(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509243(P2017-509243A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】誘導非接触携帯支払いシステムにおいて実質的に不感帯を低減させるための送信器及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20170310BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
H04B1/59
H04B5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-554865(P2016-554865)
(86)(22)【出願日】2015年12月31日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015068277
(87)【国際公開番号】WO2016114935
(87)【国際公開日】20160721
(31)【優先権主張番号】62/103,237
(32)【優先日】2015年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/627,958
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515234749
【氏名又は名称】サムスン ペイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォールナー、ジョージ
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AA03
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC07
5K012AC08
5K012AE02
(57)【要約】
読取り装置によって読み取られる信号を生成する送信器について記載する。送信器は、ドライバ回路と、ドライバ回路に接続された少なくとも2つのインダクタと、を含む。ドライバ回路は、インダクタを通る電流の流れを制御し、この電流の流れが結果として、信号強度が、少なくとも1つのヌル領域を有することがあるインダクタの各々に対して読取り装置の検出限界を上回るような信号を生じる。さらに、インダクタは、インダクタのヌル領域がオーバーラップしないように配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取り装置によって読み取られる信号を生成する送信器であって、
ドライバ回路と、
前記ドライバ回路に接続された少なくとも2つのインダクタと、
を備え、
前記ドライバ回路が、結果として信号を生じる前記インダクタを通る前記電流を制御し、
各インダクタが、信号強度が前記読取り装置の検出限界未満である少なくとも1つのヌル領域を有し、
前記インダクタが、前記インダクタの前記ヌル領域がオーバーラップしないように配置されている、
送信器。
【請求項2】
前記インダクタが、前記信号強度が前記読取り装置の前記検出限界よりも大きく、結果として良好なデータ読取りとなる領域を生成するように配置されている、請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
2つのインダクタのみがある、請求項1に記載の送信器。
【請求項4】
少なくとも1つのインダクタがLモード・インダクタである、請求項1に記載の送信器。
【請求項5】
少なくとも1つのインダクタがXモード・インダクタである、請求項1に記載の送信器。
【請求項6】
前記インダクタが導電性材料をさらに含む、請求項1に記載の送信器。
【請求項7】
前記導電性材料が金属線、プリント回路板、及び打ち抜かれたシートメタル形状から構成されるグループから選択される、請求項6に記載の送信器。
【請求項8】
前記導電性材料がめっきされている、請求項6に記載の送信器。
【請求項9】
前記導電性材料が、エナメル、アクリル、又はプラスチックから構成されるグループから選択された材料で被覆される、請求項6に記載の送信器。
【請求項10】
前記導電性材料が、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、及び三角形から構成されるグループから選択された形態で成形される、請求項6に記載の送信器。
【請求項11】
前記インダクタが磁心をさらに備える、請求項4に記載の送信器。
【請求項12】
前記磁心がフェライトから作られている、請求項11に記載の送信器。
【請求項13】
前記磁心が、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、及び三角形から構成されるグループから選択された断面形状を有する、請求項11に記載の送信器。
【請求項14】
少なくとも1つのインダクタがLモード・インダクタであり、少なくとも1つのインダクタがXモード・インダクタである、請求項1に記載の送信器。
