(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-508593(P2017-508593A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】医療用持ち上げ装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/10 20060101AFI20170310BHJP
【FI】
A61G7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-501078(P2017-501078)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2015020959
(87)【国際公開番号】WO2015142845
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】61/954,146
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516282341
【氏名又は名称】ストロング アーム テクノロジーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ペッターソン、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ヒラリー、ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】デュボード、コール
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン、ジョーダン
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA06
4C040GG14
4C040HH04
(57)【要約】
【解決手段】 医療用持ち上げ装置および方法が開示される。医療用持ち上げ装置は支持具および少なくとも一つのストラップを含む。前記支持具は患者の背中に対して配置されるようになっている。前記支持部は一対の向かい合う側端部を有する。前記少なくとも一つのストラップは前記支持具の各側端部から伸びる。前記少なくとも一つのストラップは前記装置の使用者が前記使用者の胴部が直立状態で立ったままで前記患者が座位の状態のとき、前記使用者が各ストラップを掴めるように十分な長さを有する。患者を前記支持具によって持ち上げる方法は、患者の背中に対して前記支持具を配置する工程と、前記使用者が直立状態で立ったままで前記患者が座位の状態のとき、各ストラップを掴む工程と、前記患者を立位に持ち上げるため各ストラップを引く工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用持ち上げ装置であって、
患者の背中に対して配置されるようになっており、一対の向かい合う側端部を有する支持具と、
前記支持具の側端部から伸びる少なくとも一つのストラップであって、前記装置の使用者が立位状態かつ胴部が直立状態にあり、前記患者が座位状態にあるとき、当該使用者が掴むことが可能であるような十分な長さを有する少なくとも一つのストラップと
を有する、医療用持ち上げ装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療用持ち上げ装置において、前記少なくとも一対のストラップは前記支持具の側端部から前記少なくとも一つのストラップの末端まで、少なくとも17〜29インチ(43.2〜73.7センチメートル)の長さを有するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項3】
請求項1の医療用持ち上げ装置において、各ストラップはそれらに連結するハンドル部を有し、前記ハンドル部は持ち上げ中前記患者によって掴めるように配置されるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項4】
請求項3記載の医療用持ち上げ装置において、前記ハンドル部は前記ストラップの材料よりもより硬い材料を有するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項5】
請求項3記載の医療用持ち上げ装置において、前記少なくとも一つのストラップに対する前記ハンドル部の位置は、前記ストラップの長さに沿って調節可能である、医療用持ち上げ装置。
【請求項6】
請求項3記載の医療用持ち上げ装置において、前記ハンドル部は前記ストラップの長さ方向に対して実質的に直角に伸びるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項7】
