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特表2017-509786リチウムイオン電池のリサイクルプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509786(P2017-509786A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池のリサイクルプロセス
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20170317BHJP
   C22B 15/06 20060101ALI20170317BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   C22B7/00 CZAB
   C22B15/06
   B09B3/00 303A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-542239(P2016-542239)
(86)(22)【出願日】2014年11月25日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2014075500
(87)【国際公開番号】WO2015096945
(87)【国際公開日】20150702
(31)【優先権主張番号】13199465.9
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウエル,シーボルト
(72)【発明者】
【氏名】ホイレンス,イェルーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ホレビーク,デビッド
【テーマコード(参考)】
4D004
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004BA05
4D004CA29
4D004CB02
4D004CB31
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA10
4K001AA09
4K001BA22
4K001DA05
4K001GA06
(57)【要約】
【課題】
リチウムイオン電池のリサイクルプロセスを提供すること。
【解決手段】
本発明は、使用済みの充電式電池、特に比較的少量のコバルトを含有する使用済みのリチウムイオン電池から金属及び熱を回収するプロセスに関するものである。
特に、かかるコバルトを低減したリチウムイオン電池は、以下の工程によって、銅製錬炉で処理できることが明らかになった。すなわち、
有用な供給原料及びスラグ形成剤を製錬炉に供給する工程と、
発熱剤及び還元剤を添加する工程である。
これにより、発熱剤及び/又は還元剤の少なくとも一部が、金属鉄、金属アルミニウム、及び炭素のうちの1つ以上を含むリチウムイオン電池に置き換えられる。
使用済みのLFP又はLMOを銅製錬炉に対する供給原料として使用すると、粗銅の生産速度が増加すると同時に、化石燃料源からのエネルギー消費が低減される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅製錬炉でリチウムイオン電池からエンタルピー及び金属を回収するプロセスであって、
前記製錬炉に有用な供給原料及びスラグ形成剤を供給する工程と、
発熱剤及び還元剤を添加する工程と、
を含み、
前記発熱剤及び/又は還元剤の少なくとも一部が、金属鉄、金属アルミニウム、及び炭素のうちの1つ以上を含むリチウムイオン電池に置き換えられることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記スラグ形成剤は、0.5<SiO2/Fe<2.5、及び前記スラグ中で、Al23<10質量%に適合するのに十分な量のSiO2を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池の主要部分は、3質量%以下のCoを含有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
低コバルト電池の主要部分を供給することにより、前記スラグ中で0.1質量%未満の量のCoが得られる、請求項3に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの充電式電池、特に比較的少量のコバルトを含有する使用済みのリチウムイオン電池から金属及び熱を回収するプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパでは、金属リサイクルに対する社会的要請が、多数のいわゆる指令に翻訳されつつある。2006年9月6日付け欧州議会及び理事会の指令2006/66/ECは、電池及び蓄電池、並びに、廃棄電池及び廃棄蓄電池に関し、EU(欧州連合)において、それらの製造及び廃棄を規制するものである。これは2006年9月26日に発効した。
