特表2017-507123(P2017-507123A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイジン ストマトロジー ホスピタル,キャピタル メディカル ユニバーシティの特許一覧 ▶ ベイジン エスエイチ バイオ−テック コーポレイションの特許一覧

特表2017-507123歯原性幹細胞および遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-507123(P2017-507123A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】歯原性幹細胞および遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/32 20150101AFI20170224BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20170224BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20170224BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   A61K35/32
   A61K35/761
   A61P1/02
   A61P19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-549325(P2016-549325)
(86)(22)【出願日】2015年1月27日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月27日
(86)【国際出願番号】CN2015071589
(87)【国際公開番号】WO2015110082
(87)【国際公開日】20150730
(31)【優先権主張番号】201410038128.7
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410049182.1
(32)【優先日】2014年2月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516225739
【氏名又は名称】ベイジン ストマトロジー ホスピタル,キャピタル メディカル ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】516225740
【氏名又は名称】ベイジン エスエイチ バイオ−テック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ワーン ソーンリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ズウゾーァ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ワーン ホワ
(72)【発明者】
【氏名】リウ イー
(72)【発明者】
【氏名】ワーン ジンソーン
(72)【発明者】
【氏名】フー ジーンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ビー ジエンジン
(72)【発明者】
【氏名】シエ イーリン
(72)【発明者】
【氏名】アン ウエンチアーン
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA67
4C087ZA96
(57)【要約】
本発明は、歯周病を治療するため、歯周の骨組織もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、および/または急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するための製品の調製における、歯原性幹細胞および遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用を提供する。また、本発明は、遺伝的に改変された歯原性幹細胞を得るために、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターにより外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入された歯原性幹細胞および/または遺伝的に改変された歯原性幹細胞を含んでなる組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周病を治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用。
【請求項2】
急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用。
【請求項3】
前記歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、脱落乳歯歯髄幹細胞、歯周靭帯幹細胞、および歯根尖部幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入され、かつ、外来性肝細胞成長因子を発現することを特徴とする、遺伝的に改変された歯原性幹細胞。
【請求項5】
前記遺伝的に改変された歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、脱落乳歯歯髄幹細胞、歯周靭帯幹細胞、および歯根尖部幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である、請求項4に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞。
【請求項6】
前記歯原性幹細胞は、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターにより、前記外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入されている、請求項4または5に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞。
【請求項7】
歯周病を治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における、請求項4〜6のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用。
【請求項8】
急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における、請求項4〜6のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用。
【請求項9】
