(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509341(P2017-509341A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】拡張された基質範囲および増強された転写産出を備えたT7 RNAポリメラーゼ変種
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170317BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20170317BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20170317BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20170317BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20170317BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20170317BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/12
C12P19/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-557983(P2016-557983)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月7日
(86)【国際出願番号】US2015021748
(87)【国際公開番号】WO2015143318
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】61/968,231
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】エリントン アンドリュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー アダム ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050FF14E
4B050LL01
4B064AF27
4B064CA02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA29
4B065CA44
(57)【要約】
増強された転写活性を備えたT7 RNAポリメラーゼ変種が開示される。伸長しているRNA分子に修飾リボヌクレオチドを組み込む能力を有するT7 RNAポリメラーゼ変種が知られている。しかしながら、これらの変種は比較的低いレベルの転写活性を有する。広い基質範囲を備えた変種の転写活性を増大させる変異が本明細書に提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型T7 RNAポリメラーゼと比較して2'-修飾モノヌクレオチドを組み込む能力の増強を付与する、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換、および
活性増強アミノ酸置換のないT7ポリメラーゼ変種と比べてT7ポリメラーゼ変種の転写活性を増大させる、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換
を含む、T7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項2】
一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換が、SEQ ID NO:1の野生型T7 RNAポリメラーゼ配列に対して次のアミノ酸置換の一つまたは複数を含む、請求項1記載のT7 RNAポリメラーゼ変種:
G542V、E593G、Y639V、Y639F、V685A、H772R、H784A、H784S、およびH784G。
【請求項3】
一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換が、G542V、H772R、およびH784Sを含む、請求項1または2記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項4】
一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換がY639Fを含む、請求項1または2記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項5】
一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換がY639FおよびH784Aを含む、請求項1または2記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項6】
一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換が、E593G、Y639V、V685A、およびH784Gを含む、請求項1または2記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項7】
2'-修飾モノヌクレオチドが、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、2'-フルオロGTP、2'-アミノCTP、2'-アミノUTP、2'-アミノATP、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルCTP、および2'-O-メチルGTPの一つまたは複数を含む、請求項1記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項8】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、次のアミノ酸置換の一つまたは複数を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種:
P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Y。
【請求項9】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、次のアミノ酸置換の2以上を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種:
