(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-508738(P2017-508738A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】ニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤及びその合成製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C07C 323/32 20060101AFI20170310BHJP
C07C 319/20 20060101ALI20170310BHJP
C07C 251/66 20060101ALI20170310BHJP
C07C 249/12 20060101ALI20170310BHJP
C07D 209/88 20060101ALI20170310BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20170310BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
C07C323/32CSP
C07C319/20
C07C251/66
C07C249/12
C07D209/88
C07D307/91
C07D333/76
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-553290(P2016-553290)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月19日
(86)【国際出願番号】CN2015074368
(87)【国際公開番号】WO2015139604
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】201410101531.X
(32)【優先日】2014年3月18日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511216525
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CAHNGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】513127917
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CAHNGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】銭 暁春
【テーマコード(参考)】
4C037
4C204
4H006
【Fターム(参考)】
4C037SA05
4C204BB10
4C204CB25
4C204DB40
4C204EB01
4C204FB03
4C204GB13
4C204GB15
4C204GB32
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB40
4H006TA04
(57)【要約】
本発明は、構造は一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤を開示する。当該光重合開始剤は、貯蔵安定性、感光度、現像性とパターン完全性などの点で応用性能に優れ、単波長のUV−LED光源と良好な適合性を有し、UV−LED照射において既存の光重合開始剤よりも著しく優れた感光性能を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される構造を有するニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【化1】
但し、
X、Yは互いに独立に、カルボニル基(−CO−)又は単結合を表す。
Zはなし、単結合又はC
1−C
5のアルキレン基である。
AはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。
R
1は水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、又はハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される一つ又は複数の基で置換されてもよいC
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。
R
2、R
3は互いに独立に、水素、C
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、又はC
7−C
20のアリールアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
R
4はC
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
20のヘテロアリール基、又はC
6−C
20のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、フェニル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【請求項2】
Zはなし、単結合、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基であることを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項3】
AはO、S又はR5N−基であり、その中で、R5は水素、C1−C10直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C3−C15のシクロアルキル基又はC4−C15のシクロアルキルアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項4】
R1は水素、ハロゲン、ニトロ基、又はC1−C15の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項5】
R2、R3は互いに独立に、水素、C1−C15の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C3−C15のシクロアルキル基、C4−C15のシクロアルキルアルキル基、C4−C15のアルキルシクロアルキル基、又はC7−C15のアリールアルキルを表し、これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよいことを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項6】
R4はC1−C10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C3−C10のシクロアルキル基、C4−C10のシクロアルキルアルキル基、C4−C10のアルキルシクロアルキル基、C3−C10のヘテロアリール基又はC6−C10のアリール基を表すことを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項7】