請求項1記載の医療用持ち上げ装置において、前記少なくとも一つのストラップは前記使用者に連結されるように構成される一つまたはそれ以上の取り付け機構を有し、前記一つまたはそれ以上の取り付け機構は前記使用者に連結された場合、持ち上げ中に前記患者の体重の少なくとも一部を担うものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項8】
請求項7記載の医療用持ち上げ装置において、前記一つまたはそれ以上の取り付け機構は前記使用者によって着用されるベルトに取り付けられるように構成されるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項9】
請求項7記載の医療用持ち上げ装置において、前記一つまたはそれ以上の取り付け機構は取り外し機構を有し、前記取り外し機構は持ち上げ中前記使用者から少なくとも一つのストラップを速やかに取り外すように構成されるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項10】
請求項1記載の医療用持ち上げ装置において、前記支持具は前記支持具が前記患者の背中に対して配置されたとき、前記支持具上端は前記患者背中の胸郭下部にわたって伸び、前記支持具下端は前記患者背中の腰下部にわたって伸びるように成形されるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項11】
請求項1記載の医療用持ち上げ装置において、前記少なくとも一つストラップは前記患者背中の胸郭下部に隣接する前記支持具の側端部に連結するストラップ始部と、そして前記患者背中の腰下部に隣接する前記支持具の側端部に連結するストラップ終部とを有するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項12】
請求項1記載の医療用持ち上げ装置において、さらに、
前記支持具に連結された格納装置を有し、前記格納装置は第一の使用状態から第二の待機状態へ前記少なくとも一つのストラップを格納するように構成されるものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項13】
請求項12記載の医療用持ち上げ装置において、前記格納装置は前記医療用持ち上げ装置が使用中ではないとき第二の待機状態へと少なくとも一つのストラップを自動的に格納するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項14】
請求項12記載の医療用持ち上げ装置において、前記格納装置は前記少なくとも一つのストラップに連結している一つまたはそれ以上の伸縮部材を有するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項15】
請求項14記載の医療用持ち上げ装置において、前記一つまたはそれ以上の伸縮部材は前記少なくとも一つのストラップの一部を成すものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項16】
請求項12記載の医療用持ち上げ装置において、前記格納装置は前記支持具に連結した一つまたはそれ以上の滑車を有するものである、医療用持ち上げ装置。
【請求項17】
使用者によって患者を持ち上げる方法であって、
患者の背中に対して支持具を配置する工程であって、前記支持具は一対の向かい合う側端部および前記支持具の各側端部から伸びるストラップを有するものである、前記配置する工程と、
前記使用者が直立状態で立位し、前記患者が座位状態にあるとき、前記使用者が各ストラップを掴む工程と、
前記使用者が前記患者を立位に持ち上げるために各ストラップを引く工程と
を有する、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、さらに、
前記患者が各ストラップに連結されたハンドル部を掴めるようにする工程を有するものである、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、さらに、
前記ストラップ上の一つまたはそれ以上の取り付け機構を通して各ストラップを前記使用者に取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記取り付ける工程は各ストラップを前記使用者によって着用されるベルトへ取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、さらに、
取り外し機構を用いて持ち上げ中、前記使用者から各ストラップを速やかに取り外す工程を有するものである、方法。
【請求項22】
請求項17記載の方法において、さらに、