P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Y。
【請求項10】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Yを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項11】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Yを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項12】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、P266Lを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項13】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、S633PおよびF849Iを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項14】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、S633PおよびF880Yを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項15】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、F849IおよびF880Yを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項16】
一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換が、S633P、F849I、およびF880Yを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種。
【請求項17】
次のアミノ酸置換を含む、T7 RNAポリメラーゼ変種:
N433T、E593G、Y639V、V685A、H784G、S430P、S633P、F849I、およびF880Y。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種をコードする核酸分子。
【請求項19】
請求項18記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項20】
請求項19記載の発現ベクターで形質転換された単離細胞であって、形質転換された細胞が、T7 RNAポリメラーゼ変種を発現することができる、単離細胞。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項記載のT7 RNAポリメラーゼ変種と、T7 RNAポリメラーゼプロモータを含むDNAテンプレートと、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドとを含む、反応混合物。
【請求項22】
一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドが、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、2'-フルオロGTP、2'-アミノCTP、2'-アミノUTP、2'-アミノATP、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルCTP、および2'-O-メチルGTPの一つまたは複数を含む、請求項21記載の反応混合物。
【請求項23】
請求項21または22記載の反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含むRNAポリヌクレオチドを作る方法。
【請求項24】
RNAポリヌクレオチドがアプタマーである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
RNAポリヌクレオチドがヌクレアーゼ耐性である、請求項23〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
請求項21または22記載の反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含む治療用RNAポリヌクレオチドを作る方法であって、前記DNAテンプレートが該治療用RNAポリヌクレオチドに相補的なテンプレート配列をさらに含む、前記方法。
【請求項27】
治療用RNAポリヌクレオチドがmiRNAまたはプレmiRNAである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
治療用RNAポリヌクレオチドがアプタマーである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドが、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、および2'-フルオロGTPの一つまたは複数を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
治療用RNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、標的遺伝子mRNAの配列の一部と相補的である、請求項26記載の方法。
【請求項31】
一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドが、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルGTP、および2'-O-メチルCTPの一つまたは複数を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
治療用RNAポリヌクレオチドがヌクレアーゼ耐性である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
請求項21または22記載の反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含むRNAポリヌクレオチドプローブを作る方法であって、前記DNAテンプレートが該RNAポリヌクレオチドプローブに相補的なテンプレート配列をさらに含む、前記方法。
【請求項34】
