特表2017-507953(P2017-507953A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-507953(P2017-507953A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】抗CD38抗体との併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170303BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170303BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20170303BHJP
   A61K 31/664 20060101ALI20170303BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20170303BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20170303BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20170303BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20170303BHJP
【FI】
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 121
   A61K31/573
   A61K31/664
   A61K31/704
   A61K31/475
   C07K16/28ZNA
   C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-554350(P2016-554350)
(86)(22)【出願日】2015年2月25日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月17日
(86)【国際出願番号】US2015017420
(87)【国際公開番号】WO2015130728
(87)【国際公開日】20150903
(31)【優先権主張番号】61/946,002
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/006,386
(32)【優先日】2014年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ドシ,パルル
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB21
4C086DA10
4C086DA35
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA24
(57)【要約】
本発明は、抗CD38抗体との併用療法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する、方法。
【請求項2】
前記抗CD38抗体が、インビトロでADCC又はCDCによる前記CD38発現細胞の殺傷を誘発する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CD38抗体が、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のアイソタイプである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CD38抗体が、二分岐グリカン構造を有し、該二分岐グリカン構造のフコース含量が、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD38抗体が、抗体Fcにおいて、アミノ酸位256、290、298、312、356、330、333、334、360、378又は430(ここで、残基の番号付けは、EUインデックスに従う)における置換を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)に結合する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD38抗体が、それぞれ配列番号6、7及び8である重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)、2(HCDR2)及び3(HCDR3)配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CD38抗体が、それぞれ配列番号9、10及び11である軽鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)、2(LCDR2)及び3(LCDR3)配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗CD38抗体が、配列番号12のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号13のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗CD38抗体が、配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記CD38陽性血液悪性疾患が、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)又はマントル細胞リンパ腫(MCL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記CD38陽性血液悪性疾患が、DLBCLである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、少なくとも1種類の化学療法薬、又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、少なくとも1種類の化学療法薬、又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置を、副作用に起因して中断したことのある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記抗CD20抗体が、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(GA−101)、PRO13192又はオカラツズマブ(AME−133v)である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗CD20抗体が、リツキシマブである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種類の化学療法薬が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、イホスファミド、カルボプラチン又はエトポシドである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種類の化学療法薬が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種類の化学療法薬が、イホスファミド、カルボプラチン及びエトポシド(ICE)の組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抗CD38抗体、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾンが、同時に、連続的に又は個別に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、放射線治療により更に処置される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD38抗体との併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD38は、受容体媒介性の接着及びシグナル伝達の機能を有するばかりでなく、そのエクトエンザイム活性を介して、カルシウム動員を媒介し、環状ADPリボース(cADPR)及びADPRの形成を触媒する、多機能性タンパク質である。CD38は、サイトカインの分泌並びにリンパ球の活性化及び増殖を媒介する(Funaro et al.,J Immunolog 145:2390〜6,1990;Terhorst et al.,Cell 771〜80,1981;Guse et al.,Nature398:70〜3,1999)。CD38はまた、そのNADグリコヒドロラーゼ活性を介して、細胞外NAD+濃度を制御することから、制御性T細胞コンパートメントの調節に関連するとされている(Adriouch et al.,14:1284〜92,2012;Chiarugiet al.,Nature Reviews 12:741〜52,2012)。Ca2+を介するシグナル伝達に加えて、T細胞及びB細胞上の抗原−受容体複合体又は他の種類の受容体複合体(例えば、MHC分子)とのクロストークを介して、CD38シグナル伝達が生じることから、CD38は、いくつかの細胞応答に関与するだけでなく、IgG1のスイッチング及び分泌にも関与している。
【0003】
CD38は、髄質胸腺細胞、活性化T細胞及びB細胞、休止NK細胞及び単球、リンパ節胚中心リンパ芽球、形質B細胞、濾胞内細胞並びに樹状細胞などの造血系細胞上に発現する、II型膜貫通糖タンパク質である。正常骨髄細胞、特定の前駆体細胞及び臍帯細胞の一部は、CD38陽性である。リンパ系前駆体細胞に加えて、CD38は、赤血球及び血小板上にも発現しており、腸、脳、前立腺、骨及び膵臓などのいくつかの固形組織上にも発現が確認されている。休止期の成熟T細胞及びB細胞は、表面にCD38をほとんど発現しない。
【0004】
CD38はまた、B細胞慢性リンパ性白血病、T細胞及びB細胞急性リンパ性白血病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、原発性全身アミロイドーシス、マントル細胞リンパ腫、前リンパ球性/骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、大顆粒リンパ球性(LGL)白血病、NK細胞白血病並びに形質細胞白血病などの多発性骨髄腫、白血病及びリンパ腫を含む、種々の悪性血液疾患にて発現している。CD38の発現については、前立腺の腺上皮、膵臓の膵島細胞、耳下腺を含む腺の導管上皮、気管支上皮細胞、精巣及び卵巣の細胞並びに結腸直腸腺癌の腫瘍上皮を含む、異なる起源の上皮/内皮細胞に関して記載されている。CD38の発現が関与し得る他の疾患には、例えば、肺の気管支上皮癌、乳癌(乳管上皮内層及び胸小葉の悪性増殖から生じるもの)、β細胞から生じる膵臓腫瘍(インスリノーマ)、消化管上皮から生じる腫瘍(例えば、腺癌及び扁平上皮細胞癌)、前立腺癌、精巣の精上皮腫及び卵巣癌が挙げられる。中枢神経系では、神経芽細胞腫がCD38を発現する。
【0005】
B細胞性腫瘍は、B細胞が通常産生される、全てのリンパ系組織で生じ得る。B細胞性腫瘍を有するほとんどの患者は、最初は、骨髄又はリンパ節に関与する疾患であると診断される。骨髄が関与する場合、形質転換したB細胞は、往々にして血液中を循環し、周辺リンパ系組織全体に広く分布することになる。しかしながら、B細胞性腫瘍はまた、甲状腺、消化管、唾液腺及び結膜などの一部の非リンパ系組織にも生じ得る。
【0006】
周知のB細胞性腫瘍には、B細胞慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、毛様細胞性白血病、原発性滲出性リンパ腫及びAIDS関連非ホジキンリンパ腫(NHL)が挙げられる。B細胞性腫瘍は、リンパ腫の診断のうちの85%超を占める。
【0007】
NHLは、リンパ球(B細胞又はT細胞)が悪性になり、制御不能に増殖し、腫瘤を形成した場合の、リンパ系を起源とするリンパ腫の広範な分類である。全体で、NHLは、表現型及び予後に幅がある、およそ30の異なるリンパ腫のサブタイプを含む。NHLの発病は、主要市場国で、2019年までに140,000件を超えると推定されている。
【0008】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、リンパ性悪性疾患の30〜40%を占める、最も一般的な侵攻性NHLのサブタイプであり、生物学的及び臨床的に異なる群の疾患を含む。遺伝子発現プロファイル研究では、遺伝子発現プロファイルに基づいて、DLBCLを2つの群に分けられることが示唆されており、これらの群は、胚中心B細胞型(GCB)及び活性化B細胞型(ABC)リンパ腫として知られている。
【0009】
DLBCLの標準治療処置は、一般にCHOPと呼ばれる、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(ドキソルビシン)、ビンクリスチン及びプレドニゾンの組み合わせ、又はR−CHOPと呼ばれる、抗CD20抗体リツキシマブ及びCHOPの組み合わせである。更に、緩和後、造血幹細胞移植が検討され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の処置の選択肢にかかわらず、侵攻性NHLの高リスク群における生存率は、5年で30%という低さであり得る。したがって、NHL及びB細胞性腫瘍に対する有効な処置及び併用処置法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性の調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者由来モデルにおけるダラツムマブ単独又はCHOP若しくはR−CHOPとの組み合わせの有効性を示す。切除したDLBCL腫瘍をSCID/Beigeマウスに移植した。腫瘍がおよそ125〜250mm3に達したら、処置を開始した。ダラツムマブは、20mg/kgで、週1回3週間投与した。CHOP及びR−CHOPは、次のレジメンを用いて、0日に1回投与した(ただし、プレドニゾンは0〜4日目に投与)。CHOP:(シクロホスファミド(CTX):30mg/kg i.v.;ドキソルビシン:2.5mg/kg i.v;ビンクリスチン:0.4mg/kg i.v);プレドニゾン:0.15mg/kg p.o;R−CHOP:リツキシマブ20mg/kg i.p.0日目。腫瘍体積を3日ごとに測定した。Y軸は、腫瘍体積±SEMを表す。
図1B図1Aの研究について、腫瘍接種後日数に対してプロットした生存期間中央値を示す。
図2】非ホジキンリンパ腫の前臨床モデルにおけるダラツムマブ単独又はCHOPとの組み合わせの有効性を示す。マトリゲル中の2×105個のNAMALWA細胞をNOD SCIDマウスに移植し、主な腫瘍サイズがおよそ189mm3に達したら、処置を開始した。ダラツムマブは、10mg/kgで、週1回3週間投与した。CHOPは、次の用量を用いて0〜5日目に毎日投与した。シクロホスファミド(CTX):5mg/kg i.v.;ドキソルビシン:0.5mg/kg i.v;ビンクリスチン:0.08mg/kg i.v.、プレドニゾン:0.03mg/kg p.o.。腫瘍体積を3日ごとに測定した。Y軸は、腫瘍体積±SEMを表す。
図3】DLBCLの前臨床モデルにおけるダラツムマブ単独又はCHOPとの組み合わせの有効性を示す。5×106個のSU−DHL−6細胞をNOD SCIDマウスに移植し、主な腫瘍サイズがおよそ154mm3に達したら、処置を開始した。ダラツムマブは、10mg/kgで、週1回4週間投与した。CHOPは、次の用量を用いて0〜5日目に毎日投与した。シクロホスファミド(CTX):5mg/kg i.v.;ドキソルビシン:0.5mg/kg i.v;ビンクリスチン:0.08mg/kg i.v.、プレドニゾン:0.03mg/kg p.o.。腫瘍サイズを平均±SEMとしてプロットした。
