(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-508863(P2017-508863A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】フラッパ弁用ステンレス鋼帯
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20170310BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20170310BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20170310BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/54
C22C33/02 C
C21D9/46 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-535110(P2016-535110)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】SE2015051316
(87)【国際公開番号】WO2016093762
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】14196949.3
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】1551093-6
(32)【優先日】2015年8月25日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516155540
【氏名又は名称】フェストアルピーネ プレジション ストリップ アーベー
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE PRECISION STRIP AB
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ミルワルド、 クリス
(72)【発明者】
【氏名】ナワズ、 アズハル
(72)【発明者】
【氏名】ローフ、 アレクサンデル
【テーマコード(参考)】
4K018
4K037
【Fターム(参考)】
4K018AA34
4K018FA01
4K018FA08
4K018HA08
4K018KA01
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA06
4K037EA09
4K037EA10
4K037EA12
4K037EA13
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA22
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA29
4K037EA31
4K037EA32
4K037EA33
4K037EA35
4K037EB06
4K037EB07
4K037EB08
4K037EB11
4K037EB12
4K037JA06
(57)【要約】
本発明は、圧縮機のフラッパ弁用冷間圧延焼入れマルテンサイト/オーステナイトステンレス鋼帯であって、重量%(wt%)で、Cを0.3〜0.5、Siを0.2〜0.8、Mnを0.2〜1.0、Crを12.0〜15.0、Moを0.50〜2.00、Nを0.02〜0.15、Vを0.01〜0.20含む鋼から作製され、焼戻しマルテンサイトおよび5体積%と15体積%の間のオーステナイトからなるマトリックスを有し、引張強度(R
m)が1970〜2300MPaである、帯に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機のフラッパ弁用冷間圧延焼入れマルテンサイト/オーステナイトステンレス鋼帯であって、
a)重量%(wt%)で、
C 0.3〜0.5
Si 0.2〜0.8
Mn 0.2〜1.0
Cr 12.0〜15.0
Mo 0.5〜2.0
N 0.02〜0.15
V 0.01〜0.20
Ni ≦2.0
Co ≦2.0
Cu ≦2.0
W ≦2.0
Al ≦0.06
Ti ≦0.05
Zr ≦0.05
Nb ≦0.05
Ta ≦0.05
B ≦0.01
Ca ≦0.009
REM ≦0.2
Feおよび不純物 残部
からなる鋼から作製され、
b)焼戻しマルテンサイトおよび5体積%と15体積%の間のオーステナイトからなるマトリックスを有し、
