、SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備えるSCRシステムを提供する。好適な形態で説明される実施形態が幾つかある。吸気流システムは、SCR反応器の少なくとも4つの側面に隣接するように配置され、触媒を通して排気ガスのほぼ均一な流れをもたらし、気化器モジュールに熱を供給するように構成される。気化器モジュールは、尿素からアンモニアへの転換を可能にし、SCR触媒の上流でアンモニアを排気ガスと接触させるように構成される。このシステムの構成により、似たような設置面積を有する500から4500キロワット(kW)エンジンと使用される最新技術システムに比べて、システム内における還元剤前駆体のより長い分解時間が可能となる。
【0013】
このシステムは、ガス中のNOのレベルを還元するために排気ガス内に存在する化合物と反応し得る、反応物質、好ましくはアンモニアを提供する。一実施形態では、反応物質は、アンモニアを形成することができる化合物(尿素など)を気相内の反応物質に転換し、反応物質含有ガスをNo含有排気ガスと組み合わせ、次いで、組み合わされたガスをSCR反応器内のSCR触媒を通過させることによって形成される。尿素をアンモニアに転換するためには、尿素の水溶液を高温ガスの流れの中に注入する。水と尿素の両方が、揮発し、蒸気として高温ガスの中に存在するようになる。このシステムは、尿素又はアンモニア前駆体の導入を制御する手段を提供する。尿素溶液の気化に使用される高温の洗浄されたガスは、アンモニアと排気ガスの混合物がSCR触媒を通過した後に形成された洗浄されたガスから得られる。気化器モジュール内への熱伝達を介した、洗浄されたガス及び生のガスからの熱は、水と尿素の両方を気化し、尿素をアンモニアに転換する。「生(raw)の」排気ガスという表現は、処理される前の排気ガスを説明することを意図している。「清浄な」排気ガスという表現は、還元剤の存在の下でSCR触媒を通過した後の排気ガスを説明することを意図している。気化器モジュールは、SCR反応器を出る清浄な排気ガスの一部を除去する手段、圧力下で清浄な排気ガスの一部を収集する手段、加圧された清浄な排気ガスを気化チューブ内に供給する手段、及び尿素又はアンモニア前駆体を気化チューブ内の清浄な排気ガス内に注入する手段を備え得る。清浄なガスの質量流量及び温度、並びに高温ガス流内の尿素又はアンモニア前駆体の滞留時間は、水の完全な蒸発、並びに尿素又はアンモニア前駆体の熱分解を達成するのに十分である。気化器モジュールは、尿素水溶液を注入し得る。アンモニアは、フローダクトと、反応器への通路との両方に導入され得る。
【0014】
本明細書に記載されている装置及びプロセスは、尿素を用いた場合に効果的であるが、熱した後に反応ガスを形成し得るアンモニア形成剤(ammonia forming reagent)又はその他のNOx還元剤のいずれかを利用してもよい。生じる反応は当該技術でよく知られているものである。これらの反応の概要は、米国特許文献番号8、105、560号及び7、264、785号に記載されており、その全体が参照により組み込まれている。
【0015】
「尿素」という用語は、尿素(CO((NH))及び尿素に等しい反応剤を含むことを意味する。なぜなら、これらは、熱したときにアンモニア及びHNCOを形成するからである。当該技術で知られているその他のNO還元剤も使用してもよい。別の実施形態では、尿素又はHNCOを形成しないが、NOのレベルを還元するように排気ガス内に存在する化合物と反応するNO還元剤を使用してもよい。
【0016】
導入される尿素溶液の量は、NOの質量流量と溶液内の尿素の濃度の両方に左右される。導入される尿素の量は、関与する反応の化学量論に基づくNO濃度、生の排気ガスの温度、及び使用される触媒に関連する。使用される尿素の量は、「NSR」に関連する。NSRとは、処理されるガス内のNO内の窒素の等価物に対する尿素又は他のNO還元剤内の窒素の関連等価物のことを指す。NSRは、約0.1から約2の範囲内であってもよいが、好ましくは、0.6から1.2の範囲内である。