【請求項15】
前記インダクタが両方ともLモード・インダクタである、請求項1に記載の送信器。
【請求項16】
前記インダクタが両方ともXモード・インダクタである、請求項1に記載の送信器。
【請求項17】
前記読取り装置の上に配置された少なくとも1つのインダクタが、前記信号強度が前記読取り装置の前記検出限界未満であるヌル領域を有さない、請求項1に記載の送信器。
【請求項18】
前記ドライバ回路が同時に複数のインダクタに前記電流を流す、請求項1に記載の送信器。
【請求項19】
前記ドライバ回路が別々の時間に複数のインダクタに前記電流を流す、請求項1に記載の送信器。
【請求項20】
読取り装置によって読み取られる信号を生成する送信器であって、
ドライバ回路と、
前記ドライバ回路に接続されたインダクタと、
を備え、
前記ドライバ回路が、結果として信号送信となる前記インダクタを通る前記電流を制御し、
前記ドライバ回路が、前記インダクタが前記読取り装置ヘッドに対して移動し、いくつかの位置を通過している間に、前記インダクタに前記電流を複数回流し、
前記インダクタが通過する前記いくつかの位置の少なくとも1つにおいて、前記インダクタが良好なデータ読取りのために前記読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する、
送信器。
【請求項21】
所与の時間に1つのインダクタにのみ電流を流すステップを含む、請求項1に記載の前記送信器を駆動する方法。
【請求項22】
送信器を駆動する方法であって、
当該送信器は、ドライバ回路と、前記ドライバ回路に接続された少なくとも2つのインダクタと、を含み、各インダクタが、信号強度が信号読取り装置の前記検出限界未満である少なくとも1つのヌル領域を有し、前記ドライバ回路が結果として信号を生じる前記インダクタを通る前記電流の流れを制御し、前記方法は、
前記インダクタの前記ヌル領域がオーバーラップしないように前記送信器の前記少なくとも2つのインダクタを配置するステップと、
前記少なくとも2つのインダクタに電流を流し、合成信号を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記合成信号が、前記信号強度が前記読取り装置の前記検出限界未満であるヌル領域を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記合成信号が前記読取り装置の一方の側に向かって傾いた信号強度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記合成信号の前記ヌル領域が前記送信器の前記個々のインダクタの前記ヌル領域とのオーバーラップがない固有の位置に配置されている、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも2つのインダクタに電流を流す前記ステップが、所与の時間に前記少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップと、所与の時間に1つのインダクタにのみ電流を流すステップと、を交互に行うステップを含む、請求項22に記載の前記送信器を駆動する方法。
【請求項27】
前記少なくとも2つのインダクタに電流を流す前記ステップが、前記インダクタのすべてに同じ方向に前記電流を流すステップを含む、請求項22に記載の送信器を駆動する方法。
【請求項28】
前記少なくとも2つのインダクタに電流を流す前記ステップが、前記他のインダクタのすべてと比較して、少なくとも1つのインダクタに反対方向に前記電流を流すステップを含む、請求項22に記載の送信器を駆動する方法。
【請求項29】
ドライバ回路と、前記ドライバ回路に接続されたインダクタと、を含む送信器による読取り装置によって読み取られる信号を生成する方法であって、
前記インダクタに電流を複数回流し、送信のための繰り返し信号を生成するステップと、
前記インダクタに前記電流を流している間に、前記インダクタを前記読取り装置ヘッドに対して移動させ、いくつかの位置を通過させるステップと、
を含み、
前記インダクタが通過する前記いくつかの位置の少なくとも1つにおいて、前記インダクタが、良好なデータ読取りのために前記読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年1月14日に出願された米国仮特許出願第62/103,237号の利益を主張する、2015年2月20日に出願された米国特許出願第14/627,958号の利益を主張するものであり、それら特許の内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