図4】びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者由来モデルにおける、研究の45日目まで同時に又は連続的に投与したCHOP又はR−CHOPと組み合わせたダラツムマブの有効性を示す。ダラツムマブは、20mg/kgで、週1回3週間、0日目又は7日目に投与した。CHOPは、次のレジメンを用いて、0日目に1回、投与した(ただし、プレドニゾンは0〜4日目)。CHOP:(シクロホスファミド(CTX):30mg/kg i.v.;ドキソルビシン:2.5mg/kg i.v;ビンクリスチン:0.4mg/kg i.v);プレドニゾン:0.15mg/kg p.o.。リツキシマブは、20mg/kgで、0日目又は7日目のいずれかに、i.p.投与した。腫瘍サイズを平均±SEMとしてプロットした。CNTO3930:アイソタイプコントロール。括弧内の値は、投薬日を示す。データは、継続研究の44日目での結果を表す。
図5】DLBCLの患者由来モデルにおける、研究の101日目まで同時に又は連続的に投与したCHOP又はR−CHOPと組み合わせたダラツムマブの有効性を示す。投薬は図4に示す通りであった。腫瘍サイズを平均±SEMとしてプロットした。CNTO3930:アイソタイプコントロール。括弧内の値は、投薬日を示す。腫瘍体積における統計的差異は、両側一元配置ANOVAに続いてダネットの多重比較検定を用いて、単剤処置群をコントロール及び標準薬剤の組み合わせと比較して特定した。*P<0.05(コントロールに対して)、†P<0.05(CHOP:シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾンに対して)、DLBCL:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、IHC:免疫組織化学、i.v.:静脈内、i.p.:腹腔内。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「CD38」とは、ヒトCD38タンパク質(同義語:ADPリボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1)を指す。ヒトCD38は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。
【0014】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、広義に用いられ、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(ネズミ、ヒト、ヒト適合化、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含む)、抗体断片、二重特異性又は多重特異性抗体、二量体、四量体又は多量体抗体、並びに一本鎖抗体を含めた、免疫グロブリン分子を含む。
【0015】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができる。IgA及びIgGは、更に、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に下位分類される。あらゆる脊椎種の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、即ちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの1つに分類することができる。
【0016】
「抗体断片」という用語は、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3、重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)などの重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位を保持する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗体断片には、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価断片であるFab断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)2断片、VH及びCHIドメインからなるFd断片、抗体の一本のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544〜546,1989)が挙げられる。VHドメイン及びVLドメインを操作して、合成リンカーを介して一つに連結させ、様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができ、VHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物で発現される場合は、VH/VLドメインが分子内又は分子間で対合して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する。これらは、例えば、国際公開第1998/44001号、第1988/01649号、第1994/13804号及び第1992/01047号に記載されている。これらの抗体断片は、当業者に周知の技術を用いて得られ、これらの断片は、完全長抗体と同様に有用性に応じて選別される。
【0017】
「単離された抗体」という語句は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体断片を指す(例えば、CD38に特異的に結合する抗体)。しかしながら、CD38に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)CD38などのヒトCD38のオルソログに対する交差反応を有し得る。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0018】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で遮られた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義され、例えば、VH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)ある、相補性決定領域(CDR)という用語は、配列の多様性に基づくものであり(Wu and Kabat J Exp Med 132:211〜50,1970;Kabat et al Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)ある「超可変領域」、「HVR」又は「HV」という用語は、Chothia及びLeskによって定義された、構造の変化が大きい抗体可変ドメインの領域を指す(Chothia and Lesk Mol Biol 196:901〜17,1987)。他の用語には、「IMGT−CDR」(Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55〜77,2003)及び「特性決定残基使用」(SDRU)(Almagro,Mol Recognit 17:132〜43,2004)が挙げられる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準的な番号付け及び定義を提供している。各CDR、HV及びIMGTの記述間の対応については、Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55〜77,2003に記載されている。
【0019】
本明細書で使用する「Chothia残基」は、Al−Lazikaniに従って番号付けされたVL及びVHの抗体残基である(Al−Lazikaniら、J Mol Biol 273:927〜48,1997)。
【0020】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義された配列を除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は、上記に記載した様々な用語によって定義することができるため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は、抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0021】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位が非ヒト種に由来し、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内に置換を含んでいてもよく、そのため、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0022】
「ヒト適合化」抗体又は「ヒトフレームワーク適合化(HFA)」抗体とは、米国特許出願公開第2009/0118127号に記載された方法に従って適合化されたヒト化抗体を指す。ヒト適合化抗体は、CDRとFRの最大類似性、CDR1及びCDR2ループ並びに軽鎖CDR3ループの一部に関する長さ適合性及び配列類似性に基づいて、アクセプターとなるヒトフレームワークを選択することによってヒト化される。
【0023】
「ヒト抗体」とは、フレームワークと抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来する、重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト起源の配列に由来する。
【0024】
ヒト抗体は、ヒト起源の配列に「由来」する重鎖又は軽鎖可変領域を含み、この場合、抗体の可変領域は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン又は再構成された免疫グロブリン遺伝子を用いる系から得られる。このような系には、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリー、及び本明細書に記載するヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスなどのトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系又は再構成された免疫グロブリン配列と比較した場合、例えば、天然に発生する体細胞変異又はフレームワーク若しくは抗原結合部位における意図的な置換の導入により、アミノ酸差異を含み得る。典型的には、ヒト抗体は、アミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系又は再構成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされたアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である。ある場合には、ヒト抗体は、ヒトフレームワーク配列分析から得られるコンセンサスフレームワーク配列(例えば、Knappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000に記載のもの)又はファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーに組み込まれた合成HCDR3(例えば、Shi et al.,J Mol Biol 397:385〜96,2010及び国際公開第2009/085462号に記載のもの)を含み得る。抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は、ヒト抗体の定義に含まれない。
【0025】
単離されたヒト化抗体は合成であり得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するものであるが、合成CDR及び/又は合成フレームワークを組み込んだファージディスプレイなどの系を用いて作製してもよく、抗体特性を改善するためにインビトロ変異導入を行うこともできる。これにより、インビボのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内で天然には存在しない抗体が得られる。
【0026】
本明細書で使用する「組み換え抗体」という用語には、組み換え手段によって調製、発現、作製若しくは単離される全ての抗体が含まれ、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入若しくは染色体導入された動物(例えば、マウス)若しくはこれらから作製されたハイブリドーマから単離される抗体(以下で詳述)、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離される抗体、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、及び、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることなどの任意の他の手段によって調製、発現、作製若しくは単離される抗体、又は二重特異性抗体などのFabアーム交換を用いてインビトロで生成される抗体が含まれる。
【0027】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示すか、又は二重特異性モノクローナル抗体の場合、2つの異なるエピトープに対して二重結合特異性を示す。
【0028】
本明細書で使用する「エピトープ」という用語は、抗体が特異的に結合する抗原の一部を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖のような部位の化学的に活性な(極性、非極性又、は疎水性など)表面基からなり、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、立体配座空間単位を形成する連続した、かつ/又は連続していないアミノ酸からなり得る。連続していないエピトープの場合、タンパク質分子が折り畳まれることにより、抗原の直鎖配列の異なる部分のアミノ酸が、3次元空間において近接するようになる。
【0029】
本明細書で使用する「変異体」とは、1つ又は2つ以上の変更、例えば、置換、挿入又は欠失によって、基準ポリペプチド又は基準ポリヌクレオチドとは異なっているポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0030】
「相乗効果」、「共力作用」又は「相乗作用的」とは、ある組み合わせについて予想される相加作用を超えることを意味する。
【0031】
本明細書で使用する「組み合わせて」という用語は、2種類以上の治療物質を、混合物の状態で一緒に、単剤として同時に、又は単剤として任意の順番で連続的に、対象に対して投与できることを意味する。
【0032】