歯周病を治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される、有効量の歯原性幹細胞および場合により医薬的に許容される担体または賦形剤を含む組成物であって、
ここで、好ましくは、該歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞または歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である、前記組成物。
【請求項10】
有効量の請求項4〜6に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞および場合により医薬的に許容される担体または賦形剤を含む組成物。
【請求項11】
歯周病を治療するため、歯周の骨組織もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織の修復を促進するための製品の調製における肝細胞成長因子の使用。
【請求項12】
歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための方法であって、有効量の請求項4〜6のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞または請求項9もしくは10に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための方法であって、有効量の請求項4〜6のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞または請求項9もしくは10に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項14】
歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される歯原性幹細胞。
【請求項15】
歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された歯原性幹細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯原性幹細胞(歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靭帯幹細胞、歯根尖部の幹細胞)および遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用、特に、歯周病を治療するため、様々な理由(例えば歯周病)に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製、並びに、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するための製品の調製における、歯原性幹細胞および遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用に関する。また、本発明は、遺伝的に改変された歯原性幹細胞、並びに、歯原性幹細胞および/または遺伝的に改変された歯原性幹細胞を含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は一般的な臨床口腔疾患であり、特徴的な歯周組織(歯周靱帯、セメント質、骨、及び歯茎を含む)の損傷を伴う感染症であり、その主な臨床症状は、歯肉の炎症および出血、歯周ポケットの形成、歯槽骨の吸収、歯牙弛緩、そして歯がぐらつき抜けることすらある。歯周病は、歯牙脱落の主な原因であるのみでなく、特定の全身性疾患の発生にも関連する。歯周病は、多くの人々に流行しており、幼児及び青年では、歯肉炎の有病率は70%〜90%、慢性歯周病は60%超、侵襲性歯周病は5%〜15%であり、歯周病は歯牙脱落の30〜44%を占める。歯周アタッチメントの崩壊と歯槽骨の発症後の最良の方法は健康な歯周組織を完全に再構築することである。現在、歯周病を治療するための臨床的な方法として、歯周の基礎的な治療(歯のスケーリング、掻爬、ルート形成)、歯周フラップ手術、および歯周組織の再生が挙げられる。歯周組織を再生するための国内外の最新の研究方法としては、以下が挙げられる:(1)組織再生誘導(guided tissue regeneration)GTR:上皮組織が歯周欠陥部の内部へ成長するのを回避するために、吸収性又は非吸収性のバイオフィルムまたはチタンフィルムを、歯周組織の欠損部に配置する。充填材、人工骨、担体、または歯周再生誘導因子を歯周欠損内に移植し得る。(2)歯周組織の工学的再生技術では、種細胞を取得する研究が盛んである。現在、歯との関連が見出さている主な幹細胞としては以下が挙げられる:歯髄幹細胞(dental pulp stem cells:DPSC)、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞(stem cells from human exfoliated deciduous teeth, SHED:SHED)、歯周靱帯の幹細胞(periodontal ligament stem cells:PDLSC)、歯根尖部の幹細胞(stem cells from apical papilla:SCAP)。これらの細胞の全体的な研究により、歯の発生及び成長に対しポジティブな効果を奏するのみならず、歯の組織工学的な種細胞の供給源が発見できる。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、驚くべきことに、多くの実験により歯原性幹細胞の様々な供給源を、様々な理由(例えば歯周病)に起因する歯周の骨および軟組織の欠損を修復するため、および歯周組織の再生を促進するために使用できることを発見した。同時に、本発明者らは、歯の幹細胞の様々な供給源が、歯槽骨以外の骨の修復にも使用できることを発見し、そして遺伝的に改変された歯原性幹細胞、特に、肝細胞成長因子(HGF)遺伝子が改変された幹細胞による治療効果が優れていることを証明した。
【0004】
本発明の第1の態様は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用に関する。
【0005】
本発明の第2の態様は、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用に関する。
【0006】
本発明の第1および第2の態様における使用では、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0007】
本発明の一の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞である。
【0008】
本発明の別の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞および歯周靱帯の幹細胞を含む。
【0009】