格納装置を用いて第一の使用状態から第二の待機状態に各ストラップを格納する工程を有するものである、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記格納する工程は前記ストラップが掴まれていないとき、前記第二の待機状態に各ストラップを自動的に格納する工程を有するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2014年3月17日に提出された米国特許出願第61/954,146号「MEDICAL LIFTING DEVICE(医療用持ち上げ装置)」の優先権を主張するものであり、これはここで参照されることにより本明細書に含まれるものである。
【0002】
本発明は患者の持ち上げの分野に関するものであり、より具体的には、患者を立位まで持ち上げさせる装置および方法に関してである。
【背景技術】
【0003】
医療の場においては、しばしば医師や看護師などの医療従事者が患者を座位やあおむけの状態から立位に起き上がることを介助する必要がある。従来、医療従事者をこのような「患者移動」において補助する、歩行ベルトなど様々な持ち上げ用具が開発されてきた。しかしながら、これらの現存する用具は患者の精神的快適性および安全性への配慮に欠ける。さらに、近年では、これらの患者移動による医療従事者のけが、特に背部損傷が増加している。よって、患者の快適性および安全性を促進し、および/または医療従事者の持ち上げ中のけがの可能性を最小限に抑えた患者移動を可能とする、よりよい装置が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の観点は医療用持ち上げ装置および方法に向けられるものである。
【0005】
本発明の一つの観点によれば、医療用持ち上げ装置が開示される。この医療用持ち上げ装置は一つの支持具および少なくとも一つのストラップを有する。この支持具は患者の背中に対して配置されるようになっている。前記支持具は一対の向かい合う側端部を有する。前記少なくとも一つのストラップは前記支持具の各側端部から伸びるている。前記少なくとも一つのストラップは前記装置の使用者の胴部が直立状態で立っており、かつ前記患者が座っている状態において前記使用者が各ストラップを掴めるような十分な長さを有するものである。背中に対して支持具を配置する工程と、この支持具は一対の向かい合う側端部と各側端部から伸びるストラップを有し、この装置の使用者が直立に立っており、かつ前記患者が座っている状態において前記使用者が各ストラップを掴む工程と、各ストラップを前記患者を立位に持ち上げるために引く工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は以下の詳細な説明とそれに付随する図面によって最もよく理解されるものであって、同様の要素は同じ参照番号を有するものである。同様の要素が複数存在する場合、一つの参照番号が特定の要素を参照する小文字表記と共に複数の同様の要素に当てられる。前記要素を集合的に、または非特定の一つまたはそれ以上の要素を参照する場合には、小文字表記は用いられない。慣習に従い、前記図面の様々な機構は特に示されていない限り縮小に従って描かれていない。その反対に、前記様々な機構の寸法は明確性のために拡大されたり縮小されたりするものである。前記図面に含まれるのは以下の図である。
【
図1】
図1は、本発明の観点に沿った例示的な医療用持ち上げ装置の略図である。
【
図2A】
図2A−2Cは、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な支持具の略図である。
【
図2B】
図2A−2Cは、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な支持具の略図である。
【
図2C】
図2A−2Cは、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な支持具の略図である。
【
図3】
図3A−3Bは、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的なストラップの略図である。
【
図4】
図4は、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な取り付け機構の略図である。
【
図5】
図5は、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な取り外し機構の略図である。
【
図6】
図6は、
図1に描かれている医療用持ち上げ装置の例示的な格納装置の略図である。
【
図7】
図7は、本発明の観点に沿った例示的な患者の持ち上げ方法を表しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで説明される本発明の実施形態は医療従事者によって患者を立位に持ち上げるために使用されることが可能な持ち上げ装置に関するものである。ここで説明される本発明は医療の場に関して説明されているが、ここで説明される持ち上げ装置は人を立位に持ち上げるどのような状況においても使用可能であることが理解されるべきである。
