特表2017-506305(P2017-506305A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-506305錘キャリッジの軌道運動を利用した波力エネルギー変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-506305(P2017-506305A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】錘キャリッジの軌道運動を利用した波力エネルギー変換装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20170210BHJP
   F03G 7/08 20060101ALI20170210BHJP
   F03G 3/00 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   F03B13/16
   F03G7/08 Z
   F03G3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-552311(P2016-552311)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月20日
(86)【国際出願番号】FR2015000023
(87)【国際公開番号】WO2015121551
(87)【国際公開日】20150820
(31)【優先権主張番号】14/00383
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516242208
【氏名又は名称】フェリクス・エレファン
(71)【出願人】
【識別番号】516242219
【氏名又は名称】アレクサンドル・エレファン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・エレファン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・エレファン
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB11
3H074BB15
3H074CC04
3H074CC50
(57)【要約】
本発明は、波力エネルギー変換モジュールに関するものであって、船体(1)を備えた浮遊物体として構成され、船体の縦揺れ運動が偏心質量へと伝達されて、偏心質量が中心軸線(3)まわりに回転し得るものとされ、このような波力エネルギー変換モジュールにおいて、縦揺れ運動が、船体(1)の形状によって励起され、および、動的に調節可能とされた可動バラストによって励起され、偏心質量が、摩擦および負荷を制限するローラによって一組をなす複数の円形レール(6)に沿った軌道を描く自律的なキャリッジ(5)の態様とされ、キャリッジ(5)上に取り付けられた発電機(8)が、ギヤラック(9)に対して噛合している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波力エネルギー変換モジュールであって、
偏心質量の軌道運動を利用したものであり、
前記偏心質量が、浮遊型の収容ボディ内に全体的に収容され、
このような波力エネルギー変換モジュールが、
−矩形の浮遊物体の形状とされた船体(1)と、
−メンテナンス操作のためのホストプラットホームとして装着された蓋(2)と、
−一組をなす複数の円形レール(6)によって案内された軌道に沿って移動する錘キャリッジ(5)と、
−前記キャリッジ(5)上に取り付けられた発電機(8)であるとともに、前記レール(6)に対して同軸的とされた一組をなす複数のギヤラック(9)に沿って1つまたは複数のピニオン(27)によって駆動される、発電機(8)と、
を具備している、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記船体(1)の底面が、縦揺れ運動に適したものとして構成され、
前記船体(1)の前記底面が、縦揺れ運動に適するように、
−隆起した船首(11)と、
−船尾(12)の近傍に設けられたバルジ(13)と、
−一組をなす複数の平行フィン(15)と、
−縦揺れ運動軸線に沿って配置されたアンカー止めポイントと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)が、
−サスペンション(18)上に取り付けられたベアリング(17)によって保持された円錐台形状の支持ローラ(7)と、
−サスペンション(26)上に取り付けられたベアリング(24)によって保持された径方向に押圧される円筒形ローラ(22)と、
によって、スライドすることなく、このキャリッジの経路上に維持されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記発電機(8)が、スリップリングまたはカテナリーという態様のスライドコンタクト(28)を介して、整流器に対して、接続されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項5】
請求項4記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記発電機(8)が、サスペンションを介して取り付けられ、
前記発電機(8)には、一組をなす複数のアイドラーホイール(30)が設けられ、
これらアイドラーホイール(30)が、係止体として機能し、これにより、前記一組をなす複数のギヤラック(9)上への、前記発電機(8)のシャフトの径方向圧力が制限される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記軌道上における前記キャリッジ(5)の移動が、制御システムによって制御され、
前記制御システムが、少なくとも、
−前記モジュールの傾斜を測定するためのセンサと、
−少なくとも1サイクルの後に、前記キャリッジ(5)の位置を測定するためのセンサと、
−入力波の周波数を測定するためのセンサと、
−前記発電機(8)を制御するための電子回路と、
−前記キャリッジ(5)を全体的に停止させ得るブレーキデバイスと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)の重心(26)の偏心度合いが、互いの相対位置が調節可能とされた複数の角度セクター(36)という態様でもって前記キャリッジ(5)の質量を分散させることにより、連続的に調節可能とされている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記ギヤラック(9)の少なくとも1つが、当該ギヤラック(9)の歯(31)に対して噛合している高さ部分において噛合する円錐台形状のピニオン(27)のおかげで、連続的に可変のピッチを有し、
前記歯(31)どうしの間の間隔が、前記発電機(8)の前記軌道に沿って変化し、
前記ピニオン(27)の見かけの直径が大きくなればなるほど、前記歯(31)どうしが、より大きく離間される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
縦揺れ運動を増大させるデバイスを具備し、
縦揺れ運動を増大させるために、流体質量という態様の振動バラスト(4)が設けられ、
この振動バラスト(4)が、この振動バラスト(4)の重量の移動に基づき、一組をなす複数の長手方向ダクト(32)内において移動する、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項10】
請求項9記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記振動バラスト(4)を動的に調節するための調節システムを具備し、
この調節システムが、
−互いに個別とされた複数の長手方向隔室内においてグループ分けされた複数のダクト(32)であるとともに、前記船体(1)の中央軸線に対しての対称的な充填を可能とする、複数のダクト(32)と、
−同じ隔室内における一様な充填レベルを可能とする一組をなす複数の開口(37)および一組をなす複数のパイプ(35)と、
−1つの隔室から他の隔室への前記バラスト(4)の移動を可能とするサーボポンプと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
同一の前記ボディ内において、それぞれ対応するレール(6)上に設置された二組をなすキャリッジ(5)が設けられ、
これらキャリッジ(5)が、互いに逆向きに回転するものとされ、
これにより、横揺れ運動が制限されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
互いに同様の複数のモジュールを組み合わせることにより、ネットワークとして設けられたファームが形成され、
これにより、特に、位置を維持するための手段と、電流の整流および送電のための手段と、が共有されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在まで、様々な波力エネルギーシステムが考案されて開発されてきた。しかしながら、期待される性能に見合った実用的応用には至っていない。
【0002】
既存の発明の様々な分類どうしを比較することにより、機能的なおよび経済的な開発可能性の観点から最も有用な特徴点を識別することができ、それぞれの限界を分析することができる。これにより、波力エネルギーを電力へと効率的に変換するのに必要な実施や操作に関する実用的条件を満たす新たなデバイスを開発することができる。
【0003】
よって、単一の浮遊ボディ内にデバイスの全体を包含させるという原理によって、海底基礎の問題点を回避することができ、さらに、外部構成部材を有していないことによって、システムの頑丈さが保証されるとともに海洋環境への適合が保証されることが、見出された。
【0004】
その他にも、油圧伝達構成部材を設けることなく、直接的な電気機械的変換というある種の態様とすることにより、単純な実施態様および単純な操作によって、固体の移動を利用することができる。
【背景技術】
【0005】
このような変換方法を全体的にあるいは部分的に使用した特許文献について、以下のものに言及することができる。
