特表2017-507282(P2017-507282A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-507282燃料高圧ポンプのローラタペット用のローラ、ローラタペット、燃料高圧ポンプおよび内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-507282(P2017-507282A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプのローラタペット用のローラ、ローラタペット、燃料高圧ポンプおよび内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/10 20060101AFI20170224BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   F02M59/10 A
   F02M59/44 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-553882(P2016-553882)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2015071186
(87)【国際公開番号】WO2016055247
(87)【国際公開日】20160414
(31)【優先権主張番号】102014220374.0
(32)【優先日】2014年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102014223597.9
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス エーデラー
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA49
3G066CA01S
3G066CD14
3G066CE02
(57)【要約】
本発明は、複合ローラ(28)として構成された、燃料高圧ポンプ(14)のローラタペット(20)用のローラ(26)であって、第1の複合ローラ領域(38)を形成する第1の材料(40)と、第2の複合ローラ領域(42)を形成する第2の材料(44)と、を備える、ローラに関する。第1の材料(40)と第2の材料(44)とは、1つの複合ローラ体積要素(46)を形成するために互いに結合されており、第1の材料(40)は、第2の材料(44)よりも軽量である。本発明はさらに、ローラ(26)を有するローラタペット(20)、ローラタペット(20)を有する燃料高圧ポンプ(14)、ならびに、クランク軸(12)および燃料高圧ポンプ(14)を有する内燃機関(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ローラ(28)として構成された、燃料高圧ポンプ(14)のローラタペット(20)用のローラ(26)であって、
第1の複合ローラ領域(38)を形成する第1の材料(40)と、
第2の複合ローラ領域(42)を形成する第2の材料(44)と、を備え、
前記第1の材料(40)と前記第2の材料(44)とは、1つの複合ローラ体積要素(46)を形成するために互いに結合されており、
前記第1の材料(40)は、前記第2の材料(44)よりも軽い
ことを特徴とするローラ(26)。
【請求項2】
当該ローラ(26)は、回転軸(52)を中心にして回転可能に形成されており、前記第1の複合ローラ領域(38)は、半径方向において前記回転軸(52)から離間して延在する第1の層(48)として形成されており、前記第2の複合ローラ領域(42)は、半径方向において前記回転軸(52)から離間して延在する第2の層(50)として形成されており、前記第1の層(48)は特に、前記第2の層(50)に比べて前記回転軸(52)のより近くに配置されている、請求項1記載のローラ(26)。
【請求項3】
前記第1の層(48)および前記第2の層(50)は、前記回転軸(52)を取り囲むように形成されている、請求項2記載のローラ(26)。
【請求項4】
前記第2の材料(44)は、前記第1の材料(40)に比べて、ころがり摩擦力に対してより大きな抵抗力を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項5】
前記第1の材料(40)は、プラスチックおよび/またはアルミニウムおよび/またはセラミックスであり、前記第2の材料(44)は鋼である、請求項1から4までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項6】
前記第1の層(48)は、前記第2の層(50)に比べて、半径方向においてより厚く形成されており、前記第2の層(50)の半径方向の厚さ(D)は、0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmである、請求項2から5までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項7】