一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドが、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルGTP、および2'-O-メチルCTPの一つまたは複数を含む、請求項33記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年3月20日に出願された米国仮出願第61/968,231号の恩典を主張する。先述の開示の全文は、排除なしに具体的に参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
A.発明の分野
本発明は、全般的にタンパク質工学の分野に関する。より具体的には、修飾ヌクレオチドを組み込む能力を備え、かつ増強された転写活性を備えたT7 RNAポリメラーゼの変種が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0003】
B.関連技術の説明
RNAは用途が広くかつ有用であるが、その化学的な不安定性は、それを多くの治療的または生物工学的機能において不適切にすることがある。化学構造が改変されたオリゴヌクレオチド、特に(デオキシ)リボースの2'位が修飾されたオリゴヌクレオチドは、きわめて有効であることが証明されている(Wilson & Keefe, 2006)。2'-O-メチルRNAは、アンチセンスプローブとして、より高いTm値、より速い反応速度(kinetics)、およびより高い安定性を有し(Majlessi, et al., 1998)、そして2'Fおよび2'-O-メチルRNAを伴うsiRNAは、より安定かつ標的特異的であることも証明されている(Layzer, 2004; Kraynack & baker, 2006; Jackson, et al., 2006; Dean & Bennet, 2003)。加えて、2'-修飾NTPを用いたインビトロ選択は、より高い安定性と増強された化学ポテンシャルを備えたアプタマーおよびリボザイムをもたらした(Healy, et al., 2004; Waters, et al., 2011; Lupold, et al., 2002; Keefe & Cload, 2008; Burmeister, et al., 2005; Beaudry, et al., 2000)。
【0004】
修飾RNAは化学的に合成され得るが、それを酵素的に生成することが(特に、インビトロ選択のために)往々にして好ましい(Ellington & Szostak, 1990)。T7 RNAポリメラーゼは、インビトロでのRNAの産生のために長い間利用されており、そして拡張された基質範囲を有するようにこれまで設計され、発展してきた。最もよく知られているように、Y639F変異体は、2'-フルオロおよび2'-アミノ修飾リボースを伴うヌクレオチドを含有するRNA転写物の重合を可能にする(Kostyuk, et al., 1995; Sousa & Padilla, 1995; Huang, et al., 1997)。さらなる変異であるH784Aは、修飾ヌクレオチドの組み込み後の未成熟終止(premature termination)を排除すると考えられており、そしてY639F、H784A(「FA」)二重変異体は、2'位に嵩張った修飾(例えば、2'-O-メチル)を伴うヌクレオチドを組み込むことができる(Padilla & Sousa, 2002; Brieba & Sousa, 2004)。
【0005】
前述のY639およびH784残基、ならびに重要なR425およびG542がランダム化された定方向進化的アプローチは、拡張された基質特異性を備えたさらなるT7 RNAポリメラーゼ変種を作製するためにこれまで使用されてきた(Chelliserrykattil & Ellington, 2004)。結果として得られたライブラリは、インビボで(天然のリボースを用いて)RNAを転写する能力を保持するT7 RNAポリメラーゼ変種が豊富であり、改変された基質特異性についてインビトロでスクリーニングされた。「RGVG」(R425、G542、Y639V、H784Gに加えて、さらに選択の間に有機的に(organically)生じたE593GおよびV685A変異)と称される変異体は、2'-O-メチルUTPに対し強い活性を示した。「VRS」(G542VおよびH784SならびにさらにH772R変異)と称される第2の変異体は、2'-フルオロ修飾ピリミジンを組み込むことができた。つい最近の研究では、「2P16」変異体(7つのさらなる変異を伴うRGVGのバージョン(Siegmund, et al., 2012))およびR425C変異体(Ibach, et al., 2013)も明らかにされた。これらの変異体の各々は、2'-O-メチルRNAの作製を可能にすることが報告される。
【0006】
これらの酵素の固有の触媒性質が、それらを有用なツールにする一方で、それらのいくつかは、通常のリボヌクレオチドに対してすら低い活性に悩まされる。酵素において新しい活性を付与する変異はまた、タンパク質を不安定にもし、低い転写産出量を伴って酵素の活性を全体的に低下させることが提示されている(Wang, et al., 2002; Romero, et al., 2009)。
【発明の概要】
【0007】
本願は、修飾ヌクレオチドを組み込むことが可能なT7 RNAポリメラーゼ変種に関連する現在の低い活性の問題に対する解決策を提供する。ある局面において、拡張された基質範囲を有する変異体の活性を増大させ得る変異を備えたT7 RNAポリメラーゼ変種が開示される。結果として得られるポリメラーゼ変異体は、現在用いられている酵素よりずっと多い産出量で2'-O-メチル修飾RNAを産生するために使用され得る。
【0008】
野生型のT7 RNAポリメラーゼと比較して2'-修飾モノヌクレオチドを組み込む能力の増強を付与する一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換と、活性増強アミノ酸置換を伴わないT7ポリメラーゼ変種と比べてT7ポリメラーゼ変種の転写活性を増大させる一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換とを含むT7 RNAポリメラーゼ変種が開示される。いくつかの態様において、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換は、SEQ ID NO:1の野生型T7 RNAポリメラーゼ配列に対して次のアミノ酸置換の一つまたは複数を含む:G542V、E593G、Y639V、Y639F、V685A、H772R、H784A、H784S、およびH784G。