(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-506352(P2017-506352A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】溶液と接触するナノ電子デバイスを安定化するための方法、装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20170210BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
G01N27/28 321F
G01N27/416 302M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-570936(P2016-570936)
(86)(22)【出願日】2015年2月25日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】US2015017519
(87)【国際公開番号】WO2015130781
(87)【国際公開日】20150903
(31)【優先権主張番号】61/944,322
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511241608
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ アクティング フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リンジー, スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】パン, ペイ
(57)【要約】
第1の感知電極と、間隙によって第1の電極から分離される第2の感知電極とを含む、1つまたはそれを上回る分子を識別および/もしくは配列決定するための装置。電解質が、間隙内に含まれる。第1の感知電極および第2の感知電極の表面は、1つまたはそれを上回る分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される。本装置はまた、電解質と接触し、感知電極のうちの1つに連結される基準電極も含む。上記装置は、前記基準電極を前記感知電極のうちの1つと連結するための電圧源をさらに備えてもよく、前記電圧源は、前記基準電極に対して一定の電位差で前記感知電極を保持するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれを上回る分子を識別および/もしくは配列決定するための装置であって、
第1の感知電極と、
間隙によって前記第1の電極から分離される第2の感知電極であって、電解質が前記間隙内に含まれ、前記第1の感知電極および前記第2の感知電極の表面は、前記1つまたはそれを上回る分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される、第2の感知電極と、
前記電解質と接触し、前記感知電極のうちの1つに連結される基準電極と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記基準電極を前記感知電極のうちの1つと連結するための電圧源をさらに備え、前記電圧源は、前記基準電極に対して一定の電位差で前記感知電極を保持するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
認識トンネリング(RT)装置内の基準電極の電位を判定する方法であって、前記RT装置は、
第1の感知電極と、
間隙によって前記第1の電極から分離される第2の感知電極であって、電解質が前記間隙内に含まれ、前記第1の感知電極および前記第2の感知電極の表面は、前記1つまたはそれを上回る分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される、第2の感知電極と、
前記電解質と接触し、前記感知電極のうちの1つに連結される基準電極と、
前記基準電極を前記第1の感知電極と連結するための電圧源であって、前記基準電極に対して一定の電位差で前記第1の感知電極を保持するように構成される、電圧源と、
を備え、前記方法は、
前記第1の感知電極と前記基準電極との間でバイアス電圧を掃引するステップと、
前記第1の感知電極と前記基準電極との間の電位差の複数の固定値のそれぞれについて、前記第1の感知電極を通る漏出電流を記録するステップと、
最小漏出電流に対応する基準電極電位を選択するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年2月25日に出願された「METHODS, APPARATUSES AND SYSTEMS FOR STABILIZING NANO−ELECTRIC DEVICES IN CONTACT WITH SOLUTIONS」と題する米国仮出願第61/944,322号に基づく優先権を主張しており、その全体の開示は、参考としてその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府資金による研究の記載)
