特表2017-509897(P2017-509897A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-509897(P2017-509897A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】多重分析法を実行するための対照
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20170317BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   G01N33/543 501L
   G01N35/02 A
   G01N33/543 525E
   G01N33/543 575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2016-560803(P2016-560803)
(86)(22)【出願日】2015年4月3日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2015097005
(87)【国際公開番号】WO2015150583
(87)【国際公開日】20151008
(31)【優先権主張番号】1453038
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】506215582
【氏名又は名称】バイオ−ラッド・イノベーションズ
【氏名又は名称原語表記】BIO−RAD INNOVATIONS
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ベドリン,クリストフ,レネ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ランベルト ナディン,マリエ,レニー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058BA06
(57)【要約】
本発明は、多重分析方法の結果を確実にするために用いることができる対照に関する。したがって、本発明は、1つまたはいくつかの対照を含む固体支持体、および試料中に潜在的に存在するいくつかの分析物を検出するための多重分析方法でのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの対照スポットおよび分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体であって、前記対照スポットは、試料の沈着を対照するためのスポット、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットおよびレポーターの沈着を対照するためのスポットからなる群から選択されることを特徴とする固体支持体。
【請求項2】
前記対照スポットまたは複数の前記対照スポットの1つが、試料の沈着を対照するためのスポットまたは分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットであることを特徴とする、請求項1に記載の固体支持体。
【請求項3】
前記コンパートメントが、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含むことを特徴とする、請求項2に記載の固体支持体。
【請求項4】
前記コンパートメントが、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのスポットおよび分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体支持体。
【請求項5】
試料の沈着を対照するための前記スポットが、対照化合物の少なくとも1つの捕捉リガンドを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体支持体。
【請求項6】
分析物の検出リガンドの沈着を対照するための前記スポットが、添加剤の少なくとも1つの捕捉リガンドを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の固体支持体。
【請求項7】
レポーターの沈着を対照するための前記スポットが、間接マーカーまたは間接マーカーに結合した担体分子を含むことを特徴とする、請求項1または3から6のいずれか一項に記載の固体支持体。
【請求項8】
少なくとも1つの対照ビーズおよび分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む、試料の多重分析に適切なビーズのセットであって、前記対照ビーズは、試料の沈着を対照するためのビーズ、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズおよびレポーターの沈着を対照するためのビーズからなる群から選択されることを特徴とするビーズのセット。
【請求項9】
試料の沈着を対照するための少なくとも1つのビーズ、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズおよび任意選択でレポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを含む、請求項8に記載のビーズのセット。
【請求項10】
少なくとも1つの試料中の少なくともn個の分析物を検出するための多重分析方法であって、nは2以上の整数であり、前記方法は、
a)請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコンパートメントを含む少なくとも1つの固体支持体、または請求項8または9に記載のビーズの少なくとも1つのセットを用意するステップ、
b)前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に、検出するp個の分析物のl個の検出リガンド、および適用可能であれば少なくとも1つの添加剤を置くステップであって、lは好ましくはp以上である、ステップ、
c)分析する試料を前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に置くステップ、
d)前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に、
検出するm個の分析物のl’個の検出リガンド、および適用可能であれば、前記添加剤(複数可)の少なくとも1つの検出リガンドを置くステップであって、l’は好ましくはm以上である、ステップ、
e)前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に、
対照化合物の少なくとも1つの検出リガンドおよび検出するy個の分析物のl’’個の検出リガンドを置くステップであって、l’’は好ましくはy以上である、ステップ
のうち、少なくともステップa)、c)およびe)または少なくともステップa)、b)、c)およびd)を含み、
l、l’、l’’、m、pおよびyは0以上の整数であり、m+p+yの合計は1以上である、多重分析方法。
【請求項11】
少なくとも1つのレポーターを前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に置くことからなる後続のステップf)を含む、請求項10に記載の多重分析方法。
【請求項12】
ステップf)の前記レポーターまたは前記レポーターの少なくとも1つが間接マーカー、例えば酵素に結合していること、および前記方法が、ステップf)の前記レポーターに結合した前記間接マーカーの少なくとも1つの第2のレポーターを、前記コンパートメントの前記スポットまたは前記ビーズのセットの存在下に置くことからなる後続のステップg)を含み、前記第2のレポーターが、例えば、好ましくはルミノール、イソルミノールまたはそれらの誘導体の1つの中から選択される基質であることを特徴とする、請求項11に記載の多重分析方法。
【請求項13】
試料の多重分析を確実にするための、試料の沈着の少なくとも1つの対照、および/または分析物の検出リガンドの沈着の少なくとも1つの対照、および/またはレポーターの沈着の少なくとも1つの対照の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたはいくつかのステップを含む多重分析法の結果を確実にするために用いることができる対照に関する。
【背景技術】
【0002】
多重分析法は、同じ試料の中のいくつかの分析物の潜在的存在の同時検出を可能にする。多重分析は、同時にいくつかの分析物の分析を可能にすることによる時間的節約、試薬および消耗品のより少ない消費、ならびに分析物を検出するために必要なより少ない量の試料などの、いくつかの利点を有する。
【0003】
1つまたはいくつかの分析物の存在の検出を追求する分析法の終了後に得られる結果を検証するために、1つまたはいくつかの対照を用いることが一般的である。分析装置によって提供される結果の信頼性は、特にそれが医学的診断および/または献血の資格証明を目的とする分析を伴う場合は、実際主要な問題である。
【0004】
伝統的に用いられる1つの陽性対照は、既知量で用いられ、その潜在的な存在が所与の試料で追求される分析物に対応する、既知化合物の検出を検証することからなる。しかし、このタイプの対照は、分析方法の全体的実行だけを検証することを可能にし、その方法の各ステップを検証することを可能にしない。
【0005】
さらに、他のタイプの対照を用いることができる。例えば、国際公開第2004/046685号パンフレットの文献では、免疫組織化学試験で用いられる試薬の品質を検証するために対照を用いる。その目的のために、異なる対照化合物の一連の溶液を含む、対照のスライドが用いられる。前記対照化合物の特異的抗体または前記対照化合物のレポーターもしくは基質がイムノマーキング法(immuno-marking method)の間に用いられるならば、対照化合物での対照スライドの陽性着色だけが観察されなければならない。試薬の品質を検証するためのこの方法は、対照スライドにおける多数の対照化合物の使用を必要とする。
【0006】
実際、多重分析法の場合、ステップの全部、特に、試料の沈着(deposition)、試薬の沈着、異なる水およびインキュベーションサイクルを制御することを可能にする単純な手段は現在ない。しかし、高いレベルの安全およびトレーサビリティを達成することは、輸血および医学的診断の分野で重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、多重分析方法の実行の間に得られた結果の信頼性を保証することを可能にし、特にその方法の各ステップを検証することを可能にする解決方法を提供する、実際的な必要性がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、多重分析方法の各ステップが正しく起こったことを検証することによって(その方法の全体的実行を検証することだけによってではなく)、得られた結果の信頼性を保証することを可能にする対照手段の、本発明者らによる発見に基づく。したがって、本発明者らは、試料自体の沈着、より一般的にはその方法の異なるステップを検証することを可能にする対照を初めて提供する。
【0009】
したがって、本発明による2つまたは3つの対照だけを組み合わせることによって、試料の沈着ステップ、試料で検出される分析物の特異的検出リガンドの沈着ステップ(複数可)、異なる洗浄およびインキュベーションステップ、ならびに適用可能であれば、検出マーカーのレポーターの沈着ステップおよび/または前記レポーターに結合したマーカーの基質の沈着ステップを検証することが可能である。
【0010】
本発明による多重分析方法では、全体の多重方法の各ステップを検証するのに2つまたは3つの対照だけが必要である。
【0011】
結果の検証の他に、本発明による対照の使用は、多重分析方法の実行の間に存在する潜在的な誤りを特定すること、および、例えば分析方法の実行を改善するために対応するステップ(複数可)を改変することを可能にする。
【0012】
本発明は、実行するのが容易であり、限られた数の対照だけを必要とし、分析方法に追加のステップを加えることなく、追加の機器の使用を必要としない(例えば、分光計の使用を必要としない)利点を有する。実際、分析方法のステップは単一の位置(例えば、試料が置かれるウェルを有するチューブ)で行われ、例えばスポットまたはビーズの形の対照は、分析物を検出するために用いられるスポットまたはビーズと同時に処理される。
【0013】
本発明による第1のタイプの対照は、試料の沈着の検証を可能にする、試料の沈着の対照である。下で概説されるある特定の実施形態では、試料の沈着の対照は、1つまたはいくつかの分析物検出リガンドの沈着の検証も可能にする。
【0014】
「試料または添加剤の沈着」または「試料または添加剤の添加」は、固体支持体に固定された目的の化合物の存在下に、試料または少なくとも1つの添加剤を置くことを指す。
【0015】
「少なくとも1つ」は、本出願の意味の範囲内で1つまたはいくつかを指し、いくつかは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または16超を特に意味する。
【0016】
「検出リガンド、レポーターまたは基質の沈着」または「検出リガンド、レポーターまたは基質の添加」は、固体支持体に固定された目的の化合物および目的の前記化合物に固定された任意の化合物の存在下に、検出リガンド、レポーターまたは基質を置くことを指す。
【0017】
第2のタイプの対照は、試料で検出される分析物の1つまたは複数の特異的検出リガンド(例えば検出リガンドの混合物)の沈着を検証することを可能にする、分析物の検出リガンドの沈着の対照である。この対照は、インキュベーションおよび洗浄ステップを検証することも可能にする。
【0018】
第3のタイプの対照は、発色ステップ(複数可)が正しく起こったことを検証することを可能にするレポーターの沈着の対照である。レポーターの沈着の対照は、検出リガンドの間接マーキングの場合に有益である。
【0019】
最後に、本発明による対照は、マイクロアレイで、例えばマイクロプレートタイプの固体支持体において、または液体チップにおいて、例えばビーズ型の固体支持体において多重分析方法を実行するのに特に適切である。
【0020】
試料
分析する試料は、好ましくは生体試料である。
【0021】
生体試料は、体液、例えば血液、血液派生物(血漿または血清など)、尿、脳脊髄液、唾液の試料、または組織試料、例えば生検によって得られた組織、細胞もしくは細胞のセット、植物抽出物、またはそれらの組合せであってもよい。
【0022】
血液派生物は、血液試料から得られる任意の産物、特に体液を指す。
【0023】
分析する試料は、培地および/または培養上清であってもよい。
【0024】
分析する前に、試料は1つまたはいくつかの前の処理ステップ、例えば希釈、遠心分離、加熱および/または化学的処理、細胞溶解(例えば、1つまたはいくつかのカオトロピック剤、1つまたはいくつかの還元剤および/または加熱による)、抽出、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、マーキングされていない検出リガンドまたはそれらの組合せの添加を受けることができる。マーキングされていない検出リガンドの添加は、それ自体当業者に公知の試験である中和試験を実行するために特に有益である。
【0025】
試料は、同じ性質または異なる性質であってもよい少なくとも2つの試料の混合物であってもよい。
【0026】
異なる性質の試料の混合物の例は、血液と血清の混合物、血液と血漿の混合物、血清と血漿の混合物または血液、血清および血漿の混合物である。
【0027】
本発明による1つの好ましい試料は、血液および/または血液派生物の試料または試料の混合物である。
【0028】
分析物
試料で検出される分析物は、試料で検出および/または数量化しようとする天然または合成の任意のタイプの化合物であってもよい。
【0029】
分析物は、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、炭水化物、脂質、細胞、オルガネラ、ウイルスまたは核酸であってもよい。
【0030】
細胞は、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、原生動物、後生動物細胞、酵母細胞、真菌細胞または原生動物であってもよい。
【0031】
核酸は、一本鎖または二本鎖の形態の、ホスホジエステル結合によって連結されるヌクレオチドのポリマー、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)またはそれらの類似体、例えばホスホロチオエートまたはチオエステルを指す。
【0032】
分析物または分析物の少なくとも1つまたは分析物(複数)は、例えば、抗原、抗体、抗体断片、ハプテン、ホルモン、ホルモン受容体、酵素または核酸からなる群から選択される。
【0033】
好ましい一実施形態では、分析物(複数可)は核酸ではない。
【0034】
分析物(複数可)は、例えば、抗原、抗体、抗体断片、ハプテン、ホルモン、ホルモン受容体および酵素からなる群から選択される。
【0035】
