(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-508829(P2017-508829A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】乾燥合成冷却潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 105/38 20060101AFI20170310BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20170310BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20170310BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20170310BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20170310BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20170310BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20170310BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20170310BHJP
【FI】
C10M105/38
C10M107/34
C09K5/04 F
C09K5/04 C
C09K5/04 A
F25B1/00 396Z
F25B1/00 396D
F25B1/00 396A
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N30:00 Z
C10N40:30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-546956(P2016-546956)
(86)(22)【出願日】2015年1月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015011608
(87)【国際公開番号】WO2015109095
(87)【国際公開日】20150723
(31)【優先権主張番号】61/928,331
(32)【優先日】2014年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508029859
【氏名又は名称】シュリーブ ケミカル プロダクツ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100157934
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 隼明
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン エリザベス
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CB14A
4H104EA02A
4H104EA13A
4H104EA22A
4H104LA20
4H104PA20
(57)【要約】
開示は、圧縮式冷却、空調又はヒートポンプシステムに使用される作動流体であって、フルオロオレフィンを含む冷媒と、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの混合物を含む潤滑剤とを含有し、該ポリオールエステルが、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの合計重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在している作動流体に、関連している。新規な潤滑剤も又、記載され、クレームされている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮式冷却、空調又はヒートポンプシステムに使用される作動流体であって、(A)フルオロオレフィンを含む冷媒、及び(B)ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの混合物を含む潤滑剤を含有し、該ポリオールエステルが、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの合計重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在している作動流体。
【請求項2】
ポリオールエステルがその潤滑剤のメジャー成分であり、ポリアルキレングリコールがその潤滑剤のマイナー成分である請求項1に記載の作動流体。
【請求項3】
ポリオールエステルが、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの全重量に基づいて、少なくとも65重量%の量で存在している請求項2に記載の作動流体。
【請求項4】
ポリオキシアルキレングリコールが、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの全重量に基づいて、少なくとも10重量%の量で存在している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項5】
ポリオールエステルが、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの全重量に基づいて、70〜80重量%の量で存在している請求項1に記載の作動流体。
【請求項6】
ポリオールエステルが、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール又はこれらの二量体及び三量体から選ばれる一種以上の多価アルコールと、炭素数がC5〜C15の一種以上の一塩基酸との反応によって製造される前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項7】
ポリオキシアルキレングリコールが、一般式:
RX(RaO)yRb
