特表2017-509300(P2017-509300A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2017-509300少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法
<>
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000006
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000007
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000008
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000009
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000010
  • 特表2017509300-少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509300(P2017-509300A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】少なくとも二つの独立駆動されるアクスルを有するシリアル・ハイブリッド車両又は完全電気車両における電気モータを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20170310BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20170310BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20170310BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170310BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20170310BHJP
   B60L 11/12 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
   B60L15/20 Y
   B60K6/48ZHV
   B60W20/00 900
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60L11/12
   B60L15/20 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-553309(P2016-553309)
(86)(22)【出願日】2015年2月21日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2015000395
(87)【国際公開番号】WO2015135627
(87)【国際公開日】20150917
(31)【優先権主張番号】102014003437.2
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015000216.3
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596055475
【氏名又は名称】ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フラーウム・ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルバウム・トルステン
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB15
3D202BB53
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD19
3D202DD24
5H125AA01
5H125AB06
5H125BA05
5H125CA02
5H125CA15
5H125DD16
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE51
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一つの第1及び第2駆動アクスル(2,3)を有する車両(1)をコントロールするための装置及び方法に関し、第1駆動アクスル(2)には第1駆動装置(6)が設けられているとともに第2駆動アクスル(3)には第2駆動装置(7)が設けられており、第1及び第2駆動装置(6,7)の動作時に、第1及び第2駆動アクスル(2,3)に第1及び第2駆動力が働いているときに第1及び第2スリップが存在し、本方法は、以下のステップを有する:すなわち、車両(1)の第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する第1及び第2駆動力を検出し、車両(1)の第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する第1及び第2スリップ値を検出し、第1駆動力と第1スリップ値とから、第1駆動アクスル(2)に対する第1スリップ基準量を算出するとともに、第2駆動力と第2スリップ値とから、第2駆動アクスルに対する第2スリップ基準量を算出し、全部が第1及び第2駆動アクスルに働くべき総モーメントを設定し、第1及び第2スリップ基準量に応じて、総モーメントを第1及び第2目標モーメントに配分する。さらに、本発明は、車両に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの第1及び第2駆動アクスル(2,3)を有する車両(1)をコントロールする方法であって、前記第1駆動アクスル(2)には第1駆動装置(6)が設けられているとともに前記第2駆動アクスル(3)には第2駆動装置(7)が設けられており、前記第1及び第2駆動装置(6,7)の動作時に、前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に第1及び第2駆動力(F_1,F_2)が働いているときに第1及び第2スリップ(λ_1,λ_2)が存在する方法において、
以下の:
−前記車両(1)の前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する前記第1及び第2駆動力(F_1,F_2)を検出し(21)、
−前記車両(1)の前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する前記第1及び第2スリップ値(λ_1,λ_2)を検出(22)し、
−前記第1駆動力(F_1)と前記第1スリップ値(λ_1)とから、前記第1駆動アクスル(2)に対する第1スリップ基準量(FK_1)を算出するとともに、前記第2駆動力(F_2)と前記第2スリップ値(λ_2)とから、前記第2駆動アクスル(3)に対する第2スリップ基準量(FK_2)を算出(23)し、
−全部が前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に働くべき総モーメント(M_Ges)を設定(25)し、
−前記第1及び第2スリップ基準量(FK_1,FK_2)に応じて、前記総モーメント(M_Ges)を第1及び第2目標モーメント(M_Soll_1,M_Soll_2)に配分(26)する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、付加的に以下の:
−前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する前記第1及び第2スリップ基準量(FK_1,FK_2)から比率値(24)を算出し、
−算出された前記比率値(24)に応じて、前記総モーメント(25)を前記第1及び第2目標モーメント(M_Soll_1,M_Soll_2)に配分する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、付加的に以下の:
−前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する第1及び第2限界スリップ(λ_Grenz_1,λ_Grenz_2)を設定(27.1)し、
−前記車両(1)の少なくとも一つの車輪(5)の半径(R)を設定(27.2)し、
−前記第1及び第2スリップ基準量(FK_1,FK_2)、前記第1及び第2限界スリップ(λ_Grenz_1,λ_Grenz_2)及び前記車輪(5)の少なくとも一つの前記半径(R)を用いて、前記第1駆動アクスル(2)に対する第1限界モーメント(M_Grenz_1)を算出するとともに、前記第2駆動アクスル(3)に対する第2限界モーメント(M_Grenz_1)を算出(28)する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、付加的に以下の:
−前記第1駆動アクスル(2)に前記第1目標モーメント(M_Soll_1)が働くとともに前記第2駆動アクスル(3)に前記第2目標モーメント(M_Soll_2)が働き、前記第1又は第2駆動アクスル(2,3)のそれぞれについて、前記第1目標モーメント(M_Soll_1)が前記第1限界モーメント(M_Grenz_1)より大きくならないように且つ前記第2目標モーメント(M_Soll_2)が前記第2限界モーメント(M_Grenz_2)より大きくならないように前記第1及び第2駆動装置(6,7)を制御する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項5】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記第1駆動装置(6)は、前記第1アクスル(2)に作用する一つの第1アクスル駆動装置(6.1)として、或いは、前記第1アクスル(2)の前記車輪(5)に互いに独立に作用する二つの第1車輪駆動装置(6.2,6.3)として形成されており、
前記第2駆動装置(7)は、前記第2アクスル(3)に作用する一つの第2アクスル駆動装置(7.1)として、或いは、前記第2アクスル(3)の前記車輪(5)に互いに独立に作用する二つの第2車輪駆動装置(7.2,7.3)として形成されていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記第1及び/又は第2アクスル駆動装置(6.1,7.1)及び/又は前記第1又は第2車輪駆動装置(6.2,6.3,7.2,7.3)は、第1及び/又は第2電気モータとして形成されていることを特徴とする方法。
【請求項7】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記第1及び/又は第2駆動装置(6,7)は、加速モーメント(25.1)も減速モーメント(25.2)も前記第1及び/又は第2駆動アクスル(2,3)に及ぼすことを特徴とする方法。
【請求項8】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記車両(1)は、アクスル負荷分布(AV)、特に前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する第1及び第2アクスル負荷値(29.1,29.2)を検出するための電子制御される空気バネ(8)を好ましくは有することを特徴とする方法。
【請求項9】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記車両(1)の走行開始前及び/又は走行運転中に実施されることを特徴とする方法。
【請求項10】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記車両(1)の走行運転中に繰り返されることを特徴とする方法。
【請求項11】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記車両(1)は、ハイブリッド車両又は完全電気車両、特にバスであることを特徴とする方法。
【請求項12】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、付加的に以下の:
−前記第1及び第2駆動装置(6,7)による第1及び第2最大実施可能モーメント(M_max_1,M_max_2)を検出するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記車両(1)は、さらに一又は複数の他の非駆動のアクスル(4)を有することができることを特徴とする方法。