前記回転軸(52)に、該回転軸(52)を形成する軸エレメント(60)と、該軸エレメント(60)に前記複合ローラ体積要素(46)を回転可能に支持する軸受エレメント(62)、特に滑り軸受エレメント(64)とを備えたローラコア(63)が直に配置されており、前記軸受エレメント(62)は、特にスチールブッシュとして形成されており、前記軸受エレメント(62)は、特に、該軸受エレメント(62)が前記複合ローラ体積要素(46)と一緒に前記軸エレメント(60)を中心にして回転可能であるように、前記複合ローラ体積要素(46)に結合されている、請求項2から6までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項8】
前記複合ローラ体積要素(46)は第3の複合ローラ領域(70)を有しており、該第3の複合ローラ領域(70)は、半径方向において前記回転軸(52)から離間して延在しかつ前記第1の層(48)に結合された第3の層(68)として形成されており、該第3の層(68)は、前記第1の層(48)に比べて前記回転軸(52)のより近くに配置され、かつ特に鋼を含む、請求項2から6までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項9】
前記ローラ(26)の全直径(d)が、35mm〜55mm、特に40mm〜50mmである、請求項1から8までのいずれか1項記載のローラ(26)。
【請求項10】
ローラタペットハウジング(34)を有する、燃料高圧ポンプ(14)用のローラタペット(20)であって、前記ローラタペットハウジング(34)内に、請求項1から9までのいずれか1項記載のローラ(26)が回転可能に支持されている、燃料高圧ポンプ(14)用のローラタペット(20)。
【請求項11】
燃料高圧ポンプ(14)、特にプラグインポンプ(30)であって、内燃機関(10)のクランク軸(12)によって駆動されるポンプピストン(22)を備え、クランク軸表面(24)との直接的な接触のために、前記ポンプピストン(22)に作用結合した、請求項1から9までのいずれか1項記載のローラ(26)を備えたローラタペット(20)が設けられている、燃料高圧ポンプ(14)。
【請求項12】
クランク軸(12)と、請求項11記載の燃料高圧ポンプ(14)とを備えた内燃機関(10)であって、前記燃料高圧ポンプ(14)は、ポンプピストン(22)と、ローラ(26)を有するローラタペット(20)とを備え、前記クランク軸(12)の運動を前記ポンプピストン(22)に伝達するために、前記ローラ(26)は、クランク軸表面(24)に直接接触し、かつ前記ポンプピストン(22)に作用接触して配置されている、内燃機関(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料高圧ポンプのローラタペット用のローラ、このようなローラを備えて構成されたローラタペット、ローラタペットを有する燃料高圧ポンプ、ならびに、燃料高圧ポンプを有する、クランク軸を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室に供給すべき燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプは、多くの場合、ピストンポンプとして構成されている。ポンプピストンは、圧力室内に存在する燃料を並進的な往復動によって圧縮し、燃料内に高圧を生ぜしめる。例えば、ガソリン内燃機関用の燃料高圧ポンプでは、200バール〜250バールの圧力が燃料に加えられるのに対して、ディーゼル内燃機関用の高圧ポンプによっては、2000バール〜2500バールの圧力が燃料に加えられる。
【0003】
ポンプピストンを並進運動で駆動するために、軸が使用され、ポンプピストンは多くの場合、タペット、例えばローラタペットを介して、軸の表面に接触している。
【0004】
特に2000バール〜3000バールの高圧を準備できるようにするために、駆動軸として、例えばクランク軸のような内燃機関の駆動軸を考慮することが益々増えている。例としてあげられたクランク軸において、ポンプピストンを駆動するカムが、連接棒に対して十分に大きな間隔を得ることができるようにするために、クランク軸は、カムの領域に、比較的大きな基礎円直径を有している。この比較的大きな基礎円直径に沿って、ポンプピストンの駆動時に、ポンプピストンとクランク軸との間に設けられたローラタペットのローラが転動する。ローラが比較的小さく構成されていて、例えば、駆動軸として固有のカム軸を備えたポンプにおいて通常使用されるローラに相当している場合には、ローラの単位時間当たりの回転数は数倍高くなる。例えば、カム軸のローラの回転数は、通常5000〜15000rpmであり、クランク軸における使用時には、回転数は40000rpm以上にも高まることがある。これは、ローラタペットの内部における、かつ特にローラにおける摩耗および摩擦を高めることになる。
【0005】
