特表2017-507271(P2017-507271A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-507271複合材でできたファンケーシングの耐火
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-507271(P2017-507271A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】複合材でできたファンケーシングの耐火
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/25 20060101AFI20170224BHJP
   F02K 3/04 20060101ALI20170224BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170224BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170224BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20170224BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   F02C7/25
   F02K3/04
   F02C7/00 C
   F02C7/00 E
   F02C7/00 F
   F01D25/00 L
   F01D25/24 D
   F01D25/24 K
   F04D29/54 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-545913(P2016-545913)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】FR2015050041
(87)【国際公開番号】WO2015104504
(87)【国際公開日】20150716
(31)【優先権主張番号】1450145
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コラディニ,シルバン
(72)【発明者】
【氏名】エリセーエフ,ティモテ
(72)【発明者】
【氏名】エサヤン,ソフィ
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC17
3H130BA32A
3H130CA05
3H130DD09Z
3H130EC02A
3H130EC17A
3H130ED01A
(57)【要約】
長手方向軸(X)に沿って延在する主方向を含む略円柱形の円筒(10)と、円筒(10)の上流端部から長手方向軸(X)に対して径方向に延在する上流フランジ(20)とを備えるファンケーシング(1)の耐火方法(S)であって、ファンケーシング(1)が、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできており、前記マトリックスが重合されており、耐火方法(S)が、上流フランジ(20)の上流径方向面(22)上に、火炎からファンケーシングを熱的に保護にすることができる樹脂で事前に含浸されたガラス繊維を含む幅を覆うステップ(S1)と、保護層(2)を得るために、樹脂を重合するステップ(S2)とを含む耐火方法(S)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸(X)に沿って延在する主方向を含む略円柱形の円筒(10)と、円筒(10)の上流端部から長手方向軸(X)に対して径方向に延在する上流フランジ(20)とを備えるファンケーシング(1)のための耐火方法(S)であって、ファンケーシング(1)が、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできており、前記マトリックスが重合されており、
上流フランジ(20)の上流径方向面(22)上で、火炎からファンケーシングを熱的に保護することができる樹脂を用いて、プレプレグガラス繊維を含むパネルをドレーピングするステップ(S1)と、
保護層(2)を得るために、樹脂を重合するステップ(S2)と、
を含む耐火方法(S)。
【請求項2】
補助パネルが、円筒(10)の外面(14)上で更にドレーピングされる(S1)、請求項1に記載の耐火方法(S)。
【請求項3】
補助パネルが、上流フランジ(20)の頂部(26)上で更にドレーピングされる(S1)、請求項1または2のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項4】