いくつかの態様において、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換はG542V、H772R、およびH784Sを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換はY639Fを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換はY639FおよびH784Aを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の基質拡大アミノ酸置換は、E593G、Y639V、V685A、およびH784Gを含む。いくつかの態様において、T7 RNAポリメラーゼ変種が、伸長しているRNA鎖に組み込むことができる2'-修飾モノヌクレオチドは、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、2'-フルオロGTP、2'-アミノCTP、2'-アミノUTP、2'-アミノATP、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルCTP、および2'-O-メチルGTPの一つまたは複数を含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、次のアミノ酸置換の一つまたは複数を含む: P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Y。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、次のアミノ酸置換の2以上を含む: P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Y。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Yを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、P266L、S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Yを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、P266Lを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、S633PおよびF849Iを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、S633PおよびF880Yを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換はF849IおよびF880Yを含む。いくつかの態様において、一つまたは複数の活性増強アミノ酸置換は、S633P、F849I、およびF880Yを含む。
【0009】
次のアミノ酸置換を含むT7 RNAポリメラーゼ変種も開示される: N433T、E593G、Y639V、V685A、H784G、S430P、S633P、F849I、およびF880Y。
【0010】
上記のT7 RNAポリメラーゼ変種のいずれかをコードする核酸分子も開示される。上記のT7 RNAポリメラーゼ変種のいずれかをコードする核酸配列を含む発現ベクターも開示される。このような発現ベクターで形質転換された単離細胞も開示され、該形質転換された細胞は、上記のT7 RNAポリメラーゼ変種のいずれかを発現することができる。
【0011】
上記のT7 RNAポリメラーゼ変種のいずれかと、T7 RNAポリメラーゼプロモータを含むDNAテンプレートと、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドとを含む反応混合物も開示される。いくつかの態様において、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドは、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、2'-フルオロGTP、2'-アミノCTP、2'-アミノUTP、2'-アミノATP、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルCTP、および2'-O-メチルGTPの一つまたは複数を含む。上記反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含むRNAポリヌクレオチドを作る方法も開示される。いくつかの態様において、RNAポリヌクレオチドはアプタマーである。いくつかの態様において、RNAポリヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性である。上記反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含む治療用RNAポリヌクレオチドを作る方法であって、DNAテンプレートが該治療用RNAポリヌクレオチドに相補的なテンプレート配列をさらに含む、方法も開示される。いくつかの態様において、治療用RNAポリヌクレオチドはmiRNAまたはプレmiRNAである。いくつかの態様において、治療用RNAポリヌクレオチドはアプタマーである。いくつかの態様において、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドは、2'-フルオロCTP、2'-フルオロUTP、2'-フルオロATP、および2'-フルオロGTPの一つまたは複数を含む。いくつかの態様において、治療用RNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は標的遺伝子mRNAの配列の一部と相補的である。いくつかの態様において、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドは、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルGTP、および2'-O-メチルCTPの一つまたは複数を含む。いくつかの態様において、治療用RNAポリヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性である。上記反応混合物を37℃でインキュベートする段階を含む、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドを含むRNAポリヌクレオチドプローブを作る方法であって、DNAテンプレートが該RNAポリヌクレオチドプローブに相補的なテンプレート配列をさらに含む、方法も開示される。いくつかの態様において、一つまたは複数の2'-修飾モノヌクレオチドは、2'-O-メチルUTP、2'-O-メチルATP、2'-O-メチルGTP、および2'-O-メチルCTPの一つまたは複数を含む。