−特許文献1:波と一緒に縦揺れする浮遊物体であるとともに、その縦揺れを偏心ドライブへと伝達して、水平方向平面内において振り子式に振動させる。
−特許文献2,3:1つまたは複数の偏心物体であるとともに、波の振動の結果として、水平方向平面内において、全回転を行い、逆回り回転を行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 3,231,749(1966年 1月25日付けで公開)
【特許文献2】US 1,584,293(1925年)
【特許文献3】US 4,266,143(1981年 5月 5日付けで公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
操作という観点から、上記のタイプのシステムにおける限界には、主として、以下のようなものがある。
−デバイスを移動状態にセットするに際し、大部分の波の態様を利用することが困難であること。
−発電機のための定常的操作レジームを維持するに際し、波の周波数に対してデバイスを同期させることが困難であること。
−様々な構成部材どうしの間における摩擦のために、損失が発生すること。
これらの限界の合計のために、生産ロジックにおける全体的収率が低下してしまうこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書においては、本発明は、一組をなす複数の解決手法を規定するものであり、とりわけ、波の周波数に対しての電力抽出デバイスの同期を最適化するための様々なフレキシブルさと、小さな摩擦での構成部材の使用と、慣習的なエンジニアリング技術および製造技術の使用と、安価な材料やリサイクル材料の使用と、最小で容易なメンテナンスと、を提供する。
【0009】
本発明の主題をなす波力エネルギー変換器は、実質的に浮遊型の閉塞ボディから構成され、このボディは、波の振動から電力を生成するための電気的機械的変換デバイスを全体的に収容している。
【0010】
船体は、あるいはボディの浸漬部分は、係留される、すなわち、モータ付きデバイスによって所定位置に保持される。一組をなす複数のフィンが設けられ、これにより、波頭に対向した配向性が一定に維持される。船体は、波の上下動に応じて、モジュールの縦揺れ運動に適した格別の形状を有している。説明の簡略化のために、船体のうちの、入力波に対して最初に接触する部分は、本明細書では、モジュールの前方部分と称され、すなわち、船首と称されることに、また、反対側の部分は、モジュールの後方部分と称され、すなわち、船尾と称されることに、注意されたい。
【0011】
ボディの内部においては、偏心質量は、錘キャリッジの態様とされ、一組をなす複数の円形レールに沿って移動することができる。この種の構成により、中央キャリングシャフトを不要とすることができる。これにより、中央の回転軸線上における偏心質量の意義深い曲げモーメントに起因する摩擦を回避することができる。
【0012】
ボディの縦揺れ運動は、レールがなす平面を傾斜させ、これにより、キャリッジの重量の効果のために、キャリッジを移動させてしまう。例えば振り子運動の際に起こるような、軌道上のブレークポイントすなわち反転ポイントの存在に特有の電気的機械的問題点に打ち勝ち得るよう、本発明は、中央軸線まわりにおけるキャリッジの完全な軌道すなわち妨害されていない軌道の利点を有することができる。
【0013】
運動時に偏心質量が獲得する運動エネルギーは、軌道がなす平面を傾斜させることによって波が偏心質量を持ち上げた際の位置エネルギーに依存する。
【0014】
軌道の傾斜の大きさが小さいことのために、摩擦が、ある種の波の高さ以下の場合に乗り越えられなくなり得る主要な制限である。この点に関し、本発明は、キャリッジが移動する際の摩擦損失を低減することを目的とした一組をなす複数の構成を提供する。
【0015】
集積された運動エネルギーは、キャリッジに対して一体化された発電機によって変換される。発電機シャフトは、レールと同軸的な一組をなす複数のギヤラックに対して噛合した1つまたは2つのコグホイールによって、回転駆動される。スライドコンタクトが、発電機を、電気的整流器に対して接続する。これにより、地上の分配ステーションに対してのモジュールの電気的接続は、海洋環境を通しての交流送電に起因するライン損失を回避する。
【0016】
可動バラストも、また、波の上下動によって、駆動される。可動バラストは、入力波の向きにおけるモジュールの傾斜を増大させる。これにより、キャリッジの落下高さを増大させる。
【0017】
この傾斜位置に起因する電力抽出サイクルは、概略的には、以下の4つのフェーズに分解することができる。
−入力波の効果によって傾斜が増大するフェーズにおいて、キャリッジの軌道を、船首の近傍に位置させ、これにより、キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを獲得させるフェーズ。
−モジュールが最大傾斜に到達した後に、キャリッジを下向きに加速させながら、位置エネルギーを運動エネルギーへと変換するフェーズ。このフェーズは、短いものである。なぜなら、最大傾斜が一時的であるからである。
−モジュールが波頭を乗り越えたことのために傾斜が減少するフェーズにおいて、キャリッジの軌道を、船尾の近傍に位置させ、これにより、キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを再び獲得させるフェーズ。
−波が船尾を持ち上げることのために、モジュールが最大傾斜に到達した後に、キャリッジを加速させながら、位置エネルギーを再び運動エネルギーへと変換するフェーズ。
【0018】
よって、効率的な波力エネルギー抽出のためには、キャリッジ速度を可変とする必要がある。カバーされた距離は、短いフェーズにおいては、やや長いものであり、長いフェーズにおいては、やや短いものである。
【0019】
同一サイクルの途中におけるキャリッジの速度変動にかかわらず、発電機シャフトを一定の速度で駆動させるためには、一組をなす複数の可変ピッチのギヤラックの恩恵を受けることができる。そのような可変ピッチのギヤラックは、機械的なアダプタとして機能するものであって、低減比率の連続的な変化を可能とする。これにより、そのようなデバイスにおいては、発電機を、公称規格に近い条件で動作させることができる。
【0020】
さらに、サーボ制御デバイスにより、経時的な変動に基づく波の周波数に対して、キャリッジの回転周期を連続的に同期させることができる。
【0021】
本発明の様々な特定の特徴点につき、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定することなく、以下において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】波力エネルギー変換モジュールを示す分解斜視図である。
図2】船体と、移動バラストを有した構造と、を示す斜視図である。
図3】船体を、底面側から示す斜視図である。
図4】モジュールを示す部分分解図であって、キャリッジの角度セクターが、最大偏心位置とされている。
図5】モジュールを示す部分分解図であって、キャリッジの角度セクターが、最小偏心位置とされている。
図6】キャリッジと、このキャリッジが上面上に載置されたレールと、の間の連結原理を示す詳細な断面図である。
図7】可変ピッチとされたラックピニオンという原理を示す斜視図である。
図8】変換サイクルにおける4つの主要フェーズを示す概略的な断面図である。
図9】水上に配置されたモジュールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明においては、波力エネルギー変換モジュールは、蓋(2)によって閉塞された船体(1)からなる水密ボディを備えている。水密ボディは、敏感な構成部材が海洋環境に対して直接的に曝されないような態様で、一組をなす複数の電気的機械的構成部材を収容している。
【0024】
ボディ(1,2)は、図1に示すように、嵩低いものであって、丸められたエッジを有した矩形の浮遊物体とされており、海の表面上を浮遊する。ボディの流体力学的形状は、とりわけ船体(1)の底面の形状は、波に起因する縦揺れ運動を増強し得るよう構成されている。
【0025】
モジュールに対して相対的に固定されたような、3次元座標系は、3つの軸線(X,Y,Z)によって識別される。縦揺れ運動時には、X軸線の方向は、平均的に、波の伝搬方向に一致し、Z軸線の方向は、平均的に、鉛直方向に一致し、Y軸線の方向は、平均的に、上記の2つの方向に対して垂直とされる。縦揺れ運動は、波の作用に起因するものであって、Y軸線まわりの周期的な回転に対応する。
【0026】
船体(1)と交差したときには、入力波は、船首(11)を持ち上げると同時に、船尾を沈ませる。船首は、持ち上げられやすいスパチュラ形状とされていることが有利であり、これにより、波を切るのではなくて、波の頂部上に乗り上げることができる。船体(1)の底面は、図3に示すように、バルジ(13)を特徴としている。バルジ(13)は、好ましくは、船尾に向けて位置している。バルジ(13)は、波の通過時には、ベンチュリ効果によって、低圧を生成する。この低圧は、底面に向けて船体(1)の船尾を吸引することに寄与し、これにより、波状におけるモジュールの傾斜を増大させる。
【0027】
波の頂上においては、船体(1)が、波を乗り越え、船首(11)が、次の波の谷内へと飛び込んでいく。これとともに、バルジ(13)上における低圧は、船尾のところにおける水の排出とともに消えていく。これにより、浮力が、船尾を表面へと引き戻す。ある種の共鳴が発生する。船尾(12)のより深い沈み込みに対しては、流体の作用によって、より強い押し上げが応答する。
【0028】
本発明においては、船体(1)の幾何形状は、入力波(14)の方向に関しての優先方向を提供する。この理由のために、本発明は、船体(1)の底面に対して固定された一組をなす複数のフィン(15)を意図している。一組をなす複数のフィン(15)は、波頭に対してのモジュールの一定の配向性を保証する。一般的な縦揺れ運動にとって不利とならないように、フィン(15)は、船体(1)の底面の流れをチャネリングすることができる。これにより、ベンチュリ効果を増強することができる。
【0029】