前記ニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤は下記の構造から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【化2】
【請求項8】
ニトロ基ビスオキシム基構造を含む化合物を、対応する酸無水物又はアシルハライド化合物とエステル化反応を行い、目的生成物を得るステップを含み、具体的な反応式は以下の通りである請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤の合成製造方法。
【化3】
式中、Bはハロゲンを表す。
【請求項9】
請求項1に記載のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤の光硬化組成物への応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤の技術分野に属し、特にニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤及びその合成製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバゾール、ジフェニルスルフィドなどの基を有し、且つオキシムエステル構造が連結されている化合物を光重合開始剤として応用することは本分野で既に広く知られている。近年、光硬化分野において、設計と合成が新しく、特により良い応用性能を有するオキシムエステル系開始剤の研究も盛んに行われている。例えば、特許文献1〜3などの中国特許文献には、多種のオキシムエステル系光重合開始剤が開示され、これらの製品は、ニーズを満たし、光硬化性組成物の開発を改善するためにある程度優れた感度、保存安定性、等を有する。
【0003】
しかしながら、実際の応用で、伝統的な光重合開始剤と似ているが、これらの既存のオキシムエステル系光重合開始剤は、適用できる励起光源の選択の面で極めて大きな制限が存在していることが見出された。これらは、通常、スペクトル幅の広い紫外光(UV)の照射で励起されて役割を果たす。現在、光硬化系を励起する(すなわち、前記スペクトル幅の広い紫外光を放射する)光源は主に高圧水銀ランプであり、その放射スペクトルは436nm、405nm、365nm、313nm、302nmに集中し、既存の多数の光重合開始剤は上記の短波長において吸収が良い。しかしながら、このような光源は、エネルギー消耗が大きく、予熱時間が長く、環境にやさしくないなどの明らかな欠点が存在し、応用においてますます多く制限され、だんだんと市場で廃止されている。
【0004】
UV−LED光源は、光純度が高く、エネルギー消耗が低く、操作が簡単であり、環境にやさしいなどの利点を有し、現在、民用領域で広く応用され、光硬化業界でも徐々に知られてきている。UV水銀ランプ系に比べて、UV−LEDは省エネルギー排出削減、生産効率向上、光硬化技術の応用範囲を広げるなどの面で非常に優れている。UV−LED励起モードは光硬化技術の次の主流発展方向となる可能性が非常に高い。
【0005】
UV−LED光源自身は発光スペクトルが狭く、現存の光重合開始剤はその励起によって示される応用性能は満足できものではない。したがって、UV−LED光源に相応しい感光性能に優れる光重合開始剤を検討と開発することは特に重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第1514845号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101508744号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101528694号明細書
【特許文献4】中国特許出願公告第101565427号明細書
【特許文献5】中国特許出願公告第102020727号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第102492060号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第103130919号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第1241562号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の光重合開始剤の不足について、本発明の目的は、水銀ランプとUV−LEDランプ光源のいずれにおいても優れた応用性能を示すオキシムエステル系光重合開始剤を提供することにある。化学構造を細心に設計や修飾することで、ニトロ基とビスオキシムエステル構造を含む化合物を設計合成し、当該製品は貯蔵安定性、感光度、現像性とパターン完全性などの面で性能に優れ、特に単波長(例えば395nm)のUV−LED照射で既存の光重合開始剤よりも著しく優れた感光性能を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術効果を達成するために、本発明が採用する技術態様は以下の通りである。
【0009】
一般式(I)で表される構造を有するニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤であって、
【化1】
【0010】
但し、X、Yは互いに独立に、カルボニル基(−CO−)又は単結合を表す。
【0011】
Zはなし(すなわち、左右の二つのベンゼン環はA同士だけを通じて連結している)、単結合又はC
1−C
5のアルキレン基である。
【0012】
AはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。
【0013】
R
1は水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、又はハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される一つ又は複数の基で置換されてもよいC
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。
【0014】
R
2、R
3は互いに独立に、水素、C
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、又はC
7−C
20のアリールアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0015】
R
4はC
1−C
20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
20のヘテロアリール基、又はC
6−C
20のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、フェニル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0016】
本発明の好ましい態様として、上記の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤において、Zはなし、単結合、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。
【0017】
AはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
15のシクロアルキル基、又はC
4−C
15のシクロアルキルアルキル基を表す。
【0018】
R
1は水素、ハロゲン、ニトロ基、C
1−C
15の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表す。
【0019】
R
2、R
3は互いに独立に、水素、C
1−C
15の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
15のシクロアルキル基、C
4−C
15のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
15のアルキルシクロアルキル基、又はC
7−C
15のアリールアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0020】
R
4はC
1−C
10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、C
3−C
10のシクロアルキル基、C
4−C
10のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
10のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
10ヘテロアリール基、又はC
6−C
10アリール基を表す。
【0021】
本発明の好ましい態様として、上記のニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤は下記の構造から選ばれる。
【化2】
【0022】
本発明は、上記の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤の合成製造方法にも関する。ニトロ基ビスオキシム基構造を含む化合物を、対応する酸無水物又はアシルハライド化合物とエステル化反応を行い、目的生成物を得る。具体的な反応は以下の通りである。
【化3】
【0023】
式中、Bはハロゲン、例えばF、Cl、Br又はIを表す。
【0024】
上記の合成製造方法では、反応原料はいずれも既存技術における既知の化合物であり、購入可能又は既知の合成方法により調製される。但し、ニトロ基ビスオキシム基構造を含む化合物
【化4】
は、例えば特許文献4,5に開示された既知技術により合成できる。本発明に開示の合成製造方法はプロセスが簡単であり、汚染性廃棄物を生じることなく、且つ製品純度が高く、工業化生産に適している。
【0025】
本発明はさらに上記の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤の光硬化組成物(即ち、感光性組成物)への応用に関する。非限定的に、当該光重合開始剤はカラーレジスト(RGB)、黒色レジスト剤(BM)、空間障害物(Photo−spacer)、ドライフィルム、半導体フォトレジスト及びインクなどの面に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明の保護範囲に対する制限と解釈すべきではない。
【0029】
1−ニトロ−3−(1−オキシムアセテート)プロピル−6−(1−オキシムアセテート−3−シクロヘキシル)プロピル−9−エチル−カルバゾールの合成
【化5】
【0030】
250ml四つ口フラスコに、1−ニトロ−3−(1−ケトオキシム)プロピル−6−(1−ケトオキシム−3−シクロヘキシル)プロピル−9−エチル−カルバゾール23.2g、100gジクロロメタン及び5.1gトリエチルアミンを仕込み、室温で5min攪拌し、その後、無水酢酸11.3gを約30minかけて滴下し、引き続き室温で2h攪拌する。その後、5% NaHCO
3水溶液を加えてpH値を中性まで調整し、分液ろうとで有機層を抽出し、さらに200mL水で2回洗浄し、50g無水MgSO
4で乾燥し、溶媒を回転蒸発させ、粘稠状液体が得られる。メタノールで再結晶させて白い固体粉末が得られ、濾過し、製品24.7gが得られ、収率90%、純度99%である。
【0031】
生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0032】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):0.9015−1.0102(3H、t)、1.3918−1.4714 (13H、m)、1.5073−1.5932(3H,t)、2.1022(6H,s)、2.5468−2.7029(4H,m)、3.8210−3.9421(2H,m)、7.0301−7.8127(3H,m)、8.4301−8.6127(2H,s)。
【0034】
1,8−ジニトロ−3−(1,2−ジケトン−2−オキシム−O−ベンゾエート−3−シクロブチル)プロピル−6−(1,2−ジケトン−2−オキシム−O−ベンゾエート)プロピル−9−エチル−カルバゾールの合成
【化6】
【0035】
250ml四つ口フラスコに、1,8−ジニトロ−3−(1,2−ジケトン−2−オキシム−3−シクロブチル)プロピル−6−(1,2−ジケトン−2−オキシム)プロピル−9−エチル−カルバゾール24.8g、100gジクロロメタン及び5.1gトリエチルアミンを仕込み、室温で5min攪拌し、その後、塩化ベンゾイル14.3gを約30minかけて滴下し、引き続き室温で2h攪拌する。その後、5% NaHCO
3水溶液を加えてpH値を中性まで調整し、分液ろうとで有機層を抽出し、さらに200mL水で2回洗浄し、50g無水MgSO
4で乾燥し、溶媒を回転蒸発し、粘稠状液体が得られる。メタノールで再結晶させて白い固体粉末が得られ、濾過して生成物20.9gが得られ、収率87%、純度99%である。
【0036】
生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0037】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):1.4908−1.5193(3H,t)、1.9037−2.1823(7H,m)、2.5099−2.7629(5H,m)、3.90732−4.0231(2H,m)、7.4309−7.7098(6H,t)、8.1067−8.2319(4H,d)、8.3980−8.6678(4H,s)。
【0039】
実施例1又は2の方法を参照し、ニトロ基ビスオキシム基構造を含む化合物
【化7】