ローラの回転数を減じるために、ローラ直径を増大させるという可能性がある。ローラ直径の増大に連れて、ローラの重量が一次関数的に大きくなることによって、大きな回転エネルギが発生する。これは、ローラの上昇や、ローラとクランク軸のカムとの間における追加的なスリップを引き起こす。このような作用によって、燃料高圧ポンプの内部における摩耗可能性がより高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、摩耗可能性が減じられた燃料高圧ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えた、燃料高圧ポンプのローラタペット用のローラの構成によって解決される。
【0008】
このようなローラを備えたローラタペット、このローラタペットを備えた燃料高圧ポンプ、およびこの燃料高圧ポンプを有する内燃機関が、他の独立請求項の対象である。
【0009】
本発明の好適な態様が、従属請求項の対象である。
【0010】
複合ローラとして構成された、燃料高圧ポンプのローラタペット用のローラが、第1の複合ローラ領域を形成する第1の材料と、第2の複合ローラ領域を形成する第2の材料と、を有している。第1の材料と第2の材料とは、1つの複合ローラ体積要素を形成するために互いに結合されており、第1の材料は、第2の材料よりも軽量である。
【0011】
少なくとも2つの互いに異なった材料から複合ローラを構成することによって、異なった要求を受ける、ローラの異なった領域において、相応の要求に適した異なったローラ特性を生ぜしめることができる。同時に、一方の材料が他方の材料に比べて軽量であると、ローラにおける重量を低減することが可能であり、これによって、例えば、重いローラの大きな回転エネルギに起因するローラの上昇や、ローラとカムとの間における追加的なスリップのような、比較的重いローラによって引き起こされる欠点が解消される。本発明におけるように、小さなローラに似た重量を有する大きなローラを、複合構造によって形成することができると、このような大きなローラを、クランク軸との接触エレメントとして使用することができ、かつローラ直径がより大きいことによって、小さなローラの使用時よりも回転数を小さくすることができる。これによって、ローラの摩耗、ひいてはローラタペット全体の摩耗が僅かになる。
【0012】
従って、このような複合構造によって、ローラタペットの総重量および回転エネルギを大幅に減じることができる。これにより、大きなローラを備えたローラタペットを、例えば乗用車の内燃機関における回転数のような回転数で運転することが可能になる。このような処置によって、ローラタペットの内部における摩耗および摩擦を大幅に減じることができる。
【0013】
別の利点としては、ローラタペットをカムに向かって押圧し、ひいては上昇を阻止する、減じられた力を有するばねを使用できる点が挙げられる。
【0014】
好ましくは、ローラは、回転軸を中心にして回転可能に形成されており、第1の複合ローラ領域は、半径方向において回転軸から離間して延在する第1の層として形成されており、第2の複合ローラ領域は、半径方向において回転軸から離間して延在する第2の層として形成されており、第1の層は、第2の層に比べて回転軸のより近くに配置されている。
【0015】
このように構成されていると、複合ローラとしてのローラが、異なった材料から成る層状構造によって形成される。このようなローラは、特に簡単に製造することができ、好ましい。
【0016】
好ましくは、第1の材料を有する第1の層は、第2の層に比べて回転軸のより近くに配置されている。特に好ましくは、第1の層および第2の層は、回転軸を中心にして環状に形成されている。
【0017】
すなわち、好ましくは、第2の層は第1の層を取り囲んでいる。従って、ローラの横断面で見ると、好ましくは、比較的軽い第1の材料から形成された第1の円形リングと、この第1の円形リングを取り囲み重い第2の材料から形成された第2の円形リングとがある。
【0018】
このように構成されていると、ローラの内部において、重量を有利に節減することができる。
【0019】
特に好ましくは、第2の材料は、第1の材料に比べて、ころがり摩擦力に対してより大きな抵抗力を有している。
【0020】
ゆえに、特に好ましくは、重い第2の材料を、外側の第2の円形リングとして第1の材料の周りに配置することができる。従って、複合ローラは、好ましくは次のように構成されている。すなわち、内部に軽い材料が配置されていて、この軽い材料には、小さな負荷、特に小さな摩擦負荷にしか加えられないので、この材料の選択に関して、多くの選択肢を得ることができる。好ましくは、特にころがり摩擦力に対して抵抗力のある比較的重い材料が、運転中に実際にころがり摩擦力が加えられる領域である外側領域に配置されている。
【0021】
これによって、軽量であるにも拘わらず抵抗力のあるローラを、好適に形成することができる。
【0022】
好ましくは、第1の材料は、プラスチックおよび/またはアルミニウムおよび/またはセラミックスである。特にプラスチックは、その膨張係数に応じて選択することができかつ比較的重い第2の材料の膨張係数に合わせることができる、多数のプラスチックを使用可能であるという利点を有している。