【0017】
本明細書に記載されているコンパクトSCRシステムで使用されるSCR触媒は、アンモニアの存在の下で窒素酸化物の濃度を還元させることができる、当該技術で知られているものから選択され得る。これは、例えば、ゼオライト; パナジウム、タングステン、チタン、銅、マンガン、及びクロムの酸化物; 白金族金属のプラチナ、パラジウム、ロジウム、及びイリジウムなどの貴金属、及びそれらの混合物を含む。活性炭、木炭、又はコークスなど、当該技術で従来使用され、熟練した職人に良く知られている他のSCR触媒材料も利用してもよい。好適な触媒は、遷移金属/ゼオライト(例えば、Cu/ZSM−5又はFe/Beta)、V/WO/TiOなどのバナジア系触媒、又はFe/WO/ZrOなどの非ゼオライト遷移金属触媒(non−zeolite transition metal catalyst)を含む。
【0018】
これらのSCR触媒は、金属、セラミック、ゼオライトなどの支持体に典型的に据え付けられるか、或いは、均質なモノリスとして押出成形される。当該技術で知られているその他の支持体も使用してもよい。触媒は、フロースルーモノリス基材、フィルター基材上に被覆されるか、押出成形されることが好ましい。最も好ましくは、触媒は、フロースルーモノリス基材上に被覆されるか、或いは、押出成形される。これらの触媒は、ハニカムフロースルー支持体の中又はその上に存在することが好ましい。小さな体積のSCRシステムにおいては、例えば、平方インチあたり45から400セル(cpsi)、より好ましくは、70から300cpsi、更により好ましくは、100から300cpsiの比較的高いセル密度を有するSCR触媒が好ましい。
【0019】
本発明は、以下の記載のうちの1つ又は複数に従って、更に規定することができる。
【0020】
1.SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備える選択的触媒還元(SCR)システムであって、
a.SCR反応器が、少なくとも1つのSCR触媒を備え、且つ吸気流システム及び気化器モジュールと連通しており、
b.吸気流システムが、エンジンからの排気ガスのための1つ又は複数の入口を備え、入口が、SCR反応器の周囲に配置された少なくとも1つのフローダクトを通して、ガスの流れを分配するように構成され、SCRの周囲のフローダクトを通る排気ガスの流れが、気化器モジュールに熱を供給し、アンモニアに転換される尿素又はアンモニア前駆体が、SCR反応器内に導入される前に気化器モジュール内に導入され、SCR反応器の断面全体にわたってほぼ均一なガス速度及び濃度プロファイルをもたらすため、アンモニア含有ガス流を導入した後、且つ複数のバッフルプレートを通過した後、それぞれのフローダクト内のガスの流れが、SCR反応器内に導入され、
c.気化器モジュールが、加熱された予備反応器内に尿素又はアンモニア前駆体を導入する手段を備え、加熱された予備反応器内では、排気ガス流をSCR反応器に導入する前に、尿素又はアンモニア前駆体が、少なくとも部分的に分解され、続いて排気ガス流内に供給される、選択的触媒還元(SCR)システム。
【0021】
2.加熱された予備反応器が、洗浄された排気ガスの流れによって加熱される、条項1に記載のシステム。
【0022】
3.少なくとも1つのフローダクトとSCR反応器部との間の接続通路内で対角線上に据え付けられた固定板を更に備える、条項1に記載のシステム。
【0023】
4.触媒の断面全体にわたってほぼ均一な濃度のアンモニアをもたらすように構成される、条項1に記載のシステム。
【0024】