補助パネルが、上流フランジ(20)に隣接する部分(11、13)の中に、円筒(10)の内面(12)に対して更にドレーピングされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項5】
上流フランジ(20)に隣接する部分(11、13)の中で、円筒(10)の内面(12)上よりも、上流フランジ(20)の上流径方向面(22)上でより多くの補助パネルがドレーピングされる(S1)、請求項4に記載の耐火方法(S)。
【請求項6】
補助的耐火保護層(3、5)を形成するために、好適には、パネルが、上流フランジ(20)の上流径方向面(22)上でドレーピングされるのと同時に、補助パネルが重合される(S2)、請求項2から5のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項7】
重合するステップ(S2)に続いて、チタニウムでできた環状カウンタープレート(5)が、上流フランジ(20)の下流径方向面(24)上に固定されるステップ(S4)を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項8】
樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項9】
保護層(2)の厚さを調節するために、上流フランジ(20)の上流径方向面を機械加工するステップ(S3)を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項10】
ファンケーシング(1)が下流フランジ(30)を更に備え、耐火方法が、ガルバニック腐食に対するバリア(6)が、下流フランジの下流面(34)に対して付着されるステップを更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の耐火方法(S)。
【請求項11】
ガルバニック腐食に対するバリア(6)が、
下流フランジ(30)の下流径方向面(34)上に、および選択的に頂部(36)上に、ファンケーシングを保護することができる樹脂で、プレプレグガラス繊維を含むパネルをドレーピングするステップ(S1)と、
保護層(6)を得るために、樹脂を重合するステップ(S2)と
によって付着される、請求項10に記載の耐火方法(S)。
【請求項12】
マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできたファンケーシング(1)であって、長手方向軸(X)に沿って延在する主方向を含む略円柱形の円筒(10)と、円筒(10)の上流端部から長手方向軸(X)に対して径方向に延在する上流フランジ(20)とを備えるファンケーシング(1)であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の耐火方法(S)によって得られた、上流径方向面上の保護層を備えることを特徴とする、ファンケーシング(1)。
【請求項13】
円筒(10)の下流端部から長手方向軸(X)に対して径方向に延在する下流フランジ(30)と、請求項10または請求項11による耐火方法(S)を経て得られた下流径方向面(34)上のガルバニック腐食に対するバリア(6)とを更に備える、請求項12に記載のファンケーシング(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、ガスタービンケーシングに関し、より詳細には、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を含む複合材料からできた航空機エンジン用のガスタービンファンのための保持ケーシングおよび関連する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン航空機エンジンのファンケーシングは、複数の機能を実行することができる。ファンケーシングは、エンジン内の空気入口流路を画定し、ファンブレードの頂部に対して摩耗可能な材料を支持し、エンジンの入口で音波を減衰するための音響パネルの全体的形状の構造を支持し、吸い込まれた物体または損傷されたブレードからの破片など、ケーシングの内面上に突出する破片のための保持シールドを組み込み、または支持する。
【0003】
現在、ファンケーシングは、空気入口流路を画定する相対的に薄い壁を備える。ケーシングは、特に金属または複合材料から製造され得る。例えば、仏国特許発明第2913053号明細書では、マトリックスによって繊維補強材を形成し、補強材を高密度化することによって、異なる厚さの複合材料のファンケーシングを作製することが提案されている。異なる厚さを含む三次元織りによって得られる繊維組織をマンドレル上で重ね合わせた層に巻くことによって、繊維補強材が形成されて、局所的に厚さを容易に増加させることによって、保持シールドを一体化する。