c)引張強度(Rm)が1970〜2300MPaであり、
d)厚さが0.07〜3mmであり、幅が≦500mmである、鋼帯。
【請求項2】
下記の要件:
C 0.35〜0.41
Si 0.30〜0.60
Mn 0.40〜0.65
Cr 13〜14
Mo 0.8〜1.2
N 0.03〜0.13
V 0.02〜0.10
Ni ≦0.5
Co ≦0.5
Cu ≦0.5
W ≦0.5
Al ≦0.01
Ti ≦0.01
Zr ≦0.01
Nb ≦0.01
Ta ≦0.01
B ≦0.001
Ca 0.0005〜0.002
のうちの少なくとも1つを満たし、
P、SおよびOの不純物含有量が、下記の要件
P ≦0.03
S ≦0.03
O ≦0.003
を満たす、請求項1に記載の帯。
【請求項3】
下記の要件:
C 0.35〜0.41
Si 0.30〜0.60
Mn 0.40〜0.65
Cr 13〜14
Mo 0.8〜1.2
N 0.03〜0.10
V 0.03〜0.09
を満たす、請求項1または2に記載の帯。
【請求項4】
下記の要件:
引張強度(Rm)が2000〜2200MPa、
降伏強度(RP0.2)が1500〜1750MPa、
ビッカース硬さ(HV1)が570〜650、
延性(ductility)A50が4〜9%
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の帯。
【請求項5】
下記の要件:
反復曲げ疲労(reverse bending fatigue)が>850MPa
を満たす、請求項1から4のいずれか一項に記載の帯。
【請求項6】
厚さが0.1〜1.5mmであり、かつ/または幅が5〜150mmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の帯。
【請求項7】
最大球状介在物サイズが6μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の帯。
【請求項8】
一次介在物化学種が、最大幅4μmのケイ酸塩型である、請求項1から7のいずれか一項に記載の帯。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の帯を製造する方法であって、下記:
a)請求項1から3のいずれか一項で規定された組成を有する鋼を熱間圧延する工程と、
b)熱間圧延された帯を、厚さ0.07〜3mmに冷間圧延する工程と、
c)冷間圧延された帯を、連続的に焼入れ及び焼戻しする工程と、
d)任意選択により、冷間圧延された帯をスリッティングする(slitting)工程と
を含む、方法。
【請求項10】
工程c)において、オーステナイト化温度が1000〜1150℃であり、焼戻し温度が200〜600℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
焼入れが、帯を溶融鉛もしくは鉛合金の浴内でクエンチすることを伴い、浴が、好ましくは250〜350℃の温度を保持する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
使用される鋼が、粉末冶金によって製造され、前記鋼の最大球状介在物サイズが6μmである、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、圧縮機のフラッパ弁および他のリード(reed)用途用ステンレス鋼帯(steel strip)に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フラッパまたはリード弁は、特定の種類の圧縮サイクルが、特定の目的のために調節される様々な種類の用途において使用されている。それは、冷蔵庫または車のエアコンにおいて、絶えず動作する密閉型往復圧縮機の冷凍サイクルであり得る。フラッパ弁は基本的に、プリハードン(pre-hardened)鋼帯から作製されるばねである。最も単純な形態では、フラッパ弁は舌状であり、片端部が固定され、反対の端部が自由に動くよう取り付けられて、圧縮機内の液体または気体の流れを調節する。フラッパ弁は、稼働中に、繰り返し曲げ応力および繰り返し衝撃応力を受ける。通常、これらの繰り返し応力は、最終的に疲労破壊を引き起こす。したがって、疲労特性は、フラッパ弁材料について最も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の鋼帯で作製されるフラッパ弁では、鋼の化学組成、非金属介在物および熱処理に対する改変の組み合わせ効果により、疲労特性が最適化される。