【0008】
ここで開示される例示的な医療用持ち上げ装置は患者を持ち上げる工程を単純化または容易にするように働くものである。これらの装置は特に、前記患者の持ち上げ中に医療従事者を立位状態または直立状態に保つことを可能にするのに最適であると考えられる。これによって前記医療従事者が前記持ち上げ中にけがをする可能性やその重症度を軽減することが可能である。ここで開示される持ち上げ装置の他の利点は、ここの説明によって当業者に明らかになるはずである。
【0009】
例えば、ここで開示される持ち上げ装置はいわゆる患者の「抱き上げ」、つまり医療従事者が彼ら自身の力によって座位の患者を抱きかかえ立位にまで持ち上げることを行っている医療従事者に、より人間工学的感触を可能にさせるため使用されることが出来る。抱き上げ中とは異なり、本発明の使用は医療従事者の視線を持ち上げ中にも維持し、それにより患者移動中に重要な前記患者が快適性や信用を感じることを可能にする。ここで開示される持ち上げ装置はまた患者や医療従事者が前記持ち上げ装置に注意を向けることによって両者の注意が逸れる可能性を低減させる。さらに、開示される持ち上げ装置は従来の抱き上げにはない両者間の間隔を提供し、それにより持ち上げ中のより安易な言語コミュニケーションを可能にする。
【0010】
ここで開示される持ち上げ装置および方法は従来の持ち上げ機構と比較して数々の利点を提供する。特に、ここで開示される装置の使用は従来の抱き上げと比較して医療従事者の脊椎への圧縮荷重を低減する。このような荷重は少なくとも80%低減されることが可能で、よって腰痛やけがのリスクを大幅に減らすものである。さらに、ここで開示される実施形態は、(従来の抱き上げと比較して)前記持ち上げ工程中、前記使用者が用いることが出来る背筋の力または胴部の力を(100%近く)増加させることが可能となるかもしれない。
【0011】
ここで図面を参照すると、
図1−6は本発明の観点に沿った医療用持ち上げ装置100を示す。医療用持ち上げ装置100は医療従事者によって患者の立位までの持ち上げを介助するために用いられることが出来る。通常、医療用持ち上げ装置100は支持具120およびストラップ140を含む。医療用持ち上げ装置100の追加の詳細がここで説明される。
【0012】
支持具120は患者の背中に対して配置されるようになっている。支持具120は上端部122、下端部124、および一対の向かい合う側端部126を含む。
図1に表されるように、支持具120は好ましくは患者50の腰に対して快適に配置されるように形成および成形される。支持具120は持ち上げ中の患者50の腰の最適な場所に支持を提供するように成形されることも出来る。1つの例示的な実施形態において、支持具120が患者50の背中に対して配置されるとき、支持具120の上端部122は患者背中の胸郭下部にわたって伸び、支持具120の下端部124は患者背中の腰下部にわたって伸びる。さらに、支持具120の側端部126は、
図2A−2Bに表されるように、実質的に直線的、またはその上部または下部に沿って伸びる部分が存在してもよいものである。
【0013】
支持具120は、持ち上げ工程中に前記患者の快適性を維持しつつ前記患者に支持を提供する材料によって形成される。1つの例示的な実施形態では、
図2Aに示されるように、支持具120は芯部130およびパッド層132を含む。芯部130は患者50の背中をしっかりと支持するよう堅い、非柔軟性の材料により形成される。芯部130は、実質的に支持具120の上端部122から下端部120まで伸びている。
図2Aにおいて芯部130はI形を有するよう描写されているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの代替的実施形態では、
図2Cに示されるように、芯部130はV字形の形状を有する。この実施形態において、V字形芯部130の1つの末端は支持具120の先端部に位置し、このV字形芯部130の先端は支持具120の基底部に位置し、持ち上げ中に前記患者の脊椎に安定性を提供する。芯部130を形成するために使用される好適な材料には、例えば、高密度ポリエチレン(high−density polyethylene:HDPE)などのプラスティックを含む。
【0014】
パッド層132は芯部130および患者50の背中の間に位置し、患者50の快適性を促進するために軟質の材料によって形成される。パッド層132を形成するのに使用する好適な材料には、例えば、天然または合成繊維(綿やナイロンなど)布などがある。パッド層132はさらに、
図2Bに表されるように、一またはそれ以上の追加の緩衝層134を含むことが出来る。緩衝層134を形成するのに使用する好適な材料は、例えば、従来の発泡物質である。成形された形状記憶発泡物質が緩衝層134に用いるために特に好ましいと考えられる。
【0015】