5.ガスの吸気流が、2つ以上のフローダクト内へと分離される、条項1に記載のシステム。
【0025】
6. 各フローダクト内のガスの流れがほぼ等しい、条項5に記載のシステム。
【0026】
7.燃焼器の運転条件に起因する圧力及び/又は温度の変動が、2つの吸気ダクトの間で最小化される、条項1に記載のシステム。
【0027】
8.SCRシステムが、約2の長さ対高さ比を有する、条項1に記載のシステム。
【0028】
9.フローダクトのうちの少なくとも1つが、SCR反応器の第1の側面上に配置され、異なるフローダクトのうちの少なくとも1つが、SCR反応器の反対側上に配置される、条項1に記載のシステム。
【0029】
10.バッフルプレートが、触媒の上流の排気ガスの均一な運動量分布をもたらすように、且つアンモニアを添加する前に排気ガスの移動時間を増加させるように配置且つ配向される、条項1に記載のシステム。
【0030】
11.尿素又はアンモニア前駆体の導入を制御する手段を更に備える、条項1に記載のシステム。
【0031】
12.尿素又はアンモニア前駆体の導入を制御する手段がNOセンサを備える、条項11に記載のシステム。
【0032】
13.反応器の幅が、反応器の高さよりも大きいか、又は反応器の高さと等しい、条項1に記載のシステム。
【0033】
14.フローダクトが、長方形、四角形、円形、又は半円形である、条項1に記載のシステム。
【0034】
15.長方形のフローダクトが、長方形の断面を有し、フローダクトの長さが、ほぼSCR反応器の長さである、条項1に記載のシステム。
【0035】
16.各長方形フローダクトの長さに対して、各長方形フローダクトの幅と高さが、それぞれ、約8分の1以下及び2分の1である、条項15に記載のシステム。
【0036】
17.水平バッフルプレートが使用された場合、各長方形フローダクトの長さに対して、各長方形フローダクトの幅と高さが、それぞれ、約6分の1以下及び6分の1である、条項15に記載のシステム。
【0037】
18.少なくとも1つのSCR触媒が、モノリスを通るガス流の正味方向において、三角形、長方形、又は円形の形状を有するモノリスの形態にある、条項1に記載のシステム。
【0038】
19.SCR反応器が、モノリスの形態で少なくとも1つのSCR触媒を備える、条項1に記載のシステム。
【0039】
20.気化器モジュールが、SCR反応器を出る清浄な排気ガスの一部を除去する手段、圧力下で清浄な排気ガスの一部を収集する手段、加圧された清浄な排気ガスを気化チューブ内に供給する手段、及び尿素又はアンモニア前駆体を気化チューブ内の清浄な排気ガス内に注入する手段を備える、条項1に記載のシステム。
【0040】
21.SCR反応器を出る清浄な排気ガスの一部を除去する手段、及び圧力下で清浄な排気ガスの一部を収集する手段が、熱気体圧縮機又はエンジンからの機械的エネルギーを利用する手段である、条項20に記載のシステム。
【0041】
22.清浄なガスの質量流量及び温度、並びに高温ガス流内の尿素又はアンモニア前駆体の滞留時間が、水の完全な蒸発、並びに尿素又はアンモニア前駆体の熱分解を達成するのに十分である、条項20に記載のシステム。
【0042】
23.気化チューブ内のガス速度が、毎秒約10メートルである、条項20に記載のシステム。
【0043】
24.除去された清浄なガスの質量流量が、排気の質量流量の総量の約10%未満である、条項20に記載のシステム。
【0044】
25.気化チューブが、反応器の長さとほぼ同じ長さを有する、条項20に記載のシステム。
【0045】
26.気化チューブが、フローダクトのうちの少なくとも1つの中に配置される、条項20に記載のシステム。
【0046】
27.清浄なガスの質量流量を約半分に分割する手段、及び気化チューブ内に旋回流をつくるため、気化チューブ内に清浄なガスをオフセットさせて供給する手段を更に備える、条項20に記載のシステム。
