特表2017-510675(P2017-510675A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-510675ペレット化されたアセチレン ブラック(Acetylene Black)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-510675(P2017-510675A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】ペレット化されたアセチレン ブラック(Acetylene Black)
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/54 20060101AFI20170324BHJP
   C09C 1/60 20060101ALI20170324BHJP
【FI】
   C09C1/54
   C09C1/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-554361(P2016-554361)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2015053701
(87)【国際公開番号】WO2015128278
(87)【国際公開日】20150903
(31)【優先権主張番号】14157126.5
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516097882
【氏名又は名称】オリオン エンジニアード カーボンズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ディール フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ニーデルマイアー ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】タイケ ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】クリーシュ ヘルムート
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037BB23
4J037CC06
4J037CC11
4J037CC21
4J037EE28
4J037FF28
(57)【要約】
本発明は、ASTM D 1937−10に従って測定された質量強度が、せいぜい、200Nで、そして、ASTM D 1511−10に従って測定された平均ペレット サイズが、少なくとも、1.0mmを有する、ペレット化されたアセチレン ブラック、樹脂またはポリマーまたはゴム(rubber matrix)を含む化合物を製造するための、任意のペレット化されたアセチレン ブラック、および、当該マトリックスに分散されたアセチレン ブラックの使用、およびこのような化合物を生成する方法、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D 1937−10に従って測定された質量強度が、せいぜい、200Nで、そして、ASTM D 1511−10に従って測定された平均ペレット サイズが、少なくとも、1.0mmを有する、ペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項2】
ASTM D 1937−10に従って測定された質量強度が、20乃至200Nで、好適には、40乃至200Nで、より好適には、60乃至200Nで.最も好適には、70乃至190Nを有する、請求項1のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項3】
ASTM D 1511−10に従って測定された平均ペレット サイズが、1.0乃至2.5mm、好適には、1.2乃至2.5mm、より好適には、1.4乃至2.5mm、最も好適には、1.4乃至2.0mmを有する、先行する任意のいずれかの請求項の、ペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項4】
65kPaより小さい、平均圧縮強度を有する、先行する任意のいずれかの請求項の、ペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項5】
15乃至60kPa、好適には20乃至55kPa、より好適には、25乃至50kPaの平均圧縮強度を有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項6】
ASTM D 1511−10に従って測定された、ペレットの少なくとも40重量%が、少なくとも1.4mmのサイズを有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項7】
ASTM D 1511−10に従って測定された、ペレットの少なくとも35重量%が、1.4mm乃至2.0mmの範囲内のサイズを有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項8】