図2Bに表されるように、緩衝層134間に割れ目や溝構造が形成されることも可能である。これらの割れ目または溝構造は、好適には支持具120および患者50の間に空気の循環を可能にし、前記患者を持ち上げ中に涼しく快適に保つことが出来る。
【0016】
ストラップ140は支持具120のどちら側から伸びていてもよい。
図1に示されるように、ストラップ140は支持具120の各側端部126から出ている。ストラップ140は、好ましくは支持具120の上端部122または下端部124の位置から支持具120より外側に向けて伸びている。いいかえると、
図1に示すように、各ストラップ140の始部142は好ましくは前記患者背中の胸郭下部のすぐそばから伸びて、各ストラップ140の終部144は好ましくは前記患者背中の腰下部のすぐそばから伸びる。
【0017】
ストラップ140は装置100の使用者が胴部が直立状態で立っており前記患者が座位のとき各ストラップ140を掴めるよう十分な長さを有するものである。
図1に表されるように、前記使用者は患者50をかがませることなくストラップ140を掴むことが可能である。前記使用者が直立状態の立位でストラップ140を掴むことが可能であることは、前記使用者を前記患者の持ち上げ介助においてより健康的な姿勢に置き、それによって前記患者への背部損傷やその重症化の可能性を減らすことに繋がる。例示的な1つの実施形態では、各ストラップ140は少なくとも支持具120の側端部126からこのストラップの末端まで(つまり、支持具120から最も離れている前記ストラップの部位)、少なくとも17〜29インチ(43.2〜73.7センチメートル)の長さを有する。
【0018】
ストラップ140は耐久性の、柔軟性のある材料によって形成される。ストラップ140を形成するため使用される好ましい材料は、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、綿織、および/または伸縮性ウェビングを含む。
【0019】
例えば、
図1−2Bのストラップ140の数、サイズ、およびアタッチメントに関する説明および実例は単なる例示であって限定を意図するものではない。特に、追加のストラップ140またはストラップ140の代替的な結合部が本発明の範囲から外れることなく用いられることが出来る。さらに、装置100は上述の構成要素に限定されず、ここの説明より本技術の当業者であれば理解するように、代替的なまたは追加の構成要素を含むことが出来る。
【0020】
装置100はさらに、一対のハンドル部150を含むことが可能である。ハンドル部150は好ましくは持ち上げ工程中に前記患者に彼らの手を置く場所を提供し、患者により促進された快適性、安全性、および、彼らが持ち上げ工程を補助しているという感覚を与えることが可能となるかもしれない。1つの例示的な実施形態において、各ストラップ140は
図3A−3Bに示されるようなそれに連結した個々のハンドル部150を含む。ハンドル部150は、持ち上げ中に患者50が掴めるように配置される。前記患者が各ハンドル部を掴み易くするためにハンドル部150はストラップ140の長さ方向に対してストラップ140から内側向きの角度で伸びる。いいかえると、ストラップ140が患者50の前側から離れるように伸びているのに対して、
図1および3Aで表されるように、ハンドル部150は好ましくは患者50の前側に平行に伸び、またはストラップ140の伸びる方向に対して直角方向に伸びる。
【0021】
ハンドル150は
図2Bでは円筒状で表されるのに対し、本発明はその形状に限定されないことが理解されるべきである。ハンドル部150は前記患者および前記使用者両方が快適でしっかりと握れるような形状にすることが出来る。
【0022】
また、ハンドル部150は望ましくは装置100の使用者に、より高い安全性を提供する。ハンドル部150は、もし持ち上げ工程中に前記患者が反射的に掴むための場所を提供するように配置される。前記患者は前記使用者(例えば、看護師)の代わりにハンドル部150を掴み、それにより前記患者が前記使用者を引っ張ったり前記使用者の転倒を引き起こす可能性を最小限にして、より安全な持ち上げ環境を提供することになる。前記患者および使用者のハンドル部150はストラップ140によってお互いに取り付けられているため、前記使用者は前記患者から持ち上げ中に蝕知性フィードバックを受け取ることが出来るかもしれない。この蝕知性フィードバック(例、引っ張りや引き寄せの形で)は前記看護師に持ち上げ中の患者の動作に対する反応を可能にさせ、それにより前記使用者にコントロール間隔を、前記患者に安定性を提供することを可能にする。
【0023】
1つの例示的な実施形態では、各ハンドル部150はその上部末端においてストラップ140の始部142に取り付けられ、そしてその末端においてストラップ140の終部144に取り付けられる。または、ハンドル部150の片方または両方の末端は直接支持具120の側端部に取り付けられることも可能である。