【0047】
28.尿素水溶液が注入される、条項20に記載のシステム。
【0048】
29.アンモニアが、次いでフローダクト/反応器通路の両方の中に導入される、条項20に記載のシステム。
【0049】
30.排気流内へのアンモニア含有清浄ガスの分配が、フローダクトと反応器の間の各通路の真ん中に配置されたデバイスを使用して、均一な態様でもたらされ、デバイス/チューブが、開口を含み、それにより、通路のそれぞれの上の長方形の流通路にわたってほぼ同じ流れが生じる、条項20に記載のシステム。
【0050】
31.エンジンからの排気内で形成された窒素酸化物の量を還元させる方法であって、エンジンからの排気ガスを、条項1に記載のSCRシステムを通過させることを含む、方法。
【0051】
図1は、エンジンからの排気ガスが吸気流システム内で2つの流れに分配されるSCRシステムの実施形態の概略図である。別の実施形態では、エンジンからの排気ガスは、吸気流システムの内部で単一の流れに維持され得る。他の実施形態では、エンジンからの排気ガスは、吸気流システム内で3つ以上の流れに分配される。吸気システム内の流れの数は、SCRシステムに対して利用可能な空間、並びに排気ガスの温度及び質量流量を含む幾つかの要因に左右される。一実施形態では、コンパクトSCRシステムは、約500kWと約1000kW(1MW)の間、又は1000kW(1MW)から約2000kW(2MW)の間、又は約2000kW(2MW)から約4500kW(4.5MW)の間を生成するエンジンから排気ガスを受ける。エンジンの排気ガスは、入口1を通してSCRシステム内に流れ込む。入口1は、1つのシリンダバンクを有するエンジン用の単一入口フランジ、又は、複数(例えば、2つ)のシリンダバンクを有するエンジン(Vの各バンク上にターボチャージャーを備えるV型エンジン)用の2つ以上の入口であってもよい。典型的に、且つ好適な流れパターンのために、チューブ/フランジのような、システムに通じる円形の入口が使用されるが、四角形、長方形、三角形、又は楕円形のような他の形状も更に使用してもよい。入口1を通してシステムに流入した後、ガスの流れは、図1の例示的実施形態において番号11と12で示されているように、リアクタ部3の周囲の、1つ又は複数の、好ましくは2つのフローダクトに分配される。フローダクトは、長方形、四角、円形、又は半円形の断面を有し得る。一実施形態では、システムは、長方形の断面を有する2つのフローダクトを備え、各フローダクトの高さは、フローダクトの長さの半分ほどである(図2参照)。燃料効率の増大は、より大きな断面領域を使用することにより実現することができる。より大きな断面領域は、一定のダクト断面で1つ又は複数のフローダクトを用いて達成することができ、結果として圧力損失(損失水頭)が低くなる。2つ以上の吸気が使用された場合、シリンダバンク間の温度や圧力などの変動が均等化される。一実施形態では、フローダクトは長方形断面を有し、フローダクトの長さは、ほぼSCR反応器の長さである。各長方形フローダクトの長さに対して、各フローダクトの幅と高さは、それぞれ、約8分の1以下及び2分の1であリ得る。
【0052】
一実施形態では、複数のフローダクトが存在し、各ダクト内のガス流はほぼ等しい。ほぼ等しいといった場合、例えば、2つのフローダクトを有するシステムでは、質量流量の割合が、約50:50から約65:35、好ましくは約50:50から約60:40、且つより好ましくは約50:50から約55:45の範囲内であることを意味する。SCR反応器内の触媒の断面全体にわたって、均一な濃度のアンモニア又は他の還元剤をもたらすためには、複数のフローダクトにおける質量流量の割合を調整するべきである。複数の排気流を有する実施形態では、システムは、入口31からSCR反応器部3への、圧力や温度などの流れの間の差異を均等化する。図面では、フローダクトがSCR反応器の側面周囲に配置された実施形態が示されている。他の実施形態では、フローダクトは、反応器の上でも下でもよい。他の実施形態では、フローダクトは、1つ又は複数の側面周囲に配置されてもよく、且つSCR反応器の上又は下に配置されてもよい。