ASTM D 1511−10に従って測定された、ペレットの少なくとも40重量%が、1.4mm乃至2.0mmの範囲内のサイズを有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項9】
ASTM D 1510−11に従って測定された、ヨウ素の吸着が、50乃至150mg/g、好適には、60乃至130mg/g、より好適には、70乃至120mg/gを有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項10】
ASTM D 2414−09Aに従って測定された、OAN吸収が、140乃至320ml/100g、好適には、160乃至300ml/100gを有する、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項11】
前記ペレットが、コア/シェル形態(core/shell morphology)を有しない、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項12】
前記ペレットが、有機結合剤を含まない、先行する任意のいずれかの請求項のペレット化されたアセチレン ブラック。
【請求項13】
樹脂またはポリマーまたはゴム マトリックス(rubber matrix)9と、そのマトリックスに分散したアセチレン ブラックを含む化合物、好適には、電線、ケーブル、ベルト、ホース、床、靴、ローラー、ヒーター、ブラダー(bladders)又は塗料から選択される適用物に使用される導電性材料を製造するための、請求項1乃至12のいずれか1項のペレット化されたアセチレン ブラックの任意の使用。
【請求項14】
電池またはコンデンサーのための導電剤、帯電防止剤または、導電紙のための導電剤として、請求項1乃至12のいずれか1項のペレット化されたアセチレン ブラックの任意の使用。
【請求項15】
樹脂またはポリマーまたはゴムに、請求項1乃至12のいずれか1項のペレット化されたアセチレン ブラックを分散したものを含む、樹脂またはポリマーまたはゴムと、請求項1乃至12のいずれか1項のペレット化されたアセチレン ブラックを含む化合物を製造するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット化されたアセチレン ブラックとその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アセチレン ブラックは、とりわけ高分子マトリックスにおける、電気導電剤として使用される。アセチレン ブラックは、微粒子の形で、生産時に取得され、そして、それゆえ、一般的に、取扱い及び梱包が容易にするためにペレット化される。
【0003】
従って、アセチレン ブラック ペレットの要件の1つは、それらが取扱いおよび輸送中に、望ましくない微粒子(fines)を齎すペレットの崩壊(break−up)および摩損(attrition)に耐えられるように、十分に、機械的に安定していることである。他方、最終製品に望ましくない欠陥領域を齎す、アセチレン ブラックの大きな塊の形成を伴わず、アセチレン ブラック ペレットが、高分子マトリックスに、簡単かつ均一分散できるということは、エンドユーザーのために重要である。したがって、最終製品の高分子マトリックスにおいて、アセチレン ブラックの分散の質に影響を与えるような程度に、アセチレン ブラック ペレットの機械強度を増加することはできない。アセチレン ブラックのこれらの2つの重要な条件は、同時に達成することは困難であり、したがって、過去に、この業界において、同時に、取扱いおよび輸送中に、ペレットの実質的崩壊(break−up)および摩損(attrition)に耐えられ、依然として、高分子 マトリックスに、簡単に分散でき、最小の欠陥領域を有するマトリックスにおいて、均一のカーボン ブラックの分布を齎す、アセチレン ブラック ペレットを製造する、多数の試みがなされた。
【0004】
DE 35 12 479において、上記で議論した、ペレット化されたアセチレン ブラックの特性のバランスの問題が議論され、そして、高分子マトリックスに、アセチレン ブラック ペレットの必要な分散性を確保するために、ペレット当たり5g未満の個々のペレット硬度を有する、アセチレン ブラック ペレットを提供することが提案されている。アセチレン ブラック ペレットのサイズは、0.5〜5mmの広い範囲で変えることができると、この引例において示されるものの、アセチレン ブラック材料の2つのサイズの分画を比較するとき、2〜3.2mmのサイズの分画の分散性は、0.1〜2mmサイズの分画に比較して、かなり悪化していることは、実験データから明白である。このことは、アセチレン ブラックを含む、高分子材料の衝撃強度の減少と、定義された面積あたりの大規模な塊の数のかなりの増加によって、明らかに示される。したがって、当業者にとって、高分子マトリックスにおいて、アセチレン ブラックの良好な分散が必要な場合には、大きなペレット サイズは、避けるべきであるということは、DE 35 12 479から明らかである。
【0005】
