特表2017-509501(P2017-509501A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509501(P2017-509501A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】ベルト冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20170317BHJP
【FI】
   B25F5/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-559294(P2016-559294)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2015056192
(87)【国際公開番号】WO2015144664
(87)【国際公開日】20151001
(31)【優先権主張番号】14161412.3
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】トールステン ルッティヒ
(57)【要約】
電動工具は、ハウジングと、モータ、特に電気モータと、モータで駆動することができる駆動シャフトと、工具にモータの駆動力を伝達するベルト駆動装置と、ハウジング内の第1の通気路に空気流を生成し、少なくともモータを冷却する第1のファンとを備える。第1のファン及びベルト駆動装置は、駆動シャフトで駆動され得る。電動工具は、ハウジング内の第2の通気路に空気流を生成し、少なくともベルト駆動装置を冷却する第2のファンを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)と、
モータ(20)、特に電気モータと、
前記モータ(20)で駆動される駆動シャフト(22)と、
前記モータ(20)の駆動力を工具に伝達するベルト駆動装置(50)と、
前記ハウジング(10)内の第1の通気路(70)に空気流を生成し、少なくとも前記モータ(20)を冷却する、第1のファン(30)とを備え、
前記第1のファン(70)及び前記ベルト駆動装置(50)は前記駆動シャフト(22)により駆動され得る
電動工具(1)において、
第2のファン(40)が前記ハウジング(10)内の第2の通気路(80)に空気流を生成し、少なくとも前記ベルト駆動装置(50)を冷却する、ことを特徴とする電動工具(1)。
【請求項2】
前記第2のファン(40)は前記駆動シャフト(22)により駆動され得る、ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具(1)。
【請求項3】
前記第1の通気路(70)が前記ハウジング(10)の外部に吸気開口(71)を有し、前記第2の通気路(80)が前記ハウジング(10)の外側に吸気開口(81)を有し、前記第1及び第2の吸気開口(71、81)は前記工具とは反対向きの前記ハウジング(10)の側面に配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具(1)。
【請求項4】
冷却の対象となる前記ベルト駆動装置(50)は前記第2のファン(40)によって生成される空気圧の高い領域に少なくとも部分的に配置されるように、前記第2のファン(40)が前記ベルト駆動装置(50)に対して位置決めされる、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の電動工具(1)。
【請求項5】
前記第1の通気路(70)及び前記第2の通気路(80)は、少なくとも互いに部分的に離れるように前記ハウジング(10)に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の電動工具(1)。
【請求項6】
前記第2のファン(40)は少なくとも部分的に金属でできている、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の電動工具(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、モータ、特に電気モータと、モータで駆動することができる駆動シャフトと、モータの駆動力を工具に伝達するベルト駆動装置と、ハウジングで第1の通気路に空気流を生成するとともに、少なくともモータを冷却する第1のファンとを有する電動工具に関する。第1のファン及びベルト駆動装置は、駆動シャフトで駆動できる。
【背景技術】
【0002】
例えば、コアドリル等の電動工具では、ベルト駆動装置によりモータの動力取出しが実行される。ここで、ベルト(タイミングベルト)は、歯車又はベルトプーリ経由で駆動シャフトに接続され、駆動シャフトはモータにより駆動される。ベルトプーリとベルトの接触点では、温度上昇が発生し得る。この温度上昇によりベルト駆動装置が損傷し、これによってベルト駆動装置が完全に故障し得る。このような理由で、ベルト駆動装置を適切に冷却する何らかの冷却対策が施されているのが通常である。ベルト駆動装置を有する電動工具を対象とする従来の冷却対策では、通気路による能動冷却が用いられることが多い。この通気路は、ファン(送風機)により導通される。この場合、ファンは、ベルト駆動装置に加え、モータ及び電子部品も適切に冷却するように配置されている。モータ、電子部品、及びベルト駆動装置を冷却するためにファンが生成する空気流(通気路)は、空気流が比較的冷えている時にモータを最大限冷却するように、最初にモータに向けられることが多い。次に電子部品を冷却するために、空気流は電子部品に向けられる。この過程で、通気流はさらに加熱される。最後に、ベルト駆動装置の冷却のため、ベルト駆動装置へと送られる。