を有する前記のいずれかの請求項に記載の作動流体、
ここで:
Rは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は酸素又は硫黄であり;
X=O;
Raは、C2及び/又はC3のアルキレン基であり、
Rbは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は酸素又は硫黄であり;
そして、更に、R又はRbは、水素であってもよいが、両者が水素でなくてもよく;及び
y=5〜100。
【請求項8】
ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、0.05mgKOH/g未満の酸価を有している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項9】
ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、40℃で、22〜170cSt及び32〜150cStの動粘度を有している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項10】
ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、95及び160より大きい粘度指数を有している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項11】
ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、1×1010Ωcm及び1×107Ωcmより大きい体積抵抗率を有している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項12】
ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールに加えて、その潤滑剤が、極圧添加剤、耐磨耗添加剤、抗酸化剤、抗腐食剤、金属不動態化剤、消泡剤及び酸性度調節剤から選ばれる一種以上の添加剤をも含有している前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項13】
フルオロオレフィンが、ハイドロフルオロオレフィンである前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項14】
冷媒が、フルオロオレフィンに加えて、ハイドロフルオロカーボン類、二酸化炭素、ヨードトリフルオロメタン、パーフルオロケトン類、ハイドロフルオロケトン類、ハイドロクロロフルオロケトン類、及びハイドロクロロフルオロオレフィン類から選ばれる一種以上の追加冷媒を含んでいる前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項15】
冷媒が、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィン及びトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィンの少なくとも一種を、任意にハイドロフルオロカーボン冷媒と共に、含んでいる前記のいずれかの請求項に記載の作動流体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの請求項に記載の作動流体を含むコンプレッサを含有する、圧縮冷却、空調又はヒートポンプシステム。
【請求項17】
圧縮冷却、空調又はヒートポンプシステムにおいて用いる潤滑剤であって、該潤滑剤が請求項1〜13のいずれかの請求項に定義されたものであり、且つポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの全重量に基づいて、少なくとも10重量%のポリオキシアルキレングリコールを含有している潤滑剤。
【請求項18】
フルオロオレフィンを含有する冷媒と共に、圧縮冷却、空調又はヒートポンプシステムにおいて用いる、請求項17に記載の潤滑剤。
【請求項19】
圧縮冷却、空調又はヒートポンプシステム用の潤滑剤において、乾燥剤として用いるポリオキシアルキレングリコールであって、該潤滑剤が請求項1〜13のいずれかの請求項に定義されたものである。
【請求項20】
圧縮冷却、空調又はヒートポンプシステム用の作動流体において、乾燥剤として用いるポリオキシアルキレングリコールであって、該作動流体が請求項1〜15のいずれかの請求項に定義されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本願は、2014年1月16日に出願された、ディクソン(Dixon)の米国仮出願No. 61/928,331「冷却システムに基づくハイドロフルオロオレフィン冷媒のための新規な乾燥合成冷却オイル組成物」の優先権を主張し、その全体をここに包含している。
【0002】
本願の開示は、圧縮式冷却及び類似システム、特に、冷媒がフルオロオレフィン殊にハイドロフルオロオレフィン(HFO)である冷却及び類似システムのための新規な作動流体(working fluid)に、関連している。開示は、又そのようなシステムで用いる新規な潤滑剤、及びそのようなシステムの潤滑方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
当該開示は、冷却システムのコンプレッサのための新規潤滑油に関連している。代表的には、圧縮式冷却回路は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張デバイス及び蒸発器を含んでいる。冷媒及びコンプレッサの潤滑剤は、最も典型的には、そのシステムを通して、相分離することなく、循環すべきである。相分離は、潜在的にコンプレッサの潤滑性不足及び熱交換効率の低減などを招き得る。冷却システムのための潤滑油は、最も優先的には、高い粘性率をも示すので、粘性保持及びそれによるシステムの温度範囲を通しての適当な潤滑を、保証する。圧力、粘度及び温度の適切なダイナミックス(dynamics)が、必要とされる。更に、操作温度範囲を通して、冷媒及びシステムの成分との接触において、化学的、熱的及び加水分解的に、潤滑剤組成物の適切なレベルの安定性が必要とされる。最も一般的には、膨張デバイスの潜在的な氷による閉塞(ice blockage)や過剰な水分の存在下での酸性種(acidic species)の形成に起因する潜在的成分腐食による化学的不安定性を制限するために、低いレベルの吸湿性も又潤滑剤の要件であると考えられている。