加えて、本発明は、係留システム(16)、あるいは、モジュールの地理的位置を維持するための他の任意の手段、を備えている。船体(1)の係留システムの1つまたは複数のアンカー止めポイントは、縦揺れ運動に逆らうのではなく縦揺れ運動に追従し得るように、配置されている。さらに、少なくとも2つの係留ラインが使用される場合には、係留システム(16)により、船体(1)の適正な配向性を補助することができる。これに代えて、例えば海が深すぎる場合には、衛星によって案内される小さなモータを使用した動的位置決めシステムを使用することもできる。
【0030】
ボディの蓋(2)は、メンテナンス操作のためのホストプラットホームとして設置され、この点において、例えば落下防止システムやハッチ(29)付きの着脱可能パネルといったような安全デバイスを提供する。
【0031】
船体(1)の寸法は、入力波の平均サイズに比例したものとされるとともに、収容した変換デバイスのサイズに比例したものとされる。非限定的な例示として、船体の長さは、波力エネルギー装置に適した波の上下動を考慮して、典型的には、15〜30mとされる。
【0032】
本発明においては、デバイスは、三日月形状の偏心重量を有している。偏心重量のZ軸線まわりの円形運動は、船体(1)の縦揺れ運動によって連続的に維持される。
【0033】
この偏心重量は、有利には、一組をなす複数の環状同軸レール上を移動するキャリッジ(5)から構成される。一方のレールは、少なくとも、支持体として機能し、一方のレールあるいは複数の付加的な相補レールは、水平軌跡上にキャリッジ(5)を維持することを保証する。非限定的な例示の目的のために、この一組をなす複数のレールは、互いに同じ直径を有した2つの重ね合わされたレール(6)という特定の態様として、例示されている。
【0034】
キャリッジ(5)とレール(6)との間の接触は、ベアリング(17)上に取り付けられたセットローラ(7)によって、確保される。ベアリングは、有利には、典型的にはワッシャやスプリングブレードといったような強度が大きく低い高さの経済的なサスペンション(18)上に取り付けることができる。これにより、レール(6)上における最終的な不規則性の影響を低減することができ、また、太陽および水の組合せ作用に起因する膨張率の差の影響を低減することができる。
【0035】
さらに、本発明は、レール(6)の表面上におけるスリップを引き起こすことなく、キャリッジ(5)のローラ(7)が回転することを保証することを、意図している。この目的のために、レールの回転経路(19)に対して接触したローラ(7)は、それ自体が、それぞれの回転経路(19)の中心(20)に対して一致した頂点を有した円錐台を提供する。このようにして、すべてのローラ(7)の軸線は、わずかに傾斜しており、回転経路(19)の中心(20)に位置したポイントへと収束する。
【0036】
径方向応力によって生成された摩擦を制限するために、キャリッジ(5)には、Z軸線に平行な相補的な組をなす円筒形ローラ(22)が設けられている。これらのローラは、レール(6)の側面(23)上における径方向支持体として、機能する。この目的のために、相補的な組をなすローラ(22)は、有利には、それ自体が、ベアリング(24)上におよびサスペンション(25)上に取り付けられる。各レール(6)の側面(23)は、回転経路として機能する。
【0037】
本発明においては、レール(6)の半径は、側方回転経路(23)上においてキャリッジ(5)によって引き起こされる応力ができる限り小さなものとなるものとされている。言い換えれば、キャリッジ(5)は、一方または双方のレール上において本質的にバランスされ、片持ちとなることがない。これを得るために、キャリッジ(5)の重心(26)は、ローラと支持レールとの間の接触ポイントによって規定されたコードおよびアークによって形成される三日月形状に対して、鉛直方向に配置されている。
【0038】
キャリッジ(5)の質量を構成する材料の本質的な品質は、密度である。この要求は、安価な廃物材料の使用と一致する。本発明を何ら限定することなく例示するならば、典型的にはコンクリート内にキャスティングされた瓦礫とリサイクル対象物とのブレンドといったような非常に経済的な材料からなる複合質量や、例えばリサイクルされたキャストスチールといったような、より高密度で時にはより高価な材料が、キャリッジ(5)の中心軸線を中心とした周縁三日月上へと配置されて、経済的に興味のある手法を提供する。
【0039】
上述したようなキャリッジ(5)は、有利には、複数の角度セクター(36)へと分割することができる。それらの角度セクター(36)は、互いに同様の原理に基づいてそれぞれ独立に構成される。複数の角度セクター(36)は、例えば図4に示すように、互いに寄せ集めることができる。また、複数の角度セクター(36)は、例えば図5に示すように、レール(6)に沿って互いに離間させることができる。離間距離は、可動質量の偏心度合いを低減させる。レール(6)の周縁上にわたって複数の角度セクター(36)をバランス良く分散させることは、キャリッジ(5)の重心(26)を、中心軸線(3)の近傍へと、引き寄せる効果を有している。これにより、デバイスの不動化が容易とされるとともに、ブレーキによって停止場所へとデバイスをロックすることが容易とされる。複数の角度セクター(36)の相対変位は、モータシステムによって行われる。モータシステムは、典型的には、ウォームデバイスや他の任意の制御デバイスによって駆動されるキャプスタンやシャフトによって操作されるワイヤから構成される。これにより、キャリッジ(5)の偏心度合いを、波の性質に適合させることができる。穏やかな海の場合には、小さな偏心度合いが、回転を誘起するのに適切である。
【0040】
本発明においては、変換デバイスは、キャリッジ(5)に対して固定された発電機(8)を備えている。発電機(8)は、キャリッジ(5)の質量に寄与することができる。発電機(8)の軸線は、軌道に沿ったすべての位置において、中心軸線(3)に対して平行なままである、あるいは、中心軸線(3)に対して交差したままである。発電機(8)には、ピニオン(27)付きのシャフトが設けられている。このピニオン(27)は、レール(6)に対して同軸的な円を描くギヤラック(9)に対して、噛合する。キャリッジ(5)の軌道運動は、発電機(8)のシャフトの急速な回転を誘起する。
【0041】
ピニオン(27)の直径は、発電機(8)の経済的サイズに応じた減速比が得られるように、特に、低減された極数に応じた減速比が得られるように、選択される。
【0042】
有利には、第2のラックピニオンシステムを、発電機(8)のシャフトの反対側の端部に、第1のラックピニオンシステムに対して対称的に設けることができる。これにより、応力をより良好に分散させることができる。
【0043】
様々な構成部材に起こり得る不規則性に対抗するために、本発明は、サスペンションシステムを介して、キャリッジ(5)に対して発電機(8)を連結する。このサスペンションシステムは、ピニオン(27)をギヤラック(9)に対して当接した状態に保持する。さらに、発電機(8)の固定子は、有利には、1つまたは2つのアイドラーホイールを有している。アイドラーホイールは、レール(6)の1つまたは2つの回転経路(23)に対して押圧されるとともに、深さガイドとして機能し、発電機(8)のサスペンションによって引き起こされるギヤラック(9)上へのピニオン(27)の径方向圧力を回避することができる。この最後の手段は、摩擦損失を低減し得る点において、および、ラックピニオンアセンブリの機械的摩耗を最小化し得る点において、効果的である。
【0044】
本発明においては、発電機(8)とモジュールの静止部材との間の電気的接続は、円形スライドコンタクト(28)によって、典型的には一組をなす複数のスリップリングによってあるいはカテナリーシステムによって、行われる。
【0045】
波力エネルギーの定量的な抽出には、複数の波のうちの1つの波に対しての、キャリッジ(5)の運動の同期化が必要とされる。本発明は、発電機(8)のための制御システムを提供する。この制御システムは、とりわけキャリッジ(5)の速度特性を保証するものであって、軌道運動中における船体(1)の船首(11)および船尾(12)の各々のアプローチの減速度合いや、波の振動に対しての変換サイクルの同期化といったようなものを保証する。この振動内には様々な速度が含有されていることのために、発電機を、分散ネットワークに対して直接的に接続することはできない。
【0046】
本発明においては、必須ではないものの有利な態様においては、デバイスの内部に、電子的整流器が設けられる。これにより、消費者に向けてのあるいは分散ステーションに向けての送電を、直流によって、海底ケーブルを通して行うことができる。
【0047】
必要であれば、例えば海岸線といったようなラインの端部のところに、インバータを配置することができる。これにより、制御されたAC電圧を生成することができる。これにより、グリッドに対しての接続に互換的なものとすることができる。
【0048】
本発明においては、制御システムは、少なくとも、
−キャリッジ(5)用の位置センサと、
−モジュールの傾斜の瞬時値を測定するためのセンサと、
−入力波の周波数を観測するためのセンサと、
−発電機(8)を制御するための電子回路と、
を備えている。
【0049】
この最小の構成は、有利には、リアルタイムで発電機(8)の電気的変数を測定するためのセンサを設けることによって、完成することができる。そのようなセンサは、より適合したコマンドセットを生成することができる。
【0050】
上述したような生成ロジックにおいては、本発明は、個々の励起に対して発電機(8)を同期させるという利点を有することができる。これにより、トルクを正確に制御することができる。これとともに、この手段によって、キャリッジ(5)の速度特性を正確に制御することができる。より詳細には、低消費電力タイプのサーボ制御DC電源を使用することにより、回転子のインダクターを励起することができる。
【0051】
本発明は、さらに、キャリッジ(5)の移動速度の変化にかかわらず発電機(8)の一定の回転速度を維持し得る付加的な機械的デバイスを備えている。軌道上における可変減速比は、図7に示すように、ギヤラック(9)を、特定の可変ピッチのギヤラックシステムへと変更することによって、得られる。
【0052】