本発明は、国立衛生研究所によって支給された助成金第R01 HG006323号の下で政府支援により行われた。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
(背景)
Al
2O
3の層(絶縁体)を有する1つのパラジウム(Pd)電極を使用する、認識トンネリング(RT)に基づいて単一分子を検出および分析するためのナノスケール電子デバイスが、以前に説明されている(例えば、米国特許出願公開第2014/0113386号参照)。絶縁層の上に堆積させられたPd層を有する別の電極が含まれる。開口部または間隙が、層を通して確立され、アダプタ分子で官能化される露出金属が、明確に定義された化学構成で被分析物を捕捉する役割を果たす。アダプタ分子の実施例は、以降ではICAと称される、4(5)−(2−メルカプトエチル)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドである。電圧が間隙にわたって印加されると、間隙を通過し、電極上で官能化されたアダプタ分子を介して一方の電極を他方の電極に架橋する分子(例えば、被分析物)に基づく、一連の電流スパイクが生成される。電流スパイクは、関連電流スパイクについて間隙内の特定の被分析物を識別するように(例えば、機械学習アルゴリズムを介して)分析される。
【0004】
しかしながら、電極上に吸着する荷電被分析物分子は、電極の電位を変化し得、RT装置の比較的小さい規模により、生成される電流スパイクに有意な影響を引き起こし得る。この問題は、例えば、単一の半導体ナノワイヤ(Xie,P.,Q.Xiong,Y.Fang,Q.Qing,and C.M.Lieber,Local Electrical Potential Detection of DNA by Nanowire−Nanopore Sensors.Nature Nanotechnology,2012.7:p.119−125)または単一の炭素ナノチューブ(Sims,P.C.,I.S.Moody,Y.Choi,C.Dong,M.Iftikhar,B.L.Corso,O.T.Gul,P.G.Collins,and G.A.Weiss,Electronic Measurements of Single-Molecule Catalysis by Camp−Dependent Protein Kinase A.J.Am Chem Soc,2013.135:p.7861−7868)で構成された装置、およびRT装置を溶液と接触している基準電極24に接続することによってそれを安定させる試行において認識されている(例えば、装置21(
図2)参照)。そのような配列は、起こり得る荷電分子の吸着にもかかわらず、基準電極と同一の電位で装置の表面を維持するために使用されてもよい。そのようなナノワイヤデバイスでは、小さいバイアスV(22)のみが、デバイス全体の長さにわたって印加される。
【0005】
いくつかのRT装置では、問題は、有意なバイアス電圧Vが溶液と接触している比較的小さい間隙にわたって印加されるため、より複雑であり得る。バイアスVは、約0.5Vのオーダーであり得、したがって、一方の電極は、溶液との相互作用が少ない電位にあり、他方の電極は、そうではない場合があり、RT接合部において不安定性を引き起こし得る。(被分析物がヌクレオチドdAMPを含む)
図3aおよび(被分析物がヌクレオチドdGMPを含む)
図3bは、ベースライン電流(矢印参照)にゆっくり戻る電流出力の揺れを図示し、これは、トンネリングプロセスと関連付けられないが、むしろ比較的遅い、すなわち、数秒の荷電種の吸着、および電極と接触している溶液からのその放出によって関連付けられると理解される。加えて、RT装置は、数分のみの動作後に非アクティブになり得る。したがって、導電性溶液と接触している複数の(例えば、2つの)電極感知デバイスを安定させる方法を見出すことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0113386号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Xie,P.,Q.Xiong,Y.Fang,Q.Qing,and C.M.Lieber,Local Electrical Potential Detection of DNA by Nanowire−Nanopore Sensors.Nature Nanotechnology,2012.7:p.119−125