【0023】
第2の材料は、好ましくは鋼である。なぜなら、鋼は安価に入手することができ、しかも運転中のローラの外側領域における大きなころがり摩擦力に抵抗することができるからである。
【0024】
好ましくは、第1の層は、第2の層に比べて、半径方向においてより厚く形成されている。
【0025】
例えば第2の層は、半径方向の厚さが0.5mm〜3mm、特に1mm〜2mmである。
【0026】
比較的軽い材料を有する第1の層が厚ければ厚いほど、得ることができる重量低減の程度が大きくなる。好適な態様では、ローラの外側領域に配置されている第2の層は、好ましくは、ころがり摩擦力に対する良好な抵抗力を可能にする厚さを有することが望ましい。このような厚さは、好ましくは0.5mm〜3mmの範囲、好適には1mm〜2mmの範囲である。
【0027】
好ましくは、回転軸に、該回転軸を形成する軸エレメントと、該軸エレメントに複合ローラ体積要素を回転可能に支持する軸受エレメント、特に滑り軸受エレメントとを備えたローラコアが直に配置されている。
【0028】
軸エレメントおよび軸受エレメントによって、ローラを好適に回転可能に、例えばローラタペット内において支持することができる。軸エレメントは、ローラの回転軸の領域において十分な安定性を提供し、軸受エレメントは、複合ローラ体積要素を、回転軸を中心にして回転可能に支持するよう機能する。
【0029】
ローラの運転時に存在する大きな力、つまりクランク軸との接触時における大きな力に基づいて、抵抗力のある滑り軸受エレメントを使用することが好ましい。
【0030】
例えば軸受エレメントは、スチールブッシュから形成されており、ゆえに、軸エレメントとの接触時のころがり摩擦力に対して大きな抵抗力を有している。
【0031】
好ましくは、軸受エレメントは、複合ローラ体積要素に結合されているので、軸受エレメントは、複合ローラ体積要素と一緒に軸エレメントを中心にして回転する。これによって、複合ローラ体積要素と軸受エレメントとの間におけるさらなる摩擦力を、好適に回避することができる。
【0032】
好適な態様では、複合ローラ体積要素は第3の複合ローラ領域を有しており、該第3の複合ローラ領域は、半径方向において回転軸から離間して延在しかつ第1の層に結合された第3の層として形成されている。好ましくは、この第3の層は、第1の層に比べて回転軸のより近くに配置されている。ゆえに、第3の層は、比較的小さな抵抗力しか有していない比較的軽い第1の層を支持するための支持層を形成することができる。支持部として機能できるように、特に好ましくは、第3の層は鋼を含むか、または完全に鋼から形成されている。
【0033】
好ましくは、ローラの全直径は、35mm〜55mm、特に40mm〜50mmである。
【0034】
駆動エレメントとしてクランク軸を使用する場合、カム軸の周囲における領域は、多くの場合約160mmの直径を有している。ローラがクランク軸のこの領域において可能な限り低い回転数で転動できるようにするために、好ましくは、ローラは、35mm〜55mmの範囲の比較的大きな直径を有している。約70mmの直径を有する通常使用されるカム軸上を転動する、ローラタペットにおける通常のローラは、たいてい、約20mmの直径を有しているに過ぎない。
【0035】
燃料高圧ポンプ用のローラタペットが、ローラタペットハウジングを有しており、このローラタペットハウジング内に、上述したローラが回転可能に支持されており、このようなローラタペットは、ローラについて既に述べたのと同じ利点を有している。
【0036】
燃料高圧ポンプが、特にプラグインポンプとして形成されており、つまり固有のハウジングを有しておらず、内燃機関のシリンダブロックが、ハウジングとして使用される。この燃料高圧ポンプは、好ましくは、内燃機関のクランク軸によって駆動され、ポンプピストンは、クランク軸表面と直に接触しているローラタペットを介して運動させられる。ローラタペットは、上述したローラを有している。
【0037】
内燃機関が、クランク軸と燃料高圧ポンプとを有しており、この燃料高圧ポンプは、ポンプピストンと、上述したローラを備えたローラタペットとを有している。クランク軸の運動をポンプピストンに伝達するために、ローラは、クランク軸表面に直接接触し、かつポンプピストンに接触して配置されている。
【0038】
添付の図面に基づき、以下で、本発明の有利な実施形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】内燃機関をクランク軸と共に示す図である。
図2】クランク軸を該クランク軸に固定された燃料高圧ポンプと共に示す斜視図である。
図3図2に示した燃料高圧ポンプを備えたクランク軸の断面図であり、燃料高圧ポンプが、ポンプピストンと作用結合しているローラを有するローラタペットを備える様子を示している。
図4図3に示したローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、クランク軸12を有する内燃機関10の一部が斜視図で示されている。