本発明の第3の態様は、外来性肝細胞成長因子を発現する、遺伝的に改変された歯原性幹細胞に関する。
【0010】
本発明の第3の態様のいずれかにおける遺伝的に改変された歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0011】
本発明の一の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞である。
【0012】
本発明の別の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞および歯周靱帯の幹細胞を含む。
【0013】
本発明の第3の態様のいずれかにおける遺伝的に改変された歯原性幹細胞は、外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入され、かつ、外来性肝細胞成長因子を発現する。
【0014】
本発明の第3の態様のいずれかにおける遺伝的に改変された歯原性幹細胞は、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターにより外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入されている。
【0015】
本発明の第4の態様は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における、本発明の第3の態様のいずれかにおける歯原性幹細胞の使用に関する。
【0016】
本発明の第5の態様は、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における、本発明の第3の態様のいずれかにおける歯原性幹細胞の使用に関する。
【0017】
本発明は、有効量の歯原性幹細胞、および場合により、医薬的に許容される担体または賦形剤を含む組成物にも関する。本組成物は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するために使用される。
【0018】
本発明の一の実施形態では、組成物は、歯原性幹細胞を含む細胞懸濁液である。
【0019】
好ましくは、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0020】
本発明の一の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞である。
【0021】
本発明の別の実施形態では、歯原性幹細胞は歯髄幹細胞および歯周靱帯の幹細胞を含む。
【0022】
本発明は、本発明の第3の態様の歯原性幹細胞の有効量、および場合により医薬的に許容される担体または賦形剤を含む組成物にも関する。
【0023】
本発明の一の実施形態では、組成物は、本発明の第3の態様の歯原性幹細胞を含む細胞懸濁液である。
【0024】
本発明は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における本発明の組成物の使用にも関する。
【0025】
本発明は、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における本発明の組成物の使用にも関する。
【0026】
本発明は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における肝細胞成長因子の使用にも関する。
【0027】
本発明は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための方法であって、本発明の第3の態様のいずれかにおける歯原性幹細胞または遺伝的に改変された歯原性幹細胞の有効量、あるいは本発明のいずれかの組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む方法にも関する。
【0028】
本発明は、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための方法であって、本発明の第3の態様のいずれかにおける歯原性幹細胞または遺伝的に改変された歯原性幹細胞の有効量、あるいは本発明のいずれかの組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む方法にも関する。
【0029】
本発明の一実施形態では、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0030】
本発明の一実施形態では、上述の治療のために細胞懸濁液の注射を採用する。
【0031】
また、本発明は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される歯原性幹細胞にも関する。
【0032】
本発明の一実施形態では、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0033】
本発明は、歯周病を予防および/または治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を予防および/または治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される本発明の第3の態様における歯原性幹細胞にも関する。
【0034】
本発明の実施形態では、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。
【0035】
本発明を以下のように詳述する。まず、本発明では、歯周骨及び軟組織の治療、並びに歯周組織の再生に対する、歯原性幹細胞の供給源の違いによる効果を検証した。従って、第1の本発明の態様は、歯周病を治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、および/または歯周組織の再生を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用に関する。
【0036】
本発明では、始めに、異なる組織(例えば、歯髄、歯周膜、根尖部)から得た歯原性幹細胞を分離・培養し、表面マーカー検出並びに得られた歯原性幹細胞の骨形成分化や脂肪生成分化によりこれらの細胞が間葉系幹細胞であることを確認した。従って、得られた歯原性幹細胞を細胞懸濁液とし、異なる供給源からの歯原性幹細胞が歯周の骨組織や軟組織の欠損を治療し、そして歯周組織を再生するのに好ましい効果を有することを実験的に証明した。
【0037】
同時に、本発明者は、異なる供給源から得た歯原性幹細胞が、歯周骨に加え、他の骨組織損傷の修復にも使用できることを検証した。従って、本発明の第2の態様は、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための製品の調製における歯原性幹細胞の使用に関する。
【0038】