【非特許文献2】Sims,P.C.,I.S.Moody,Y.Choi,C.Dong,M.Iftikhar,B.L.Corso,O.T.Gul,P.G.Collins,and G.A.Weiss,Electronic Measurements of Single-Molecule Catalysis by Camp−Dependent Protein Kinase A.J.Am Chem Soc,2013.135:p.7861−7868
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
1つまたはそれを上回る第1の分子を識別および/もしくは配列決定するための装置は、第1の感知電極と、第1の電極から分離される第2の感知電極とを含む。本装置はさらに、分離された電極によって確立される間隙を含み、電解質が、この間隙内に含まれる。電極表面は、1つまたはそれを上回る第1の分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される。本装置はさらに、電解質と接触し、感知電極のうちの1つに連結される基準電極を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、別個の溶液コンパートメントがデバイスの上方および下方に提供される(その中の対応する溶液は、シス溶液およびトランス溶液と標識され得る)、いくつかの実施形態によるRT装置および基準電極を図示する。Vは、上部電極と底部電極との間に印加されるバイアスであり、V
refは、基準電極に対して印加されるバイアスである。
【0010】
【
図2】
図2は、従来技術による、ナノワイヤデバイスを伴う基準電極の使用を図示する。
【0011】
【
図3】
図3a−3dは、基準電極(3aおよび3b)が欠けており、不安定な電流出力を生じるRT装置の電流スパイク結果と、長い周期にわたって安定して動作する基準電極(3cおよび3d)を含む、RT装置の電流スパイク結果とを図示する。
【0012】
【
図4】
図4は、電位がAg/AgCl基準電極に対して0Vの負に掃引されるときに、水素発生の結果として発現する大電流を示す、イミダゾール(ICA)コーティングされたPd電極の電流−電圧掃引を図示する。
【0013】
【
図5】
図5aは、Ag/AgCl基準電極に対する+50mVからのICAコーティングされたPd電極のサイクリックボルタンメトリを示す。本システムは、水素発生に対して安定しているが、+380mVにおいてピークになる電気化学的雑音を示している。
図5bは、裸のPd電極が
図5aの電気化学的雑音を示さないことを図示する。
図5cは、下部電極がAg/AgClと対比して+100mVで保持される、接合部からのRT信号を示す。Ag/AgClとしての+380mVに対応する、約280mVから始まる、雑音スパイクが明白である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
図1に示されるように、厚さ約2nmの(例えば)Al
2O
3の絶縁体2の層がその上に堆積させられている、約10nm厚さ1の(例えば)Pdの層を有する、第1の電極がある。第2の電極3もまた、絶縁層の上に堆積させられた、例えば、厚さ約10nmのPdの層を含んでもよい。開口部/間隙が、層を通して確立され、アダプタ分子(例えば、ICA)4で官能化される露出金属が、明確に定義された化学構成で被分析物を捕捉する役割を果たす。電圧V(6)が間隙にわたって印加されると、官能化されたアダプタ分子および捕捉された被分析物を介して1つの電極から別の電極まで通過する分子(例えば、被分析物)に基づく、一連の電流スパイクが生成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、RT装置は、例えば、溶液と接触して配置され、電圧源Vref7を介して電極のうちのいずれか1つに接続される、塩化銀層で覆われた銀ワイヤを備える、基準電極8を含み、Vrefは、バイアスV6において操作される2電極デバイスの安定性を最大限にするように選択される。基準は、他方の電極が基準電極に接続される電極に対して固定電位差で保持される限り、RTデバイス内の電極のうちのいずれか1つに接続されることができる。いくつかの実施形態では、安定した動作のためのVrefの値を設定するための基準は、以下で説明されるとおりである。いくつかの実施形態では、基準電極9、10は、(所望される場合)トンネル接合部を通して荷電分子を駆動するように印加され得る、第2のバイアス11とのトンネル接合部の上方および(および/または)下方で溶液と接触して配置されることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、電気化学的データが、Vref7および/またはV、すなわち、装置6を横切るバイアスの値を選択することに役立つように取得される。
