【実施例】
【0132】
VI.実施例
以下の実施例ならびに図は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。実施例または図において開示される技法は、本発明の実践において上手く機能することが本発明者らによって発見された技法に相当し、ゆえにその実践のための好ましい様態をなすと見なされ得ることが、当業者によって解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変化が、開示されている具体的な態様においてもたらされ得、かつ依然として類似したまたは同様の結果を獲得し得ることを解するべきである。
【0133】
実施例1
イスファハンウイルス(ISFV)の解析および回収
ISFVゲノムcDNAをコードするプラスミドDNAからの組換えイスファハンウイルス(rISFV)の回収のためのシステムを開発した。野生型(wt)rISFVおよび弱毒化変種rISFVN4ΔCT25gag1の安全性を、高感度の4〜5週齢NIHスイスウェブスターマウス頭蓋内神経毒性モデルで実験した。<10 PFUのLD
50を有するwtVSV
INとは対照的に、改変されていないrISFV wtは、>10
3 PFUのLD
50を呈した。10
4のLD
50を有するrVSV
INN2CT1とは対照的に、rISFVN4ΔCT25gag1は、>10
7のLD
50を呈した。これらの結果は、rISFVが、VSV
INよりも根本的に病原性が低く、かつrVSV
INベクターと同程度の安全性および免疫原性を達成するために、複数の弱毒化ストラテジー(N-シャッフル、Gタンパク質の細胞質尾部の切断)の利用を要しない可能性があることを示す。
【0134】
イスファハン系統発生学的解析。ベシクロウイルス属の入手可能な配列を、GenBankからダウンロードした。MUSCLEアルゴリズム(Gouy et al., 2010, Molecular Biology and Evolution 27:221-24;Edgar, 2004. Nucleic Acids Research 32:1792-97)を利用して、N遺伝子配列をSeaView(PBIL(Pole Bio-Informatique Lyonnais)、フランス)においてアラインメントした。オープンリーディングフレーム(ORF)からアミノ酸配列を推定し、次いで後続の解析のためにヌクレオチド配列に戻すことによって、配列をアラインメントした(Gouy et al., 2010, Molecular Biology and Evolution 27:221-24;Edgar, 2004. Nucleic Acids Research 32:1792-97)。PHYLIPパッケージ(Felsenstein, 1989, Cladistics 5, 164-1663)を利用して、最大尤度(ML)分析を実施した。ML系統発生の堅牢性を、100回再現のブートストラップ再標本化によって評価した。分析により、属内の2つの主要なクラスターが明らかとなった(
図1)。第一のクラスターは、VSV
INおよびその亜型、ならびにVSV
NJからなり、一方で第二のクラスターは、ISFV、チャンディプラ、およびピリウイルスから構成される。これらのデータは、属内のISFVの関係性を判定する以前の血清学的分析と一致しており、かつまとめると、ISFVはVSV
INと遠縁であることを示す(Tesh et al., Am J Trop Med Hyg. 1977, Mar 26(2):299-306)。
【0135】
イスファハンcDNAクローンの生成。テキサス大学医学部(University of Texas Medical Branch)の出現ウイルスおよびアルボウイルスに関する世界リファレンスセンター(World Reference Center for Emerging Viruses and Arboviruses)から、低度の組織培養継代されたISFV単離株を入手した。ウイルスゲノムRNAを培養上清から単離し、かつ完全ISFVゲノムに及ぶcDNAフラグメントを、逆転写(RT)およびPCR増幅(RT-PCR)によって生成した(
図2)。RT-PCR産物(フラグメント3〜5)を、VSVニュージャージーの全長ゲノムcDNAを含有するプラスミド(pVSV
NJN4CT1 HIVgag1)内に段階的にクローニングした(
図2)。残りのフラグメント(1〜2)を、pBlueScriptプラスミド(Invitrogen)内にクローニングした。
【0136】
それぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)を、pVSV
IN PプラスミドのNco IおよびSac I部位にクローニングすることによって、個々のISFVタンパク質(N、P、M、G、およびL)を発現する、レスキューのためのサポートプラスミドを生成した(Witko et al., J Virol Methods. 2006 Jul, 135(1):91-101)。BspH I(NおよびM遺伝子)、Pci I(P遺伝子)、およびBsmB I(GおよびL遺伝子)によって、Nco Iに適合する付着末端を生成した。2つのcDNAフラグメント:フラグメント#1(BsmB I〜Avr II)およびフラグメント#2(Avr II〜Sac I)をつなぎ合わせることによって、L遺伝子ORFを会合させた。結果として生じるレスキュー用サポートプラスミドを、ヌクレオチド配列解析によって検証した。
【0137】
アルファウイルスエンベロープ遺伝子をコードするrISFVおよびrVSV
IN構築物。EEEV系統のFL93およびVEEV系統のZPC738のエンベロープ遺伝子(E3-E2-6K-E1を包含する)をpPBS-ISFV-38内にクローニングした(その構築は下記で記載される)。加えて、VEEV-ZPC E3〜E1遺伝子をpVSV
IN N4CT1 HIVgag5内にクローニングした。それぞれの場合において、挿入される遺伝子をrISFVまたはrVSV転写酵素の制御下に置くようなやり方で、Xho IおよびNot I制限部位を用いて、アルファウイルス遺伝子をベクターゲノム上の第5のポジションに挿入した(
図3A)。すべてのベクターを全長ヌクレオチド配列解析によって検証し、かつアルファウイルスタンパク質の発現をウェスタンブロットによって確認した(
図3B)。
【0138】
3'から5'への遺伝子発現の勾配は、ベシクロウイルス(Ball and White, PNAS. 1976, 73(2):442-6;Villarreal et al., Biochemistry. 1976, 15(8):1663-7)、および他のマイナスセンスRNAウイルス(Conzelmann, Annual review of genetics. 1998, 32:123-62)に関して、十分に裏付けられている。したがって、標的抗原の最大発現は、単一の強力な3'転写プロモーターに直に近接した、ゲノム上の第1のポジションにおける導入遺伝子の挿入によって達成される。しかしながら、一部の抗原の高い発現レベルは、rVSV複製にとって有毒であり得、導入遺伝子の不安定性および抗原発現の喪失につながる(非公開)。導入遺伝子(trans gene)を3'転写プロモーターからさらに遠くに動かすことによる、HIV-1 Envタンパク質などの有毒抗原の発現の下方調節は、Env発現、およびrVSVプラットフォームでこれまでに試験された広範な種々の病原体由来のすべての標的抗原の遺伝的安定性を維持することに成功している。E2/E1糖タンパク質は、非常に高レベルで発現した場合に、rVSVおよびrISFV複製にとって有毒であり得るという可能性を考慮に入れるために、ゲノムにおける第5のポジションからE2/E1を発現する、弱毒化rVSVおよびrISFVベクターを生成した。