本明細書では、「抗原」は、抗体または免疫系の細胞によって認識され、それが適切な条件下で宿主の免疫系に提示される場合に免疫応答を引き起こすことが可能である、天然、組換えまたは合成の分子を指す。これは、線状または立体配置的であってもよい少なくとも1つのエピトープを含む、またはそれからなる分子、特にポリペプチドであってもよい。用語「線状エピトープ」は、前記抗原に対する抗体分子に結合することが可能な、3〜15、より一般的には5〜15アミノ酸、好ましくは少なくとも6、8、10または12アミノ酸を含む、または一般的にそれからなるポリペプチド、特にペプチドを指す。用語「立体配置的エピトープ」は、抗体によって認識され、空間のいくつかのアミノ酸の並置によって決定される三次元構造を指し、それは、この抗体が向けられるタンパク質(またはポリペプチド)のペプチド配列が連続でなくてもよいが、それは、ポリペプチド鎖の折畳みのために空間でお互いに近接し、したがって、抗体が認識することができるパターンを形成することができる。
【0036】
抗原は、例えば、タンパク質(特に天然または組換えタンパク質)、ペプチド(例えば、合成ペプチド)、糖タンパク質、炭水化物または脂質であり、前記ペプチドは、担体分子、例えばBSA(ウシの血清アルブミン)と関連することも関連しないこともできる。
【0037】
本出願では、「担体分子」は、タンパク質または炭水化物の担体分子を特に指す。担体分子はポリペプチド(特にタンパク質またはペプチド)であってもよく、それは天然であってもなくても(例えば、組換えタンパク質または合成ペプチド)、官能基化ポリマーであってもなくても(例えば、デキストラン、多糖またはポリリシン)または混合コポリマーであってもなくても(特に異なるアミノ酸のコポリマー、例えばリシン−チロシンコポリマー)よい。担体分子は、抗体(特にモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、例えば免疫グロブリンであってもよい。
【0038】
担体分子の一例は、BSAである。
【0039】
具体的な一実施形態では、担体分子は、抗体ではない。
【0040】
本明細書では、「ハプテン」は、免疫系が認識することが可能であるが、それが担体分子に結合している場合だけ免疫原性である、低分子量分子を指す。
【0041】
分析物または分析物の少なくとも1つは、好ましくは、対象で病的であっても病的でなくてもよい状態を診断すること、または病的であっても病的でなくてもよい状態の発症リスクを診断することを可能にする化合物である。非病的状態の例は、妊娠である。
【0042】
対象は、ヒト、ヒト以外の動物または植物であってもよい。ヒト以外の動物は、好ましくは哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、サル、ウサギ、マウスまたはラットである。
【0043】
用語「ヒト」は広義で用いられ、特に任意の年齢の男女、例えば小児、児童、青年、成人または高齢者を指す。
【0044】
分析物または分析物の少なくとも1つが抗原である場合は、それは、好ましくは、感染、例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫によって引き起こされる感染の診断を可能にする抗原である。
【0045】
分析物または分析物の少なくとも1つが抗体である場合は、それは、好ましくは、感染、例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫によって引き起こされる感染の診断を可能にする抗体である。
【0046】
一般的に、これは、
− ウイルス、例えばHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、特にHIV−1またはHIV−2、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、HTLV(ヒトTリンパ親和性ウイルス)、特にHTLV−IまたはHTLV−II、
− 寄生虫、例えばヒトまたはヒト以外の動物でトキソプラズマ症(特にトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii))、マラリア(特にプラスモディウム属の寄生虫、例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)またはプラスモディウム・ノウレシ(Plasmodium knowlesi))またはシャガス病(特にクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi))を引き起こすことができる寄生虫、または
− 細菌、例えばヒトまたはヒト以外の動物で梅毒(梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum))またはライム病(特にボレリア属からの細菌)を引き起こすことができる細菌
の1つまたはいくつかの抗原および/または1つまたはいくつかの抗体を含むことができる。
【0047】
本明細書では、「寄生虫」は、体に関して寄生虫として作用して寄生虫症を引き起こす、後生動物または原生動物を指す。したがって、本発明の意味の範囲内で、寄生虫はウイルスでも、細菌でも真菌でもない。
【0048】
分析物または分析物の少なくとも1つは、疾患のマーカー、例えば心血管疾患のマーカーまたは糖尿病マーカー、肝炎などの疾患の発生のマーカー、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫によって引き起こされる感染症の発生のマーカー、療法、例えば抗ウイルス療法、抗生物質療法またはがん療法への抵抗性のマーカーであってもよい。
【0049】
多重分析方法の間、試料で本出願に記載のいくつかの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または15を超える数の)分析物を同時に検出することができる。これは、対象の同じ試料で、1つまたはいくつかの感染症もしくは疾患、感染症もしくは疾患の発生、状態(病的または非病的)、状態(病的または非病的)を発症するリスク、または療法への抵抗性のマーカーを診断することを可能にすることができる。
【0050】
多重分析方法の間に検出される分析物は、同じ性質のもの(例えば、抗体だけまたは抗原だけ)または異なる性質のもの(例えば、少なくとも1つの抗原および少なくとも1つの抗体)であってもよい。
【0051】
好ましくは、検出される分析物(複数可)は、検出マーカーでマーキングされていない。
【0052】
好ましい一実施形態では、検出される分析物(複数可)は、抗体および/または抗原の中から選択される。
【0053】
対照化合物
本明細書では、「対照化合物」は、分析する試料中に、好ましくは同じ性質の試料の全てで検出可能な濃度で天然に存在する化合物を指す。
【0054】
分析する試料中に天然に存在する化合物は、試料中に最初から存在する化合物または試料中に最初から存在する化合物の誘導体であってもよい。
【0055】
試料中に最初から存在する化合物の誘導体は、分析方法の前の試料の1つまたはいくつかの処理ステップの終わりに得ることができる。これらのステップは、特に上で規定されるもの、例えば、熱および/もしくは化学的処理、細胞溶解、抽出、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、マーキングされていない検出リガンドの添加またはそれらの組合せである。
【0056】
試料中に最初から存在する化合物の誘導体は、例えば、熱および/もしくは化学的処理、細胞溶解、マーキングされていない検出リガンドの添加またはそれらの組合せによって改変されたPCR生成物および/または化合物である。
【0057】
好ましくは、分析する試料中に天然に存在する化合物は、試料中に最初から存在する化合物である。この場合、分析方法の前に試料の1つまたはいくつかの処理ステップが実行されるならば、その化合物はしたがって試料のいかなる前処理ステップの前にも存在する。
【0058】
分析する試料中に天然に存在する化合物は、分析時に試料中に存在する化合物を含まないが、それは、試料の1つまたはいくつかの前処理ステップの間に添加されたか、または試料に添加された化合物に由来する。
【0059】
試料が少なくとも2つの試料の混合物である場合、対照化合物は、前記試料の少なくとも1つ、好ましくは混合物の各試料に天然に存在する化合物である。
【0060】
「同じ性質の試料」は、適用可能であれば同じ処理ステップ(複数可)を経た、異なる対象でまたは同じ対象で異なる時間間隔で実質的に同じ方法で抜き取られた同起源の試料を指す。
【0061】
「検出可能な濃度」は、試験、特に対照化合物が固体支持体に固定された捕捉抗体に結合し、マーキングされた検出抗体によって検出されるサンドイッチタイプの免疫学的試験の間に、対照化合物の存在の検出を可能にする濃度である。
【0062】
好ましくは、対照化合物の濃度は、同じ性質の試料でほとんど異ならない。
【0063】
本明細書では、「対照化合物の濃度は同じ性質の試料でほとんど異ならない」という表現は、試料間で60%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満しか異ならない濃度を意味し、濃度はμg/mLで与えられる。
【0064】
有利な一実施形態では、対照化合物は、それらの分析物が存在する場合、検出される分析物(複数可)の濃度と同じ桁の濃度で試料中に存在する。好ましくは、対照化合物は、検出される分析物の各々の濃度と同じ桁の濃度で試料中に存在する。
【0065】
対照化合物の濃度は、測定される分析物の各々の濃度と同じ桁である。
【0066】
好ましくは、対照化合物の濃度は、それが試料中に存在する場合、分析する前記分析物のそれより50倍を超えてより低いかより高く、好ましくは少なくとも40倍、より好ましくは少なくとも30倍である。
【0067】
例えば、1ng/mLの分析する分析物の濃度に対して、対照化合物の濃度は、100μg/mL以下、好ましくは10μg/mL以下、より好ましくは1μg/mL以下である。
【0068】
好ましくは、その分析物を含有する分析試料中の分析物の濃度と対照化合物のそれとの間の偏りが、50倍以下、好ましくは40倍以下、より好ましくは30倍以下である場合、対照化合物の濃度は分析物の濃度と同じ桁である。
【0069】
ヒトまたは動物起源の試料の場合、対照化合物は、その分析について問題のヒトまたは動物の集団の中で保持される構造を好ましくは有する。好ましい一実施形態では、対照化合物は、考慮される集団の中で多型を有しない。
【0070】
対照化合物は、好ましくは疾患のマーカーではない。
【0071】
少なくとも1つの分析物が抗体によって検出される場合、対照化合物は好ましくは抗体によって検出可能な化合物である。
【0072】
対照化合物は、抗体によって検出可能であるように、試料のいかなる可能な前処理ステップ(複数可)によっても好ましくは変更されない。
【0073】
対照化合物は、分子、または同一であっても異なってもよい少なくとも2つの分子の複合体であってもよい。
【0074】
一例として、分析する試料が血液または血漿試料、特にヒト血液またはヒト血漿である場合、対照化合物は、トランスフェリンとの複合型のトランスフェリンの可溶性受容体、ホルモン、例えばステロイド、凝固因子、例えば第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子または第XIII因子から選択される凝固因子であってもよい。
【0075】
具体的な一実施形態では、対照化合物は、第XIII因子ではない。
【0076】
特定の一実施形態では、対照化合物はG型の免疫グロブリン(IgG)、特にヒトIgGではなく、および/またはM型の免疫グロブリン(IgM)、特にヒトIgMではなく、またはより一般的に免疫グロブリン、特にヒト免疫グロブリンではない。
【0077】
トランスフェリンとの複合型のトランスフェリンの可溶性受容体は、トランスフェリンの可溶性受容体の2つの分子および2つのトランスフェリン分子を含む複合体である。
【0078】
例えば、トランスフェリンとの複合型のトランスフェリンの可溶性受容体は、対象の状態と関係なく、ヒト対象から来る分析試料中に0.8μg/mL〜4μg/mLを含む濃度で一般に存在する。
【0079】
対照化合物の濃度が、例えば試料の性質および/または試料がとられた対象の状態に基づいて異なり得る場合は、少なくとも2つの異なる対照化合物を用いることが有利かもしれない。
【0080】
添加剤
添加剤は、試料中に存在しない、すなわち試料中に最初から存在しないか、または試料中に最初から存在する化合物に由来しない化合物または化合物のセットである。
【0081】
添加剤は特に抗原またはハプテンであってもよく、前記抗原または前記ハプテンは担体分子に結合することができるか、結合していない。
【0082】
一例として、ヒトまたは動物の生体試料の場合、分析する試料中に存在しない化合物または化合物の1つは、例えば、ジゴキシゲニン、植物ホルモン、アルカロイド、植物ステロイド、核酸および殺有害生物剤からなる群から選択される。
【0083】
好ましい一実施形態では、添加剤は核酸ではない。
【0084】
ジゴキシゲニンは、ある特定の植物から抽出されたステロイドである。
【0085】
殺有害生物剤は、例えば、有機リン化合物または有機塩素化合物などの殺虫剤、およびトリアジンまたはフェニル尿素などの除草剤、またはそれらの組合せである。
【0086】
本発明による1つの好ましい添加剤は、担体分子と結合したジゴキシゲニン、担体分子と結合したオーキシン、担体分子と結合したトリアジンであり、前記担体分子は例えばBSAである。
【0087】
本発明による1つの好ましい添加剤は、BSAに結合したジゴキシゲニンである。
【0088】
さらに、添加剤は多重分析方法の実行の間に分析物の検出に干渉しない。特に、添加剤は、検出される分析物、用いる捕捉リガンド(複数可)、用いる検出リガンド(複数可)、対照化合物(複数可)、適用可能であればレポーター(複数可)、適用可能であれば基質(複数可)、およびシグナルの検出に干渉しない。
【0089】
特定の一実施形態では、添加剤は、ビオチンもしくはビオチンの類似体、および/またはアビジンもしくはアビジンの類似体(特にストレプトアビジンまたはニュートラアビジン)を含まないかまたはそれからならず、前記ビオチン、アビジンまたはそれらの類似体の1つは担体分子に接がれるかまたは接がれない。
【0090】
捕捉リガンド
捕捉リガンドは、固体支持体に、特にビーズのスポットまたは表面に固定された化合物である。
【0091】
捕捉リガンドは、好ましくは固体支持体に、特にビーズのスポットまたは表面に固定される抗体または抗原である。
【0092】
捕捉リガンドは、試料で検出される分析物、対照化合物または添加剤に特異的であってもよい。
【0093】
捕捉リガンドは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物、脂質または核酸であってもよい。
【0094】
好ましい一実施形態では、捕捉リガンドは、核酸ではない。
【0095】
好ましい一実施形態では、捕捉リガンドは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物および脂質からなる群から選択される。
【0096】
捕捉リガンドは、好ましくは抗体または抗原である。
【0097】
捕捉リガンドが抗体である場合は、それは、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。
【0098】
検出リガンド
検出リガンドは、それが特異的である化合物の存在を明らかにすることを目的とする。
【0099】
検出リガンドは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物、脂質または核酸であってもよい。
【0100】
好ましい一実施形態では、検出リガンドは核酸ではない。
【0101】
好ましい一実施形態では、検出リガンドは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物および脂質からなる群から選択される。
【0102】
検出リガンドは、好ましくは抗体または抗原である。
【0103】
検出リガンドが抗体である場合は、それは、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。
【0104】
検出リガンドは、好ましくは、マーキングされた検出リガンド、すなわち検出マーカー(それは、例えばビオチンまたはペルオキシダーゼであってもよい)が共有結合または非共有結合によって結合した検出リガンドである。
【0105】
検出リガンドがマーキングされていない場合は、前記検出リガンドのマーキングされた特異的抗体を用いることによってその検出を得ることができる。
【0106】
検出リガンドは、試料で検出される分析物、対照化合物または添加剤に特異的であってもよい。
【0107】
検出リガンドは、検出マーカーのいかなる存在も除いて、用いられる捕捉リガンドもしくは用いられる捕捉リガンドの1つと同一であってもよく、および/または、捕捉リガンドもしくは捕捉リガンドの1つが結合するのと同じゾーンでそれが特異的である化合物に結合してもよい。この場合には、前記捕捉リガンドおよび前記検出リガンドが抗体であるならば、それは「相同的サンドイッチ」を含む。
【0108】
立体障害による、それらが特異的である化合物に関する捕捉リガンドと検出リガンドの競合を回避するように、捕捉リガンドおよび検出リガンドまたは検出リガンドの1つは、それらが特異的である化合物の別々のゾーンに特異的であってもよい。この場合には、前記検出リガンドおよび前記捕捉リガンドが抗体であるならば、それは「非相同サンドイッチ」を含む。