DE 35 12 479と同じ出願人によって、出願された、EP A 785 239によると、アセチレン ブラック ペレットの機械的安定性および分散性の問題が議論されている。その引例の教示によると、DE 35 12 479と矛盾して、取扱いから生じる微粉末の生成を避けるため、および、高分子マトリックスにおける、アセチレン ブラックの分散性を改善するために、個々のペレットの強度が、ペレットあたり5g以上にあることが重要である。EP A 785 239の教示によると、これは、アセチレン ブラックのソフト コアは、コア/シェル構造を齎す、ハード アセチレン ブラック シェルで被覆される、2段階のペレット化プロセスによって達成できる。この引例の比較例4と、実施例3(比較例4においては、ハードシェルを齎す2番目のプロセス工程が省略されていることだけが異なる)を比較すると、特に、明らかであるように、実施例3と比較して、微粉末の量が極めて増加しただけでなく(予想していたこと)、体積抵抗の増加によってわかるように、コア/シェル素材と比較して、より柔らかいコア材料の分散性も低下している。
【0006】
コア/シェル ペレットの同様の概念は、JP 3681253とJP 3681266に提案された。
【0007】
これらの引例は、コア/シェル ペレットの形成は、機械的強度のバランスと、アセチレン ブラック ペレットの分散性のバランスを改善する可能性があることを示すけれども、この技術は、ワンステッププロセスと比較して、生産プロセスが、増加する、エネルギー消費量、投資および生産のコストという、かなり複雑であるという不利を有する。したがって、コア/シェル構造の必要性、したがって、依然として、機械的強度及び分散性の最適なバランスを有する2段階プロセスの必要性なしに、アセチレン ブラック ペレットを得ることは、依然として望ましい。非コア/シェル ペレットを生成する別のアプローチは、EP A 2 075 291に提案された。この引例の教示によると、せいぜい1.1の平均縦横比、0.1mmから1mmの平均最大ペレット サイズ、および、0.2から0.6mmの平均ペレット サイズを有する、顆粒状のアセチレン ブラックを選択することが基本である。したがって、EP A 2 075 291は、個々のペレット強度は、ペレット サイズの関数であり、ペレットのサイズによって増加し、ペレットのペレット サイズは低くするべき、すなわち、必要な分散性を達成するために、0.2〜0.6mmの範囲内にすべきであるという結果となる、という、DE 35 12 479からの結論を確認する。特に、平均ペレット サイズ0.75mmを有するが、依然として、必要な平均縦横比を有する、EP 2 075 291の比較例7から、個々のペレットの硬度は、ペレット当たり5.5gの値まで、従って、DE 35 12 479で教示されたリミットを超えて、増加する。これは、粉砕の削減だけでなく、体積抵抗および、かなり減らされた分散性を示すハード スポットの数の増加を齎す。
【0008】
さらに、ペレット化されたアセチレン ブラックの製品は、例えば、日本の電気化学工業株式会社から、デンカ ブラック グレード 顆粒という製品として上市されている。この商業製品の性質は、本出願の実験部分に示される。特に、この製品は、0.7mmの平均のペレット サイズを有する。
【0009】
先行技術の議論から明らかなように、業界では、まだ、コスト効果の高いプロセスで製造することができる、高分子マトリックス中の摩耗安定性と分散性の最適なバランスを示す、ペレット化されたアセチレン ブラック材料が必要である。さらに、これらのアセチレン ブラック ペレットのエンドユーザーにとっては、必要な分散性が提供されるだけでなく、アセチレン ブラック ペレットを分散させるのに必要なエネルギーを減らすことができるのならば、有益であろう。
【0010】
したがって、操作性と分散性を損なうことがなく、高分子マトリックス中のアセチレン ブラックを分散させるために必要なエネルギーの削減につながる、ペレット化されたアセチレン ブラックを提供することは、本発明の主題である。本発明のさらに好ましい側面によれば、分散性がさらに改善される場合、有利である。
【0011】
発明の概要
上記の問題は、意外にも、ASTM D 1937−10によって測定した、質量強度が、せいぜい、200Nで、そして、ASTM D 1511−10によって測定された、平均ペレット サイズが、少なくとも 1.0mmを有する、ペレット化されたアセチレン ブラックによって解決された。
【0012】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、いかなる有機結合剤を使用する必要なくして、プロセス コスト効率の高い、単一のペレット化プロセスにおいて取得できる。したがって、本発明のペレット化されたアセチレン ブラックのペレットは、コア/シェル形態を持っていないことが好ましい。さらに、好ましくは、ペレットは有機結合剤を含まない。
【0013】