本発明においては、この特定の構成は、発電機(8)のシャフトに対して固定された長尺の円錐台形状ピニオン(27)を利用している。ピニオン(27)は、異なる直径の一組をなす複数の同軸ピニオンと等価である。ギヤラック(9)の歯付きラック(31)が、他の部分ではなくピニオン(27)の一部分に対して噛合していることのために、乗法比率が変化する。より具体的には、ギヤラック(9)は、それ自体が、ピニオン(28)に対して相補的な円錐台を提供する。しかしながら、軌道の所定ポイントのところでは、歯(31)は、円錐の母線の小さな部分しか占有しない。歯(31)どうしの間の間隔は、ピニオンのうちの、歯が噛合している部分のピッチ(10)に適合する。
【0053】
このようにして、歯(31)どうしの間のピッチ(10)は、したがって、ラックピニオンアセンブリの減速比は、連続的に可変であり、キャリッジ(5)の参照速度特性に対して相関した機械的適合を提供することができる。
【0054】
固定ピッチを有したギヤラックと比較して複雑さが増大しているにもかかわらず、発電機(8)が受ける機械的擾乱の減衰は、通常の運転条件に対してより近い動作を行い得るという利点をもたらすことができる。よって、経済的なサイズとし得るという利点をもたらすことができる。
【0055】
大量生産に関し、本発明は、複数のモジュールのネットワーク化を可能とし、ファームとして構成することができる。位置的に近接して配置されることによる複数のモジュールの集積化は、有利には、いくつかの周辺システムの共有を可能とし得るとともに、メンテナンス操作の共有を可能とすることができる。
【0056】
同一のファーム内の複数のモジュールは、ロープやチェーンや連結ロッドを介して、水面上において、メッシュパターンでもって配置することができる。これにより、ファームを所定位置に維持するための手段や係留システム(16)等を、共有することができる。
【0057】
さらに、電力を送電したり整形したりするための手段を、各モジュールの整流器の下流側において共有することができる。これにより、スケールメリットを得ることができる。さらに、上述したように(図7)、一組をなす複数の可変ピッチのギヤラックを使用することにより、同一の整流器を共有することができる。なぜなら、波の周波数が、連結されたすべてのモジュールに対して共通であるからである。これにより、集合的な電力出力を円滑化することができる。この場合、ファーム内の様々な発電機(8)どうしの間にわたってのサイクルフェーズ(図8a〜図8d)の同期は、実際に不要であり、様々なモジュールは、電気的なミスマッチというリスクなく、個別のフロント上に配置することができる。
【0058】
さらに、整流器の上流側におけるモジュールどうしの相互接続により、格別の駆動作用を得ることができる。これは、特に低振幅の波上におけるキャリッジ(5)の移動セットシーケンス時において、制御計画の数を大幅に延長させる。
【0059】
さらに、定常状態においては、変換サイクルの規則性は、集合的効果によって改良される傾向がある。
【0060】
本発明においては、振動バラスト(4)からなる経済的デバイスにより、電力抽出を実質的に改良することができる。
【0061】
重要な質量が与えられ、波に抗するように制御された移動が与えられると、キャリッジ(5)は、モジュールの縦揺れ運動を著しく低減させる。これは、効率を大幅に下落させる。それ自体の重量の作用によって軸線X方向に沿って並進移動する振動的平衡錘により、縦揺れ運動時のキャリッジ(5)の効果を補償することができ、増幅することさえできる。
【0062】
非限定的な好ましい実施形態においては、図1に示すように、本発明は、船体(12)の船首から船尾までを連結する軸線X方向の一組をなす複数の平行直線ダクト(32)として配置することにより、モジュール構成空間の全部または一部を利用する。ダクト(32)は、水によって部分的に充填される。これにより、可動バラスト(4)を構成することができる。その流れは、波と一緒に、自然的に振動する。このデバイスにより、一方においては、縦揺れ運動を増幅することができ、他方においては、図8bおよび図8dに示す最大傾斜フェーズの持続時間を延ばすことができる。図8aおよび図8cに示すような傾斜増大フェーズおよび傾斜減少フェーズの際のバラスト(4)の速い流れは、モジュールの最も低い端部における一時的な停滞をもたらす。このようにして、振動バラスト(4)は、最大傾斜位置における安定化に寄与するとともに、最適傾斜条件においては、キャリッジ(5)の降下のための時間を長くする。
【0063】
ダクト(32)が全体的に長尺形状であることは、横揺れ運動に寄与することなく、縦揺れ運動に寄与するものであって、好ましい。
【0064】
本発明の思慮深い実施形態においては、バラスト(4)を収容したダクト(32)は、船体(1)を構成するリブに対して組み合わされる。
【0065】
そのような構成の興味は、そのような構成が提供する安価な制御可能性である。実際、ダクト(32)内におけるエア比率は、ダクト内のバラスト(4)の流体力学的振る舞いを決定する。
【0066】
本発明は、この点において、有利には、ダクト(32)を複数の個別隔室へと分割し得ることを提供する。図1に示す特別の場合には、第1隔室(33)は、船体(1)の中央部分を占有し、第2隔室(34)は、船体(1)の両サイドにおいて2つの対称的な廊下を占有する。
【0067】
同じ隔室内におけるダクト(32)の一様な充填レベルは、隣接するダクト(32)どうしの間に形成された開口(37)によって、および、図2に示す一組をなす複数のパイプ(35)によって、得られる。パイプは、第2隔室(34)の2つの部分を連通させている。
【0068】
本発明においては、制御された双方向性ポンピングシステムは、隔室(33,34)間にわたってのバラスト(4)の移送を確保し、これにより、モジュール全体の縦揺れ運動特性を調節することができる。これにより、入力波の特性に応じた最適の抽出条件を確保することができる。部分的に充填された隔室の重心は、モジュールのX軸線に沿って移動する。逆に、全体的に充填された隔室あるいは空虚な隔室は、不活性であり、よって、縦揺れ運動には寄与しない。
【0069】
したがって、バラスト(4)のポンピングデバイスは、嵐の時に、あるいは、メンテナンス操作時に、モジュールの安全性を維持するための手段を提供する。これは、一方の隔室(33,34)内へのバラスト(4)の全移送のためである。
【0070】
本発明においては、上記のすべての構成に適合した付加的な構成であるとともに、同一のモジュール内において2つの個別セットのレール(6)上において互いに逆向きに回転する2つの同様のキャリッジ(5)を使用した付加的な構成により、船体(1)の横揺れ運動を意義深く低減することができる。そのような構成においては、実際、2つのキャリッジ(5)は、X軸線に関して対称的な運動をするように、制御される。これにより、これら2つの質量の全体の重心は、同じ軸線X方向に沿ってのみ振動する。
【0071】
ガイドラインとして、本発明を何ら限定することなく、2セットのレールは、典型的には、同軸的に重ね合わされる、あるいは、同一平面的とされてモジュールの長手方向軸線Xに関して対称的なものとされる。
【符号の説明】
【0072】
1 船体
2 蓋
4 振動バラスト
5 キャリッジ
6 レール
7 支持ローラ
8 発電機
9 ギヤラック
11 船首
12 船尾
13 バルジ
15 平行フィン
17 ベアリング
18 サスペンション
22 円筒形ローラ
24 ベアリング
26 サスペンション
27 ピニオン
28 スライドコンタクト
30 アイドラーホイール
31 歯
32 長手方向ダクト
35 パイプ
36 角度セクター
37 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-a】
図8-b】
図8-c】
図8-d】
図9
【手続補正書】
【提出日】2016年10月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波力エネルギー変換モジュールであって、
偏心質量の軌道運動を利用したものであり、
前記偏心質量が、浮遊型の収容ボディ内に全体的に収容され、
このような波力エネルギー変換モジュールが、
−矩形の浮遊物体の形状とされた船体(1)と、
−メンテナンス操作のためのホストプラットホームとして装着された蓋(2)と、
−一組をなす複数の円形レール(6)によって案内された軌道に沿って移動する錘キャリッジ(5)と、
−前記キャリッジ(5)上に取り付けられた発電機(8)であるとともに、前記レール(6)に対して同軸的とされた一組をなす複数のギヤラック(9)に沿って1つまたは複数のピニオン(27)によって駆動される、発電機(8)と、
を具備している、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記船体(1)の底面が、縦揺れ運動に適したものとして構成され、
前記船体(1)の前記底面が、縦揺れ運動に適するように、
−隆起した船首(11)と、
−船尾(12)の近傍に設けられたバルジ(13)と、
−一組をなす複数の平行フィン(15)と、
−縦揺れ運動軸線に沿って配置されたアンカー止めポイントと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)が、
−サスペンション(18)上に取り付けられたベアリング(17)によって保持された円錐台形状の支持ローラ(7)と、
−サスペンション(26)上に取り付けられたベアリング(24)によって保持された径方向に押圧される円筒形ローラ(22)と、
によって、スライドすることなく、このキャリッジの経路上に維持されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)の重心(26)の偏心度合いが、互いの相対位置が調節可能とされた複数の角度セクター(36)という態様でもって前記キャリッジ(5)の質量を分散させることにより、連続的に調節可能とされている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記ギヤラック(9)の少なくとも1つが、当該ギヤラック(9)の歯(31)に対して噛合している高さ部分において噛合する円錐台形状のピニオン(27)のおかげで、連続的に可変のピッチを有し、
前記歯(31)どうしの間の間隔が、前記発電機(8)の前記軌道に沿って変化し、