【0109】
好ましい一実施形態では、同じ化合物に特異的である検出リガンドおよび捕捉リガンドは、前記化合物の同じ位置に結合しない。より好ましくは、前記検出リガンドは、前記捕捉リガンドとの結合ゾーンから遠い前記化合物のゾーンに結合する。
【0110】
別の好ましい実施形態では、検出リガンドは、検出マーカーのいかなる存在も除いて、捕捉リガンドと同一であり、および/または、特に、それが特異的である化合物が少なくとも2つの同一の結合ゾーンを有する複合体の形である場合、前記捕捉リガンドが結合するのと同じゾーンでそれが特異的である化合物に結合する。
【0111】
検出マーカー
検出マーカーは、直接マーカーまたは間接マーカーであってもよい。
【0112】
直接マーカーは、そのシグナルを直接的に、すなわちレポーターの事前の添加を必要とすることなく検出することができるマーカーである。
【0113】
直接マーカーは、例えば、放射性同位体、蛍光色素、およびランタニドなどの周期表の重元素、発光性の化合物、ルテニウムなどの遷移金属、発色性の、および有色、蛍光性または発光性のナノ粒子からなる群から選択される。
【0114】
本出願では、「発光性の化合物」は、電子発光、熱発光または(好ましくは)化学発光化合物を特に指す。
【0115】
直接マーカーとして用いることができる一例の発光性化合物(より具体的には、熱発光性の化合物)は、ジオキセタン化合物、特に1,2−ジオキセタン化合物、またはジオキセタン化合物の誘導体、例えば1,2−ジオキセタンの誘導体の分子を含む(例えば、注入された)シリカナノ粒子からなる。
【0116】
間接マーカーは、そのシグナルの検出がレポーターの事前の添加、および適用可能であれば、前記レポーターに結合したマーカーの基質の添加を必要とするマーカーである。
【0117】
レポーターは、間接マーカーの基質または間接マーカーに特異的に結合する分子であり、前記分子それ自体は直接もしくは間接マーカーであるかまたは直接もしくは間接マーカーにそれ自体結合する。
【0118】
間接マーカーは、例えば、酵素(特に、基質から発光性の化合物を生成する酵素)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ハプテン、抗原または抗体であってもよい。
【0119】
酵素のレポーターは、例えば、前記酵素の基質である。
【0120】
発光性化合物のレポーターは、例えば、酵素または触媒である。
【0121】
ビオチンのレポーターは、例えば、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンであり、好ましくは直接マーカーまたは間接マーカー、例えば酵素または触媒に結合している。
【0122】
一例の酵素は、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である。
【0123】
本発明による1つの好ましいビオチンレポーターは、ペルオキシダーゼ、好ましくはホースラディッシュペルオキシダーゼに結合しているストレプトアビジンである。
【0124】
本発明の特定の一実施形態では、用いる検出マーカーまたは検出マーカーの1つは、ルミノール(3−アミノフタルヒドラジド、別称5−アミノ−2,3−ジヒドロ−フタラジン−1,4−ジオン、分子式C)、イソルミノール(別称4−アミノフタルヒドラジド)、アクリジン、セレンテラジン、ジオキセタンまたは過酸化シュウ酸化合物、またはそれらの誘導体の1つ、特に刊行物Dodeigne C. et al (2000), Talanta 51, 415-439, "Chemiluminescence as diagnostic tool. A review"に記載の化合物であるか、またはそれを基質として有する。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態により、用いる検出マーカーまたは検出マーカーの1つは、ルミノール、イソルミノールまたはそれらの誘導体の1つを基質として有する。
【0126】
ルミノールまたはイソルミノールの誘導体は、好ましくは、全ての可能な改変(複数可)(例えば、化学的および/または酵素的)を通してルミノールまたはイソルミノールからそれぞれ得られる分子である。ルミノールまたはイソルミノールの誘導体は、例えば、ペルオキシダーゼ酵素の基質であり、前記ペルオキシダーゼ酵素とルミノールまたはイソルミノールの前記誘導体との反応は、化学発光化合物の生成を可能にする。
【0127】
イソルミノールの誘導体は、例えば、刊行物Dodeigne C. et al (2000), Talanta 51, 415-439, "Chemiluminescence as diagnostic tool. A review"に記載の通り、アミノエチルイソルミノール(またはAEI)、アミノエチルエチルイソルミノール(またはAEEI)、アミノブチルイソルミノール(またはABI)、アミノブチルエチルイソルミノール(またはABEI)、アミノペンチルエチルイソルミノール(またはAPEI)、アミノヘキシルイソルミノール(またはAHI)、アミノヘキシルエチルイソルミノール(またはAHEI)、アミノオクチルメチルイソルミノール(またはAOMI)またはアミノオクチルエチルイソルミノール(またはAOEI)であってもよい。
【0128】
発色
発色ステップ(複数可)は、検出マーカー(複数可)によって生成されるシグナルの検出に対応する。
【0129】
検出されたシグナルが蛍光発光シグナルである場合は、「生成されたシグナル」は特に「放出されたシグナル」である。
【0130】
発色ステップ(複数可)は、用いられるマーカーのタイプに依存する。
【0131】
蛍光体タイプの直接マーカーによって生成または放出されるシグナルは、蛍光によって直接的に読み取ることができる。
【0132】
酵素タイプ、発光性化合物タイプまたはビオチンタイプの間接マーカーは、レポーターの添加を必要とする。
【0133】
上で示されるように、ビオチンタイプの間接マーカーは、レポーター、好ましくはマーカーに結合しているレポーターの添加を必要とする。
【0134】
レポーターが間接マーカー、例えば酵素に結合している場合は、後のステップでその間接マーカーの基質、例えばその酵素の基質を添加することが必要である。
【0135】
一例として、レポーターがペルオキシダーゼに結合している場合は、後のステップでルミノールなどのその酵素の基質を添加することが必要である。
【0136】
好ましい一実施形態では、シグナルは化学発光によって検出され、前記シグナルは、ペルオキシダーゼ酵素とその基質、例えばルミノール、イソルミノールおよび/またはルミノールもしくはイソルミノールの誘導体との反応によって生成される化学発光化合物によって生成される。ペルオキシダーゼ酵素とその基質とのこの反応は、酸化剤、および適用可能であれば、電子伝達体の存在も一般に必要とする。
【0137】
一般に、化学発光反応は、少なくとも2つの溶液を含むキットを用いて行われる。
【0138】
第1の溶液は、ペルオキシダーゼの基質、例えばルミノール、イソルミノールおよび/またはルミノールもしくはイソルミノールの誘導体、ならびに電子伝達体を含む。第2の溶液は、酸化剤を含む。一例として、以下のキットを用いることができる:「Immun−star western C」(Bio−Rad、United States)、「ELISTAR ETA C Ultra ELISA」(Cyanagen、Italy)、「Supersignal West Pico」(Thermo Scientific、United States)、「Chemiluminescent Sensitive Plus HRP」(Surmodics、United States)。
【0139】
確実な多重分析に適切な固体支持体
本発明による分析方法を実行するために用いられる支持体(複数可)は、固体支持体である。
【0140】
固体支持体は、分析方法を実行するのに適切な任意の材料から作製することができる。
【0141】
固体支持体は、例えば、ポリマーまたはポリマーの混合物のベースを有する支持体である。本発明による適切な固体支持体は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンまたはそれらの組合せから作製される支持体である。
【0142】
本発明による別のタイプの適切な固体支持体は、例えば、無機の支持体、例えばガラスおよび/または金属支持体である。
【0143】
支持体は、プレート、マイクロプレート、スライド、ビーズまたは膜の形であってもよい。
【0144】
適切な固体支持体の別の例は、膜、例えばニトロセルロース、PVDF(フッ化ポリビニリデン)、ナイロンまたはそれらの組合せから作製される膜である。
【0145】
1つの好ましい固体支持体は、ポリスチレンまたはポリプロピレンから作製される。
【0146】
用いる技術によって、多重分析方法は、単一の固体支持体、例えば少なくとも2つのスポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む固体支持体を用いて、または、固体支持体のセットにおいて、例えばビーズのセットにおいて実行することができる。
【0147】
本発明による対照は、単一の固体支持体において、または固体支持体のセットにおいて使用するために転位可能である。第1の場合には、対照および分析物の検出手段はスポットの形であり、第2の場合には、対照および分析物の検出手段はビーズの形である。
【0148】
ビーズ(「粒子」、「マイクロビーズ」または「微粒子」と呼ぶこともできる)は、溶液もしくは懸濁液の状態であってもよく、または別の固体支持体、例えばプレート、マイクロプレート、スライドもしくは膜に固定されてもよく、特に固体支持体(例えばマイクロプレート)の1つまたはいくつかのウェルの底に固定されてもよい。
【0149】
使用する固体支持体(複数可)によって、試料の沈着の対照は、試料の沈着を対照するスポットまたは試料の沈着を対照するビーズと呼ばれ、分析物の1つまたはいくつかの検出リガンド(複数可)の沈着の対照は、分析物の検出リガンドの沈着を対照するスポットまたは分析物の検出リガンドの沈着を対照するビーズと呼ばれ、レポーターの沈着の対照は、レポーターの沈着を対照するスポットまたはレポーターの沈着を対照するビーズと呼ばれる。
【0150】
好ましい一実施形態では、固体支持体(複数可)は、サンドイッチタイプの免疫学的試験の形の多重分析を実行するのに適切である。
【0151】
本発明による固体支持体は、試料のマトリックスから独立して分析物を検出することができる利点も有する。例えば、血液に存在する分析物の検出は、血液試料または血液派生物、例えば血漿もしくは血清、または血液および/または血液派生物試料の混合物から、本発明による固体支持体を用いて実行することができる。
【0152】
スポット上での確実な多重分析に適切な固体支持体
本発明は、少なくとも1つの対照スポットおよび分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体であって、前記対照スポットは、試料の沈着を対照するためのスポット、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットおよびレポーターの沈着を対照するためのスポットからなる群から選択されることを特徴とする固体支持体に特に関する。
【0153】
固体支持体は、少なくとも1つのコンパートメント(分析ゾーンとも呼ばれる)、好ましくは少なくとも2つのコンパートメントを含む。
【0154】
本発明の1つの特定の実施形態により、固体支持体は単一のコンパートメントを含む。前記単一のコンパートメントは、1つまたはいくつかの壁を含むコンパートメントであってもよい。あるいは、前記単一のコンパートメントは壁を有さなくてもよく、その場合、固体支持体自体と同等であってもよい。コンパートメントの底は、その場合、固体支持体の上面からなることができる。1つまたはいくつかの壁を含むまたは含まなくてもよい単一のコンパートメントを含むそのような固体支持体の一例は、スライドまたは膜である。
【0155】
固体支持体(例えばスライドまたは膜)が単一のコンパートメントを含む本発明の1つの特定の実施形態では、一般的に、分析試料1つにつき少なくとも1つの(例えば1つまたは2つの)固体支持体が用いられる。
【0156】
固体支持体が少なくとも2つのコンパートメントを含む場合は、それらがお互いと連絡しないように、すなわち分析のために用いられる様々な組成物または溶液が分析の間に1つのコンパートメントから別のものに循環することができないように、それらはお互いから隔離される。したがって、1つのコンパートメントに添加される溶液は、他のコンパートメントに入らない。例えば、コンパートメント(複数可)は、底および1つまたはいくつかの壁を含む、またはそれで構成され、前記壁(複数可)は、コンパートメント(複数可)がお互いと連絡しないようにお互いからコンパートメント(複数可)を隔離する。
【0157】
分析試料1つにつき、固体支持体の1つのコンパートメントが用いられる。
【0158】
1つの例のコンパートメントは、ウェルである。
【0159】
固体支持体は、例えば、マイクロプレートである。
【0160】
マイクロプレートは、一般的に96ウェルまたは384ウェルのマイクロプレートである。
【0161】
試料を分析するために用いられる固体支持体のコンパートメントは、少なくとも3つのスポット、例えば3つのスポット、4つのスポットまたは5つのスポット、または少なくとも6つのスポット、好ましくは6つのスポット、7つのスポット、8つのスポット、より好ましくは少なくとも9つのスポット、例えば9つのスポット、10個のスポット、11個のスポット、12個のスポット、13個のスポット、14個のスポット、15個のスポット、16個のスポットまたは16を超える数のスポットを含む。
【0162】
本明細書では、「スポット」は、非共有結合による物理化学的相互作用(特に、弱い結合タイプの、例えば、イオン性、ファンデルワールス、水素および/または疎水性の)を通して、および/または共有結合によってコンパートメントの表面に結合した、少なくとも1つの目的化合物を含む固体支持体のコンパートメントのゾーンを指す。
【0163】
スポットは、目的の化合物(複数可)の他に、少なくとも1つのポリマー、特に親水基を含む少なくとも1つのポリマー、例えば少なくとも1つのヒドロゲルを含むことができる。
【0164】
「少なくとも」は、本出願の意味の範囲内で、1つまたはいくつかを指し、いくつかは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16または16超を特に意味する。
【0165】
スポットは、一般に球状または卵形で小さい、例えば0.0078mm〜5.309mm、好ましくは0.196mm〜3.142mm、より好ましくは0.503mm〜2.011mmの、明確なゾーンに相当する。
【0166】
スポットは、円板状、円筒状または概ね円板状もしくは円筒状の形状、例えば固体支持体がマイクロプレートまたはスライドである場合は特に卵形を有することができる。
【0167】
あるいは、スポットは、例えば固体支持体が膜である場合は、四角または長方形(これは特にストリップであってもよい)を、または任意の他の形状を有することができる。
【0168】
スポットは、当業者に周知の技術、例えば米国特許第7,470,547B2号明細書、米国特許第6,576,295B2号明細書、米国特許第5,916,524A号明細書および米国特許第5,743,960A号明細書で開示されるものを用いて得られる。
【0169】
例えば、スポットは、コンパートメントの表面の特定位置に、目的の前記化合物(複数可)の所定量を含有する溶液の少なくとも1滴を沈着して得られる。
【0170】
スポットが少なくとも1つのポリマー(例えば少なくとも1つのヒドロゲル)を含む場合、前記スポットは、前記ポリマーが前に沈着されているコンパートメントの表面の特定位置に、目的の前記化合物(複数可)の所定量を含有する溶液の少なくとも1滴を沈着して得ることができる。
【0171】
スポットは、コンパートメントの表面の特定位置での目的の前記化合物(複数可)のin situ合成によって得ることもできる。目的の前記化合物(複数可)は、この場合、プローブの資格がある。これは、核酸またはペプチドを含むことができる(例えば米国特許第5,143,854号明細書の文献を参照する)。
【0172】
コンパートメントの表面は、「固相」とも呼ばれる。
【0173】
目的の化合物は、一般に、捕捉リガンド、間接マーカーに結合した担体分子または間接マーカーである。捕捉リガンド、間接マーカーに結合した担体分子および間接マーカーは、特に上で規定した通りである。
【0174】
有利な一実施形態では、固体支持体の各コンパートメントは、同数のスポットを含む。さらに、固体支持体の各コンパートメントは、同数のスポットおよび同じスポット組成を含む。
【0175】
別の有利な実施形態では、支持体は、スポットのない、または異なる数のスポットおよび/もしくはスポット組成を有する1つまたはいくつかのコンパートメントを含むことができる。支持体の一部または全体は、例えば、少なくとも2つの別々の群(またはタイプ)のスポットまたはコンパートメントを含むことができ、別々の群の各々は異なる数のスポットおよび/またはスポット組成を有する。
【0176】
