(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509497(P2017-509497A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】打込装置
(51)【国際特許分類】
B25C 1/18 20060101AFI20170317BHJP
【FI】
B25C1/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-555829(P2016-555829)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2015056202
(87)【国際公開番号】WO2015144671
(87)【国際公開日】20151001
(31)【優先権主張番号】14162172.2
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ブレッシンク, マティアス
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
(57)【要約】
本発明は、手持ち式のハウジング(1)と、ピストンガイド(2)の中に収容され、打ち込む留め具(4)に対し、発射薬(3)からのエネルギを伝達するピストン手段と、前記ピストンガイド(2)に着脱可能に結合される前方部材(6)とを備えた打込装置に関する。前方部材(6)とピストンガイド(2)とは、ピストン手段の中心軸線(A)に平行に相対的な移動が可能であって、前方部材(6)をピストンガイド(2)に対して分解用角度だけ回転させることにより、前方部材(6)がピストンガイド(2)から取り外され、分解用角度の回転は、固定機構(7)の回転規制機構の規制に抗して行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式のハウジング(1)と、
ピストンガイド(2)の中に設けられ、打ち込む留め具(4)に対し、発射薬(3)からエネルギを伝達するピストン手段と、
前記ピストンガイド(2)に着脱可能に結合される前方部材(6)とを備え、
前記前方部材(6)と前記ピストンガイド(2)とは、前記ピストン手段の中心軸線(A)に平行に相対的な移動が可能であって、
前記ピストンガイド(2)からの前記前方部材(6)の取り外し作業は、前記前方部材(6)と前記ピストンガイド(2)との分解用角度の相対的な回転を含み、
前記分解用角度の相対的な回転は、固定機構(7)の回転規制機構の規制に抗して行う
ことを特徴とする打込装置。
【請求項2】
前記固定手段(7)は、弾性的に保持されて前記前方部材(6)及び前記ピストンガイド(2)の一方に設けられた少なくとも1つの案内部材(9)を備えることを特徴とする請求項1に記載の打込装置。
【請求項3】
前記案内部材(9)は、前記前方部材(6)及び前記ピストンガイド(2)の他方に設けられて前記中心軸線(A)に平行に延設された案内溝(8)の中で移動することを特徴とする請求項2に記載の打込装置。
【請求項4】
少なくとも1つの軸線方向解除位置に、前記案内溝(8)から周方向に分岐する横方向溝(13,14)が設けられ、
前記横方向溝(13,14)は、前記案内溝(8)よりも深さが浅いことにより、前記回転規制機構を形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の打込装置。
【請求項5】
前記案内溝(8)と平行に延設された分解用溝(12)を備え、
前記案内部材(9)は、前記横方向溝(13,14)を介し、前記案内溝(8)から前記分解用溝(12)に移動可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の打込装置。
【請求項6】
前記軸線方向解除位置は、前記案内溝(8)の軸線方向の端部に近接した位置であることを特徴とする請求項4または5に記載の打込装置。
【請求項7】
前記案内溝(8)の軸線方向の2つの端部のそれぞれの位置が、周方向に分岐する横方向溝(13,14)を有した軸線方向解除位置となることを特徴とする請求項6に記載の打込装置。
【請求項8】
前記案内部材(9)は、球体として形成されることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の打込装置。
【請求項9】
前記案内部材(9)は、弾性保持リング(10)により、穴(11)内に保持されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の打込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に記載の打込装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、発射薬を用いた手持ち式打込装置が知られており、この装置では、発射薬に点火した後、発生する燃焼ガスが燃焼室内で膨張する。これにより、エネルギ伝達手段であるピストンが加速され、留め具を作業対象物に打ち込む。
【0003】