本発明の好適な実施態様に従えば、ASTM D 1511−10で測定された、ペレット化されたアセチレン ブラックの平均ペレット サイズは、少なくとも、1.4mmである。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックを製造するための出発物質として、アセチレン ブラック パウダーは、少なくとも、1.500℃、好ましくは、少なくとも、2000℃のレベルで、アセチレンガスの熱分解の温度を維持することにより得られる、アセチレン ブラックを製造するための熱分解炉は、先行技術において、たとえば、JP A 56 90860または米国特許2,475,282に開示されているように、周知である。また、アセチレンガスの熱分解中に、不活性ガスまたは他の不活性ガスとして、水素ガスを導入することにより、熱分解の温度を制御することが可能である。本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックの出発材料として使用できる、アセチレン ブラック パウダーは、商業的ソースからも入手できる。適切なアセチレン ブラック パウダー原料は、次の性質を持つことができる。
【0015】
− 50−150mg/gの範囲の、ASTM D 1510−11法により測定されたヨウ素吸収数、
− 150−350ml/100gの範囲の、パラフィン油と工程Bを使用して、ASTM D 2414−09Aにより測定したOAN
− 50−150g/lの範囲の、ASTM 1513−05による方法により測定した、嵩密度(Bulk density)。
【0016】
粉砕された、アセチレン ブラック出発材料は、ワンステップのウェットペレット化システムを使用して、たとえば、EP−A 0 924 268または DE−A 103 50 188に記載されているような有機結合剤を使用せず、ペレット化することができる。それによって、リング・レイヤー・ミキサー造粒機のような攪拌造粒システムを使用することができる。このワンステップのペレット化プロセスにおいて、造粒機の回転速度だけでなく、微粉末アセチレン ブラック出発物質と水の質量流量が、必要な質量強度とペレット サイズを得るために、調節できる。特定のパラメーターの選択は、また、粉末原料、特に、その嵩密度に依存する。
【0017】
その後、得られたペレットは、好適には、回転ドラム乾燥機を使用することによって乾燥される。ペレット化されたアセチレン ブラックの性質は、微粉原料の種類だけでなく、ペレット化のプロセスのいくつかのパラメーターに依存するので、いくつかの試行錯誤の実験が、使用される原料に依然して、ペレットのパラメーターを適切に調整する必要がある。
【0018】
経験則によれば(As a rule of thumb):
− 水と粉末が一定重量比の場合、造粒機の回転速度の増加は、質量強度がより高い、より小さいペレットになる。
− 造粒機の回転速度が一定の場合、水−粉体の重量比の増加は、ペレット サイズの分布を、より高い質量強度を持つ、より大きなペレットへとシフトする。
【0019】
本出願の実験部分に示されるように、具体的な実施例は、当業者に、本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックを取得するために、プロセスのパラメーターを調整する方法について、幾らかのガイダンスを提供する。
【0020】
さらに、適切な平均ペレット サイズを調整するために、得られた乾燥アセチレン ブラック ペレットは、篩分けのような標準的な方法を使用して、サイズ分別をすることができる。そしてその後、本発明のペレット サイズ基準を満たすために、適切なサイズの分画を選択できる。
【0021】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックの、ASTM D1937−10により測定された質量強度は、20から200N、好適には、40から200N、より好適には、60から200N、そして、もっとも好適には、70から190Nの範囲であることができる。
【0022】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックの、ASTM D1511−10により、測定された平均ペレット サイズは、1.0から2.5mm、好適には、1.2から2.5mm、より好ましくは、1.4から2.5mm、そして、最も好ましくは、1.4から2.0mmの範囲にすることができる。
【0023】
もし、平均ペレットのサイズが、1.4mmを超える場合、分散エネルギーを削減することができるだけでなく、デンカの上記商業的に入手可能な、ペレット化された、アセチレン ブラックと比較して、分散の質がさらに改善できる。従って、本発明の好ましい実施の形態によると、もし、ASTM D1511−10による測定によると、少なくとも1.4mm以上のサイズを有する、本発明のペレット化されたアセチレン ブラックのペレットの割合が、増加するのであれば、また有益である。
【0024】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックのペレットの、少なくとも、40重量%が、ASTM D1511−10による測定によると、少なくとも1.4mmのサイズを有するならば好適である。特に、本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックのペレットの、少なくとも、35重量%が、1.4mmから2.0mmの範囲内のサイズを有する。もし、ペレットの少なくとも、40重量%が、1.4mmから2.0mmの範囲内のサイズを持っている場合、特に好ましい。
【0025】