【0004】
部分的に又は全体的に、フルオロオレフィン(「フルオロアルケン」)で構成される冷媒、特にハイドロフルオロオレフィン系冷媒は、自動車や据え付け用空調及び冷却システムにおいて使用するための環境によりやさしい冷媒として、活発な開発下にある。このタイプの冷媒の新しさは、このタイプの冷媒に特異的な特性を与える冷却圧縮潤滑剤を必要とし、かかる特性は、適切な冷媒適合性、及び従来のハイドロフルオロカーボン冷媒に比して、ハイドロフルオロオレフィン冷媒の潜在的反応性によって高められたレベルの化学的、熱的及び加水分解的な安定性を、特に包含している。自動車業界が、車の燃費節約の実現のために、ハイブリッド及び電気の空調コンプレッサの使用に焦点を増加させていることに伴って、ベルトドライブコンプレッサのために定義された潤滑工学は、電気的ドライブコンプレッサでの使用に同様に適用できるべきであり、そこでは潤滑剤の電気的特性も又規格化(specification)を要する。新たなハイドロフルオロオレフィン冷媒と共に用いるのに適すると考えられる潤滑剤組成物は、より高い極性故に冷媒とのより大きな混和性を有するものを包含している。例えば、ポリオールエステル類(POE類)及びポリアルキレングリコール類(ここでは、ポリオキシアルキレングリコール類としても知られている、PAG類)である。一方、より低い極性の潤滑剤タイプ例えばミネラルオイル及びアルキルベンゼン類は、必要な極性を欠くのでハイドロフルオロオレフィン類との不混和性を示す。
【0005】
ハニーウェル(Honeywell)のUS 2007/0069175は、PAG及びPOEタイプの有機潤滑剤を含む様々な潤滑剤と様々なフルオロアルケン冷媒との混合物を開示している。この文献は、様々な潤滑剤タイプを開示しているが、一つの潤滑剤タイプ又はその種類の特定の適合性を、他のものと比べて、論証してはいない。我々のUS 2010/0205980は、特定構造のPAG類がフルオロオレフィン冷媒と共に使用するための特に効果的な潤滑剤ベース流体(basefluids)であることを、開示している。
【0006】
冷却産業界には、混合又はハイブリッド潤滑剤の使用に対する強い反感がある。異なる潤滑剤ベース流体の混合物の使用は、いくつかのケースにおいて、深刻な不利益に導き得る。そして、潤滑剤として、単一のベース流体を使用する実施が大半である。冷却装備の製造業者は、その設備のメンテナンスの間、もともと用いられているベース流体と異なるベース流体が用いられることで損害が起きることを恐れて、正しいベース流体の使用を確実にするために最善を尽くす。
【0007】
US 2011/0190184は、ワイスラー(Weissler)によるMACS Service Report, March 2008, p.1-8の記述:“デンソー(Denso)は、電気モータードライブ圧縮システムにおける1%PAGオイル類(例えばそのND8)は、POEであるそのND11オイル100%使用により供給される10メガオーム以上より十分低い、約1メガオームまで、抵抗を低下させることを、示した。”を参照している。また、ワイスラーのレポートには次の記述がある。:“リカバリー/リサイクル/再充電の設備のための現在の標準であるSAE J2788が記載されたとき、我々は、いくつかのハイブリッド電気モーターコンプレッサにおけるオイルの相互汚染(cross-contamination)の発生を認めた。POEオイル中へのPAGの入り込みを最小化することは明らかに重要であり、そしてこれがSAE J2788が1%を限度に設定した理由であり、8%まで耐えられるだろうというかつての評価より十分に低い。両数値は的外れであったことがわかった。新たな厳しい試験に従い、その限度は、安全のための十分な余裕を残して、わずか0.1%(POEオイル中のPAG100万部中100部)迄下げられるようである。”これは、冷却システムのためのベース流体として、PAG及びPOEの混合物の使用に対する当業界の先入観を象徴している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 2007/0069175
【特許文献2】US 2010/0205980
【特許文献3】US 2011/0190184
【発明の概要】
【0009】
驚いたことに、我々は、ここに、POE/PAGの特定組成の混合物を、フルオロオレフィン冷媒、特にHFO冷媒と共に使用すると、予見できないであろう驚くべき効果を示すことを、見出した。特に、POEベース流体への少量のPAGの付加が、吸湿又は乾燥効果を有しており、それは、今度は、かかる冷媒と共に使用するときに、POEベース流体に酸性度調節剤を添加する必要性を減少させ又は除去する。このことから、かかる混合物は、かかる冷媒と共に使用するのに、特に好適である。
【0010】
開示の概要
代表的な実施態様は、圧縮式冷却、空調又はヒートポンプシステムに使用される作動流体であって、(A)フルオロオレフィンを含む冷媒、及び(B)ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの混合物を含む潤滑剤を含有し、該ポリオールエステルが、該ポリオールエステル及び該ポリオキシアルキレングリコールの合計重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在している作動流体を、開示する。
【0011】
ある実施態様は、上記開示の作動流体を含んでいるコンプレッサを含有する、圧縮式冷却、空調又はヒートポンプシステムを、更に提供する。
【0012】
圧縮式冷却、空調又はヒートポンプシステム、特に冷媒がフルオロオレフィンを含むそれらのシステムで使用される潤滑剤であって、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの合計重量に基づいて、少なくとも10重量%のポリオキシアルキレングリコールを含有する潤滑剤は、新規であり、本開示の一部を形成する。