【0139】
全長組換えイスファハンウイルスpDNAの生成
全長イスファハンウイルス(ISFV)を構築するための開始材料は、以下をコードする2種のサブクローニングプラスミドからなった。
【0140】
UTMBプラスミド#1(pPBS-ISFV-001と改名された):XhoI/KpnI部位を介してpBlueScript II SK+内に挿入された、T7プロモーター、VSVリーダー、ISFVリーダー、N、M、P、G、および部分的配列のLの核酸配列。配列は、3'から5'方向に挿入された。
【0141】
UTMBプラスミド#2(pPBS-ISFV-002と改名された):XhoI/RsrII部位を介してVSV
NJ N4CT1骨格内に挿入された、ISFV Lの部分的3'配列およびターミネーターの核酸配列。
【0142】
上記に加えて、T7プロモーターの制御下に、個々のISFV遺伝子(M、P、N、G、およびL)をコードするサポートプラスミドを提供した。
【0143】
全長ISFVゲノムcDNAを含有するpPBS-ISFV-008の構築
ISFV L欠失配列の挿入。ISFV Lの欠落した2.4kbの核酸配列を、pPBS-ISFV-001およびpPBS-ISFV-002内に挿入した。欠落したフラグメントを、鋳型としてのpT7-IRES-ISFV Lサポートプラスミドとともに、プライマー
を用いたPCRによって生成した。用いたPCRサイクルは、95℃、2分間;(95℃、30秒間の変性/50℃、30秒間のアニーリング/72℃、2.5分間の伸長)で40サイクル;72℃、2分間であった。配列の最高の忠実度を確保するために、Pfx50 DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いた。次に、pPBS-ISFV-001と並行して、PCR産物をKpnIおよびNgoMIV制限酵素で消化した。この制限消化産物をライゲーションして、pPBS-ISFV-003を生成した。2.4kbも、鋳型としてのpT7-IRES-Lサポートプラスミドとともに、プライマー
を用いたPCRによって生成し、かつそれぞれXhoIおよびBstBIを介してpPBS-ISFV-002内に挿入して、pPBS-ISFV-005を生成した。XhoI/KpnI制限部位を介してpPBS-ISFV-001とpPBS-ISFV-005とを結び付けることによって全長ISFV Lを復元させて、pPBS-ISFV-006を生成した。
【0144】
ISFVリーダーに近接したT7プロモーターの構築。ISFVレスキューのための適切な構築物を生成するために、T7プロモーター
は、ISFVリーダー配列
のすぐ上流に置かれる必要があった。したがって、ISFVリーダー配列に近接したT7プロモーターのPCR増幅を、鋳型としてのpPBS-ISFV-001とともに、プライマー
を用いて達成した。結果として生じるPCR増幅により、EcoNI/NgoMIV制限部位を創出するプライマー
を用いた第二ラウンドの増幅のための鋳型として働くフラグメントが生成された。次いで、PCR産物をEcoNI/NgoMIV制限部位を介してpPBS-ISFV-001内に挿入して、pPBS-ISFV-007を生成した。
【0145】
全長イスファハンウイルスcDNAを含有するpDNAの構築。pPBS-ISFV-006およびpPBS-ISFV-007をNgoMIV/SanDI制限酵素で消化することによって、全長ISFVゲノムcDNAを含有するpDNAを生成して、核酸配列5'-N
1-P
2-M
3-G
4-L
5-3'、およびISFVリーダー配列に近接したT7プロモーターを有するpPBS-ISFV-008を構築した。
【0146】
rISFVレスキュー手順
pDNAの調製。各エレクトロポレーションに関して、表1に挙げられる以下のプラスミドDNAを、滅菌条件下にて微量遠心チューブ内で組み合わせた。
【0147】
(表1)
*すべてのウイルスタンパク質は野生型ヌクレオチド配列から発現され、かつ転写はT7プロモーターの制御下にあった。
**pDNA量は、1回のエレクトロポレーションに対して算出されている。
【0148】
DNA容量を、滅菌したヌクレアーゼ不含水で300μLに調整した。次に、60μlの3M酢酸ナトリウムおよび900μLの100%エタノールを添加し、かつ混合液を−20℃で一晩保管した。4℃30分間14000rpmでの遠心分離によって、DNAをペレットにした。上清を吸引し、そしてDNAペレットを空気乾燥させ、かつ各エレクトロポレーションのために、50μLの滅菌したヌクレアーゼ不含水中に再懸濁した。
【0149】
Vero細胞の調製。表2に挙げられる以下の培地を、ISFVのレスキューに用いた。
【0150】
(表2)
【0151】
各エレクトロポレーションは、およそ1.3個のコンフルエント付近のT-150フラスコまたは1個のコンフルエントのフラスコからの細胞を要する。各T150フラスコの細胞単層を、Ca
2+またはMg
2+を含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄した。DPBSを吸引し、かつ5mlのトリプシン-EDTA溶液でトリプシン処理し、次いで37℃で最高5分間インキュベートした。フラスコをタッピングすることによって細胞を遊離させた(dislodging)後、10mLのレスキュー培地1を各フラスコに添加して細胞を懸濁し、かつ2個のフラスコそれぞれを、10mLのレスキュー培地1を含有する50mLの円錐形チューブに移した。細胞を4℃5分間1200rpmで遠心分離した。上清を吸引し、かつ50mLの円錐形チューブ1本あたり10mLのレスキュー培地2で細胞を再懸濁し、その後に4℃5分間1200rpmでの遠心分離が続いた。洗浄液を廃棄し、かつ細胞ペレットを0.7mLのレスキュー培地2中に再懸濁した。細胞懸濁液を、50μlのプラスミドDNA溶液を分割した微量遠心チューブに移し、かつ穏やかに混合し、その後に細胞/DNAをエレクトロポレーション用キュベットに移す工程が続いた。
【0152】
エレクトロポレーション。細胞を、BTX820エレクトロポレーターで以下のとおりにエレクトロポレーションした。
【0153】
エレクトロポレーションの後、すべてのサンプルを室温で10分間放置し、次いで1mLのレスキュー培地1を穏やかに混合しながらキュベットに添加して、エレクトロポレーションされた細胞を再懸濁した。次いで、細胞懸濁液を、キュベットから10mLのレスキュー培地1を含有する15mL遠心分離チューブに移し、かつ4℃5分間1200rpmで遠心分離した。培地を吸引し、そして細胞を10mLのレスキュー培地1中に再懸濁し、かつ20mLのレスキュー培地1を含有するT-150フラスコに移した。フラスコを37℃(5% CO
2)で3時間インキュベートし、その後に43℃(5% CO