「処置する」又は「処置」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指し、腫瘍又は腫瘍細胞の成長又は拡大などの好ましくない生理学的変化又は疾患を予防又は遅延(緩和)することを目的とする。有益な又は好ましい臨床結果には、検出が可能か不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患程度の低減、疾患状態の安定化(即ち、悪化していない)、疾患進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は一時的緩和、及び寛解(部分的でも完全でも)が含まれる。「処置」はまた、対象が処置を受けなかった場合に予想される生存性と比較して、長く生存することを意味し得る。処置の必要な対象には、その状態若しくは障害をすでに有している対象に加えて、その状態若しくは障害を有する可能性のある対象、又はその状態若しくは障害を予防すべき対象が含まれる。
【0033】
「成長の阻害」(例えば、腫瘍細胞などの細胞に関して)とは、治療物質又は治療物質若しくは薬物の組み合わせに接触させた場合、当業者に周知の適切な制御条件下において成長させた同じ細胞の成長と比較して、インビトロ又はインビボにおける細胞成長が測定可能な程減少することを指す。インビトロ又はインビボにおける細胞成長の阻害は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%又は100%であり得る。細胞成長の阻害は、種々の機構、例えば、抗体依存性細胞介在性毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス、壊死又は細胞増殖の阻害によって生じ得る。
【0034】
「治療的有効量」とは、必要な用量及び期間で、所望の治療効果を得るのに有効な量を指す。治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の反応を引き起こす治療物質又は治療物質の組み合わせの能力などの因子に従って変化し得る。有効的な治療物質又は治療物質の組み合わせの例示的な指標には、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の減少、腫瘍成長の停止若しくは遅延、及び/又は癌細胞の他の体内位置への転移のないことが挙げられる。
【0035】
本発明は、CD38陽性血液悪性疾患を有する患者を処置するための方法を提供する。本発明は、抗CD38抗体をCHOP又はR−CHOPと組み合わせて投与すると、血液悪性疾患に関連する腫瘍モデルにて、インビボで相乗効果のある治療有効性がもたらされるという発見に基づく。
【0036】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性の調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する、方法である。
【0037】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、ADCC又はCDCによるCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する。
【0038】
「CD38陽性血液悪性疾患」とは、白血病、リンパ腫及び骨髄腫を含む、CD38を発現している腫瘍細胞の存在によって特徴付けられる血液悪性疾患を指す。このようなCD38陽性血液悪性疾患の例には、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫及びB細胞非ホジキンリンパ腫、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病及び成熟B細胞腫瘍、例えば、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞急性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)(低グレード、中グレード及び高グレードFLを含む)、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT型、節性及び脾性)、毛様細胞性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、形質細胞腫、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、移植後リンパ球増殖性疾患、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞性白血病並びに未分化大細胞リンパ腫(ALCL)が挙げられる。
【0039】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、多発性骨髄腫である。
【0040】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0041】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、非ホジキンリンパ腫である。
【0042】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、急性リンパ性白血病(ALL)である。
【0043】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、濾胞性リンパ腫(FL)である。
【0044】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、バーキットリンパ腫(BL)である。
【0045】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。
【0046】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の一実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患は、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)又はマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
【0047】
B細胞非ホジキンリンパ腫の例は、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、重鎖病(γ、μ及びα病を含む)、免疫抑制剤を用いる治療によって誘発されるリンパ腫、例えばシクロスポリン誘発リンパ腫及びメトトレキサート誘発リンパ腫である。
【0048】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本発明の一実施形態において、CD38を発現している細胞に関する疾患は、ホジキンリンパ腫である。
【0049】
CD38を発現する細胞に関する疾患の他の例には、T細胞及びNK細胞に由来する悪性疾患が挙げられ、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性鼻型NK/T細胞リンパ腫、78腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫C−ALCL、リンパ腫様丘疹症、境界病変)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型末梢性T細胞リンパ腫及び未分化大細胞リンパ腫などの成熟T細胞及びNK細胞腫瘍が挙げられる。
【0050】
骨髄細胞に由来する悪性疾患の例には、急性前骨髄球性白血病を含む急性骨髄性白血病、及び慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患が挙げられる。
【0051】
いずれの抗CD38抗体も、以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の方法にて使用することができるが、その抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性の調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する場合に限る。抗CD38抗体の可変領域は、標準的方法を用いて、既存の抗CD38抗体から得ることができ、完全長抗体としてクローン化することができる。CD38に結合する可変領域として使用することができるものの例は、例えば、国際公開第05/103083号、第06/125640号、第07/042309号、第08/047242号、第12/092612号、第06/099875号及び第11/154453A1号に記載されている。
【0052】
使用することができる例示的な抗CD38抗体は、ダラツムマブである。ダラツムマブは、それぞれ配列番号4及び5に示す重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を含み、重鎖CDRとして、それぞれ配列番号6、7及び8であるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに軽鎖CDRとして、それぞれ配列番号9、10及び11であるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、また、IgG1/κサブタイプである。ダラツムマブの重鎖アミノ酸配列を配列番号12に示し、軽鎖アミノ酸配列を配列番号13に示す。
【0053】
配列番号1
MANCEFSPVSGDKPCCRLSRRAQLCLGVSILVLILVVVLAVVVPRWRQQWSGPGTTKRFPETVLARCVKYTEIHPEMRHVDCQSVWDAFKGAFISKHPCNITEEDYQPLMKLGTQTVPCNKILLWSRIKDLAHQFTQVQRDMFTLEDTLLGYLADDLTWCGEFNTSKINYQSCPDWRKDCSNNPVSVFWKTVSRRFAEAACDVVHVMLNGSRSKIFDKNSTFGSVEVHNLQPEKVQTLEAWVIHGGREDSRDLCQDPTIKELESIISKRNIQFSCKNIYRPDKFLQCVKNPEDSSCTSEI
【0054】
配列番号2
SKRNIQFSCKNIYR
【0055】
配列番号3
EKVQTLEAWVIHGG
【0056】
配列番号4
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSS
【0057】
配列番号5
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
【0058】
配列番号6
SFAMS
【0059】
配列番号7
AISGSGGGTYYADSVKG
【0060】
配列番号8
DKILWFGEPVFDY
【0061】
配列番号9
RASQSVSSYLA
【0062】
配列番号10
DASNRAT
【0063】
配列番号11
QQRSNWPPTF
【0064】
配列番号12
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0065】
配列番号13
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0066】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体は、それぞれ配列番号14及び15であるVH及びVL配列を含む、米国特許第7,829,693号に記載されている、mAb003である。
【0067】
配列番号14
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAFSWVRQAPGQGLEWMGRVIPFLGIANSAQKFQGRVTITADKSTSTAY
MDLSSLRSEDTAVYYCARDDIAALGPFDYWGQGTLVTVSSAS
【0068】
配列番号15
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQP
EDFATYYCQQYNSYPRTFGQGTKVEIK
【0069】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体は、それぞれ配列番号16及び17であるVH及びVL配列を含む、米国特許第7,829,693号に記載されている、mAb024である。
【0070】
配列番号16
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFSNYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIYPHDSDARYSPSFQGQVTFSADKSISTAY
LQWSSLKASDTAMYYCARHVGWGSRYWYFDLWGRGTLVTVSS
【0071】
配列番号17
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEP
EDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
【0072】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体は、それぞれ配列番号18及び19であるVH及びVL配列を含む、米国特許第8,088,896号に記載されている、MOR−202(MOR−03087)である。
【0073】
配列番号18
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYYMNWVRQAPGKGLEWVSGISGDPSNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLY
LQMNSLRAEDTAVYYCARDLPLVYTGFAYWGQGTLVTVSS
【0074】
配列番号19
DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDNLRHYYVYWYQQKPGQAPVLVIYGDSKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAE
DEADYYCQTYTGGASLVFGGGTKLTVLGQ
【0075】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の方法にて用いられる抗CD38抗体はまた、例えば、ヒト免疫グロブリン又はその部分(Fab、一本鎖抗体(scFv)又は対合していない若しくは対合した抗体可変領域など)をファージに発現させるように操作したファージディスプレイライブラリーから新たに選択してもよい(Knappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000;Krebs et al.,J Immunol Meth 254:67〜84,2001;Vaughan et al.,Nature Biotechnology 14:309〜314,1996;Sheets et al.,PITAS(USA)95:6157〜6162,1998;Hoogenboom and Winter,J Mol Biol 227:381,1991;Marks et al.,J Mol Biol 222:581,1991)。CD38結合可変ドメインは、例えば、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を、バクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として発現するファージディスプレイライブラリーから単離することができる(Shi et al.,J.Mol.Biol.397:385〜96,2010及び国際公開第09/085462号に記載の通り)。この抗体ライブラリーを、ヒトCD38細胞外ドメインとの結合について選別し、得られた陽性クローンを更に特性評価し、クローン溶解物からFabを単離し、続いて完全長抗体としてクローニングすることができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当技術分野にて確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号;米国特許第5,403,484号;及び米国特許第5,571,698号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,969,108号、米国特許第6,172,197号、米国特許第5,885,793号;米国特許第6,521,404号;米国特許第6,544,731号;米国特許第6,555,313号;米国特許第6,582,915号;及び米国特許第6,593,081号を参照されたい。