コンパートメントは、少なくとも1つの対照スポット(例えば、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのスポット)、好ましくは少なくとも2つの対照スポット、および分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む。
【0177】
コンパートメントは、検出する分析物1つにつき少なくとも1つのスポットを一般に含み、各分析物は、例えば、検出する感染症もしくは疾患、感染症もしくは疾患の発生、対象の状態(病的または非病的)、状態(病的または非病的)を発症するリスク、または治療への抵抗性のマーカーに対応することができる。コンパートメントのいくつかのスポットは、同じ分析物を分析することを目的とすることもできる。
【0178】
試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットは、好ましくは捕捉リガンドを含む。捕捉リガンドは、特に上で規定される通りである。
【0179】
同じスポットがいくつかの異なる捕捉リガンド(例えば、いくつかの抗体および/または抗原)を含むことができ、それらは検出される同じ病状、感染症または疾患に一般的に特異的(特に、同じウイルス、同じ細菌、同じ真菌または同じ寄生虫に特異的)であるか、または対象の感染症もしくは疾患の同じ発生、同じ状態(病的または非病的)、状態(病的または非病的)を発症する同じリスク、または療法への抵抗性の同じマーカーに特異的である。
【0180】
本発明は特に、少なくとも1つの対照スポットおよび分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体であって、前記対照スポットは、試料の沈着を対照するためのスポット、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットであることを特徴とする固体支持体に関する。前記コンパートメントは、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットをさらに含むことができる。
【0181】
好ましい一実施形態では、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットは、1つまたは少なくとも1つの捕捉リガンドを含み、前記捕捉リガンド(複数可)は核酸ではない。
【0182】
より一般的には、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットは、好ましくは核酸を含まない。
【0183】
好ましい一実施形態では、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物および脂質からなる群から選択される1つまたは少なくとも1つの捕捉リガンドを含む。
【0184】
本発明は特に、少なくとも2つの対照スポットおよび分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体において、前記対照スポットは、試料の沈着を対照するためのスポット、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットおよびレポーターの沈着を対照するためのスポットからなる群から選択されることを特徴とする固体支持体に関する。
【0185】
本発明による固体支持体は、確実な多重分析を可能にする。
【0186】
有利な一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの対照スポットおよび分析物に対する少なくとも2つの検出スポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体において、前記対照スポットは、試料の沈着を対照するためのスポットおよび分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのスポットの中から選択されることを特徴とする固体支持体に関する。
【0187】
固体支持体のコンパートメント(複数可)は、例えば、試料の沈着を対照するための少なくとも2つのスポットまたは分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも2つのスポットを含むことができる。
【0188】
好ましい一実施形態では、固体支持体のコンパートメント(複数可)は、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのスポットおよび分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含む。
【0189】
上で説明されるように、少なくとも1つの検出リガンドの間接マーキングの場合には、コンパートメント(複数可)がレポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含むことが有益である。
【0190】
本発明は、少なくとも1つの試料の多重分析に適切な固体支持体であって、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのスポット、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのスポット、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットおよび分析物を検出するための少なくとも2つのスポットを含む少なくとも1つのコンパートメントを含む固体支持体にも関する。
【0191】
したがって、固体支持体のコンパートメント(複数可)は、少なくとも2つの異なる間接マーカーが関与する分析のために、レポーターの沈着を対照するための少なくとも2つのスポット、例えばレポーターの沈着を対照するための2つまたは3つのスポットを含むことができる。この場合には、レポーターの沈着を対照するための各スポットは、マーカーに特異的である。
【0192】
確実な多重分析に適切なビーズのセット
固体支持体がビーズである場合は、試料のための多重分析方法はビーズのセットで行われる。
【0193】
したがって、本発明は、少なくとも1つの対照ビーズおよび分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む、試料の多重分析に適切なビーズのセットであって、対照ビーズは、試料の沈着を対照するためのビーズ、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズおよびレポーターの沈着を対照するためのビーズからなる群から選択されることを特徴とするビーズのセットにも関する。
【0194】
本出願の意味の範囲内で、「少なくとも1つのビーズX」は、少なくとも1つのタイプ(または群)のビーズXを意味し、「ビーズX」は、「対照ビーズ」、「試料の沈着を対照するためのビーズ」、「分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズ」または「レポーターの沈着を対照するためのビーズ」を意味することができる。
【0195】
本発明の意味の範囲内の「ビーズのタイプ」(または「ビーズの群」)は、いくつかのビーズ(例えば、10、50、100、200、300または500個のビーズ)を含む、またはそれからなり、それらはお互いと同一であるか、または少なくともいくつかのビーズは目的の同じ化合物(複数可)が固定される表面にある。
【0196】
同様に、「少なくとも2つのビーズX」は、少なくとも2つのビーズXもしくは2つの異なるタイプ(または群)のビーズXを意味し、「ビーズX」は、「対照ビーズ」、「分析物を検出するためのビーズ」、「試料の沈着を対照するためのビーズ」、「分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズ」または「レポーターの沈着を対照するためのビーズ」を意味することができる。
【0197】
各ビーズは、「固相」とも呼ばれる、ビーズの表面に結合している目的の少なくとも1つの化合物でも覆われる。
【0198】
試料を分析するために用いられるビーズのセットは、少なくとも3つのビーズ(またはビーズのタイプ)、例えば3、4または5つのビーズ(またはビーズのタイプ)、または少なくとも6つのビーズ(またはビーズのタイプ)、好ましくは6、7、8つのビーズ(またはビーズのタイプ)、より好ましくは少なくとも9つのビーズ(またはビーズのタイプ)、例えば9、10、11、12、13、14、15個のビーズまたは16個のビーズ(またはビーズのタイプ)、または16を超える数のビーズ(またはビーズのタイプ)を含む。
【0199】
本出願では、「ビーズ」、「粒子」、「マイクロビーズ」または「微粒子」は、サイズが直径0.3μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜40μmであってもよい、好ましくは球状または概ね球状の任意の粒子を意味する。そのような粒子は、例えば、Luminex、MerckおよびDynal社によって製造される。本発明との関連で用いることができるビーズは、立方体もしくは厚板の形、または概ね立方体もしくは厚板の形の粒子であってもよく、その側の長さは、例えば、0.3μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜40μmであろう。
【0200】
本発明によるビーズは、好ましくは、生体試料の構成成分と比較して不活性である1つまたはいくつかのポリマーで構成され、それは、分析する試料中で固体かつ不溶性である。用いることができる不活性ポリマーの例は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、多糖、ポリウレタンまたはセルロースである。
【0201】
目的の1つまたはいくつかの化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、脂質、炭水化物または核酸)の固定または結合を可能にするために、1つまたはいくつかの官能基を前記不活性ポリマー(複数可)に組み込むことができる。当業者に公知であるこれらの官能基は、アミン(=NH2)官能基またはアンモニウム官能基(−NH3+または−NHR、Rは脂肪族鎖、好ましくは
− 炭素原子数1からzの、直鎖状または分枝状の(置換されたまたは無置換の)アルキル鎖、zは好ましくは1から20の整数である、
− 炭素原子数2からzの、直鎖状または分枝状のアルケニル鎖、zは好ましくは1から20の整数である、または
− アリール基)、
アルコール官能基(−OH)、カルボキシル官能基(−COOH)、イソシアネート官能基(−NCO)、チオール官能基(SH)またはエポキシ官能基からなる群から選択することができる。−COOHカルボキシル官能基をポリオレフィンに導入するために最も一般的に用いられる単量体は、アクリル酸またはメタクリル酸である。
【0202】
ビーズは、当業者に周知の任意の適切な方法を用いて、目的の1つまたはいくつかの化合物で実際覆われる。ビーズ表面への目的の化合物(複数可)の固定は、静電引力、親和性相互作用、疎水性相互作用および/または共有結合によって行うことができる。
【0203】
好ましい一実施形態では、目的の化合物(複数可)は、共有結合によってビーズ表面に固定される。
【0204】
ビーズの表面に1つまたはいくつかの化合物を固定する方法は、当業者に周知である(例えば、LUMINEX xMAP(登録商標)Antibody Coupling KitUser Manual、Joseph Dasso et al. (Journal of Immunological Methods 263 (2002) 23- 33)による論文または国際公開第1997/014028号パンフレットの文献を参照)。
【0205】
例えば、その表面にカルボキシル化学官能基を含むビーズの場合、これらの化学官能基は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミドとの反応によって形成される活性化エステルに変換することができる。目的の化合物、例えば抗体、タンパク質またはペプチドは、次に目的の前記化合物に存在する遊離アミン基によって、各ビーズの活性化エステル基に接ぐことができる。活性化エステル型への変換およびビーズへの目的の化合物の結合は、当業者に周知の手順を用いて行われる(例えば、米国特許第7,141,362号明細書を参照)。
【0206】
方法の異なるステップの間、特に洗浄ステップの終わりでのビーズの回収を可能にするために、ビーズのセットのビーズまたはビーズの一部は、好ましくは磁気ビーズ、例えばLuminex xMAP(登録商標)技術を用いたビーズである。
【0207】
各ビーズは、ビーズのセットの他のビーズからそれを区別することができるように、コードで、例えば蛍光コードまたはバーコードでマーキングされる。
【0208】
コード、例えば蛍光またはバーコードによるビーズのマーキングは、例えば、欧州特許第1,802,710号明細書および欧州特許第1,049,807号明細書の文献に記載の、当業者に周知である任意の適切な方法を用いて行うことができる。
【0209】
少なくとも1つのコンパートメントを含む固体支持体に関しては、目的の化合物は、一般に、捕捉リガンド、間接マーカーに結合した担体分子または間接マーカーである。捕捉リガンド、間接マーカーに結合した担体分子および間接マーカーは、特に上で規定した通りである。
【0210】
本発明によるビーズのセットは、所望の1対照につき1つのビーズ(またはビーズのタイプ)および検出する1分析物につき少なくとも1つのビーズ(またはビーズの少なくとも1つのタイプ)を含む。いくつかのビーズ(またはビーズのタイプ)を、同じ分析物の検出を目的とさせることもできる。
【0211】
試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズは、好ましくは捕捉リガンドを含む。捕捉リガンドは、特に上で規定される通りである。
【0212】
同じビーズ(または所与のタイプのビーズの各ビーズ)をいくつかの異なる捕捉リガンド(例えば、いくつかの抗体および/または抗原)で覆うことができ、それらは一般的に検出する同じ感染症に特異的であり、特に同じウイルス、同じ細菌または同じ寄生虫に特異的である。
【0213】
したがって、ビーズのセットは、少なくとも1つの対照ビーズ(例えば、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのビーズ)、好ましくは少なくとも2つの対照ビーズ、および分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む。
【0214】
分析する1試料につき、ビーズの少なくとも1つのセットが用いられる。
【0215】
本発明は特に、少なくとも1つの対照ビーズおよび分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む、少なくとも1つの試料の多重分析に適切なビーズのセットにおいて、前記対照ビーズは、試料の沈着を対照するためのビーズ、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズであることを特徴とするビーズのセットに関する。前記ビーズのセットは、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズをさらに含むことができる。
【0216】
好ましい一実施形態では、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズは、1つまたは少なくとも1つの捕捉リガンドを含み、前記捕捉リガンド(複数可)は核酸ではない。
【0217】
より一般的には、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズは、好ましくは核酸を含まない。
【0218】
好ましい一実施形態では、試料の沈着を対照するための、または分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズは、抗体、抗原、ペプチド、炭水化物および脂質からなる群から選択される1つまたは少なくとも1つの捕捉リガンドを含む。
【0219】
本発明は、少なくとも2つの対照ビーズおよび分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む、試料の多重分析に適切なビーズのセットにおいて、前記対照ビーズは、試料の沈着を対照するためのビーズ、分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズおよびレポーターの沈着を対照するためのビーズからなる群から選択されることを特徴とするビーズのセットに特に関する。
【0220】
有利な一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの対照ビーズおよび分析物に対する少なくとも2つの検出ビーズを含む、試料の多重分析に適切なビーズのセットにおいて、前記対照ビーズは、試料の沈着を対照するためのビーズおよび分析物の検出リガンドの沈着を対照するためのビーズの中から選択されることを特徴とするビーズのセットに関する。
【0221】
ビーズのセットは、例えば、試料の沈着を対照するための少なくとも2つのビーズまたは分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも2つのビーズを含むことができる。
【0222】