2)で3〜5時間のヒートショックが続き、次いで長期間のインキュベーションのために32℃に戻した。一晩のインキュベーションの後、上清を25mlの新鮮なレスキュー培地1で置き換えた。陽性rISFVレスキューは、5〜10日後に、円形化した(rounded up)細胞の領域を特徴とする細胞変性作用(CPE)を示した。レスキュー上清を収集し、エタノール/ドライアイス漕中で急速冷凍し、かつ単一ウイルスクローンをプラーク選抜によって単離し、その後にVero細胞における2ラウンドの増幅が続いて、ウイルスのワーキングストックを生成した。
【0154】
ISFV/ベシクロウイルス核タンパク質のアミノ酸アラインメント
ISFV核タンパク質のアミノ酸配列を、他のベシクロウイルス核タンパク質配列とアラインメントした(表3)。合致パーセントは、ISFV核タンパク質配列とのアミノ酸同一性に基づく。配列における詳細な相同性を、
図4に見ることができる。アミノ酸相同性の領域は、網掛けにされている。
【0155】
(表3)
【0156】
実施例2
遺伝子シャッフルおよびISFV Gの細胞質尾部の切断を用いた、弱毒化rISFVベクターの構築
rISFV-N4G5-MCS1の構築。プラスミドpPBS-ISFV-008は、核酸配列5'-N
1-P
2-M
3-G
4-L
5-3'[rISFVのアンチゲノム]を含む。下付きの数字は、各ISFV遺伝子のP(ホスホタンパク質をコードする)、M(マトリックスタンパク質をコードする)、G(付着タンパク質をコードする)、N(ヌクレオカプシドタンパク質をコードする)、およびL(ポリメラーゼタンパク質をコードする)のゲノム箇所を表す。
【0157】
プラスミドpPBS-ISFV-009は、核酸配列5'-MCS
1-N
2-P
3-M
4-G
5-L
6-3'(ポジション1に付加的転写カセットを有する、rISFVのアンチゲノム)を含む。この式に従うと、MCS(マルチクローニングサイト)は、ISFV Nのすぐ上流のポジション1にある、rISFVアンチゲノムにおける空の転写単位(TU)である。下付きの数字は、各ISFV遺伝子のP(ホスホタンパク質をコードする)、M(マトリックスタンパク質をコードする)、G(付着タンパク質をコードする)、N(ヌクレオカプシドタンパク質をコードする)、およびL(ポリメラーゼタンパク質をコードする)のアンチゲノム箇所を表す。
【0158】
まず、ISFV Lにおける内部NheI部位を、クローニング目的のために除去した:PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつそれぞれAfeI/BsmBIおよびAfeI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-008内に挿入して、pPBS-ISFV-010を生成した。
【0159】
部分的ISFV M-ISFV G-部分的ISFV L配列を含有する第二のPCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成した。このフラグメントをSphI/AgeI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入して、pPBS-ISFV-011を生成した。
【0160】
pPBS-ISFV-011から開始して、2回の逐次的突然変異誘発反応を、プライマーペア
を用いて実施して、pPBS-ISFV-013を生成した。次いで、BsmBI/AgeI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-013を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-009に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-014は、核酸配列5'-MCS
1-N
2-P
3-M
4-G
5-L
6-3'を含んだが、pPBS-ISFV-009とは異なり、ISFV G遺伝子は、例えばISFV Gの細胞質尾部の切断を含むISFV G変種との簡単な交換を可能にするMluI/NheI制限部位と隣接する。
【0161】
N遺伝子をポジション4にシャッフルし、したがってrISFVをベクターとして弱毒化するために、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつHindIII/NotI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入して、pPBS-ISFV-017を生成した。pPBS-ISFV-017由来のBsmBI/NotIインサートを、pPBS-ISFV-014の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-017とpPBS-ISFV-014とを結び付けて、pPBS-ISFV-019を生成した。
【0162】
同時に、プライマー
によるかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いたフラグメントのPCR増幅、ならびにそれをSphI/AgeI制限部位を介して改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)内に挿入することによって、pPBS-ISFV-015を生成した。第二のPCRフラグメントを、
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-008を用いて生成し、かつそれぞれBsmBI/MluIおよびBsaI/MluI制限部位を介してpPBS-ISFV-015内に挿入して、pPBS-ISFV-016を生成した。
【0163】
最後に、pPBS-ISFV-016由来のBsmBI/MluIインサートを、pPBS-ISFV-019の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-016とpPBS-ISFV-019とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-020は、pPBS-ISFV-014と比較した場合にN遺伝子がrISFVのポジション4にシャッフルされている、核酸配列5'-MCS
1-P
2-M
3-N
4-G
5-L
6-3'を含む。
【0164】
rISFV-N4G3-MCS5の構築。pPBS-ISFV-013から開始して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、pPBS-ISFV-022を生成した。次いで、
から生成されたオリゴヌクレオチドリンカーを、pPBS-ISFV-022のNheI/NotIベクターフラグメントとライゲーションして、pPBS-ISFV-023を生成した。PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-016を用いて生成し、かつXhoI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-023内に挿入して、pPBS-ISFV-024を生成した。
【0165】
加えて、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-017を用いて生成し、かつBsmBI/NheI制限部位を介してpPBS-ISFV-017内に挿入して、pPBS-ISFV-025を生成した。
【0166】
次いで、それぞれ
から生成された2つのオリゴヌクレオチドリンカーを、pPBS-ISFV-025のNheI/BbsIベクターフラグメントとライゲーションした(pPBS-ISFV-026を生成するために)。核酸配列5'-P