【請求項14】
先行請求項のいずれか一項に記載の方法において、
前記総モーメント(M_Ges)は、前記車両(1)のブレーキ信号送信機(36.1)又はアクセルペダル(36.2)又はその他の外部の加速又は減速要求(36.3)又は手動操作要素(36.4)により設定されることを特徴とする方法。
【請求項15】
特に請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法を実施するように形成された、車両(1)をコントロールするための装置(30)であって、少なくとも一つの第1及び第2駆動アクスル(2,3)を有し、前記第1駆動アクスル(2)には第1駆動装置(6)が設けられているとともに前記第2駆動アクスル(3)には第2駆動装置(7)が設けられており、前記第1及び第2駆動装置(6,7)の動作時に、前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に第1及び第2駆動力(F_1,F_2)が働いているときに第1及び第2スリップ(λ_1,λ_2)が存在する装置において、
以下の特徴:
−前記車両(1)の前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する前記第1及び第2駆動力(F_1,F_2)を検出する手段(31)、
−前記車両(1)の前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に対する前記第1及び第2スリップ値(λ_1,λ_2)を検出する手段(32)、
−前記第1駆動力(F_1)と前記第1スリップ値(λ_1)とから、前記第1駆動アクスル(2)に対する第1スリップ基準量(FK_1)を算出するとともに、前記第2駆動力(F_2)と前記第2スリップ値(λ_2)とから、前記第2駆動アクスル(3)に対する第2スリップ基準量(FK_2)を算出する評価モジュール(33)、
−全部が前記第1及び第2駆動アクスル(2,3)に働くべき総モーメント(M_Ges)を設定(25)する手段(36)及び
−前記第1及び第2スリップ基準量(FK_1,FK_2)に応じて、前記総モーメント(M_Ges)を第1及び第2目標モーメント(M_Soll_1,M_Soll_2)に配分(26)するコントロールモジュール(34)
を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の車両(1)をコントロールするための装置(30)を有している車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1による車両をコントロールする方法、請求項15による車両をコントロールするための装置、請求項16による車両に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の駆動アクスルを有する車両、とりわけシリアル駆動型ハイブリッド車両又は完全電気車両では、特に車両の加速及び制動時に、消費量を最適にしつつも、他方では加速を最適にするような運転ないし走行の方針が立てられなければならない。それにより、車両及び車両タイヤの長い寿命とともに、エネルギー需要の最適化とトラクションの最適化が保証されていることになろう。
【0003】
従って、燃費及び加速において最適状態で車両を運転できる車両運転方法が要望されている。
【0004】
とりわけ望ましいのは、車両から地面(車道)に力を最適に伝えることができるように、設定された駆動力ないし駆動力モーメント、特に設定されたトルクを複数の駆動輪や駆動アクスルに配分することができる方法及び装置を提供することである。これに関して、車両をコントロールするための様々な方法が従来技術より公知である。
【0005】
特許文献1より、複数の駆動されるアクスルを有するハイブリッド車両を運転する方法が公知である。この公知の車両は、第1電気モータにより駆動される第1駆動アクスルと、第2電気モータ及び/又は内燃機関により駆動される第2駆動アクスルとを有する。この公知の方法では、車両の走行サイクル中に、車両の走行出力及び/又は走行出力を表す量が求められる。次に、この量から、車両の次の新たな走行サイクルのために、先行走行サイクルの、走行出力或いは走行出力を表す量に基づいた運転方針が決定される。
【0006】
特許文献2は、全輪駆動の自動車をコントロールするための制御デバイスを記述する。この公知の自動車は、前輪の第1の一対と後輪の一対を駆動する第1駆動源並びに前輪及び後輪の他の一対を駆動する第2駆動源を有する。この公知の方法ないし公知の車両制御デバイスにより、前輪を駆動するための前輪駆動力及び後輪を駆動するための後輪駆動力を提供できる。
【0007】
特許文献3もまた、ハイブリッド車両をコントロールするための車両制御装置を記述する。このハイブリッド車両は、第1駆動源及び第2駆動源並びに変速機と遊星歯車装置(Planetengetriebe)を備えるパワートレインシステムを有する。
【0008】
特許文献4は、ブレーキ圧制御方法により走路条件を特定する方法に関する。特許文献5は、車両のブレーキシステムをコントロールする方法に関し、車両は、モータ、常用ブレーキ及びリターダを備える。上述の二つの文献は、いずれも、例えば車両についてスリップを求める方法を記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011001994号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10049567号明細書
【特許文献3】独国特許発明第10049514号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19602170号明細書
【特許文献5】欧州特許第2432670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、車両をコントロールするための改善された方法及び改善された装置を利用可能にし、これにより、総トルクを複数の駆動アクスルに分配可能にして、車両のスリップ、とりわけスリップ差を最小限にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明により、請求項1に係る方法、請求項15に係る装置及び請求項16に係る車両により解決される。下位請求項は、本発明の好ましい実施形態を記述する。