このような、ピストンの自動復帰機能を有さない打込装置の構成の場合には、打込作業の後、手動による復帰操作によってピストンが元の位置に戻される。このため、復帰操作の第1段階において、所定位置のストッパで停止するまで、ハウジングに対し、ピストンガイドが打込方向に押し出される。復帰操作の第2段階では、ピストンガイドがピストンと共に、所定位置の後方ストッパに達するまで、逆方向に向けてハウジング内に押し込まれる。打込作業の過程において、ピストンガイドの前方部材が作業対象物上に置かれ、軸線方向の移動で停止位置まで押し込まれた状態となることにより、打込装置の起動が可能となる。このような装置のメンテナンス及び清掃のため、この前方部材はピストンガイドから取り外し可能となっており、一般的には、この後にピストンもピストンガイドから取り外すことが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の打込装置の場合、ピストンガイドからの前方部材の取り外しは、これらピストンガイド及び前方部材を、軸線方向移動の概ね中程となる中間位置まで軸線方向に移動した後、両者を相対的に回転させてから、軸線方向に引っ張って分離しなければならないという作業を伴うものとなっている。このような作業は、ピストンガイドに設けられた案内溝の屈曲構造に対応したものである。組付けは、逆の手順で行われることになる。
【0005】
本発明の目的は、メンテナンスのための単純な分解作業を可能とするような打込装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
最初に述べたような打込装置に関し、この目的は請求項1に特定する特徴の発明によって達成される。回転規制機構を設けることにより、前方部材とピストンガイドとの分解及び組立作業が改善される。更に、意に反した部材の離脱を、単純な機構によって防止することができる。
【0007】
本発明における中心軸線は、少なくとも留め具の移動方向に平行な軸線であって、ピストン手段の中心を通る軸線である。
【0008】
本発明におけるピストン手段は、発射薬の点火によって得られる運動エネルギを付与する任意の手段であって、当該運動エネルギは最終的に留め具に伝達される。このピストン手段は、円柱状のピストンとして具現化されることが多い。
【0009】
本発明におけるピストンガイドは、ピストン手段の少なくとも後方部分を案内する部材である。具体的には、発射薬が点火されてピストン手段を加速する領域となる燃焼室を、ピストンガイドが備えていてもよい。
【0010】
本発明におけるピストンガイドの前方部材は、作業対象物に対面する部材であって、作業対象物上に置かれて作業対象物に押し付けられることにより、打込作業の開始前にピストンガイドの方に移動されるものである。前方部材がピストンガイドの方に移動しない場合には発射薬の点火を阻止するための打込装置用安全機構が、この移動によって解除されるようにするのが好ましい。
【0011】
前方部材には、留め具を収容する発射口部材が挿入され、この発射口部材内にピストン手段の前端部を移動可能とするのが好ましい。
【0012】
回転規制機構は、回転に対して抵抗となるものであって、この抵抗は、相応のトルクを超過すると発生する。このような機能は、固定機構で弾性を有するかまたはバネ付勢された部材の係止によって得られるようにしてもよい。
【0013】
本発明における固定機構は、通常の作動状態において、ピストンガイドからの前方部材の離脱を防止する機構である。
【0014】
本発明における留め具は、例えば、釘、ボルト、ネジなどといった打ち込み可能な任意の固定部材である。
【0015】
本発明の有用な態様の全般において、固定機構は、前方部材及びピストンガイドの一方に設けられ、弾性的に保持されるのが好ましい少なくとも1つの案内部材を備える。この案内部材は、前方部材及びピストンガイドの他方に設けられて中心軸線と平行に延設された案内溝の中で移動するのが特に好ましい。これにより、装備される部材の、機械的に単純で安全に構成された結合構造が得られる。単純な構造として、案内溝は、前方部材内に挿入されるピストンガイドに設けられるのが好ましい。
【0016】
回転規制機構を単純に具現化するため、案内溝から周方向に分岐する横方向溝が、少なくとも1つの軸線方向解除位置に設けられ、この横方向溝は、案内溝よりも浅く形成されることにより、回転規制機構を形成する。従って、案内部材は、バネ付勢力に抗して、浅くなった部分を乗り越える必要が生じ、これに対応し、回転に必要なトルクが増大する。横方向溝の好ましい具体的構成として、聴覚的に感知可能とすることも可能なラッチ機構により実現することができる。
【0017】
案内溝と平行に延設される分解用溝を設け、案内部材は、横方向溝を介し、案内溝から分解用溝内に移動可能とするのが、より好ましい。案内部材が分解用溝内に移動すると、ピストンガイドから前方部材を引き抜くことが可能となるが、このために、分解用溝は、ピストンガイドの端部において開放されているのが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい一態様において、案内溝の軸線方向の端部近傍に、軸線方向解除位置が配置される。これにより、作業者は、回転させる前に、ピストンガイドに対して前方部材を停止するまで押すか引くだけでよいので、部材の取り外しを直感的且つ単純なものとすることができる。特に好ましい態様において、案内溝の軸線方向の2つの端部のそれぞれの位置が、周方向に分岐する1つの横方向溝を有した軸線方向解除位置となる。これにより、ピストンガイドに対し、軸線方向における前方部材のどちらの端部においても取り外しが可能となるので、着脱作業が特に単純化されて直感的なものとなる。
【0019】
低摩擦抵抗及び良好な感触を得るための具体的な好ましい構成として、案内部材が球体として形成される。従って、案内溝及び分解用溝の少なくとも一方は、この球体の径に対応した部分円の断面形状を有するようにしてもよい。
【0020】
案内部材の単純な構成として、当該案内部材が弾性保持リングにより、穴の中に保持される。この穴は、案内部材が穴の中に完全に入り込むことはできずに一部が外方に突出するような寸法で形成される。