【0053】
一実施形態では、各フローダクト11及び12は、バッフル21が取り付けられ(図2を参照)、それにより、流れの中のガス流の局所速度が増大する。これにより、流れがより乱れるようになり、排気ガスと、蒸発した尿素又は他の還元剤との混合が改善される。幾つかの実施形態では、バッフルは、アンモニアの導入前の排気ガスの移動時間を増大させることができる。バッフルのサイズ及び位置は、エンジンによって生成された排気ガスの量、その温度など幾つかの要因に左右される。気化チューブは、フローダクトのうちの少なくとも1つの中に配置され得る。各フローダクト11、12の端部には、ガスの流れを均等化するために多孔プレート22が位置付けされてもよい。プレートのサイズ及び位置、並びに孔の数、サイズ、及び位置は、エンジンによって生成された排気ガスの量、許容背圧力、温度などの幾つかの要因によって変動し得る。排気流内へのアンモニア含有清浄ガスの分配は、フローダクトと反応器の間の各通路の真ん中に配置されたデバイスを使用して、均一な態様でもたらされ、デバイス/チューブは、開口を含み、それにより、通路のそれぞれの上の長方形の流通路にわたってほぼ同じ流れが生じる。別の実施形態では、特にエンジンに対してより高い背圧力が許容されるとき、図3で示されているように、排気流を後方、前方、再度後方へと仕向けることにより、フローダクト内の排気流の滞留時間を更に増大させることができる。一般的に、排気流の移動時間の増大は、以下で説明されているNOセンサ、電気制御ユニット、及び気化器モジュールによって投与される還元剤の量を制御するために必要である。更に、この実施形態の高ガス速度により、乱れのレベルが高くなるため、生の排気とアンモニアの混合が改善される。水平バッフルが使用され、且つフローダクトが長方形の形状を有する場合、各長方形フローダクトの長さに対して、各フローダクトの幅と高さは、それぞれ、約6分の1以下及び6分の1であリ得る。
【0054】
各フローダクト11及び12の流れの方向は、90度転回し、2つのフローダクト11及び12の間の接続通路31内で対角線上に配置された角度付けられたフロープレート23に向けて方向付けられ、それにより、触媒の上流で均一な運動量分布が達成される。図4は、コンパクトSCRシステムの背面を通る切断部を表す、この角度付けられたフロープレート23の一実施形態の概略図を示す。図4は、図1で示されるように接続通路31の断面を示す。接続通路31(図1及び4を参照)では、排気ガスは、以下で説明されるように、還元剤を含む高温ガスと混合される。角度付けられたプレートの位置及び配向によって、SCR反応器3の断面にわたってほぼ均一なガスの流れがもたらされる。SCR反応器内の触媒にわたって排気流が均一であることにより、結果として、触媒が均一に利用され、最大限のNO転換がもたらされる。SCR反応器は、反応器の高さよりも大きな幅又は反応器の高さと等しい幅を有してもよい。
【0055】
SCR触媒ブリックは、SCR反応器部3の中央に配置される。これらの触媒ブリックは、図1及び2では示されていない。SCR触媒ブリックは、ガスの流れの方向に対して垂直な、幾つかの断面形状(四角形、長方形、六角形、及び円形を含む)のいずれかを有してもよく、断面領域の利用度を高めるため、四角形又は長方形が好まれる。一実施形態では、SCR触媒ブリックは、四角形であり、約150×150mmの断面を有する。
【0056】