【0003】
この指令に従って、2012年6月11日付けの欧州委員会規則No.493/2012は、リサイクル効率の計算に関する詳細な規則を規定している。この規則は、2014年1月1日から廃棄電池及び廃棄蓄電池に関して行われるリサイクルプロセスに適用される。リサイクルの目標は、平均質量で、ニッケルカドミウム電池については75%、鉛蓄電池については65%、その他については50%である。
【0004】
電池のリサイクルプロセスについては、いくつかの系列が知られている。これらのほとんどは、機械的前処理(一般的には、最初に細断工程、続いて物理的分離)を含んでいる。異なる組成を有する分画が得られ、次に、内容物の更なる分離及び精製のために、各分画に専用の化学的プロセスが適用される。
【0005】
かかるプロセスは、例えば、「A laboratory−scale lithium−ion battery recycling process,M.Contestabile,S.Panero,B.Scrosati,Journal of Power Sources 92(2001)65−69」及び「Innovative Recycling of Li−based Electric Vehicle Batteries,H.Wang,B.Friedrich,World of Metallurgy 66(2013),161−167」により、知られている。
【0006】
細断及び物理的分離は、リチウムイオン電池を取り扱う場合は、ほとんど単純明快である。電池内のリチウムは、空気中の水分と激しく反応し、電解液及びセパレータを発火させる。更に、再利用される電池は、必ずしも完全には放電されていないので、細断は、大電流を伴う短絡、及び結果として局部的発熱を引き起こすであろう。この状況は、火災を誘発する恐れがある。低温、真空、又は不活性雰囲気の技術によれば、危険性が緩和されるが、前処理を非常に複雑にする。
【0007】
製錬プロセスは、完全な電池、又は、更に完全な電池の組立体若しくはモジュールを炉に直接供給することを可能にすることによって、この問題を解決する(塊の質量及び寸法が、合理的な取り扱いのできるものである限り)。しかし、前処理を行わないことは、分離及び精製の負担を、完全に化学処理に移すことになる。
【0008】
かかる手順は、例えば、EP1589121号及びEP2480697号により、知られている。それらは、最も有価な金属、特にニッケル及びコバルト、の回収を目的とする。この目標を達成するためには、高度に還元性の条件、及び高いプロセス温度が必要である。
【0009】
近年、携帯用エネルギー源として、充電式電池の需要が絶えず増加している。その結果、リチウムイオンの市場占有率は着実に成長しており、多様な技術的需要を満たすために、いくつかの特定のリチウムイオン電池の技術が、開発されてきた。最初のうちは、ほとんどのリチウムイオン充電式電池が、相当な量のコバルトを含有するLCO(リチウムコバルト酸化物)に基づくカソード材料を使用していた。今日では、ほとんど又は全くコバルトを含まない、LFP(リン酸鉄リチウム)、及びLMO(リチウムマンガン酸化物)、などの他の化学物質が一般的である。例えば、電動工具及びEバイク(E-bike)に関して、LFP及びLMO電池に対する高い需要がある。電気自動車は、コバルトの量が制限されているNMC(ニッケルマンガンコバルト)電池を利用することが多い。コバルトの低減又は排除は、技術的な利点を伴い、コストを低減し、かつ、より高成分のコバルトカソード組成物に特有の材料コストの変動を最小にする。
【0010】
表1は、一般に使用されている電池の種々のタイプの典型的な組成範囲を示す。LMO及びLPFの成分は、一貫して低い低コバルト含有率を示している。
【0011】
【表1】
【0012】
したがって、少なくとも低コバルトリチウムイオン電池を含む供給原料を主に考慮する場合、コバルトの高い回収率を達成することは、以前ほど重要ではない。これを考慮すると、コバルトが酸化され、したがって、回収されることなくスラグに属する製錬プロセスが、経済的に実行可能となっている。
【0013】
専用の製錬方法も考えられるが、現在では、低コバルトリチウムイオン電池を処理するために、比較的標準的な銅製錬プロセスが、特によく適していることが明らかになっている。通常の銅含有供給原料のほかに、電池を加えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1589121号
【特許文献2】EP2480697号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A laboratory−scale lithium−ion battery recycling process,M.Contestabile,S.Panero,B.Scrosati,Journal of Power Sources 92(2001)65−69