好ましい一実施形態では、ビーズのセットは、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのビーズおよび分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを含む。
【0223】
上で説明されるように、分析物に対する少なくとも1つの検出リガンドの間接マーキングの場合には、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを用いることが有利である。
【0224】
本発明は、試料の多重分析に適切なビーズのセットであって、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのビーズ、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズ、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズおよび分析物を検出するための少なくとも2つのビーズ含むビーズのセットにも関する。
【0225】
したがって、ビーズのセットは、少なくとも2つの異なる間接マーカーが関与する分析のために、レポーターの沈着を対照するための少なくとも2つのビーズ、例えばレポーターの沈着を対照するための2つまたは3つのビーズを含むことができる。この場合には、レポーターの沈着を対照するための各ビーズは、好ましくはマーカーに特異的である。
【0226】
本発明によるビーズのセットは、確実な多重分析を可能にする。
【0227】
試料の沈着の対照
試料の沈着の対照は、試料が固体支持体のコンパートメントのスポットの存在下に、またはビーズのセットと置かれたことを検証することを可能にする。
【0228】
試料の沈着の対照は、分析する試料中に天然に存在する対照化合物に特異的である、少なくとも1つの捕捉リガンド、特に抗体または抗原を含む。対照化合物は、特に上で規定される通りである。
【0229】
したがって、試料の沈着の対照で検出されるシグナルは、試料の沈着ステップを検証することを可能にする。
【0230】
試料の沈着は、分析する試料を、少なくとも1つの対照スポットおよび少なくとも2つの分析物検出スポットを含む、本発明による固体支持体のコンパートメントに添加すること、または本発明によるビーズの少なくとも1つのセットの存在下に試料を置くことからなる。
【0231】
次に、対照化合物は、試料沈着対照で捕捉リガンドに固定される。このように固定される対照化合物は、対照化合物の特異的検出リガンドによって検出することができる。
【0232】
好ましくは、対照化合物に関する捕捉リガンドと検出リガンドの立体障害による競合を回避するために、対照化合物の検出リガンドは、用いられる捕捉リガンドが特異的に結合する対照化合物のゾーンから離れている、対照化合物のゾーンに特異的である。
【0233】
対照化合物が少なくとも2つの分子の複合体である場合は、検出リガンドまたは検出リガンドの1つは2つの分子の1つに特異的であってもよく、捕捉リガンドまたは捕捉リガンドの1つは複合体の他の分子に特異的であってもよい。
【0234】
あるいは、対照化合物が少なくとも2つの分子の複合体である場合は、検出リガンドまたは検出リガンドの1つおよび捕捉リガンドまたは捕捉リガンドの1つは同じ分子に、および、複合体がこれらの同一の分子の少なくとも2つを含む場合は分子の同じゾーンにさえ特異的であってもよく、それによって、複合体における検出抗体および捕捉抗体の同時固定を可能にする。
【0235】
例えば、対照化合物がトランスフェリンとの複合型のトランスフェリンの可溶性受容体である場合は、沈着対照は、トランスフェリンまたはトランスフェリンの可溶性受容体のいずれかの特異的抗体を捕捉リガンドとして含むことができる。好ましくは、血液試料で見出すことができる遊離のトランスフェリンに対する干渉を回避するために、捕捉リガンド(複数可)またはその1つは、トランスフェリンの可溶性受容体の特異的抗体である。
【0236】
好ましい一実施形態では、沈着対照の捕捉リガンド(複数可)またはその1つは、トランスフェリンの可溶性受容体に特異的であり、対照化合物の検出リガンド(複数可)またはその1つは、トランスフェリンに特異的であるかまたはトランスフェリンの可溶性受容体に特異的である。
【0237】
ある特定の実施形態では、前記分析物検出リガンド(複数可)が分析する試料と同時に添加されない場合、しかし、例えば後のステップで対照化合物の検出リガンド(複数可)の添加と同時の場合を除き、試料の沈着の対照は、1つまたはいくつかの分析物検出リガンド(複数可)が固体支持体のコンパートメントのスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれたことを検証することも可能にする。「対照化合物の検出リガンド(複数可)の添加と同時に」は、前記分析物検出リガンド(複数可)が、前記分析物検出リガンド(複数可)および対照化合物の検出リガンド(複数可)を含む溶液の形で添加されることを一般に意味する。
【0238】
あるいは、前記分析物検出リガンド(複数可)および対照化合物の前記検出リガンド(複数可)が同じステップで、しかし別々の溶液の形で添加されてもよい。
【0239】
実際、分析する試料が対照化合物の検出リガンドに干渉するかもしれない化合物を含む場合は、試料の沈着ステップの後、特に試料の沈着ステップとその後の少なくとも1回の洗浄ステップの後のステップで、対照化合物に検出リガンドを添加することが必要かもしれない。この場合には、分析物の検出リガンド(複数可)の全部または一部は、対照化合物の検出リガンドと同時に添加することができる。そこで、沈着の対照は、これらの検出リガンドが、固体支持体のコンパートメントのスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれたことを検証することも可能にする。
【0240】
例えば、血液試料は、トランスフェリンとの複合型のトランスフェリンの可溶性受容体と、遊離の、すなわち受容体に結合していないトランスフェリンの両方を含む。したがって、検出リガンド(複数可)またはその1つがトランスフェリンの特異的抗体であって、それが試料と同時に添加される場合は、それは遊離のトランスフェリンに一部結合する危険を冒し、対照化合物の検出がゆがめられるだろう。この場合には、対照化合物の前記検出リガンドは、後続のステップで、すなわち、試料の沈着ステップとその後の少なくとも1回の洗浄ステップの後に与えられる。
【0241】
特定の一実施形態では、試料の沈着の対照(複数可)は、第XIII因子の特異的抗体を含まない(すなわち、四量体形の特異的抗体も、第XIII因子のサブユニットの特異的抗体も含まない)。好ましくは、試料の沈着の対照(複数可)は、第XIII因子の特異的補足リガンドを含まない(すなわち、四量体形の特異的補足リガンドも、第XIII因子のサブユニットの特異的補足リガンドも含まない)。
【0242】
特定の一実施形態では、試料の沈着の対照(複数可)は、IgG、IgMまたはより一般的には免疫グロブリン(特に、ヒトIgG、ヒトIgMまたはヒト免疫グロブリン)の特異的捕捉リガンド(特に、特異的抗体)を含まない。
【0243】
試料の沈着の少なくとも2つの対照を用いることは非常に有利かもしれず、これらの対照は異なる対照化合物および/または異なる感受性を有する同じ対照化合物を検出し、例えば対照化合物の濃度が、例えば試料の性質および/または試料がとられた対象の状態に基づいて異なり得る場合は、少なくとも2つの異なる対照化合物を用いることが有利かもしれない。
【0244】
分析物の検出リガンドの沈着の対照
分析物の検出リガンドの沈着の対照は、添加剤の検出リガンドと同時に沈着した1つまたはいくつかの分析物検出リガンド(複数可)および/または添加剤と同時に沈着した1つまたはいくつかの分析物検出リガンド(複数可)が、固体支持体のコンパートメントのスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれたことを検証することを可能にする。
【0245】
「添加剤の検出リガンドと同時に沈着した」は、前記分析物検出リガンド(複数可)が、前記分析物検出リガンド(複数可)および添加剤の検出リガンド(複数可)を含む溶液の形で添加されることを一般に意味する。あるいは、前記分析物検出リガンド(複数可)および/または添加剤の検出リガンド(複数可)が同じステップで、しかし別々の溶液の形で添加されてもよい。
【0246】
「添加剤と同時に沈着した」は、前記分析物検出リガンド(複数可)が、前記分析物検出リガンド(複数可)および添加剤を含む溶液の形で添加されることを一般に意味する。あるいは、前記分析物検出リガンド(複数可)および/または1つまたはいくつかの添加剤が同じステップで、しかし別々の溶液の形で添加されてもよい。
【0247】
分析物の検出リガンドの沈着の対照は、インキュベーションおよび洗浄ステップを検証することも可能にする。実際、固体支持体のコンパートメントのスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれた添加剤の濃度は既知であり、検出されるシグナルの変動は、方法のステップ、特にインキュベーションおよび洗浄ステップでの方法の欠陥を特定することを可能にする。これは、欠陥のあるインキュベーションおよび/または洗浄ステップ、すなわち不履行のまたは不十分なステップからもたらされる「偽陽性」を回避することを特に可能にすることができる。
【0248】
「偽陽性」は、試料中に検出される1つまたはいくつかの分析物の存在を反映する陽性結果であるが、前記分析物(複数可)は試料中に存在せず、したがって検出されるはずではなかった。
【0249】
分析物の検出リガンドの沈着の対照は、分析する試料中に存在せず、多重分析方法の実行の間に用いられる添加剤の少なくとも1つの特異的捕捉リガンドを含む。添加剤は、特に上で規定される通りである。
【0250】
したがって、分析物の検出リガンドの沈着の対照で検出されるシグナルは、添加剤の検出リガンドと同時に沈着する分析物検出リガンド(複数可)の沈着ステップを検証することを可能にする。
【0251】
スポットおよび/またはビーズのセットの存在下に置かれる添加剤は、分析物の検出リガンドの沈着の対照で捕捉リガンドに固定される。このように固定される添加剤は、前記添加剤の特異的検出リガンドによって検出することができる。
【0252】
例えば、添加剤がジゴキシゲニンを含む場合は、方法対照の捕捉リガンドはジゴキシゲニンの特異的抗体であってもよい。好ましくは、添加剤の検出リガンドも、ジゴキシゲニンの特異的抗体である。
【0253】
例えば分析物の検出リガンドがいくつかの異なるステップで、特に少なくとも3つの異なるステップの間に添加される場合は、検出分析物の沈着のいくつかの異なる対照、したがって同数の異なる添加剤を用いることが有利かもしれない。
【0254】
本発明の特定の一実施形態によると、
− 本発明による分析方法の実行の間に試料の沈着対照の捕捉リガンドに固定される対照化合物は、前記対照化合物の特異的検出リガンドによって検出され(サンドイッチタイプの免疫学的フォーマット)、
− 分析方法の実行の間に分析物の検出リガンドの沈着対照の捕捉リガンドに固定される添加剤は、前記添加剤の特異的検出リガンドによって検出される(サンドイッチタイプの免疫学的フォーマット)。
【0255】
これらのサンドイッチタイプの免疫学的フォーマットは、他の免疫学的フォーマット、特に間接フォーマットと比較して、高レベルの特異性および/または感受性を達成することを可能にする。
【0256】
レポーターの沈着の対照
レポーターの沈着の対照は、検出マーカーレポーターが固体支持体のコンパートメントのスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれたことを検証することを可能にする。
【0257】
レポーターの沈着の対照は、分析物の少なくとも1つの検出リガンドの間接マーキングの場合にだけ有益である。
【0258】
レポーターの沈着の対照は、間接マーカーまたは間接マーカーに結合した担体分子を含む。
【0259】
レポーターの沈着の対照の間接マーカーは、分析物の少なくとも1つの検出リガンドの間接マーカーと同一である。
【0260】
少なくとも2つの分析物検出リガンドを検出するために少なくとも2つの異なる間接マーカーが用いられる場合は、各マーカーのためにレポーターの沈着の対照を用いることが好ましい。
【0261】
本発明による有利な一実施形態では、検出リガンド(複数可)をマーキングするために単一のおよび同じ間接マーカーが用いられ、したがって、レポーターの沈着の単一の対照を用いることができる。
【0262】
したがって、レポーターの沈着の対照で検出されるシグナルは、対応する検出マーカーのレポーターの沈着ステップを検証することを可能にする。
【0263】
したがって、レポーターはレポーターの沈着の対照で検出マーカーに固定され、レポーターの沈着の陽性対照の場合には、必要ならば前記レポーターのマーカーの基質を添加した後にシグナルが得られる。
【0264】
例えば、間接マーカーがビオチンである場合は、レポーターの沈着の対照はビオチンまたはビオチンに結合した担体分子を含む。
【0265】
確実な多重分析方法
したがって、本発明は、少なくとも1つの試料中の少なくともn個の分析物を検出するための多重分析方法であって、nは2以上の整数であり、前記方法は、
a)上で規定される少なくとも1つのコンパートメントを含む少なくとも1つの固体支持体、または上で規定されるビーズの少なくとも1つのセットを用意するステップ、
b)前記コンパートメントのスポットまたは前記ビーズのセットの存在下に、検出するp個の分析物のl個の検出リガンド、および適用可能であれば少なくとも1つの添加剤を置くステップであって、lは好ましくはp以上である、ステップ、
c)分析する試料を前記コンパートメントのスポット(複数可)または前記ビーズのセットの存在下に置くステップ、
d)前記コンパートメントのスポットまたは前記ビーズのセットの存在下に:
検出するm個の分析物のl’個の検出リガンド、および適用可能であれば、前記添加剤(複数可)の少なくとも1つの検出リガンドを置くステップであって、l’は好ましくはm以上である、ステップ、
e)前記コンパートメントのスポットまたは前記ビーズのセットの存在下に:
対照化合物の少なくとも1つの検出リガンドおよび検出するy個の分析物のl’’個の検出リガンドを置くステップであって、l’’は好ましくはy以上である、ステップ、
f)任意選択で少なくとも1つのレポーターを前記コンパートメントのスポットまたは前記ビーズのセットの存在下に置くステップ、
g)任意選択で、特にステップfの前記レポーターまたは前記レポーターの1つがマーカー、特に間接マーカー(例えば、酵素)に結合する場合に、ステップf)のレポーターに結合した前記マーカーの少なくとも1つの第2のレポーター(例えば、基質、例えばルミノール、イソルミノールまたはそれらの誘導体の1つ)を前記コンパートメントのスポットまたは前記ビーズのセットの存在下に置くステップ
のうち、少なくともステップa)、c)およびe)、少なくともステップa)、c)およびf)、または少なくともステップa)、b)、c)およびd)を含み、
l、l’、l’’、m、pおよびyは0以上の整数であり、m+p+yの合計は1以上である、多重分析方法に関する。
【0266】
少なくともn個の分析物を検出するための方法は、検出する少なくとも2つの分析物が同一である場合は、n未満である異なる数の分析物を検出することからなることができる。例えば、固体支持体のコンパートメントの少なくとも2つのスポットまたはビーズのセットの少なくとも2つのビーズ(またはビーズのタイプ)は、同じ分析物を検出することを目的とする。
【0267】
数「n」は、固体支持体のコンパートメントの分析物の検出スポットの数またはビーズのセットの分析物を検出するためのビーズ(またはビーズのタイプ)の数に一般に等しい。
【0268】
好ましくは、m+p+yの合計は、1からnである。
【0269】
検出するいくつかの分析物が同一である場合は、同一の分析物の少なくとも2つまたは全てのために同じ検出リガンドを用いることが可能である。そこで、m+p+yの合計は1以上であってもよく、厳密にn未満である。
【0270】
別の実施形態では、例えば固体支持体のコンパートメントに分析物のn個の検出スポットまたはビーズのセットの分析物を検出するためにn個のビーズ(またはビーズのタイプ)がある場合は、m+p+yの合計はnに等しい。
【0271】
下で概説されるように、ステップa)からe)は同時におよび/または連続して行うことができ(例えば、これらのステップの一部は同時に、他は連続して行うことができる)、それらのうちの少なくとも2つについてはa)からe)の順序または別の順序で、ステップa)は常に実行される最初のステップであり;方法が、ステップf)および任意選択でステップg)を[含む]場合、これらのステップは常にステップa)からe)の後に実行される。
【0272】
方法が少なくともステップa)、c)およびe)を含む場合、固体支持体は少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントは、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含み、またはビーズのセットは、試料の沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを含む。
【0273】