上記先行技術、特に、DE 35 12 479およびEP 2 075 291から、ペレット サイズが増加すれば、個々のペレット強度も増加するというように、個々のペレット強度は、ペレット サイズに依存することは、明らかである。したがって、ペレット サイズと独立して、ペレットされたカーボン ブラックの全体のサンプルの機械的安定性を記述する適切なパラメーターは、平均圧縮強度である。平均圧縮強度の測定と計算は、本出願の実験の部分で詳細で説明される。
【0026】
本発明によると、平均圧縮強度が、65kPa未満、好適には、15から60kPa未満で、より好適には、20から55kPa、もっとも好適には、25から50kPaである場合、好ましい。
【0027】
前述のように、本発明のペレット化されたアセチレン ブラックの利点は、高分子マトリックス中に分散することによって、均一分散に必要な混合エネルギーを、かなり減らすことができ、そして、本発明による、いくつかの好ましい実施形態において、分散の質をさらに増やすことができる。
【0028】
したがって、本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、そこに分散したアセチレン ブラックを有する高分子マトリックスを含む混合物を生産するため有利に使用できる。化合物のマトリックスとして、特に、有機樹脂、ポリマーおよび、ゴムを使用できる。
【0029】
本発明の、適切な樹脂およびポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン− ビニール アセテート共重合体、エチレン−ビニル アルコール樹脂、ポリメチル ペンテンまたは環状オレフィン共重合体のようなオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニルまたは、エチレン塩化ビニル共重合体のような塩化ビニル型ポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、または、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のようなスチレン型ポリマー、ポリメチル メタクリレートなどのアクリルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアミド、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレン エーテル、ポリテトラフルオロエチレンまたはフッ素化ポリビニリジンのようなフッ素ポリマー、ポリフェニリン サルファイド、液晶ポリマー、熱可塑性ポリアミド、ケトン型樹脂、スルホン樹脂、フェニル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル エステル、ポリイミド、フラン樹脂、キニーネ樹脂およびポリマーアロイである。ポリスチレン ポリマー、ポリエチレン ポリマーおよび、エチレン酢酸ビニールおよびポリプロピレン ポリマーのような共重合体および共重合体は、特に、好ましい。
【0030】
適当なゴムは、天然ゴム、スチレン ブタジエンゴム、アクリロニトリル ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリル ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体(terpolymer)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ヒドリンゴム およびクロロスルホン化ポリエチレンゴムから選択される。
【0031】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、上記の樹脂、ポリマーまたはゴムのマトリックスの中に、通常のミキサーおよびブレンダーを使用して、混ぜ合わせ(compound)、分散されることができる。
そして、また、樹脂、ポリマーまたはゴムシステムの選択に依存して、もし、許与されるのであれば、均一分散を容易にするため、加熱してもよい。その際、当業者に知られている、ブレンダー、ミキサー、ニーダー(kneaders)または一軸式または二軸式の押し出し機(extruders)を用いることができる。
【0032】
好ましい混合比率の例は、樹脂、ポリマーまたはゴムの重量を100部とした場合、本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、重量で、5から150重量部、好適には、10から100重量部であることができる。
【0033】
したがって、また、本発明は、樹脂、ポリマーまたはゴム、および、樹脂、ポリマーまたはゴムに分散した本発明のペレット化されたアセチレン ブラックを含む、本発明のペレット化されたカーボン ブラックを含む、混合物の調製のプロセスに関する。
【0034】
本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、それにより、高分子やゴムにおいて、導電性を付与する機能をする。したがって、本発明のペレット化されたアセチレン カーボン ブラックは、一次電池、二次電池、燃料電池または、コンペンセイター(compensator)等の電池のための、電気導電性エージェントとして使用もできる。また、帯電防止剤、または、電気導電性紙用の電気導電剤としても使用できる。本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、電線およびケーブル用の 半導電(semi−conductive)シールドの生産のために、特に、適している。また、本発明の、ペレット化されたアセチレン ブラックは、タイヤの生産のためのブラダーのような、高分子およびゴム混合物の熱伝導性を付与することに使用できる。また、コーティングに適用することにも有利に使用することができる。