1-M
2-N
3-G
4-L
5-3'を含むプラスミドであるpPBS-ISFV-030を生成するために、BsmBI/NgoMIV制限酵素を用いてpPBS-ISFV-026を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。
【0167】
最後に、pPBS-ISFV-024由来のBsmBI/AgeIインサートを、pPBS-ISFV-030の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-024とpPBS-ISFV-030とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-031は、pPBS-ISFV-014と比較した場合にN遺伝子がrISFVのポジション4にシャッフルされている、核酸配列5'-P
1-M
2-G
3-N
4-MCS
5-L
6-3'を含む。
【0168】
rISFV-N
*4G5-MCS1の構築。rISFVおよびrVSV Nタンパク質のアミノ酸配列アラインメントにより、全体として52%のみの相同性が明らかとなったものの、該アラインメントにより、強力な公知のH2d制限エピトープに対する非常に密接な相同性が実証された(MPYLIDFGL;
図11を参照されたい)。したがって、他のベシクロウイルス由来の追加のNタンパク質とのさらなるアラインメントを用いて、この一続きのアミノ酸に関する、rISFVとrVSVとの間の相同性を取り除いたまたは少なくとも低下させた。pPBS-ISFV-016から開始して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、ISFV Nにおける以下のアミノ酸変化:K271Q、A272S、L279M、F282M(ISFV N
*)を含有するpPBS-ISFV-033を生成した(
図11を参照されたい)。SanDI/BsrGI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-033を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-024に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションして、pPBS-ISFV-037を生成した。最後に、pPBS-ISFV-037由来のNheI/Age1インサートを、pPBS-ISFV-031の対応するベクターフラグメントに入れ替えることによって、pPBS-ISFV-037とpPBS-ISFV-031とを結び付けた。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-038は、pPBS-ISFV-031と同様に、アンチゲノム核酸配列5'-P
1-M
2-G
3-N
4-MCS
5-L
6-3'を含むが、コードされたISFV Nタンパク質は、4個のアミノ酸変化K271Q、A272S、L279M、F282M(ISFV N
*)を所持する。
【0169】
モデル抗原HIV-1 gag SDEを発現する弱毒化rISFV Nベクター。プラスミドpPBS-HIV-055は、HIV-1 gag SDE(単一優性エピトープ)と称される切断型HIV-1 gag遺伝子を含む標準的なクローニングベクターである。HIV-1 gag SDEのアミノ酸配列は、以下のとおりである。
数字は、天然HIV-1 gagタンパク質におけるアミノ酸箇所を表す。ペプチド
は、BALB/cマウスにおいてT細胞応答の強力な誘導因子であることが見出され、したがってHIV-1 gag SDEを、種々のベクターデザインの免疫原性を試験するモデル抗原として用いた。
【0170】
まず、XhoI/NotI制限酵素を用いてpPBS-HIV-055を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-014に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-013は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-N
2-P
3-M
4-G
5-L
6-3'を含み、かつそれを用いて、対応するrISFVを創出した。
【0171】
XhoI/NotI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-HIV-055を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-014は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
4-G
5-L
6-3'を含む。したがって、対応するrISFVウイルスは、単一の弱毒化マーカーである、rISFVのポジション4へのISFV Nシャッフルを含む。
【0172】
PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-HIV-014を用いて生成し、かつMluI/NheIを介してpPBS-ISFV-HIV-014内に挿入して、pPBS-ISFV-HIV-015を生成し、ここでは核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
4-(GΔCT25)
5-L
6-3'を含んだ。したがって、対応するrISFVウイルスは、2つの弱毒化マーカー:(1)rISFVアンチゲノム上のポジション4へのISFV Nのシャッフリング、および(2)ISFV Gの細胞質尾部(CT)の遠位末端の25個のアミノ酸分の切断、を含む。ISFV Gタンパク質のCTおよび膜貫通(TM)ドメインの精確な長さは、VSV
INのものほど十分には特徴付けされていないが、カルボキシル末端付近のおよそ18アミノ酸(aa)の疎水性ドメインが、ISFV Gタンパク質のTMアンカーとして予測される。残りの下流33aa残基は、Gタンパク質のCTとなる。
【0173】
加えて、BsmBI/MluI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-033を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-015に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-018は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
*4-(GΔCT25)
5-L
6-3'を含んだ。rISFV-HIV-015と比較して、対応するrISFV-HIV-003におけるコードされたISFV N遺伝子は、BALB/cマウスに対する公知の強力なT細胞エピトープ内に、4個のアミノ酸変化K271Q、A272S、L279M、F282Mをもつ。
【0174】
MluI/NheI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-HIV-015を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-013に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-017は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-N