方法が少なくともステップa)、c)およびf)を含む場合、固体支持体は少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントは、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含み、または、ビーズのセットは、レポーターの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを含む。
【0274】
ステップb)がスポットまたはビーズのセットを少なくとも1つの添加剤の存在下に置くことを含む場合、ステップd)は、スポットまたはビーズのセットを前記添加剤(複数可)の少なくとも1つの検出リガンドの存在下に置くことを好ましくは含む。
【0275】
方法が少なくともステップa)、b)、c)およびd)を含み、ステップb)で少なくとも1つの添加剤がスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれ、ステップd)で前記添加剤(複数可)の少なくとも1つの検出リガンドがスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれる場合は、固体支持体は少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントは、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのスポットを含み、または、ビーズのセットは、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための少なくとも1つのビーズを含む。
【0276】
方法がステップa)、b)、c)およびd)を含むがステップe)を含まない場合は、ステップb)で少なくとも1つの添加剤がスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれ、ステップd)で前記添加剤(複数可)の少なくとも1つの検出リガンドがスポットまたはビーズのセットの存在下に置かれる。
【0277】
「化合物Xをコンパートメントのスポットの存在下に置く」という表現は、化合物Xが前記スポットを含むコンパートメントに添加されることを意味し、前記コンパートメントは試料を分析することを目的とする。
【0278】
「化合物Xをビーズのセットの存在下に置く」という表現は、化合物Xが、前記ビーズのセットを含有する任意の適切な容器中の試料を分析することを目的とするビーズの少なくとも1つのセットの存在下に置かれることを意味する。適切な容器の一例は、マイクロチューブ、マイクロプレートまたは反応シャーレである。
【0279】
ステップb)からf)の少なくとも2つが同時に実行される場合、化合物(複数可)Xは、試料を分析することを目的とする、コンパートメントのスポット(複数可)またはビーズ(複数可)またはビーズのセット(複数可)の存在下に別々に、すなわち別々の組成物の形で置くことができる。あるいは、これらの化合物Xまたはこれらの化合物X(複数可)の一部は、試料を分析することを目的とする、コンパートメントのスポット(複数可)またはビーズ(複数可)またはビーズのセット(複数可)の存在下に、1つまたはいくつかの混合物の形で置くことができる。
【0280】
各コンパートメントのスポットまたはビーズの各セットの存在下に、異なる化合物がある特定の時間、例えば1秒から2時間、好ましくは1分から1時間、より好ましくは5分から50分、さらにより好ましくは10分から40分の間置かれる。
【0281】
当業者は、各インキュベーションステップのための適切な温度を決定する方法を知っている。インキュベーションの温度は、例えば4℃、19℃から24℃、37℃または40℃の温度であってもよい。
【0282】
ステップb)、d)、e)、f)およびg)の間に用いられる異なる構成成分は、当業者に周知である。例えば、それらは抗原−抗体、マーカー−レポーター複合体の形成を可能にする。
【0283】
ステップa)は、少なくとも1つのコンパートメントを含む上に規定される固体支持体または上に規定されるビーズの少なくとも1つのセットを提供することからなる。
【0284】
ステップa)は、多重分析方法が前記固体支持体または前記ビーズのセットを用いて、すなわち、前記固体支持体または前記ビーズのセットを用いて実行されることを特に意味する。
【0285】
したがって、本発明による多重分析方法は、例えばマイクロプレートタイプのコンパートメント(複数可)を有する固体支持体を用いること、またはビーズのセットのいずれかにより実行される。
【0286】
分析するX個の試料のために、ステップa)は、
− 少なくともX個のコンパートメントを含む固体支持体または固体支持体の全てで少なくともX個のコンパートメントを有するようないくつかの固体支持体(例えば、固体支持体が1つのコンパートメントだけを含み、それが、特定の一実施形態では固体支持体自体に擬すことができて少なくともX個の固体支持体を提供する場合)、または
− ビーズの少なくともX個のセット
を提供することからなる。
【0287】
例えば、本発明による多重分析方法は、少なくとも1つの試料、少なくとも2つの試料、少なくとも5つの試料、少なくとも10個の試料、好ましくは少なくとも20個の試料、例えば少なくとも40個の試料、少なくとも60個の試料または少なくとも80個の試料でn個の分析物を検出することを可能にする。
【0288】
数nは、2以上の整数、例えば2、3、4、5、好ましくは6以上、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または18超である。
【0289】
ステップが同時に行われない場合は、それらの後に1つまたはいくつかの洗浄ステップが一般に続く。
【0290】
洗浄ステップは、スポットまたはビーズに、または前記スポットもしくはビーズに結合した様々な化合物に結合していない化合物を排除することを可能にする。
【0291】
一般的に、洗浄ステップは、各コンパートメントで、またはビーズの各セットの存在下で洗浄溶液を分配(例えば、400μlの量)、吸引するために、少なくとも1サイクル、好ましくは少なくとも2サイクル、より好ましくは3〜6サイクルからなる。一般的に、洗浄溶液は、0.1%のTween20を注入したトリスNaClの0.01M緩衝液、pH7.4であってもよい。
【0292】
少なくとも2つのコンパートメントを含む少なくとも1つの固体支持体でこの方法が実行される場合は、固体支持体(複数可)のコンパートメントは、特にスポットの数および組成に関して好ましくは同一である。
【0293】
あるいは、この方法は、少なくとも2つの別々の群(またはタイプ)のコンパートメントを含む少なくとも1つの固体支持体で実行することができ、別々の群の各々は異なる数のスポットおよび/またはスポット組成を有する。
【0294】
この方法が少なくとも2セットのビーズで実行される場合は、ビーズのセットは、特にビーズの数および組成に関して同一であってもよい。
【0295】
あるいは、この方法は、少なくとも2つの別々の群(またはタイプ)のビーズのセット、特に異なる数および/または組成のビーズを有する別々の群のビーズのセットの各々で実行することができる。
【0296】
ステップb)、d)、e)およびf)は、試料を分析することを目的とする各コンパートメントで、または試料を分析することを目的とするビーズのセットを含有する各容器で実行される。
【0297】
ステップc)に関して、1コンパートメントにつき、またはビーズのセットを含有する1つの容器につき、1つの試料が添加される。
【0298】
試料(複数可)、分析物、添加剤(複数可)、対照化合物(複数可)、分析物の検出リガンド、添加剤(複数可)の検出リガンド(複数可)、対照化合物(複数可)の検出リガンドおよびレポーター(複数可)は、特に対応する段落で上で規定される通りである。
【0299】
本発明による方法で用いられる添加剤は、分析物の検出リガンドの沈着対照の捕捉リガンド(複数可)によって認識される添加剤である。
【0300】
試料中に存在する対照化合物は、試料の沈着対照の捕捉リガンド(複数可)によって認識される対照化合物である。
【0301】
分析物の各検出リガンドは、分析物の検出スポットまたは分析物の検出ビーズに存在する少なくとも1つの捕捉リガンドによって認識される分析物に特異的である。
【0302】
ステップb)がステップc)、d)またはe)の1つと同時に実行されない場合は、lが0に等しい場合だけ、ステップb)の後、かつ前記ステップc)、d)およびe)の前に1つまたはいくつかの洗浄ステップを実行することができる。
【0303】
ステップb)、c)、d)およびe)が存在する場合は、それらは任意の所望の順序で連続して、またはこれらのステップの1つ、2つもしくは3つを同時に実行することができる。しかし、ステップb)およびステップd)が少なくとも1つの添加剤および前記添加剤の少なくとも1つの検出リガンドをそれぞれ実行する場合は、前記ステップd)はなお前記ステップb)と同時にかまたはその後に行われる。同様に、ステップe)が存在する場合は、ステップe)とc)の間に洗浄ステップがない限り、それは常にステップc)と同時にかまたはその後、またはステップc)の前に行われる。さらに、ステップc)が、lが1以上であるステップb)の後、および/またはl’が1以上であるステップd)の後、および/またはステップe)の後に行われる場合、このまたはこれらのステップとステップc)の間に洗浄ステップは行われない。
【0304】
例として、ステップb)からe)が存在する場合は、それらは同時におよび/または以下の順序で連続して行うことができる:b)からe)、b)c)e)d)、c)b)d)e)、c)b)e)d)またはc)e)b)d)。
【0305】
ステップc)、d)および/またはe)は、ステップb)と同時に行うことができる。
【0306】
本発明による有利な一実施形態では、ステップb)およびc)は同時に行われる。
【0307】
本発明による別の有利な実施形態では、ステップc)およびd)は同時に行われる。
実際、試料を分析物の検出リガンドの存在下に同時に置くことは有利である可能性があり、それは、分析物が分析物の捕捉抗体に既に結合している場合より、それらが特異的である分析物と溶液中でより良好に相互作用する。
【0308】
本発明によるさらに別の有利な実施形態では、ステップb)、c)およびd)は同時に行われる。
【0309】
いくつかの添加剤が用いられる場合、この方法は1つまたはいくつかのステップb)(および1つまたはいくつかのステップd))を含むことができ、ステップb)の各々はステップc)の前、その後または同時に独立して行うことができる。少なくとも2つのステップb)が例えばあってもよく、1つはステップc)の前または同時に行われ、他はステップc)の後または同時に行われる。
【0310】
所与のステップの化合物は、そのステップの化合物の全ておよび任意選択で同時に行われる1つまたはいくつかのステップの化合物を含む混合物、すなわち溶液の形で提供されてもよい。
【0311】
2つまたは2つを超えるステップが同時に行われる場合は、これらの異なるステップの化合物は1つまたはいくつかの混合物、すなわち1つまたはいくつかの溶液の形、好ましくは単一の混合物(すなわち、単一の溶液)の形で与えられてもよい。
【0312】
例えば、ステップb)、c)およびd)が同時に行われる場合は、添加剤(複数可)(それらが存在する場合)、検出されるp個の分析物の各々のl個の検出リガンド、前記添加剤(複数可)の検出リガンド(複数可)(それらが存在する場合)、検出されるm個の分析物の各々のl’’個の検出リガンドは、単一の混合物の形で与えられてもよい。
【0313】
有利な一実施形態では、l’はnに等しく、すなわち、n個の分析物の少なくともn個の検出リガンドがステップd)で添加される。
【0314】
ある特定の実施形態では、ステップe)は、ステップc)の後に行われる。これは、化合物のための検出リガンドまたはその1つの存在が、試料が同時に干渉を引き起こす危険を冒すかどうか対照する場合を特に含む。
【0315】
例えば、対照化合物の検出リガンドがトランスフェリンの特異的抗体であり、試料が遊離のトランスフェリンを含む場合、ステップe)はステップc)の後に実行される。
【0316】
ステップe)がステップc)の後に実行される場合、好ましくはコンパートメントの少なくとも1つの洗浄ステップがステップc)の後およびステップe)の前に行われる。
【0317】
本発明による方法がステップf)を含む場合、このステップは常にステップa)からe)の後に行われ、各コンパートメントのスポットまたはビーズの各セットの少なくとも1つの洗浄ステップが一般にそれに先行する。
【0318】
レポーターの少なくとも2つの沈着対照が用いられる場合は、この方法はいくつかのステップf)、すなわち、1つのレポーターにつき好ましくは1つのステップf)を含むこともできる。
【0319】
本発明による方法がステップg)を含む場合、このステップは常にステップf)の後に行われ、各コンパートメントのスポットまたはビーズの各セットの少なくとも1つの洗浄ステップが一般にそれに先行する。
【0320】
ステップf)のレポーターまたはその少なくとも1つは、好ましくは、分析物の少なくとも1つの検出リガンドに結合した間接検出マーカーのレポーターおよびレポーターの沈着の少なくとも1つの対照に存在する検出マーカーのそれの両方である。
【0321】
本発明による多重分析方法の実行のために用いられる対照は、分析物の検出の異なるステップを模倣することが有利かもしれない。例えば、分析物の捕捉リガンドおよび分析物の検出リガンドが抗体である場合は、添加剤の検出リガンドおよび好ましくは対照化合物の検出リガンドも抗体である。同様に、添加剤の検出リガンドおよび好ましくは対照化合物の検出リガンドは、分析物の検出リガンドのそれと同じマーカーでマーキングされる。
【0322】
本発明による方法は、対照(複数可)(特に対照スポット(複数可)または対照ビーズ(複数可))および分析物(複数可)の検出マーカーに対応するシグナルを検出するためのステップh)を一般に含む。
【0323】
陽性シグナルが方法の終わりに検出されるならば、対照は陽性である。
【0324】
陽性シグナルが方法の終わりに検出されないならば、対照は陰性である。
【0325】
方法の実行の間に用いられる各対照の陽性シグナルの検出は、方法全体の検証を可能にする。
【0326】
1つまたはいくつかの対照でのシグナルの不在は、1つまたはいくつかのステップが正しく起こらなかったことを意味する。この場合には、得られる結果を用いてはならない。
【0327】
試料の沈着の後、および少なくとも1つの洗浄ステップの後に対照化合物の検出リガンドが沈着する場合は、試料の沈着の陰性対照は、試料が沈着しなかったこと、および/または対照化合物の前記検出リガンドが沈着しなかったことを意味する。
【0328】
試料の沈着の対照、分析物の検出リガンドの沈着の対照、および適用可能であればレポーターの沈着の対照は相補的であり、方法のステップの各々の適正な性能を確保することを可能にし、分析方法で遭遇するいかなる欠陥の起源でも理解することを可能にする。
【0329】
本発明による方法は、
− 分析物の検出リガンドの沈着の少なくとも2つの対照が用いられる場合は少なくとも2つのステップb)および少なくとも2つのステップd)、
− 試料の沈着の少なくとも2つの対照が用いられる場合は少なくとも2つのステップf)、および/または
− レポーターの沈着の少なくとも2つの対照が用いられる場合は少なくとも2つのステップf)
を含むこともできる。
【0330】
試料の多重分析方法を確実にする1つまたはいくつかの対照の使用。
本発明は、試料の多重分析を確実にするための、試料の沈着の少なくとも1つの対照、および/または分析物の検出リガンドの沈着の少なくとも1つの対照の使用にも関する。
【0331】
前記使用は、レポーターの沈着の少なくとも1つの対照の使用をさらに含むことができる。
【0332】
本発明は、試料の多重分析を確実にするための、試料の沈着の対照、分析物の検出リガンドの沈着の対照およびレポーターの沈着の対照からなる群から選択される少なくとも1つの対照の使用に特に関する。
【0333】
本明細書では、「試料の多重分析を確実にする」は、特に「偽陰性」の存在を回避することによって、多重分析の結果の信頼性を保証することを意味する。
【0334】
「偽陰性」は、試料中に検出される1つまたはいくつかの分析物の不在を反映する陰性結果であるが、前記分析物(複数可)は試料中に存在していて、検出されるはずであった。
【0335】
本発明は、試料の多重分析を確実にするための、試料の沈着の対照、分析物の検出リガンドの沈着の対照およびレポーターの沈着の対照からなる群から選択される少なくとも2つの対照の使用にも関する。
【0336】
本発明は、試料の多重分析を確実にするための、試料の沈着の少なくとも1つの対照、分析物の検出リガンドの沈着の少なくとも1つの対照およびレポーターの沈着の少なくとも1つの対照の使用に特に関する。
【0337】
前記使用は、好ましくは、上で規定される少なくとも1つのコンパートメントを含む固体支持体または上で規定されるビーズの少なくとも1つのセットで実行される。
【0338】
試料の沈着の対照、分析物の検出リガンドの沈着の対照、レポーターの沈着の対照および試料は、特に上で規定される通りである。
【0339】