【0035】
本発明は、さらに、以下の実施例で、詳細に説明される。
【0036】
特に、上述だけでなく、クレームに定義した、特定のアセチレン ブラックの性質を測定する方法は、以下の実施例部分に与えられたように測定される。
【0037】
測定法:
【0038】
ヨウ素吸着量:ASTM D1510−11、方法Aに準じて測定した。
OAN数:D2414―09Aに準じ、パラフィンオイルにおける、方法Bに準じて測定した。
灰分:JIS K1469により測定した。
嵩密度:ASTM D1513―05により測定した。
ペレット化された微粉末:ASTM D1508−02により測定した。
質量強度:ASTM D1937−10により測定された。
ペレット サイズ分布:ASTM D1511−10により測定された。
【0039】
具体的には、メッシュオープニング(mesh openings)が、0.1から3.0mm、0.25mm、0.50mm、0.7mm、1.0mm、1.4mm、1.7mm、2.0mmおよび3.0mmである、9つの異なるふるいを使用する。各分画のサイズは、重量パーセントで報告される。
【0040】
平均ペレット サイズ(AVP):
平均ペレットのサイズは、各サイズの分画の割合と、相当するメッシュ平均(上の篩網のメッシュオープンから下の篩網のメッシュオープンを引いて、2で割る(upper sieve mesh opening minus lower sieve mesh opening/2))を乗じ、全ての寄与を加えることにより求めた(adding up all contributions)。
【0041】
AVP=0.0625mmxP0−0.125+0.1875mmxP0.125−0.25 +0.375mmxP0.25−0.50+0.60mmxP0.50−0.70+0.85mmxP0.70−1.0+1.2mmxP1.0−1.4+1.55mmxP1.4−1.7+1.85mmxP1.7−2.0+2.5 mmxP2.0−3.0
【0042】
圧縮強度(CS):
個々のカーボン ブラックのペレットの圧縮強度は、ASTM D3313に基づく方法によって、ドイツのカールスルーエのetewe、GmbHの、手動で操作可能なペレットの硬度計GFPを使用して、決定された。ペレットの破砕(breakdown)は、圧砕強度Fに等しい、記録された力変形図のシャープな最大値に反映される。圧縮強度は、サイズの分画0.25から0.50mm、0.50から0.70mm、0.70から1.0mm、1.0から1.4mm、1.4から1.7mm、1.7から2.0mmおよび2.0から3.0mmについて決定された。0.25mm以下のペレットの圧縮強度は、これらのサイズの分画が低い割合であり、それらの小さいサイズから生じる、それらの低いペレット硬度のために決定できなかった。
【0043】
各ペレットの圧縮強度(=圧砕荷重下に、ペレットが耐えることができる、最大ストレス。パスカル[Pa]で測定)は、次の関係を使用して、etewe ソフトウェアGFPWINによって計算された。
【0044】
【数1】
【0045】
それは、外圧力に対しての抵抗性を反映する。ペレットの破砕は、効果的な圧力が圧縮強度より大きい場合に発生する。
【0046】
合計で、20ペレットを、各サイズ分画毎に測定した。報告したのは、対応する平均値である。
【0047】
平均圧縮強度(AVCS):
平均圧縮強度は、各ペレット化された分画の割合を考慮し、サンプルの中間値(mean value)を反映する。
AVCS=CS0.25−0.50xP0.25−0.50+CS0.50−0.70xP0.50−0.70 +CS0.70−1.0xP0.70−1.0+CS1.0−1.4xP1.0−1.4+CS1.4−1.7x P1.4−1.7+CS1.7−2.0xP1.7−2.0+CS2.0−3.0xP2.0−3.0
【0048】
CSは、特定のサイズの分画の圧縮強度であり、Pは、ASTM D1511−10に従って得られる、重量%での、サイズ分画の割合である。
【0049】
実施例:
次記の、開始アセチレン粉末は、本発明による、ペレット化されたアセチレンブラックの製造のために使用された。出発原料の性質と市販のソースは、下記の表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
ペレット化されたアセチレン ブラックの製造:
ペレット化のために、加温された、リング レイヤー ミキサー粉砕機 RMG30(長さ:1180mm、直径:224mm)、Ruberg Mischtechnik GmbH&Co(ドイツ、パーダーボルン)」から入手可能、が使用される。ミキサー回転軸は、95mmの直径を持ち、2つのヘリックス状に配置されたピンを装備する。RMG30は、傾斜のない水平に配置する。出発原料は、造粒機の中に重量供給装置によって連続的に供給される。脱イオン水は、加圧スプレーノズルから連続的に注入される(型:シュリック、フルコーン、1,1mm)。その加圧スプレーノズルは、アセチレン ブラック フィードのための、フィードポートの中心部から125mm離れた、最初の注入位置(A1)に配置される。ペレット化の条件は、以下の表2にまとめる。