図4は、ICAの単層でコーティングされたPd電極を使用して取得された、一連のサイクリックボルタモグラムを図示する。これらの掃引では、掃引の電位範囲が、Ag/AgClと対比して0Vの周囲で段階的に増加させられた。電極が0Vの負にさらに掃引されると、水素発生の結果として、大電流が生成される(Burke,L.D.and J.K.Casey,An Examination of the Behavoir of Palladium Electrodes in Acid.J.Electrochem.Soc.,1993.104:p.1284−1291)。その結果、負荷電分子を吸着するデバイスは、水素が発生させられ、デバイスを不安定にする、電位範囲に駆動され得る。いくつかの実施形態では、Vrefは、各電極が、電気化学的反応が電極と接触している溶液中の分子またはイオンと生じる電位にないように、選択される。
【0017】
本不安定性の例が、
図3aおよび3bに示される。これは、100マイクロモルアデノシン一リン酸(
図3a)および100マイクロモルグアノシン一リン酸(
図3b)の存在下で得られたRT信号を示す。認識トンネリングによって生成される信号スパイクは、バーストで生じるが、(矢印によって指し示される)バックグラウンド電流の大きな変化とともに激しい電流変動を伴う。dGMP(
図3b)の場合、デバイスは、わずかな時間のみにわたってRT信号を生成する。数分の動作後、デバイスは常に非アクティブになった。
【0018】
装置の安定性は、本明細書で開示される装置および方法によって向上させられてもよい。
図3c(dAMP)および
図3d(dGMP)は、V
refが約+100mVに設定されるときに(Ag/AgClに対する底部電極)、どのようにして激しい電流変動が除去され得、正常な認識トンネリング信号が復元され得、ベースライン電流が安定させられ得るかを示す。そのような安定させられた装置は、10時間またはそれを上回る期間にわたって連続的に動作している。この特定の例では、V
refは、基準に接続された電極が、依然として(Ag/AgClスケールでは約−150mVである)水素発生のための電位のわずかに正であるように選択された。順に、第2の電極は、酸化反応が本溶液中で起こるための電位より小さい、電位V
ref+V
biasで保持された。したがって、両方の電極は、電気化学的反応が回避されるような電位で保持される。
【0019】
第2の電極(
図1では3)は、Ag/AgCl基準(
図1では8)に対して電位V
ref+Vで保持される。その電気化学的安定性も、重要である。例として、
図5aは、ICA単層で官能化されたPd電極のサイクリックボルタンメトリを示す。掃引は、Ag/AgClと対比して+50mVで始まり、上側振幅は、最大750mVまで段階的に増加させられる。比較のために、
図5bは、裸のPdのサイクリックボルタンメトリを示す。最高バイアスにおける電流の増加は、(電流がより低いため、PdがICAで覆われるときに若干抑制される−
図5a)Pd表面上の酸化プロセスを明確に反映する。しかしながら、ICAで覆われた表面はまた、約380mVでピークになる、ある過剰な電流の証拠も示す。
図5cは、Ag/AgClと対比して+100mVで保持された下部電極(
図1では1)とのトンネル接合部から得られたRT信号を示す。上部電極(
図1では3)に印加されるバイアスが約280mVを超えるときに、余剰雑音スパイクが生じる。したがって、これらの新しい特徴は、Ag/AgClに対して約+380mVで観察される電気化学的信号と関連付けられる。したがって、本デバイスのための最適な動作点は、この例では、第2の電極がAg/AgClと対比して+350mVを超えるべきではない一方で、Ag/AgClと対比して+100mVで保持される1つの電極を有することである。これらの条件で操作されるデバイスは、優れた化学的認識信号を与え、安定であり、長期間にわたって付加的雑音が実質的にない。説明されるように接続された基準電極がないと、デバイスは、
図3aおよび3bに図示されるように、ベースラインにおける大きなシフトを伴って雑音が多くなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、電極を通して開口部を切断するためのマスク、ならびに(トンネル接合部の近傍を除いて)電極から溶液を保つための流体ウェルの両方として使用され得る、接合部の上方に開口部を伴って、PMMAレジストのスピンコーティングによって堆積させられ得る、厚いポリマー層を含むことによって、付加的改良が行われてもよい。したがって、そのような実施形態に関して、本プロセスは、(バイアスされた基準電極に接触している)溶液がまた、装置の表面上の溶液漏出により、トンネリング装置との広い接触面積を生じたときに、漏出電流を排除してもよい。その目的のために、電極は、例えば、Pd電極をエッチングするために使用されるClガスおよびAl
2O
3をエッチングするために使用されるBCl