【0012】
用語「comprise(含む)」(および「comprises」「comprising」などのcompriseの任意の形)、「have(有する)」(および「has」「having」などのhaveの任意の形)、「include(含む)」(および「includes」「including」などのincludeの任意の形)、ならびに「contain(含有する)」(および「contains」「containing」などのcontainの任意の形)は、非制限的連結動詞である。結果として、一つまたは複数の要素を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」または「含有する(contains)」本発明の方法およびシステムは、それら一つまたは複数の要素を所有するが、それら一つまたは複数の要素だけを所有することに限定されない。同様に、一つまたは複数の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」または「含有する(contains)」本発明の方法またはシステムの要素は、それら一つまたは複数の特徴を所有するが、それら一つまたは複数の特徴だけを所有することに限定されない。
【0013】
ある態様の特徴または特徴群は、説明または図示されていないとしても、本開示または態様の本質により明示的に禁止されていない限り、他の態様に適用されてもよい。
【0014】
本発明の任意の方法またはシステムは、記載された要素および/または特徴および/または段階のいずれか(を含み得る/含み得る/含有し得る/有し得るというよりむしろ)からなり得る、または、から本質的になり得る。したがって、任意の請求項において、さもなければ上記の非制限的連結動詞を用いていただろう所与の請求項の範囲を変えるために、用語「からなる」または「から本質的になる」が、任意の上記の非制限的連結動詞に置き換わることができる。
【0015】
上記および他の態様と関連する詳細を、以下に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】安定化変異は、VRS変異体の活性を増大させる。A) リボヌクレオチド(rN)転写生産物のリアルタイム測定。B) 2'-フルオロピリミジン(rRfY)転写生産物のリアルタイム測定。C) 3時間後のリボヌクレオチド(rN)転写生産物の測定。D) 3時間後の2'-フルオロピリミジン(rRfY)転写生産物の測定。蛍光測定値(相対蛍光単位RFUにおける)は、蛍光アプタマーspinachの存在を示す。エラーバーは、3回の独立して集められた反応から得られた標準誤差を表す。
【
図2】転写している熱安定性「M5」RNAポリメラーゼ開始複合体の構造。A) 野生型T7 RNAポリメラーゼ(暗灰色、PDB アクセッション番号 1QLN (Cheetham, 1999))を重ねられたM5 T7 RNAポリメラーゼ(白)。B) F880Y変異の結果として生じる付加されたヒドロキシル基は、P474およびF475の間のペプチド骨格と水素結合(破線)を形成する。
【
図3A】安定化変異は、数個のT7 RNAポリメラーゼ基質特異性変異体の活性を増大させる。A) 1時間後のリボヌクレオチド(rN)転写生産物の測定。蛍光測定値(相対蛍光単位RFUにおける)は、蛍光アプタマーspinachの存在を示す。エラーバーは、3回の独立して集められた反応から得られた標準誤差を表す。
【
図3B】安定化変異は、数個のT7 RNAポリメラーゼ基質特異性変異体の活性を増大させる。B) 2時間後の2'-フルオロピリミジン(rRfY)転写生産物の測定。蛍光測定値(相対蛍光単位RFUにおける)は、蛍光アプタマーspinachの存在を示す。エラーバーは、3回の独立して集められた反応から得られた標準誤差を表す。
【
図3C】安定化変異は、数個のT7 RNAポリメラーゼ基質特異性変異体の活性を増大させる。C) 2'-O-メチルウリジン(rVmU)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は(α
32P)ATPの取り込みによって標識され、そして変性PAGEにより分析された。WT T7 RNAポリメラーゼのリボヌクレオチド(rN)との反応が、比較のために含まれる。転写は4時間実行され、2つの別箇のゲルが示される。
【
図4】安定化T7 RNAポリメラーゼ変異体は、重く(heavily)修飾されたRNAの産出量を増大させた。2'-O-メチルウリジン(rVmU、A)、2'-O-メチルピリミジン(rRmY、B)、または2'-O-メチルアデノシンおよび2'-O-メチルピリミジン(rGmH、C)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は(α
32P)ATP (rVmUおよびrRmY)または(α
32P)GTP (rGmH)の取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。リボヌクレオチド(rN)に対するWT T7 RNAポリメラーゼによる産出量を示す100に対して、すべての値が正規化される。転写は4時間(rVmUおよびrRmY)または20時間(rGmH)実行された。
【
図5】RGVG M6は完全修飾RNAを転写することができる。RGVG-M6により触媒される、リボヌクレオチド(rN); 2'-O-メチルウリジン(rVmU); 2'-O-メチルピリミジン(rRmY); 2'-O-メチルアデノシンおよび2'-O-メチルピリミジン(rGmH); 2'-O-メチルヌクレオチド(mN); 2'-フルオロ-プリンおよび2'-O-メチルピリミジン(fRmY);ならびに2'-フルオロ-グアノシン、2'-O-メチルアデノシン、および2'-O-メチルピリミジン(fGmH)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。転写は20時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応(10倍希釈)が、比較のために示される。
【
図6】許容バッファー(permissive buffer)中の2'-O-メチルヌクレオチド(mN)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。転写は20時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応(10倍希釈)が、比較のために示される。
【
図7】2'-O-メチルウリジン(rVmU)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は、(α