【非特許文献2】Innovative Recycling of Li−based Electric Vehicle Batteries,H.Wang,B.Friedrich,World of Metallurgy 66(2013),161−167
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に、かかるコバルトを低減したリチウムイオン電池は、以下の工程によって、銅製錬炉で処理できることが明らかになった。すなわち、
有用な供給原料及びスラグ形成剤を製錬炉に供給する工程と、
発熱剤及び還元剤を添加する工程である。
【0017】
これにより、発熱剤及び/又は還元剤の少なくとも一部が、金属鉄、金属アルミニウム、及び炭素のうちの1つ以上を含むリチウムイオン電池に置き換えられる。
【0018】
リチウムイオン充電式電池において、アノードを支持する箔は、通常は、金属銅で形成され、カソードを支持する箔は、金属アルミニウムで形成されている。炭素は、代表的なアノード活物質であり、カソード活物質は、Ni、Mn、Co及びFeのうち、1つ以上を含んでいる。電池のケーシングは、通常、金属アルミニウム、鉄及び/又はプラスチックを含む。
【0019】
それらの特定の組成のため、銅製錬炉上の標準的な供給原料に加えて追加の供給原料として使用される充電式リチウムイオン電池は、粗銅の生産速度を著しく増加させることができると同時に、燃料の必要性を著しく低下させる。なお、ここでは燃料の必要性は、電池供給原料中に存在する、金属アルミニウム、炭素及びプラスチックによって補われると想定される。
【0020】
このプロセスは、特に、スラグ形成剤及びSiO2を調整することによって、0.5<
SiO2/Fe<2.5及びAl23<10%に適合するように、望ましくは、一般に認
められた境界内に留まるべきである。
【0021】
環境上の理由のために、コバルトが0.1%未満であるスラグを目標とすることが望ましい。これは、有用な供給原料における電池の量を制限すること及び/又は低コバルト電池の割合を増加させることによって、達成することができる。いずれの場合も、低コバルト電池の主要部分を供給することが好ましい。「低コバルト」とは、コバルト3%以下を含有する電池を意味する。「主要部分」とは、有用な供給原料(即ちフラックスを除く)に存在する電池の合計の50%を超えることを意味する。
【0022】
炉は、少なくとも1cmの寸法を有する比較的大きな凝集物又は塊を取り扱うことが可能な供給システムを備えなければならない。また、リチウムイオン電池は、ハロゲン、特に、フッ素を多量に含むので、適切なガス清浄設備を設ける必要がある。かかる設備は知られており、銅製錬炉において比較的一般的である。
【実施例】
【0023】
実施例1:電池を含まない基準供給原料
製錬炉のための典型的な供給原料が、以下の表2に示されている。
【0024】
【表2】
【0025】
基準供給原料の残り(20%)は水分である。SiO2/Feの比率2.2は、シリカ
(23.2トン/h)の添加によって維持されると同時に、Al23はスラグ内の6%未満に維持される。100トン/hの供給速度において、供給原料の18%が粗銅に、60%がスラグに変換され、残りは気体(主にSO2)となる。
【0026】
燃料消費量は3000L/hとなり、酸素の消費量は18000Nm3/hとなる。
【0027】
実施例2:LFP電池を含む基準供給原料
LFP電池及び追加のフラックスを含む供給原料を以下の表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
基準ケースに関して、SiO2/Feの比率2.2は、5.8t/hのSiO2の添加によって維持される。Al23は、添加するLFP電池の量を17.6t/hに制限することにより、スラグ中で6%未満に維持される。これは、約60000トンの年間処理能力に相当し、これは、現在市場で入手可能なこの種の使用済み電池の量を考慮すれば、相当な量である。
【0030】
使用済みの電池を銅製錬炉に対する供給原料として使用すると、粗銅の生産速度は、こうして、20%を超えて増加する一方で、危険な廃棄物がリサイクルされる。当然のことながら、これは、基準の製錬炉供給原料中、及び使用済み電池中に存在する銅の相対量に依存している。
【0031】
LFP電池供給原料の高発熱量のおかげにより、かつ電池関連の銅が酸化される種としてではなく金属として存在しているため、燃料消費量を3000L/hから2000L/hまで低減することができる一方で、酸素消費量は、炉の熱バランスを維持するために、18000Nm3/hから20000Nm3/hに上昇する。これは、化石燃料源のエネルギー消費に関して30%を超える減少となる。
【国際調査報告】