【0012】
本発明は、少なくとも一つの第1及び第2駆動アクスルを有する車両をコントロールする方法であって、第1駆動アクスルには第1駆動装置が設けられているとともに第2駆動アクスルには第2駆動装置が設けられており、第1及び第2駆動装置の動作時に、第1及び第2駆動力が第1及び第2駆動アクスルに作用しているときに第1及び第2スリップが存在する方法において、以下の:
−車両の第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2駆動力を検出し、
−車両の第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2スリップ値を検出し、
−第1駆動力と第1スリップ値とから第1駆動アクスルに対する第1スリップ基準量を算出するとともに、第2駆動力と第2スリップ値とから第2駆動アクスルに対する第2スリップ基準量を算出し、
−第1及び第2駆動アクスルに全てが作用することになる総モーメントを設定し、
−第1及び第2スリップ基準量に応じて、総モーメントを第1及び第2目標モーメントに配分する、
ステップを有する方法の思想を包含する。
【0013】
さらに、本発明は、特に本発明による方法を実施するように形成された、車両をコントロールするための装置であって、少なくとも一つの第1及び第2駆動アクスルを有し、第1駆動アクスルには第1駆動装置が設けられているとともに第2駆動アクスルには第2駆動装置が設けられており、第1及び第2駆動装置の動作時に、第1及び第2駆動力が第1及び第2駆動アクスルに作用しているときに第1及び第2スリップが存在する装置において、以下の特徴:
−車両の第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2駆動力を検出する手段、
−車両の第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2スリップ値を検出する手段、
−第1駆動力と第1スリップ値とから、第1駆動アクスルに対する第1スリップ基準量を算出するとともに、第2駆動力と第2スリップ値とから、第2駆動アクスルに対する第2スリップ基準量を算出する評価モジュール、
−第1及び第2駆動アクスルに全てが作用すべき総モーメントを設定する手段、
−第1及び第2スリップ基準量に応じて、総モーメントを第1及び第2目標モーメントに配分するコントロールモジュールを有する装置の思想を包含する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明による装置を有する車両を包含する。
【0015】
以下に、例により(その際に限定を伴うことなく)本発明の概念を述べる。本発明による方法及び本発明による装置は、二つの駆動アクスルを有する車両、特にシリアル駆動ハイブリッド車両、例えばバスのコントロールに用いられる。本発明の概念により、先ず、車両の第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2駆動力と第1及び第2スリップ値とが検出される。スリップ値は、車両の車輪の車輪回転及び車輪周長当たりの車両の実際の移動経路長からのずれを表す。スリップは、とりわけ、車両で走行する際、特に加速時や制動時に、車輪が空回りしたりロックしたりすることで発生する。駆動力は、駆動アクスルに働く力を表す。続いて、駆動力とスリップ値に関する値から、第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2スリップ基準量が算出される。スリップ基準量は、駆動力の変化(dF)に対するスリップの変化(dλ)として定義されており、以下の式により計算することができる:
【0016】
【数1】
【0017】
算出された第1及び第2スリップ基準量から、例えば比率、特に第1及び第2比率値が算出される。さらに、例えば、車両のドライバによるブレーキ信号送信機やアクセルペダルの操作によって、車両に対する総モーメントが設定される。当該総モーメントは、全部合わせると(全)駆動アクスル、とりわけ第1及び第2駆動アクスルに働くべき(作用すべき)モーメントを表す。続いて、総モーメントは、例えば、算出された比率、特に第1及び第2比率値に従って、第1及び第2目標モーメントに配分される。次に、第1及び第2目標モーメントが第1及び第2駆動アクスルに加えられ或いはこれらに作用することになる。
【0018】
車両をコントロールするための本発明による方法及び本発明による装置を用いて、特に、スリップ調節された車両の駆動装置ないし駆動アクスルの制御により、走行運転時の車両の車両安定性が改善されるとともに、駆動アクスルのタイヤの摩耗が最小化され且つ/又は複数の駆動アクスルへ均一に分散される。さらに、本発明による方法を用いて、車両の加速及び/又は減速の際に、改善されたトラクションがもたらされる。加えて、車両の制動時には、回生(Rekuperation)の度合いが高められる。
【0019】
車両の駆動力は、例えば、車両速度の変化を介して特定され、その際に車両速度は、例えば、車両の駆動及び/又は非駆動のアクスルの車輪の車輪回転数を検出することによって特定することができる。また、車両速度は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)信号を用いて検出することもできる。車両速度の検出は、好ましくはアクスル別、左右別、及び/又は車輪別に行うことができる。
【0020】
これらの及びさらに他の好ましい本発明の実施形態は、下位請求項の対象であり、車両をコントロールするための方法も装置も一層明らかにする。特に、好ましい発展形態は、下位請求項の対象であり、課題との関連並びに他の長所との関係で、上述の方法/装置をいかにして実現し或いは構成できるかについて、有利な個々の可能性を示す。
【0021】
好ましくは、一態様は、本方法がさらに次のステップ、すなわち、第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2スリップ基準量から比率値を算出し、算出された比率値に応じて、総モーメントを第1及び第2目標モーメントに配分するステップを有するというものである。ここで、好ましくは、第1及び第2駆動アクスルに対する算出された第1及び第2スリップ基準量から、比率、或いは第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2比率値が算出されるものとされている。続いて、総モーメントが、比率に従って、特に第1及び第2比率値に従って、第1及び第2目標モーメントに配分される。