ファンが生成する空気流は、冷却のために最初にモータ、そして電子部品に向けられ、次にのみベルト駆動装置に向けられる。空気流は、初めにモータ及び電子部品を冷却した結果として、温度が大きく上昇しているため、ベルト駆動装置を最適に冷却することはできない。ベルト駆動装置を最適に冷却しなければ、ベルト駆動装置、特にベルトプーリとベルトの接触点の温度が、ベルト駆動装置及び電動工具全体の損傷及び/又は完全な故障につながる水準まで上昇することもあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ベルト駆動装置又は電動工具の部分における消耗及び故障の可能性を低減するために、改善されたベルト駆動装置の冷却システムを有する電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するために提供する電動工具は、ハウジングと、モータ、特に電気モータと、モータで駆動することができる駆動シャフトと、モータの駆動力を工具に伝達するベルト駆動装置と、ハウジング内の第1の通気路に空気流を生成し、少なくともモータを冷却する第1のファンとを有し、これら第1のファン及びベルト駆動装置は駆動シャフトにより駆動されることを特徴とする。
【0005】
本発明において、電動工具は、ハウジング内の第2の通気路に空気流を生成し、少なくともベルト駆動装置を冷却する第2のファンを有する。このように、ベルト駆動装置の冷却のためにのみ通気路又は通気流が生成される。結果として、ベルト駆動装置の冷却効率が大幅に改善され、熱によるベルト駆動装置の故障を適切に防止する。
【0006】
本発明の別の態様では、第2のファンは駆動シャフトで駆動され得る。このようにすると、第2のファンに追加の駆動装置を設ける必要がなくなり、駆動シャフトの駆動力を第2のファンの駆動のために非常に効率的に利用することができる。さらに、2つのファンがお互いに直列になるように配置されているため、ハウジングの設置空間を効率的に利用することができる。
【0007】
ファンを冷却するための外部からの空気とともに粉塵の粒子が電動工具のハウジングの内部に取り込まれることを防ぐために、第1の通気路及び第2の通気路がハウジングの外部に吸気開口を有し、これらの第1の吸気開口及び第2の吸気開口が工具とは反対側のハウジングの側面に配置されると都合がよい。工具とは反対側のハウジングの側面では工具を使った作業中に発生する粉塵の粒子はより少なく、周囲の空気に粉塵の粒子が取り込まれないため、周囲の空気に含まれる粉塵の粒子が減少する。
【0008】
本発明のもう一つの優位な態様では、第2のファンによって生成される空気圧の高い領域に冷却対象のベルト駆動装置が少なくとも部分的に配置されるように、第2のファンがベルト駆動装置に対して位置決めされる。高い空気圧が、粉塵の粒子により汚染された工具の近くの周囲の空気がベルト駆動装置に取り込まれることを防止する。
【0009】
もう一つの優位な態様において、少なくともモータを冷却する第1の通気路が第2の通気路に影響又は第2の通気路を加熱することを避けるために、ハウジング内では第1の通気路と第2の通気路とがお互い少なくとも部分的に離れて配置されている。
【0010】
本発明のもう一つの優位な態様においては、第2のファンは少なくとも部分的に金属で製造することができる。このようにして、ファンから駆動シャフト及びベルト駆動装置への熱伝導が改善され、その結果として、ベルト駆動装置から第2の通気路への熱放出の迅速化が可能となる。
【0011】
さらなる優位性は、以下の図面についての記載から明らかになる。図面は、本発明の実施例を示す。図面、発明の詳細な説明、及び請求の範囲には、様々な機能の組み合わせについての記載が含まれている。当業者は、実際的な方法で、これらの機能を個別に実施することも、組み合わせて実用的な構成とすることもできるであろう。図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の電動工具の一部を示す斜視図である。
図2】電動工具のハウジングの底面図である。
図3図2の区分線A−Aに沿ったベルト駆動装置を有する電動工具の内部図である。
図4図2の区分線A−Aに沿ったベルト駆動装置を有していない電動工具の内部図である。
図5】部分的に開放されたハウジングを有し、ベルト駆動装置を有していない電動工具の内部図である。
図6】部分的に開放されたハウジングを有し、ベルト駆動装置を有していない電動工具の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、第1の実施例の電動工具1を示す。電動工具1は、ベルト駆動装置50を有するコアドリルである。
【0014】
コアドリルとして構成される電動工具1は、ハウジング10と、電気モータ20と、駆動シャフト22と、第1のファン30と、第2のファン40と、ベルト駆動装置50とを備える。
【0015】
ハウジング10は、上面11と、底面12と、右側側面13と、左側側面(図示せず)と、前端14と、後端15とを備える。図1は、ハウジング10の底面12、前端14、及び右側側面13を示す。図2は、特にハウジング10の底面12を示す。コアビット形式の工具(図示せず)は、前端14に配置することができる。後端15には、ユーザー(図示せず)がコアドリル1を担持又は操作するためのハンドル16がある。図1が示す右側側面13は、左側側面(図示せず)と実質的に同一である。
【0016】
図3が示す通り、電気モータ20はハウジング10に配置され、電気モータ20で発生したトルクを電気モータ20に回転可能に接合されたシャフト22に伝達する。
【0017】