32P)ATPの取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。転写は4時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応が、比較のために示される。
【
図8】2'-O-メチルピリミジン(rRmY)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は(α
32P)ATPの取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。転写は4時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応が、比較のために示される。
【
図9】2'-O-メチルアデノシンおよび2'-O-メチルピリミジン(rGmH)の組み込みについての転写アッセイ。転写物は(α
32P) GTPの取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。転写は20時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応(50倍希釈)が、比較のために示される。
【
図10】さまざまなバッファー中の2'-O-メチルヌクレオチド(mN)のRGVG-M6転写。転写物は変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。転写は20時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とRGVG-M6を含有する反応が、比較のために示される。各反応の組成は下に示される。
【
図11】各T7 RNAポリメラーゼ変異体の相対熱安定性。熱融解(thermal melt)アッセイが、数個の変異体T7 RNAポリメラーゼについて実施された。時間の関数としての蛍光における変化の一次導関数を用いて、相対T
mの近似値を求めた。示されたデータは3つの独立して集められた反応の平均であり、エラーバーは標準誤差を表している。
【
図12】許容バッファー中での2'-O-メチルヌクレオチド(mN)の転写におけるRGVG-M5およびRGVG-M6のY639L H784Aに対する比較。転写物は、変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。転写は20時間実行された。リボヌクレオチド(rN)とWT T7 RNAポリメラーゼを含有する反応が、比較のために示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
さまざまな特徴および有利な詳細が、添付の図面に図示され、以下の説明で詳述された限定されない態様を参照してより十分に説明される。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の態様を示しているものの、限定する目的ではなく例示だけの目的で与えられることを理解するべきである。さまざまな置換、改変、付加および/または再構成が、この開示から、当業者に明らかにされるだろう。
【0018】
以下の記述において、数多くの具体的な詳細が、開示された態様の完全な理解をもたらすために提供される。関連分野の通常の知識を有する者は、しかしながら、本発明は一つまたは複数の具体的な詳細なしに、または他の方法、成分、材料などを用いて、実施されてもよいことを認識するだろう。他の場合において、本発明の局面をあいまいにすることを避けるために、周知の構造、材料、または操作を詳細に示すことはしない、または記載することはしない。
【0019】
A. T7 RNA ポリメラーゼ
野生型T7 RNAポリメラーゼは下記の配列を有する(SEQ ID NO: 1):
【実施例】
【0020】
B. 実施例
本発明は具体的な実施例によってより詳細に説明されるだろう。以下の実施例は、例示する目的のためだけに与えられるものであり、そしていかなるようにも発明を限定することを意図するものではない。当業者は、実質的に同一の結果を生じるために変化させ得るまたは改変させ得るさまざまな重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【0021】
実施例1 材料および方法
T7 RNAポリメラーゼ変種の調製
T7 RNAポリメラーゼORFをpQE-80L (Qiagen)にクローニングした。すべてのT7 RNAポリメラーゼ変種は、メガプライマーPCR (Bryksin & Matsumura, 2010)または等温アセンブリ(isothermal assembly)(Gibson, 2011)のいずれかによって、このプラスミドから派生した。プラスミドで、BL21-Gold (Agilent)大腸菌(E. coli)細胞を形質転換した。細胞は、37℃で一晩、2xYT培地中で培養された。二次培養物は、37℃でOD600が約0.7〜0.8に到達するまで培養され、その時点で1 mM IPTGが添加された。細胞は、37℃で4時間培養され、沈殿され、-80℃で凍結された。沈殿物は、結合バッファー(50 mM Tris-Hcl、pH8.0、0.5 M NaCl、5 mMイミダゾール)中に再懸濁された。再懸濁された細胞は、氷上で、50%プローブ振幅を用いた、3分間(1秒オン、1秒オフ)のソニケーションによって、溶解された。細胞残屑は遠心分離により沈殿された(30分: 10,000g)。His-タグ化T7 RNAポリメラーゼは、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)により精製された。溶解物を、結合バッファーを用いて予め平衡化された1 ml (ビーズ体積) Ni-NTA (Fisher)グラビティカラムに流した。カラムを10カラム量の洗浄バッファー(50 mM Tris-Hcl、pH 8.0、0.5 M NaCl、20 mM イミダゾール)で洗浄した。T7 RNAポリメラーゼを、3カラム量の溶出バッファー(50 mM Tris-Hcl、pH 8.0、0.5 M NaCl、250 mM イミダゾール)の添加によりカラムから溶出させた。透析を、最終保存バッファー(50 mM Tris-Hcl、pH 8.0、100 mM NaCl、1 mM DDT、1 mM EDTA)中で実施した。透析物(dialate)は、1 mg/mlに調製され、そして等量のグリセロールに添加された(最終濃度0.5 mg/ml)。
【0022】
インビトロ転写アッセイ
リアルタイム転写反応(
図1、