【0004】
圧縮機のOEMは、圧縮機の性能および寿命を改善するために、より長い疲労寿命を有する材料を必要とする。
【0005】
更に、産業界では、よりエネルギー効率が高く、より静かな圧縮機の開発に対する関心が高まっている。成績係数(COP)は、弁のリフトの増加、および弁の厚さの減少によって増加し得る。したがって、圧縮機の設計者は、疲労強度の改善に加えて、制振性(damping properties)が向上した弁の材料を必要とする。
【0006】
リード弁に使用される既存の鋼グレードは、従来の溶融、鋳造、圧延および熱処理プロセスによって製造された炭素鋼のAISI 1095およびステンレス鋼のAISI 420の修正版である。しかし、産業界の要求および生じる性能の要件は、将来のフラッパリードが、非常に薄く、疲労寿命予測値が増加し、より高い制振性を有する鋼帯から作製されることを益々必要とするであろうことを意味する。
【0007】
発明の開示
本発明の一般的な目的は、より効率的かつ信頼性の高い圧縮機を製造するために使用され得るように、最適化された特性プロファイル(property profile)を有する、フラッパ弁用のプリハードンステンレス鋼帯を提供することである。
【0008】
更なる目的は、圧縮機の全ノイズレベルへのフラッパリードの寄与を減少させる、フラッパ弁用のプリハードンステンレス鋼帯を提供することである。
【0009】
また、このような改善された鋼帯を製造する方法を提供することも、本発明の目的である。
【0010】
前述の目的および追加の利点は、特許請求の範囲に提示される組成、微細構造および物理的特性を有する冷間圧延焼入れ(cold rolled and hardened)マルテンサイトステンレス鋼帯を提供することによって、著しい程度まで達成される。
【0011】
本発明は特許請求の範囲で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、オーステナイト化温度の関数としての引張特性を開示する。
【
図2】
図2は、焼戻し温度の関数としての引張特性を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
個別の元素およびそれらの互いの相互作用の重要性、ならびに特許請求される合金の化学成分の制限を、下記で簡潔に説明する。鋼の化学組成についての全ての百分率は、明細書全体にわたって重量%(wt%)で示す。微細構造の相の量は、体積%(vol%)で示す。個別の元素の上限および下限は、特許請求の範囲で提示される制限内で、自由に組み合わせることができる。
【0014】
炭素(0.3〜0.5%)
炭素は、最小含有量0.3%、好ましくは、少なくとも0.32%、0.34%、0.36%または0.36%で存在する。炭素は、オーステナイト中での溶解度が比較的大きい、強いオーステナイト安定剤である。炭素の上限は0.5%であり、0.48%、0.46%、0.44%または0.42%に設定されてもよい。参照範囲(referred range)は0.35〜0.41%である。いずれの場合でも、炭素の量は、鋼中のM
23C
6、M
7C
3およびM
6C型の一次炭化物の量が制限されるよう、好ましくは鋼が当該一次炭化物を含まないように制御されるべきである。
【0015】
ケイ素(0.2〜0.8%)
ケイ素は脱酸素のために使用される。Siは強いフェライト形成剤であり、炭素の活性(activity)を増加させる。また、Siは強力な固溶体強化元素であり、鋼マトリックスを強化する。この効果は0.2%のSiの含有量で現れる。好ましい範囲は0.30〜0.60%である。
【0016】
マンガン(0.2〜1.0%)
マンガンはオーステナイト安定剤であり、鋼の焼入性(hardenability)の改善に寄与する。したがってマンガンは、最小含有量0.2%、好ましくは、少なくとも0.3%、0.35%または0.4%で存在するであろう。Mnの含有量が多すぎる場合、仕上げ焼鈍後の残留オーステナイトの量が、多すぎることがある。したがって鋼は、最大1.0%のMn、好ましくは、最大0.8%、0.7%または0.65%のMnを含有するであろう。
【0017】
クロム(12.0〜15.0%)
クロムはフェライト安定化元素であり、鋼に耐腐食(corrosion)性を付与するために添加される。Crは、鋼表面上に不動態膜を提供するために、少なくとも12.0%の含有量で存在する必要がある。下限は、12、4、12、6、12、8または13%であってもよい。しかし、Crの含有量が15%を超える場合は、デルタフェライトが生じることがある。