2-P
3-M
4-(GΔCT25)
5-L
6-3'を含んだ。したがって、対応するrISFVウイルスは、単一の弱毒化マーカーである、ISFV G細胞質尾部の切断を含む。
【0175】
最後に、細胞質尾部に28個のアミノ酸の同様の切断を有する、NJ血清型由来の改変型VSV GをコードするVSV
NJ GCT1遺伝子によって、切断型ISFV GΔCT25遺伝子が置き換えられた弱毒化rISFVベクターを生成した。pPBS-ISFV-HIV-016[ヌクレオチド配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
4-(VSV
NJ GCT1)
5-L
6-3'を含む]を生成するために、MluI/NheI制限酵素を用いて、pPBS-VSV-HIV-054(MluI/NheI制限酵素部位と隣接したVSV
NJ GCT1遺伝子を含有するrVSVクローニングベクター)を消化した。次いで、単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-015に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-016は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-N
2-P
3-M
4-(VSV
NJ G CT1)
5-L
6-3'を含み、かつそれを用いて、対応するrISFVをレスキューした。
【0176】
HIV-1 gag SDEを発現するすべてのrISFVの弱毒化を、プラークアッセイによってインビトロで試験した。観察されたプラークサイズは、以下のとおりであった(
図5):rISFV-HIV-013=rISFV-HIV-14>rISFV-HIV-15=rISFV-HIV-017≧rISFV-HIV-018=rISFV-HIV-016。
【0177】
上記で記載されるrISFV構築物に加えて、以下のプラスミドから生成された2種の弱毒化rVSVベクターを、プライム-ブースト免疫化実験において用いた。
【0178】
pPBS-VSV-HIV-106は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
4-(G CT1)
5-L
6-3'を含み、かつすべてのベクター遺伝子(P、M、N、G CT1、およびL)は、VSVインディアナ血清型に由来する。このプラスミドに由来するrVSV
INを、
図16に描写される実験において用いた。
【0179】
pPBS-VSV-HIV-122は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-P
2-M
3-N
4-(G CT1)
5-L
6-3'を含み、ベクター遺伝子(P、M、N、およびL)は、VSVインディアナ血清型に由来し、かつベクター遺伝子G CT1はVSV NJ血清型に由来する。このプラスミドに由来するrVSV
NJを、
図16に描写される実験において用いた。
【0180】
ISFV Gの細胞質尾部の切断の安定化。ISFV GΔCT25遺伝子を含む数々の弱毒化rISFV(例えば、rISFV-HIV-015およびrISFV-HIV-018)を、Vero細胞培養で広範囲に継代して、この弱毒化マーカーの安定性を判定した。10回目の継代の時点で、事実上すべてのrISFVは、細胞質尾部を2個のアミノ酸分延長させて、rISFV GΔCT23遺伝子を本質的に含有した。それによって、試験されたrISFVは、ISFV GΔCT25遺伝子の終止コドンを、アミノ酸に対するコドンに変化させ、次いで2つのコドンさらに下流で代替的なインフレーム終止コドンを用いた。したがって、ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部の2つの操作を、rISFVにおいて弱毒化マーカーISFV GΔCT25を安定させ得るそれらの能力について調べた。
【0181】
A)ISFV GΔCT25を含有する転写カセットに対して、転写(下線を引かれた)および翻訳(太字)の終止シグナルを結び付ける:
【0182】
ISFV GΔCT25の最後のアミノ酸は、アルギニンからバリンに変化する。
【0183】
B)原型的rVSV
IN-N4CT1ベクター内に存在しているVSV
IN G CT1の3'-NCRを、ISFV GΔCT25発現カセットに対する3'-NCRとして用いる:
【0184】
結果は、手法(B)のみが、Vero細胞培養において、対応するrISFVウイルス(例えば、rISF-HIV-020)の広範囲な継代の間、ISFV GΔCT25弱毒化マーカーを安定させることを示した。
【0185】
手法A−構築
ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部を操作するために、pPBS-ISFV-HIV-018を、MluI/NheI制限酵素を用いて消化し、かつ改変pT7Blueクローニングベクター(Novagen)に由来する対応するベクターフラグメント内に挿入して、pPBS-ISFV-049を生成した。
【0186】
まず、pPBS-ISFV-049に対して、突然変異誘発反応を、プライマー
により実施して、pPBS-ISFV-051を生成した。加えて、PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-031を用いて生成した。
から生成されたオリゴヌクレオチドリンカーとともに、次いで、PCRフラグメント(MluI/BsmBI)をMluI/NheIを介してpPBS-ISFV-049内に挿入して、pPBS-ISFV-056を生成した。pPBS-ISFV-049と比較して、pPBS-ISFV-056におけるISFV GΔCT25の膜貫通領域をコードするヌクレオチド配列を、A/T豊富度を低下させるように沈黙して改変した。PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-056を用いて生成し、かつMluI/BsmBIを介してpPBS-ISFV-051内に挿入して、pPBS-ISFV-059を生成した。
【0187】
MluI/AgeI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-059を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-018に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-021は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-N
*2-P
3-M
4-G
5-L
6-3'を含み、ISFV GΔCT25の膜貫通領域に沈黙のヌクレオチド変化を有して、天然配列と比較してA/T豊富度を低下させ、かつISFV GΔCT25の終止コドンは、ISFV GΔCT25-L遺伝子接合部における転写終止の一部である。
【0188】
手法B−構築