【0022】
目的に合った態様では、本方法は、さらに次のステップ、すなわち、車両の少なくとも一つの車輪の半径を設定し、第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2限界スリップを設定し、第1及び第2スリップ基準量、第1及び第2限界スリップ及び車両の少なくとも一つの車輪の半径を用いて、第1駆動アクスルに対する第1限界モーメントを算出するとともに、第2駆動アクスルに対する第2限界モーメントを算出するステップを有するようにされていてもよい。この態様では、車両の少なくとも一つの車輪の直径の半分ないし半径が設定される一方、他方では、第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2限界スリップが設定されるようになっている。直径の半分ないし半径及び限界スリップの値から、次に、第1駆動アクスルに対する第1限界モーメントと、第2駆動アクスルに対する第2限界モーメントとが特定される。車両のタイヤないし車輪の直径の半分ないし半径は、タイヤ内の空気圧、車両の速度及び/又はタイヤの擦り減り方に特に依存している。車両の個々のタイヤの半径についての実際値は、絶えず算出され、各駆動アクスルに対する限界モーメントを計算するのに利用することができる。
【0023】
好ましい発展形態は、本方法がさらに次のステップ、すなわち、第1駆動アクスルに第1目標モーメントが働くとともに第2駆動アクスルに第2目標モーメントが働き、第1又は第2駆動アクスルのそれぞれについて、第1目標モーメントが第1限界モーメントより大きくならないように且つ第2目標モーメントが第2限界モーメントより大きくならないように、第1及び第2駆動装置を制御するステップを有するというものである。ここでは、好ましくは、前もって算出された限界モーメントは、各駆動アクスルに対する各駆動装置の制御の際の規制値(Kontrollwert)としての役割を果たし、駆動アクスルは、目標モーメントが、算出された各対応の限界モーメントよりも常に必ず小さくなるように、とりわけ、第1駆動アクスルに働く第1目標モーメントが第1限界モーメントより小さく且つ第2駆動アクスルに働く第2目標モーメントが第2限界モーメントより小さくなるように各目標モーメントが供給されるものとされている。このとき、目標モーメントが、絶えず限界モーメントと比較されるように考慮されている。目標モーメントが、対応する限界モーメントに達した或いはそれを上回ったときには直ちに目標モーメントが低減され、その結果、最終的な(目標)モーメントが再び望ましい領域に入ることになる。これにより、第1及び/又は第2駆動アクスルにおける特定の(設定された)限界スリップが超過されないことがいつも保証される。
【0024】
有利な一態様では、第1駆動装置は、第1アクスルに作用する一つの第1アクスル駆動装置として、或いは、第1アクスルの車輪に互いに独立に作用する二つの第1車輪駆動装置として形成されており、第2駆動装置は、第2アクスルに作用する一つの第2アクスル駆動装置として、或いは、第2アクスルの車輪に互いに独立に作用する二つの第2車輪駆動装置として形成されているものとされてもよい。この態様では、各駆動アクスルに対して二つのアクスル駆動装置が設けられているか、又は、駆動アクスル、特に第1及び第2駆動アクスルの各車輪に対して全部で四つの車輪駆動装置が設けられている。
【0025】
好ましい発展形態は、第1及び/又は第2アクスル駆動装置及び/又は第1及び第2車輪駆動装置は、第1及び/又は第2電気モータとして形成されているというものである。
【0026】
一発展形態は、第1及び/又は第2駆動装置が、第1及び/又は第2駆動アクスルに加速モーメントと減速モーメントとを作用させるようにできる。このとき、有利にも、本方法が加速時だけでなく、制動時にも実施可能であるものとされている。とりわけ、車両の制動時には、運動エネルギーは、再び電気エネルギーとして回生することができ、駆動装置、特に電気モータは、そのときには発電機として使用される。
【0027】
好ましくは、一態様は、車両が、アクスル負荷分布、特に第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2アクスル負荷値を検出するための電子制御式の空気バネを好ましくは有するというものである。この場合、好ましくも、電子制御される空気バネ装置を用いて、車両のアクスル負荷分布、特に第1及び第2駆動アクスルに対する第1及び第2アクスル負荷値を算出するものとされている。次いで、これらの値から、特に第1及び第2駆動アクスルについて、各駆動アクスルにそれぞれ加えられるべき対応する目標モーメントへと総モーメントを配分するための比率値ないし比率を算出することができる。これには、車両による走行開始の前に既に最適なモーメント分配が存在するので、車両による発進時に既に最適なトラクションが車両の加速のために存在するという利点がある。
【0028】
好ましい態様は、車両の走行開始前及び/又は走行運転中に実施される方法に関する。この場合、車両の走行開始前の本方法の実施は、車両による発進時に既に最適なトラクションが存在するという利点がある。走行運転中の実施は、走行運転の際の目標モーメントの連続的な調整(適合)を可能にする。その結果、どの時点においても車両の最適な加速及び/又は減速が存在することになる。
【0029】
有利な態様は、車両の走行運転中に繰り返される方法に関する。この場合には、本方法は、有利な仕方で連続的に繰り返され、その結果、複数の駆動アクスルのために算出された目標モーメントの連続的な調整(適合)を行うことができる。
【0030】
特に有利な態様は、車両、特にハイブリッド車両及びより好ましくはバスに関する。とりわけ、バスは、例えばバス内での乗客分布が常に変化することにより、アクスル負荷分布が大きく変動する影響を受ける。先に述べた本発明による長所、特に、最適な燃費及び複数の駆動アクスル間において最小化されるスリップ差は、ハイブリッド車両、とりわけバスにおいて、特にはっきりとした効果となって現れる。
【0031】