【0076】
抗体のFc部分は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)又は補体依存性細胞傷害(CDC)などの抗体エフェクター機能を媒介し得る。このような機能は、食作用若しくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体への1つ又は複数のFcエフェクタードメインの結合、又は補体系成分への1つ又は複数のFcエフェクタードメインの結合によって媒介され得る。通常、Fc結合細胞又は補体成分によって媒介される1つ又は複数の作用は、標的細胞、例えば、CD38発現細胞の阻害及び/又は枯渇をもたらす。ヒトIgGアイソタイプのIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4は、エフェクター機能について、異なる能力を示す。ADCCは、IgG1及びIgG3によって媒介され得、ADCPは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4によって媒介され得、CDCは、IgG1及びIgG3によって媒介され得る。
【0077】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のアイソタイプである。
【0078】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、ADCCによるCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する。
【0079】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、CDCによるCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する。
【0080】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、インビトロで、ADCPによるCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0081】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、インビトロで、アポトーシスによるCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0082】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、インビトロで、ADCC及びCDCによるCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0083】
作用機構に関していかなる特定の理論に束縛されるものではないが、本発明の抗CD38抗体は、ADCC、CDC、ADCP、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビボ調節によりCD38発現細胞のインビボ殺傷を誘発することが予想される。
【0084】
「抗体依存性細胞傷害」又は「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」又は「ADCC」は、エフェクター細胞上に発現したFcガンマ受容体(FcγR)を介した、抗体で被覆された標的細胞と、溶解活性を有するエフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ及び好中球など)との相互作用に依存する、細胞死を誘発する機構である。例えば、NK細胞は、FcγRIIIaを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcvRIIIaを発現する。抗体で被覆された標的細胞、例えばCD38発現細胞の死は、膜孔形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌によるエフェクター細胞活性の結果として生じる。抗CD38抗体のADCC活性をインビトロで評価するには、その抗体を、抗原抗体複合体によって活性化され得る免疫エフェクター細胞とともにCD38発現細胞に添加し、標的細胞の細胞溶解を生じさせればよい。細胞溶解は、通常、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然細胞内タンパク質)の放出によって検出される。このようなアッセイのための例示的なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びNK細胞が挙げられる。例示的な標的細胞には、CD38を発現しているDaudi細胞(ATCC(登録商標)CCL−213(商標))又はB細胞白血病若しくはリンパ腫の腫瘍細胞が挙げられる。例示的なアッセイにおいて、標的細胞を20μCiの51Crで2時間標識し、広範に洗浄する。標的細胞の細胞濃度は、1×106細胞/mLに調整され得、様々な濃度で抗CD38抗体を添加する。Daudi細胞を、40:1のエフェクター:標的細胞の比で添加することによって、アッセイを開始する。37℃で3時間インキュベーションした後、アッセイを遠心分離によって停止し、溶解した細胞からの51Cr放出をシンチレーションカウンターで計測する。細胞傷害のパーセンテージは、3%過塩素酸を標的細胞に添加することによって誘発され得る最大溶解率(%)として算出することができる。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体は、コントロール(3%過塩素酸によって誘発させた細胞溶解)の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%でADCCを誘発し得る。
【0085】
「抗体依存性細胞貪食」(「ADCP」)は、マクロファージ又は樹状細胞などの食細胞による内在化によって、抗体で被覆された標的細胞が除去される機構を指す。インビトロADCPは、エフェクター細胞として単球由来マクロファージを用い、またGFP又は他の標識分子を発現するように操作された標的細胞として、CD38を発現しているDaudi細胞(ATCC(登録商標)CCL−213(商標))又はB細胞白血病若しくはリンパ腫の腫瘍細胞を用いることによって、評価することができる。エフェクター:標的細胞の比は、例えば、4:1であってよい。エフェクター細胞を、抗CD38抗体とともに又は抗CD38抗体を含めずに、標的細胞と4時間インキュベートすることができる。インキュベーション後、アクターゼを用いて細胞を剥離することができる。マクロファージは、蛍光標識と結合した抗CD11b及び抗CD14抗体によって特定することができ、標準的方法を用いて、CD11+CD14+マクロファージの%GFP蛍光に基づいて、食作用率を決定することができる。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体は、ADCPを約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%誘発し得る。
【0086】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」とは、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが補体成分C1qと結合して活性化し、これにより、補体カスケードが活性化して標的細胞の死がもたらされる、細胞死を誘発する機構を指す。補体の活性化はまた、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)に結合することによってADCCを促進する、標的細胞表面上への補体成分の蓄積をもたらすことができる。CD38発現細胞のCDCは、インビトロで測定することができ、例えば、Daudi細胞を1×105細胞/ウェル(50μL/ウェル)でRPMI−B(1% BSA添加RPMI)中に播種し、50μLの抗CD38抗体を最終濃度0〜100μg/mLでウェルに添加し、反応物を室温で15分間インキュベートし、11μLのヒトプール血清をウェルに添加し、反応物を37℃で45分間インキュベートすることによって、測定することができる。溶解細胞のパーセンテージ(%)は、標準的方法を用いて、FACSアッセイにおけるヨウ化プロピジウム染色細胞率(%)として検出することができる。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体は、CDCを約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%誘発し得る。
【0087】
モノクローナル抗体のADCCを誘発する能力は、そのオリゴ糖成分を操作することによって高めることができる。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN−グリコシル化されており、グリカンの大部分はよく知られた二分岐G0、G0F、G1、G1F、G2又はG2F型である。操作されていないCHO細胞によって産生される抗体は、通常、およそ少なくとも85%のグリカンフコース含量を有する。Fc領域に結合した二分岐複合型オリゴ糖からコアフコースを除去すると、抗原結合又はCDC活性を変えることなく、FcγRIIIaの結合が改善され、抗体のADCCが向上する。このような抗体は、二分岐複合型のFcオリゴ糖を有する比較的高度に脱フコシル化された抗体の発現につながることが報告されている種々の方法を用いて達成することができ、例えば、培養浸透圧の調節(Konno et al.,Cytotechnology 64:249〜65,2012)、変異体CHO株Lec13の宿主細胞株としての応用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733〜40,2002)、変異体CHO株EB66の宿主細胞株としての応用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010;印刷版に先駆けた電子版;PMID:20562582)、ラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の宿主細胞株としての応用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466〜3473,2003)、α 1,6−フコシルトラスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な小分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng 88:901〜908,2004)、又はβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIとゴルジα−マンノシダーゼII若しくは強力なα−マンノシダーゼI阻害剤であるキフネンシンとの共発現(Ferrara et al.,J Biol Chem 281:5032〜5036,2006,Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851〜861,2006;Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99:652〜65,2008)などである。本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態にて使用される抗CD38抗体によって誘発されるADCCは、抗体Fc内の特定の置換によっても向上し得る。例示的な置換は、例えば、米国特許第6,737,056号に記載されている、アミノ酸位256、290、298、312、356、330、333、334、360、378又は430での置換である(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【0088】
本明細書にて記載するいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、抗体Fc内に置換を含む。
【0089】
本明細書にて記載するいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、抗体Fcにおいて、アミノ酸位256、290、298、312、356、330、333、334、360、378又は430における置換を含む(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【0090】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本発明の別の実施形態は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発し、抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体(ダラツムマブ)と、CD38への結合に関して競合する、方法である。
【0091】
抗体は、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを有するダラツムマブとのCD38への結合に関する競合について、周知のインビトロ法を用いて、評価することができる。例示的な方法において、CD38を組み換え的に発現するCHO細胞を、4℃で15分間、非標識のダラツムマブとインキュベートし、続いて、4℃で45分間、過剰の蛍光標識した試験抗体とインキュベートすることができる。PBS/BSA中で洗浄後、標準的方法を用いて、フローサイトメトリーによって蛍光を測定することができる。別の例示的な方法において、ヒトCD38の細胞外部分を、ELISAプレートの表面上にコーティングすることもできる。過剰の非標識ダラツムマブを約15分間添加し、その後、ビオチン化した試験抗体を添加することができる。PBS/Tween中で洗浄後、ビオチン化した試験抗体の結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンを用いて検出し、標準的方法を用いて、そのシグナルを検出することができる。競合アッセイにおいて、ダラツムマブが標識され、試験抗体が非標識であってもよいことは容易に明らかである。試験抗体は、ダラツムマブが試験抗体の結合を阻害するとき、又は試験抗体が、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%又は100%ダラツムマブの結合を阻害するとき、ダラツムマブと競合する。試験抗体のエピトープは、既知の方法を用いて、例えば、ペプチドマッピング又は水素/重水素保護アッセイによって、更に定義することができる。
【0092】
