(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-508167(P2017-508167A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】病理の検出のために血液試料を解析する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20170303BHJP
G01N 15/05 20060101ALI20170303BHJP
【FI】
G01N33/49 C
G01N15/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-568156(P2016-568156)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月14日
(86)【国際出願番号】IB2015050812
(87)【国際公開番号】WO2015118443
(87)【国際公開日】20150813
(31)【優先権主張番号】MI2014A000182
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516238832
【氏名又は名称】グラデミ バイオテック ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】アデリオ ミッサーリア
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA14
2G045AA25
2G045CA02
2G045CA11
2G045CA24
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FA11
2G045HA09
2G045HA14
2G045HC05
2G045JA01
2G045JA10
(57)【要約】
血液試料を解析する方法であって:抗凝固物質が入った各容器(2)中に血液試料(1)を調製する工程;当該血液試料(1)中に含まれる粒子成分(1a)が当該容器(2)の底に沈降する速度(V)を測定する工程、当該速度(V)は、所定の時間(T)に渡り測定される;当該時間(T)の内、当該粒子成分(1a)の凝集の段階を代表する1つ以上の沈降傾向(A1、A2、A3)を検出する工程;及び当該検出された沈降傾向(A1、A2、A3)を、1つ以上の所定の病理を代表する参照パラメーター(P1、P2、P3)と比較する工程;
を含むことを特徴とする、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料を解析する方法であって、以下:
−各容器(2)中に血液試料(1)を調製する工程;
−当該血液試料(1)の凝固を防止する工程;及び
−当該血液試料(1)中に含まれる粒子成分(1a)が当該容器(2)の底に沈降する速度(V)を測定する工程、当該速度(V)は、所定の時間(T)に渡り測定される;
を含み、更に、以下:
−当該時間(T)の内、当該粒子成分(1a)の凝集の段階を代表する沈降傾向(A1、A2、A3)を検出する工程;及び
−当該検出された沈降傾向(A1、A2、A3)を、1つ以上の所定の病理(pathology)を代表する参照パラメーターと比較する工程;
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記参照パラメーターが、1つ以上の病理における参照沈降傾向(P1、P2、P3)で表され、前記沈降傾向(A1、A2、A3)を比較する工程が、当該沈降傾向(A1、A2、A3)が当該参照沈降傾向(P1、P2、P3)と同一の特徴を有しているかどうかを判定することにより解釈されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出された沈降傾向(A1、A2、A3)が、複数の参照パラメーターと比較され、各参照パラメーターは、特定の病理又は特定の病理の群における参照沈降傾向(P1、P2、P3)を表すものであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記沈降傾向(A1、A2、A3)が、前記時間の1つ以上の時点(M1、M2、M3)における、粒子成分の凝集塊の形成、及び前記血液試料(1)中に含まれる血漿中へのその沈降を読み取ることにより決定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記沈降傾向(A1、A2、A3)が、全時間(T)に沿って連続的に経過する各時点における、凝集塊の形成及び血漿(1b)中へのその沈降を読み取ることにより取得される曲線により表され;当該時点が、所定の時間間隔であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記参照パラメーターが、参照曲線によって表され;前記沈降傾向(A1、A2、A3)を比較する工程が、沈降傾向(A1、A2、A3)の曲線と、複数の参照曲線とを比較することにより実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更に、測定された沈降速度(V)と、病理が存在するか否かの指標となる速度とを比較する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記沈降傾向(A1、A2、A3)を1つ以上の参照パラメーターと比較する工程が、電子的処理ユニットによって実行されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記沈降速度(V)を測定し、沈降傾向(A1、A2、A3)を決定する工程が、赤血球沈降速度を測定するための電子的装置によって実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液試料を解析する方法に関する。