好ましくは、一態様は、本方法が、さらに次のステップ、すなわち、第1及び/又は第2駆動装置による第1及び第2最大実施可能モーメントを検出するステップを有するというものである。
【0032】
目的に合った態様では、車両は、さらに他の非駆動アクスルを有するものとされていてもよい。この実施形態では、車両は、少なくとも一つの他のアクスルを有する。限定を伴うことなく、本方法は、二より多い駆動アクスルを有する車両にも転用することができる。付加的な駆動アクスルのそれぞれは、第1及び/又は第2駆動アクスルに比肩し得るように構成されている。
【0033】
好ましい発展形態は、総モーメントが、車両のブレーキ信号送信機又はアクセルペダル又はその他の外部の加速又は減速要求又は手動操作要素により設定されるというものである。
【0034】
以下に、本発明の実施例を、図面に基づいて従来技術(同じく部分的に示されている。)との対比において説明する。図は、実施例を不必要に寸法どおりには示してはおらず、むしろ、図面は、説明に有用な箇所では、概略的に及び/又は若干歪められた形状で作成されている。図から直ぐに分かる構成は、関連する従来技術を参酌して補われるものとする。ここで、本発明の一般概念から逸脱することなく、実施形態の形状及び詳細に関して多様な変更と修正を加えることができる点に留意すべきである。明細書、図面及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別でも、任意の組み合わせにおいても、本発明の発展形態にとって本質的であり得る。加えて、本発明の範囲には、明細書、図面及び/又は特許請求の範囲に開示された特徴の少なくとも二つの組み合わせの全てが入る。本発明の一般概念は、以下に図示され且つ記載された好ましい実施形態の形状や詳細そのものには限定されることはないし、請求項に要求された対象と比べて制限されていそうな対象に限定されることもない。記載された数値範囲(Bemessungsbereichen)は、言及された境界の中にある値も、境界値として開示されているというべきであり、任意に選択可能且つ権利要求可能というべきである。同じか類似の部分ないし同じか類似の機能の部分は、分かりやすくすることが有意義である箇所では同じ符号が付されている。本発明のさらに他の利点、特徴及び詳細は、好ましい実施例の以下の記載及び以下の図面に基づき明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の可能な実施形態による車両の概略図である。
図2A】本発明による方法の可能な実施形態の概略的なフロー図である。
図2B】本発明による方法の好ましい他の実施形態の概略的なフロー図である。
図2C】本発明による方法のさらに他の好ましい実施形態の概略的なフロー図である。
図3】本発明の好ましい実施形態による車両及び装置の概略図である。
図4】本発明による方法の可能な実施形態における様々な測定量の測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の可能な実施形態による車両の(下側からの)概略図である。図示された車両1は、全部で三つのアクスル、つまり、第1及び第2駆動アクスル2,3並びに非駆動の第3アクスル4を有している。この出願により請求対象とされる方法及び装置は、限定を伴うことなく、多かれ少なかれ駆動アクスル及び/又は多かれ少なかれ非駆動アクスルを有する車両にも転用することができる。
【0037】
ここで示された例では、第1及び第2駆動アクスル2,3には、それぞれ駆動装置が設けられ、とりわけ第1駆動アクスル2には第1駆動装置6が、第2駆動アクスル3には第2駆動装置7が設けられている。第1及び第2駆動装置6,7は、好ましくはアクスル駆動装置6.1,7.1として形成され(概略図示)、これら駆動装置は、モーメント(トルク)を第1及び第2駆動アクスル2,3に及ぼすようにそれぞれ構成されている。この場合、加速モーメント25.1も減速モーメント25.2もいずれもが関わり得る。好ましくは、第1及び第2駆動装置6,7、とりわけ第1及び第2アクスル駆動装置6.1,7.1は、第1及び第2電気モータとして形成されている。
【0038】
他の好ましい実施形態(不図示)では、第1駆動装置6は、二つの互いに独立に作用する車輪駆動装置6.2,6.3(概略的に示す。)の形態で形成されており、これらの駆動装置は、対応して設けられた第1駆動アクスル2の車輪に適当なモーメントをそれぞれ及ぼすように構成されている。第2駆動装置7も、この実施形態では、二つの互いに独立に作用する駆動装置7.2,7.3の形態で形成されており、これらの駆動装置は、対応して設けられた第2駆動アクスル3の車輪5にそれぞれモーメント、とりわけ加速モーメント25.1及び/又は減速モーメント25.2を及ぼすように構成されている。好ましい実施形態において、第1及び第2車輪駆動装置6.1,6.2,7.1,7.2は、このとき電気モータとして形成されている。
【0039】
さらに、車両1は、空気バネ装置8(単に概略的にのみ示す。)を有し、当該装置は、車両のアクスル負荷分布、特に、第1駆動アクスル2に対する第1アクスル負荷値29.1と、第2駆動アクスル3に対する第2アクスル負荷値29.2と、非駆動のアクスル4に対するさらに他のアクスル負荷値とを求め、車両制御装置(不図示)に送るように構成されている。好ましくは、空気バネ装置8は、電子制御される空気バネ装置である。
【0040】
図2Aは、複数個すなわちn個の駆動アクスル、しかし好ましくは第1及び第2駆動アクスル2,3、つまり車両のn=2の駆動アクスルを有する車両1をコントロールする本発明による方法の可能な実施形態による概略的な工程図を示す。図2Aに示された方法は、例えば図1に示されているような車両1をコントロールする方法についての可能な一実施形態であって、同じ特徴には同じ符号が用いられる。
【0041】
先ず、本実施形態では、複数の駆動アクスルにおいて、車両1の第1〜第n駆動アクスルに対する複数の駆動力F_1〜F_nが検出される(図2A中の符号21参照)。その他に、第1〜第n駆動アクスルに関し、第1〜第n駆動アクスルに対する第1〜第nスリップすなわちλ_1〜λ_nが検出22され、とりわけ、例えば図1に示されているような車両1の第1及び第2駆動アクスル2,3に対する第1及び第2スリップ値λ_1,λ_2が検出される。駆動力F_1〜F_n及び第1〜第nスリップ値λ_1〜λ_nに関する値から、次に、駆動アクスルnについて、対応する(第n駆動アクスルに対する)スリップ基準量FK_nが求められるが、とりわけ第1及び第2駆動アクスル2,3について、第1駆動アクスル2に対する第1スリップ基準量FK_1が第1駆動力F_1及び第1スリップ値λ_1の値から、第2駆動アクスル3に対するスリップ基準量FK_2が第2駆動力F_2及び第2スリップ値λ_2の値から、求められる23。スリップ基準量は、駆動力dFの変化に対するスリップの変化dλとして定義されており、以下の式により計算することができる:
【0042】
【数2】
【0043】
第1〜第n駆動アクスルに対して求められたスリップ基準量FK_1〜FK_nから、次に、比率ないし比率値VW_1〜VW_n、好ましくは例えばVW_1=FK_1/FK_2及びVW_2=FK_2/FK_1を求めることができる24。
【0044】
加えて、総モーメントM_Gesが、例えば車両1のブレーキ信号送信機36.1若しくはアクセルペダル36.2を用いて又はその他の外部の加速又は減速要求36.3により或いは車両1内の手動操作要素36.4を用いて設定される25。ここで、総モーメントM_Gesは、全部合わせると駆動アクスルn、特に第1及び第2駆動アクスル2,3に働くことになる(働くべき)モーメントを与える。総モーメントM_Gesは、加速モーメントでも減速モーメントでもよい。次に、総モーメントM_Gesは、求められた比率ないし比率値に従って、第1〜第n駆動アクスルに対する複数の目標モーメントM_Soll_1〜M_Soll_nに分けられ、とりわけ、第1及び第2駆動アクスルに加えられ或いはこれらに作用することになる第1目標モーメントM_Soll_1及び第2目標モーメントM_Soll_2に分けられる26。
【0045】
図2Bは、複数個のつまりn個の駆動アクスルnを有する、とりわけ図1に示されているような第1及び第2駆動アクスル2,3を有する車両1をコントロールするための本発明による方法の可能な態様による概略的な工程図を示す。図2Bに示された可能な態様は、図2Aに記載されているのと概ね同様の方法に対応しているが、さらに他の工程ステップが設けられている。
【0046】
図2Bに示された方法では、車両の少なくとも一つの車輪の直径の半分ないしは半径Rが設定される27.2一方、他方では、第1〜第n駆動アクスルに対する複数の限界スリップλ_Grenz_1〜λ_Grenz_n、とりわけ第1及び第2駆動アクスル2,3に対する限界スリップλ_Grenz_1,λ_Grenz_2が設定される27.1。直径の半分ないし半径Rの各値と限界スリップとから、第1〜第n駆動アクスルに対する限界モーメントM_Grenz_1〜M_Grenz_nが求められ28、とりわけ第1駆動アクスル2に対する第1限界モーメントM_Grenz_1及び第2駆動アクスル3に対する第2限界モーメントM_Grenz_2が求められる。限界モーメントは、以下の式により特定される:
【0047】
【数3】
【0048】
このようにして求められた限界モーメントM_Grenz_1〜M_Grenz_nは、かくして各駆動アクスルnのための各駆動装置の制御の際の規制値(Kontrollwert)としての役割を果たし、駆動アクスルnは、目標モーメントM_Soll_1〜M_Soll_nが、それぞれに対応して求められた限界モーメントM_Grenz_1〜M_Grenz_nよりも常に必ず小さくなるように、とりわけ、第1駆動アクスル2に働く第1目標モーメントM_Soll_1が第1限界モーメントM_Grenz_1より小さく、第2駆動アクスル3に働く第2目標モーメントM_Soll_2が第2限界モーメントより小さくなるように、各目標モーメントにより制御される。これにより、決められた(設定された)限界スリップが、所定の駆動アクスルにおいて超過されないことが常に保証されている。
【0049】
図2Cは、図2A及び図2Bに図示され且つ記載されているような方法のさらに別の好ましい実施形態による概略的な工程図を示しており、追加の工程ステップ、すなわち、車両1のアクスル負荷分布AV、とりわけ第1駆動アクスルに対する第1アクスル負荷値29.1及び第2駆動アクスルに対する第2アクスル負荷値29.2の検出29が設けられている。
【0050】
車両1のアクスル負荷分布AVは、例えば、電子制御される空気バネ装置により検出ないし算出することができる。車両のアクスル負荷分布から、とりわけ各駆動アクスルnに対するアクスル負荷値から、次に、各駆動アクスルに加えられなければならない対応する目標モーメントに関する比率ないし比率値を、特に第1及び第2駆動アクスル2,3について(好ましくは車両の発進前に)求めることができる。これには、車両と車道との間の摩擦係数が等しく、該当するアクスルのタイヤ特性曲線が同等であれば、発進前に既に最適なモーメント分布があり、その結果、車両による運転開始の際に既に最適なトラクションが存在するメリットがある。
【0051】
図3は、本発明の有利な実施形態による車両1をコントロールするための装置30及び車両1の概略図を示す。図示されているのは、全部で三つのアクスル、すなわち第1及び第2駆動アクスル2,3及び非駆動の第3アクスル4を有する車両1である。本実施例では、各駆動アクスルに対して駆動装置が設けられており、とりわけ第1駆動アクスル2には第1駆動装置6が、第2駆動アクスル3には第2駆動装置7が設けられている。ここで、限定することなく、このような車両が既に記載されている図1に関する記載に基づき説明する。しかし、図3に記載された実施形態は、この車両に限定されるものではなく、むしろ、本方法及び本装置は、より多くの駆動アクスル及び/又はより多くの非駆動アクスルが使用する車両に転用することもできる。
【0052】