磁気ストライプ・データの送信は、主として磁気ストライプ・カードを、磁気ストライプ読取り装置(MSR:magnetic stripe reader)に通すことによって行われ、支払い、識別(ID:identification)及びアクセス制御機能を可能にしている。スマートフォン及びタブレットの携帯財布のアプリケーションは、磁気ストライプ読取り装置(MSR)を有する既存の小売商店頭(POS:point of sale)装置又は他の装置と相互にやりとりするのが困難であった。非接触又は近接場通信(NFC:near field communications)の支払いを受け付ける、非接触読取り装置が使用可能な(例えば、典型的にはISO−14443規格を使用する)店頭(POS)端末は、どこにでもあるわけではない。近接場通信(NFC)電話機、又はバーコードのような他の送信手段と単に相互にやりとりするためにだけ、磁気ストライプ・カードしか受け付けない数百万もの小売商店頭(POS)装置(又はドアロック)を置き換えることは、費用がかかり、時間がかかる。
【0003】
近年、物理的及び仮想環境において、磁気ストライプ読取り装置(MSR:magnetic stripe reader)又はチェックアウト・システムを有する小売商の従来の店頭(POS)端末及び他の装置に磁気ストライプ・カード・データを取り込み、記憶、送信するために、携帯財布アプリケーションと共に使用するための磁気ストライプ取り込み、記憶、及び送信装置を含んだ装置、システム、及び方法が開発された。これらのシステムは、消費者に対しては便利な支払い体験、小売商に対しては安全な取引、場合によっては、ロイヤルティ、識別(ID)、又はアクセス管理のために磁気ストライプ読取り装置(MSR)に送信されるさらなるデータを提供する。
【0004】
磁気ストライプ支払いカード・データを安全に取り込み、記憶し、送信するためのLoopPay Inc of Burlington,MAによって開発された1つのシステムは、携帯通信装置及び携帯アプリケーション、並びに磁気ストライプ・トランスポータ・ドングルを含む。磁気ストライプ・トランスポータ・ドングルは、マイクロプロセッサ、変動磁場を生成することができるドライバ及びインダクタを含む磁場送信器、バッテリ、充電回路、磁気ストライプ読取り装置(MSR)、メモリ手段又はセキュア素子、オーディオ・ジャック・インターフェース、並びに物理的及び仮想環境において、磁気ストライプ・カード・データを取り込み、データを安全に記憶し、小売商店頭(POS)又はチェックアウト・システムにそのようなデータを送信するための、消費者携帯装置及び財布アプリケーションと共に働く通信インターフェース(例えば、USBインターフェース、30pin又は9pinのアップル・インターフェース、Bluetooth(登録商標)インターフェースなど)を含む。
【0005】
磁気セキュア送信(MST:Magnetic Secure Transmission)技法は、シミュレートされた磁気ストライプ・データを30〜40mmの距離から店頭(POS)磁気ストライプ読取り装置(MSR)101へ磁気的に結合する。極性が交番する磁場102は、適切に設計されたインダクタに極性が交番する電流を流すことによって生成される。インダクタを含む磁気ストライプ読取り装置(MSR)ヘッドは、磁気パルスを捕捉し、それらの磁気パルスを電圧パルスに変換し、この電圧パルスが読取り装置回路及び端末ロジックによって復号される。このことが
図1に概略的に示されている。
【0006】
しかしながら、現実には、近接場通信(NFC)インダクタを含むインダクタは、等方性磁場を有さない。例えば、平坦なインダクタは、ドーナツ形の磁場を有する傾向がある。他のインダクタは、異なる磁場形状を生成する。
【0007】
磁気セキュア送信(MST)送信器インダクタ及び読取り装置ヘッド・インダクタの磁場パターンの重なりによって、1つ又は複数のヌル(null)、すなわち信号転送が起こらない狭い領域が生じる。インダクタのトポロジーに応じて、これらのヌルは読取り装置ヘッドの中心線上に、又は側部に向かってエッジに沿って存在することがある。ヌルは、カード・データ送信の信頼性に影響する。ユーザは、LoopPay装置がどの位置で最良に働くかを速やかに学習するが、若干の不都合及び2回又は3回試行する必要性が時として生じる。磁気セキュア送信(MST)がLoopPay装置よりも大きいスマートフォンに組み込まれる場合、精密に配置される可能性が低く、したがって、最初の磁気セキュア送信(MST)送信の成功率が損なわれる。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、読取り装置によって読み取られる信号を生成する送信器について記載する。送信器は、ドライバ回路と、ドライバ回路に接続された少なくとも2つのインダクタと、を含む。ドライバ回路は、インダクタを通る電流の流れを制御し、この電流の流れが結果として、信号強度が少なくとも1つのヌル領域を有することがあるインダクタの各々に対する読取り装置の検出限界を上回るような信号を生じる。さらに、インダクタは、インダクタのヌル領域がオーバーラップしないように配置されている。
【0009】
一部の実施例では、インダクタは、信号強度が読取り装置の検出限界よりも大きく、結果として良好なデータ読取りが得られる領域を生成するように配置されている。
【0010】
一部の実施例では、送信器は、2つのインダクタのみを有する。
【0011】