【0004】
繊維補強材は、繊維、特に炭素、ガラス、アラミドまたはセラミックを含む。そのように、マトリックスは、例えばエポキシド、ビスマレイミドまたはポリイミドなど、典型的にはポリマーマトリックスである。
【0005】
ケーシングは、単一の部品に作製されることが可能であり、その軸方向端部にフランジを備える。上流フランジと呼ばれる第1のフランジは、空気入口スリーブをケーシングに固定することができ、一方下流フランジと呼ばれる第2のフランジは、ネジ−ナットタイプの連結部材によって、ファンケーシングが中間ケーシングに連結することを可能にし、環状フェルールが下流フランジの下流面に対して付着される。本明細書では、上流および下流は、タービンエンジン内のガス流の方向によって画定される。中間ケーシングは、環状フェルールおよび空気入口スリーブと共に、チタニウムを基材とする合金の中の金属、チタニウムでできており、または更にアルミニウムでできている。
【0006】
使用中、いくつかの故障の状況により、ファンケーシングを取り囲む温度の上昇を引き起こす可能性があり、特に繊維補強材が三次元繊維織地から形成される場合、それによってその適切な稼働に害を及ぼす可能性がある。実際に、複合材料からできたケーシング用に現在使用される材料は、本質的に自己消火性または難燃性ではない。更に、補強材の第3の方向に配向された繊維が、構造を維持し、その層間剥離を制限する。しかし、第3の方向に配向されたこれらの繊維が、材料の内部に火炎の熱を伝達し、それが火炎を維持する効果がある。
【0007】
したがって、温度上昇中、および温度上昇後にケーシングが機械的特性を維持することができ、必要な場合は火の広がりを遅らせ、次に火炎を除去するように、構造の加熱を制限して、その消火を可能にすることによって、これらの極端な温度に対して、より一般的には火炎に対してファンケーシングを保護する必要がある。
【0008】
したがって、火炎に対して敏感ではない材料である、チタニウムでできたカウンタープレートをファンケーシングと隣接する上流および下流の部品との間に結合することが提案されてきた。しかし、この解決策は、エンジンの全体的質量を増加させる。更に、製造方法(カウンタープレートの熱間成形)に起因して、製造公差が大きくなり、それによって、やはり実施することが困難であり、したがって非常に費用がかかる。
【0009】
繊維補強材を形成するように意図されてプリフォーム上に織ることによって、ガラス繊維でできた剛性または半剛性の組紐を結合し、次いでファンケーシングのプリフォームと同時注入されることが更に提案されてきた。しかし、この解決策は、鋳型の中に導入中に保護を維持する点で難しいと判明する。更に、織るステップは、予備成形することが困難であると判明する。
【0010】
英国特許出願公開第2486404号明細書に、複合材料でできたケーシングの円筒の外面に、銅または銅合金を高温で発射して、火炎の温度を発散させて、ケーシングを火炎から保護することが更に提案されている。
【0011】
最後に、欧州特許出願公開第2447508号明細書は、難燃性または断熱材料でできたパネルを結合して、エンジンの部品を保護することを提案する。この目的のために、パネルが、保護される部品の表面に固定手段によって取り付けられ、固定される。しかしこの文献は、複合材料でできたケーシングの問題に特に対処できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許発明第2913053号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2486404号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2447508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、工業化可能な、信頼できる、有効な方法で、複合材料でできたタービンエンジンのファンケーシングを極端な温度および火炎から保護することを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、長手方向軸に沿って延在する主方向を含む略円柱形の円筒と、円筒の上流端部から長手方向軸に対して径方向に延在する上流フランジとを備えるファンケーシングのための耐火方法であって、ファンケーシングが、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできており、前記マトリックスが重合されており、耐火方法が、上流フランジの上流径方向面上で、火炎からファンケーシングを熱的に保護することができる樹脂を用いて、プレプレグガラス繊維を含むパネルをドレーピングするステップと、保護層を得るために、樹脂を重合するステップとを含む耐火方法を提供する。