前記ピニオン(27)の見かけの直径が大きくなればなるほど、前記歯(31)どうしが、より大きく離間される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
縦揺れ運動を増大させるデバイスを具備し、
縦揺れ運動を増大させるために、流体質量という態様の振動バラスト(4)が設けられ、
この振動バラスト(4)が、この振動バラスト(4)の重量の移動に基づき、一組をなす複数の長手方向ダクト(32)内において移動する、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
同一の前記ボディ内において、それぞれ対応するレール(6)上に設置された二組をなすキャリッジ(5)が設けられ、
これらキャリッジ(5)が、互いに逆向きに回転するものとされ、
これにより、横揺れ運動が制限されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された波力エネルギー変換モジュールを使用して波力エネルギーを抽出することにより、電力を生成するための方法であって、
この方法が、少なくとも、
1)入力波の効果によって傾斜が増大するフェーズにおいて、前記キャリッジ(5)の前記軌道を、前記船首(11)の近傍に位置させ、これにより、前記キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを獲得させるステップと、
2)前記モジュールが最大傾斜に到達した後に、前記キャリッジ(5)を下向きに加速させながら、前記位置エネルギーを運動エネルギーへと変換するステップと、
3)前記モジュールが波頭を乗り越えたことのために傾斜が減少するフェーズにおいて、前記キャリッジ(5)の前記軌道を、前記船尾(12)の近傍に位置させ、これにより、前記キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを再び獲得させるステップと、
4)波が前記船尾を持ち上げることのために、前記モジュールが最大傾斜に到達した後に、前記キャリッジ(5)を加速させながら、前記位置エネルギーを再び運動エネルギーへと変換するステップと、
を具備している、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
波力エネルギー変換モジュールの使用であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載された波力エネルギー変換モジュールを少なくとも1つ使用する、
ことを特徴とする使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在まで、様々な波力エネルギーシステムが考案されて開発されてきた。しかしながら、期待される性能に見合った実用的応用には至っていない。
【0002】
既存の発明の様々な分類どうしを比較することにより、機能的なおよび経済的な開発可能性の観点から最も有用な特徴点を識別することができ、それぞれの限界を分析することができる。これにより、波力エネルギーを電力へと効率的に変換するのに必要な実施や操作に関する実用的条件を満たす新たなデバイスを開発することができる。
【0003】
よって、単一の浮遊ボディ内にデバイスの全体を包含させるという原理によって、海底基礎の問題点を回避することができ、さらに、外部構成部材を有していないことによって、システムの頑丈さが保証されるとともに海洋環境への適合が保証されることが、見出された。
【0004】
その他にも、油圧伝達構成部材を設けることなく、直接的な電気機械的変換というある種の態様とすることにより、単純な実施態様および単純な操作によって、固体の移動を利用することができる。
【背景技術】
【0005】
このような変換方法を全体的にあるいは部分的に使用した特許文献について、以下のものに言及することができる。
−特許文献1:波と一緒に縦揺れする浮遊物体であるとともに、その縦揺れを偏心ドライブへと伝達して、水平方向平面内において振り子式に振動させる。
−特許文献2,3:1つまたは複数の偏心物体であるとともに、波の振動の結果として、水平方向平面内において、全回転を行い、逆回り回転を行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 3,231,749(1966年 1月25日付けで公開)
【特許文献2】US 1,584,293(1925年)
【特許文献3】US 4,266,143(1981年 5月 5日付けで公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
操作という観点から、上記のタイプのシステムにおける限界には、主として、以下のようなものがある。
−デバイスを移動状態にセットするに際し、大部分の波の態様を利用することが困難であること。
−発電機のための定常的操作レジームを維持するに際し、波の周波数に対してデバイスを同期させることが困難であること。
−様々な構成部材どうしの間における摩擦のために、損失が発生すること。
これらの限界の合計のために、生産ロジックにおける全体的収率が低下してしまうこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書においては、本発明は、一組をなす複数の解決手法を規定するものであり、とりわけ、波の周波数に対しての電力抽出デバイスの同期を最適化するための様々なフレキシブルさと、小さな摩擦での構成部材の使用と、慣習的なエンジニアリング技術および製造技術の使用と、安価な材料やリサイクル材料の使用と、最小で容易なメンテナンスと、を提供する。
【0009】
本発明の主題をなす波力エネルギー変換器は、実質的に浮遊型の閉塞ボディから構成され、このボディは、波の振動から電力を生成するための電気的機械的変換デバイスを全体的に収容している。
【0010】
船体は、あるいはボディの浸漬部分は、係留される、すなわち、モータ付きデバイスによって所定位置に保持される。一組をなす複数のフィンが設けられ、これにより、波頭に対向した配向性が一定に維持される。船体は、波の上下動に応じて、モジュールの縦揺れ運動に適した格別の形状を有している。説明の簡略化のために、船体のうちの、入力波に対して最初に接触する部分は、本明細書では、モジュールの前方部分と称され、すなわち、船首と称されることに、また、反対側の部分は、モジュールの後方部分と称され、すなわち、船尾と称されることに、注意されたい。
【0011】
ボディの内部においては、偏心質量は、錘キャリッジの態様とされ、一組をなす複数の円形レールに沿って移動することができる。この種の構成により、中央キャリングシャフトを不要とすることができる。これにより、中央の回転軸線上における偏心質量の意義深い曲げモーメントに起因する摩擦を回避することができる。
【0012】
ボディの縦揺れ運動は、レールがなす平面を傾斜させ、これにより、キャリッジの重量の効果のために、キャリッジを移動させてしまう。例えば振り子運動の際に起こるような、軌道上のブレークポイントすなわち反転ポイントの存在に特有の電気的機械的問題点に打ち勝ち得るよう、本発明は、中央軸線まわりにおけるキャリッジの完全な軌道すなわち妨害されていない軌道の利点を有することができる。
【0013】
運動時に偏心質量が獲得する運動エネルギーは、軌道がなす平面を傾斜させることによって波が偏心質量を持ち上げた際の位置エネルギーに依存する。
【0014】
軌道の傾斜の大きさが小さいことのために、摩擦が、ある種の波の高さ以下の場合に乗り越えられなくなり得る主要な制限である。この点に関し、本発明は、キャリッジが移動する際の摩擦損失を低減することを目的とした一組をなす複数の構成を提供する。
【0015】
集積された運動エネルギーは、キャリッジに対して一体化された発電機によって変換される。発電機シャフトは、レールと同軸的な一組をなす複数のギヤラックに対して噛合した1つまたは2つのコグホイールによって、回転駆動される。スライドコンタクトが、発電機を、電気的整流器に対して接続する。これにより、地上の分配ステーションに対してのモジュールの電気的接続は、海洋環境を通しての交流送電に起因するライン損失を回避する。
【0016】
可動バラストも、また、波の上下動によって、駆動される。可動バラストは、入力波の向きにおけるモジュールの傾斜を増大させる。これにより、キャリッジの落下高さを増大させる。
【0017】
この傾斜位置に起因する電力抽出サイクルは、概略的には、以下の4つのフェーズに分解することができる。
−入力波の効果によって傾斜が増大するフェーズにおいて、キャリッジの軌道を、船首の近傍に位置させ、これにより、キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを獲得させるフェーズ。
−モジュールが最大傾斜に到達した後に、キャリッジを下向きに加速させながら、位置エネルギーを運動エネルギーへと変換するフェーズ。このフェーズは、短いものである。なぜなら、最大傾斜が一時的であるからである。
−モジュールが波頭を乗り越えたことのために傾斜が減少するフェーズにおいて、キャリッジの軌道を、船尾の近傍に位置させ、これにより、キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを再び獲得させるフェーズ。
−波が船尾を持ち上げることのために、モジュールが最大傾斜に到達した後に、キャリッジを加速させながら、位置エネルギーを再び運動エネルギーへと変換するフェーズ。
【0018】
よって、効率的な波力エネルギー抽出のためには、キャリッジ速度を可変とする必要がある。カバーされた距離は、短いフェーズにおいては、やや長いものであり、長いフェーズにおいては、やや短いものである。
【0019】
同一サイクルの途中におけるキャリッジの速度変動にかかわらず、発電機シャフトを一定の速度で駆動させるためには、一組をなす複数の可変ピッチのギヤラックの恩恵を受けることができる。そのような可変ピッチのギヤラックは、機械的なアダプタとして機能するものであって、低減比率の連続的な変化を可能とする。これにより、そのようなデバイスにおいては、発電機を、公称規格に近い条件で動作させることができる。
【0020】
さらに、サーボ制御デバイスにより、経時的な変動に基づく波の周波数に対して、キャリッジの回転周期を連続的に同期させることができる。
【0021】