一部の実施例では、送信器は、Lモード・インダクタである少なくとも1つのインダクタを有し、他の実施例では、送信器は、Xモード・インダクタである少なくとも1つのインダクタを有する。
【0012】
一部の実施例では、Lモード・インダクタは、導電性材料をさらに含む。導電性材料は、金属線、プリント回路板、及び打ち抜きされたシートメタル形状から構成されるグループから選択されてもよい。導電性材料は、エナメル、アクリル若しくはプラスチックから構成されるグループから選択された材料でめっきされても、又は被覆されてもよい。さらに別の実施例では、導電性材料は、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、及び三角形から構成されるグループから選択された形態で成形される。
【0013】
一部の実施例では、Xモード・インダクタは、フェライトから作ることができる磁心をさらに備える。他の一部の実施例では、磁心は、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、及び三角形から構成されるグループから選択された断面形状を有する。
【0014】
一部の実施例では、少なくとも1つのインダクタは、Lモード・インダクタであり、少なくとも1つのインダクタは、Xモード・インダクタである。他の実施例では、インダクタはすべて、Lモード・インダクタであり、又はインダクタはすべて、Xモード・インダクタである。
【0015】
一部の実施例では、読取り装置の上に配置された少なくとも1つのインダクタは、信号強度が読取り装置の検出限界未満であるヌル領域を有さない。
【0016】
一部の実施例では、信号強度が読取り装置の検出限界よりも大きいインダクタの領域は、連続しており、信号強度が読取り装置の検出限界よりも大きい全領域を増加させる。一部の実施例では、ドライバ回路は、同時に複数のインダクタに電流を流す。他の実施例では、ドライバ回路は、別々の時間に複数のインダクタに電流を流す。
【0017】
別の態様では、ドライバと、ドライバ回路に接続された少なくとも2つのインダクタと、を含む送信器を駆動する方法について記載され、各インダクタが信号読取り装置の検出限界未満の信号強度を有する少なくとも1つのヌル領域を有し、ドライバ回路が、結果として信号を生じる、インダクタを通る電流の流れを制御し、前記方法が、
(a)インダクタのヌル領域がオーバーラップしないように送信器の少なくとも2つのインダクタを配置するステップと、
(b)少なくとも2つのインダクタに電流を流し、合成信号を生成するステップと、を含む。
【0018】
一部の実施例では、送信器を駆動する方法は、所与の時間に1つのインダクタにのみ電流を流すステップを含む。他の一部の実施例では、合成信号は、信号強度が読取り装置の検出限界未満であるヌル領域を有する。一部の実施例では、合成信号は、読取り装置の一方の側に向かって傾いた信号強度を有する。一部の実施例では、合成信号のヌル領域は、送信器の個々のインダクタのヌル領域とのオーバーラップがない固有の位置に配置されている。
【0019】
一部の実施例では、送信器を駆動する方法は、少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップを含む。電流の流れは、所与の時間に複数のインダクタに電流を流すステップと、所与の時間に1つのインダクタにのみ電流を流すステップと、を交互に行うステップをさらに含む。一部の実施例では、少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップは、すべてのインダクタに同じ方向に電流を流すステップを含む。他の一部の実施例では、少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップは、他のすべてのインダクタと比較して、少なくとも1つのインダクタに反対方向に電流を流すステップを含む。
【0020】
一態様では、送信器は、ドライバ回路に接続された単一のインダクタを含む。ドライバ回路は、結果として送信が生じる、インダクタを通って流れる電流を制御し、ドライバ回路は、インダクタがカード読取り装置ヘッドに対して移動し、いくつかの位置を通過する間に、インダクタに電流を複数回流す。インダクタが通過するいくつかの位置の少なくとも1つにおいて、インダクタは、良好なデータ読取りのためにカード読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する。
【0021】
一態様では、本方法は、インダクタがカード読取り装置ヘッドに対して移動し、いくつかの位置を通過する間に、送信のための信号を生成するために、単一のインダクタを含む送信器に、ドライバ回路によって制御された電流を複数回流すステップを含む。インダクタが通過するいくつかの位置の少なくとも1つにおいて、インダクタは、良好なデータ読取りのためにカード読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する。
【0022】