さらに、図3には、好ましい仕方で車両1内に組み込まれている車両1をコントロールするための装置30が示されている。装置30は、車両1の第1及び第2駆動アクスル2,3に対する第1及び第2駆動力F_1,F_2を検出する手段31と、車両1の第1及び第2駆動アクスル2,3に対する第1及び第2スリップ値λ_1,λ_2を検出する手段32とを有する。それぞれ二つの値、すなわち第1及び第2駆動アクスル2,3に対する駆動力とスリップ値とから、評価モジュール33を用いて、(第1駆動力F_1及び第1スリップ値λ_1から)第1駆動アクスル2に対する第1スリップ基準量FK_1と、(第2駆動力F_2及び第2スリップ値λ_2から)第2駆動アクスル3に対する第2スリップ基準量FK_2とが求められる。さらに、とりわけ、全部が第1及び第2駆動アクスル2,3に働くことになる総モーメントの検出ないし設定のために、車両1のブレーキ信号送信機36.1及び/又はアクセルペダル36.2或いはその他の外部の加速又は減速要求36.3による或いは手動操作要素36.4(概略的に示す。)の手段36が設けられている。設定された総モーメントは、コントロールモジュール34により、第1及び第2スリップ基準量FK_1,FK_2に応じて第1及び第2目標モーメントM_Soll_1,M_Soll_2に配分され、制御モジュール37に送られる。駆動装置6,7をコントロールするための制御モジュール37は、駆動装置6,7に電子的に制御信号を送るように接続されている。
【0053】
さらに、比較モジュール35が設けられており、当該比較モジュール35は、例えば、第1及び第2(下位)ユニット35.1及び35.2を有して形成されており、第1ユニット35.1が第1限界スリップ値λ_Grenz_1及び第2限界スリップ値λ_Grenz_2を設定し、第2ユニット35.2が車両1の少なくとも一つの車輪5の半径Rを設定する。ユニット35.1及び35.2は、例えば、内部にそれぞれの値が保存されているメモリの形態で形成されていてもよい。直径の半分ないし半径R及び限界スリップに関するそれぞれの値から、第1駆動アクスル2に対する第1限界モーメントM_Grenz_1及び第2駆動アクスル3に対する第2限界モーメントM_Grenz_2が求められる。ここで、限界モーメントは、図2A〜2Cに対する記載に従って特定することができる。制御モジュール37に接続されている比較モジュール35により、第1及び第2目標モーメントM_Soll_1,M_Soll_2が、第1及び第2限界モーメントと比較され、駆動装置6,7は、第1ないし第2駆動アクスル2,3のそれぞれについて、第1駆動アクスル2に働く第1目標モーメントM_Soll_1及び第2駆動アクスル3に働く第2目標モーメントM_Soll_2が、第1限界モーメントM_Grenz_1より大きくならないように、或いは第2目標モーメントM_Soll_2が、第2限界モーメントM_Grenz_2より大きくならないように制御される。装置30の個々のモジュールは、装置30の好ましい構成において、車両をコントロールするためのソフトウェアプログラムのソフトウェアモジュールとして形成されている。
【0054】
図4は、可能な実施形態による本発明の方法を実施する際の、とりわけ制動操作を行う際の様々な測定量の測定、とりわけ、スリップ基準量FK、スリップ差Δλ、モーメントM_n及び車両の速度vの測定を示す。
【0055】
図示された測定グラフでは、車両の制動過程における様々な測定量の測定がそれぞれ示されており、車両は、本実施例では、複数の駆動アクスルを有して、とりわけ二つの駆動アクスルを有して形成されている。
【0056】
x軸には、(制動操作中の)時間tが示されており、y軸には、様々な測定量、すなわち、車両の速度v、(制動)モーメントM、第1及び第2駆動アクスル間のスリップ差Δλ及びスリップ基準量FKが示されている。
【0057】
速度曲線41は、速度が約60km/hから0km/hに制動される車両の時間的な速度変化を示す。総モーメント曲線44は、車両の二つの駆動アクスルに全てを加えるべき或いは設定される総モーメントの制動操作中の時間変化を示す。
【0058】
第1及び第2スリップ基準量、とりわけスリップ基準量曲線42,43により、総ブレーキモーメント、とりわけ総モーメント曲線44が、第1駆動アクスルに対する第1目標モーメント45と、第2駆動アクスルに対する第2目標モーメント46とに分けられ、これら駆動アクスルに作用せしめられる。このとき、これら二つの目標モーメント45,46の合計は、二つの目標モーメントがそれぞれの限界モーメントを超えない限り、あらゆる時点において総モーメント曲線44の値に対応する。
【0059】
スリップ差曲線47は、制動過程中の第1及び第2駆動アクスル間における、車両の合成したスリップ差を示す。スリップ差は、あらゆる時点において最小化されておりゼロ線から僅かにずれるだけであることが明らかである。これにより、最適な制動過程が提供される。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 第1駆動アクスル
3 第2駆動アクスル
4 第3(非駆動)アクスル
5 車輪
6 第1駆動装置
6.1 第1アクスル駆動装置
6.2,6.3 第1車輪駆動装置
7 第2駆動装置
7.1 第2アクスル駆動装置
7.2,7.3 第2車輪駆動装置
8 空気バネ
21 駆動力の検出
22 スリップの検出
23 スリップ基準量の算出
24 比率値生成
25 総モーメントの設定
25.1 加速モーメント
25.2 減速モーメント
26 総モーメントの配分
27.1 限界スリップの設定
27.2 半径の設定
28 限界モーメントの算出
29 アクスル負荷分布の設定
29.1 第1アクスル負荷値
29.2 第2アクスル負荷値
30 装置
31 力を検出する手段
32 スリップ値を検出する手段
33 評価モジュール
34 コントロールモジュール
35 限界モーメントを求めるための比較モジュール
35.1 第1ユニット
35.2 第2ユニット
36 総モーメントを設定する手段
36.1 ブレーキ信号送信機
36.2 アクセルペダル
36.3 外的な加速又は減速要求
36.4 手動操作要素
37 制御モジュール
41 速度曲線
42 第1スリップ基準量曲線
43 第2スリップ基準量曲線
44 総モーメント曲線
45 第1駆動アクスルに対する目標モーメント曲線
46 第2駆動アクスルに対する目標モーメント曲線
47 スリップ差曲線
F_n 駆動力
λ スリップ値
FK スリップ基準量
FK_1 第1スリップ基準量
FK_2 第2スリップ基準量
M_Ges 総モーメント
M_Soll 目標モーメント
M_Soll_1 第1目標モーメント
M_Soll_2 第2目標モーメント
M_Grenz 限界モーメント
M_Grenz_1 第1限界モーメント
M_Grenz_2 第2限界モーメント
AV アクスル負荷分布
R 半径
λ_Grenz 限界スリップ
Δλ スリップ差
v 速度
t 時間
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【国際調査報告】