図3A−3Bに表されるように、各ハンドル部150の上端部は直接側端部126上の突起部に取り付けられる。
【0024】
別の実施形態では、各ハンドル部150の位置は、ストラップ140の長さに沿って調節可能なものである。ハンドル部150の位置を異なる腕の大きさを持つ患者に合わせるため調節可能にすることが望ましいと考えられる。よって、ハンドル部150はストラップ始部142またはストラップ終部144に、例えば一つまたはそれ以上のスライド部、円形構造、または締め具を介して、可動的に取り付けることも出来る。ここでの説明に基づいて、ハンドル部150を調節可能にストラップ140に取り付けるために好適な構造は当業者に周知のものである。
【0025】
ハンドル部150はどのような好適な材料によって形成されてもよく、いくつかの実施形態では、それはストラップ140よりも硬い材料となっている。ハンドル部150を形成するのに使用する好適な材料は天然または合成のもので、例えば、高密度ポリエチレン(high−density polyethylene:HDPE)またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(acrylonitrile butadiene styrene:ABS)などのどのような好適なプラスティックでもよい。
【0026】
装置100はさらに、一つまたはそれ以上の取り付け機構160を含んでもよい。前記使用者が単純にストラップ140を掴むことを選択する一方で、取り付け機構160は望ましくは持ち上げ工程中、前記使用者と前記患者の間に安全な接続を提供する。一つの例示的な実施形態では、各ストラップ140は、
図4に表されるように、それぞれ前記使用者に連結されるように構成された取り付け機構160を含む。持ち上げ工程中前記使用者に連結されると取り付け機構160は患者50の体重の少なくとも一部を担うものである。
【0027】
1つの例示的な実施形態においては、各取り付け機構160は前記使用者によって着用されるベルト162に取り付けられるように構成される。この実施形態において、装置100の取り付け機構160は一つまたはそれ以上のストラップ140の先端部146に配置された輪状構造またはループ状構造を有する。これらの取り付け機構160はベルト162上の対応する取り付け構造164と結合するように構成されている。
【0028】
前記使用者162のベルトへ取り付けられる例示的な取り付け機構164は、
図5に表される。1つの例示的な実施形態では、取り付け機構164は前記取り付け機構160を装置100に連結するためのフック166を有する。このフック166は取り付け機構164の中に巻き付けられているテザーに取り付けられている。このテザーの長さは、持ち上げ中求められる前記使用者の距離および姿勢を可能にするように、望ましくは前記患者の持ち上げ前に前記使用者によって調節される。取り付け機構は前記テザーの求められる長さを調節し、その後固定するためのラチェット要素を含むことが可能である。
【0029】
取り付け機構164はさらに、取り外し機構168を含むことが可能である。取り外し機構168は、緊急の場合に持ち上げ工程中ストラップ140から取り付け機構164を速やかに取り外すようになっている。例えば、持ち上げ中に前記患者50が倒れたり前記使用者を引き下ろす恐れがある場合、前記使用者は前記使用者から取り付け機構164を外すため取り外し機構168を作動させ、そしてそれによって持ち上げ工程中にストラップ140を取り外すことが可能である。1つの例示的な実施形態では、取り外し機構168は、
図5に表されるように取り付け機構の外側にトグルを有する。このトグルは、取り付け機構164内のラチェット機構を解除し、患者50の動きに対応するよう前記テザーを伸ばすように構成されるものである。
【0030】
装置100はさらに、
図6に表されるような、格納装置170を含むことが可能である。格納装置170はストラップ140が使用されていないときそれを格納するように支持具120に連結されることが出来る。具体的には、格納装置170はストラップ140を第一の使用状態から第二の待機状態に格納するように構成されるものである。好ましくは、医療用持ち上げ装置100が使用されていないとき格納装置170は自動的にストラップ140を格納するものである。
【0031】
1つの例示的な実施形態において、格納装置170はストラップ140に連結された一つまたはそれ以上の伸縮部材172を有する。この伸縮部材172は(線形またはねじりバネなどの)独立した伸縮要素でもよい。ある特定の好ましい実施形態では、
図6に表されるように、伸縮部材172はストラップ140の両方に連結されたねじりバネを有するものである。前記ねじりバネは、ストラップ140に求められる格納のための力を与えるため、支持具120の平面から実質的に直角の面に沿って設置されてもよい。代替的に、または追加的に、ストラップ140は前記格納装置を構成する伸縮部材から少なくとも一部を形成することも出来る。どの形においても、前記伸縮部材は、装置100の使用中に力が加えられていない場合自動的にストラップ140を格納するよう動作するものである。