排気ガスは、次いで、接続通路31から反応器3内のSCR触媒ブリック(図示せず)へと通過する。ここでは、排気ガス内のNOの量が減少するように、選択的触媒還元反応において、触媒表面上でNOが還元剤と反応する。SCR反応が、NOレベルの還元に効果的であるためには、ガス化された尿素を含む燃焼ガスの温度は、少なくとも約100℃、典型的に約180℃から約600℃、好ましくは少なくとも約250℃を越えなくてはならない。窒素酸化物を窒素に触媒還元する選択的還元をもたらすため、SCR反応器内で使用される触媒の組成、形態、及び特に体積は、SCR反応器内のガスの温度及び質量流量、並びにNO負荷及び炭化水素、硫黄のような他の排気ガス成分に基づいて選択されてもよい。
【0057】
SCR触媒を通過した排気ガスは、洗浄されたと規定されるか、又は清浄な排気ガスであるとみなされる。次いで、清浄な排気ガスは、排気フランジ4(図1及び2を参照)を通してコンパクトSCRシステムから離れる。清浄な排気ガスの一部は、図1で示されるように、洗浄された排気ガス流の主流から分離される。洗浄された排気ガス流の主流から分離された清浄な排気ガスの量は、排気ガスの温度、流量、及びNO負荷を含む様々な要因に左右される。分離された清浄な排気ガスの部分は、吸気フランジ1を通して流入する生の排気ガスの総量に基づいて、約1から30%、好ましくは5から15%、より好ましくは約7から10%の範囲であり得る。一実施形態では、清浄な排気ガスの一部は、排気フランジの下流に配置されたチューブ内で分離される。別の実施形態では、清浄な排気ガスの一部は、排気フランジ4の上流に配置されたチューブ内で分離される。図5は、尿素の気化器モジュールの好適な実施形態を示す。除去された洗浄された排気ガスの一部は、接続部、好ましくはパイプ51を通して、尿素の気化器モジュール内の注入ヘッド53に移送される。一実施形態では、パイプ51に接続された熱気体圧縮機52が、洗浄された排気ガスを気化器モジュール内の注入ヘッド53に移送するために使用される。冷たい新鮮な空気を更に入れることによって、ガス密度の増大に起因する熱気体圧縮機のエネルギー需要を減少させることができる。別の実施形態では、例えば、ターボチャージャー或いは熱気体圧縮機とターボチャージャーの組み合わせによって、コンパクトSCRシステムの上流又は下流の排気ガス流から供給される機械的エネルギーは、洗浄された高温ガスを圧縮し、注入ヘッド53へと移送するために使用され得る。別の実施形態では、エンジン軸などの機械的エネルギーを利用する手段を使用してもよい。
【0058】
注入ヘッド53への洗浄された排気ガスの流れは、複数の副流に分けられる。図5は、2つの副流(511、512)に分けられた清浄なガスの流れを示す。それぞれの副流は、気化器モジュールの尿素気化チューブ5内の注入ヘッド53内に供給される。好適な実施形態では、副流は、注入ヘッド53の周囲に導入され、尿素気化チューブ5内で高温ガスの旋回を引き起すために接線方向にオフセットされる。図2及び図5で示される分配チューブ5は、コンパクトSCR反応器システムの長さにほぼ等しい長さを有する。他の実施形態では、分配チューブの長さは、SCR反応器の大体の長さのわずかな部分(好ましくは1よりも大きい)である。図6は、尿素気化チューブが、SCRシステムの長さの約2倍の長さを有する、気化器モジュールの実施形態の上面図を示す。
【0059】
気化チューブ5内の高温の清浄なガスの流れは、約100ミリ秒の滞留時間を達成するため、毎秒2から20メートル、好ましくは毎秒約10メートルの速度を有し得る。当業者であれば、気化チューブ5内のガスの滞留時間及び温度の両方が、溶液の揮発及び尿素からアンモニアへの転換を確実に行う上で重要な要素であると認識するであろう。これらの要素に基づいて、燃焼器の運転条件及び転換要件に特有である、尿素からアンモニアへの必要な転換をもたらすため、蒸気の滞留時間が調整され得る。除去された清浄なガスの質量流量は、排気の質量流量の総量の約10%未満であってもよい。