【0015】
限定しないが、いくつかの好適な上記に説明されるファンケーシングのための耐火方法の特徴は以下である。
【0016】
補助パネルが、円筒の外面上に更にドレーピングされる。
【0017】
補助パネルが、上流フランジの頂部上に更にドレーピングされる。
【0018】
補助パネルが、上流フランジに隣接する部分の中に円筒の内面に対して更にドレーピングされる。
【0019】
上流フランジに隣接する部分の中に、円筒の内面上よりも、上流フランジの上流径方向面上により多くの補助パネルがドレーピングされる。
【0020】
補助的耐火保護層を形成するために、補助パネルが重合され、好適には、同時にパネルが、上流フランジの上流径方向面上にドレーピングされる。
【0021】
重合するステップに続いて、方法は、チタニウムでできた環状カウンタープレートが、上流フランジの下流径方向面上に固定されるステップを更に含む。
【0022】
樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含む。
【0023】
方法は、保護層の厚さを調節するために、上流フランジの上流径方向面を機械加工するステップを更に含む。
【0024】
ファンケーシングが下流フランジを更に備え、方法が、ガルバニック腐食に対するバリアが、下流フランジの下流面に対して付着されるステップを更に含む。
【0025】
ガルバニック腐食に対するバリアが、以下のステップ、下流フランジの下流径方向面上に、および選択的に頂部上に、ファンケーシングを保護することができる樹脂で、プレプレグガラス繊維を含むパネルをドレーピングするステップと、保護層を得るために、樹脂を重合するステップとによって付着される。
【0026】
本発明は、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできたファンケーシングであって、長手方向軸に沿って延在する主方向を含む略円柱形の円筒と、円筒の上流端部から長手方向軸に対して径方向に延在する上流フランジと、上記に記載の耐火方法によって得られた、上流径方向面上の保護層とを備えるファンケーシングを更に提供する。
【0027】
好適であるが、限定しない態様によって、上記に説明されるファンケーシングは、円筒の下流端部から長手方向軸に対して径方向に延在する下流フランジと、下流径方向面に付着されるガルバニック腐食に対するバリアとを更に備える。
【0028】
本発明の他の特徴、目的および利点が、以下の説明から、および限定しない実施例として与えられる添付の図面に関して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるファンケーシングの実施例の横断面の部分図である。
図2】本発明によるファンケーシングの耐火方法の例示的実施形態の異なるステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ガスタービンエンジンは、一般に、ガス流の方向に上流から下流へ、ファン、例えば低圧圧縮機および高圧圧縮機などの1つまたは複数の圧縮機段、燃焼室、例えば高圧タービンおよび低圧タービンなどの1つまたは複数のタービン段、ならびにガス排出管を備える。
【0031】
タービンは、各同軸のシャフトによって、圧縮機に、およびファンに結合される。
【0032】
エンジンは、エンジンの異なる要素に対応する複数の部品を備えるケーシングの内部に格納される。したがって、ファンは、上流で空気入口スリーブに結合され、下流で中間ケーシングの環状フェルールに結合され、例えばファンケーシングによって取り囲まれる。
【0033】
ファンケーシング1は、ガス流に対して略平行に長手方向軸Xに沿って延在する主方向を含む、略円柱形の円筒10を備える。ケーシングの円筒10は、仏国特許発明第2913053号明細書に示されるように、可変の厚さを含むことができ、上流端部および下流端部のそれぞれに上流フランジ20および下流フランジ30を備えることができ、空気入口スリーブ、中間ケーシングまたは環状フェルールさえも含む他の部品に取り付ける、および付着することを可能にする。
【0034】
上流フランジ20および下流フランジ30は、環状の形状であり、ファンケーシング1の長手方向軸Xに対して径方向に延在する。
【0035】