【0041】
図2には、図1に示した、複数の連接棒13を有し燃料高圧ポンプ14が作用するクランク軸12が、斜視図で示されている。
【0042】
図3には、図2に示した燃料高圧ポンプ14を備えたクランク軸12が断面図で示されている。
【0043】
クランク軸12は、2つのカム16を有しており、両方のカム16は、クランク軸回転軸18を中心にしたクランク軸12の回転によって、周期的に燃料高圧ポンプ14のローラタペット20と接触し、ローラタペット20と作用接触しているポンプピストン22を昇降運動させる。
【0044】
クランク軸表面24には、ローラタペット20のローラ26が直に接触しており、このローラ26は、図4と関連して後で記載するように、複合ローラ28として形成されている。
【0045】
燃料高圧ポンプ14は、プラグインポンプ30として形成されており、固有のハウジングを有しておらず、内燃機関10のシリンダブロック32をハウジングとして使用する。
【0046】
ローラ26は、ローラタペット20のローラタペットハウジング34内に回転可能に支持されている。
【0047】
クランク軸回転軸18を中心にしたクランク軸12の回転時に、ローラ26は、クランク軸表面24上で転動する。ローラ26がカム16のうちの1つと接触するや否や、ローラ26、ひいてはローラタペット20の全体が、ポンプピストン22と一緒に、上死点に向かって押圧される。これによって、図示されていない圧力室の容積が小さくなり、この圧力室内に存在する燃料が圧縮され、燃料に高圧負荷が加えられる。
【0048】
クランク軸回転軸18を中心にしたクランク軸12のさらなる運動時に、ローラ26は、ローラタペット20およびポンプピストン22と共に下方に向かって下死点へと移動し、これによって圧力室の容積が増大させられ、圧力を加えられていない燃料をそこに吸い込むことができる。
【0049】
燃料高圧ポンプ14を運転するためのローラタペット20を、比較的小さな基礎円直径を有するカム輪郭、例えばエンジンのカム軸に沿って移動させることが知られている。しかしながら、益々高い圧力で噴射を行うという要求に基づいて、カム軸の駆動歯付きベルトおよびカム軸調節器は、その負荷限界に達している。従って、今や、図3に示すように、燃料高圧ポンプ14はクランク軸12において直に操作される。しかしながら、連接棒13に対する必要な間隔をクランク軸12において維持できるようにするためには、カム16の比較的大きな基礎円直径が必要になる。カム軸と関連して使用されるような標準的なローラタペットを使用した場合、ローラ26は、クランク軸12上で、カム軸上での使用時に比べて数倍高速で回転することになる。例えばエンジンのカム軸上での使用時には、ローラ26の回転数は、典型的には5000rpm〜15000rpmである。これに対して、クランク軸12の使用時には、40000rpmまたはそれ以上の範囲の回転数が見込まれる。これは、ローラタペット20の内部において摩耗および摩擦を増大させる。
【0050】
ローラ26の回転数を減じるために、ローラ直径を大きくするという提案がなされている。このような提案は、例えば船舶用ディーゼル機関のような回転数が低いエンジンの場合に知られている。しかしながら、このような大きなローラ26は重量が大きいので、高回転数時には、ローラ26の上昇や、ローラ26とカム16との間におけるスリップが発生する。それというのは、ローラ26が極めて大きな回転エネルギを有し、高回転数時における動力学的な動きにもはや追従することができないからである。
【0051】
ゆえに、ローラ26を複合ローラ28として構成することが提案され、これは、図4においてローラ26の横断面図で示されている。
【0052】
ローラ26は、第1の材料40から形成された第1の複合ローラ領域38と、第2の材料44から形成された第2の複合ローラ領域42とを有している。第1の材料40と第2の材料44とは、両材料が複合ローラ体積要素46を形成するように、つまり、ローラ26の運動時に、あたかもただ1つの材料から形成されているかのように働くエレメントを形成するように、互いに結合されている。
【0053】
第1の材料40は、第2の材料44よりも軽い。ゆえにローラ26は、ただ1つのエレメントとして働く複合ローラ体積要素46のように形成されているにも拘わらず、実際にただ1つの材料から形成されている標準的なローラとの比較において、明らかな重量低減を達成することができる。これによって、ローラ26の重量に対して正比例する回転エネルギが小さくなるので、ローラ26およびローラタペット20に対して作用する力が減少する。
【0054】
本実施形態では、両複合ローラ領域38,42は、ローラ26の回転軸52から半径方向に離間して延在する層48,50として形成されている。第1の層48は、第2の層50に比べて回転軸52のより近くに配置されている。特に、両方の層48,50は、回転軸52を取り囲むように形成されている。
【0055】