図3A〜3B)は、40 mM Tris-HCl pH 8.0、30 mM MgCl2、6 mMスペルミジン、6 mM 各NTP (または修飾NTP)、10 mM DTT、500 mM T7 RNA ポリメラーゼ、500 mM DNA テンプレート、および0.17 mg/ml DFHBI (DMSO中)を含有した。反応は、37℃で最大4時間インキュベートされ、spinach蛍光(励起/発光469/501)測定値をSafireモノクロメータ(Tecan)で1〜4分間得た。spinachテンプレートは、オーバーラッピングプライマー
をAccuprime Pfxと共にその標準バッファー中でサーマルサイクリングすることで作られた(94℃:2分、12サイクル[94℃:15秒、50℃:30秒、68℃:30秒]、68℃:1分)。テンプレートは、QIAquick Gel Extraction Kit (Qiagen)により精製された。
【0023】
エンドポイント転写反応は、40 mM Tris-HCl pH 8.0、30 mM MgCl2、6 mMスペルミジン、6 mM 各NTP (または修飾NTP)、10 mM DTT、500 mM T7 RNAポリメラーゼ、500 mM DNAテンプレートを含有した。反応は37℃で最大4時間または20時間インキュベートされた。DNAテンプレートは上記のとおりに作られた。rVmU反応(
図3C、
図4A、および
図7)およびrRmY反応(
図4Bおよび
図8)は4時間実行され、0.17 μM (α32P)ATP (3000 Ci/mMol)の取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。rGmH反応(
図4Cおよび
図9)は20時間実行され、0.17 μM (α32P)GTP (3000 Ci/mMol)の取り込みにより標識され、そして変性PAGEにより分析された。RGVG-M6反応(
図5)は20時間実行され、37℃で1時間、0.03 U/ul Baseline-ZERO DNaseと共にその供給されたバッファー中でインキュベートされ、変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。バッファー比較(
図10)は、図中に掲載されたバッファーを用い、20時間実行され、37℃で1時間、0.03 U/ul Baseline-ZERO DNaseと共にその供給されたバッファー中でインキュベートされ、変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。
【0024】
許容バッファー中のmN(
図6)は、200mM HEPES pH 7.5、5.5 mM MgCl2、2 mM スペルミジン、0.5 mM 各2'-O-メチル-NTP、40 mM DTT、0.01%トリトン、10% PEG8000、1.5 mM MnCl2、10 U/ml YIPP、200 nM RNAポリメラーゼ、および200 nM DNAを含有した。反応は20時間実行され、37℃で1時間、0.03 U/ul Baseline-ZERO DNaseと共にその供給されたバッファー中でインキュベートされ、変性PAGEにより分析され、そしてSYBR-Gold中で染色した後に画像化された。
【0025】
32Pゲルを、STORM 840 Phospoimager (GE Healthcare)で画像化する前に、ストレージフォスファスクリーン(Molecular Dynamics)に曝露した。ImageQuant (GE Healthcare)を用いてオートラジオグラフを解析した。
【0026】
熱融解測定
各T7 RNAポリメラーゼの相対熱安定性を、PBSバッファー中の0.5 mg/ml酵素をTexasRed色素(Invitrogen)と共にインキュベートすることにより、評価した。酵素/色素混合物を、37℃で10分間平衡化し、そして、蛍光をモニタリングしながら(励起577 nm / 発光620 nm)、0.07℃/秒のペースで97℃までLightCycler96サーモサイクラーを用いて加熱した。時間の関数としての蛍光における変化の一次導関数を用いて、相対T
mの近似値を求めた。データは、Rocheサーモサイクラーソフトウェアを用いて解析された。
【0027】
実施例2 安定化変異は、T7 RNAポリメラーゼ変異体G542V H784Sの活性を増大させる
改変された基質特異性を備えたRNAポリメラーゼについて選択する以前の実験(Chelliserrykattil & Ellington, 2004)は、入ってくるヌクレオチドの近位にあり、したがって基質認識においておそらく役割を果たす4つのアミノ酸に注目した(Cheetham, 1999; Temiakov, et al., 2004)。結果として得られた変異体の一つは、「VRS」と呼ばれ、2'F-修飾ピリミジンを組み込むことができた。VRSは、ランダム化された残基の2つに変異を有していた(すなわち、G542VおよびH784S)。興味深いことに、H772はランダム化されていないにも関わらず、H772R変異もまた、選択の間に生じた。H772Rは、基質認識ドメインに近くないが、T7 RNAポリメラーゼ活性についての他の選択において見られた (Ellefson, et al., 2013; Dickinson, et al., 2013)。H772Rが普遍的な安定化変異かどうかを試験するために、「VS」と呼ばれる、H772RなしのVRSの派生物が構築された。精製された酵素が、天然のNTP(rN)からまたはリボプリンと2'-F-ピリミジン(rRfY)から構成されているポリメラーゼRNAに対するそれらの能力について試験された(
図1)。リアルタイムポリメラーゼ活性が、DFHBIの存在下で、蛍光アプタマーspinachを用いてアッセイされた(Van Nies et al., 2013)。spinachは、DFHBIに結合し、そして、純粋にリボアプタマーとして転写されるかどうか、または2'-F-ピリミジンで置換されたときに転写されるかどうかに関わらず、蛍光を発する。ただし、2'-F-ピリミジンバージョンは純粋なリボヌクレオチドバージョンと比べると約30%しか蛍光を発しない。2'-O-メチル置換されたspinachは、検出可能に蛍光を発しない。
【0028】
とりわけ、VSは、各基質組成物に対する活性において低下を示した。このことは、H772Rが、基質選択についてのいかなる考慮も別として、VRSの全体的な活性に貢献していることを示唆している。さらなる変異を伴うVRSのさらに数個の派生物が作製され、そしてVRSの活性を増大させるそれらの能力について試験された。いわゆる「M5」(S430P、N433T、S633P、F849I、およびF880Y(米国特許第7,507,567号))および「M6」(プロモータクリアランスに関連するさらなるP266L変異を伴うM5(Guillerez, et al., 2005))変異セットは、rNおよびrRfYの両方の組み込みについて、VRS変異体の活性を増大させた。