【0013】
ここに開示されるように、ある代表的実施態様は、圧縮式冷却、空調、又はヒートポンプシステムのための潤滑剤中の乾燥剤として用いられるポリオキシアルキレングリコールをも、提供する。ある代表的実施態様は、本開示による作動流体中の乾燥剤として用いられるポリオキシアルキレングリコールをも、更に提供する。
【0014】
開示された代表的実施態様の詳細な説明
本開示は、冷却システムのコンプレッサのための新規な合成潤滑油に関連している。最も詳細には、開示は、ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールを主成分として含有する冷却機のための潤滑油に関連しており、両成分はハイドロフルオロカーボンタイプの冷媒化合物例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(以下、“R134a”という)との好ましい適合性を有しており、より詳細には、ハイドロフルオロオレフィンタイプの冷媒化合物例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(以下、“HFO 1234yf”という)又はトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(以下、“HFO−1234zeE”という)、及びハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロカーボン冷媒を含有する混合物との好ましい適合性を有しており、この混合物は、付加的に、二酸化炭素、長さC
3〜C
6の飽和又は不飽和炭化水素、ヨードトリフルオロメタン(CF
3I)、パーフルオロケトン類、ハイドロフルオロケトン類、ハイドロクロロフルオロケトン類、又はハイドロクロロフルオロオレフィン類を、含んでいても又は含んでいなくてもよい。
【0015】
ある代表的実施態様において用いる冷媒は、フルオロオレフィン(代替的にフルオロアルケンと言ってもよい)を含有する。好ましくは、フルオロオレフィンは、2〜4個の炭素原子及び少なくとも1個だが2個を超えない二重結合を、含む。フルオロオレフィンは、好ましくはハイドロフルオロオレフィンであり、好ましくは2〜4個の炭素原子及び少なくとも1個だが2個を超えない二重結合を含み、特にHFO 1234yf又はHFO 1234zeEである。別段の解釈を要する場合を除いて、ここでのフルオロオレフィンへの言及は、HFOに対する及びそれら二種類の特定の冷媒のそれぞれに対する特別な言及を含むように、解釈すべきである。冷媒は、単一のフルオロオレフィン又は2種以上のフルオロオレフィンの混合物からなっていてよく、又は、一種以上のフルオロオレフィンと、一種以上の他の種類の冷媒、例えば一種以上の前記したものと混合して含んでいてもよい。一つの代表的実施態様では、冷媒は、フルオロオレフィン、特にハイドロフルオロオレフィン、特にHFO 1234yf又はHFO 1234zeEであり、一種のみであっても、ハイドロフルオロカーボン冷媒、特にR134aと混合してあってもよい。
【0016】
新規な合成潤滑剤組成物は、全体的に又は部分的にハイドロフルオロオレフィンを含有する冷媒と共に使用するための優先的特性を示し、それは、化学的/熱的/加水分解的安定性及び粘度的特性に関して、従来のハイドロフルオロカーボンに基づくシステム(それは、全体として、ポリオールエステル類又はポリアルキレングリコール類と任意に低いレベルの添加剤に基づいている)のための冷却潤滑剤に比べて、更に最適化されている。
【0017】
好ましくはそのメジャー成分として少なくとも50%のポリオールエステルを、及び好ましくはそのマイナー成分として50%以下の量のポリオキシアルキレングリコールを、主ベースオイル成分として含む、圧縮タイプの冷却機のための潤滑油が、開示される。特に、ベースオイル成分は、少なくとも55%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも45%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、より好ましくは少なくとも65%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも35%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、及び最も好ましくは70%から80%(重量基準)のポリオールエステル及び20%から30%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、含有している。我々は、特定の組み合わせのベース流体は、予期できない乾燥という利点をもたらし、結果的にシステムの安定性を上昇させることを示したが、このようなことは個々のベース流体成分の特性の考察からは、予見できないだろう。更に、我々は、ベースオイル成分のかかる特定の組み合わせは、予期できず且つ有益な潤滑油の粘度効果をも与えることを、証明している。
【0018】
別段の記述なき場合又は別段の解釈を要しない場合、本明細書及び請求の範囲を通じて、POE及びPAGの全ての割合は、POE及びPAGの合計重量に基づいた重量による。
【0019】
一つの好ましい実施態様において、PAGは、少なくとも10重量%の量で存在している。それは、例えば少なくとも15重量%の量で存在し、例えば少なくとも16.7重量%の量で存在している(ここでの実施例2に説明されるように)。従って、一つの実施態様では、POE:PAG混合物中のPAGの重量%は、10〜50%であり、例えば15〜50%であり、例えば16.7〜50%であり、例えば20〜50%であり、例えば35〜50%であり、例えば45〜50%である。一般的には、PAGは、POEに比して、少ない量で存在するのが好ましく、その場合において、それは例えば10〜45%であり、例えば15〜45%であり、例えば16.7〜45%であり、例えば20〜45%であり、例えば35〜45%の量である。特に、POE:PAG重量比としては、例えば、90:10、83.3:16.7、80:20、70:30、65:35、55:45及び50:50が包含される。POE:PAG混合物の特に好ましいものは、POE:PAG重量比が70:30乃至80:20の範囲内のものである。