本発明は、有効量の歯原性幹細胞を含む組成物であって、歯周病を治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される前記組成物に関する。
【0039】
同時に、本発明者は、歯原性幹細胞は、生体移植後に特別な培養環境を失い、100〜200μmの範囲で浸透微小循環(permeation microcirculation)を通じてのみ栄養を得たので、歯周病を治療するために歯原性幹細胞を局所投与するのはいくつかの制限があることも発見した。細胞の90%超が栄養不足に起因より移植の数日後すぐに死滅し、その後、細胞は、自身の抗炎症作用および抗アポトーシス作用をうまく発揮できず、増殖および他の機能を促進できない。
【0040】
肝細胞成長因子(HGF)は、血管形成の促進、線維化の阻害、生体内での細胞アポトーシスおよび抗炎症作用の低減、等に関し主導的な役割を奏する多機能性成長因子である。本発明者は、歯周組織修復のプロセスにおいて、HGFが以下の生理機能を有していることを発見した:(1)可溶性細胞間接着分子(soluble intercellular adhesion molecule -1 (sICAM-1))などの炎症因子の発現を低減;(2)細胞アポトーシスの阻害、とりわけPI3K/Aktシグナル伝達経路またはSPK−S1Pシグナル伝達経路を活性化することにより、その抗アポトーシス効果を発揮する;(3)血管内皮細胞および血管形成の促進、局所的な血液供給および低酸素の発生を改善することにより、血液の還流を改善する。しかし、HGFタンパク質の構造は、複雑であり、生体内で迅速に代謝される。局所的な損傷領域において高濃度のHGFを得るために、組換えタンパク質の継続的な大量投与を行う必要がある。従って、歯周病または他の全身性の骨組織損傷を治療するために遺伝子治療戦略を使用すること、およびHGFを有する組換えアデノウイルスで改変された歯原性幹細胞を使用することは、幹細胞療法および細胞成長因子療法の二重の利点を有し、相乗的な効果をもたらす。一方、局所的な注射により、大部分の歯原性幹細胞が損傷した歯周組織または他の骨組織内に保持またはホーミングされ、幹細胞の修復作用を発揮し、同時に、HGFの局所的な高濃度により生物学的な役割を発揮する、つまり、HGFの高発現により、歯由来の幹細胞の生存および増殖が促進され、これにより歯原性幹細胞の治療効果が増強される。
【0041】
従って、本発明の第3の態様は、外来性肝細胞成長因子を発現することを特徴とする遺伝的に改変された歯原性幹細胞に関する。本発明の一実施形態では、細胞が肝細胞成長因子を細胞外に分泌するので、HGFの発現は分泌性の発現である。本発明の実施形態では、外来性肝細胞成長因子遺伝子を歯原性幹細胞に導入することにより、歯原性幹細胞が外来性肝細胞成長因子を発現し、歯原性幹細胞が外来性肝細胞成長因子が発現される。
【0042】
外来性肝細胞成長因子遺伝子を歯原性幹細胞に導入する方法は、外来性遺伝子を細胞に導入するための一般的な方法であり、例えばウイルストランスフェクション、プラスミドトランスフェクション、およびリポソームトランスフェクションが挙げられる。本発明の一実施形態では、外来性遺伝子を歯原性幹細胞に導入するための方法は、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのトランスフェクションといったウイルストランスフェクションである。本発明の一実施形態では、ウイルスはアデノウイルスである。
【0043】
本発明の一実施形態では、HGFは、ヒト肝細胞成長因子であり、その遺伝子配列は、K MiyazawaらのMolecular cloning and sequence analysis of cDNA for human hepatocyte growth fator. Biochem Biophys Res Commun, 1989, 163(2):967-973に記載されている。
【0044】
本発明のHGF改変された歯原性幹細胞の調製方法は以下の通りである。歯原性幹細胞(例えば、歯髄幹細胞、ヒト脱落乳歯歯髄から採取した幹細胞、歯周靱帯の幹細胞、および歯根尖部の幹細胞)を分離して培養した。インビトロで第3世代まで培養した後、歯原性幹細胞を肝細胞成長因子(例えば、ヒト肝細胞成長因子遺伝子を有する組換えアデノウイルス(AD−HGF))を用いて改変した。改変から24〜48時間後、細胞懸濁液を注射による治療のため収集した。
【0045】
実験結果により、HGF改変された歯原性幹細胞が、損傷した歯周組織または他の骨組織の局所的な部位にホーミングし、HGFを発現できることが示された。HGFは、抗炎症作用を発揮し、血管形成および他の生物学的効果を促進し得るのみならず、移植された歯原性幹細胞の生存率および増殖を増加し得る。歯原性幹細胞は、免疫調節における役割を発揮し、損傷した組織の炎症を軽減することができる。
【0046】
HGFとMSCとの複合的な作用の下では、歯周組織の損傷を効果的に低減でき、歯周組織および他の骨組織の再生を促進できるので、治療の目的を達成できる。
【0047】
よって、本発明は、歯周病を治療するため、歯周病に起因する歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織を修復するための製品の調製における、本発明の第3の態様のいずれかにおける遺伝的に改変された歯原性幹細胞の使用にも関する。
【0048】
本発明は、本発明の第3の態様のいずれかにおける歯原性幹細胞または遺伝的に改変された歯原性幹細胞の有効量を含む組成物にも関する。
【0049】
本発明の一実施形態では、遺伝的に改変された歯原性幹細胞とは、HGFが改変された歯原性幹細胞、つまり、HGF遺伝子の導入により多量のHGFを発現する歯原性幹細胞を指す。
【0050】
本発明の一実施形態では、組成物は、歯周病、歯周病に起因する歯周骨組織および軟組織の欠損を治療するため、歯周組織の再生を促進するため、急性および慢性の骨組織損傷(例えば、骨折)または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織の修復を促進するために使用される。
【0051】
本発明の一実施形態では、歯原性幹細胞またはHGF改変された歯原性幹細胞を用いて、歯周骨欠損を治療するための方法は、ミニブタの第一下顎大臼歯において歯周病実験モデル確立した後、歯原性幹細胞またはHGF遺伝的に改変された歯原性幹細胞の懸濁液を骨欠損領域に注射する。(歯肉溝出血指数、歯周ポケットの深さ、および臨床的な歯周付着喪失を含む)臨床検査、画像処理、組織学的その他の指標が、治療効果を評価するために使用される。
【0052】
本発明の一実施形態では、歯原性幹細胞またはHGF改変された歯原性幹細胞を用いて、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を治療するため、あるいは骨組織の修復を促進するための方法は、マウス大腿骨骨幹軸骨折モデルを確立した後、歯原性幹細胞またはHGF改変された歯原性幹細胞の懸濁液を骨折部位に注射し、画像パターン解析により治療効果を評価する。