ゆえに、ローラ26の横断面図で見て、第2の材料44から形成された第2の円形リング56によって取り囲まれた、第1の材料40から形成された第1の円形リング54が得られる。
【0056】
三次元の構成では、ローラ26は、例えば、これら複数の層48,50を有する円筒体として形成することができる。
【0057】
本実施形態では、第2の材料44は、第1の材料40に比べて、ローラ摩擦力に対してより大きな抵抗力を有している。
【0058】
複合ローラ体積要素46を形成するために、回転軸52から見てどちらの材料40,44をどのように配置するかは、材料の選択によっても左右される。
【0059】
第1の材料40が第2の材料44に比べてローラ摩擦力に対してより大きな抵抗力を有している場合には、第1の材料40、ひいては第1の層48を、第2の材料44の外側に配置することも可能である。
【0060】
ローラ26の重量低減が実現される場所は、僅かである。後でクランク軸表面24と直に接触する層48,50が、ローラ摩擦力に対してより大きな抵抗力を有する材料を有していると、特に好適である。
【0061】
両方の材料40,44がローラ摩擦力に対して似たような抵抗力を有している場合には、両方の材料40,44をローラ表面58において交互に配置することも可能である。
【0062】
例えば、第1の材料40は、プラスチック、アルミニウムまたはセラミックスであってよい。好ましくは第2の材料44は鋼である。プラスチックを使用した、ローラタペット20のローラ26の複合構造によって、特に良好な重量低減を達成することができ、さらに、鋼と似たような膨張係数を有するプラスチックを選択することができ、このことは特に運転条件下において好適である。
【0063】
図4に示すように、第1の材料40としてのプラスチックが内側の第1の層48として使用される場合、追加的に、運転時において、カム16と燃料高圧ポンプ14との間での衝撃を緩和することができる。これによっても、ローラタペット20および燃料高圧ポンプ14全体の堅牢さを高め、かつ耐用寿命を長くすることができる。
【0064】
特に良好な重量低減を達成するために、より軽量の第1の材料40を有する層48,50が、第2の材料44、つまりより重い材料を有する層48,50よりも厚く形成されていると好ましい。
【0065】
図4に示した実施形態では、外側の第2の円56を形成しかつ比較的重い第2の材料44を有する第2の層50の厚さDは、好ましくは、0.5mm〜3mmで形成されている。さらに好ましくは、第2の層50の厚さDは、1mm〜2mmである。これによって、運転条件下において、ローラ26全体の特に良好な安定性を得ることができる。
【0066】
ローラ26を支持するために、軸エレメント60および軸受エレメント62が回転軸52に直に配置されており、この軸エレメント60および軸受エレメント62は一緒にローラコア63を形成している。軸エレメント60は、ローラ26のための安定した回転軸52を形成する。軸受エレメント62は、複合ローラ体積要素46が軸エレメント60を中心にして回転することを可能にする。ローラ26には特に大きな力が作用するので、軸受エレメント62が滑り軸受エレメント64として、例えばスチールブッシュ66から形成されていると好適である。
【0067】
ローラ26を全体としてさらに安定的にするために、複合ローラ体積要素46が第3の層68を有しており、この第3の層68は、半径方向において回転軸52から離間して延在し、第1の層48および第2の層50に比べて回転軸52のより近くに配置されていると好ましい。例えば、この第3の層68も同様に鋼から形成されていてもよい。
【0068】
これによって、第3の層68は、複合ローラ体積要素46の第3の複合ローラ領域70を形成する。ローラ26の複数部分から成る構造によって、ローラ26の重量を大幅に減じることができ、かつ、ローラ26の運転中に、燃料高圧ポンプ14を摩耗させるような力を生ぜしめることなしに、全直径dが35mm〜55mmであるローラ26を形成することができる。
【0069】
第3の層68の厚さDは、例えば1.5mm〜3.5mm、特に2mm〜3mmであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 内燃機関
12 クランク軸
13 連接棒
14 燃料高圧ポンプ
16 カム
18 クランク軸回転軸
20 ローラタペット
22 ポンプピストン
24 クランク軸表面
26 ローラ
28 複合ローラ
30 プラグインポンプ
32 シリンダブロック
34 ローラタペットハウジング
38 第1の複合ローラ領域
40 第1の材料
42 第2の複合ローラ領域
44 第2の材料
46 複合ローラ体積要素
48 第1の層
50 第2の層
52 回転軸
54 第1の回転リング
56 第2の回転リング
58 ローラ表面
60 軸エレメント
62 軸受エレメント
63 ローラコア
64 滑り軸受エレメント
66 スチールブッシュ
68 第3の層
70 第3の複合ローラ領域
D 厚さ
d 全直径
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】