【0052】
【表2】
【0053】
その後、ペレット化された、アセチレン ブラックは、回転式乾燥機で乾燥される。特定の条件は表3に纏めた。
【0054】
【表3】
【0055】
得られたペレット化された、アセチレン ブラックの性質は、表4乃至6に纏めた。比較例2は、デンカから得た市販品「デンカ ブラック グレード顆粒」である。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
平均圧縮強度(AVCS)の結果は、表5と6のデータを結び付けて、既述の方法に従って、決定された。本発明に従った、すべてのペレット化されたアセチレン ブラックは、低処理コストで、高分子化合物の高分散性のための前提条件である、有意な低い値を示すことが分かった。
【0060】
ペレット化されたアセチレン ブラックの配合と分散テスト
【0061】
比較例1、比較例2、実施例2、実施例1、実施例3と実施例4による、比較構造(OAN)を有する、ペレット化されたアセチレン ブラックをテストした。
【0062】
フィルター圧力テストまたはフィルム試料の光学的評価は、高分子マトリックス中のカーボン ブラックの分散の度合いを判断するために使用できる。前者は、スクリーンを通して、溶融した色付きの高分子のろ過と、圧力の結果としての増加の測定に基づき、後者は、フラット押出フィルムにおける、非分散カーボン ブラック塊および凝集(いわゆる斑点(specks))によって引き起こされた欠損を、光の透過によって検出する。
分散テストのための配合物は、次のとおり調整された。
【0063】
最初の工程で、35重量パーセントのアセチレン ブラック、粉末状の64.85重量パーセントの低密度ポリエチレン(MFR20)および0.15重量パーセント スタビライザー(Irganox B 215、BASF SE から入手可能)のプレミックを、タンブル ミキサーで、混合時間10分で製造する。
【0064】
2番目のステップで、前記プレミックスは、バンベリー ローター(banbury rotor)付きの実験室ニーダー(PolyLab Q10、Rheomix。サーモ・フィッシャーサイエンティフィック社、カールスルーエ、ドイツから入手可能)に転送され、200℃、60RPMで、2分間混合する。配合物を混合しながら、トルクと混合エネルギーの両方は、時間の関数として記録される。
【0065】
配合物(compound)をさらに処理する前に、混合物を、ニーダー室から取り出し、圧力フィルターやフィルムのテストに使用できる、小さな断片に切り刻まれる(hack)プレートに押しつけられた。
【0066】
フィルター圧力テスト
得られた、切り刻まれた(hacked)顆粒を用い、DIN EN 13900−5に従って、圧力フィルター試験は、通常の目的のスクリュー(general−purpose screw)およびメルトポンプ(melt−pump)を有する、一軸式押し出し機(a single−screw extruder)を使用して、行った。
【0067】
スクリュー直径:D=18mm
スクリュー長さ:L=20D
圧縮比:1:3
スクリーン パック:GKD−Gebr Kufferath AG(ドイツ、(duren))から、4層の25μmフィルターふるい。
基本的なテスト高分子:PE−LD MFR 4
試験温度:160℃
【0068】
表7に、3バールの圧力差が得られるまでの時間が報告される。より長い時間は、より良質の分散を示す。
【0069】
フィルムのテスト:
DIN EN 13900−6による、フィルムテストのために、3つの領域の一般的目的のスクリュー(three−zone−general purpose screw)とメルトポンプ(melt−pump)を持った、一軸式押出機が使用された。
【0070】
スクリュー直径 D=30mm
スクリュー長さ L=25D
圧縮比:1:4
【0071】
溶融した配合物は、高さ0.6mmと220mmの幅のフラット フィルム押出ダイスを使用したフラット フィルムに押し出された。ダイスの前に、スルザー溶融ミキサー SMB−H 17/6(スルザー株式会社、ヴィンタートゥール、スイス)は、均質な膜を受け入れるために使用される。欠陥領域は、DIN EN 13900−6によって測定された。
【0072】
得られた欠陥領域と混合エネルギーは、以下の表7に与えられている。低い欠陥領域は、より良質の分散を示す。
【0073】
【表7】
【0074】
本発明の実施例は、比較例1および2と比較して、より低い混合エネルギーを示すことは、表7から明らかである。実施例1と4(すべての分画)は、減らされた混合エネルギーは、上市されているデンカの製品と比較して、分散の質を損なうこと(compromising)なく達成されることを示す。
【0075】
さらに、ペレット化されたアセチレン ブラックの平均ペレット サイズが、1.4 mm 以上のとき、混合エネルギーをさらに減らすことができ、そして、市販の製品と比較して、分散の質がさらに向上することが、実施例4の1.4mm以上のサイズの分画から明らかである。
【国際調査報告】