3ガスを用いた、反応性イオンエッチングを使用して、切断されることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、基準電極は、AgCl塩でコーティングされたAgワイヤを備えてもよいが、当業者は、実質的に一定の分極の任意の電極が十分であり得ることを理解し得る。そのような電極の非限定的な例は、銀/塩化銀電極、飽和カロメル電極、標準水素電極、および/または同等物を含む。裸の銀、パラジム、または白金ワイヤさえも、イオンおよび分子がその表面から吸収または脱着するときに、その電位が少量しか変化しないように、その面積が電解質に暴露されたトンネリング電極の面積の何千倍も広い限り役立つであろう。したがって、任意の大型金属電極(いくつかの実施形態では、
図1の感知電極1および3よりはるかに大きい)が、荷電種がその表面から吸収および/または脱着されるにつれて、電位のわずかな変化、すなわち、数10mV未満の変化を受けるようなサイズである限り、十分であり得る。このようにして、基準電極は、それが電解質と接触するような位置で大型(例えば、少なくとも面積が1ミクロン×1ミクロン)金属パッドを製作することによって、デバイスに構築されることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る第1の分子を識別および/もしくは配列決定するための装置が提供され、第1の感知電極と、第1の電極から分離される第2の感知電極と、分離された電極によって確立される間隙とを備える。電解質が、間隙内に含まれ、電極表面は、1つまたはそれを上回る第1の分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される。本装置はまた、電解質と接触し、感知電極のうちの1つに連結される基準電極も含む。いくつかのそのような実施形態では、本装置はさらに、基準電極を感知電極のうちの1つと連結するための電圧源を備えてもよく、電圧源は、基準電極に対して一定の電位差で基準電極に連結された感知電極を保持するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、認識トンネリング(RT)装置内の基準電極の電位を判定する方法が提供される。RT装置は、第1の感知電極と、第1の電極から分離される第2の感知電極と、分離された電極によって確立される間隙とを備えてもよい。電解質が、間隙内に含有され、電極表面は、1つまたはそれを上回る第1の分子に接触するためのアダプタ分子で官能化される。本装置はさらに、電解質と接触し、感知電極のうちの1つに連結される基準電極と、基準電極を第1の感知電極と連結するための電圧源とを備えてもよい。電圧源は、基準電極に対して一定の電位差で第1の感知電極を保持するように構成される。本方法は、第1の感知電極と基準電極との間でバイアス電圧を掃引するステップと、第1の感知電極を通る漏出電流、および第1の感知電極と基準電極との間の電位差の複数の固定値のそれぞれに対する雑音を記録するステップと、最小漏出電流に対応する基準電極電位を選択するステップとを含む。
【0024】
本願で提示される特許、特許出願、論文、ウェブページ、本等を含むが、それらに限定されない、刊行物または他の文書のありとあらゆる参照は、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0025】
いくつかの変形例が上記で詳細に説明されているが、他の修正も可能である。例えば、任意の図に描写される、および/または本明細書に説明される、要素/構造の任意の論理フローまたは配列は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序/配列、もしくは順番を必要としない。他の実装が、後に続く以下の実施例のうちの少なくともいくつかの範囲内であってもよい。
【0026】
他の場所で記述されるように、開示された実施形態は、例証目的のみで説明されており、限定的ではない。本明細書に含まれる教示から明白となり得る、他の実施形態も可能であり、本開示によって網羅される。したがって、本開示の範疇および範囲は、上記の実施形態のうちのいずれかによって限定されるべきではないが、本開示およびそれらの均等物によって支持される請求項のみに従って定義されるべきである。また、本開示の実施形態は、RTシステムに対応するありとあらゆる要素を含む、任意の他の開示された調合、方法、システム、およびデバイスからのありとあらゆる要素をさらに含み得る、調合、方法、システム、およびデバイスを含んでもよい。換言すると、1つまたは別の開示された実施形態からの要素は、他の開示された実施形態からの要素と交換可能であり得る。加えて、開示された実施形態の1つまたはそれを上回る特徴/要素は、除去され、依然として特許性のある主題をもたらしてもよい(したがって、本開示のさらなる実施形態をもたらす)。最終的に、いくつかのそのような実施形態では、従来技術の調合、方法、システム、およびデバイスとともに含まれる、1つおよび/または別の要素/ステップ/構造が、本明細書で開示される実施形態のうちのいくつかから欠けているため、本明細書で開示される実施形態のうちのいくつかは、従来技術と比べて区別可能であり得、そのような欠けている要素の結果として、そのような実施形態は、従来技術と比べて特許性がある。
【国際調査報告】