上流フランジ20は、上流径方向面22(流れに面する)、および下流径方向面24(下流フランジ30に面する)を備える。上流フランジ20は、円筒10から少し離れて、上流面22と下流面24との間に延在する環状頂部26を更に備える。同様に、下流フランジ30は、上流径方向面32(上流フランジ20に面する)、および下流径方向面34(上流面32に面する)を備える。下流フランジ30は、円筒10から少し離れて、上流面32と下流面34との間に延在する環状頂部36を更に備える。
【0036】
本明細書では、ファンケーシング1は、マトリックスによって高密度化された繊維補強材を備える複合材料でできている。補強材は、特に炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維またはセラミック繊維を含み、マトリックスは、例えばエポキシド、ビスマレイミドまたはポリイミドなど、典型的にはポリマーでできている。
【0037】
補強材は、仏国特許発明第2913053号明細書の説明により、異なる厚さを含む三次元織り込みによって作製される繊維組織をマンドレル上に巻くことによって形成されることができ、繊維補強材は、フランジに相当する補強材部品と共に単一の部品に形成されるファンケーシング1の完全な繊維プリフォームを構成する。
【0038】
マンドレルは、作製されるケーシングの内面の輪郭形状に相当する外面の輪郭形状を備え、その自由端から径方向に延在する2つのフランジが、ファンケーシング1の上流フランジおよび下流フランジを形成するように適合される。マンドレル上に巻かれることによって、繊維組織はマンドレルの輪郭形状に一致して、その末端部が、フランジ上に据わることによって、ケーシング1のフランジ20、30に相当するプリフォームの部分を形成するようにする。
【0039】
ファンケーシング1の円筒10の内面12のすべて、または部分が、1組の音響パネルを備えることができる断熱コーティングを付けられ得る。音響パネルの組は、円筒10の内面12のセクタに亘ってそれぞれ延在する複数の並列されたパネルを備える。従来、パネルは、円筒10の内面12に対して付着された外側スキンと外側多孔スキンとの間に配置される気泡状構造によって形成されることができ、気泡は、壁がスキンの間に略径方向に延在するセルによって形成される。これらの音響パネルの詳細については、例えば仏国特許発明第2613773号明細書を参照することが可能である。音響パネルは、ネジを用いてパネルの中に一体化される挿入手段によって公知のように、ファンケーシング1に固定され得る。
【0040】
適切な稼働に害を及ぼす可能性がある過度の温度上昇の場合、ファンケーシング1を保護するように、特に故障または火事の場合、火炎に対してバリアを形成する保護層2から4が、ファンケーシング1の敏感な領域を覆う。
【0041】
特に、保護層2から4は、火炎によって劣化される領域の程度を制限するように構成され、温度範囲、およびファンケーシング1のマトリックスから劣化による排気ガスの温度比率を制限することによって、その火炎を消火することに役立つ。
【0042】
一般に、保護層2から4が、ファンケーシング1の火炎に敏感なすべての領域を覆うことが好ましい。
【0043】
ファンケーシング1の最もさらされる領域は、上流フランジ20の上流径方向面22である。例示的な実施形態では、保護層2は、この面22だけを覆う。
【0044】
出願人は、ファンケーシング1の火炎に敏感な小さい表面だけが火炎にさらされる必要性によって、ファンケーシング1の全体が劣化することにつながることに注目した。そういうわけで、一実施形態では、火炎にさらされる可能性があり、X方向に沿って2mm以上の長さを含むファンケーシング1の任意の表面が、耐火保護されることが好ましい。例えば、上流フランジ20の頂部26は、2mmよりも大きい軸方向の長さを含み、典型的には10mm程度の軸方向の長さを含む。上流フランジ20の頂部26が、実際に火にさらされる可能性があり、したがって、保護層3によって覆われることが好ましい。
【0045】
同様のことが、ファンケーシング1の円筒10の外面14、すなわち上流フランジ20の下流面24と下流フランジ30の上流面32との間に延在するファンケーシング1の面14に当てはまり、外面14は保護層4によって覆われることが可能である。
【0046】
しかし下流フランジ30が通常はスカラップ形にされ、したがって、本質的に上流フランジ20よりもより良く耐火保護されるので、下流フランジ30は必ずしも耐火の必要はなく、したがって保護層によって覆われない可能性がある。しかし、下流フランジ30は予防的に覆われることができる。
【0047】