【0018】
モリブデン(0.5〜2.0%)
Moはフェライト安定剤であり、焼入性について非常に好ましい効果を有するとして知られている。モリブデンは、良好な二次硬化応答(response)を達成するために必須である。最小含有量は0.5%であり、0.6%、0.7%または0.8%に設定してもよい。モリブデンは強い炭化物形成元素であり、また、強いフェライト形成剤でもある。したがって、モリブデンの最大含有量は2.0%である。好ましくは、Moは1.5%、1.3%または1.1%まで制限される。
【0019】
バナジウム(0.01〜0.20%)
バナジウムは、均等に分布した微細な析出炭化物、窒化物およびV(N,C)型の炭窒化物を、鋼のマトリックス中に形成する。また、この硬質相は、MXと表示されてもよく、式中、Mは主にVであるが、CrおよびMoのような他の金属が、ある程度まで存在してもよい。XはCおよびNの一方または両方である。したがって、バナジウムは0.01〜0.2%の量で存在するであろう。上限は、0.1%または0.08%に設定されてもよい。下限は、0.02%、0.03%、0.04%または0.05%であってもよい。
【0020】
窒素(0.02〜0.15%)
窒素は強いオーステナイト形成剤である。望ましい種類および量の硬質相、特にV(C,N)を得るために、Nは0.15%まで制限される。より多い窒素含有量は、ワークの硬化(work hardening)、エッジのクラック、および/または多量の残留オーステナイトにつながることがある。窒素含有量とバナジウム含有量とのバランスが適切である場合、バナジウムリッチ炭窒化物V(C,N)が生じるであろう。これらは、オーステナイト化工程の間に部分的に固溶した後、焼戻し工程の間に、ナノメートルサイズの粒子として析出するであろう。バナジウム炭窒化物の熱的安定性は、バナジウム炭化物の熱的安定性よりも良好であると考えられる。したがって、高いオーステナイト化温度での結晶粒成長に対する耐性が向上する。下限は、0.02%、0.03%、0.04%または0.05%であってもよい。上限は、0.12%、0.10%、0.08%または0.06%であってもよい。
【0021】
ニッケル(≦2.0%)
ニッケルはオーステナイト形成剤である。Niは、≦2.0%の量で存在してもよい。Niは、鋼に良好な焼入性および靱性を与える。しかし、高価なので、鋼のニッケル含有量は制限されるべきである。したがって、上限は1.0%、0.5%または0.5%に設定されてもよい。しかし、Niは通常、意図的には添加されない。
【0022】
コバルト(≦2.0%)
コバルトはオーステナイト形成剤である。Coは、固相線温度を上昇させるので、焼入れ温度を上昇させる機会を提供する。したがって、オーステナイト化の間に、より多い分率の炭化物を固溶し、これにより焼入性を高めることが可能である。また、Coは、M
S温度も上昇させる。しかし、大量のCoは、靱性および耐摩耗性を減少させることがある。最大量は2%であり、0.5%に設定されてもよい。しかし、スクラップ処理などの実用的な理由のために、Coの意図的な添加は通常なされない。
【0023】
銅(≦2.0%)
Cuはオーステナイト安定化元素であるが、フェライト中の溶解度が低い。Cuは、鋼の硬さおよび耐腐食性の向上に寄与し得る。しかし、一度銅が添加されると、銅を鋼から抽出することは不可能である。このことは、スクラップ処理を劇的により難しくする。この理由により、上限は1.0%、0.5%、または0.3%であってもよい。銅は通常、意図的には添加されない。
【0024】
アルミニウム(≦0.06%)
脱酸素のために、アルミニウムをSiおよびMnと組み合わせて使用してもよい。下限は、良好な脱酸素を保証するために、0.001%、0.003%、0.005%または0.007%に設定される。上限は、望ましくない相、例えばAlNおよび硬い脆性アルミナ介在物の析出を避けるために、0.06%に制限される。上限は、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%または0.015%であってもよい。
【0025】
タングステン(≦2%)
原理的に、モリブデンとタングステンとの化学的類似性により、モリブデンを2倍のタングステンで置き換えることができる。しかし、タングステンは高価であり、かつスクラップ金属の取扱いを複雑にする。したがって、最大量は2%、好ましくは0.5%または0.3%に制限され、最も好ましくは、意図的な添加がなされない。