【0029】
実施例3 「M5」変異は、数個のT7 RNAポリメラーゼ基質特異性変異体の活性を増大させる
「M5」変異が、より高い温度での転写活性についてのT7 RNAポリメラーゼの選択において生じた。野生型背景(wild type background)において、これらの変異は50℃での酵素の半減期を増大させ、そしてその温度での転写を可能にする。M5タンパク質が結晶化されたが、野生型T7 RNAポリメラーゼ結晶(Cheetham, 1999)に対して大きな形態学的違いはほとんど見られない(
図2A)。しかしながら、F880Yにより作られた、付加された水素結合があり、これは、パームドメインの2つの部分(two halves)を安定化させることができる(
図2B)。F880Y変異がVRS活性を増大させるのに十分でないことは着目されるべきである(
図1C〜1DのVRSYを参照されたい)。
【0030】
次に、M5およびM6変異が、他のT7 RNAポリメラーゼ変異体の活性を増大させ得るかどうかについて試験された。改変されたリボース特異性を備えた数個の既知のポリメラーゼ、つまりWT、Y639F、FA、RGVG、VRS、およびR425C(表1)が、試験された。これらの特異性変異体のそれぞれに対し、安定性変異のセット、つまり「L」(P266L)、M5、およびM6、が加えられた。また、おそらくRGVGの安定化バージョンである、最近記述された変異体2P16も含まれた。これら25個のポリメラーゼが精製され、そしてインビトロで転写活性についてアッセイされた(
図3)。
【0031】
(表1)T7 RNAポリメラーゼ変異体のリスト
【0032】
天然のリボチド(rN;
図3A)、2'-F-ピリミジン(rRfY;
図3B)、又は2'-O-メチルウリジン(rVmU;
図3C)を転写するかどうかに関わらず、M5およびM6変異は、変異体FA、RGVG、およびVRSの活性を増大させた。rNに対するWTおよびY639Fの活性は、M5変異によりわずかに増大したが、この傾向は、rRfY又はrVmUの組み込みにおいては維持されなかった。2P16は、確かにRGVGより活性がある(以前に報告されたように(Siegmund, et al., 2012))が、RGVG M5またはRGVG M6ほど活性がないことが分かる。ポリメラーゼのR425Cファミリーから転写は検出されなかった。
【0033】
最も活性の高いポリメラーゼのサブセットを、2'-O-メチルウリジン(rVmU)、2'-O-メチルピリミジン(rRmY)、ならびに2'-O-メチルアデノシンおよび2'-O-メチルピリミジン(rGmH)を組み込む能力についてアッセイした(
図4、
図7〜9)。上記rNおよびrRfYの場合のように、M5変異は、基質の各セットに対するFAおよびRGVG酵素の活性を増強した。RGVG-M6は、すべての条件において最も活性の高い酵素で、2'-O-メチルRNAを産生するために最も一般的に使用される酵素であるFA変異体より少なくとも25倍多いRNAを産出した。
【0034】
熱融解アッセイにより、試験されたすべてのT7 RNAポリメラーゼ変種について、M5変異の付加によりその熱安定性が増大したことが確認された(
図11)。活性の弱いRGVG変異体は、WT T7 RNAポリメラーゼのそれよりおおよそ5℃低いT
mを有していたが、安定性のこの低下とRGVGの活性は、M5変異によって取り戻される。しかしながら、期待に反して、同様に弱いVRSおよびFA変異体は、低い融解温度をもたず、そしてH772R変異は、T
mに対し期待される効果がなかった。これらの変異の付加による活性の増大は、安定性の増大のみに帰することはできないように見える。
【0035】
実施例4 T7 RNAポリメラーゼR6は、完全修飾RNAの高収率転写のために効果的である
RGVG-M6が3つの2'-O-メチルヌクレオチドを含有するRNAの形成を触媒できるということを証明したのち、完全修飾RNAを産生するその能力がアッセイされた。RGVG-M6は、2'-F-プリンおよび2'-O-メチルピリミジンの組み合わせ(fRmY)ならびに2'-F-グアノシン、2'-O-メチルアデノシン、および2'-O-メチルピリミジンの組み合わせ(fGmH)を用いて重合することができた(
図5)。完全2'-O-メチルRNA (mN)は得られなかった。
【0036】
mN組み込みの以前の報告は、マンガンならびにrGMPおよび/またはrGTPを含む、さらに多くの許容バッファー組成物を用いていた。数種のこのような許容バッファー中でmN RNAを合成するRGVG-M6の能力が試験され(
図10)、そして、効果的なmN重合がrGMPまたはrGTPを含むバッファー中で達成されることが決定された。この許容バッファー(200 mM HEPES pH 7.5、5.5 mM MgCl
2、2 mMスペルミジン、0.5 mM 各2'-O-メチル-NTP、40 mM DTT、0.01%トリトン、10% PEG8000、1.5 mM MnCl
2、10 U/ml 酵母無機ピロリン酸、200 nM RNA ポリメラーゼ、および200 nM DNA)においてmN重合のための酵素の一団が試験された。FA-M5およびFA-M6は、親FA変異体と比べて活性の増大を示す。RGVG-M5、RGVG-M6、および2P16は、親RGVGと比較して顕著な改善を示した。さらに、RGVG-M5およびRGVG-M6は、このバッファー中で、実質的にY639L H784A変異体(米国特許第8,105,813号)より多くのRNAを産生する。
【0037】
一定程度の特殊性を伴い、または一つまたは複数の個別の態様に関連して、特定の態様を上述したけれども、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく開示された態様の数多くの改変を作ることができるだろう。さらに、適切な場合、任意の上述の実施例の局面は、同等または異なる性質をもち、かつ同一または異なる問題に対処しているさらなる実施例を形成するように記述された任意の他の実施例の局面と組み合わされてもよい。同様に、上述された利点および利益が、一つの態様に関係してもよいこと、または数個の態様と関係してもよいことが理解されるだろう。
【0038】
請求項は、ミーンズプラスファンクション限定、またはステッププラスファンクション限定を含むと解釈されるものではないが、このような限定が、それぞれ「のための手段」または「のための段階」というフレーズを使って所与の請求項に明確に規定される場合は別である。
【0039】
参考文献
以下の参考文献は、これらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供するという範囲で、具体的に本明細書に参照により組み入れられる。
【国際調査報告】