【0020】
ある代表的な実施態様は、ベース流体が水分と反応するのを防ぐ乾燥効果をもたらす特定のベース流体の組み合わせによって、非常に好ましい熱的/化学的/加水分解的安定性をハイドロフルオロオレフィンタイプの冷媒にもたらし、よってシステム内に存在する自由水分による酸性種の形成を防ぐ冷却コンプレッサ用の潤滑油を提供する。ある代表的な態様は、HFOタイプの冷媒に好ましい安定性を供給するのみでなく、好ましい潤滑特性をも供給する。その潤滑特性は、個々の成分に基づいて合理的に予期される特性とは相反しており、冷媒希釈下での改良された粘度保持性及びコンプレッサベアリング操作温度下での予期できない粘度保持性を、与える。本願の開示は、HFO冷却及び空調システムにおいて用いるのに望ましい特性の最適化されたバランスを提供するように設計された、ベース流体タイプと任意の添加物成分との好ましい組み合わせを、提供するものである。
【0021】
ある代表的な実施態様は、二種のベース流体タイプを含む潤滑油を特定する:一般的には、メジャーベースオイル成分がポリオールエステルであり、そしてそのマイナー成分がポリオキシアルキレングリコールである。特に、ベースオイルは、少なくとも55%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも45%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、より好ましくは少なくとも65%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも35%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、及び最も好ましくは70%から80%(重量基準)のポリオールエステル及び20%から30%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、含有している。
【0022】
ベース流体I:主成分として、好ましくは、少なくとも一種のポリオールエステル、特に多価アルコールと一塩基カルボン酸との反応によって製造されるものを、含有する。最も好ましいポリオールエステルは、ネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)及びペンタエリスリトール(PE)又はこれらの二量体及び三量体から選ばれる多価アルコールの一種以上と、炭素数がC
5〜C
15、特にC
5〜C
13、及び最も好ましくはC
5〜C
9の直鎖状及び/又は分枝状の酸の一種以上との反応によって製造される。
【0023】
ベース流体のポリオールエステル成分は、一種のPOEを又は異なるPOEの混合物を含んでいてもよい。
【0024】
好ましいポリオールエステルは、0.05mgKOH/g未満の酸価を有している。
【0025】
好ましいポリオールエステルは、40℃で、22〜170cSt、より好ましくは46〜100cSt、及び最も好ましくは60〜90cStの粘度を有している。
【0026】
好ましいポリオールエステルは、95より大きい粘度指数を有している。
【0027】
好ましいポリオールエステルは、50℃より低い温度で、冷媒中0.01〜100.0重量%の潤滑剤濃度範囲に渡って、HFO冷媒特にHFO 1234yf/zeとの十分な混和性を示す。
【0028】
好ましいポリオールエステルは、1×10
10Ωcmよりも大きい体積抵抗率を有している。
【0029】
ベース流体II:好ましくは、マイナー成分として、少なくとも一種のポリオキシアルキレングリコール、特に下記一般式で表されるPAG誘導体を含有している:
RX(R
aO)
yR
b
ここで:
Rは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は好ましくは酸素であるが硫黄であってもよい;
X=O
R
aは、C
2及び/又はC
3のアルキレン基であり、
R
bは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は好ましくは酸素であるが硫黄であってもよい、
RとR
bは、同一であっても異なっていてもよい、
R又はR
bは、又水素であってもよいが、両者が水素でなくてもよい。
y=5〜100。
R
aは、C
2のアルキレン基であっても、C
3のアルキレン基であっても、C
2及びC
3のアルキレン基の混合物であってもよい。好ましくは、R
aは、C
3のアルキレン基である。好ましくは、RとR
bの両者は、水素以外である。好ましくは、RとR
bの少なくとも一方特に両者は、1〜10個特に1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である。RとR
bの両者がそのような基であるときは、これらは同一であっても異なっていてもよいが、それらは好ましくは同一である。特に好ましい実施態様において、RはC
1又はC
4のアルキル基であり、そしてR
bは、C
1又はC
4のアルキル基又は水素原子、特にC
1又はC
4のアルキル基である。
【0030】
ベース流体のポリオキシアルキレングリコール成分は、一種のPAGを又は異なるPAGの混合物を含んでいてもよい。
【0031】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、0.05mgKOH/g未満の酸価を有している。
【0032】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、160より大きい粘度指数を有している。
【0033】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、40℃で、32〜150cSt、より好ましくは32〜100cSt、及び最も好ましくは46〜80cStの粘度を有している。
【0034】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、10℃より低い温度で、冷媒中0.01〜100.0重量%の潤滑剤濃度範囲に渡って、HFO冷媒特にHFO 1234yfとの十分な混和性を示す。