特に、本発明は、解析用の血液試料を採取した対象における病理(pathology)の存在を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、血液試料は、様々な方法を用いて試験及び解析され、それらはいずれも、関連する対象の健康状態の評価を目的とする。
【0003】
そのような方法は、対象が罹患しているであろう病理を良好な精度で判定する特定型、又は対象が病理に罹患している可能性に関する示唆を与えるに過ぎない不特定型であっても良い。
【0004】
前者の場合、特定試験は、一般に、問題又は病理を示す血液試料中のいずれかの要素を判定するために血液の組成を評価及び試験することが出来る設備及び装置を用いて、研究室中で実施される。この場合、専門の医師が血液試料を試験し、続いて臨床像を提供する。
【0005】
この種類の解析は、特定の病理を正確に判定することが出来るものの、得てして解析が複雑になるという短所を有している。
【0006】
事実、血液試料は、構造的に複雑で高価で実験室において専門家によってのみ使用される特定の設備を用いて解析される。従って、短時間で安価に血液試料の評価を得るのは不可能である。
【0007】
そのため、特に、病理が存在するかどうかが確定していない場合、この種類の解析は、それを実施する時間及び費用の観点から不利であると示されている。
【0008】
この問題を克服するため、対象の異常状態の存在を短時間低コストで推定することが出来る不特定試験が使用される。
【0009】
最も一般的な広く使用される不特定試験は赤血球沈降速度(ESR)試験であり、これは、血漿から赤血球が分離して血液試料容器の底に堆積する速度を測定するものである。
【0010】
赤血球沈降速度は、血漿の特徴(特にそのタンパク質組成)及び赤血球の特徴(形状、数、凝集の傾向等)によって本質的に条件づけられる。
【0011】
この試験は実施が容易で、安価かつ迅速で、精度では劣るが、病理が存在するか否かを示唆することが可能で;病理が存在する者に対しては、特異型の更なる試験を実施して病理を同定することが出来る。特に、赤血球沈降速度は、手動又は自動の適切な装置を用いて測定され、例えば、血液の粒子成分(赤血球、白血球及び血小板)の沈降速度を測定できる国際特許出願WO2001/23864に記載の装置が用いられる。
【0012】
前記測定された速度は、対象が健康であるか否か、又は何らかの病理に罹患しているかを判定するために、参照パラメーターと比較される。
【0013】
前記試験は、他の診断試験の実施に進むのが必要であるか否かを判定するために、短時間で、最初のスクリーニングとして専門家ではない者にも使用され得る単純な装置を用いて実施されるのが有利である。
【0014】
赤血球沈降速度の解析に一般に使用される方法はWestergren法であり、血液試料にクエン酸ナトリウムを添加して凝固を防止し、所定の温度でミリメートルの目盛りが付いたガラスチューブ中に沈殿させる。
【0015】
前記ガラス容器を上記公知の装置中に設けられた特別なハウジング区画中に置く。そのような装置は、所定の時間をかけて粒子成分が沈降する速度を読み取り、適切な管理ソフトウエアを介して沈降速度の値を提供することが出来る、光学センサーを備えている。前記試験は、赤血球が、互いに分離している場合に、懸濁物中に維持される傾向を基礎としている。この場合、沈降は殆ど起こらず、これは、血液試料が健康な対象のものであることを示唆する。
【0016】
一方、赤血球が凝集して細胞凝集塊(連銭)を形成する場合、それらはより迅速にガラスチューブの底に沈降することにより、血液試料中の病理の存在を示唆する。
【0017】
この現象は、互いを反発させて凝集現象(連銭形成)を阻害する赤血球の膜外側に存在する負の電荷によるものである。
【0018】
互いに反発する赤血球の性質は、例えば、膜表面の負の電荷を減少させる現在の炎症(タンパク質の存在、特にC−反応性タンパク質、フィブリノーゲン、IgM等)が有る場合に、低下する。
【0019】
この場合、赤血球は互いに接着する傾向が有り、凝集塊を形成し(赤血球の凝集塊)、これは重いので、試験管の底により迅速に沈降する。
【0020】
しかしながら、この方法も、主要な難点をもたらす。
【0021】
実際に、上記のように、赤血球沈降速度の試験は、進行中の病理に関して具体的な形で何らかの情報を提供することが出来ない。
【0022】
このため、この方法の利用は非常に限定的で、対象の健康状態を詳細に評価する場合には殆ど利用出来ない。
【0023】