MluI/NheI制限酵素を用いてプラスミドpPBS-ISFV-056を消化し、かつ単離されたインサートを、第一の転写カセットからHIV-1 gagを発現する弱毒化rVSVベクター(N4CT1)のアンチゲノム配列を含有する、pPBS-VSV-HIV-020に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-057は、核酸配列5'-(HIV-1 gag)
1-VSV P
2-VSV M
3-VSV N
4-ISFV GΔCT25
5-VSV L
6-3'を含み、かつそれによって、VSV G CT1の3'-NCRは、ISFV GΔCT25をコードするオープンリーディングフレームに連結される。
【0189】
PCRフラグメントを、プライマー
によりかつ鋳型としてpPBS-ISFV-057を用いて生成し、かつMluI/BsmBIを介してpPBS-ISFV-051内に挿入して、pPBS-ISFV-058を生成した。
【0190】
最後に、MluI/AgeI制限酵素を用いてpPBS-ISFV-058を消化し、かつ単離されたインサートを、pPBS-ISFV-HIV-018に由来する対応するベクターフラグメントとライゲーションした。したがって、結果として生じる構築物pPBS-ISFV-HIV-021は、核酸配列5'-(HIV-1 gag SDE)
1-N
*2-P
3-M
4-G
5-L
6-3'を含み、ISFV GΔCT25の膜貫通領域に沈黙のヌクレオチド変化を有して、天然配列と比較してA/T豊富度を低下させ、かつISFV GΔCT25-L遺伝子接合部にVSV GCT1の3'-NCRを含む。
【0191】
実施例3
動物実験
一連のマウス実験を実施して、アルファウイルスタンパク質を発現するrISFVベクターを含む免疫原性組成物の相対的な安全性および効力を検討した。ベシクロウイルスおよび関連ウイルスについての公知の神経毒性特性が理由で、マウス頭蓋内(IC)LD
50モデルをベクター安全性の一次査定に用いた(Olitsky et al., Journal of Experimental Medicine. 1934, 59:159-71;Frank et al., Am J Vet Res. 1945, Jan:28-38;Sabin et al., Journal of Experimental Medicine. 1937, 66:15-34;Rao et al., Lancet. 2004, 364(9437):869-74)。ストリンジェントなVEEVおよびEEEV曝露(challenge)モデルにおいて、効力を査定した。
【0192】
rISFVベクターの神経毒性。予備実験を実施して、改変されていないrISFV、およびHIV-1 gagを発現する高度に弱毒化された変種(rISFV-N4 GΔCT25 HIVgag1)の神経毒性特性を検討した。以前の実験から、公知のLD
50を有するrVSV
IN N2CT1ベクターを陽性対照として利用した(Clarke et al., J Virol. 2007, Feb;81(4):2056-64)。10匹の5週齢雌スイスウェブスターマウスの群に、25μLの連続10倍希釈の各ウイルスを脳内(IC)経路を介してIC接種し、かつ動物を21日間の致死率について観察した。PBSを、注射過程に関する対照として用いた(表4)。
【0193】
rISFVベクターを注射された動物において、限られた致死率が観察され、かつその結果としてLD
50は決定され得なかった(表4)。対照的に、rVSV
IN N2CT1は致死を引き起こし、かつ以前の実験において決定されたものと同程度のLD
50(10
4 pfu)が決定された(表4)。これらのデータは、rISFVが、その改変されていない型で5〜10プラーク形成単位(PFU)のLD
50を実証したrVSV
IN(Clarke et al., J Virol. 2007, Feb;81(4):2056-64)よりも、生得的に神経毒性が低いことを示唆する。
【0194】
(表4)スイスウェブスターマウスにおける、rISFVおよびrVSV
INベクターのLD
50力価
【0195】
rISFVベクターの防御効力。一連の実験を実施して、アルファウイルス感染および疾患からの防御について、ベクターとしてのrISFVの可能性を検討した。これらの実験に関して、4〜6週齢雌CD-1マウスに、50μL投薬用量を用いて、筋肉内経路によって免疫化した。次いで、マウスに、皮下注射で10
4 PFUのVEEV-ZPCまたはEEEV-FL93のいずれかを曝露した。すべての動物のケアおよび手順は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)ガイドラインに従った。
【0196】
VEEVおよびEEEV曝露からの短期防御。第5のポジションにある、VEEV-ZPCまたはEEEV-FL93のE3〜E1をコードするrISFV-N4G3ベクターが、VEEVおよびEEEVの致死性の曝露から防御し得るかどうかを判定するために、CD-1マウスのコホートに10
8 PFUのベクターで免疫化し、次いで、免疫化の3〜4週間後に曝露した(表5)。免疫化の後、rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で免疫化されたマウスでは、中和抗体応答が容易に検出され、一方でrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC)5で免疫化されたマウスでは、中和抗体はほとんど検出されなかった(表6、7)。抗体応答にかかわらず、すべての動物は、致死性のEEEV-FL93およびVEEV-ZPC曝露から防御された(
図6および
図7)。
【0197】
(表5)VEEV-ZPCおよびEEEV-FL93曝露実験に関する実験デザイン
【0198】
(表6)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0199】
(表7)rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0200】
用量設定および長期免疫の実験。動物に、10
8または10
7 PFUのrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5またはrVSV
IN N4G
(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5のいずれかで免疫化した(表8)。免疫化の後、両方の用量でrISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたほとんどの動物において、VEEV中和抗体応答を検出することができた(表9)。rVSV
IN N4G
(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたすべての動物において、より堅牢な中和抗体応答が検出された(表10)。しかしながら、以前の実験において観察されたように、VEEVに対する中和抗体応答にかかわらず、すべての動物は、後に続く致死性の曝露から防御された(
図8)。
【0201】
(表8)用量設定および長期免疫の実験デザイン
【0202】
(表9)rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0203】
(表10)rVSV
IN-N4G
(CT-1)3-(VEEV-ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける中和抗体応答
【0204】