保護層2から4は、機械加工された後、ファンケーシング1に直接付着されることが好ましい。典型的には、保護層2から4は、繊維補強材を高密度化する、マトリックスを重合するステップの後に付着され得る。
【0048】
この目的のために、プレプレグガラス繊維を含むパネルが、上流フランジ20の上流径方向面22上に、必要な場合は、上流フランジ20の頂部26上および円筒10の外面14上にドレーピングされるS1。したがって、ドレーピングは新たに行われる、すなわちプレプレグガラス繊維パネルは可撓性であり、事前に重合されていない。
【0049】
好適には、複数のパネルが、それぞれ保護層2から4を形成するように重ねられる。パネルの層の数は、複合ケーシングの寸法、火災の開始を遅らせ、または少なくとも遅くするための保護層の能力、ならびに保護層の全重量に依存することができる。例えば、10個のパネルの層が、上流フランジ20の上流径方向面22上にドレーピングされ得る。
【0050】
次いで、パネルは保護層2から4を形成するために重合されるS2。重合するステップS2は、特に圧力下で行われことができる。
【0051】
ガラス繊維は、ファンケーシングを火炎に対して熱的に保護することができる樹脂であることが好ましい。膨張および層間剥離によって、プレプレグの樹脂は保護層と部品との間に空気間隙を生成し、温度範囲およびガス分解速度を低減する。
【0052】
ケーシング1上にプレプレグガラス繊維のパネルを重合するステップS2が、135℃程度である、ケーシング1の劣化温度よりも低い温度で実施され得るように、プレプレグの樹脂は選択される。熱処理は、120℃程度の温度で実施される。プレプレグの樹脂は、そのガラス遷移温度がケーシング1の領域上のエンジン稼働温度よりも高くなる。樹脂は、熱クラス180℃であることができる。次いで、パネルのファンケーシング1への接着が、プレプレグガラス繊維のパネルが被嵌されたファンケーシング1の後加熱ステップ中に(すなわち、ファンケーシング1の繊維補強材を高密度化する、マトリックスの重合ステップの後)、プレプレグの樹脂を重合するステップS2によって得られる。
【0053】
驚くべきことに、出願人は、当然自己消化性であると指定された樹脂(例えば、リン酸アンモニウムを投入された樹脂)を含むプレプレグガラス繊維のパネルを使用することは、ファンケーシング1を火炎から保護するためにこれらのパネルをドレーピングすることが非常に困難であるという実行可能性上の理由から適用するのが困難であることに注目した。実際に、最も良く適合される樹脂は、熱の影響下で膨張することができる樹脂であり、それによって、熱の影響下でケーシング1の繊維補強材を層間剥離させることによって断熱空気間隙を生成し、補強材内部の熱伝達を低減する。これにより、ケーシング1への過度に急速な損傷を回避する。したがって、火炎にさらされる後に劣化された領域の程度が、より制限され、そのような保護層2から4を含まないファンケーシング1の場合よりも温度範囲が低くなって、樹脂の劣化による排気されるガス流が少なくなり、それによって、保護層2から4が火炎の広がりを遅らせることができる。
【0054】
限定しない実施例として、パネル用に使用される樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および/または、例えばHexPly(R)M26T/50%035タイプの樹脂など、シアネートエステル樹脂を含むことができる。この樹脂のために、重合するステップS2は、120℃から125℃程度の温度で、3バールの圧力下で実施される。
【0055】
有利なことに、保護層2は、ファンケーシング1の最終的な直径の寸法の制御、ならびにケーシング1の構造および特に上流フランジ20をそのように損傷せずに、容易に機械加工され得る犠牲的な肉厚部を形成することによって、仕上げ作業を容易にする。実際に、保護層2が付けられたファンケーシング1は、前記保護層2の重合ステップS2の後、機械加工するステップS3を選択的に経験することができる。保護層2は、課される寸法公差に応じて、ファンケーシング1の最終的な軸方向の寸法(X方向に沿って)を調節するために、上流フランジ20の上流面22上に多少とも機械加工され得る。
【0056】
選択的に、保護層は、上流フランジ20の下流面24および下流フランジ30の上流面32にも更に付着され得る。しかし、これらの面24、32上へのパネルのドレーピングは、実施するのが困難であることが判明する可能性がある。実際に、フランジ20、30の環状構成に起因して、ガラスパネルは、フランジ20、30の内側に湾曲した基部で(両方ともフランジ20、30と円筒10の交差部で)伸びる傾向があるので、幾何学的形状特性は制御するのが困難である。
【0057】