【0035】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、1×10
7Ωcmよりも大きい体積抵抗率を有している。
【0036】
ここに述べるある代表的実施態様の組成物では、好適には、ポリオレフィンエステル及びポリアルキレングリコールが唯一の潤滑油として存在している。しかしながら、潤滑剤組成物は、公知の機能の一つ以上の添加剤を、例えば、0.001%〜25.0%(POEとPAGの合計重量に基づく重量%)の範囲のレベルで、より好ましくは0.01〜15.0%(重量%)の範囲で、及び最も好ましくは0.05〜5.0%(重量%)の範囲で、含んでいてもよい。適切な添加剤としては、極圧添加剤、耐磨耗添加剤、抗酸化剤、及び抗腐食剤を包含する。他の添加剤として、任意に、金属不動態化剤、消泡剤及び酸性度調節剤等を含む。好ましくは、耐磨耗又は極圧添加剤、抗酸化剤、抗腐食剤及び酸捕捉剤から選ばれた少なくとも一種の添加剤を含んでいる。例えば、潤滑剤は、3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C
7−C
9分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応物からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗酸化剤;N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物からなる群からなる群から選ばれる少なくとも一種の腐食防止剤;C
11−C
14分岐アルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも一種の極圧又は耐磨耗添加剤;及び/又はエポキシ官能基を有する酸捕捉剤を、含有している。
【0037】
抗酸化剤は、もし存在するならば、POEとPAGの合計重量に基づく重量%で、4%までの量、例えば0.1〜2%、例えば0.2〜0.8%、存在しているのが好ましい。腐食防止剤は、もし存在するならば、POEとPAGの合計重量に基づく重量%で、1%までの量、例えば0.01〜0.5%、例えば0.05〜0.15%、存在しているのが好ましい。極圧又は耐磨耗添加剤は、もし存在するならば、POEとPAGの合計重量に基づく重量%で、1%までの量、例えば0.01〜0.5%、例えば0.05〜0.15%、存在しているのが好ましい。
【0038】
ベース流体がPOEのみである潤滑剤の使用に比べて、酸捕捉剤の必要性を減少又は除去するために有利である。ここに開示されたある実施態様の潤滑剤は、好ましくは、酸捕捉剤を、10重量%未満、特に5重量%未満含んでいる。好ましくは、その組成物は、酸捕捉剤を含んでいない。
【0039】
好ましいポリオキシアルキレングリコールは、カチオン含有量が30ppm未満、例えば20ppm未満、特に10ppm未満であるように精製されている。
【0040】
ベース流体は、水分含量を減少させるために、向上した乾燥技術を用いて、好適に乾燥される。それは、例えば、含水量300ppm未満まで、例えば200ppm未満、又例えば100ppm未満まで、乾燥することができる。
【0041】
ここで挙げられた全てのパラメータは、工業的標準試験を用いて、測定することができる。例えば、全酸価(mgKOH/g)は、ASTM 方法D974を用いて測定された。水分含量(ppm)は、ASTM 方法E203を用いて測定された。粘度は、ASTM 方法D445を用いて測定された。粘度指数は、ASTM 方法D2270を用いて測定された。体積抵抗率は、IEC247を用いて測定された。
【0042】
潤滑剤は、冷却、空調又はヒートポンプシステム中に、効果的な潤滑性を供給するのに十分な量で、存在している。この量は、冷媒重量に基づいて、例えば50重量%まで、例えば25重量%まで、好ましくは10重量%までであることができる。潤滑剤組成物は、冷媒、特にHFO冷媒、及び特にHFO 1234yf及びHFO 1234zeEと共に、−60℃〜+10℃の温度範囲内で、単一の液相を好適に維持することができる。
【0043】
ここに開示された代表的実施態様は、あらゆる冷却、空調又はヒートポンプシステムにおいて、特に高純度のベース流体が必要とされるモーター統合コンプレッサ、例えば自動車用又は電動コンプレッサにおいて、有用性がある。何故なら、そのベース流体には、モーター回転と直接的に接触するときに、良い電気的特性が要求されるからである。
【0044】
本開示による、いくつかの特定の潤滑剤組成物は、以下のものを包含する:
1)多価アルコールと炭素数がC
5〜C
15の範囲内の直鎖状/分枝状の酸との反応によって製造されるポリオールエステルであるPOEと;式 RX(R
aO)
yR
bのPAGとの50:50、75:25又は80:20混合物
ここで:
Rは、5個未満の炭素原子を含む単なるアルキル基であり、
X=O
R
aは、C
3のアルキレン基であり、
R
bは、水素である。
Yは、5〜100の範囲内の整数であり、40℃で60.0cStの粘度を与える。
2)C
8及びC
9の分枝状の一塩基酸を利用したペンタエリスリトールに基づくPOEと;上記(1)で定義されたPAGとの80:20混合物。
3)上記(1)で定義されたPOE80重量%と上記で定義されたPAG5重量%及び式 RX(R
aO)
yR
bのPAGを含むPAG組成物15重量%との混合物
ここで:
Rは、メチル基であり、
X=O
R
aは、C
3のアルキレン基であり、
R
bは、メチル基であり、
Yは、5〜100の範囲内の整数であり、40℃で46.0cStの粘度を与え;そして合計22.1重量%の添加剤を含み、その9.0重量%を超えるのが酸性度調節剤である。
【0045】
これらの特定の組成物は、それぞれ、適当な冷媒、特にHFO冷媒、好ましくはHFO 1234yfと混合でき、本開示の作動流体を形成する。
【0046】
いくつかの側面及び代表的実施態様を、以下の条項に、リストする。