混成型免疫原性組成物の効力。免疫原性組成物は、1種を上回る種類のアルファウイルスからの防御を提供すべきであるため、実験をデザインして、rISFV-N4G3-(VEEV-ZPC E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5で同時に免疫化されたマウスが、EEEV-FL93およびVEEV-ZPCの両方に対する致死性の曝露から防御され得るかどうかを検討した(表11)。以前の実験にあるように、EEEV-FL93およびVEEV-ZPCの両方に対する中和抗体が、ほぼすべてのマウスにおいて検出され(表12および13)、かつ免疫化されたすべてのマウスは、致死性のEEEV-FL93(
図9)またはVEEV-ZPC(
図10)の曝露から防御された。これらの結果は、混成型免疫原性組成物が、複数種のアルファウイルスによる致死性の曝露からの防御を提供し得ることを実証している。
【0205】
(表11)混成型免疫化の実験デザイン
*群1の動物は、10
8 pfuの各ウイルスで免疫化された。
【0206】
(表12)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける、EEEV-FL93に対する中和抗体応答
【0207】
(表13)rISFV-N4G3-(EEEV-FL93 E3-E1)5およびrISFV-N4G3-(VEEV ZPC E3-E1)5で免疫化されたマウスにおける、VEEV-ZPCに対する中和抗体応答
【0208】
実施例4
BALB/cマウスにおける、rVSVおよびrISFVベクターを用いたプライム/ブースト実験PBS-Mu-062
一連のマウス実験を実施して、Balb/cマウスにおいて、HIV Gag単一優性エピトープ(SDE)をコードするrVSVおよびrISFVを用いたプライム/ブーストレジメンを査定した。これらの実験は、2つの実験目的を満たすようにデザインされた:(a)PBS-Mu-062a:マウスにおいて、2種の新たなrISFV-HIV gag SDEベクターの免疫原性を実験し、かつrVSV
IN N4CT1Gagとの将来的なプライム/ブースト実験のための好ましい候補を選択すること、および(b)PBS-Mu-062b:rVSV
NJ/rVSV
INおよびrISFV/rVSV
INのプライム/ブースト組み合わせを用いて誘発される免疫応答を比較すること。
【0209】
PBS-Mu-062a:この実験に関して、最も抗原性の高い構築物を、rVSV
INに基づくHIV gag発現ベクターとの将来的なプライム/ブースト実験に進展させることを目標にして、rISFVに基づく2種のHIV gag発現ベクター候補の相対的免疫原性を比較した。PBS-Mu-062a実験デザインの概要は、
図13に提供されている。この実験に関して、BALB/cマウス(n=5/群)に、筋肉内注射によって10
7 pfuの
図12に概説されるHIV gag発現ベクターで免疫化し、そして10日後に、脾細胞を収集し、かつHIV gag SDEおよびrVSV
IN Nペプチドプールに特異的なIFN-γ分泌について、ELISpot解析によって試験した(
図14)。この実験において、rISFV-HIV-016(rISFV)による免疫化は、他方のrISFV-HIV gag候補のrISFV-HIV-018(rISFVN
*)によって誘発されたHIV gag SDE特異的ELISpot応答(147±32 SFC/10
6脾細胞)と有意に異ならない応答である、236±74 SFC/10
6脾細胞という平均HIV gag SDE特異的インターフェロン-γ ELISpot応答をもたらした(
図14、左)。重要なことに、公知のH2d制限エピトープにおける一連の変異を有するウイルスNタンパク質をコードするrISFV-HIV-018ベクターは、野生型ウイルスN遺伝子をコードするrISFV-HIV gag候補のrISFV-HIV-016(140±59 SFC/10
6脾細胞)と比較して、抗ベクターrVSV
IN Nペプチドプール特異的ELISpot応答を誘発する傾向の低下を示した(45±15 SFC/10
6脾細胞)(
図14、右)。これらの結果に基づき、後続のrVSV/rISFVプライム/ブースト実験における使用のために、rISFVN
*(rISFV-HIV-018)を選出した。
【0210】
PBS-Mu-062b:この実験に関して、rVSVに独占的に基づくベクター対rISFVおよびrVSVに基づくベクターの組み合わせを用いた様々なプライム/ブースト免疫化レジメンについて、相対的免疫原性を比較した。PBS-Mu-062b実験デザインの概要は、
図16に提供されている。この実験に関して、BALB/cマウス(n=5/群)に、rVSV
IN HIV gag SDE構築物と組み合わせた、筋肉内注射によって10
7 pfuの
図15に概説されるrISFV HIV gag SDE発現ベクターで免疫化した(
図12)。マウスを0および4週間のスケジュールで免疫化した。最後の免疫化の1週間後に、脾細胞を収集し、かつHIV gag SDE特異的な(
図17)およびrVSV
IN Nペプチドプール特異的な(
図18)IFN-γ分泌について、ELISpot解析によって試験した。この実験において、rVSV
NJ/rVSV
INプライム/ブーストレジメンで免疫化されたマウスは、異種rISFVN
*/rVSV
INプライム/ブーストレジメンで免疫化されたマウスに見られる応答(4,758±183 SFC/10
6脾細胞)よりも有意に低い(p<0.05)HIV gag SDE特異的ELISpot応答(2,330±412 SFC/10
6脾細胞)を実証した(
図17)。rVSV
NJ/rVSV
IN免疫化マウスと比較した、HIV gag SDE特異的IFN-γ ELISpot応答のこの有意な2倍の増加は、異種レジメンの順序を切り替えることによって(rVSV
IN/rISFVN
*;5,870±1,258 SFC/10
6脾細胞)、またはrISFVベクターにおける野生型ウイルスN遺伝子の存在によって(rISFV/rVSV
IN;5,061±890 SFC/10
6脾細胞)、影響を受けなかった(
図17)。
図18に示されるように、異種rISFVN
*/rVSV
INおよびrVSV
IN/rISFVN
*プライム/ブーストレジメンは、rVSV
NJ/rVSV
IN(2,794±456 SFC/10
6脾細胞)またはrISFV/rVSV
IN(1,459±238 SFC/10
6脾細胞)レジメンと比較して、有意により低い(p<0.05)平均rVSV
IN Nペプチドプール特異的IFN-γ ELISpot応答を誘発した(それぞれ、451±67および408±55 SFC/10
6脾細胞)。
【0211】
上述の実験により、異種rISFV/rVSV
INおよびrVSV
IN/rISFVプライム/ブースト免疫化レジメンは、マウスにおいて、rVSV
NJ/rVSV
IN免疫化レジメンが行ったよりも有意に高いIFN-γ ELISpot応答を誘発したことがはっきりと実証されている。さらに、rISFV N
*変異は、rVSV Nに対する交差反応性応答を低下させた、とはいえ、これはHIV gag SDE特異的IFN-γ ELISpot応答の増加をもたらさなかった。
【0212】
実施例5
A129マウスにおける、チクングニアウイルス糖タンパク質を発現するrISFVベクターの実験