及び対応するアシルハライド化合物又は酸無水物から実施例3−15に示される化合物3−15を調製する。
【0040】
目的生成物の構造及びその
1H−NMRデータは表1に示される。
【0043】
例示された光硬化組成物を調製することで、本発明の式(I)で表される光重合開始剤の、貯蔵安定性、感光度、現像性、とパターン完全性などの点を含む各応用性能を評価する。
【0045】
(1)着色されていない光硬化組成物A
【0046】
アクリレートコポリマー 100
(ベンジルメタクリル酸/メタクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル(モル比70/10/20)コポリマー(Mw:10,000))
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA) 100
光重合開始剤 2
ブタノン(溶媒) 25
【0048】
アクリレートコポリマー 100
(ベンジルメタクリル酸/メタクリル酸/メチルメタクリル酸(モル比50/15/30)コポリマー(Mw:15,000))
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100
光重合開始剤 2
ブタノン(溶媒) 25
染料ブルー15 5
【0049】
上記の組成物AとBにおいて、光重合開始剤は本発明の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系化合物又はコントラストとしての既存技術で既知の光重合開始剤であり、各成分はいずれも質量部である。
【0051】
(1)水銀ランプ光源において塗膜した後の露光現像
【0052】
上記の光硬化組成物AとBをそれぞれ遮光の状態で攪拌し、PETテンプレート上にサンプリングしてワイヤバーにより塗膜し、90℃で5min乾燥して溶媒を除去し、膜厚さが約2μmの塗膜を形成する。塗膜が形成されている基板を室温まで冷却し、マスク板を敷き、高圧水銀ランプ1PCS光源で、FWHMフィルタにより長波長輻射を実現する。マスク板の隙間により370〜420nm波長の紫外線で塗膜を露光し、そして25℃で2.5%の炭酸ナトリウム溶液中に20s浸漬して現像し、さらに超純水で洗浄し、風乾させ、220℃で30minハードベークして図形を定着させ、得られた図形を評価する。
【0053】
(2)UV−LED光源において塗膜した後の露光現像
【0054】
上記の光硬化組成物AとBをそれぞれ遮光の状態で攪拌し、PETテンプレート上にサンプリングしてワイヤバーにより塗膜し、90℃で5min乾燥して溶媒を除去し、膜厚さが約2μmの塗膜を形成する。塗膜が形成されている基板を室温まで冷却し、マスク板を敷き、LED点光源で照射し(深せん市藍譜里克科技有限公司 仕様:UVEL−ET)、マスク板の隙間により395nm波長で塗膜を露光し、そして25℃で2.5%の炭酸ナトリウム溶液中に20s浸漬して現像し、さらに超純水で洗浄し、風乾させ、220℃で30minハードベークして図形を定着させ、得られた図形を評価する。
【0057】
液状の光硬化組成物を室温で自然に一ヶ月貯蔵した後、以下の基準で目視にて物質の沈殿程度を評価する:
A:沈殿が観察されない;
B:やや沈殿が観察される;
C:明らかに沈殿が観察される。
【0059】
露光する時、露光ステップにおいて光輻射領域が現像後の残膜率が90%又はそれ以上である最小露光量を露光需要量として評価する。露光需要量が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0061】
走査型電子顕微鏡(SEM)で基板パターンを観察し、現像性とパターン完全性を評価する。
【0062】
現像性を以下の基準により評価する。
○:露光されない部分に残存物が観察されていない;
◎:露光されない部分に少量の残存物が観察されるが、残存物は許容できる;
●:露光されない部分に明らかな残存物が観察される。
【0063】
パターン完全性を以下の基準により評価する。
◇:パターン欠陥が観察されていない;
□:一部のパターンに若干欠陥が観察される;
◆:明らかに多くのパターン欠陥が観察される。
【0064】
評価結果は表2−5に示される通りである。
【0069】
表2−5において、比較化合物1は特許文献6に開示された光重合開始剤1−{4−[4−(2−チオフェンアルデヒド)フェニルチオ]フェニル}−(3−シクロペンチル)−プロパン−1−ケトオキシム−O−アセテートを表し、比較化合物2は特許文献7に開示された光重合開始剤1−[6−(2−チオフェンアルデヒド)−9−エチルカルバゾール−3−イル] −3−シクロペンチル−プロパン−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−アセテートを表し、比較化合物3は特許文献2に開示された光重合開始剤1−(6−オルトメチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール−3−イル)−(3−シクロペンチルプロパノン)−1−オキシム−アセテートを表し、比較化合物4は特許文献8に開示された光重合開始剤1−(4−フェニルチオ−フェニル)−オクタン−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−ベンゾエートを表し、比較化合物5は特許文献1に開示された光重合開始剤1−(6−オルトメチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール−3−イル)−(3−エチルケトン)−1−オキシムアセテートを表し、比較化合物6は汎用な光重合開始剤2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−ケトン(俗称Irgacure907)を表す。
【0070】
表2−5の結果からわかるように、本発明の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤を含む光硬化組成物は良好な貯蔵安定性を有し、且つ通常な高圧水銀ランプ光源条件においても、UV−LED光源条件においても、これらの光硬化組成物(無色系と顔料系)はいずれも極めて良好な感光度、現像性及びパターン完全性を示し、応用効果に優れている。コントラストとしての6種の既存の光重合開始剤は明らかな不足が存在し、水銀ランプ励起条件においてメリットがないだけではなく、ほぼUV−LED光源に対応できず、重合を引き起こせない又は重合を引き起こす効率が非常に低い。本発明の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤は単波長のUV−LED照射で既存の光重合開始剤よりも著しく優れた感光性能を有する。
【0071】
上述した通り、本発明に開示の一般式(I)で表されるニトロ基含有ビスオキシムエステル系光重合開始剤は応用性能に優れ、UV−LED光源と良好な適合性を有し、光硬化製品の性能を極めて大きく向上できるだけではなく、UV−LED光源の光硬化分野への普及応用にも良好な推進作用を有する。
【国際調査報告】