【0053】
よって、本発明は、歯周病を治療するため、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復するため、歯周組織を再生するため、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を治療するため、および/または骨組織の修復を促進するための方法であって、発明の第3の態様のいずれかにおける治療的有効量の歯原性幹細胞または遺伝的に改変された歯原性幹細胞をそれを必要とする対象に投与することを含む方法にも関する。本発明の実施形態では、歯原性幹細胞は、歯髄幹細胞、脱落乳歯歯髄幹細胞、歯周靭帯幹細胞、および歯根尖部幹細胞からなる群より選択される少なくとも1種、例えば2種である。本発明の一実施形態では、細胞懸濁液の注射は、本願明細書に記載のアプローチに使用される。
【0054】
本発明において、記載の歯原性幹細胞は、初期発生中胚葉および外胚葉性幹細胞由来の幹細胞を指す間葉系幹細胞に属する。これらは、とりわけ、分化多能性、造血支持、幹細胞移植の促進、免疫調節、および自己複製における能力を有する。それらは、CD14、CD31、CD34、CD45等の造血幹細胞の表面マーカーおよび白血球分化抗原HLA−DRを発現しないが、CD44、CD29、CD90、CD105、CD73、CD166等の表面マーカーを発現する。
【0055】
本発明において、歯原性幹細胞は、哺乳動物由来である。本発明の一実施形態では、哺乳動物由来の歯原性幹細胞は、ヒト、ブタ(例えば、五指山ミニブタ、貴州翔ブタ)、ウシ、ウマ、サル、ラット、マウス、モルモット、ヒツジ、ヤギからなる群より選択される。
【0056】
本発明において、遺伝的に改変された歯原性幹細胞とは、外来性肝細胞成長因子遺伝子が導入された歯原性幹細胞を指す。歯原性幹細胞は、外来性肝細胞成長因子遺伝子を発現する。
【0057】
本発明において、歯周病を治療する、歯周の骨もしくは軟組織の欠損を修復する、歯周組織の再生を促進する、急性および慢性の骨組織損傷または骨組織欠損を治療する、および/または骨組織の修復を促進するとは、自家若しくは同種異系の疾患を治療することまたは組織を再生することを指す。
【0058】
本発明において、歯周病は、歯肉炎および歯周炎を含む。前者は、歯肉組織内のみで発生し、一方後者は、四種類の歯周支持組織(歯茎、歯周膜、歯槽骨、およびセメント質)に関与する慢性的な感染症であり、しばしば歯周支持組織の炎症による損傷を引き起こし、主な臨床症状は、歯茎の炎症、出血、歯周ポケットの形成、歯槽骨の吸収、歯槽骨の高さの減少、歯のぐらつき、歯が動きやすくなる、咀嚼力の低下、これらにより、力を加えることによる歯の抜け、または自然な歯の抜け等がある。
【0059】
本発明において、歯周組織とは、歯茎、歯周膜、歯槽骨、およびセメント質を含む歯周支持組織を指す。
【0060】
本発明において、歯周骨組織は、歯槽骨およびセメント質を含む。
【0061】
本発明において、歯周軟組織は、歯肉および歯周膜を含む。
【0062】
本発明において、歯周骨組織および軟組織の欠損は、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎、壊死性および潰瘍性歯周炎に起因する骨の欠損および軟組織の欠損を含む。
【0063】
本発明において、骨組織は、ヒトの身体を支持するシステムである骨としても理解され、主に骨、骨膜および骨髄から成り、形状に応じて長骨、短骨、扁平骨、不規則骨、および混合骨に分類できる。
【0064】
本発明において、骨組織欠損は、骨構造の完全性が破壊された状態を指す。外傷、感染、腫瘍、骨髄炎の外科的デブリドマン、および様々な先天性疾患が骨欠損の主な原因である。
【0065】
本発明の一実施形態では、骨組織損傷は骨折である。本発明において、未改変とは、HGF改変がされていないこと、すなわち、外来性HGFが細胞内に導入されていないことを指す。
【0066】
本発明において、用語「製品」は、使用する歯原性幹細胞に適切な様々な形態、例えば、薬剤、組成物、医薬組成物等を指す。
【0067】
本発明において、用語「組成物」は、当該分野における当業者により一般的に理解される意味を有し、通常、直接的または間接的(例えば、前希釈)に診療で使用される各形態、例えば、剤形、薬物剤形、投与形態等を指す。臨床応用または薬学の分野では、用語「組成物」は通常「医薬組成物」と同じ意味を有する。
【0068】
本発明の医薬組成物または組成物における歯原性幹細胞の実際の用量レベルは、特定の受け手、つまり患者が良好な治療または予防を受けるように、効果的になるように変更できる。用量レベルは、特定の幹細胞活性、投与経路、病気の重症度、疾患または状態の治療プロセス、形成または修復(および製造、再生、培養など)の処置または手技プロセス、治療対象の患者の病気の状態または病歴に応じて選択される。しかし、当該分野での実施では、幹細胞の用量および適用の期間は、必要な治療効果を得るために要するレベルよりも低いところから開始し所望の効果が得られるまで徐々に増加させる。従って、本発明の場合、当該分野における当業者が、本発明により提供される情報に基づいて、特定の資格を必要とせずに特定の状況に適用される特定の用量を決定できるが、これらに限定されはない。特に、任意の場合に使用量を決定するために本発明の実施形態で用いる特定の量を指すこともある。
【0069】
本発明の歯原性幹細胞は、単独で(すなわち、元の形で)投与することも医薬組成物中において投与することもできる。本発明の医薬組成物は、投与経路に応じてさまざまな適切な剤形で調合できる。医薬製剤に処理される歯原性幹細胞には、1つまたは複数の生理学的に許容される担体、賦形剤や助剤を使用できる。適切な製剤の形態は、当該分野の一般的な知識に従って製造可能な投与経路の選択による。本発明の実施形態の計画では、歯原性幹細胞は、相溶性のある培地(例えば、0.9%の通常の生理食塩水といった生理食塩水)内に存在する。本発明の一実施形態では、歯原性幹細胞は、相溶性のある培地内に存在し、低温で保存される、例えば冷蔵庫、冷凍庫、その他の状況で保存され、場合により使用前に本発明の意図に応じた用途に適用可能な形態に再溶解される。
【発明の効果】
【0070】
本発明者は、歯周骨組織および軟組織の欠損その他の骨組織損傷の修復における、異なる供給源由来の歯原性幹細胞の治療効果の確認に成功し、種細胞の供給源を拡大する強力な証拠を提供した。同時に、歯周骨組織および軟組織の欠損その他の骨組織損傷の修復における、HGF遺伝的に改変された歯原性幹細胞の治療効果が、歯原性幹細胞そのものに比べ優れていることを証明し、これによりHGFおよび歯原性幹細胞が修復効果において相乗的な役割を奏することを示した。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、実験的歯周病ミニブタモデルの確立を示す。A:モデル確立前の歯とそのCT画像。B:歯周に外科的処置をして歯周病モデルを確立してから28日後における歯とそのCT画像。これにより実験的歯周病動物モデルの確立が成功したことを示される。