尿素の水溶液が、注入ヘッド53内のノズル56の中に注ぎ込まれ、小滴として、ノズル56から尿素気化チューブ5内へと解放される。尿素の水溶液は、沈殿又は他の問題がない、貯蔵や取扱いに適切な濃度で維持される。水溶液内の尿素の濃度は、約5から55%、好ましくは約15から約45%、より好ましくは約30から約40%の範囲であり得る。尿素気化チューブ5の中では、水と尿素が気化され、尿素がアンモニアに分解される。気化チューブ内の水/尿素/アンモニアの滞留時間は、約50から200ミリ秒、好ましくは、約100ミリ秒に設定される。アンモニア含有ガスが、アンモニア分配チューブ54及び55内に供給される(図2参照)。分配チューブ内の温度は、少なくとも約150℃、好ましくは少なくとも200℃の温度で維持されるべきである。好適な温度範囲は、約300℃から約450℃である。清浄なガスの使用により、尿素気化チューブ5並びにアンモニア分配チューブ54及び55の中のアンモニア又は別の還元剤を有するガスの速度を制御及び/又は調整する手段がもたらされ、尿素分解生成物と炭化水素、硫黄などのような生の排気成分との副反応が最小限に抑えられ、その結果、尿素水蒸発/分解の時間の制御、並びに最低限のアンモニアスリップで最大限のNO還元を達成する可能性がもたらされる。
【0060】
アンモニア分配チューブは、アンモニアー排気ガス流を形成するためにアンモニア含有ガスをフローダクト11及び12からの排気ガス流と組み合わせる手段を備える。一実施形態では、アンモニア含有ガスを排気ガス流と組み合わせる手段は、フローダクト11及び12からのガスの流れがアンモニア含有ガスと組み合わさることができる領域において、アンモニア分配チューブ54及び55の少なくとも一部に沿って離間される複数の出口を備える。好適な実施形態では、アンモニア分配チューブ54及び55は、それぞれ、
チューブ54内の開口部がチューブ55に向けて方向付けられ、チューブ55内の開口部がチューブ54に向けて方向付けられるように配向される複数の孔又は開口部を含む。開口部の数、サイズ、位置、及び配向は、排気の流量及びコンパクトSCRシステムの構成によって変動し得る。開口部は、ほぼ同じ質量流量が流れの両方の側で生じるように、設計される。これは、気化チューブ5の圧力損失の関数である。熱気体圧縮機又はターボチャージャーなどによってもたらされた微妙な超過圧力を使用することによって、反応物質を含有する高温ガスの流れを制御することが可能となる。フローダクトが1つしかない一実施形態では、1つのアンモニア分配チューブで十分である。十分に分配されたアンモニアー排気ガス流は、次いでSCR反応器部3に流れ込み、SCR触媒を通過し、洗浄された排気ガスに転換される。好適な実施形態では、コンパクトSCRシステムは、従来のSCRプロセスでよく使用される又は必要とされるアンモニア注入グリッド(AIG)を使用しない。一実施形態では、新鮮な空気の送風機が、尿素注入点の前又は後ろに配置され、それにより、十分な圧力が供給され、側流が主流に導入される。
【0061】
一実施形態では、コンパクトSCRシステムは、触媒を交換するためにSCR反応器にアクセスする手段を更に備える。好適な実施形態では、この手段は、反応器の上面又は側面に配置された扉である。
【0062】
一実施形態では、コンパクトSCRシステムは、1つ又は複数のNOセンサ及び/又はアンモニア(NH)センサを更に備える。NO及び/又はNHセンサは、気化器モジュール、それから排気ガスの中に移送される尿素及び清浄なガスの量を制御するユニットに連結される。一実施形態では、NOセンサは、フローダクト上の排気ガス入口に配置される。別の実施形態では、SCR触媒の下流に配置されたNO又はNHセンサは、閉ループ制御のために使用され得る。別の実施形態では、下流のNOセンサは、熱気体圧縮機から気化チューブへと供給される清浄なガス流の中に配置される。