以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示する本発明の別の実施形態は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)に結合する抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する方法である。この抗体のエピトープは、配列番号2又は配列番号3に示す配列を有するこれらの領域の残基の一部又は全てを含む。以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示するいくつかの実施形態において、抗体エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくとも1つのアミノ酸、及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくとも1つのアミノ酸を含む。以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示するいくつかの実施形態において、抗体エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくとも2つのアミノ酸、及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくとも2つのアミノ酸を含む。以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示するいくつかの実施形態において、抗体エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくとも3つのアミノ酸、及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくとも3つのアミノ酸を含む。以下に記載する付番した実施形態におけるものを含む、本明細書にて開示するいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくともKRNを含み、EKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくともVQLT(配列番号20)を含むエピトープに結合する。
【0093】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくともKRNを含み、EKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくともVQLT(配列番号20)を含むエピトープに結合する。
【0094】
上述したヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)又は最小限で残基KRN及びVQLT(配列番号20)に結合する、例示的な抗体は、上記に記載した特定のVH、VL及びCDR配列を有するダラツムマブである。ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)及びEKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)に結合する抗体は、例えば、標準的な方法を用いて、かつ本明細書に記載するように、配列番号2及び3に示すアミノ酸配列を有するペプチドでマウスを免疫化することによって、作製することができる。抗体は、例えば、上述した通り、ダラツムマブと試験抗体との間のCD38への結合に関する競合をアッセイすることによって、更に評価することができる。
【0095】
本明細書にて記載する方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、ある範囲の親和性(KD)でヒトCD38に結合することができる。本発明に係る一実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、高親和性、例えば、当業者によって実施される表面プラズモン共鳴又はKinexa法で測定されるとき、KDが約10-7M以下、例えば、限定するものではないが、1〜9.9(又はこのうちの任意の範囲若しくは値、例えば1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9)×10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15又はこのうちの任意の範囲若しくは値でCD38に結合する。1つの例示的な親和性は、1×10-8M以下である。別の例示的な親和性は、1×10-9M以下である。
【0096】
本明細書にて記載するいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、二分岐グリカン構造を有し、該二分岐グリカン構造のフコース含量が、約0%〜約15%、例えば、15%、14%、13%、12%、11%10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%である。
【0097】
本明細書にて記載するいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、二分岐グリカン構造を有し、該二分岐グリカン構造のフコース含量が、約50%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%である。
【0098】
Fcにおける置換及びフコース含量の低減により、抗CD38抗体のADCC活性が向上し得る。
【0099】
「フコース含量」は、Asn297における糖鎖内のフコース単糖の量を意味する。フコースの相対量は、全ての糖鎖構造に対するフコース含有構造のパーセンテージである。これらは、多くの方法によって特性評価及び定量化を行うことができ、例えば、1)国際公開第2008/077546号に記載されているように、N−グリコシダーゼFで処理したサンプル(例えば、複合体、ハイブリッド、並びにオリゴ及び高マンノース構造)のMALDI−TOFの使用、2)Asn297グリカンの酵素による放出の後、誘導体化し、蛍光検出及び/若しくはHPLC−MS(UPLC−MS)を用いてHPLC(UPLC)による検出/定量化を行うこと、3)第1と第2のGlcNAc単糖間で切断し、フコースを第1のGlcNAcに結合したままにするEndo S若しくは他の酵素でのAsn297グリカンの処理を行うか若しくは行わない天然型若しくは還元型mAbのインタクトタンパク質分析、4)mAbを酵素的消化(例えば、トリプシン又はエンドペプチダーゼLys−C)により構成ペプチドに消化した後、HPLC−MS(UPLC−MS)によって分離、検出及び定量化を行うこと、又は5)PNGase FによるAsn297での特異的酵素脱グリコシル化によって、mAbタンパク質からmAbオリゴ糖を分離することによってなされ得る。放出されたオリゴ糖をフルオロフォアで標識し、これを様々な補完的な技術によって分離及び特定することができる。これらの技術は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析による実験質量と理論質量との比較によるグリカン構造の詳細な特性評価、イオン交換HPLC(GlycoSep C)によるシアリル化度の測定、順相HPLC(GlycoSep N)による親水性基準に従ったオリゴ糖形態の分離及び定量化、並びに高性能キャピラリー電気泳動レーザ誘起蛍光法(HPCE−LIF)によるオリゴ糖の分離及び定量化を可能とする。
【0100】
本出願で使用する「低フコース」又は「低フコース含量」とは、約0%〜15%のフコース含量である抗体を指す。
【0101】
本明細書で使用する「通常フコース」又は「通常フコース含量」とは、約50%超、一般に約60%、70%、80%又は85%超のフコース含量である抗体を指す。
【0102】
本方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において使用される抗CD38抗体は、インビトロで、アポトーシスによるCD38陽性細胞殺傷を誘発することができる。アポトーシスを評価するための方法は、周知であり、例えば、標準的な方法を用いるアネキシンIV染色が挙げられる。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体は、細胞の約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%でアポトーシスを誘発し得る。
【0103】
本方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において使用される抗CD38抗体は、CD38酵素活性の調節によりCD38陽性細胞殺傷を誘発することができる。CD38は、環状ADPリボース(cADPR)及びADPRのNAD+からの形成を触媒するADPリボシルシクラーゼ1活性を有するエクトエンザイムであり、NAD+及びcADPRをADPRに加水分解するようにも機能する。CD38はまた、酸性条件下で、NADP+のニコチンアミド基のニコチン酸による交換を触媒し、NAADP+(ニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸塩)を生成する。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体によるヒトCD38の酵素活性の調節は、Graeff et al.,J.Biol.Chem.269,30260〜30267(1994)に記載のアッセイで測定することができる。例えば、基質NGD+をCD38とともにインキュベートしてもよく、抗体を様々な濃度で添加した後の種々の時間点で、環状GDPリボース(cGDPR)生成の調節を、励起340nM及び発光410nMで分光光度的に観察することができる。cADPRの合成の阻害は、Munshi et al.,J.Biol.Chem.275,21566〜21571(2000)に記載のHPLC法に従って決定することができる。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体は、CD38酵素活性を少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%阻害し得る。
【0104】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号6、7及び8である重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)、2(HCDR2)及び3(HCDR3)配列を含む。
【0105】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号9、10及び11である軽鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)、2(LCDR2)及び3(LCDR3)の配列を含む。
【0106】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0107】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む。
【0108】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、配列番号12のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号13のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0109】
配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む抗体と実質的に同一である抗体を、本発明の方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、使用することができる。本明細書で使用する「実質的に同一」という用語は、比較する2つの抗体重鎖又は軽鎖アミノ酸配列が同一であるか、又は「わずかな差異」しか有していないことを意味する。わずかな差異とは、抗体の特性に悪影響を及ぼさない、抗体重鎖又は軽鎖における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸の置換である。同一性パーセントは、例えば、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のAlignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定することができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として使用して、例えば、近縁配列を特定するために公開データベース又は特許データベースでの検索を実行することができる。かかる検索を実行するために使用されるプログラム例は、初期設定を使用する、XBLAST若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westborough、MA)スイートである。本発明の方法にて使用される抗CD38抗体に対して行うことができる例示的な置換は、例えば、類似の電荷、疎水性又は立体化学的特性を有するアミノ酸による保存的置換である。また、保存的置換は、抗体特性、例えば安定性若しくは親和性を向上させるために、又は抗体エフェクター機能を向上させるために行うこともできる。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸置換を、例えば、抗CD38抗体の重鎖又は軽鎖に対して行ってよい。更に、アラニンスキャニング変異導入法として先に記載されている通り、重鎖又は軽鎖内の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる(MacLennan et al.,Acta Physiol Scand Suppl 643:55〜67,1998;Sasaki et al.,Adv Biophys 35:1〜24,1998)。当業者であれば、こうした置換が望ましい時点で、所望のアミノ酸置換を決定することができる。アミノ酸置換は、例えば、PCR変異導入(米国特許第4,683,195号)によって行うことができる。変異体のライブラリーは、周知の方法を用いて、例えば、ランダム(NNK)又は非ランダムコドン、例えば、11のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドンを用い、所望の特性を有する変異体についてライブラリーを選別することで作製することができる。作製された変異体を、本明細書に記載の方法を用いて、CD38への結合、ADCC、ADCP又はアポトーシスをインビトロで誘発する能力について、試験することができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、二重特異性抗体である。既存の抗CD38抗体のVL及び/若しくはVH領域、又は上記で新たに特定されたVL及びVH領域を操作して、二重特異性完全長抗体にしてもよい。このような二重特異性抗体は、2つの単一特異性抗体の重鎖間のCH3相互作用を、二重特異性抗体を形成するように調節することによって行うことができ、米国特許第7,695,936号;国際公開第04/111233号;米国特許出願公開第2010/0015133号;米国特許出願公開第2007/0287170号;国際公開第2008/119353号;米国特許出願公開第2009/0182127号;米国特許出願公開第2010/0286374号;米国特許出願公開第2011/0123532号;国際公開第2011/131746号;国際公開第2011/143545号;又は米国特許出願公開第2012/0149876号に記載の技術などを用いて行うことができる。本発明の抗体のVL及び/又はVH領域に組み込むことができる更なる二重特異性構造は、例えば、二重可変ドメイン免疫グロブリン(国際公開第2009/134776号)、又は異なる特異性を有する2つの抗体アームを接続する種々の二量化ドメイン、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメインを含む構造(国際公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号;米国特許第6,833,441号)である。