チクングニアウイルス(CHIKV)は、トガウイルス(Togaviridae)科におけるアルファウイルス属の蚊媒介性ウイルスである。ヒトにおけるCHIKV感染は、高熱、頭痛、嘔吐、皮膚発疹、および痛みを伴う関節炎をもたらす。数ヶ月間または数年間さえ続き得る関節炎(Powers and Logue. J. Gen. Virol. 2007, 88:2363-2377)は、一般的に自己限定的なCHIKV感染の証である。しかしながら、150万人を超える人々に影響を及ぼしたインド亜大陸およびインド洋諸島における近年の蔓延において、一部の人々は、脳炎、出血性疾患、および死を含めたより重度の症状を提示した(Schwartz and Albert. Nature Rev. Microbiol. 2010, 8:491-500)。カリブ海諸島および米州へのCHIKVのより近年のかつ急速な広がり(Powers. J. Gen. Virol. 2015, 96:1-5)は、CHIKVに対する免疫原性組成物のさらにより差し迫った必要性を生み出している。
【0213】
CHIKVは、4種の非構造タンパク質(nsP 1〜4)および5種の構造タンパク質(C、E3-E2-6K-E1)をコードする、単一プラスセンスの11.8kb RNAゲノムを有する。構造タンパク質は前駆体から切断されて、カプシドおよびエンベロープ糖タンパク質を生成する(Strauss and Strauss. Microbiol. Rev. 1994, 58:491-562)。E2およびE1タンパク質は安定したヘテロ二量体を形成し、かつE2-E1ヘテロ二量体は相互作用して、ウイルス表面に見出されるスパイクを形成する。E2は、E2およびE3に切断されるPE2またはp62と称される前駆体として形成される。E2とE1との間のリンカーとして産生される、6Kと称される小さな疎水性ペプチドが存在する。E3-E2-6K-E1ポリタンパク質がプロセシングされた場合、E2およびE1糖タンパク質が産生され、それは次いで、E2-E1糖タンパク質ヘテロ二量体を形成する(Strauss and Strauss, pp.497-499)。
【0214】
E2-E1糖タンパク質を発現する弱毒化rISFVベクターを構築するための出発点は、John Rose博士(イェール大学)から受け取ったpVSVΔG-CHIKVと称されるプラスミドであった(Chattopadhyay et al. J. Virol. 2013, 87:395-402)。このプラスミドは、rVSVゲノムcDNA内に、VSV G遺伝子の代わりに、最適化されたチクングニアE3-E2-6K-E1遺伝子配列(Genscript, Inc.)を含有した。CHIKV-E3-E2-6K-E1配列を、以下のプライマーを用いて、PCRによって増幅した。
プライマーアルファ_001:
(XhoI部位およびKozak配列を含有する)(SEQ ID NO:69)
プライマーアルファ_002:61/(NotI部位およびNheI部位を含有する)(SEQ ID NO:70)
【0215】
結果として生じるPCR産物を、Xho/NotI制限酵素で消化し、かつrVSVN4CT1ベクターcDNA内にクローニングした。次いで、このベクターcDNAを増幅しかつXhoI/NotI制限酵素で消化し、そしてCHIKV-E3-E2-6K-E1タンパク質をコードする放出されたインサートを、XhoI/NotI消化されたpPBS-ISFV-HIV-015(上記で実施例2に記載される)内にクローニングした。次いで、CHIKV-E3-E2-6K-E1タンパク質をコードする組換えISFV(rISFV)を、上記で実施例1に記載されるように、このpDNAからレスキューした。結果は、rISFVゲノムにおける第1のポジションからCHIKV-GPを発現する、pPBS-ISF-アルファ-003ウイルスと称されるrISFV-N4 G-CTΔ25(CHIKV GP)1であり、式中、CHIKV-GPはCHIKV-E3-E2-6K-E1を表す。
【0216】
レスキューされたウイルスをプラーク精製し、かつVero E6細胞単層(ATCC CCL-81)上で増幅した。動物実験のために、ウイルスベクターを、10%スクロースクッションを通した遠心分離によって、感染したBHK-21(ATCC CCL-10)細胞上清から精製した。精製されたウイルスをPBS、pH7.0中に再懸濁し、スクロースホスフェート(SP)安定剤(7mM K
2HPO
4、4mM KH
2PO
4、218mMスクロース)と混合し、エタノール/ドライアイス中で即時冷凍し、かつ使用するまで(until ready for use)−80℃で保管した。
【0217】
実験を実施して、第1のポジションからCHIKV-GPを発現する、上記で記載されるrISFV-N4G-CTΔ25 (CHIKV GP)1ベクターを含む免疫原性組成物の安全性および効力を検討した。1型インターフェロンに対する受容体を欠如した11〜21と番号付けされたマウス(A129マウス)を、1×10
7 pfuのrISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1でそれらの左足蹠において免疫化した。右足蹠は、対照として働くために注射されなかった。1〜10と番号付けされたA129マウスは、さらなる対照として免疫化されなかった。全21匹のマウスに、10μl用量の1×10
4 pfuのCHIKVのレユニオン単離株を左足蹠において注射し、かつ腫れを測定した。右足蹠の高さも、内部対照として測定した。左足の足蹠の高さを、注射の日には測らなかった。以前のデータにより、左および右の足のサイズは同一であることが示された。
【0218】
図19に示されるように、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたマウス11〜21は、曝露後にそれらの体重を維持し、一方で免疫化されなかったマウスは、曝露後4日目に至るまで重量を喪失した。
【0219】
図20に示されるように、免疫化されたマウス11〜21は、3日目までにわずかな左足蹠の腫れを有し、それは5日目までに解消した。対照的に、免疫化されなかったマウス1〜10は、左足蹠の腫れを有し、それは4日目に至るまで増加し続けた。両群のマウスは、右足蹠の腫れを有しなかった。
【0220】
図21に示されるように、免疫化されたマウス11〜21は、1または2日目に血中におけるウイルス血症なし[100 pfu/mlの検出の限度を下回る]を実証した。対照的に、免疫化されなかったマウス1〜10は、1日目にウイルス血症の兆候を有し、それは2日までにほぼ1×107 pfu/mlまで増加した。
【0221】
3日目までに、免疫化されなかったすべてのマウスは、足蹠の腫れ、かき乱された毛皮、および不活発状態を含めた、病気の兆候を示した。対照的に、免疫化されたすべてのマウスは、外観および行動において正常であった。
図22に示されるように、5日目までに、免疫化されなかった全10匹のマウスは、病気に屈した。対照的に、免疫化された全11匹のマウスは、病気の兆候もなく生き残った。
【0222】
表14(太字の数字は陽性結果を表す)に示される、免疫化後1日目、7日目、および21日目に採取された血清からのプラーク減数中和力価(PRNT80)によって判定されるように、rISFV-N4G-CTΔ25(CHIKV GP)1で免疫化されたすべてのマウスは、21日目までに血清転換した。
【0223】
(表14)チクングニア糖タンパク質を発現するrISFVで免疫化されたマウスにおける、CHIKVに対する中和抗体応答