【0026】
ニオブ(≦0.05%)
ニオブは、M(N,C)型の炭窒化物を形成する点で、バナジウムと類似しており、原理的にバナジウムの一部を置き換えるために使用され得るが、バナジウムと比較して、2倍の量のニオブが必要である。しかしNbによって、より角張った形状のM(N,C)が生じ、これはV(C,N)よりも大幅に安定でもあるので、オーステナイト化の間に固溶しないことがある。したがって、最大量は0.05%、好ましくは0.01%であり、最も好ましくは、意図的な添加がなされない。
【0027】
Ti、ZrおよびTa(それぞれ≦0.05%)
これらの元素は炭化物形成剤であり、硬質相の組成を変えるために、特許請求される範囲で合金中に存在してもよい。しかし通常、これらの元素は全て添加されない。
【0028】
ホウ素(≦0.01%)
Bは、鋼の硬さを更に増加させるために使用され得る。量は、0.01%まで制限され、好ましくは≦0.005%または更に≦0.001%である。
【0029】
CaおよびREM(希土類金属)
これらの元素は、高温加工性を更に改善し、かつ非金属介在物の形を改変するために、特許請求される量で鋼に添加されてもよい。
【0030】
不純物元素
P、SおよびOは主な不純物であり、鋼帯の機械的特性に負の影響を有する。したがって、Pは、0.03%、好ましくは0.01%まで制限されてもよい。Sは、0.03%、0.01%、0.008%、0.0005%または0.0002%まで制限されてもよい。Oは、0.003%、0.002%または0.001%まで制限されてもよい。
【0031】
本発明者らは、フラッパ弁材料の機械的特性に関する改変された化学組成および改変された熱処理の効果を系統的に調べた。化学組成に対して、従来の材料と比較してなされた改変は、主に窒素およびバナジウムの増加に集中したが、いくつかの利益は、オーステナイトレベルの増加ならびに炭素、マンガンおよびリンなどの元素に対するより厳格な制御(tighter control)からも得られた。
【0032】
バルブ帯(valve strip)の連続焼入れが、様々な炉パラメータを使用してなされ、従来の化学組成と改変された化学組成からの材料の焼入れ応答がマッピングされた。製造試験は、一定のライン速度で、1000℃〜1080℃の範囲の焼入れ温度で行い、250℃〜350℃の範囲の温度の溶融鉛合金中でクエンチし、220℃〜600℃の範囲の温度で焼戻した。
【0033】
従来の材料について、これらの硬化試験から得られた機械的特性は、
・降伏強度Rp
0.2の範囲が1300MPaと1600MPaの間(between)
・引張強度Rmの範囲が1740MPaと2100MPaの間
・伸び(elongation)A50の範囲が4%と6%の間
に相当した。
【0034】
更なる連続焼入れ試験を、改変された化学組成および非金属介在物の含有量を有する材料で実施した。製造試験は、一定のライン速度で、1050℃〜1100℃の範囲の焼入れ温度で行い、250℃〜350℃の範囲の温度の溶融鉛合金中でクエンチし、220℃〜600℃の範囲の温度で焼戻しした。
【0035】
改変された化学組成および非金属介在物の含有量を有する材料について、更なる焼入れ試験から得られた機械的特性は、
・Rp
0.2の範囲が1400MPaと1750MPaの間
・Rmの範囲が1970MPaと2300MPaの間
・A50の範囲が4%と8%の間
に相当した。
【0036】
例
この例では、本発明によるステンレス鋼帯を、従来のステンレス鋼帯と比較する。調べた鋼の組成は、以下の通りであった。
【0037】
従来 本発明
C 0.38 0.40
Si 0.36 0.42
Mn 0.48 0.56
Cr 13.1 13.4
Mo 0.98 0.99
N 0.017 0.052
V 0.009 0.055
Ni 0.31 0.15
P 0.018 0.018
S 0.0004 0.0006
Feおよび不純物 残部。
【0038】
焼入れおよび焼戻し試験で使用された、冷間圧延された帯は全て、厚さが0.203mmであり、幅が140mmであった。上述した連続焼入れ炉で、帯に焼入れおよび焼戻しを行った。引張強度測定は、ISO 6892:2009に準拠して行った。
図1は、オーステナイト化温度の関数としての引張特性を開示する。
図2は、焼戻し温度の関数としての引張特性を開示する。
【0039】
産業上の利用可能性
本発明の鋼帯は、改善された特性を有する圧縮機用フラッパ弁を製造するために使用され得る。
【国際調査報告】