【0111】
本発明の別の実施形態は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、インビトロ抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節を誘発し、CD38陽性血液悪性疾患は、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)又はマントル細胞リンパ腫(MCL)である、方法である。
【0112】
シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせた抗CD38抗体の治療レジメンは、CHOP又はR−CHOPの標準治療と比較して、インビボ腫瘍殺傷に相乗作用的効果をもたらすことができ、したがって、CHOP又はR−CHOPを単独で用いる場合と比較して、患者集団に利益をもたらすことができる。
【0113】
本発明はまた、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発し、対象が、少なくとも1種類の化学療法薬、又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得している、方法を提供する。
【0114】
本発明はまた、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発し、対象が、少なくとも1種類の化学療法薬、又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置を、副作用に起因して中断したことのある(原文「has discontinued」)、方法を提供する。
【0115】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬による処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、イホスファミド、カルボプラチン又はエトポシドである。
【0116】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬による処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせである。
【0117】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬による処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、イホスファミド、カルボプラチン及びエトポシド(ICE)の組み合わせである。
【0118】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、抗CD20抗体は、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(GA−101)、PRO13192又はオカラツズマブ(AME−133v)である。
【0119】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0120】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせであり、抗CD20抗体は、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(GA−101)、PRO13192又はオカラツズマブ(AME−133v)である。
【0121】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、イホスファミド、カルボプラチン及びエトポシド(ICE)の組み合わせであり、抗CD20抗体は、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(GA−101)、PRO13192又はオカラツズマブ(AME−133v)である。
【0122】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせであり、抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0123】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか又は耐性を獲得しており、この少なくとも1種類の化学療法薬は、イホスファミド、カルボプラチン及びエトポシド(ICE)の組み合わせであり、抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0124】
対象が少なくとも1種類の化学療法薬又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか、耐性を持つようになったか又は耐性を持つ可能性があるかを判断するには、様々な定性的及び/又は定量的方法を用いることができる。耐性に関連し得る症状には、例えば、患者の健康状態の低下若しくは停滞、腫瘍サイズの増大、癌細胞数の増加、腫瘍若しくは腫瘍細胞の成長低下の停止若しくは鈍化、ある位置から他の器官、組織若しくは細胞への癌性細胞の体内における拡大が挙げられる。また、腫瘍に関連する種々の症状の再発又は悪化も、対象が少なくとも1種類の化学療法薬及び抗CD20抗体に対する耐性を持つようになったか、又は耐性を持つ可能性があることの指標となり得る。癌に関連する症状は、癌の種類によって変化し得る。例えば、B細胞悪性疾患に関係する症状には、頸部、鼠径部若しくは腋窩のリンパ節腫脹、発熱、寝汗、咳嗽、胸痛、原因不明の体重減少、腹部の膨隆若しくは痛み、又は膨満感が含まれ得る。悪性リンパ腫における寛解は、Cheson基準(Cheson et al.,J Clin Oncology 25:579〜586,2007)を用いて標準化されており、このガイドラインを、対象が少なくとも1種類の化学療法薬又は少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせに対する耐性を持つようになったかどうかを判断するのに用いることができる。
【0125】
米国一般名(USAN)によって特定される抗体の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は、通常は、米国医学会(http://_www_ama−assn_org)により、又はCAS登録番号、又は国際一般名称(INN)(http://_www_drugs_com/inn_html)により利用可能である。
【0126】
本明細書にて記載する本発明のいくつかの実施形態において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象は、CD16の158位がフェニルアラニンのホモ接合型(FcγRIIIa−158F/F遺伝子型)であるか、又はCD16の158位がバリンとフェニルアラニンのヘテロ接合型(FcγRIIIa−158F/V遺伝子型)である。CD16はまた、Fcガンマ受容体IIIa(FcγRIIIa)又は低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体III−Aアイソフォームとしても知られている。FcγRIIIaタンパク質の残基158位におけるバリン/フェニルアラニン(V/F)多型は、ヒトIgGに対するFcγRIIIaの親和力に影響することが示されている。FcγRIIIa−158F/F又はFcγRIIIa−158F/V多型を有する受容体は、FcγRIIIa−158V/Vと比較して、低いFc結合を示し、したがって、低いADCCを示す。ヒトN型オリゴ糖にフコースが存在しないか又は少量であると、ヒトFcγRIIIa(CD16)に対する抗体の結合が向上することから、ADCCを誘発する抗体の能力が向上する(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733〜40,2002)。慣用的方法を用いて、患者をFcγRIIIa多型について分析することができる。
【0127】
本発明はまた、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を処置する方法であって、必要とする患者に、抗CD38抗体を、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することを含み、該抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によりCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発し、対象は、CD16の158位がフェニルアラニンのホモ接合型であるか、又はCD16の158位がバリンとフェニルアラニンのヘテロ接合型である、方法を提供する。
【0128】
投与/医薬組成物
本発明の方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体は、抗CD38抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む、好適な医薬組成物で提供され得る。担体は、希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルであってよく、この担体とともに抗CD38抗体を投与する。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、又は合成物起源のものを含む、水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まない。これらは、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要なpH調整剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤並びに着色剤などの薬学的に許容可能な補助物質を含んでよい。このような医薬製剤中の本発明の分子又は抗体の濃度は、大幅に異なってもよく、即ち、重量にして約0.5%未満から、通常は少なくとも約1%まで又は最大で15%若しくは20%まで異なってよく、選択される特定の投与方法に従って、必要とされる用量、流体の体積、粘度などに主に基づいて選択される。好適なビヒクル及び配合物(他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンを含む)については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691〜1092に記載されており、特に、958〜989頁を参照されたい。
【0129】
本発明の方法における抗CD38抗体の投与方法は、非経口的投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内若しくは皮下、経肺、経粘膜(口腔内、鼻腔内、膣内、直腸)又は当該技術分野において周知である、当事者によって認識されている他の手段などの好適な任意の経路であってよい。
【0130】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、患者に、任意の好適な経路、例えば、静脈内(i.v.)注入若しくはボーラス注入による非経口投与、筋肉内又は皮下又は腹腔内により投与することができる。i.v.注入は、例えば15、30、60、90、120、180若しくは240分にわたって、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12時間投与することができる。
【0131】
CD38陽性血液悪性疾患を有する患者に投与される用量は、処置対象の疾患を軽減するか又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量(「治療的有効量」)であり、場合により、0.005mg/kg〜約100mg/kg、例えば約0.05mg/kg〜約30mg/kg若しくは約5mg〜約25mg/kg、又は約4mg/kg、約8mg/kg、約16mg/kg若しくは約24mg/kg、又は例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/kgであってよいが、更に高い、例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90若しくは100mg/kgであってもよい。
【0132】
例えば、50、100、200、500又は1000mgの固定用量を投与してもよいし、患者の体表面積に基づいた用量、例えば、500、400、300、250、200又は100mg/m2であってもよい。CD38陽性B細胞悪性疾患を処置するには、通常、1〜8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8回)が投与され得るが、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回又はそれ以上の用量が投与されてもよい。
【0133】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上の期間の後に繰り返すことができる。長期投与と同様に、治療コースを繰返し行うことも可能である。繰り返し投与は、同一用量で行ってもよいし、又は異なる用量で行ってもよい。例えば、本発明の方法における抗CD38抗体は、1週間間隔で8mg/kg又は16mg/kgでの8週間の投与、続いて、2週間ごとに8mg/kg又は16mg/kgでの更に16週間の投与、続いて、4週間ごとに8mg/kg又は16mg/kgでの投与を、静脈内注入により行うことができる。
【0134】
抗CD38抗体は、例えば、6ヶ月又はそれ以上の間、1週間に1回などの維持療法によって、本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、投与することができる。
【0135】
例えば、本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日のうちの少なくとも1日、あるいは処置開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20週又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1週に、24、12、8、6、4若しくは2時間又はこれらの任意の組み合わせごとの単回用量又は分割用量を用いて、1日当たり約0.1〜100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgの1日用量で提供され得る。
【0136】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、癌の発症リスクの低減、癌の進行における事象の発現遅延、及び/又は癌が寛解したときの再発リスクの低減のために、予防的に投与することもできる。これは、他の生物学的要因から、存在することがわかっている腫瘍の位置を特定するのが困難である患者において、特に有用であり得る。