更に、赤血球沈降速度試験が病理の存在を示唆する場合、いずれにしても特定の検査を実施しなければならず、対象の健康状態に関する十分な情報を提供できる完全な解析を実施する時間及びコストが最終的に増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ここで、本発明の基礎となる技術的課題は、上記の従来技術の難点を克服する血液試料解析方法を提案することである。
【0025】
具体的には、本発明の目的は、限られた時間及びコストの中で血液試料中の病理の存在に関する具体的な情報を提供できる血液試料解析方法を提供することである。
【0026】
具体的には、本発明の目的は、血液試料を診断的に試験することを何ら要さずに病理の種類を特定できる血液試料解析方法を提供することである。更なる本発明の目的は、簡単な手順で専門家でない者にも実施できる血液試料解析方法を提供することである。
【0027】
最後に、本発明の目的は、何らかの特定の設備を要さずに実施できる血液試料解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記技術的課題及び特定の目的は、本願請求項の1つ以上に記載された技術的特徴を含む血液試料を解析する方法によって実質的に達成される。
【0029】
本発明の追加の特徴及び長所は、概要であり故に非限定的である好ましいが排他的ではない、図面に模式図で示すような血液試料解析方法の態様の記載から、より明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、各試験管中に入れた血液試料及びそれを凝集条件に置いたものの斜視図を示す。
【0031】
【
図2】
図2は、異なる血液試料の沈降傾向を表すグラフである。
【0032】
【
図3】
図3は、特定の病理に対応する異なる参照沈降傾向のグラフを示す。
【0033】
【
図4】
図4は、各血液試料の沈降傾向が引かれた通り道を表すグラフを示す。
【0034】
本発明の方法は、
図1に示すように実施され、各容器2の中に血液試料1が調製される。容器2は、好ましくは、ガラス又は他の透明な材料で出来た1ミリの目盛りが振られた試験管で、抗凝固物質、好ましくはクエン酸ナトリウムが中に予め入れられている。
【0035】
試験管を所定の位置に置いて、血液試料1は沈降させられ、血液試料1中に含まれる粒子成分1aが容器2の底に沈降する速度Vを測定する。
【0036】
速度Vは、所定の時間Tに渡り測定され、それは例えば10分間である。
【0037】
有利な場合、速度Vは、血漿1bから粒子成分1aが分離するのに掛かる時間である、粒子成分1a(赤血球、白血球及び血小板)が沈降速度を測定できる適切な光学センサーを備えた赤血球沈降速度を測定する電子装置によって測定されるが、斯かる装置は公知の種類であり本発明の部分ではないので、本明細書中では記載又は例示しない。前記試験管が赤血球沈降速度を測定する装置の各試験台座に差し込まれ、その中で、所定の時間Tに渡る速度Vを決定するための光学スクリーニングが実施される。
【0038】
測定された速度Vは、病理が存在するか否かの指標となる参照速度と比較される。
【0039】
言い換えると、参照値は、測定された速度Vがそれを下回ると血液試料1が健康な対象のものであると判定される境界を規定する。
【0040】
この場合、実際に、赤血球は、より長い時間懸濁物中に留まり、沈降プロセス(容器2の底への沈降)が遅延する。この挙動は、互いに反発して凝集を妨げる赤血球の表面膜の負の電荷の存在による。
【0041】
対照的に、測定された速度Vが参照値を上回る場合、病理の存在が判定される。この場合、血液中に存在する何らかの炎症が赤血球の凝集を促進して(負の電荷の喪失により)、凝集塊が試験管底部に迅速に沈降することにより、沈降速度が短縮される。
【0042】
一般に、参照値は、女性で20mm/h、男性で15mm/hに設定される。
【0043】
前記装置の管理ソフトウエアは、血液試料1が病理の存在を示唆するか否かを推定する。
【0044】
この場合、粒子成分1aの凝集の段階を代表する沈降傾向A1、A2、A3が、時間Tの中で測定される。
【0045】
この工程は、時間Tの1つ以上の時点M1、M2、M3において、粒子成分1aが凝集塊を形成して血液試料1中に含まれる血漿1b中に沈降することを読み取ることによって実施される。
【0046】
特に、沈降傾向A1、A2、A3は、全体の時間Tにおいて連続的に起こる各時間における凝集塊の形成及び血漿中の凝集塊の沈降を読み取ることにより取得される曲線(
図2及び4)によって表される。
【0047】
図4に示すように、読み取りの時点は、速度の値がプロットされる所定の間隔により表され、一般に2秒に1回の読み取りである。総合して、測定された速度の限り拡張した互いに平行な区間を用いて図として表されたこれらの時点は、沈降傾向A1、A2、A3を代表する上記曲線を描く。
【0048】
特に、
図2において、3つの曲線A1、A2、A3は非限定的な例として表されており、各曲線は、各血液試料の沈降傾向に属する。
【0049】
例示であるが、各血液試料は、時間Tの単位に渡り同一の速度V(約50mm/h)を有していることが示されている。
【0050】
しかしながら、各沈降傾向A1、A2、A3は特有の曲線を呈するため、沈降傾向は互いに異なっている。
【0051】
これに関して、前記沈降は、以下:凝集塊の形成により判定される第1の段階;細胞凝集塊の更なる凝集(連銭)が起こる第2の段階;最後に容器2の底部に凝集塊が堆積するように沈降の促進が起こる第3の段階;の3段階で起こる。