以下の図面は、例示のためにのみ提供され、限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明において利用される磁気セキュア送信(MST:Magnetic Secure Transmission)システムの概略図である。
【
図3】平坦な水平のインダクタによって、典型的な店頭(POS)端末のカード読取り装置の読取りスロットに沿った異なる相対位置からカード読取り装置ヘッド内に誘起された電圧の概略図である。
【
図4】結合が非常に低い又はゼロ401の場合に、シミュレートされたトラック・データを店頭(POS)端末403に転送するための、
図2に示される磁気セキュア送信(MST)送信器インダクタと磁気ストライプ読取り装置ヘッド・インダクタとの間の相互電磁結合、及び読取り装置のしきい値であり、この読取り装置のしきい値未満では送信が失敗する。
【
図5A】銅線が導電性材料として使用され、矩形状に巻かれている、
図2の送信器で使用されるLモード・インダクタの実例である。
【
図5B】銅線が導電性材料として使用され、矩形状に巻かれている、
図2の送信器で使用されるLモード・インダクタの実例である。
【
図6A】銅線が導電性材料として使用され、磁心が円形断面を有する、
図2の送信器で使用されるXモード・インダクタの例である。
【
図6B】銅線が導電性材料として使用され、磁心が矩形断面を有する、
図2の送信器で使用されるXモード・インダクタの例である。
【
図7A】1つのインダクタがLモード・インダクタであり、他の2つのインダクタがXモード・インダクタである、3つのインダクタを含む
図2に示される送信器を有する、本発明の実施例である。
【
図7B】両方のインダクタがLモード・インダクタである、2つのインダクタを含む
図2に示される送信器を有する、本発明の実施例である。
【
図7C】両方のインダクタがXモード・インダクタである、2つのインダクタを含む
図2に示される送信器を有する、本発明の実施例である。
【
図8】インダクタの中心が1〜2cm隔てられた、
図2に示される送信器で利用される偏心したインダクタの概略図である。
【
図9】中心がオフセットされている2つのインダクタA及びBの2つの誘起された信号レベル901及び902の概略図である。
【
図10】別々に又は組み合わされて使用された場合の、
図2の送信器で使用される2つのインダクタによって可能な3つの信号パターンである。
【
図11】インダクタを通る電流の流れを駆動するために使用することができるHブリッジ・ドライブである。
【
図12A】
図2の送信器においてインダクタA及びBの両方に対して電流が同じ方向に流れる、正の位相整合の実例である。
【
図12B】
図2の送信器においてインダクタA及びBの両方に対して電流が反対方向に流れる、負の位相整合の実例である。
【
図13】正の位相整合及び負の位相整合状態にある、
図2の送信器で使用されるインダクタA及びBの合成磁場の形状である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
読取り装置によって読み取られる信号を生成する送信器200について記載する。送信器200は、ドライバ回路と、ドライバ回路203及び204にそれぞれ接続された少なくとも2つのインダクタ201及び202と、を含む。ドライバ回路は、インダクタを通る電流の流れを制御し、この電流の流れが結果として磁場を生じる。磁場は、信号強度がインダクタ201及び202の各々に対する読取り装置の検出限界未満となる領域を含み、これによって少なくとも1つのヌル領域が形成される。さらに、インダクタ201及び202は、インダクタのヌル領域がオーバーラップしないように配置されている。
【0025】
図2は、本発明による送信器200の概略図を示す。インダクタA201及びインダクタB202は、ドライバ回路A203及び204によってそれぞれ駆動される。
【0026】
平坦な水平のインダクタ301によって、カード読取り装置の読取りスロットに沿った異なる相対位置から典型的な店頭(POS)端末のカード読取り装置ヘッド302内に誘起された電圧が、
図3に示されている。信号転送303は、ヘッド302の両側では強いが、ヘッド302の中心に近くなるほど減少し、ヘッドの中心上でちょうどゼロになる。ヌル領域304は、誘起された信号が読取り装置のしきい値305未満となる領域に形成される。ヌル領域は、幅が5〜20mmであってもよい。ユーザがヌル領域に磁気セキュア送信(MST)装置を置く場合、送信が失敗することが多く、良好な読取りが得られるように第2又は第3の試行が求められる。
【0027】
ヌルの幅は、インダクタのサイズ、インダクタ電流の強度、及び店頭(POS)カード読取り装置の感度に依存する。ヌルは、より多くの電流をインダクタに流すことによってより狭くすることができるが、完全には除去することができないものの、適切なインダクタ設計によって、使用上それほど影響しないように十分に小さくすることができる。
【0028】