【0137】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体で再構成されてもよい。この技術は、従来のタンパク質調製にて有効であることが示されており、周知の凍結乾燥及び再構成の技術を採用することができる。
【0138】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することができる。
【0139】
例えば、CHOP及びこれらの個々の成分を、Moharhmad et al.,Gun.Cancer Res 25:4950,2000;McKelvey et al.,Cancer 1484〜1493;1976;Armitage et al.,J.Clin.Oncol.2:898〜902,1984;Skeel,R.T.,Handbook of Cancer Gliemotherapy,3rd Edition,Little,Brown & Co.,1991:343に記載の通りに投与することができる。典型的な投与経路は、腹腔内(i.p.)、静脈内(i.v.)又は経口(p.o.)である。レジメンは、毎日、隔日、又は4日に1回のいずれかであり得る。CHOP構成成分の典型的な用量は、次の通りである。シクロホスファミド、最大30mg/kgの単回用量をi.v.若しくはi.p.又は20mg/kgを8日間毎日i.v.若しくはi.p.;ドキソルビシン、最大6mg/kgの単回用量をi.v.若しくはi.p.;ビンクリスチン、0.2〜0.5mg/kgの単回用量をi.p.若しくはi.v.;プレドニゾン、最大10mg/kg/日を単剤としてp.o.。
【0140】
例えば、CHOPは、用量:シクロホスファミド30mg/kg、ドキソルビシン2.5mg/kg、ビンクリスチン0.4mg/kg、プレドニゾン0.15mg/kgで投与することができる。CHOPは、異なるサイクル数で21日ごとに投与してもよい。シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチンは、i.v.注入で投与することができる。プレドニゾンは、各サイクルの開始時に5日間、経口により毎日摂取される錠剤として投与することができる。
【0141】
本発明の方法において、また以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態において、抗CD38抗体及びCHOPの組み合わせは、任意の都合の良い時間枠にわたって投与することができる。例えば、抗CD38抗体及びCHOPは、同じ日に、更に同じ静脈内注入で(プレドニゾンを除く)患者に投与することができる。しかしながら、抗CD38抗体及びCHOPはまた、1日おき又は1週若しくは1ヶ月おきなどで投与してもよい。いくつかの方法において、抗CD38抗体及びCHOPは、処置対象の患者中(例えば、血清中)に検出可能な濃度で同時に存在するように、時間的に十分近接するように投与され得る。いくつかの方法において、ある期間にわたる複数の投与回数からなる抗CD38抗体での全処置コースの後に又は前に、複数の投与回数からなるCHOPでの処置コースが行われる。抗CD38抗体の投与とCHOPの投与との間に、1日、2日若しくは数日間、又は1週間、2週間若しくは数週間の回復期間を用いてもよい。
【0142】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて投与することができる。
【0143】
本発明の方法及び以下に記載する付番した実施形態の各々のいくつかの実施形態における抗CD38抗体は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン及び抗CD20抗体リツキシマブ(R−CHOP)と組み合わせて投与することができる。
【0144】
リツキシマブは、375mg/m2の用量で静脈内注入として投与され得、4回又は8回の用量を週1回投与することができる。
【0145】
抗CD38抗体とCHOPの組み合わせは、体外照射療法、強度変調放射線治療(IMRT)を含む任意の形態の放射線治療、ガンマナイフ、サイバーナイフ、Linac及び組織内放射線療法(例えば、埋め込み放射性シード、GliaSiteバルーン)を含む任意の形態の放射線手術、並びに/又は手術と合わせて投与することができる。放射線治療は、巨大病変(約10cmを超える腫瘍サイズ)を有する患者、又は化学療法の候補にならない患者の緩和治療において、使用することができる。
【0146】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【0147】
本発明の更なる実施形態
本明細書に別途記載される開示に従った本発明の更なる特定の実施形態について、以下に記載する。本明細書にて開示する本発明に関して上記で述べた本発明の実施形態の特徴はまた、これらの更なる付番した実施形態の各々にも関連する。
1.CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の処置にて、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)と組み合わせて使用するための抗CD38抗体。
2.CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の処置にて、抗CD38抗体と組み合わせて使用するためのシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)。
3.CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の処置にて使用するための抗CD38抗体、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせ。
4.前記抗CD38抗体が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、アポトーシス又はCD38酵素活性のインビトロ調節によるCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発し、好ましくは、前記抗CD38抗体が、インビトロで、ADCC又はCDCによるCD38発現細胞の殺傷を誘発する、実施形態1に記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2に記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3に記載の組み合わせ。
5.前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、実施形態1若しくは4に記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4に記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3若しくは4に記載の使用のための組み合わせ。
6.前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、実施形態1、4若しくは5に記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2、4若しくは5に記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3、4若しくは5に記載の使用のための組み合わせ。
7.前記抗CD38抗体が、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくとも1つのアミノ酸を含み、EKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合する、実施形態1若しくは4〜6のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜6のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜6のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
8.前記抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)のSKRNIQFSCKNIYR領域(配列番号2)内の少なくともKRNを含み、EKVQTLEAWVIHGG領域(配列番号3)内の少なくともVQLT(配列番号20)を含むエピトープに結合する、実施形態7に記載の使用のための抗CD38抗体、CHOP又は組み合わせ。
9.前記抗CD38抗体が、
(i)IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4のアイソタイプであり、
(ii)二分岐グリカン構造を有し、該二分岐グリカン構造のフコース含量が、約50%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%若しくは0%であり、
(iii)抗体Fcにおいて、アミノ酸位256、290、298、312、356、330、333、334、360、378若しくは430(ここで、残基の番号付けは、EUインデックスに従う)における置換を含み、かつ/又は
(iv)1×10-9以下、1×10-10以下、1×10-11以下、若しくは1×10-12以下の親和性でCD38に結合する、実施形態1若しくは4〜8のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜8のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜8のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
10.前記抗CD38抗体が、
(i)それぞれ配列番号6、7及び8である重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)、2(HCDR2)及び3(HCDR3)配列、
(ii)それぞれ配列番号9、10及び11である軽鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)、2(LCDR2)及び3(LCDR3)配列を含むか、
(iii)配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含むか、
(iv)配列番号12のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号13のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含むか、又は
(v)配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む、実施形態1若しくは4〜9のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜9のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜9のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
11.前記CD38陽性血液悪性疾患は、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)又はマントル細胞リンパ腫(MCL)であり、特に、前記CD38陽性血液悪性疾患がDLBCLである、実施形態1若しくは4〜10のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜10のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜10のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
12.
(i)前記対象が、少なくとも1種類の化学療法薬、若しくは少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置に対して、耐性があるか若しくは耐性を獲得しているか、かつ/又は
(ii)前記対象が、少なくとも1種類の化学療法薬若しくは少なくとも1種類の化学療法薬と抗CD20抗体の組み合わせによる処置を、副作用に起因して中断したことのある、実施形態1若しくは4〜11のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜11のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜11のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
13.前記抗CD20抗体が、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ベルツズマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(GA−101)、PRO13192又はオカラツズマブ(AME−133v)であり、特に、前記抗CD20抗体が、リツキシマブである、実施形態12に記載の使用のための抗CD38抗体、CHOP又は組み合わせ。
14.前記少なくとも1種類の化学療法薬が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、イホスファミド、カルボプラチン又はエトポシドであり、任意選択的に、
(i)前記少なくとも1種類の化学療法薬が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP)の組み合わせであるか、又は
(ii)前記少なくとも1種類の化学療法薬が、イホスファミド、カルボプラチン及びエトポシド(ICE)の組み合わせである、実施形態12又は13に記載の使用のための抗CD38抗体、CHOP又は組み合わせ。
15.前記抗CD38抗体、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾンが、同時に、連続的に又は個別に投与される、実施形態1若しくは4〜14のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜14のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜14のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
16.前記対象が、放射線治療により更に処置される、実施形態1若しくは4〜15のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜15のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜15のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
17.
(i)前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含み、
(ii)前記抗CD38抗体が、IgG1であり、かつ
(iii)前記CD38陽性血液悪性疾患が、DLBCLである、実施形態1若しくは4〜16のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜16のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜16のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
18.