1.冷却/空調システムにおいて、フルオロアルケン冷媒と関連して用いられる潤滑剤ベース流体であって、該潤滑剤は、主ベースオイル成分として、そのメジャー成分としてのポリオールエステル及びそのマイナー成分としてのポリオキシアルキレングリコールを含有する。特に、ベースオイル成分は、少なくとも55%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも45%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコール、より好ましくは少なくとも65%(重量基準)のポリオールエステル及び多くとも35%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、及び最も好ましくは70%から80%(重量基準)のポリオールエステル及び20%から30%(重量基準)のポリオキシアルキレングリコールを、含有している。最も特別には、ポリオキシアルキレングリコール成分は、メジャーPOE成分から侵入した水分を完全に乾燥させるのに十分な濃度で、存在している。
2.主成分が、多価アルコールと一塩基酸との反応によって製造される少なくとも一種のポリオールエステルを含有する条項1の組成物。より具体的には、ネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)及びペンタエリスリトール(PE)又はこれらの二量体及び三量体から選ばれる一種以上の多価アルコールと、炭素数がC
5〜C
15、特にC
5〜C
13、及び最も好ましくはC
5〜C
9の直鎖状及び/又は分枝状の一種以上の酸との反応によって製造される少なくとも一種のポリオールエステルを含有する。
3.マイナー成分が、下記一般式で表されるポリオキシアルキレングリコール誘導体の少なくとも一種を含有する条項1の組成物:
RX(R
aO)
yR
b
ここで:
Rは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は好ましくは酸素であるが硫黄であってもよい;
X=O
R
aは、C
2及び/又はC
3のアルキレン基であり、
R
bは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアシル基又は炭素原子3〜12個の複素環置換基であり、そのヘテロ原子は好ましくは酸素であるが硫黄であってもよい。
RとR
bは、同一であっても異なっていてもよい。
R又はR
bは、又水素であってもよいが、両者が水素でなくてもよい。
y=5〜100。
より特別には、Rは、C
1又はC
4のアルキル基であり、R
aはC
3のアルキレン基であり、そしてR
bは、C
1のアルキル基、C
4のアルキル基又は水素である。
4.ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールの両者が、それぞれ、0.05mgKOH/g未満の酸価を有している条項1の組成物。
5.ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、40℃で、22〜170cSt及び32〜150cStの動粘度を有している条項1の組成物。
6.ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、95及び160より大きい粘度指数を有している条項1の組成物。
7.ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、1×10
10Ωcm及び1×10
7Ωcmより大きい体積抵抗率を有している条項1の組成物。
8.ポリオールエステル及びポリオキシアルキレングリコールが、それぞれ、50℃及び10℃より低い温度で、冷媒中0.01〜100.0重量%の潤滑剤濃度範囲に渡って、冷媒のHFO 1234yfとの十分な混和性を示す条項1の組成物。
9.圧縮式冷却、空調及びヒートポンプシステムに使用される作動流体であって、(A)2〜4個の炭素原子及び少なくとも1個だが2個を超えない二重結合を含むフルオロアルケンから、部分的又は全体的に構成される冷媒、及び(B)潤滑を供給するための条項1の潤滑剤組成物の有効量、を含有する作動流体組成物。
9a.冷媒が、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィンを含んでいる条項9の組成物。
9b.冷媒が、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィンを含んでいる条項9の組成物。
9c.冷媒が、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィンと、ハイドロフルオロカーボン類、二酸化炭素、ヨードトリフルオロメタン(CF
3I)、パーフルオロケトン類、ハイドロフルオロケトン類、ハイドロクロロフルオロケトン類、又はハイドロクロロフルオロオレフィン類から選ばれる一種以上とを含むブレンドを、含有している条項9の組成物。
9d.冷媒が、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンであるハイドロフルオロオレフィンと、ハイドロフルオロカーボン類、二酸化炭素、ヨードトリフルオロメタン(CF
3I)、パーフルオロケトン類、ハイドロフルオロケトン類、ハイドロクロロフルオロケトン類、又はハイドロクロロフルオロオレフィン類から選ばれる一種以上とを含むブレンドを、含有している条項9の組成物。
9e.冷媒が、二酸化炭素を含んでいる条項9の組成物。
10.コンプレッサ、フルオルアルケン又はハイドロフルオロカーボンタイプ冷媒又はそれらの混合物、及び潤滑剤を含有し、該潤滑剤が条項1の潤滑油を含有している、圧縮タイプ冷却システム。
【実施例】
【0047】
以下の実施例において、各表における重量%は、用いた実際の市販品の重量に基づくものであり、即ち、それらは存在するあらゆる添加物の重量を含んでいる。
【0048】
実施例1:予期できない粘度効果の実証
【0049】
【表1】
【0050】
試験は、特定された方法に、きっかり従って行われた。
【0051】
PAG1は、ダウ社の「RL897」である。それは、HFCタイプの空調システムにおいて用いられる市販のポリオキシアルキレングリコールであり、式
RX(R
aO)
yR
bで表される、
ここで:
Rは、5個未満の炭素原子を含む単なるアルキル基、特にブチル基であり、
X=O