本発明の様々な特定の特徴点につき、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定することなく、以下において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】波力エネルギー変換モジュールを示す分解斜視図である。
図2】船体と、移動バラストを有した構造と、を示す斜視図である。
図3】船体を、底面側から示す斜視図である。
図4】モジュールを示す部分分解図であって、キャリッジの角度セクターが、最大偏心位置とされている。
図5】モジュールを示す部分分解図であって、キャリッジの角度セクターが、最小偏心位置とされている。
図6】キャリッジと、このキャリッジが上面上に載置されたレールと、の間の連結原理を示す詳細な断面図である。
図7】可変ピッチとされたラックピニオンという原理を示す斜視図である。
図8】変換サイクルにおける4つの主要フェーズを示す概略的な断面図である。
図9】水上に配置されたモジュールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明においては、波力エネルギー変換モジュールは、蓋(2)によって閉塞された船体(1)からなる水密ボディを備えている。水密ボディは、敏感な構成部材が海洋環境に対して直接的に曝されないような態様で、一組をなす複数の電気的機械的構成部材を収容している。
【0024】
ボディ(1,2)は、図1に示すように、嵩低いものであって、丸められたエッジを有した矩形の浮遊物体とされており、海の表面上を浮遊する。ボディの流体力学的形状は、とりわけ船体(1)の底面の形状は、波に起因する縦揺れ運動を増強し得るよう構成されている。
【0025】
モジュールに対して相対的に固定されたような、3次元座標系は、3つの軸線(X,Y,Z)によって識別される。縦揺れ運動時には、X軸線の方向は、平均的に、波の伝搬方向に一致し、Z軸線の方向は、平均的に、鉛直方向に一致し、Y軸線の方向は、平均的に、上記の2つの方向に対して垂直とされる。縦揺れ運動は、波の作用に起因するものであって、Y軸線まわりの周期的な回転に対応する。
【0026】
船体(1)と交差したときには、入力波は、船首(11)を持ち上げると同時に、船尾を沈ませる。船首は、持ち上げられやすいスパチュラ形状とされていることが有利であり、これにより、波を切るのではなくて、波の頂部上に乗り上げることができる。船体(1)の底面は、図3に示すように、バルジ(13)を特徴としている。バルジ(13)は、好ましくは、船尾に向けて位置している。バルジ(13)は、波の通過時には、ベンチュリ効果によって、低圧を生成する。この低圧は、底面に向けて船体(1)の船尾を吸引することに寄与し、これにより、波状におけるモジュールの傾斜を増大させる。
【0027】
波の頂上においては、船体(1)が、波を乗り越え、船首(11)が、次の波の谷内へと飛び込んでいく。これとともに、バルジ(13)上における低圧は、船尾のところにおける水の排出とともに消えていく。これにより、浮力が、船尾を表面へと引き戻す。ある種の共鳴が発生する。船尾(12)のより深い沈み込みに対しては、流体の作用によって、より強い押し上げが応答する。
【0028】
本発明においては、船体(1)の幾何形状は、入力波(14)の方向に関しての優先方向を提供する。この理由のために、本発明は、船体(1)の底面に対して固定された一組をなす複数のフィン(15)を意図している。一組をなす複数のフィン(15)は、波頭に対してのモジュールの一定の配向性を保証する。一般的な縦揺れ運動にとって不利とならないように、フィン(15)は、船体(1)の底面の流れをチャネリングすることができる。これにより、ベンチュリ効果を増強することができる。
【0029】
加えて、本発明は、係留システム(16)、あるいは、モジュールの地理的位置を維持するための他の任意の手段、を備えている。船体(1)の係留システムの1つまたは複数のアンカー止めポイントは、縦揺れ運動に逆らうのではなく縦揺れ運動に追従し得るように、配置されている。さらに、少なくとも2つの係留ラインが使用される場合には、係留システム(16)により、船体(1)の適正な配向性を補助することができる。これに代えて、例えば海が深すぎる場合には、衛星によって案内される小さなモータを使用した動的位置決めシステムを使用することもできる。
【0030】
ボディの蓋(2)は、メンテナンス操作のためのホストプラットホームとして設置され、この点において、例えば落下防止システムやハッチ(29)付きの着脱可能パネルといったような安全デバイスを提供する。
【0031】
船体(1)の寸法は、入力波の平均サイズに比例したものとされるとともに、収容した変換デバイスのサイズに比例したものとされる。非限定的な例示として、船体の長さは、波力エネルギー装置に適した波の上下動を考慮して、典型的には、15〜30mとされる。
【0032】
本発明においては、デバイスは、三日月形状の偏心重量を有している。偏心重量のZ軸線まわりの円形運動は、船体(1)の縦揺れ運動によって連続的に維持される。
【0033】
この偏心重量は、有利には、一組をなす複数の環状同軸レール上を移動するキャリッジ(5)から構成される。一方のレールは、少なくとも、支持体として機能し、一方のレールあるいは複数の付加的な相補レールは、水平軌跡上にキャリッジ(5)を維持することを保証する。非限定的な例示の目的のために、この一組をなす複数のレールは、互いに同じ直径を有した2つの重ね合わされたレール(6)という特定の態様として、例示されている。
【0034】
キャリッジ(5)とレール(6)との間の接触は、ベアリング(17)上に取り付けられたセットローラ(7)によって、確保される。ベアリングは、有利には、典型的にはワッシャやスプリングブレードといったような強度が大きく低い高さの経済的なサスペンション(18)上に取り付けることができる。これにより、レール(6)上における最終的な不規則性の影響を低減することができ、また、太陽および水の組合せ作用に起因する膨張率の差の影響を低減することができる。
【0035】
さらに、本発明は、レール(6)の表面上におけるスリップを引き起こすことなく、キャリッジ(5)のローラ(7)が回転することを保証することを、意図している。この目的のために、レールの回転経路(19)に対して接触したローラ(7)は、それ自体が、それぞれの回転経路(19)の中心(20)に対して一致した頂点を有した円錐台を提供する。このようにして、すべてのローラ(7)の軸線は、わずかに傾斜しており、回転経路(19)の中心(20)に位置したポイントへと収束する。
【0036】
径方向応力によって生成された摩擦を制限するために、キャリッジ(5)には、Z軸線に平行な相補的な組をなす円筒形ローラ(22)が設けられている。これらのローラは、レール(6)の側面(23)上における径方向支持体として、機能する。この目的のために、相補的な組をなすローラ(22)は、有利には、それ自体が、ベアリング(24)上におよびサスペンション(25)上に取り付けられる。各レール(6)の側面(23)は、回転経路として機能する。
【0037】
本発明においては、レール(6)の半径は、側方回転経路(23)上においてキャリッジ(5)によって引き起こされる応力ができる限り小さなものとなるものとされている。言い換えれば、キャリッジ(5)は、一方または双方のレール上において本質的にバランスされ、片持ちとなることがない。これを得るために、キャリッジ(5)の重心(26)は、ローラと支持レールとの間の接触ポイントによって規定されたコードおよびアークによって形成される三日月形状に対して、鉛直方向に配置されている。
【0038】
キャリッジ(5)の質量を構成する材料の本質的な品質は、密度である。この要求は、安価な廃物材料の使用と一致する。本発明を何ら限定することなく例示するならば、典型的にはコンクリート内にキャスティングされた瓦礫とリサイクル対象物とのブレンドといったような非常に経済的な材料からなる複合質量や、例えばリサイクルされたキャストスチールといったような、より高密度で時にはより高価な材料が、キャリッジ(5)の中心軸線を中心とした周縁三日月上へと配置されて、経済的に興味のある手法を提供する。
【0039】
上述したようなキャリッジ(5)は、有利には、複数の角度セクター(36)へと分割することができる。それらの角度セクター(36)は、互いに同様の原理に基づいてそれぞれ独立に構成される。複数の角度セクター(36)は、例えば図4に示すように、互いに寄せ集めることができる。また、複数の角度セクター(36)は、例えば図5に示すように、レール(6)に沿って互いに離間させることができる。離間距離は、可動質量の偏心度合いを低減させる。レール(6)の周縁上にわたって複数の角度セクター(36)をバランス良く分散させることは、キャリッジ(5)の重心(26)を、中心軸線(3)の近傍へと、引き寄せる効果を有している。これにより、デバイスの不動化が容易とされるとともに、ブレーキによって停止場所へとデバイスをロックすることが容易とされる。複数の角度セクター(36)の相対変位は、モータシステムによって行われる。モータシステムは、典型的には、ウォームデバイスや他の任意の制御デバイスによって駆動されるキャプスタンやシャフトによって操作されるワイヤから構成される。これにより、キャリッジ(5)の偏心度合いを、波の性質に適合させることができる。穏やかな海の場合には、小さな偏心度合いが、回転を誘起するのに適切である。
【0040】
本発明においては、変換デバイスは、キャリッジ(5)に対して固定された発電機(8)を備えている。発電機(8)は、キャリッジ(5)の質量に寄与することができる。発電機(8)の軸線は、軌道に沿ったすべての位置において、中心軸線(3)に対して平行なままである、あるいは、中心軸線(3)に対して交差したままである。発電機(8)には、ピニオン(27)付きのシャフトが設けられている。このピニオン(27)は、レール(6)に対して同軸的な円を描くギヤラック(9)に対して、噛合する。キャリッジ(5)の軌道運動は、発電機(8)のシャフトの急速な回転を誘起する。
【0041】
ピニオン(27)の直径は、発電機(8)の経済的サイズに応じた減速比が得られるように、特に、低減された極数に応じた減速比が得られるように、選択される。
【0042】