更に別の実施形態では、該システムは、フローダクトの入口上流においてNOセンサを更に備える。更に別の実施形態では、該システムは、例えば、負荷が変更された場合、タイムリーな注入が確実に行なわれるように、清浄なガス/アンモニア混合物を導入する前の、システム内の生の排気ガスの移動時間を設ける。すなわち、電気制御ユニットは、投与される尿素の必要量を計算且つ供給するために十分な時間を有する(換言すれば、(NOセンサの時間+電子処理時間+チューブ5の中の尿素滞留時間)=(NOセンサからアンモニア分配チューブに至るまでに排気ガスが必要とする時間)である)。
【0063】
好適な実施形態では、コンパクトSCRシステムは、500から4500kWの電力を有するシングル又はダブルのシリンダバンク(例えば、Vシリンダ)のエンジンからの排気ガスを通過させるための1つ又は2つの吸気フランジを備える。好適な実施形態では、フランジは円形である。
【0064】
好適な実施形態では、該システムは、(図1で示されるように)反応器の各側面に位置付けされた2つのフローダクト、反応器とほぼ同じ長さの気化チューブ、両方のチューブを通して似たような流れを達成するために水圧で最適化された孔を有する2つのアンモニア分配チューブ、及び(図4で示されるように)角度付けられたフロープレートを有し、排気ガス流は、プレートに沿って流れる(逆に、すなわち、上部左から下部右にかけて角度付けられたフロープレートに相対して流れる。この場合、フローダクトはリアクタ部3内へと出る。)これらの実施形態で使用される触媒は、使用される燃料の性質及び燃料の中の不純物のレベルを含む幾つかの要因によって、セル密度において大きく変動し得る。
【0065】
一実施形態では、SCRシステムは、SCR活性を減少させ得る炭化水素を還元するため、各フローダクト内の尿素注入口の上流に配置された酸化触媒を更に備える。酸化触媒は、更にCO、芳香族化合物などを酸化する。
【0066】
更なる態様によると、本発明は、SCR反応器、吸気流システム、及び気化器モジュールを備えるSCRシステムを通してエンジンからの排気ガスを通過させることを含む、エンジンからの排気ガス内で形成された窒素酸化物の量を還元させる方法であって、
a.SCR反応器が、少なくとも1つのSCR触媒を備え、且つ吸気流システム及び気化器モジュールと連通しており、
b.吸気流システムが、エンジンからの排気ガスのための1つ又は複数の入口を備え、入口が、SCR反応器の周囲に配置された少なくとも1つのフローダクトを通して、ガスの流れを分配するように構成され、SCRの周囲のフローダクトを通る排気ガスの流れが、気化器モジュールに熱を供給し、アンモニアに転換される尿素又はアンモニア前駆体が、SCR反応器内に導入される前に気化器モジュール内に導入され、SCR反応器の断面全体にわたってほぼ均一なガス速度及び濃度プロファイルをもたらすため、アンモニア含有ガス流を導入した後、且つ複数のバッフルを通過した後、それぞれのフローダクト内のガスの流れが、SCR反応器内に導入され、
c.気化器モジュールが、モジュールの加熱された部分の中に尿素又はアンモニア前駆体を導入する手段を備え、加熱された部分の中では、排気ガス流をSCR反応器に導入する前に、尿素又はアンモニア前駆体が、少なくとも部分的に分解され、続いて排気ガス流内に供給される、方法を提供する。
【0067】
以上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にすることを意図している。説明を読めば技能者に明らかになるすべての可能な修正例及び変形例を詳細に記載することを意図していない。しかしながら、上記の説明で確認され、さもなければ以下の特許請求の範囲で規定されているこのようなすべての修正例及び変形例は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】