【0072】
図2図2は、ミニブタの実験的歯周病の治療に対する歯原性幹細胞の効果を示す。A:治療前の対照群の歯のCT画像。B:3か月後の対照群の歯のCT画像。C:Ad−HGF改変されたDPSC懸濁液による治療前の前歯のCT画像。D:Ad−HGF改変されたDPSC懸濁液による治療から3月後の前歯のCT画像。E:DPSC懸濁液による治療前の前歯のCT画像。F:DPSC懸濁液による治療から3月後の前歯のCT画像。G:Ad−HGF改変されたDPSC+PDLSC懸濁液による治療前の前歯のCT画像。H:Ad−HGF改変されたDPSC+PDLSC懸濁液による治療から3月後の前歯のCT画像。I:DPSC+PDLSC懸濁液による治療前の前歯のCT画像。J:DPSC+PDLSC懸濁液による治療から3月後の前歯のCT画像。K:3月後の対照群の一般的な歯の画像。L:Ad−HGF改変されたDPSC懸濁液による治療から3月後の一般的な歯の画像。M:DPSC懸濁液による治療から3月後の一般的な歯の画像。N:Ad−HGF改変されたDPSC+PDLSC懸濁液による治療から3月後の一般的な歯の画像。O:DPSC+PDLSC懸濁液による治療から3月後の一般的な歯の画像。
【0073】
図3図3は、ミニブタの歯原性幹細胞処置群および対照群における、歯周臨床的な歯周付着喪失(AL)、歯肉出血指標(SBI)、歯周ポケットの深さ(PD)を示す。HGF−DPSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞を注射した群を表す。DPSC注射群とは、改変されていない歯髄幹細胞を注射した群を表す。HGF−DPSC+PDLSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞とHGF改変された歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。DPSC+PDLSC注射群とは、歯髄幹細胞と歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。対照群とは、生理食塩水で処置した群を表す。
【0074】
図4図4は、ミニブタの歯原性幹細胞処置群および対照群における、ヘモグロビン(HB)、白血球(WBC)、赤血球(RBC)、血小板(PLT)の血液学的指標の変化を示す。HGF−DPSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞を注射した群を表す。DPSC注射群とは、改変されていない歯髄幹細胞を注射した群を表す。HGF−DPSC+PDLSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞とHGF改変された歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。DPSC+PDLSC注射群とは、歯髄幹細胞と歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。対照群とは、生理食塩水で処置した群を表す。
【0075】
図5図5は、ミニブタの歯原性幹細胞処置群および対照群における、血液免疫学的指標IgA、IgG、IgE、IgMの変化を示す。HGF−DPSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞を注射した群を表す。DPSC注射群とは、改変されていない歯髄幹細胞を注射した群を表す。HGF−DPSC+PDLSC注射群とは、HGF改変された歯髄幹細胞とHGF改変された歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。DPSC+PDLSC注射群とは、歯髄幹細胞と歯周靱帯の幹細胞との混合物を注射した群を表す。対照群とは、生理食塩水で処置した群を表す。
【0076】
図6図6は、マウス大腿骨の急性損傷から2週間後のCT画像を示す。CONは、ブランク対照群を表す。MSCは、ヒト歯髄幹細胞群を表す。E−MSCは、HGF遺伝的に改変されたヒト歯髄幹細胞群を表す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
実施形態
本発明の計画の実施について、以下の例で詳細に説明する。しかし、当該分野の当業者は、以下の実施例は、単に本発明を説明するために使用されているのみであって、発明の範囲を限定するものとみなすべきではないことを理解するであろう。従来の条件または製造業者が推奨する条件に応じて、より詳細な実施形態の条件で実施してもよい。提示されていない試薬または機器であっても、従来の製品の購入により利用可能である。
【0078】
αMEM培養培地は、アメリカGIBCO社から購入した。その主な成分は、ピルビン酸ナトリウム、L−バリン、アラニン、リノール酸、L−アルギニン塩酸塩アンモニア酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン、ビオチン、L−アスパラギン酸、D−パントテン酸カルシウム、L−システイン塩酸塩、葉酸、L−システイン塩酸塩、イノシトール、L−グルタミン、ニコチンアミド、L−グルタミン酸、塩化コリン、グリシン、塩酸ピリドキシン、L−ヒスチジン塩酸塩、リボフラビン、L−イソロイシン、チアミン塩酸塩、L−ロイシン、ビタミン、L−リジン塩酸塩などである。
【実施例】
【0079】
実施例1:歯原性幹細胞の単離、培養、増殖、および遺伝子改変
(1)幹細胞の単離および培養
組織培養方法または酵素消化方法により、歯肉、歯周靱帯、根尖部を単離しその後第三世代まで培養した。歯原性幹細胞は、細胞表面マーカーの検出および骨形成と脂肪生成分化により間葉系幹細胞と確認した。実際の単離および培養方法は以下の通りである。
【0080】
歯周靭帯幹細胞の単離および培養方法:
麻酔下で、衝撃を与えてヒト第三大臼歯を摘出、または歯列矯正用に歯を摘出し、その後、摘出した歯を滅菌PBSを有する遠心管に投入し、抗生物質をすぐに加え、歯周靭帯幹細胞を12時間かけて分離した。歯根の中央1/3部分からやさしく歯周を剥離し、PBSで繰り返し洗浄し、できるだけ細かく刻んで、3mg/mlのI型コラゲナーゼおよび4mg/mlのディスパーゼ溶液に入れ、37℃で0.5〜1時間水浴することにより消化し、70μmの細胞ふるいにかけ細胞を収集し、その後10分間1000rpmで遠心分離し、適切な量の培地を有する単一の細胞懸濁液に浮遊させた。細胞をα−MEM培地(10%ウシ胎児血清、2mmol/Lのグルタミンを含む)の10cm培養皿中で培養し、37℃、5%のCO2で培養し、その後3〜5日毎に地培を変えた。細胞増殖の状態は毎日倒立顕微鏡下で観察した。1〜2週間後、クローン化細胞を0.25%トリプシンで消化し次世代へ継代した。
【0081】