R
aは、C
3のアルキレン基であり、
R
bは、水素である。
Yは、5〜100の範囲内の整数であり、40℃で60.0cStの粘度を与える。
PAG1は、いかなる添加物も含んでいない。
【0052】
POE1は、CPIエンジニアリング社の「Emkarate RL85HM」である。それは、多価アルコールと炭素数がC
5〜C
15の範囲内の直鎖状/分枝状の酸との反応によって、製造された開発ポリオールエステルである。
【0053】
POE1は、いかなる添加物も含んでいない。
【0054】
50/50(重量/重量)のPOE1/PAG1ブレンド及び75/25(重量/重量)のPOE1/PAG1ブレンドは、これらの単純なブレンドの合理的に予想される値(及び計算で示される値)と相反する粘度特性を示す。これらの特定のブレンドのこの様に相反する粘度特性は、当業者によって、予見できるものではない。各ブレンドの粘度に対するPAGの影響の優位性が観察可能であり、40℃での予想される粘度よりも低く、且つ予期される粘度指数よりも高いことが示された。各ブレンドのPAG潤滑性及び温度に対する粘度耐性の予想よりも大きい保持が、50/50及び75/25の両者のPOE1/PAG1ブレンドの計算値に対して改良された粘度指数の保持によって、平易に示された。粘度が分っている二成分に由来するブレンドの非直線的粘度特性の観察は、意図的な応用において大変有益であり、コンプレッサベアリング操作条件におけるより良い潤滑性維持の指標である。
【0055】
比較のため、PAGがメジャー成分でPOEがマイナー成分の混合物を用いて、試験を行った。POE:PAGが重量比45:55の混合物は、147の粘度指数測定値(ASTM D2270)を有しており、計算値の146と事実上同じである。一方、POE:PAGが重量比25:75の混合物は、159の粘度指数測定値(ASTM D2270)を有しており、計算値の160と事実上同じである。
【0056】
実施例2:予期できない乾燥効果の実証:Ashrae 97 Sealed Glass Tube 安定性試験
【0057】
【表2】
【0058】
注:ARは、含有されている又は追加された酸性度調節剤を示す。
【0059】
試験は、冷媒、潤滑剤、及びエラストマー/金属成分のような、冷却システム成分の安定性を測定する標準試験法である、Ashrae 97 Sealed Glass Tube試験に従って、行った。試験は、密閉されたガラス容器中の成分を、Cu/Al/Feクーポン(coupons)の存在下に、周囲温度175℃に14日間加熱することを要した。HFO 1234yf冷媒が存在している。
【0060】
PAG2は、出光社の「ND8」である。それは、HFCタイプの空調システムにおいて用いられる市販品ポリオキシアルキレングリコールであり、式
RX(R
aO)
yR
bで表される。
ここで:
Rは、メチル基であり、
X=O
R
aは、C
3のアルキレン基であり、
R
bは、メチル基である。
Yは、5〜100の範囲内の整数であり、40℃で46.0cStの粘度を与える。
PAG2は、いかなる添加物も含んでいない。
PAG3は、出光社の「PSD1」である。それは、HFOタイプの空調システムにおいて用いられるために開発されたポリオキシアルキレングリコールであり、式
RX(R
aO)
yR
bで表される。
ここで:
Rは、メチル基であり、
X=O
R
aは、C
3のアルキレン基であり、
R
bは、メチル基である。
【0061】
Yは、5〜100の範囲内の整数であり、40℃で46.0cStの粘度を与える。
【0062】
PAG3は、合計22.1重量%の添加剤を含み、その9.0重量%を超えるのが酸性度調節剤である。(試験中にさらに酸性度調節剤を追加する前)。このことは、サンプル17におけるPAGに対するPOEの実際の重量比は、POE及びPAGの合計重量に基づいて16.7%であることを、示している。
【0063】
POE2は、HFC系の空調及び冷却システムにおいて用いられる市販品POEであるCPIエンジニアリング社の「Emkarate RL68HB」である。それは、C
8及びC
9の分枝状一塩基酸を用いて、ペンタエリスリトールに基づいている。添加物は含んでいない。
【0064】
POE3は、出光社の「ND11」である。それは、HFC系の空調システムのためのモーター組み込みコンプレッサにおいて用いられる市販品POEであり、C
8及びC
11の分枝状一塩基酸を用いて、ペンタエリスリトール及びそのダイマーの混合物に基づいている。添加剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(1.0重量%)抗酸化剤、及び1.0重量%の極圧添加剤であるリン酸トリクレシルの形態で、存在している。
【0065】
実施例2のデータは、サンプル16〜18で示されているように、ベース流体I及びベース流体IIを含む潤滑剤の代表的実施態様について、酸の生成が無いことを証明している。POE単体の潤滑剤サンプル4〜15で示されているように、酸の生成は、逆エステル化行程の結果として起こり、そこではポリオールエステルが水と反応して、酸性種を生成する。水分の存在下におけるHFO 1234yf冷媒の反応と主に関連している化学的不安定性は、PAG単体のサンプルにおいて類似した結果を有しているが、主なPAG分解の結果としては、POEで確認されるほどの程度で酸性種が確認されないため、従って、全酸価も又関連しており、試験後の潤滑剤サンプル1及び3について測定できる。サンプル2の試験後の酸価の欠如は、試験において用いた酸性度調節剤の総使用量に起因する(試験用の更なる酸性度調節剤の添加に先立つ9.0重量%を超える量)。PAGの吸湿性効果は、それにより侵入した水分がポリオキシアルキレングリコールのエーテル結合と水素結合することによって、乾燥効果が発揮され、これがポリオールエステル成分の逆エステル化の欠如という結果となり、それによって酸性種生成の欠如という結果になると、結論される。従って、本開示の代表的実施態様の潤滑剤組成物は、HFO 1234yfシステムにおける酸性度調節剤の著しい用量の必要性を除去するという利点になると結論される。その過剰な用量の使用は、冷却回路のエラストマー成分(ホース/シール)との不適合性という結果を招き得る。
【国際調査報告】