一実施形態により、したがって、上流フランジ20の下流面24および下流フランジ30の上流面32の耐火は、これらの面のそれぞれに、チタニウムで作製され得る環状カウンタープレート5を付着することによって達成され得る。カウンタープレート5は、上流フランジ20の下流面24および下流フランジ30の上流面32を火炎に対して保護する。各面24、32について、環状カウンタープレート5の形状および寸法が、前記対応する面24、32の形状および寸法に適合されて、適切な接触および前記面24、32の最適な耐火保護を保証する。
【0058】
例えば、環状カウンタープレート5は、取付け中に対応する面24、32に固定されることができ、その後、プレプレグガラス繊維のパネルをドレーピングするステップS1および重合するステップS2が続く。好適には、チタニウムのカウンタープレート5が固定される面は、略平坦である。この目的のために、上流フランジ20の下流面24および下流フランジ30の上流面32が、プレプレグガラス繊維のパネルをドレーピングするステップS1時に、前記面24、32に対して配置される、適合された型板によってドレーピングするステップS1の間に保護されることができ、それによって、カウンタープレート5を固定するステップより前に、面24、32の機械加工する作業を回避する。
【0059】
別の実施形態では、ファンケーシング1は、下流面34の上、および選択的に下流フランジ30の頂部36上に形成されるガルバニック腐食に対するバリア6を更に備えることができて、中間ケーシングまたは環状フェルールなど、下流フランジ30に固定される金属部品のガルバニック腐食を回避する。
【0060】
耐腐食バリア6は、金属部品とファンケーシング1の繊維補強材との間の接触を回避し、したがって、ファンケーシング1または金属部品上に任意の追加的修正の必要なしに、ガルバニック腐食現象を回避する。
【0061】
ガルバニック腐食に対するバリア6は、耐ガルバニック腐食の半剛性保護層を得るように、紐、ストリップまたは乾燥ガラス繊維の渦線によって作製可能であり、次いでそれらは、ファンケーシング1の繊維補強材を付着する前に、マンドレルの下流径方向環状フランジに対して配置される。マトリックスが、バリア6のガラス繊維の中に、およびファンケーシング1の補強材の中に注入され、次いでファンケーシング1の重合ステップ中に重合され、それによってバリア6をファンケーシング1に直接組み込む。この実施形態の詳細について、出願人の名による出願、仏国特許発明第1256850号明細書を特に参照されることが可能である。
【0062】
変形形態として、ファンケーシング1の製造ステップおよび仕上げステップの数を制限するために、バリア6は、保護層2から4と同様に作製され得る。実際に、保護層2から4は、ガルバニック腐食に対して本質的にバリアを形成するガラス繊維を含み、したがって、ファンケーシング1に対して選択的に付着される金属部品を保護する。この代替実施形態では、したがって、プレプレグガラス繊維の1つまたは複数のパネルを下流フランジ30のこれらの面34、36上にドレーピングするステップによって、保護層6が、下流面34上に、および選択的に下流フランジ30の頂部36上に更に形成される。それは、必要な場合は、ガルバニック腐食に対して保護し、および/または火炎に対して熱的に保護する。
【0063】
保護層2と同様に、耐腐食バリア6が、ファンケーシング1の最終的な寸法、ならびにケーシング1が課される寸法公差に一致するように、容易に機械加工され得る犠牲的な肉厚部を形成することによって、仕上げ作業を制御することに関与することができることが明らかである。
【0064】
ファンケーシング1の上流および下流に固定される金属部品のガルバニック腐食に対する保護を更に改良するために、保護層2および/またはバリア6は、円筒10の内面の部分11、13を覆うことができる。円筒10の内面のこれらの部分11、13は、実際に、これらの部分11、13をガルバニック腐食に対し敏感にさせる保水領域を形成する。
【0065】
各領域について耐火保護の好適なレベル、認容される嵩および質量制限に応じて、ファンケーシング1の領域によって、パネルの数が変化することができることは明らかである。例えば、円筒10の内面12上で、フランジ20および30に隣接する部分11、13の中で、保護層2の主な機能はガルバニック腐食現象を制限することである。したがって、層の数は低減されることが可能であり、それによって下にある音響パネルと間隙を更に生成する。例えば、保護層4aの厚さは、この部分11の中で0.5mm程度であることができて、音響パネルと2.5mm程度の空間を生成するようにすることが可能である。
図1
図2
【国際調査報告】