【0032】
格納装置170はまた支持部120に連結する一つまたはそれ以上の滑車を有してもよい。この実施形態において、ストラップ140は滑車の周りを回る。ストラップ140が使用中でない場合前記滑車はストラップ140に前記待機状態へとそれらを格納するよう力を加える。
【0033】
図7は本発明の観点に沿って患者200を持ち上げる1つの例示的な方法を描写している。方法200は医療従事者によって実施されることが出来る。一般に、方法200は対象または患者に支持具を配置する工程と、前記ストラップを掴む工程と、前記ストラップを引く工程とを有する。方法200の工程は以下に医療用持ち上げ装置100の構成要素に関して詳細が説明される。
【0034】
工程210において、支持具は患者の背中に対して配置される。1つの例示的な実施形態では、支持具120は患者50の背中に対して配置される。支持具120は一対の向かい合う側端部126、および、各側端部から伸びるストラップ140を有する。上で述べたように、支持具120は好ましくは、持ち上げ中に患者50の腰下部の最適な箇所に支持を提供するように形成されるものである。
【0035】
工程220において、各ストラップは使用者によって掴まれる。前記使用者は立位または直立状態である。1つの実施形態では、ストラップ140は患者50が座位の状態でかつ直立状態で立っている使用者が各ストラップを掴むことが出来るよう十分に長さを有する。
【0036】
工程230において、各ストラップは患者を立位に持ち上げるために引っ張られる。ある実施形態において、前記使用者はストラップ140を引っ張り、それにより支持具120を通して患者50の背中にに持ち上げるための力を加え、そして患者50を立位に持ち上げる。支持具120を患者50の腰下部に対して配置することによって、ストラップ140が引っ張られたとき支持具120は望ましくは上向きの、持ち上げる力を提供する。よって、上で述べたように、ストラップ140は支持具120から支持具120の上端部122および下端部124の位置から外向きに伸びているのである。
【0037】
方法200はここで述べられる工程に限定されるものではなく、ここでの説明によって当業者に理解されるように、代替のまたは追加の工程を含むことが可能である。
【0038】
上で述べられたように、装置100は一対のハンドル部150を含むことが可能である。この実施形態では、方法200は前記患者が各ストラップに連結するハンドル部を掴むことが出来るような工程を含むことが可能である。ある例示的な実施形態において、患者50は持ち上げ工程中に各ハンドル部を掴むことが可能になっている。これは前記患者に持ち上げ工程中彼らの手を配置する場を提供する。これにより前記患者に彼または彼女に持ち上げ工程を補助しそれにより一定の程度前記持ち上げ工程を補助しているという感覚を与えることが可能であるかもしれない。
【0039】
装置100はまた一つまたはそれ以上の取り付け機構160を含むことが可能である。この実施形態において、方法200は前記使用者に各ストラップヲ取り付ける工程を含むことが可能である。1つの例示的な実施形態では、ストラップ140は一つまたはそれ以上の取り付け機構160を介して前記使用者によって着用されるベルトに取り付けられる。これらの取り付け機構160は、持ち上げ工程中に前記使用者に連結されたとき患者50の体重の少なくとも一部を担うものである。取り付け機構160がさらに取り外し機構164を含む場合は、方法200はさらに、持ち上げ中に前記使用者から速やかに各ストラップを取り外す工程を含むことが出来る。1つの例示的な実施形態では、前記使用者は、持ち上げ工程中に緊急事が発生したときストラップ140を速やかに取り外せるよう取り外し機構164を作動させることが可能である。
【0040】
装置100はまた格納装置170を含むことが出来る。この実施形態において、方法200は各ストラップを第一の使用状態から第二の待機状態まで格納する工程を含むことが可能である。ある例示的な実施形態では、各ストラップ140を第一の使用状態(つまり、伸びている状態)から、第二の待機状態(つまり、格納状態)まで格納装置170によって格納されることが出来る。望ましくは、格納装置170はストラップ140が前記使用者によって掴まれていない、および/または引っ張られていないとき前記格納状態までストラップ140を自動的に格納するよう操作可能なものである。
【0041】
本発明がここで特定の実施形態を参照して描写および説明されているが、本発明がここに示される詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明からはずれることなく請求の範囲およびその同等の範囲内で詳細に様々な変更が加えられることが可能である。
【国際調査報告】