有利には、第2のラックピニオンシステムを、発電機(8)のシャフトの反対側の端部に、第1のラックピニオンシステムに対して対称的に設けることができる。これにより、応力をより良好に分散させることができる。
【0043】
様々な構成部材に起こり得る不規則性に対抗するために、本発明は、サスペンションシステムを介して、キャリッジ(5)に対して発電機(8)を連結する。このサスペンションシステムは、ピニオン(27)をギヤラック(9)に対して当接した状態に保持する。さらに、発電機(8)の固定子は、有利には、1つまたは2つのアイドラーホイールを有している。アイドラーホイールは、レール(6)の1つまたは2つの回転経路(23)に対して押圧されるとともに、深さガイドとして機能し、発電機(8)のサスペンションによって引き起こされるギヤラック(9)上へのピニオン(27)の径方向圧力を回避することができる。この最後の手段は、摩擦損失を低減し得る点において、および、ラックピニオンアセンブリの機械的摩耗を最小化し得る点において、効果的である。
【0044】
本発明においては、発電機(8)とモジュールの静止部材との間の電気的接続は、円形スライドコンタクト(28)によって、典型的には一組をなす複数のスリップリングによってあるいはカテナリーシステムによって、行われる。
【0045】
波力エネルギーの定量的な抽出には、複数の波のうちの1つの波に対しての、キャリッジ(5)の運動の同期化が必要とされる。本発明は、発電機(8)のための制御システムを提供する。この制御システムは、とりわけキャリッジ(5)の速度特性を保証するものであって、軌道運動中における船体(1)の船首(11)および船尾(12)の各々のアプローチの減速度合いや、波の振動に対しての変換サイクルの同期化といったようなものを保証する。この振動内には様々な速度が含有されていることのために、発電機を、分散ネットワークに対して直接的に接続することはできない。
【0046】
本発明においては、必須ではないものの有利な態様においては、デバイスの内部に、電子的整流器が設けられる。これにより、消費者に向けてのあるいは分散ステーションに向けての送電を、直流によって、海底ケーブルを通して行うことができる。
【0047】
必要であれば、例えば海岸線といったようなラインの端部のところに、インバータを配置することができる。これにより、制御されたAC電圧を生成することができる。これにより、グリッドに対しての接続に互換的なものとすることができる。
【0048】
本発明においては、制御システムは、少なくとも、
−キャリッジ(5)用の位置センサと、
−モジュールの傾斜の瞬時値を測定するためのセンサと、
−入力波の周波数を観測するためのセンサと、
−発電機(8)を制御するための電子回路と、
を備えている。
【0049】
この最小の構成は、有利には、リアルタイムで発電機(8)の電気的変数を測定するためのセンサを設けることによって、完成することができる。そのようなセンサは、より適合したコマンドセットを生成することができる。
【0050】
上述したような生成ロジックにおいては、本発明は、個々の励起に対して発電機(8)を同期させるという利点を有することができる。これにより、トルクを正確に制御することができる。これとともに、この手段によって、キャリッジ(5)の速度特性を正確に制御することができる。より詳細には、低消費電力タイプのサーボ制御DC電源を使用することにより、回転子のインダクターを励起することができる。
【0051】
本発明は、さらに、キャリッジ(5)の移動速度の変化にかかわらず発電機(8)の一定の回転速度を維持し得る付加的な機械的デバイスを備えている。軌道上における可変減速比は、図7に示すように、ギヤラック(9)を、特定の可変ピッチのギヤラックシステムへと変更することによって、得られる。
【0052】
本発明においては、この特定の構成は、発電機(8)のシャフトに対して固定された長尺の円錐台形状ピニオン(27)を利用している。ピニオン(27)は、異なる直径の一組をなす複数の同軸ピニオンと等価である。ギヤラック(9)の歯付きラック(31)が、他の部分ではなくピニオン(27)の一部分に対して噛合していることのために、乗法比率が変化する。より具体的には、ギヤラック(9)は、それ自体が、ピニオン(28)に対して相補的な円錐台を提供する。しかしながら、軌道の所定ポイントのところでは、歯(31)は、円錐の母線の小さな部分しか占有しない。歯(31)どうしの間の間隔は、ピニオンのうちの、歯が噛合している部分のピッチ(10)に適合する。
【0053】
このようにして、歯(31)どうしの間のピッチ(10)は、したがって、ラックピニオンアセンブリの減速比は、連続的に可変であり、キャリッジ(5)の参照速度特性に対して相関した機械的適合を提供することができる。
【0054】
固定ピッチを有したギヤラックと比較して複雑さが増大しているにもかかわらず、発電機(8)が受ける機械的擾乱の減衰は、通常の運転条件に対してより近い動作を行い得るという利点をもたらすことができる。よって、経済的なサイズとし得るという利点をもたらすことができる。
【0055】
大量生産に関し、本発明は、複数のモジュールのネットワーク化を可能とし、ファームとして構成することができる。位置的に近接して配置されることによる複数のモジュールの集積化は、有利には、いくつかの周辺システムの共有を可能とし得るとともに、メンテナンス操作の共有を可能とすることができる。
【0056】
同一のファーム内の複数のモジュールは、ロープやチェーンや連結ロッドを介して、水面上において、メッシュパターンでもって配置することができる。これにより、ファームを所定位置に維持するための手段や係留システム(16)等を、共有することができる。
【0057】
さらに、電力を送電したり整形したりするための手段を、各モジュールの整流器の下流側において共有することができる。これにより、スケールメリットを得ることができる。さらに、上述したように(図7)、一組をなす複数の可変ピッチのギヤラックを使用することにより、同一の整流器を共有することができる。なぜなら、波の周波数が、連結されたすべてのモジュールに対して共通であるからである。これにより、集合的な電力出力を円滑化することができる。この場合、ファーム内の様々な発電機(8)どうしの間にわたってのサイクルフェーズ(図8a〜図8d)の同期は、実際に不要であり、様々なモジュールは、電気的なミスマッチというリスクなく、個別のフロント上に配置することができる。
【0058】
さらに、整流器の上流側におけるモジュールどうしの相互接続により、格別の駆動作用を得ることができる。これは、特に低振幅の波上におけるキャリッジ(5)の移動セットシーケンス時において、制御計画の数を大幅に延長させる。
【0059】
さらに、定常状態においては、変換サイクルの規則性は、集合的効果によって改良される傾向がある。
【0060】
本発明においては、振動バラスト(4)からなる経済的デバイスにより、電力抽出を実質的に改良することができる。
【0061】
重要な質量が与えられ、波に抗するように制御された移動が与えられると、キャリッジ(5)は、モジュールの縦揺れ運動を著しく低減させる。これは、効率を大幅に下落させる。それ自体の重量の作用によって軸線X方向に沿って並進移動する振動的平衡錘により、縦揺れ運動時のキャリッジ(5)の効果を補償することができ、増幅することさえできる。
【0062】
非限定的な好ましい実施形態においては、図1に示すように、本発明は、船体(12)の船首から船尾までを連結する軸線X方向の一組をなす複数の平行直線ダクト(32)として配置することにより、モジュール構成空間の全部または一部を利用する。ダクト(32)は、水によって部分的に充填される。これにより、可動バラスト(4)を構成することができる。その流れは、波と一緒に、自然的に振動する。このデバイスにより、一方においては、縦揺れ運動を増幅することができ、他方においては、図8bおよび図8dに示す最大傾斜フェーズの持続時間を延ばすことができる。図8aおよび図8cに示すような傾斜増大フェーズおよび傾斜減少フェーズの際のバラスト(4)の速い流れは、モジュールの最も低い端部における一時的な停滞をもたらす。このようにして、振動バラスト(4)は、最大傾斜位置における安定化に寄与するとともに、最適傾斜条件においては、キャリッジ(5)の降下のための時間を長くする。
【0063】
ダクト(32)が全体的に長尺形状であることは、横揺れ運動に寄与することなく、縦揺れ運動に寄与するものであって、好ましい。
【0064】
本発明の思慮深い実施形態においては、バラスト(4)を収容したダクト(32)は、船体(1)を構成するリブに対して組み合わされる。
【0065】
そのような構成の興味は、そのような構成が提供する安価な制御可能性である。実際、ダクト(32)内におけるエア比率は、ダクト内のバラスト(4)の流体力学的振る舞いを決定する。
【0066】
本発明は、この点において、有利には、ダクト(32)を複数の個別隔室へと分割し得ることを提供する。図1に示す特別の場合には、第1隔室(33)は、船体(1)の中央部分を占有し、第2隔室(34)は、船体(1)の両サイドにおいて2つの対称的な廊下を占有する。
【0067】
同じ隔室内におけるダクト(32)の一様な充填レベルは、隣接するダクト(32)どうしの間に形成された開口(37)によって、および、図2に示す一組をなす複数のパイプ(35)によって、得られる。パイプは、第2隔室(34)の2つの部分を連通させている。
【0068】
本発明においては、制御された双方向性ポンピングシステムは、隔室(33,34)間にわたってのバラスト(4)の移送を確保し、これにより、モジュール全体の縦揺れ運動特性を調節することができる。これにより、入力波の特性に応じた最適の抽出条件を確保することができる。部分的に充填された隔室の重心は、モジュールのX軸線に沿って移動する。逆に、全体的に充填された隔室あるいは空虚な隔室は、不活性であり、よって、縦揺れ運動には寄与しない。
【0069】
したがって、バラスト(4)のポンピングデバイスは、嵐の時に、あるいは、メンテナンス操作時に、モジュールの安全性を維持するための手段を提供する。これは、一方の隔室(33,34)内へのバラスト(4)の全移送のためである。
【0070】