磁気セキュア送信(MST)は、店頭(POS)端末にシミュレートされたトラック・データを転送するために磁気セキュア送信(MST)送信器インダクタ301と磁気ストライプ読取り装置ヘッド・インダクタ302との間の相互磁気結合を使用する。インダクタ間の結合は、それらの物理的性質と相対位置によって影響を受ける。結合が非常に低く又はゼロとなる、インダクタのある相対位置が存在する。ヌルと呼ばれるこれらの位置は、信頼性に影響を与え、ユーザに何度も送信を試みさせる原因となる。また、同様の問題は、近接場通信(NFC)チップを使用するアプリケーションにおいて悩みの種となる。本発明の方法は、首尾よく近接場通信(NFC)インダクタのヌル領域をなくすために、近接場通信(NFC)送信器と共働することができる。
【0029】
図4は、アナログテストによるヌル領域401を示し、ここでは同一のインダクタが連続して矩形波を供給され、カード読取り装置スロット(x軸)に沿って移動し、一方読取り装置ヘッド403によって取得された信号レベル402がY軸に表示されている。最左端では、インダクタは、ヘッドから遠すぎて検出可能な信号を生成することができない。インダクタが読取り装置ヘッド(中心)に向かって移動するにつれ、信号は、最初に増加し、ヘッドから約2cmのところでピークに達する。インダクタが移動し続け、ヘッドに、より近づくにつれ、信号は読取り装置のしきい値404未満に低下し第1の有効領域405を形成する。右に向かって前進し続ける間に、信号レベル402は、さらに低下し、ヘッド403の中心でゼロになる。インダクタがヘッド403から離れるように(右へ)移動するにつれ、信号レベル402は、再び増加し始める。信号レベル402が読取り装置のしきい値404を上回る、第2の有効領域406が続いて生成される。2つの有効領域間に、ヌルがある。各有効領域は、幅が約4cmである。
【0030】
送信器のインダクタは、Lモード・インダクタであり、Lモード・インダクタは、導電性材料を含むことができる。導電性材料は、金属線、プリント回路板、及び打ち抜かれたシートメタル形状から構成されるグループから選択される。また、導電性材料は、めっきされてもよい。他の一部の実施例では、導電性材料は、エナメル、アクリル、又はプラスチックから構成されるグループから選択された材料で被覆される。さらに他の実施例では、導電性材料は、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、及び三角形から構成されるグループから選択された形態で成形される。
図5A及び
図5Bは、銅線が導電性材料として使用され、矩形状に巻かれたLモード・インダクタの2つの実例を示す。
【0031】
送信器の一部の実施例では、少なくとも1つのインダクタは、Xモード・インダクタである。Xモード・インダクタは、フェライトから作ることができる磁心を含むことができる。一部の実施例では、磁心は、不規則形状、円、多角形、矩形、正方形、また三角形から構成されるグループから選択された断面形状を有する。
図6A及び
図6Bは、銅線が導電性材料として使用され、磁心が円形断面及び矩形断面をそれぞれ有するXモード・インダクタの2つの実例を示す。
【0032】
一部の実施例では、少なくとも1つのインダクタは、Lモード・インダクタであり、少なくとも1つのインダクタは、Xモード・インダクタである。
図7Aは、3つのインダクタを有する実施例を示し、1つのインダクタがLモード・インダクタであり、他のインダクタがXモード・インダクタである。送信器が2つのインダクタのみを有する場合は、1つのインダクタは、Lモード・インダクタであってもよく、他のインダクタは、Xモード・インダクタであってもよい。他の実施例では、インダクタはすべて、Lモード・インダクタである。
図7Bは、両方のインダクタがLモード・インダクタである2つのインダクタを有する実施例を示す。また、インダクタはすべて、Xモード・インダクタであってもよい。
図7Cは、両方のインダクタがXモード・インダクタである2つのインダクタを有する実施例を示す。
【0033】
一実施例では、送信器は、別々に又は一緒に駆動される2つの偏心したインダクタA及びBを含む。
図8は、インダクタA801及びB802の中心が1〜2cm隔てられた、偏心したインダクタの概略図を示す。
図9は、読取り装置ヘッド903と相互作用する際に、中心がオフセットした2つのインダクタA801及びB802に対応する2つの誘起された信号レベル901及び902の概略図を示す。インダクタのオフセットされた中心は、結果としてヌルとなり、信号レベル901及び902がオフセットされたそれぞれのインダクタ801及び802に対して読取り装置のしきい値904未満に低下する。
【0034】
オーバーラップしないヌルを有するインダクタは、2つのやり方で使用することができる。
1)各インダクタが、同一のカード・データを送信するために異なる時間に使用され、1つのインダクタがヌル領域にあり、読取り装置によって読み取られない場合に、ヌルがオフセットされている少なくとも1つの他のインダクタが読み取られる、別々に使用されるやり方である。
2)各インダクタに、適切に位相整合された電流が供給され、各インダクタの磁場が、所望の方向には互いに強め合い、他の方向には打ち消し合う合成磁場及びパターンを生成する、組み合わされて使用されるやり方である。