歯髄幹細胞の単離および培養方法:
麻酔下で、衝撃を与えて第三大臼歯を摘出、または歯列矯正用に歯を摘出し、その後、摘出した歯を滅菌PBSを有する遠心管に投入し、抗生物質をすぐに加え、歯周靭帯幹細胞を12時間かけて分離した。クラウンを割って得られた歯肉組織を、PBSで繰り返し洗浄し、できるだけ細かく刻んで、3mg/mlのI型コラゲナーゼおよび4mg/mlのディスパーゼ溶液に入れ、37℃で0.5〜1時間水浴することにより消化した。70μmの細胞ふるいにかけ細胞を収集し、その後10分間1000rpmで遠心分離し、適切な量の培地を有する単一の細胞懸濁液に浮遊させた。細胞をα−MEM培地(10%ウシ胎児血清、2mmol/Lのグルタミンを含む)の10cm培養皿中で培養し、37℃、5%のCO2で培養し、その後3〜5日毎に地培を変えた。細胞増殖の状態は毎日倒立顕微鏡下で観察した。1〜2週間後、クローン化細胞を0.25%トリプシンで消化し次世代へ継代した。
【0082】
歯根尖部の幹細胞の単離および培養方法:
麻酔下で、形成不全のヒト第三臼歯根を摘出し、根尖部の突端部から切断し、PBSで繰り返し洗浄し、細かく刻んで、3mg/mlのI型コラゲナーゼおよび4mg/mlのディスパーゼ溶液に入れ、37℃で0.5〜1時間水浴することにより消化し、70μmの細胞ふるいにかけ細胞を収集し、その後10分間1000rpmで遠心分離し、適切な量の培地を有する単一の細胞懸濁液に浮遊させた。細胞を、α−MEM培地(15%ウシ胎児血清、2mmol/Lのグルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む)の25cm2培養瓶中、37℃、5%のCO2で培養し、その後2〜3日毎に地培を変えた。細胞増殖の状態は毎日倒立顕微鏡下で観察した。細胞が80%コンフルエンスまで増殖したら、クローン化細胞を0.25%トリプシンで消化し次世代に継代した(1:2)。フローサイトメトリーを使用して、幹細胞の同定のためSTRO−1、CD90、およびCD146表面マーカーを検出し、根尖部(SCAP)から幹細胞を得た。
【0083】
上記の単離および培養方法から得た歯原性幹細胞を、細胞表面マーカー、骨形成、脂肪形成分化について検査し(Perry BC, Zhou D, Wu X, Yang FC, Byers MA, Chu TM, Hockema JJ, Woods EJ, Goebel WS. Collection, cryopreservation, and characterization of human dental pulp-derived mesenchymal stem cells for banking and clinical use. Tissue Eng Part C Methods. 2008;14(2): 149-156; Pittenger MF, Mackay AM, Beck SC, et al. Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science, 1999, 284(5411):143-147参照)、間葉系幹細胞であることを確認した。
【0084】
(2)歯原性幹細胞のインビトロでの改変
1平方センチメートルの培養面積あたり10000個の播種した歯原性幹細胞を24時間培養し、150MOIのAD−HGFを歯原性幹細胞に添加し(特許「a recombinant adenovirus and its application in the treatment of myocardial ischemia」特許番号ZL 1129209.1」によるAD−HGF調製方法)、48時間後にHGF遺伝的に改変された歯原性幹細胞を得た。
【0085】
上記のように調製した歯原性幹細胞およびインビトロで改変された歯原性幹細胞を、以下の各実施例に使用した。
【0086】
実施例2:歯周の骨および軟組織の欠損に対する歯原性幹細胞の治療効果
まず、五指山ミニブタ実験的歯周病モデルを確立した。その後、CT画像および臨床検査により歯周病モデルが確立したことを確認し、細胞膜移植および細胞懸濁液の注射技術を用いて細胞懸濁液を歯周骨欠損部位に注射した。歯周の骨および軟組織の欠損の修復、歯周組織の病理学的変化、血液学的指標(血液ルーチン、血液生化学物質、および免疫グロブリンタンパク質)の変化、炎症因子の変化を、治療からそれぞれ3日、7日、14日、28日、3月後に観察した。歯周の骨および軟組織の欠損に対する歯原性幹細胞の治療効果を実証するための例として、以下に歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞を示す。
【0087】
(1)ミニブタ実験的歯周病モデルの確立
実験的歯周病モデルを、絹糸結紮および骨損傷方法を用いて確立した。14月齢の6匹のミニブタを、対照群、歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞懸濁液注射群、および歯髄幹細胞懸濁液注射群に選択した。それぞれ、2.3mm×5mm×7mmの欠損部(図1B)を第一臼歯下顎の近心面に作成し、その欠損部に4.0絹糸をつけて、10日後に取り出した。臨床的指標(プラーク指標、歯肉の出血指標、歯周ポケットの深さ、および臨床的な歯周付着喪失)および画像観察を手術前、手術後6週目および3月目に行った。図1より、ミニブタの実験的歯周病モデルの確立は成功したことがわかる。
【0088】
(2)実験的歯周病に起因するのブタの骨および軟組織の欠損に対する歯原性幹細胞を用いた治療
1×107個のMSC細胞懸濁液および対照としての生理食塩水を、細胞懸濁液の注射技術を用いて、手術後4週間目にミニブタ歯周炎の骨欠損部位に注射した。MSC細胞懸濁液は、歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞の割合が9:1の混合物であった。
【0089】
(3)歯原性幹細胞による治療の結果
HGF改変された歯原性幹細胞による治療から3月後、歯周の骨組織および軟組織の欠損の回復は、対照群に比べて有意に良好であった。第一臼歯のCT薄層冠動脈スキャンにより新たに形成された骨の画像が明白に示されたが、対照群では示されなかった。全検体より、歯原性幹細胞治療群の歯周組織には、良好な修復と軽度の歯肉の腫れが見られたが、対照群では、明らかな歯肉の腫れと陥没が見られた(例えば、図2A、B、E、F、I、J、K、M、O)。
【0090】
歯原性幹細胞懸濁液を注射した歯周組織の臨床的指標(歯肉溝出血指標、歯周ポケットの深さ、および臨床的な歯周付着喪失)は、対照群に比べて良好であった(図3)。
【0091】
実施例3:歯周の骨および軟組織の欠損の修復に対するHGF改変された歯原性幹細胞の治療効果