本発明においては、上記のすべての構成に適合した付加的な構成であるとともに、同一のモジュール内において2つの個別セットのレール(6)上において互いに逆向きに回転する2つの同様のキャリッジ(5)を使用した付加的な構成により、船体(1)の横揺れ運動を意義深く低減することができる。そのような構成においては、実際、2つのキャリッジ(5)は、X軸線に関して対称的な運動をするように、制御される。これにより、これら2つの質量の全体の重心は、同じ軸線X方向に沿ってのみ振動する。
【0071】
ガイドラインとして、本発明を何ら限定することなく、2セットのレールは、典型的には、同軸的に重ね合わされる、あるいは、同一平面的とされてモジュールの長手方向軸線Xに関して対称的なものとされる。
【0072】
よって、本発明は、以下の様々な構成に興味がある。
【0073】
[構成1]
波力エネルギー変換モジュールであって、
偏心質量の軌道運動を利用したものであり、
前記偏心質量が、浮遊型の収容ボディ内に全体的に収容され、
このような波力エネルギー変換モジュールが、
−矩形の浮遊物体の形状とされた船体(1)と、
−メンテナンス操作のためのホストプラットホームとして装着された蓋(2)と、
−一組をなす複数の円形レール(6)によって案内された軌道に沿って移動する錘キャリッジ(5)と、
−前記キャリッジ(5)上に取り付けられた発電機(8)であるとともに、前記レール(6)に対して同軸的とされた一組をなす複数のギヤラック(9)に沿って1つまたは複数のピニオン(27)によって駆動される、発電機(8)と、
を具備している、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0074】
[構成2]
構成1記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記船体(1)の底面が、縦揺れ運動に適したものとして構成され、
前記船体(1)の前記底面が、縦揺れ運動に適するように、
−隆起した船首(11)と、
−船尾(12)の近傍に設けられたバルジ(13)と、
−一組をなす複数の平行フィン(15)と、
−縦揺れ運動軸線に沿って配置されたアンカー止めポイントと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0075】
[構成3]
構成2記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)が、
−サスペンション(18)上に取り付けられたベアリング(17)によって保持された円錐台形状の支持ローラ(7)と、
−サスペンション(26)上に取り付けられたベアリング(24)によって保持された径方向に押圧される円筒形ローラ(22)と、
によって、スライドすることなく、このキャリッジの経路上に維持されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0076】
[構成4]
構成3記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記発電機(8)が、スリップリングまたはカテナリーという態様のスライドコンタクト(28)を介して、整流器に対して、接続されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0077】
[構成5]
構成4記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記発電機(8)が、サスペンションを介して取り付けられ、
前記発電機(8)には、一組をなす複数のアイドラーホイール(30)が設けられ、
これらアイドラーホイール(30)が、係止体として機能し、これにより、前記一組をなす複数のギヤラック(9)上への、前記発電機(8)のシャフトの径方向圧力が制限される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0078】
[構成6]
構成1〜5のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記軌道上における前記キャリッジ(5)の移動が、制御システムによって制御され、
前記制御システムが、少なくとも、
−前記モジュールの傾斜を測定するためのセンサと、
−少なくとも1サイクルの後に、前記キャリッジ(5)の位置を測定するためのセンサと、
−入力波の周波数を測定するためのセンサと、
−前記発電機(8)を制御するための電子回路と、
−前記キャリッジ(5)を全体的に停止させ得るブレーキデバイスと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0079】
[構成7]
構成1〜6のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記キャリッジ(5)の重心(26)の偏心度合いが、互いの相対位置が調節可能とされた複数の角度セクター(36)という態様でもって前記キャリッジ(5)の質量を分散させることにより、連続的に調節可能とされている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0080】
[構成8]
構成1〜7のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記ギヤラック(9)の少なくとも1つが、当該ギヤラック(9)の歯(31)に対して噛合している高さ部分において噛合する円錐台形状のピニオン(27)のおかげで、連続的に可変のピッチを有し、
前記歯(31)どうしの間の間隔が、前記発電機(8)の前記軌道に沿って変化し、
前記ピニオン(27)の見かけの直径が大きくなればなるほど、前記歯(31)どうしが、より大きく離間される、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0081】
[構成9]
構成1〜8のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
縦揺れ運動を増大させるデバイスを具備し、
縦揺れ運動を増大させるために、流体質量という態様の振動バラスト(4)が設けられ、
この振動バラスト(4)が、この振動バラスト(4)の重量の移動に基づき、一組をなす複数の長手方向ダクト(32)内において移動する、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0082】
[構成10]
構成9記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
前記振動バラスト(4)を動的に調節するための調節システムを具備し、
この調節システムが、
−互いに個別とされた複数の長手方向隔室内においてグループ分けされた複数のダクト(32)であるとともに、前記船体(1)の中央軸線に対しての対称的な充填を可能とする、複数のダクト(32)と、
−同じ隔室内における一様な充填レベルを可能とする一組をなす複数の開口(37)および一組をなす複数のパイプ(35)と、
−1つの隔室から他の隔室への前記バラスト(4)の移動を可能とするサーボポンプと、
を備えている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0083】
[構成11]
構成1〜10のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
同一の前記ボディ内において、それぞれ対応するレール(6)上に設置された二組をなすキャリッジ(5)が設けられ、
これらキャリッジ(5)が、互いに逆向きに回転するものとされ、
これにより、横揺れ運動が制限されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0084】
[構成12]
構成1〜11のいずれか1項に記載の波力エネルギー変換モジュールにおいて、
互いに同様の複数のモジュールを組み合わせることにより、ネットワークとして設けられたファームが形成され、
これにより、特に、位置を維持するための手段と、電流の整流および送電のための手段と、が共有されている、
ことを特徴とする波力エネルギー変換モジュール。
【0085】
[構成13]
構成1〜12のいずれか1項に記載された波力エネルギー変換モジュールを使用して波力エネルギーを抽出することにより、電力を生成するための方法であって、
この方法が、少なくとも、
1)入力波の効果によって傾斜が増大するフェーズにおいて、前記キャリッジ(5)の前記軌道を、前記船首(11)の近傍に位置させ、これにより、前記キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを獲得させるステップと、
2)前記モジュールが最大傾斜に到達した後に、前記キャリッジ(5)を下向きに加速させながら、前記位置エネルギーを運動エネルギーへと変換するステップと、
3)前記モジュールが波頭を乗り越えたことのために傾斜が減少するフェーズにおいて、前記キャリッジ(5)の前記軌道を、前記船尾(12)の近傍に位置させ、これにより、前記キャリッジに、重力に基づく位置エネルギーを再び獲得させるステップと、
4)波が前記船尾を持ち上げることのために、前記モジュールが最大傾斜に到達した後に、前記キャリッジ(5)を加速させながら、前記位置エネルギーを再び運動エネルギーへと変換するステップと、
を具備している、
ことを特徴とする方法。
【0086】
[構成14]
構成13記載の方法において、
生成された電力を、消費場所に向けてあるいは分配ステーションに向けて送電し、
好ましくはラインの端部に配置されたインバータを使用して、制御されたAC電圧を生成して、これにより、グリッドに対しての接続に関して互換性を有したものとする、
ことを特徴とする方法。
【0087】
[構成15]
波力エネルギー変換モジュールの使用であって、
構成1〜12のいずれか1項に記載された波力エネルギー変換モジュールを少なくとも1つ使用する、
ことを特徴とする使用。
【符号の説明】
【0088】
1 船体
2 蓋
4 振動バラスト
5 キャリッジ
6 レール
7 支持ローラ
8 発電機
9 ギヤラック
11 船首
12 船尾
13 バルジ
15 平行フィン
17 ベアリング
18 サスペンション
22 円筒形ローラ
24 ベアリング
26 サスペンション
27 ピニオン
28 スライドコンタクト
30 アイドラーホイール
31 歯
32 長手方向ダクト
35 パイプ
36 角度セクター
37 開口
【国際調査報告】