【0035】
図10は、別々に及び組み合わされて使用された場合の、2つのインダクタによって可能な信号パターンの3つを示す。およそ1cmオフセットされたインダクタA及びBからの信号の別々の及び組み合わされた形状が、それぞれ、線A1001及び線B1002によって示されている。曲線A+B1003は、適切に位相合せされたインダクタA+Bの組合せからの信号を示す。信号A+Bの組合せによって生成された磁場は、一方の側が著しくより強い磁場であることがわかる。この磁場は、通常、店頭(POS)読取り装置1004に向かうように配置される。読取り装置のしきい値1005も
図10に示されている。
【0036】
図11は、インダクタA1103及びB1104を通る電流の流れを駆動するために使用することができるHブリッジ・ドライブA1101及びB1102を示す。当業者は、回路中の電流の流れを制御するために他のドライバが代わりに使用されてもよいことを理解されるであろう。
【0037】
一部の実施例では、少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップは、すべてのインダクタに同じ方向に電流を流すステップを含む。これは、正の位相合せと呼ばれる。他の一部の実施例では、少なくとも2つのインダクタに電流を流すステップは、他のすべてのインダクタと比較して、少なくとも1つのインダクタに反対方向に電流を流すステップを含む。これは、負の位相合せと呼ばれる。
【0038】
図12Aは、インダクタA1201及びB1202の両方に対して電流が同じ方向に流れる正の位相合せの実例を示す。
【0039】
図12Bは、インダクタA1201及びB1202の両方に対して電流が反対方向に流れる負の位相合せの実例を示す。
【0040】
図13は、正の位相整合1301及び負の位相整合1302状態にあるインダクタA1201及びB1202の合成磁場の形状を示す。
図13は、正の位相整合がより強い磁場を生成し、一方負の位相整合がより広い磁場を生成することを示す。正の位相整合モードにおけるヌル1303は、インダクタA又はBのいずれのヌルとも異なる場所に位置する。
図13に示されるように、正の位相整合は、常にヌルを有するが、負の位相整合は、ヌル1304をそれほど深くできないということは、注目に値する。実際、ヌルは、直列抵抗を使用して、インダクタ電流を調節することによってなくすことができる。しかしながら、負の位相整合においてヌルをなくすことは、パターンの残りの部分の信号が弱くなるというトレードオフがある。
【0041】
本発明の送信器は、インダクタのヌルの影響をなくした、複数の送信を伴う少なくとも2つのインダクタを使用する。2つのインダクタは、別々に又は同時に使用されてもよい。同時に使用される場合、各インダクタは、合成磁場を生成するように位相整合され、この合成磁場が、ヌルを移動させることによって、及び有効領域を増加させることによって多様性をさらに増加させる。
【0042】
一態様では、送信器は、ドライバ回路に接続された単一のインダクタを含む。ドライバ回路は、結果として送信が生じるインダクタを通って流れる電流を制御し、ドライバ回路は、インダクタがカード読取り装置ヘッドに対して移動し、いくつかの位置を通過している間に、インダクタに電流を複数回流す。インダクタが通過するいくつかの位置の少なくとも1つにおいて、インダクタは、良好なデータ読取りのためにカード読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する。
【0043】
一態様では、本方法は、インダクタがカード読取り装置ヘッドに対して移動し、いくつかの位置を通過している間に、単一のインダクタを含む送信器にドライバ回路によって制御された電流を複数回流し、送信のための信号を生成するステップを含む。インダクタが通過するいくつかの位置の少なくとも1つにおいて、インダクタは、良好なデータ読取りのためにカード読取り装置のしきい値よりも大きい送信信号を生成する。
【0044】
当業者は、本明細書に記載されたパラメータ及び構成がすべて例示であることが意図されており、実際のパラメータ及び構成は、本発明のシステム及び方法が使用される特定の用途に依存することを容易に認識されるであろう。当業者は、わずかな決まりきった実験を使用して、本明細書に記載された本発明の特定の実施例に対する多くの均等物を認識し、又は確認することができるだろう。したがって、前述の実施例は、単に実例として提示され、本発明は、具体的に記載されたような方法以外の他の方法で実行されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書に記載された個々の特徴、システム、又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、又は方法のいかなる組合せも、そのような特徴、システム、又は方法が互いに矛盾しない場合は、本発明の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】