本発明は、本発明による少なくとも1つの固体支持体および/または本発明によるビーズの少なくとも1つのセット、および適用可能であれば、本発明による多重分析方法を実行するために使用される少なくとも1つの組成物もしくは溶液、および/またはユーザー使用説明書を含む、またはそれからなることを特徴とするキットにも関する。
【0340】
本発明の他の特徴および利点は、例として非限定的に提供される以下の実施例を通じてより明らかになる。これらの実施例および図は、その範囲を限定することなく本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0341】
図1】確実な多重分析のためのマイクロプレートタイプの固体支持体の例を示す図である。Aは、18個のウェルを含むマイクロプレートのブロック図を示す。Bは、マイクロプレートのウェルの底を概略的に示す。マイクロプレートの各ウェルは9つのスポットを含み、その中の6つのスポットは各々1つまたはいくつかの分析物を検出することを目的とし、感染症の診断を可能にし(それぞれA1、A2、A3、A4、A5およびA6)、3つは対照スポット:SDC(試料沈着対照)、PVC(分析物検出リガンド沈着対照)およびRVC(レポーター沈着対照)である。Cは、固相(PS)に結合した検出抗体を含む3つの対照スポットを概略的に示す。Ac CC:対照化合物の検出抗体。Ac Add:添加剤の検出抗体。MS+B:ビオチンでマーキングした担体分子。
図2】非相同フォーマットでの試料の沈着の陽性対照(SDC)の図である。試料の沈着の対照は、固相(PS)に固定された対照化合物の捕捉抗体を含む。ここで、捕捉抗体はトランスフェリンの可溶性受容体(sTfR)に特異的である。対照化合物、ここでは複合体2:2つの可溶性トランスフェリン受容体(sTfR):トランスフェリン(Tf)は、試料の沈着の対照で捕捉抗体に、およびトランスフェリンに特異的である検出抗体(Ac2)に固定される。検出抗体(Ac2)は、ビオチン(B)でマーキングされる。発色は、ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(S−POD)を添加し、次にこの酵素の基質(示さず)を添加することによって実行される。捕捉抗体および検出抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってもよい。全ての場合に、それは非相同サンドイッチを含む。
図3】相同フォーマットでの試料の沈着の陽性対照(SDC)の図である。試料の沈着の対照は、固相(PS)に固定された対照化合物の捕捉抗体を含む。ここで、捕捉抗体はトランスフェリンの可溶性受容体(sTfR)に特異的である。対照化合物、ここでは複合体2:2つの可溶性トランスフェリン受容体(sTfR):トランスフェリン(Tf)は、試料の沈着の対照で捕捉抗体に、および同じく可溶性トランスフェリン受容体(sTfR)に特異的である検出抗体(Ac2)に固定される。検出抗体(Ac2)は、ビオチン(B)でマーキングされる。発色は、ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(S−POD)を添加し、次にこの酵素の基質(示さず)を添加することによって実行される。捕捉抗体および検出抗体は、例えばモノクローナル抗体である。それは、相同的サンドイッチを含む。
図4】分析物の検出リガンドの沈着の陽性対照(PVC)の図である。方法対照は、固相(PS)に固定された添加剤の捕捉抗体を含む。ここで、捕捉抗体はジゴキシゲニン(Dig)に特異的である。添加剤はジゴキシゲニンおよびBSAを含み、ジゴキシゲニンはBSAと複合している。添加剤は、ジゴキシゲニンを通して分析物の検出リガンドの沈着の対照で捕捉抗体に、および検出抗体(Ac2)に結合している。検出抗体(Ac2)は、ビオチン(B)でマーキングされる。発色は、ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(S−POD)を添加し、次にこの酵素の基質(示さず)を添加することによって実行される。捕捉抗体および検出抗体は両方ともモノクローナル抗体または両方ともポリクローナル抗体であってもよく、その場合には、それは相同的サンドイッチを含む。捕捉抗体はモノクローナル抗体で検出抗体はポリクローナル抗体であってもよく、またはその逆であってもよく、その場合は、それは非相同サンドイッチを含む。
図5】レポーターの沈着の陽性対照(RVC)の図である。レポーターの沈着の対照は、固相(PH)に固定されたビオチン(B)に結合した担体分子(MS)を含む。発色は、ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(S−POD)を添加し、次にこの酵素の基質(示さず)を添加することによって実行される。
図6】マイクロプレートのウェルの底に置かれ、分析する5つの分析物のスポット(A1からA5)および3つの対照スポットSDC、PVCおよびRVCを含む「スポッティング」格子を示す図である。
図7】94個の試料の集団の単純なフォーマットでのSDC対照ビーズのシグナルの分布を示す図である。Y軸は試料数を示し、X軸は相対蛍光強度(RFI)の区間を示す。
図8】38個の試料の集団の単純なフォーマットでのPVC対照ビーズのシグナルの分布を示す図である。Y軸は試料数を示し、X軸は相対蛍光強度(RFI)の区間を示す。
【実施例】
【0342】
[実施例1]
「液体チップ」方法
原理
この実施例に記載される2つの対照は、
− SDC(「試料沈着対照」または「試料の沈着の対照」):試料さらにステップ2(コンジュゲート2の沈着、すなわちステップ2で沈着した検出リガンド)およびステップ3)(S−PEレポーターの沈着:フィコエリトリンに結合したストレプトアビジン)の沈着、ならびに
− PVC(「プロセス検証対照」または「分析物の検出リガンドの沈着の対照」):ステップ1(コンジュゲート1の沈着、すなわちステップ1で沈着した検出リガンド)、さらにステップ2(コンジュゲート2の沈着、この実施例で例示されていないので点線で示す)およびステップ3)(S−PEレポーターの沈着)の沈着
について検証することを可能にする(表1を参照)。
【0343】
【表1】
【0344】
材料
(i)分析システム
BioPlex 200(登録商標)アナライザー(Bio−Rad、Marnes−la−Coquette、France)を、製造業者の使用説明書に従って用いる。この免疫分析機はフローサイトメーターおよびLuminex 100(商標)検出器(Luminex Corp.、Austin、Texas、United States)を有し、超常磁性粒子の不均一なセットを用いる。直径8μmのサイズを有する粒子の各均一な群、ポリスチレン化合物およびメタクリル酸(COOH官能基)は、異なる百分率の蛍光色素(CL1およびCL2)で製造されており、粒子の各群に割り当てられてLuminex 100(商標)検出器(Luminex Corp.、Austin、Texas、United States)のレーザーによって検出可能である、特異な識別コードを生成する。免疫学的反応の後、1セットのビーズは液体シースの中心のフローセルを1個ずつ通り、同時に励起され、2つの別々のレーザーで読み取られる。測定は、各ビーズの通過と同時に実行される。
【0345】
638nmの赤色光線のレーザーは各粒子の表面を覆う識別蛍光色素(CL1およびCL2)を励起し、複合シグナルは粒子によって検出される分析物を識別するために解釈される。したがって、このレーザーは、粒子のカテゴリーを識別することによって、進行中の試験を識別する役目をする。
【0346】
532nm緑色光線のレーザーはS−PE(フィコエリトリンと結合しているストレプトアビジン)レポーターを励起し、放出される蛍光は粒子に固定されるレポーターの量に比例する。したがって、このレーザーは、前記粒子に固定化される分析物の反応性を測定する役目をする。
【0347】
このシステムのソフトウェアは、検出リガンドの存在に関係するシグナルを相対蛍光強度(RFI)値に変換する。結果を陽性または陰性と定性的に評価するために、比を計算することができる。
【0348】
(ii)固相(ビーズ)
6つの別々の群のLuminex(商標)超常磁性粒子(Luminex Corp.、Austin、Texas、United States)を含むビーズのセットを用いる。ビーズのこのセットは、試料の沈着を対照するための一群のビーズ(SDCビーズ)、分析物の検出リガンドの沈着を対照するための一群のビーズ(PVCビーズ)および分析物を検出するための4群のビーズ(分析する分析物:A1、A2、A3およびA4)を含む。
【0349】
各群の粒子は、特定の試験の特異的捕捉リガンドでコーティングされる。各捕捉リガンドは、ヘテロ二官能基試薬を用いて結合される。
【0350】
SDCビーズは、粒子1mgにつき1μgで固定化されたトランスフェリンの可溶性抗受容体マウスモノクローナル抗体(Fitzgerald、United States)で覆われる。
【0351】
PVCビーズは、粒子1mgにつき5μgで固定化された抗ジゴキシゲニンヒツジポリクローナル抗体(Abcam、United States)で覆われる。
【0352】
分析物A1、A2、A3およびA4の検出ビーズは、検出する分析物の1つまたはいくつかの特異的捕捉リガンドで覆われる。
【0353】
(iii)検出リガンド
対照化合物(SDC対照)の検出リガンド、pAb−抗Tf−biotは、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いてビオチン(Thermo Scientific、France)に結合されている抗トランスフェリンヒツジポリクローナル抗体(Bio−Rad、Barnes la Coquette、France)である。
【0354】
(PVC対照の)添加剤の検出リガンド、pAb−抗DIG−biotは、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いてビオチン(Pierce、United States)に結合されている抗ジゴキシゲニンヒツジポリクローナル抗体(Abcam、France)である。
【0355】
(iv)添加剤
BSA−DIG添加剤は、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いて担体分子、この実施例ではウシ血清アルブミン(Millipore、France)に接がれたジゴキシゲニン(Sigma、France)である。
【0356】
(v)レポーター
S−PEレポーターは、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いてフィコエリトリン(Cyanotech、Hawaii、United States)に結合されているストレプトアビジン(Roche、Germany)である。
【0357】
(vi)希釈剤
vi.1.超常磁性粒子の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 20mM、10%のウシ血清アルブミン、500μg/mLのマウスIgG(Meridian、United States)、0.10%のオクチル−n−グルコシド、0.095%のNaN3を含有するトリス緩衝液50mM、pH7.5。
vi.2.コンジュゲート1の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 20mM、Chaps 0.1%、グリセロール10%、0.095%のNaN3を含有するトリス緩衝液50mM、pH7.5。
vi.3.コンジュゲート2の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 5.6mM、1%のウシ血清アルブミン、2%のTriton、10%のヒツジ血清、500μg/mLのマウスIgG(Meridian、United States)、0.5%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)、15%の牛乳(100%スキム)、グリセロール10%、0.095%のNaN3を含有するクエン酸緩衝液50mM、pH6.7。
vi.4.S−PEレポーターの希釈剤
NaCl 150mM、0.1%のTween 20(商標)(Sigma社の商標)、0.5%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)、PEG 6000 2.75%、ウシ血清アルブミン1%、正常なヒツジ血清1%、0.095%のNaN3を含有するリン酸緩衝液、pH7.4。
vi.5.洗浄溶液
NaCl 218mM、0.1%のTween 20(商標)(Sigma社の商標)、0.002%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)を含有するトリス10mM緩衝液、pH7.4。
【0358】
(vii)反応シャーレ
免疫反応は、1ウェルにつき355μLの最大容量を有するポリプロピレンから作製された96ウェルマイクロプレートのウェルで起こる。
【0359】
(viii)試料
用いた陰性試料(血清または血漿)は、Lilleのフランス血液機関から来る。
【0360】
方法
多重フォーマット試験プロトコールは4つの異なる分析物を分析することを含み、分析物A1およびA2のアッセイは1つの免疫時間で実行され、分析物A3およびA4のアッセイは2つの免疫時間で実行される。
【0361】
試験のフォーマットは図2および4に示し、そこにおいて、S−PODの代わりにS−PEが用いられる。
【0362】
ステップ1:
1.マイクロプレートの各ウェルに、
+100μLの試料
+以下を含有するコンジュゲート1の25μlの希釈剤:
±BSA−DIG
±分析物A1およびA2の検出リガンド
+25μLの免疫反応性超常磁性粒子(粒子の混合物、ビーズのタイプにつき1.2μg:SDC、PVC±分析する分析物のビーズ)
が連続して分配される。
2.撹拌しながら混合物を37℃で40分間インキュベートする。
3.以下の洗浄ステップを実行する:磁化による固相と液相の分離および少なくとも300μlの洗浄液による3回の連続洗浄。最後の洗浄で、粒子は懸濁状態に戻される。
【0363】
ステップ2:
4.各反応ウェルに、
±pAb−抗Tf−biot対照化合物の検出リガンド
±pAb−抗DIG−biot添加剤の検出リガンド
±分析物A3およびA4の検出リガンド
を含有するコンジュゲート2の90μlの希釈剤が分配される。
5.撹拌しながら混合物を37℃で15分間インキュベートする。
6.洗浄ステップ(同上のポイント3)を実行する。
【0364】
ステップ3:
7.各反応ウェルに90μLのS−PEレポーターが分配される。
8.撹拌しながら混合物を37℃で15分間インキュベートする。
9.洗浄ステップ(同上のポイント3)を実行する。
10.120μLの洗浄液を添加している間に各反応ウェルで粒子を懸濁状態に戻し、次にマイクロプレートを撹拌する。
11.各ウェルの粒子の懸濁液を、フローサイトメーターによって吸引する。
12.各ウェルの粒子の懸濁液を、2つのレーザー光線を用いて読み取る。
13.読み取りの結果をフローサイトメーターによって直接的に処理し、相対蛍光強度(RFI)単位で記録する。
14.結果を解釈するために、各試料について閾値(「カットオフ」)に対する比を計算する。
【0365】
比の計算
試料のSDC比を以下の通りに計算する:
【0366】
【数1】
【0367】
同様に、試料のPVC比を以下の通りに計算する:
【0368】
【数2】
【0369】
1を上回る比(SDCまたはPVC)を有する試料は、「有効」と宣言され;比が1を下回るものは「無効」と宣言される。
【0370】
SDCおよびPVC閾値は、下の結果に記載される統計的研究によって確立された。
【0371】
結果
(i)単純フォーマットのSDCシステム
このシステムでは、分析物A1からA4の検出ビーズおよびそれらの検出リガンドは用いられない。
【0372】
94個の試料の研究が、SDCシステムの閾値の決定を可能にする(図7を参照)。SDCシステムの閾値は、母集団のシグナルの平均値から試料母集団のシグナルの標準偏差の3倍を引き算することによって計算される。
【0373】
【表2】
【0374】
SDCシステムの応答は、公称方法の場合に測定される(試料の沈着量=100μL、コンジュゲート2の量=90μL、S−PEの量=90μL)(表3のケース番号1)。表3のケース2、3、4は、ランクを下げた方法である:ケース2=試料の沈着なし、ケース3=コンジュゲート2の沈着なし、ケース4=S−PEの沈着なし。
【0375】
この場合には、「コンジュゲート2」を含む混合物は、pAb−抗Tf−biot対照化合物の検出リガンドを含有するコンジュゲート2の希釈剤の90μLを含む。
【0376】
【表3】
【0377】
ケース2、3、4は1未満のSDC比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。
【0378】
(ii)多重フォーマットでの性能に及ぼすSDCシステムの影響
多重フォーマット(MPX)のSDCシステムでは、分析物A1からA4の検出ビーズおよび対応する検出リガンドが用いられる。
【0379】
SDCのないMPXフォーマット対SDCのあるMPXの間で得られたRFIシグナルを比較すると(表4を参照)、SDCフォーマットの添加は4つの分析物を含むマルチプレックスの性能に影響しない(すなわち、SDCのないMPXフォーマット対SDCのあるMPXの間のRFIシグナルの%偏差は±20%の区間に含まれ、それは統計学的に許容されると考えられる)。
【0380】
【表4】
【0381】