(i)前記抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含み、
(ii)前記抗CD38抗体が、IgG1であり、
(iii)前記CD38陽性血液悪性疾患が、バーキットリンパ腫である、実施形態1若しくは4〜16のいずれか1つに記載の使用のための抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜16のいずれか1つに記載の使用のためのCHOP、又は実施形態3〜16のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
【実施例】
【0148】
実施例1.患者由来非ホジキンリンパ腫(NHL)モデルにおけるダラツムマブ及びCHOPの併用療法
方法
ST1361は、転移性サンプルの採取前に化学療法を受けていない58歳のラテンアメリカ系男性に由来するNHL−DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)PDX(患者由来異種移植)モデルである。患者は、切除の前に8サイクルのR−CHOP処置を受け、R−ICE及びR−GEMOXの後続処置を受けていた。
【0149】
腫瘍を、5〜8週齢の免疫不全マウスに移植した。腫瘍がおよそ125〜250mm3に達したとき(0日目)、動物を処置群及びコントロール群に無作為化し、投薬を0日目に開始した。ダラツムマブは、20mg/kgで、週1回、3週間投薬した。CHOP及びR−CHOPは、以下に記載する濃度で、0日目に1回、投薬した。CHOP(シクロホスファミド:30mg/kg;ドキソルビシン:2.5mg/kg;ビンクリスチン:0.4mg/kg)−IV、0日目;プレドニゾン:0.15mg/kg、0〜4日目;R−CHOP:リツキシマブ20mg/kg−IP、0日目。0日目から開始し、腫瘍体積をデジタルノギスにより週2回測定し、個々の腫瘍体積と平均推定腫瘍体積(平均TV±SEM)を含むデータを各群について記録した。この研究は、コントロール群が終了するまでは腫瘍成長阻害を測定するために用い、その後は、ダラツムマブの効能継続期間を評価するための生存研究として継続した。
【0150】
研究に関して、0日目から開始し、腫瘍寸法をデジタルノギスにより週2回測定し、個々の腫瘍体積と平均推定腫瘍体積(平均TV±SEM)を含むデータを各群について記録した。腫瘍体積(TV)は、次式:TV=短径2×長径×0.52を用いて算出した。初期(i)及び最終(f)の腫瘍測定値を用い、次式:%TGI=1−Tf−Ti/Cf−Cによって、腫瘍成長阻害率(%TGI)の値を、各処置群(T)について、コントロール(C)に対して算出した。
【0151】
結果
CHOP又はR−CHOPと組み合わせたダラツムマブが、本患者由来腫瘍モデルDLBCLにて極めて有効であった。31日目に、CHOPレジメン単独は腫瘍成長を約27%遅延したが、ダラツムマブは腫瘍成長を約71%阻害した。R−CHOPは、より有効な治療であり、82%の腫瘍成長阻害であった。ダラツムマブとCHOP又はR−CHOPの組み合わせは、腫瘍退縮を示し、研究終了時までに、測定可能な腫瘍は、いずれの動物にもなかった。
【0152】
【表1】
%TGI:腫瘍成長阻害率
31日目以降では、ダラツムマブ+CHOP及びダラツムマブ+R−CHOPでは動物の100%が生存し、他の群は腫瘍進行により動物の死亡が見られた。図1Aは、各処置群の経時的な腫瘍体積を示し、図1Bは、経時的な生存期間中央パーセントを示す。表1は、研究の31日目までの%TGIを示す。0日目時点で、各群の腫瘍体積は、145〜146mm3であった。ダラツムマブ及びCHOPの組み合わせは、研究の開始から60日目後でも、100% TGIであった。
【0153】
本研究では、ダラツムマブの有効性について、患者由来DLBCLモデルで評価した。この患者は、R−CHOPによる処置を受け、最初はR−CHOPに反応したが、疾患進行により後に死去した。本研究の目標は、ダラツムマブの追加により、DLBCL患者に大きな利益が提供されるかどうかを判断することであった。CHOP又はR−CHOPにダラツムマブを加えると、単独療法(ダラツムマブ、CHOP又はR−CHOP)と比較して、全ての動物で腫瘍退縮が生じたが、他の全ての群の動物は、疾患の負荷により死亡した。ダラツムマブとCHOP又はR−CHOPの組み合わせは、相加効果を大きく超える腫瘍成長阻害を示した。
【0154】
実施例2.バーキットリンパ腫におけるCHOPと組み合わせたダラツムマブの有効性
バーキットリンパ腫のモデルとして、NAMALWA細胞を用いて、ダラツムマブ単独又はCHOPとの組み合わせの有効性を調べた。
【0155】
方法
Namalwa細胞を、ウシ胎児血清(10% v/v)及びL−グルタミン(2mM)を添加したRPMI 1640培地中で、37℃、空気中5% CO2の雰囲気下にて、インビトロで維持した。細胞を、トリプシン−EDTA処置によって週に2回、常法により継代培養した。指数増殖相で増殖する細胞を回収して、腫瘍接種のために計数した。マウスに、マトリゲル(1:1)を含むPBS 0.1mL中の2×105個のNamalwa細胞を皮下注入し、平均腫瘍サイズが189mm3に達したら、処置を開始した。腫瘍細胞接種の日を0日目と表す。主なエンドポイントは、腫瘍成長を遅延することができたか、又は腫瘍担持マウスが治ったかどうかが認められることとした。腫瘍サイズを週2回測定し、%TGI値を実施例1に記載の通り算出した。
【0156】
結果
動物を4つの処置群に分け、ビヒクル(アイソタイプコントロール)、ダラツムマブ、CHOP又はCHOPと組み合わせたダラツムマブを、表2に記載する用量で投与した。
【0157】
【表2】
n:動物数
i.p:腹腔内注入
i.v.静脈内注入
p.o.経口投与
QD:毎日投与
QW:週1回
CTX:シクロホスファミド
【0158】
図2は、バーキットリンパ腫のNAMALWAモデルにおけるダラツムマブ単独又はCHOPとの組み合わせの有効性の結果を示す。腫瘍接種後の異なる時間点での種々の処置群における腫瘍サイズの低減(腫瘍体積として測定)を図2に示す。ビヒクル群(群1)の平均腫瘍サイズは、腫瘍接種後26日目で、4,281mm3に達した。ダラツムマブ10mg/kg、CHOP及びCHOPと組み合わせたダラツムマブ10mg/kgでの処置は、腫瘍接種後26日目で、それぞれ腫瘍サイズにおける有意な抗腫瘍活性をもたらした。平均腫瘍サイズは、3,017mm3(T/C値=70.46%、p値<0.001)、3,304mm3(T/C値=77.17%、p値=0.003)及び2,303mm3(T/C値=53.79%、p値<0.001)であり、同時に、2,303mm3の腫瘍サイズでの腫瘍成長遅延は、それぞれ2日、1日及び4日であった。
【0159】
実施例3.非ホジキンリンパ腫におけるCHOPと組み合わせたダラツムマブの有効性
SU−DHL−6細胞株をベースにしたNHL−DLBCLモデルを用いて、ダラツムマブ単独又はCHOPとの組み合わせの有効性を調べた。
【0160】
方法
SU−DHL−6細胞を、20%ウシ胎児血清(v/v)を添加したRPMI1640培地中で、37℃、空気中5% CO2の雰囲気下にて、インビトロで個別に維持した。細胞を、週に2回、常法により継代培養した。指数増殖相で増殖する細胞を回収して、腫瘍接種のために計数した。注入の24時間前に、NOD SCIDマウスをγ線照射した(200ラド)。各マウスに、マトリゲル(1:1)を含むPBS 0.1mL中のSU−DHL−6腫瘍細胞(5×106個)を右側腹部に、腫瘍発生のために皮下接種した。腫瘍サイズがおよそ154mm3に達したら、処置を開始した。腫瘍細胞接種の日を0日目と表す。腫瘍サイズを週2回測定し、% TGI値を実施例1に記載の通り算出した。
【0161】
動物を4つの処置群に分け、ビヒクル、ダラツムマブ、CHOP又はCHOPと組み合わせたダラツムマブを、表3に記載する用量で投与した。
【0162】
腫瘍接種後の異なる時間点での種々の群における腫瘍サイズの結果を図3に示す。ビヒクル群(群1)の平均腫瘍サイズは、腫瘍接種後32日目で、4,281mm3に達した。ダラツムマブ10mg/kg及びCHOPと組み合わせたダラツムマブ10mg/kgでの処置は、腫瘍接種後32日目で、それぞれ腫瘍サイズにおける有意な抗腫瘍活性をもたらした。平均腫瘍サイズは、1,946mm3(T/C値=45.45%、p値=0.006)及び1,611mm3(T/C値=37.62%、p値=0.002)であり、同時に、1,500mm3の腫瘍サイズでの腫瘍成長遅延は、それぞれ3日及び3.5日であった。CHOPでの処置は、ビヒクル群と比較して腫瘍サイズを低減することができたが、その低減は、有意差に至らなかった。
【0163】
【表3】
n:動物数
i.p:腹腔内注入
i.v.静脈内注入
p.o.経口投与
QD:毎日投与
QW:週1回
CTX:シクロホスファミド
【0164】
実施例4.CHOP又はR−CHOPと組み合わせたダラツムマブでの連続又は同時療法は、患者由来非ホジキンリンパ腫(NHL)モデルにおいて有効性をもたらす。
ダラツムマブ単独又はCHOP若しくはR−CHOPとの組み合わせの有効性について、患者由来DLBCL腫瘍モデルST1361への同時又は連続投与を用い、実施例1に記載の方法に従って、評価した。
【0165】
動物を各処置群に分け、表4に示す通りに投薬を行った。ダラツムマブ及びR−CHOPは、0日又は7日間隔で、同時に投与した。
【0166】
【表4】
n:動物数
i.p:腹腔内注入
i.v.静脈内注入
p.o.経口投与
QD:毎日投与
QW:週1回投与
D0=0日目における投与
D0−4=d0〜d4日目における1日1回の投与
【0167】
結果
図4は、研究の45日目までの処置応答における腫瘍成長曲線の結果を示す。ビヒクルコントロール群における腫瘍は、平均腫瘍体積が17日目までに2134mm3に達した。ダラツムマブ+CHOP群における腫瘍は、平均腫瘍体積が45日目までに96mm3に退縮した。0日目にダラツムマブ及びR−CHOPで同時に処置した動物(群4)における腫瘍は、45日目までに完全に退縮した。0日目にR−CHOP、続いて7日目にダラツムマブで処置した動物(群5)における腫瘍は、998mm3の平均腫瘍体積を示した。0日目にダラツムマブ、続いて7日目にR−CHOPで処置した腫瘍(群6)は、633mm3の平均腫瘍体積を示した。研究を最大101日目まで続けた。0日目にダラツムマブ及びR−CHOPで同時に処置した動物(群4)は、更に101日目までに完全に退縮した。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2017507953000001.app
【国際調査報告】