まず、ミニブタ実験的歯周病モデルを確立した。その後、CT画像および臨床検査により歯周病モデルが確立したことを確認した。細胞懸濁液を歯周骨欠損部位に注射した。歯周の骨および軟組織の欠損の修復、歯周組織の病理学的変化を、治療からそれぞれ3日、7日、14日、28日、3月後に観察した。歯周の骨および軟組織の欠損に対するHGF改変された歯原性幹細胞の治療効果を実証するための例として、以下に歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞を示す。
【0092】
(1)ミニブタ実験的歯周病モデルの確立
実施例2と同じ
【0093】
(2)ブタ実験的歯周病モデルにおけるHGF改変された歯原性幹細胞による治療
1×107個のHGF改変歯髄幹細胞懸濁液および対照としての生理食塩水を、細胞懸濁液の注射技術を用いて、ミニブタ歯周病骨欠損部位に注射した。対照群、HGF改変歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞混合物注射群(二種類の細胞が改変)、HGF改変歯髄幹細胞懸濁液注射群、および未改変歯原性幹細胞処置群に分けた。HGF改変歯髄幹細胞および歯周靭帯幹細胞混合物注射群における歯髄幹細胞と歯周靭帯幹細胞の数の比率は9:1であった。
【0094】
(3)HGF改変された歯原性幹細胞による治療の結果
HGF改変された歯原性幹細胞による治療による歯周の骨組織および軟組織の欠損の回復は、対照群および非改変細胞群に比べて有意に良好であった。第一臼歯の正中面CT薄層冠動脈スキャンにより、歯原性幹細胞群では新たに形成された骨の画像が明白に示され、未改変群では新たに形成された骨が中程度に示され、対照群で示されなかった。全検体より、HGF改変された歯原性幹細胞治療群の歯周組織では良好な修復が見られ、歯肉の腫れは見られず、歯原性幹細胞治療群の歯周組織では良好な修復と軽度の歯肉の腫れが見られ、対照群では明らかな歯肉の腫れと陥没が見られた(例えば、図2B、C、D、G、H、K、L、N)。
【0095】
HGF改変された歯原性幹細胞懸濁液で処置した歯周組織の臨床的指標(歯肉溝出血指標、歯周ポケットの深さ、および臨床的な歯周付着喪失)は、対照群に比べて良好であった(図3)。
【0096】
更に、血液学的指標(図4)および免疫学的検出指標(図5)により、HGF遺伝的に改変されたヒト歯原性幹細胞懸濁液の局所注射では、血液学的、生物学的、および免疫学的に顕著な変化は起こらなかったことが示された。
【0097】
HGF改変された歯原性幹細胞の他の供給源も類似の治療効果を有していた。
【0098】
これらの結果により、HGF改変された歯原性幹細胞治療群における歯周の軟組織および骨欠損の修復は、改変されていない歯原性幹細胞群のものよりも優れていることが示される。HGF改変された歯原性幹細胞群の動物炎症反応が、対照群および改変されていない歯原性幹細胞群の反応より優れていたことより、HGF改変された歯原性幹細胞がHGF改変されていない歯原性幹細胞よりも優れた治療効果を有することが示された。
【0099】
臨床指標および画像検査の結果により、未改変のヒト歯原性幹細胞およびHGF改変された歯原性幹細胞は両方とも、ミニブタ実験的歯周病モデルにおける歯周骨欠損を正常に修復し、ブランク対照よりもはるかに優れていたことが示された。
【0100】
血液学的研究により、治療前後のいずれも、血液ルーチン、生物学的、免疫グロブリンおよび免疫学的指標は、すべての群で有意に変化しなかったことが示されたので、ヒト歯原性幹細胞の注射では有意な変化がおこらないことが示唆される。これらにより、炎症病変、肝臓および腎損傷、即時性または遅延性液性免疫反応、および細胞性免疫拒絶反応が全くなかったことが示された。歯周病の治療におけるヒト歯原性幹細胞注射の研究の結果により、種細胞の供給源の範囲を拡大する強力な実験的基盤が提供される。
【0101】
要約すると、歯原性幹細胞は、歯周の骨および軟組織の欠損の修復に対し強力な治療効果があることより、歯原性幹細胞を歯周組織の再生のための組織工学に用いると、が可能になり、有望な効果を奏し得ることが示唆される。HGF改変された歯原性幹細胞は、歯周組織の損傷部位内で局所的にHGFを発現でき、歯原性幹細胞の効果を増強する種々のサイトカインを分泌することにより、歯周骨欠損の治療において生物学的な抗炎症効果を発揮できる。
【0102】
実施例4:マウスにおける大腿骨の急性損傷(骨折)の修復
(1)C57マウス(5〜6週)における大腿骨骨幹軸骨折モデルの確立
実験用マウスに、2.5%のペントバルビタールナトリウムを10mg/kgの用量で腹腔内注射し深い麻酔をかけ、右後肢を剃毛し、右膝を90度に曲げて仰臥位に固定し、ヨードホールで消毒し、無菌タオルで覆った。
【0103】
(2)右膝の外側を縦に1cm切開し、遠位大腿骨および大腿四頭筋腱を露出させ、大腿四頭筋腱を内側に押し、内部および外部の大腿骨顆間溝を完全に露出させ、0.45mm直径のステンレススチール針を骨髄に突き刺して髄内針により内部を固定した。針のハンドルを切り、針の端を皮膚内に埋め込み、その後傷を閉じた。
【0104】
(3)マウスは、バンプテストテーブルの衝突モデルセットに移動した。フリッチの場所に内部固定肢を置き、その後17cm高さから500gの重り(マウスの体型により適切に調整する)を脚に落とし、大腿骨を骨折させた。
【0105】
(4)麻酔下骨折モデルのX線検査
【0106】
(5)マウスを蘇生し、動物部屋に移動した。2日目に、幹細胞の局所的な注射を行った。
【0107】
2.幹細胞の局所注射
(1)マウスを各群3匹からなる3つの群に分けた:ブランク対照群(CON)、ヒト歯原性幹細胞注射群(MSC群)、およびHGF遺伝的に改変されたヒト歯髄幹細胞注射群(E−MSC群)。
【0108】
(2)MSC群およびE−MSC群の細胞濃度は5×105/0.4mlで、ブランク対照群は0.9%食塩水であった。
【0109】
(3)マウス骨折部位をヨードホールで局所的に消毒した
【0110】
(4)アシスタントがマウスを固定し、0.4mlの細胞溶液を有する1ml注射器を使用して大腿骨骨軸の中央から幹細胞を骨折部位に注射した。
【0111】
3.骨折修復の指標の観察
幹細胞の注射から2週間後にCTで骨折の修復を観察した。
【0112】
4.結果
CTの結果は図6を参照のこと。対照群は、2週間後の骨カルスの数が多く、明らな骨修復はされていないことがわかる。MSC群は、2週間後に一定量の骨カルスおよび部分的な骨修復があった。E−MSC群では、2週間後に骨カルスの大部分は吸収され、骨は基本的に修復されていた。
【0113】
発明の特定の実施形態を詳細に説明してきたが、当該分野における当業者は、公衆に開示されている全ての記載事項より、全ての詳細部の変更や置換も本発明の保護範囲内であることを理解するであろう。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲の記載およびその均等物により決定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図2O
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】