(iii)単純フォーマットのPVC
前と同様に、このフォーマットでは、分析物A1からA4の検出ビーズおよび対応する検出リガンドは用いられない。
【0382】
38個の試料の研究が、PVCシステムの閾値の決定を可能にする(図8を参照)。
【0383】
PVCシステムの閾値は、母集団のシグナルの平均値から試料母集団のシグナルの標準偏差の3倍を引き算することによって計算される(表5を参照)。
【0384】
【表5】
【0385】
PVCシステムの応答は、公称方法の場合に測定される(試料の沈着量=100μL、コンジュゲート1の量=90μL、S−PEの量=90μL)(表6のケース番号1)。表6のケース2、3は、ランクを下げた方法である:ケース2=コンジュゲート1の沈着なし、ケース3=S−PEの沈着なし。
【0386】
【表6】
【0387】
ケース2および3は1未満のPVC比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。
【0388】
(iv)PVCシステムの性能に及ぼす単純対多重モードの影響
多重フォーマットのPVCシステムでは、分析物A1からA4の検出ビーズおよび対応する検出リガンドが用いられる。
【0389】
PVCシステムの性能は、単純モードおよび多重モードで類似している(表7を参照)。
【0390】
【表7】
【0391】
さらに、SDCまたはPVCのないMPXフォーマット対SDCおよびPVCのあるMPXフォーマットの間で得られたRFIシグナルを比較すると、SDCおよびPVC試験の追加は分析する4つの分析物を含む多重方式の性能に影響しないようである(すなわち、SDCまたはPVCのないMPXフォーマット対SDCおよびPVCのあるMPXフォーマットの間のRFIシグナルの%偏差は±20%の区間に含まれ、それは統計学的に許容されると考えられる)。
【0392】
[実施例2]
スポッティング方法
材料および方法
この実施例に記載される3つの対照は、
− SDC(「試料沈着対照」または「試料の沈着の対照」):試料、さらにステップ2(コンジュゲート2の沈着)、ステップ3(S−PODレポーターの沈着)およびステップ4(ルミノール基質の沈着)の沈着、
− PVC(「プロセス検証対照」または「分析物の検出リガンドの沈着の対照」):ステップ1(添加剤の沈着およびコンジュゲート1の沈着)、ステップ3(S−PODレポーターの沈着)およびステップ4(ルミノール基質の沈着)の沈着、ならびに
− RVC(「暴露検証対照」または「レポーターの沈着の対照」):ステップ3(S−PODレポーターの沈着)およびステップ4(ルミノール基質の沈着)の両方を対照することによる暴露ステップ
について検証することを可能にする(表8を参照)。
【0393】
【表8】
【0394】
材料
(i)分析システム
このシステムのために用いられる技術は、バイオチップ多重技術の革新的なナノスポッティング(下の定義を参照)であり、発色は、ホースラディッシュペルオキシダーゼの酵素によってマーキングされ、ルミノールタイプの基質によって発色されるレポーターのおかげで、化学発光による。
【0395】
用語「バイオチップ」は、より速いリズムを得るために同時に多くの試験を実施することを可能にする、固体支持体に配置される小型化された試験部位(または「マイクロアレイ」)の集合である。
【0396】
マイクロプレート(Greiner、Germany)の各ウェルの中で、分析する分析物(A1、A2、A3、A4、A5、SDC、RVCおよびPVC)に特異的であるタンパク質または抗体を含有するタンパク質溶液の50nLの液滴を沈着させるために、スポッターロボットが用いられる(図6を参照)。これらのマイクロプレートの各ウェルの底は、当業者にそれら自身公知であるタンパク質およびペプチド吸着能力を有する。このように得られるスポットは、当業者にそれ自体公知である飽和溶液で飽和する。
【0397】
これらのバイオチップの中で、1つまたは2つの免疫学的時間で伝統的な免疫反応を実施することが次に可能である。
【0398】
免疫反応の後、発色基質の添加は光放射を引き起こす。実際、酵素触媒作用によるルミノールの酸化は、スポットによって固定されるストレプトアビジン−ペルオキシダーゼレポーターの量に比例する光放射をもたらす。シグナルの獲得は、科学カメラで実行される。生じた画像は、各スポットに対応するウェルの底の各地理的ゾーンによって生成される発光の強度を判定するために、次に分析される(アドレス情報)。
【0399】
システムのソフトウェアは、スポットによって測定されるシグナルを相対発光単位(RLU)の値に変換する。下に概説されるように、結果を陽性または陰性と定性的に評価するために、比を計算することができる。
【0400】
(ii)固相(スポット)
異なる対照スポットは
− 50μg/mLで固定化されたトランスフェリンの可溶性抗受容体マウスモノクローナル抗体(Fitzgerald、United States)を含むSDCスポット、
− 25μg/mLで固定化された可溶性抗ジゴキシゲニンマウスモノクローナル抗体(Covalab、France)を含むPVCスポット、および
− 当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いてビオチン(Thermo Scientific、France)に結合され、1μg/mLで固定化された、抗KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)マウスモノクローナル抗体(Genway、United States)を含むRVCスポット
である。
【0401】
(iii)検出リガンド
対照化合物(SDC対照に対して)の検出リガンド、pAb−抗Tf−biotは、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いてビオチン(Thermo Scientific、France)に結合されている抗トランスフェリンヒツジポリクローナル抗体(Bio−Rad、Barnes la Coquette、France)である。
【0402】
添加剤(PVC対照に対して)の検出リガンド、mAb−抗DIG−biotは、ビオチンに結合した抗ジゴキシゲニンマウスモノクローナル抗体である(Covalab、France)。
【0403】
(iv)添加剤
BSA−DIG添加剤は、担体分子、この実施例ではウシ血清アルブミン(Millipore、France)に接がれたジゴキシゲニン(Sigma、France)である。結合は、当業者にそれ自体公知であるヘテロ二官能基試薬を用いて実行される。
【0404】
(v)レポーター
S−PODレポーターは、P. Nakane and A. Kawaoi (J Histochem Cytochem (1974) Vol. 22, No. 12. pp. 1084-1091)に記載される方法によってペルオキシダーゼ(Roche Germany)に結合された、当業者にそれ自体公知であるストレプトアビジン(Roche、Germany)である。
【0405】
(vi)希釈剤
a)添加剤の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 20mM、500μg/mLのマウスIgG(Meridian、United States)、15%の牛乳(100%スキム)、10%のヒツジ血清、0.095%のNaN3を含有するトリス緩衝液50mM、pH7.5。
b)コンジュゲート1の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 20mM、Chaps 0.1%、グリセロール10%、0.095%のNaN3を含有するトリス緩衝液50mM、pH7.5。
c)コンジュゲート2の希釈剤
NaCl 150mM、EDTA 5.6mM、2%のTriton、10%のヒツジ血清、500μg/mLのマウスIgG、0.5%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)、15%の牛乳(100%スキム)、グリセロール10%、0.095%のNaN3を含有するクエン酸緩衝液50mM、pH6.7。
d)S−PODレポーターの希釈剤
NaCl 2053mM、0.5%のTween 20(商標)(Sigma社の商標)、0.5%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)、7%の牛乳(100%スキム)、グリセロール20%を含有するクエン酸緩衝液50mM、pH6.7。
e)洗浄液
NaCl 218mM、0.1%のTween 20(商標)(Sigma社の商標)、0.002%のProclin 300(商標)(Supelco社の商標)を含有するトリス10mM緩衝液、pH7.4。
f)発色基質
ELISTAR ETA C Ultra ELISA用発色基質(Cyanagen、Italy)は、2つの溶液:XLSE024Lルミノールエンハンサー溶液(A)およびXLSE024Pペルオキシド溶液(B)で構成される。
【0406】
(vii)反応シャーレ
免疫反応は、1ウェルにつき392μLの最大容量を有するポリスチレンから作製された96ウェルマイクロプレートで起こる。
【0407】
(viii)試料
用いた陰性試料(血清または血漿)は、Lilleのフランス血液機関から来る。
【0408】
方法
試験プロトコールは、以下のステップを含む。
ステップ1:
1.マイクロプレートの各ウェル(スポットを含む)に、
+BSA−DIG添加剤を含有する添加剤の20μlの希釈剤、
+以下を含有するコンジュゲート1の20μlの希釈剤:
+mAb−抗DIG−biot添加剤の検出リガンド、および
+分析する分析物1、2および3の検出リガンド
+40μlの試料
が連続して分配される。
2.撹拌しながら混合物を37℃で40分間インキュベートする。
3.少なくとも400μlの洗浄液による3回の連続洗浄を実行する。
【0409】
ステップ2:
4.各反応ウェルに、
+pAb−抗Tf−biot対照化合物の検出リガンド、
+分析する分析物4および5の検出リガンド
を含有するコンジュゲート2の50μlの希釈剤が分配される。
5.撹拌しながら混合物を37℃で15分間インキュベートする。
6.洗浄ステップ(同上のポイント3)を実行する。
【0410】
ステップ3:
7.各反応ウェルに50μLのS−PODレポーターが分配される。
8.撹拌しながら混合物を37℃で15分間インキュベートする。
【0411】
ステップ4:
9.各反応ウェルに25μLの発色溶液「B」を分配する。
10.各反応ウェルに25μLの発色溶液「A」を分配する。
10.撹拌しながら混合物を37℃で1分間インキュベートする。
11.発光シグナルの獲得を、180秒間実行する。
12.読み取りの結果を画像分析システムによって直接的に処理し、相対光単位(RLU)で記録する。
13.結果を解釈するために、各試料について閾値(または「カットオフ」)に対する比を計算する。
【0412】
比の計算
2つの分析モードを下に例示する:
分析モード1:単一の閾値
試料のSDC比を以下の通りに計算する:
【0413】
【数3】
【0414】
同様に、試料のPVC比を計算する:
【0415】
【数4】
【0416】
同様に、試料のRVC比を計算する:
【0417】
【数5】
【0418】
1を上回る比(SDCまたはPVCまたはRVC)を有する試料は「有効」と宣言され;比が1を下回るものは「無効」と宣言される。SDC、PVCおよびRVC閾値は、下の結果のチャプターに記載される統計的研究によって確立された。
【0419】
分析モード2:2つの閾値
試料の2つのSDC比を以下の通りに計算する:
【0420】
【数6】
【0421】
同様に、試料のPVC比を計算する:
【0422】
【数7】
【0423】
同様に、試料のRVC比を計算する:
【0424】
【数8】
【0425】
1を上回る比(閾値−)(SDCまたはPVCまたはRVC)を有する試料は「有効」と宣言され;比が1を下回るものは「無効」と宣言される。
【0426】
1を下回る比(閾値+)(SDCまたはPVCまたはRVC)を有する試料は「有効」と宣言され;比が1を上回るものは「無効」と宣言される。
【0427】
SDC、PVCおよびRVC閾値は、下の結果のチャプターに記載される統計的研究によって確立された。
【0428】
結果
この実施例に記載される多重方式は、分析する5つの分析物、3つの分析物はその検出リガンドがステップ1で添加され(A1、A2およびA3)、2つの分析物はその検出リガンドがステップ2で添加され(A4およびA5)、ならびに3つのSDC、PVCおよびRVC対照を含む。
【0429】
表9は、SDC、PVCおよびRVC対照の独立したまたは累積の無効の後に遭遇する可能性のあるシナリオをグループ分けする。
【0430】
SDC、PVCおよびRVC対照の応答は、22個の試料についての公称方法の場合に測定される(添加剤の量=20μL、コンジュゲート1の量=20μL、沈着試料の量=40μL、コンジュゲート2の量=50μL、S−PODの量=50μL、ルミノールの量=25μLの溶液B+25μLの溶液A)。
【0431】
これらの22個の試料の研究は、SPC、PVC、RVCの応答を、平均スポット、標準偏差、最小値および最大値に関して特徴付けることを可能にする(表10aおよび10bを参照)。SDC、PVCおよびRVC対照の閾値も、計算される。
【0432】
【表9】
【0433】
分析モード1:単一の閾値
【0434】
【表10】
【0435】
分析モード2:2つの閾値
【0436】
【表11】
【0437】
SDC、PVC、RVC対照の応答および計算された閾値(表10aおよび10bを参照)を組み合わせることによって、各試料のSDC、PVCおよびRVC比が計算される(表11aおよび11bを参照)。
【0438】
分析モード1:単一の閾値
【0439】
【表12】
【0440】
分析モード2:2つの閾値
【0441】
【表13】
【0442】
SDC、PVC、RVC対照の(閾値+)および(閾値−)比からの解釈の状態は、全22個の試料で「有効」である。SDC、PVC、RVC対照からの解釈の状態は、全22個の試料で「有効」である。
【0443】
ランクを下げたモードで実行した方法のケーススタディを、表12および13aおよび13bに例示する。6つのケースを示す:
− ケース1=試料の沈着がない。
− ケース2=添加剤の沈着がない。
− ケース3=コンジュゲート1の沈着がない。
− ケース4=コンジュゲート2の沈着がない。
− ケース5=S−PODの沈着がない。
− ケース6=ルミノールの沈着がない。
【0444】
分析モード1:単一の閾値
ケース1および4は1未満のSDC比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。
ケース2および3は1未満のPVC比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。
ケース5および6は1未満のSDC、PVCおよびRVC比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。RVCシグナルは、発色ステップ(S−POD沈着およびルミノール沈着)を特異的に無効にすることを可能にする。しかし、1未満のRVC比による手法の無効化は、SDCおよびPVC対照の系統的なシグナルの不在を暗示する(表9の灰色ゾーンを参照)。この場合、試料およびコンジュゲート2の沈着(SDCによって対照される沈着)かまたは添加剤およびコンジュゲート1の沈着(PVCによって対照される沈着)が正しく起こったか判定することができない。
【0445】
分析モード2:2つの閾値
ケース1および4は1未満のSVC(閾値−)比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。ケース1に加えて、PVC(閾値+)比は1を超え、それはPVC対照に及ぼす試料の不在の間接的な影響を反映する。
ケース2および3は1未満のPVC(閾値−)比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。
ケース5および6は1未満のSDC、PVCおよびRVC(閾値−)比をもたらし、それはこれらのランクを下げた方法からの測定を無効にすることを可能にする。RVCシグナルは、発色ステップ(S−POD沈着およびルミノール沈着)を特異的に無効にすることを可能にする。しかし、1未満のRVC(閾値−)比による手法の無効化は、SDCおよびPVC対照の系統的なシグナルの不在を暗示する(表9の灰色ゾーンを参照)。この場合、試料およびコンジュゲート2の沈着(SDCによって対照される沈着)かまたは添加剤およびコンジュゲート1の沈着(PVCによって対照される沈着)が正しく起こったか判定することができない。
【0446】
【表14】
【0447】
分析モード1:単一の閾値
【0448】
【表15】
【0449】
分析モード2:2つの閾値
【0450】
【表16】
【0451】
さらに、SDCまたはPVCのないMPXフォーマット対SDCおよびPVCのあるMPXフォーマットの間で得られたRLUシグナルを比較すると、SDCおよびPVC試験の追加は分析する4つの分析物を含む多重方式の性能に影響しないようである(すなわち、SDCまたはPVCのないMPXフォーマット対SDCおよびPVCのあるMPXフォーマットの間のRLUシグナルの%偏差は±20%の区間に含まれ、それは統計学的に許容可能であると考えられる)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】