【0052】
これらの段階は、血液試料中に存在する様々な病理によって異なって起こるため、各沈降曲線においてその差異が判定される。
【0053】
実際に、各病理において、粒子成分1aは、それらが凝集する能力、及び沈降が起こる様式において、特定の挙動を呈する(赤血球の負電荷の喪失による)。
【0054】
そのため、沈降グラフは沈降速度が同一であっても互いに異なり、又はそれらは最後の値が異なっていても類似の反応時間を有し得る。更に、当該曲線は、速度Vが等しい場合であっても、異なる凝集の点又は異なる曲線の振幅の存在に関する示唆を提供し得る(
図2に示すような場合)。
【0055】
血漿1bは含有する成分の種類が粒子成分1aよりも多いため、これも、病理に罹患している場合に沈降傾向を代表する曲線のプロフィールを変化させる傾向がある。
【0056】
ここで、特定の読み取り時点M1、M2、M3において、個別の沈降傾向A1、A2、A3は、互いに異なるプロフィールを示すことに注視されたい。そのような時点M1、M2、M3において、粒子成分1aの凝集及び沈降の段階に関して、異なる挙動が記録される。
【0057】
各血液試料1の曲線は、適切な管理ソフトウエアを利用してプロットされ、当該ソフトウエアは、上記で触れたような公知の種類の赤血球沈降速度測定デバイスに搭載され得る。
【0058】
有利な場合、各血液試料において検出される沈降傾向A1、A2、A3は、1つ以上の所定の病変を代表する1つ以上の参照パラメーターと比較される。斯かる参照パラメーターは、1つ以上の病理の参照沈降傾向P1、P2、P3によって表される。
【0059】
前記比較は、沈降傾向A1、A2、A3が、参照沈降傾向P1、P2、P3と類似する(場合によっては等しい)特有の特性を有するか否かを検出することにより行われる。言い換えると、時点M1、M2及びM3(特有の特性を代表する)が、参照曲線中に存在する時点と比較される。
【0060】
好ましくは、前記比較工程は、それぞれが病理又は病理の特定の群の参照沈降傾向P1、P2、P3により表される複数の参照パラメーターを用いて実施される。この場合、比較工程を単純にするために、参照沈降傾向P1、P2、P3は、参照曲線によって表される。従って、沈降傾向A1、A2、A3を比較する工程は、沈降傾向A1、A2、A3に関連する各曲線を、複数の参照曲線と比較することによって実施される。
【0061】
こうして、そのような曲線(測定された曲線及び参照曲線)の類似性を評価することにより、各沈降傾向A1、A2、A3における特定の病理又は病理の特定の群を確立することができる。従って、解析される各血液試料1の病理に関して、特定の結果が与えられる。
【0062】
有利な場合、前記比較は、曲線中に存在する特定の時点M1、M2、M3(
図2)のみを観察することによっても行われ得る。そのような時点M1、M2、M3が各参照時点に対応する場合、血液試料1の特定の病理を判定することが可能であり得る。この条件は、上記のように、時点M1、M2、M3において、前記曲線が、粒子成分1aの凝集の段階で全く異なる挙動を示すという事実によって与えられる。
【0063】
好ましくは、沈降傾向A1、A2、A3と1つ以上の参照パラメーターとの間の比較は、沈降速度を測定するための装置が組み込まれた電子処理単位によって行われる。
【0064】
更に、本発明の上記解析方法は、同一の対象の異なる血液試料を用いて反復して行われる場合に有利であることが特定されるべきである。この場合、所定の病理、その治療の過程での経過、又は対象の一般的健康状態をモニターすることが出来る。
【0065】
この条件において、モニターされるべき健康状態又は病理に基づいて決定される、所定の期間内の異なる時点で一揃いの試料が採取される。
【0066】
例えば、治療が適切に機能しているか否かを評価するために、当該治療が実施される期間内の所定の周期で採取される血液試料(上記方法に従い解析される)のためにそれが提供され得る。治療の性能及び有効性はモニターされ続け、必要に応じて、治療を修正するために適宜介入がされ得る。
【0067】
従って、本発明は、従来技術の問題を解決し、多くの利点を有する。
【0068】
第一に、上記方法は、単純かつ迅速に、そして非常に穏当なコストで、所定の病理又は病理の群の存在に関して特定の指標を提供することを可能とする。この長所は、斯かる使用が、研究室の設備内で専門家によってのみ使用される複雑で高価な実験装置で構成されないという事実により与えられる。本発明の方法は、測定される数値(沈降傾向を表す曲線)と参照値との間の直接比較に基づくものであるから、専門家でない者によっても利用可能な非常に単純な装置を用いて実施出来る。
【0069】
そのような装置、例えば赤血球沈降速度(ESR)を測定する装置は、単純で、低コストで、かつ非常に短時間で結果を提供できることが知られている。
【0070】
言い換えると、上記方法は、典型的には不特定型であるが、血液試料中の病理の存在及び種類に関する特定の情報を沈降傾向の比較に基づいて提供することが出来る、試験(ESR)を用いて実施される。
【0071】
従って、前記方法は、血液の組成の解析を何ら必要としないことにより実験室での解析を実施するコストを顕著に抑えつつ、そのような特定の情報を提供する。
【国際調査報告】