第1のファン30及び第2のファン40は軸流送風機の形式で構成され、第1のファン30と第2のファン40は大きさ、特に直径が異なる。第1のファン30は第1の側面31と第2の側面32とを有し、第2のファン40は第1の側面41と第2の側面42とを有する。第1の実施例において、第1のファン30は第2のファン40より大きい。駆動シャフト22が第1のファン30及び第2のファン40を回転させることができるように、第1のファン30及び第2のファン40は駆動シャフト22に回転不能に配置される。ファン30、40が回転している際には、第1の側面31、41にそれぞれ負の気圧を作用させ、第2の側面32、42にそれぞれ高い圧力の空気圧を作用させる。こうして作用する負の空気圧によりファン30、40が空気を取り込むことができ、高い圧力の空気圧によりファン30、40が空気を押し出すことができる。以下で詳細に説明する通り、ファン30、40は通気路を通じて空気を吹き出す。
【0018】
ベルト駆動装置50は、第1のベルトプーリ51と、第2のベルトプーリ52と、第3のベルトプーリ(図示せず)と、第4のベルトプーリ(図示せず)と、第1のベルト53と、第2のベルト54とを備える。第1のベルトプーリ51は、駆動シャフト22から第1のベルト53へトルクを伝達する。第2のベルトプーリ52は、駆動シャフト22から第2のベルト54へトルクを伝達する。第1のベルト53は第3のベルトプーリへトルクを伝達し、第2のベルト54は第4のベルトプーリへトルクを伝達する。第3のベルトプーリ及び第4のベルトプーリは、さらに工具(例えば、コアビット)(図示せず)にトルクを伝達し、それにより対象となる素材を加工することができる。
【0019】
図3及び図4が示す通り、駆動シャフト22のトルクが第1のファン30、第1のベルトプーリ51、第2のベルトプーリ52、及び第2のファン40に伝達するように、第1のファン30、第1のベルトプーリ51、第2のベルトプーリ52、及び第2のファン40は順番通りに配置されている。第1のファン30と第2のファン40は、駆動シャフト22により同期して回転する。隔壁板(Lagerschild)60は、第1のファン30と第2のファン40の間に位置する。隔壁板60は、特に第1のファン30と第1のベルトプーリ51の間に位置する。隔壁板60は、支圧板60の前後の空間を気密に分離する仕切りとしての役割を担う。
【0020】
ハウジング10は、空気流路である第1の通気路70と、空気流路である第2の通気路80とを備える(図4を参照)。第1の通気路70は、第1の開口部71と、第2の開口部72と、長く伸びた流路73とを有する。第1の開口部71及び第2の開口部72は、ハウジング10の外表面に位置する(図1及び図2を参照)。第1の実施例では、第1の開口部71と第2の開口部72が分離されておらず、同じハウジング10への吸い込み口を共有する(図1及び図4を参照)。しかし第2の実施例(図示せず)では、第1の開口部71と第2の開口部72が分離された状態で、同じハウジング10への吸い込み口を共有しない構成とすることができる。そのような構成では、第1の開口部71と第2の開口部72がハウジング10へそれぞれ個別の吸い込み口を有する。
【0021】
第1のファン30が駆動シャフト22によって回転すると、空気が周辺から取り込まれ、吸い込み口として機能する第1の開口部71を通じて第1の通気路70に入る。そのため、第1の開口部71を吸気開口と呼ぶことができる。ファン70で取り込まれた通気は、長く伸びた流路73経由で、最終的には第2の開口部72に到達する。第2の開口部72は、通気がハウジング10から出るための出口としての役割を担う。第1の通気路70は、長く伸びた流路73が電気モータ20を超えて延びるようにハウジング10に配置される。このようにして、第1の通気路70の空気が電気モータ20を超えて運ばれる。電気モータ20を超えて空気が運ばれると、電気モータ20からの熱は熱対流により空気に伝達され、電気モータ20が冷却される。
【0022】
同様に、第2の通気路80は、第1の開口部81と、第2の開口部82と、長く伸びた流路83とを有する。第1の開口部81及び第2の開口部82も、ハウジング10の外表面に位置する。第2の開口部82は、工具(図示せず)と反対方向を向いてハウジング10の側面に位置する。同様に、第2のファン80が駆動シャフト22により回転すると、周囲から取り込まれた通気が吸い込み口として機能する第1の開口部81を通じて第2の通気路80に入る。そのため、第1の開口部81は、吸気開口と呼ぶことができる。このため、第2のファン80から上流における流方向では、空気を取り込む負の空気圧が存在する。空気流の方向は、図4の小さな矢印により示される。第2の開口部82を通じて第2のファン80がハウジング10から空気を押し出すことができるように、第2のファン80は第2の開口部82の近くに配置される。このため、第2のファン80の下流の空気には、空気を押し返す高い圧力が働く。第2のファン80は、空気がベルト駆動装置50に又は第1のベルトプーリ51及び第2のベルトプーリ52に吹き付けられるように、ベルト駆動装置50、特に第1のベルトプーリ51及び第2のベルトプーリ52に対して位置決めされる。このように、最初にベルト駆動装置50が冷却され、次に高い圧力の空気の作用により第2の開口部82の機能がは空気の排出に限定されるため、第2の開口部82を通じて空気がハウジング10に入らなくなり、ベルト駆動装置50に空気は到達しなくなる。第2の開口部82の機能が空気の排出に限定され、第2の開口部82を通じてはハウジング10に空気が入らないという事は、粉塵の粒子で汚染された周囲の空気が(第2の開口部を通じて)ハウジング10に入り込むことも、ベルト駆動装置50に到達することもできないことを意味する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】