【0021】
固定機構は、分解する際に、ピストンガイド及び前方部材の他に、分離される部材を有していないのが好ましい。これにより、固定ピンやスナップリング等といった小部品を紛失するおそれがなくなる。
【0022】
上述したような固定機構は、例えば、それぞれに1つずつ案内部材を有し、周方向に180°ずらして設けられた2つの案内溝のように、複数設けるのがより好ましい。案内部材は、一般的なスナップリングなどにより、付勢された状態で保持するようにしてもよい。
【0023】
本発明の更なる特徴及び利点は、従属請求項のみならず、実施形態からも得ることができる。好ましい実施形態について、添付の図面を用い、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】着脱可能に取り付けられた前方部材を有する、
図1の打込装置のピストンガイドを示す図である。
【
図3】前方部材を取り外した状態の、
図2のピストンガイドの詳細図である。
【
図4】ピストンガイドを取り外した状態の、
図2の前方部材の詳細図である。
【
図5】前方部材を取り付けた状態の
図2のピストンガイドの、中心軸線Aに沿う方向の断面を示す図である。
【
図6】
図5のピストンガイドの、B−B線に沿う方向の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による打込装置は、ピストン(図示せず)として形成されるピストン手段を収容する手持ち式のハウジング1を備えている。ピストン手段は、燃焼室を有したピストンガイド2内に配置されており、この燃焼室内で発射薬3の燃焼ガスが膨張することにより、ピストンが加速されるようになっている。
【0026】
このようにして運動エネルギが付与されたピストンは、端部のプランジャを留め具4に打ち当て、これにより留め具4が作業対象物に打ち込まれることになる。留め具4は、発射口部材5内に挿入されており、この発射口部材5は、ピストンガイド2の前方部材6内に受容されている。留め具4及び発射口部材5は、それぞれ中心軸線Aを中心に回転対称に形成されている。中心軸線Aは、ピストンガイド2及びピストン手段のそれぞれの中心軸線でもある。
【0027】
前方部材6は、ピストンガイド2の外周を囲うように設けられ、固定機構7を用いてピストンガイド2に着脱可能に固定される。このような固定状態(
図2、
図5及び
図6を参照)において、前方部材6及びピストンガイド2は、ストッパによって停止するまで、移動幅Hだけ相対移動することができるようになっている。
【0028】
このような相対移動により、打込装置の作動中は、打込装置が作業対象物上に置かれ、前方部材が移動幅Hの移動後に十分な大きさの押圧力で押し付けられている場合に限り、発射薬3の点火が可能となるよう、安全機構が公知の方法で作動する。
【0029】
本発明は、ピストンガイド2への前方部材6の着脱可能な固定に関するものである。このために、案内溝8がピストンガイド2の外面に形成されており、この案内溝8は、実質的に部分円の断面形状を有している。案内溝8には、鋼鉄製の球体からなる案内部材9が係合する。案内溝8の長さは、軸線方向の移動幅Hに相当するものとなっており、案内溝8の両端部分は封鎖されている。
【0030】
球状の案内部材9は、スナップリング10によって外側から内方に付勢されるようにして、前方部材6の周壁に形成された穴11内に保持されている。穴11は、球状の案内部材9の径より小さい最大径を有しており、案内部材9が内壁面から部分的に突出するだけで、落下することがないようになっている。
【0031】
案内溝8と平行に分解用溝12が延設されており、この分解用溝12の一端が、ピストンガイド2の端部で開放されている。
【0032】
案内溝8の両端部のそれぞれからは、横方向溝13及び横方向溝14が、分解用溝12に達するまで周方向に延設されている。横方向溝13及び横方向溝14のぞれぞれは、分解用溝12及び案内溝8よりも浅く形成されている。
【0033】
本発明は、以下のようにして機能する。
【0034】
まず、ピストン及び発射口部材5が設けられた、前方部材6及びピストンガイド2からなる組立モジュールを打込装置から取り外すが、必要であれば、この作業の前に保持機構を解除する。次に、ピストンを取り出して必要に応じ清掃及びメンテナンス作業を行うため、ピストンガイド2と前方部材6をと互いに分離する。
【0035】
このような作業においては、まず、案内部材9が案内溝8の一端で停止するまで、前方部材6を引っ張るか、または押す。このような状態から、前方部材6をピストンガイド2に対して約20°の分解用角度だけ回転させ、対応する横方向溝13または横方向溝14を介し、案内部材9を分解用溝12内に移動させる。このとき、横方向溝13または横方向溝14は深さが減少しているので、案内部材9は、スナップリング10の付勢力に抗して押し上げられる。このため、回転中は、基準のトルクを上回る回転トルクが必要になる。
【0036】
案内部材9が、分解用溝12に達すると、前方部材6をピストンガイド2から引き抜くことが可能となる。
【0037】
分解した後の組み立て作業は、逆の手順で行われる。
【0038】
図示するように、分解用溝12、案内溝8、横方向溝13、横方向溝14、及び案内部材9からなる2組の同様な固定機構7が設けられ、これらは、互いに周方向に180°ずれた位置で、ピストンガイド2及び前方部材6に設けられている。これにより、ピストンガイド2における前方部材6の均一で低抵抗の案内を確保することができる。
【国際調査報告】